環境中の汚染物質が出生児の性別に影響する可能性も?

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/12/31

 

 妊娠中に母親が吸い込んでいた空気や飲んでいた水が、お腹の子どもの性別に影響を与える可能性のあることが、米シカゴ大学ゲノミクス・システム生物学研究所の教授であるAndrey Rzhetsky氏らの研究で示唆された。Rzhetsky氏は、「私の知る限りでは、出生児の男女比に関してこれほどまでに大規模な研究が行われたのは初めてである」と説明する。この研究の詳細は、「PLOS Computational Biology」に12月2日発表された。

 Rzhetsky氏らによると、男児と女児の年間の出生数の割合(出生性比)は、場所や時期により異なるものの、1:1の割合ではないことが多い。受胎時の男女の割合は基本的に同じだが、出生の段階までに女児の方が多くなったり、男児の方が多くなったりするなど、男女比に偏りが出るからだ。しかし、なぜそうなるのかの正確な理由は明らかにされていない。また、全ての胚が生き延びるとすれば、男女比は1:1になるはずなので、出生性比に偏りがあるという事実は、ヒトの胚で選択的な死滅が起こっている可能性を示唆しているのだという。

 こうしたことから、Rzhetsky氏らはさまざまな環境ストレスが胚の生存に影響を与え、出生時の男女比のバランスを左右しているのではないかと考えた。そして、2003~2011年に米国で出生した約313万人と、1983~2013年にスウェーデンで出生した約326万人の合計640万人弱の出生児の保険請求データを用いて、環境中の汚染物質、天候、犯罪率、失業率、交通事故による死亡率、通勤時間の長さなど、出生性比に影響を及ぼすと思われる100個以上の因子と出生性比との関連を検討した。

 その結果、いくつかの汚染物質への曝露が出生性比の変化を促す可能性があることを突き止めた。具体的には、男児の出生を促す物質として、大気中のアルミニウム、水中のクロムやヒ素、総水銀量、環境中のPCB(ポリ塩化ビフェニル)や一酸化炭素などが見つかった。また、女児の出生を促す物質として、土壌中の鉛や鉄などが見つかった。

 その一方で、天候、季節、犯罪率、失業率、通勤時間の長さに関しては、出生児の性別との間に関連は認められなかった。極度の干ばつと交通事故による死亡率に関しては、弱い関連が認められた。さらに、2005年に襲来したハリケーン「カトリーナ」のような深刻な自然災害でも、それが起こった地域の出生児への影響は認められなかったが、2007年のバージニア工科大学銃乱射事件に関しては、出生性比との間に弱い関連が認められた。

 ただしRzhetsky氏は、「われわれは、環境汚染物質が出生性比を左右することはほぼ確かだと考えてはいるが、この研究で因果関係が証明されたわけではない」と話す。また、この研究報告を受け、英チェスター医科大学のGareth Nye氏も、「この報告に不安を覚えるかもしれないが、関連が示されたに過ぎず、事実が証明されたわけではない。世界中のさまざまな環境の中で数多くの健康な子どもたちが毎日誕生していることは覚えておくべきだろう」と指摘している。

 Nye氏は、「われわれが食べたり飲んだりしたもの、あるいは吸い込んだものは、どんなものであっても身体に悪影響を与える可能性はある」と説明。「胎児の発達の初期段階に多くの複雑なプロセスが適切なタイミングで発生しないと、妊娠の成功には至らない。したがって、この研究結果は、不思議で面白い内容ではあるが、あり得ないことではない」と述べている。

[2021年12月3日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら