朝の赤い光の目への照射で視機能の低下を抑制

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/12/29

 

 朝に暗赤色の光を目に当てることにより、加齢に伴う視機能の衰えを抑えることができる可能性のあることが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)眼科学研究所教授のGlen Jeffery氏らの小規模研究で示された。同氏は、「LEDを用いたシンプルなデバイスを使って1週間に1回、暗赤色の光を目に当てることで、バッテリーを充電するように、低下していた網膜の細胞のエネルギーシステムを再びチャージできる」としている。この研究結果は、「Scientific Reports」11月24日号に掲載された。

 ヒトでは、40歳頃から加齢に伴い網膜の視細胞の機能が低下するが、その原因の一部は、細胞活動に必要なエネルギーであるアデノシン三リン酸(ATP)を産生するミトコンドリアの能力低下に起因すると考えられている。Jeffery氏らはこれまでに、マウスやマルハナバチ、ショウジョウバエを用いた実験で、長波長(670nm)の暗赤色の光を毎日目に当てることによって、加齢に伴い自然に低下する網膜の視細胞の機能を改善できることを見出していた。これは、暗赤色の光の照射により、視細胞内のミトコンドリアのATP産生能を活性化できる可能性があることを意味する。

 そこで、Jeffery氏らは今回、1週間に1回だけ、目に暗赤色の光を3分間当てた場合の効果を調べるとともに、光を当てるタイミング(午前中または午後)により効果に差が出るのかどうかについても検討した。なお、網膜の視細胞には、比較的明るいところで働く錐体と暗いところで働く桿体の2種類がある。この研究では錐体に着目し、錐体細胞が色の濃淡や対象の輪郭を識別する能力である、色のコントラスト感度について検討した。

 研究には、目の疾患がなく、色覚も正常な34~70歳の男女が組み入れられた。研究参加者のうち20人(女性13人、男性7人)には午前8時から9時までの間に、6人(女性3人、男性3人)には午後0時から1時の間に、波長670nmの暗赤色の光を3分間見つめてもらった。その3時間後に色のコントラスト感度の検査を行った。また、10人の参加者に対しては、1週間後に再び検査を行った。

 その結果、朝に暗赤色の光を3分間目に当てることで、色のコントラスト感度が12〜17%有意に改善したことが明らかになった。最も高い改善効果を示したのは年齢が高め(50〜59歳)の参加者で、改善率は20%だった。また、このような改善効果は、3時間後に認められた効果より低下するものの、1週間にわたって持続することも判明した。これに対して、午後の時間帯に光を当てた場合には、色のコントラスト感度の改善は認められなかった。

 Jeffery氏は、「われわれは今回、朝に長波長の暗赤色の光を目に1回照射することで、低下しつつある視機能を有意に改善できることを見出した。視機能の低下は、健康やウェルビーイングにおける主要な問題の一つであり、世界中で数多くの人々がこの問題を抱えている」と説明する。その上で、「こうしたシンプルな介入を集団レベルで適用すれば、加齢に伴い低下する人々の生活の質(QOL)に与える影響は大きい。また、それによって視機能の低下に関連する問題によって発生する社会的コストを削減できる可能性もある」と付け加えている。

 Jeffery氏によると、この技術は、「シンプルかつ極めて安全」だという。また同氏は、「一般の人々にも手頃な費用で入手できる、操作の簡単なデバイスを製造することも可能だ」との考えを示している。

 Jeffery氏は、「近い将来、1週間に1回、コーヒーをいれているときに、あるいは通勤時にポッドキャストを聞きながら、暗赤色の光を3分間、目に照射するといったことも可能になるかもしれない。このようなシンプルな対策により、目の治療法を一変させ、世界中の人々の視機能に変化を起こすかもしれない」と話している。

[2021年11月29日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら