肺塞栓症を正しく理解している人は少ない―AHAニュース

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2021/12/30

 

 米国の公共ラジオ「NPR」のファンなら、編集者でジャーナリストでもあるPetra Mayerさんのことを知らない人はいない。彼女は、SFやロマンス小説、漫画、そして猫の熱狂的な愛好家であり、自分自身で「私はそれらのオタクだ」と公言していた。機知に富む陽気なトークで人々を楽しませていたが、今年11月に亡くなった。46歳だった。

 彼女の突然の死について、詳しい情報はあまり公表されていない。しかし両親によると死因は肺塞栓症とのことだ。医学の専門家は、「この悲しい出来事は、人々が肺塞栓症をより深く理解しなければいけないことを示している」と述べている。

 米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のKarlyn Martin氏は、「残念ながら肺塞栓症は、若くて健康な人か年配の人か、あるいは疾患のある人か否かにかかわらず、人生のあらゆる段階で人々を襲う可能性がある」と解説する。肺塞栓症による死亡は、心血管死の中で3番目に多い。しかし人々はその症状をあまり知らない。同氏は、「胸痛発作が起きた時、多くの人は『心筋梗塞かもしれない』と考えて直ちに受療行動を取る。しかし、『肺塞栓症かもしれない。すぐに病院に行こう』と考える人はいない。肺塞栓症と診断された患者が受診前に、数日~数週間も様子を見ていたということもまれでない」と話す。

 米国心臓協会(AHA)の統計によると、最新の死亡者数確定データである2018年の1年間で、肺塞栓症により3万6,000人以上が亡くなった。さらに、現段階で理由は不明ながら、2020年にはより増加している傾向が見られるという。

 肺塞栓症は、肺とは異なる部位、多くの場合は足の静脈内にできた血栓が、血流に乗って肺の動脈に移動してそこにとどまり、肺への血流を遮断してしまう病気だ。肺の働きが低下するだけでなく、心臓にも負担がかかりその機能が低下する危険がある。

 血栓関連疾患の啓発活動を推進している米国の団体「National Blood Clot Alliance」の理事で、米ハドソン公衆衛生大学の学部長でもあるGary Raskob氏によると、肺塞栓症を起こした血栓のサイズが大きい場合にも、自覚症状が現れないことがあるという。また米疾病対策センター(CDC)は、肺塞栓症を発症していたことが死亡後に判明するケースも少なくない実態を示すデータを公表している。

 肺塞栓症の危険因子として、大手術を受けたり急性疾患で数日間入院した場合などが知られており、女性では経口避妊薬の使用、および妊娠も該当する。AHAの統計では、妊婦の死亡原因の約9%が肺塞栓症だ。さらに、がんや高齢であることも危険因子に挙げられる。しかし若年者でも無視できず、Martin氏が2020年に報告した研究では、2008~2018年にかけて25~64歳の肺塞栓症による死亡者数は、年率平均2.1%で増加していた。

 またこの疾患の発症には遺伝的な関与が強い可能性もあり、Raskob氏は、「近親者に肺塞栓症になった人がいる場合、もし自分自身が入院することになったら、肺塞栓症のリスクはどの程度なのか、どのような予防的措置を取るのかを、医師に尋ねた方が良い」とアドバイスしている。一方で、危険因子が何もないのにもかかわらず肺塞栓症を発症する人もまれでない。そのため同氏は、「発症時の症状を知っておくことが重要だ」と述べる。

 足の静脈に血栓ができている可能性を表す症状として、片方の足の腫れ、痛み、発赤、熱感が挙げられる。血栓が肺に移動した場合は、胸痛や息切れを引き起こす可能性がある。また、あまり多くはないが、心臓の鼓動を感じたり、咳をした時にピンクまたは赤色の痰が出たり、背中の上部に痛みを感じたりすることがある。「このような症状が現れた時には、すぐに医師の診察を受けるべきだ。致命的なリスクを否定できない状態であるのに、様子を見るといった危険を冒すべきでない」とRaskob氏は語る。

 一方、Martin氏は肺塞栓症の予防対策として、「長時間の車移動や飛行機の搭乗中には、体をこまめに動かすと良い。8~10時間同じ姿勢で座り続けていると、血栓ができる確率が高くなる」とアドバイスする。同氏によると、Mayerさんを襲ったような全く予期できない肺塞栓症による突然死は、それほど多いものではないとしながらも、「彼女は結果として、人々のこの病気に対する認識を高め、何らかの症状を無視してはいけないことを教えてくれた」と述べている。そして、「肺塞栓症であってもわれわれが迅速に診断を下すことができれば、多くの場合、適切な治療によって回復する」とまとめている。

[2021年11月23日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
利用規定はこちら