糖尿病患者に多いサイレントな心房細動

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/12/16

 

 糖尿病患者は、脳梗塞のリスクを押し上げる心房細動の自覚症状に気付いていない人が少なくないことが分かった。ベルン大学(スイス)のTobias Reichlin氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association」に11月10日掲載された。Reichlin氏は、「心房細動の自覚症状に気付かないことでその診断が遅れ、脳梗塞などの合併症リスクが高くなる可能性がある」とし、「最適な糖尿病患者の心房細動スクリーニング方法を検討すべきではないか」と問題提起している。

 心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがある。ただしより重要なのは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすいために、その血栓が脳の動脈に運ばれて脳梗塞が起きてしまうリスクが高い点にある。このタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広いことが多く、重症になりやすい。

 米国では現在、少なくとも270万人が心房細動を患っており、2030年までに1210万人に増加すると予測されている。糖尿病は1型か2型かにかかわらず、心房細動のリスクを高めることは分かっているが、その症状や合併症が糖尿病の有無で異なるのか否かは明確でない。

 この研究の対象は、スイスで行われている心房細動に関する多施設共同研究の参加者2,411人(平均年齢73.2±8.4歳、女性27.4%、糖尿病17.4%)。主要評価項目は心房細動のタイプ、症状、および心房細動による生活の質(QOL)への影響で、二次評価項目として合併症(循環器疾患、および脳卒中や認知機能障害などの神経学的症候)の有病率を検討した。

 解析の結果、主要評価項目のうち心房細動のタイプについては、非糖尿病群では発作性が45.6%、非発作性が54.5%(持続性31.1%、永続性23.4%)であり、糖尿病群では発作性40.7%、非発作性が59.3%(持続性28.1%、永続性31.2%)だった。年齢や性別、心血管リスク因子で調整後、糖尿病と非発作性心房細動との有意な関連は見られなかった〔オッズ比(OR)1.01(95%信頼区間0.81~1.27)〕。

 一方、前記の調整因子に、自覚症状に影響を及ぼし得る薬剤(β遮断薬や抗不整脈薬)の処方の有無を追加した検討で、糖尿病群は非糖尿病群に比べて心房細動の症状を自覚している割合が有意に低かった〔OR0.74(同0.59~0.92)〕。また糖尿病群はQOLが低かった〔β=-4.54(同-6.40~-2.68)〕。

 二次評価項目の合併症有病率についても、糖尿病群の方が高く群間の有意差が認められた。まず、循環器疾患については、高血圧がOR3.04(同2.19~4.22)、心筋梗塞OR1.55(同1.18~2.03)、心不全OR1.99(同1.57~2.51)だった。神経学的症候についても、脳卒中がOR1.39(同1.03~1.87)、認知機能障害OR1.75(同1.39~2.21)だった。

 著者らは結論を、「糖尿病のある心房細動患者は非糖尿病患者よりも心房細動の症状を自覚する頻度は低いもののQOLが低下しており、また循環器疾患の有病率が高く神経学的症候を来しやすいと言える」とまとめている。その上で、「糖尿病患者に生じるサイレントな心房細動を体系的にスクリーニングすべきではないか」と述べている。

[2021年11月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら