身体活動は膝の痛みのリスク因子でない

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/12/09

 

 熱心にランニングを続けている米デューク大学医療センターのKim Huffman氏は、よく人から「そんなに走っていたらそのうち膝を痛める」としばしば忠告される。しかし彼女は「その忠告には根拠がない」と言う。彼女のこの考え方を支持する、英サウサンプトン大学のLucy S. Gates氏らの研究結果が、「Arthritis and Rheumatology」に11月3日掲載された。運動量と膝関節のトラブルとの間に関連は認められなかったという。

 新たに報告された研究では、米国、英国、オーストラリアなどで行われた6件のコホート研究のデータを統合。レクリエーションスポーツやウォーキング、サイクリングなどの身体活動と、変形性膝関節症(膝OA)との関連を検討した。研究参加者計5,065人を5~12年間追跡した検討の結果、身体活動による運動強度と運動時間のいずれも、膝OAの発症やOA関連の膝の痛み、画像所見との間に有意な関連が認められなかった。

 Huffman氏は、「これは私が長い間、いつかは払拭しようとしていた社会の誤った認識を正すのに役立つ知見だ」と語っている。なお、同氏はこの研究に関与していない。

 では、世間一般のこのような誤解はどこから来たのだろうか?
 Huffman氏はその答えを、実際には運動に伴う‘けが’のために生じる膝への影響を運動そのものによる影響だと、人々が誤って認識しているからだと考えている。「現在明らかになっている膝OAのリスク因子は、遺伝とけが、そして性別が女性であることなどだ。運動量が多い人はけがの頻度が高いために、膝のトラブルも増える。それが誤解の始まりだろう」と同氏は語る。

 Huffman氏によると、運動はむしろ膝を保護するように作用するという。具体的には以下のような作用メカニズムが考えられるとのことだ。

・膝の曲げ伸ばしに伴い膝関節まわりの循環が良くなり、栄養が行き渡る。
・運動によって代謝が改善し、膝関節の炎症が抑制される。
・運動により体重が減ると膝の負担が減る。
・運動で膝まわりの筋肉が強化されて膝が安定し、けがのリスクが減る。

 「膝関節の使い過ぎが膝の痛みの原因ではないと言って良い。膝の痛みはけがとの関連で生じるのであって、痛みを生じるリスクはおそらく肥満や遺伝的背景が関連しているのではないか」とHuffman氏は解説。その上で、膝の痛みを防ぐ最適な方法として、膝のけがのリスクが少ない運動を行うことを推奨している。

 具体的には、「スキーに行った時にそれが大きなトラブルにつながることはあまりないかもしれないが、ウォーキングやマラソンのトレーニングなどをするよりは、けがをする確率が高い。サッカーなどの激しいスポーツも同様だ。ただし問題はサッカーやスキーそのものにあるのではなく、それらのプレー中にけがをするリスクが高いという点にある」と同氏は述べている。

 一方、スポーツ関連医学の研究・治療機関である米シダーズ・シナイ・ケルラン・ジョーブ研究所のBert R. Mandelbaum氏は、運動には膝関節の保護作用に限らず、さまざまなメリットがあると主張する。同氏も本研究には関与していない。

 Mandelbaum氏は、「身体活動は、身体的・精神的健康の維持に不可欠であり、生活の質(QOL)の向上に中心的な役割を果たす。さらに、不安感の抑制、気分の改善、糖尿病・肥満・高血圧・冠状動脈疾患のリスク低下などをもたらし、それらの結果、長寿にもつながる」とも語っている。

[2021年11月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら