COVIDワクチン接種で流産リスクは増大しない

妊娠初期の女性が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンを接種しても、流産のリスクは増大しないとする研究結果が報告された。米国立環境衛生科学研究所(NIEHS)のAllen Wilcox氏、オタワ大学(カナダ)のDeshayne Fell氏、ノルウェー公衆衛生研究所のMaria Magnus氏らによるこの研究報告はレターとして、「The New England Journal of Medicine」に10月20日掲載された。
今回の研究では、国際チームがノルウェーの複数の医療レジストリのデータを分析し、COVID-19のワクチンを接種した女性の妊娠第1期の流産リスクを評価した。対象者には、2021年2月15日から8月15日までの間に、妊娠14週以前で流産した女性と、妊娠継続中の女性が合計1万8,477人含まれていた。ノルウェーでは、リスク因子となる基礎疾患がない限り、妊娠第1期でのワクチン接種は推奨されていない。しかし、「女性がワクチンを接種した後に妊娠が判明することもある」と研究グループは指摘する。
対象者のうち、妊娠を継続していた女性は1万3,956人で、このうちの5.5%(772人)がワクチンを接種していた。また、流産した女性は4,521人で、このうちの5.1%(231人)がワクチン接種者だった。解析の結果、流産リスクは、ワクチン接種後に上昇するわけではないことが明らかになった(流産した女性の流産前3週間以内におけるワクチン接種の調整オッズ比は、ワクチン未接種者を1とした場合に0.91)。この結果は、ノルウェーで使用されているワクチンの種類(米ファイザー社製、米モデルナ社製、英アストラゼネカ社製)に関わらず、同様であった。
研究グループは、「われわれの研究では、妊娠第1期の妊婦がCOVID-19のワクチンを接種すると流産リスクが増大するとのエビデンスは認められなかった」と述べる。その上で、「この知見は、妊娠初期にワクチン接種を受けた女性を安堵させることだろう。また、妊婦に対するワクチン接種を支持する他の研究報告を裏打ちする知見でもある」と付け加えている。
さらに研究グループは、オタワ大学のニュースリリースの中で、「妊娠中の女性は、COVID-19による入院や合併症のリスクが高く、早産リスクも高いため、ワクチン接種が重要である。また、母親が妊娠中にワクチンを接種することで、生後数カ月の間は、新生児の新型コロナウイルスへの感染を予防できる可能性もある」と述べている。
[2021年10月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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