低価格住宅が心臓に良い?

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/10/12

 

 米国では、低~中所得者が購入可能な低価格住宅を供給するための「包括的ゾーニング」と呼ばれる宅地計画が、各所で推進されている。この包括的ゾーニング(inclusionary zoning;IZ)に基づいて整備された地区には、高血圧や脂質異常症の患者が少ないというデータが、「Circulation. Cardiovascular Quality and Outcomes」に9月8日掲載された。論文の筆頭著者である米ジョージワシントン大学のAntwan Jones氏は、「IZプログラムは廉価な住宅の供給を増やすだけでなく、心臓病のリスクを減らすかもしれない」と語っている。

 米国内の多くの都市は、低価格住宅の不足が深刻化している。これに対して、市や郡ごとにIZプログラムに関する条例を制定し、計画的に宅地開発を進めるという施策が、25州、886以上の自治体で実施されている。IZプログラムによって住宅所有者が増えることは、市民の健康増進にも役立っているのではないかとの指摘はこれまでにもあったが、比較対照群を置いた体系的な調査は行われていなかった。

 Jones氏らは、米疾病対策センター(CDC)が中心となり500都市において慢性疾患のリスク因子や臨床転帰を研究している「500都市プロジェクト」のデータを用いて、IZプログラム施行の有無と地域住民の健康関連指標との関連性を検討した。500自治体のうち、IZプログラムが施行されているのは70カ所だった。

 IZプログラムのある自治体の住民は、プログラムのない自治体住民に比較して、高血圧(26.89対30.96%)や高コレステロール血症(29.24対31.70%)の有病率、降圧薬服用者率(54.45対58.70%)、冠動脈性心疾患有病率(4.82対5.87%)が有意に低かった(いずれもP<0.001)。生活習慣関連リスク因子も同様であり、例えば喫煙率(13.50対18.25%)や肥満率(23.17対30.30%)に有意差があった(いずれもP<0.001)。

 また、保険に加入している人の割合、有職者率、世帯収入、人種/民族的マイノリティーの割合がIZプログラムのある自治体で高く、反対に貧困率と住宅所有者率は、IZプログラムのない自治体の方が高かった。なお、65歳以上の高齢者が占める割合は有意差がなかった。

 喫煙率や保険加入率、貧困率などの因子を調整後、自治体のIZプログラム施行は、高血圧(β=-0.18、95%信頼区間-0.50~-0.13)や高コレステロール血症(β=-0.59、同-0.89~-0.31)の有病率、降圧薬服用者率(β=-0.27、同-0.57~-0.03)が低いことと有意な関連が認められた。冠動脈性心疾患の有病率との関連は有意でなかった(β=0.03、同-0.03~0.09)。

 米国では毎年36万5,000人以上が冠動脈性心疾患で亡くなっている。本論文の著者らは結論として、「包括的ゾーニングと心臓の健康との関連についてはさらなる研究が必要であるものの、本研究からは、自宅購入がままならない世帯が直面しているさまざまな健康上の問題のいくつかを、包括的ゾーニングという施策で対処可能であることを示唆している」と記している。

 また、論文の共著者の一人である米ジョージワシントン大学のGregory Squires氏は、「手頃な価格の住宅が安定的に供給されているコミュニティーでは、そこに住む人びとのストレスが軽減され、街の安全性が高く、さらに仕事、公園、新鮮な農産物などへのアクセスを確保しやすい環境につながる可能性があり、結果として人々が健康を維持するのに役立つのではないか」との考察を加えている。

[2021年9月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら