痛みのない心臓発作は珍しくない―AHAニュース

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/07/23

 

 糖尿病を患っているMarian Buttsさんは2014年、肺に水が溜まる「肺水腫」のために入院した。治療の甲斐があり退院となった時、心臓病専門医は彼女に、「以前に心臓発作が起きていて、その時、心筋に損傷が生じていたようだ」と告げた。それは、彼女と彼女の家族にとって、思いもかけないことだった。

 この出来事の数年前、彼女は胃食道逆流症と消化不良の治療を受けていた。実はこのような症状は、痛みを伴わない心臓発作「無症候性心筋虚血」に関連することのある症状の一つだ。「私たちはそのような心臓発作があることを知らなかった」と娘のDebra Brabsonさんは語る。Brabsonさんによると、彼女の母親は胸の痛み、息切れなど、心臓発作の症状として知られている症状を呈していなかった。

 米VCUヘルスポーリー心臓センターの心臓病専門医であるMichael Kontos氏は、「無症候性心筋虚血は予想外に多い」と語る。米国心臓協会(AHA)によると、米国では1年に80万5,000件の心臓発作が起きていて、そのうち17万件は無症候性心筋虚血と推計されるという。Kontos氏は、無症候性心筋虚血は女性や糖尿病患者に多く見られると解説している。

 無症候性心筋虚血であっても、心電図や心エコー検査、心臓MRIなどの画像検査を行えば診断可能だ。しかし無症候性心筋虚血で現われることのある、消化不良、胸や背中の上部の筋肉のこわばり、過度の倦怠感などに悩まされた時に、心臓病専門外来を受診する患者は少ない。結果としてButtsさんのように、後になってから心臓発作が起きていたことが発見されるケースが多い。

 米クリーブランド・クリニックで女性の心血管疾患部門を統括するLeslie Cho氏は、「患者の多くは自分の症状が心臓から来ているものだとは考えず、心電図や心エコー検査を受けて、ようやく心臓発作が起きていたと知らされる。診断後に、『今まで息切れや倦怠感をこらえて、よく頑張ってこられたものだ』と語る患者も少なくない」と語る。

 無症候性心筋虚血による心筋の損傷の程度はさまざまであり、Cho氏によると、「虚血の範囲が狭く、自然に血管のバイパス(側副血行路)ができている患者もいれば、心不全などの深刻な合併症を来している患者もいる」とのことだ。

 2018年に「Journal of the American College of Cardiology」に発表された研究によると、無症候性心筋虚血を起こすと心臓発作の既往のない人に比べて心不全のリスクが35%増加し、特に50代前半までの若年者ではより大きくリスクが上昇することが示されている。また、今春にWeb開催された、米国脳卒中協会(ASA)の国際脳卒中会議(ISC2021)で発表された研究によると、無症候性心筋虚血も脳卒中のリスクを高める可能性がある。

 さらに、長期的な視野に立つと、無症候性心筋虚血は痛みを伴う心臓発作と同等に致命的とも言えるようだ。2018年に「JAMA Cardiology」に報告された研究では、無症候性心筋虚血を来した患者は、時間の経過とともに徐々に健康状態が悪化していき、10年後には約半数が亡くなっていた。この死亡率は、症候性の心臓発作の既往者と同レベルである。

 心臓病専門医は、心臓発作で生じるわずかな症状に関して一般の人々の理解を促し、そのような兆候を無視しないように啓発することの必要性を強調している。早期の治療を受けることが重要だ。

 Buttsさんは現在77歳になる。無症候性心筋虚血と診断されて以降、乳がんの手術を受け、新型コロナウイルス感染症からも復活した。「私の母親はとてもタフな人間だと思う」とBrabsonさんは語っている。

[2021年6月23日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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