テプリズマブによる1型糖尿病の発症予防

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/04/22

 

 テプリズマブという開発中の薬による、1型糖尿病の発症抑制効果が報告された。1型糖尿病ハイリスク状態にある人に同薬を2週間投与したところ、発症抑制効果とともに、膵臓のインスリン分泌力が高まることも確認されたという。米イェール大学のKevan Herold氏らによる報告が、「Science Translational Medicine」に3月3日掲載された。

 糖尿病の大半を占める2型糖尿病は、加齢や生活習慣の影響によって発症する。それに対して1型糖尿病は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を産生している膵臓のβ細胞が自己抗体によって攻撃・破壊され、インスリンを分泌できなくなる病気。発症後は生涯にわたるインスリン療法が必須となる。

 1型糖尿病は通常、発症後の短期間でインスリン分泌が低下して、顕著な高血糖になる。しかし、β細胞を攻撃する自己抗体は、発症の前段階で陽性になることが多く、その段階で何らかの手段で抗体の働きを抑制できれば、1型糖尿病の発症を抑えられると考えられる。テプリズマブはその手段の一つとして、バイオテクノロジー企業のProvention社が開発中の薬。

 同薬の治験は既に進行しており、プラセボ(比較対照の偽薬)よりも1型糖尿病の発症を有意に抑制するというデータが示されている。今回の報告は、同薬投与からの追跡期間を12カ月間延長し、発症抑制効果が継続しているかどうかを検討したもの。

 研究の対象は、自己抗体が陽性で糖尿病未発症の76人(年齢中央値13歳)。ランダムに2群に分け、プラセボ(32人)またはテプリズマブ(44人)を2週間投与した。その後の923日(中央値)の追跡期間中に、プラセボ群の25人(78%)とテプリズマブ群の22人(50%)が1型糖尿病を発症した。

 年齢などの因子を調整後、テプリズマブ群の1型糖尿病発症ハザード比は0.457(P=0.01)であり、発症リスクが半分以下に抑制されていた。また、1型糖尿病発症までの期間の中央値(対象者の半数が発症するまでの期間)は、プラセボ群27.1カ月、テプリズマブ群59.6カ月だった。

 テプリズマブにβ細胞の働きを高める作用があることも示された。具体的には、インスリン分泌能の指標であるC-ペプチドの糖負荷後曲線下面積(AUC)の研究期間中の平均値が、プラセボ群1.72pmol/mL、テプリズマブ群1.94pmol/mLであり、年齢と研究開始時点の値で調整後も両群間に有意差があった(P=0.006)。

 この研究は、米国立衛生研究所(NIH)とJDRF(旧・若年性糖尿病研究財団)の資金提供による研究グループ(Type 1 Diabetes Trial Net Study Group)が支援して実施された。JDRFのSanjoy Dutta氏は研究結果を受けて、「1型糖尿病の多くは小児期に発症するため、罹病期間が長くなる。年月の経過とともに、心臓や腎臓、眼、神経などに合併症が起きやすくなってしまう。それに対して、β細胞の機能低下を先延ばしできれば、良好な血糖管理を長期間維持でき、合併症のリスクを減らすことができる」と語っている。

 米食品医薬品局(FDA)は、テプリズマブを「画期的な新薬」と指定し、迅速な審査を行う対象とした。Herold氏によると、早ければ今年の夏に承認される可能性があるという。

 テプリズマブが承認された場合、1型糖尿病の自己抗体を持つ人々を見つけ出すためのスクリーニング検査の需要が高まることが予測される。この検査は現在でも受けることはできるが、まだ一般的ではない。JDRFによると、1型糖尿病患者の親族は、Trial Net研究を介することで、無料で検査を受けられるという。

[2021年3月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら