前糖尿病の段階から認知症リスクが上昇する

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/04/15

 

 糖尿病患者は認知症のリスクが高いことが知られている。しかし、認知症のリスク上昇は糖尿病に限らず、診断基準に至っていない軽度の高血糖状態である「前糖尿病」でも、ハイリスクであることを示すデータが報告された。

 この研究を行ったのは、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のVictoria Garfield氏らの研究グループ。同氏は、「観察研究であるため、血糖値の上昇が認知機能低下の直接の原因であるとは言えない。しかし、さらなる研究が必要とされる、潜在的な関連が存在すると確信している」と述べている。研究の詳細は、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に1月19日掲載された。

 Garfield氏らはこの研究に、2006~2010年に40~69歳の約50万人が登録されたUKバイオバンクコホートのデータを利用した。HbA1cや認知機能に関連する検査データが記録されている44万9,973人を解析対象として、正常血糖群(HbA1c5.4~6.0%)を基準にベースラインデータの横断的解析、および、2017年3月まで追跡した縦断的解析を行った。認知機能に影響を与える可能性のある因子(年齢、性別、人種/民族、教育歴、タウンゼント剥奪指数など)は調整した。

 その結果、前糖尿病(HbA1c6.0~6.5%)は、認知症リスクや認知機能の低下と有意な関連が認められた。具体的には、血管性認知症のハザード比(HR)が1.54(95%信頼区間1.04~2.28)、認知機能低下のオッズ比(OR)が1.42(同1.05~1.80)だった。なお、糖尿病では血管性認知症のリスク上昇(HR2.97、同2.26~3.90)だけでなく、全認知症(HR1.91、同1.66~2.21)やアルツハイマー型認知症(HR1.84、同1.44~2.36)のリスクも上昇し、認知機能低下のORは1.39(同1.04~1.75)だった。

 Garfield氏は、「これまでの研究で、糖尿病と認知機能低下の関連が明らかになっていたが、われわれの研究は、血糖値が比較的高いものの糖尿病未発症の段階での脳への影響を調査した初の報告である」とUCL発行のニュースリリースの中で述べている。

 この研究結果について、米レノックス・ヒル病院のMinisha Sood氏は、「糖尿病が認知症のリスクを高めるという事実から考えると、この発見は驚くべきことではない」とし、「高インスリン血症によって血糖値が糖尿病域未満にある状態でさえ、脳のダメージが進行している可能性がある」と解説。「前糖尿病状態にある人に対しては、医師から認知機能低下リスクに関する注意がなされるべきである」と指摘している。

 また、米グレンコーブ病院のBarbara Keber氏は今回の報告について、「前糖尿病段階でも脳の血流が障害されることがあるため、理にかなった結果である」と評価。ただし、血糖コントロールが厳格すぎる場合に生じる低血糖が、認知機能の低下リスクを高める可能性もあることに言及。「この研究結果から受け取るべきメッセージは、認知機能低下と血管性認知症を防ぐためには、前糖尿病と糖尿病を予防し、かつ低血糖を起こさずに血糖管理をすることだ」と解説している。

[2021年2月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら