炎症性腸疾患の患者は寿命が依然として短い

炎症性腸疾患(IBD)の患者は、以前よりは長生きするようになったものの、IBDではない人に比べると、寿命が依然として短いとする研究結果が報告された。The Hospital for Sick Children(カナダ)のEric Benchimol氏らによるこの研究の詳細は、「Canadian Medical Association Journal(CMAJ)」11月9日号に掲載された。
IBDは、主に腸管に炎症が生じる疾患で、一般的にはクローン病と潰瘍性腸疾患のことを指す。IBD患者では、腸管以外の部位に炎症が生じることもあり、また、がん、心疾患、関節炎など他の疾患リスクも高いという。
Benchimol氏らは、カナダ、オンタリオ州のデータベースを利用して、1996年、2000年、2008年、2011年におけるIBD患者、およびそれらの患者と年齢や性別、居住環境(都市部か地方か)などをマッチさせたIBDではない人(対照群)を対象に、後ろ向きコホート研究を実施。IBD患者の平均寿命の経時的推移と健康度調整平均寿命(HALE)について調査した。なお、HALEとは、自立した状態で健康に暮らせる期間を示す、健康寿命の指標の一つである。
その結果、1996年には3万2,818人(対照群16万3,284人)であったIBD患者数が、2011年には8万3,672人(対照群41万8,360人)に増加したことが明らかになった。また、1996年と2011年を比べると、IBD患者の平均寿命は、女性で2.9年(75.5歳から78.4歳)、男性で3.2年(72.2歳から75.5歳)延びていた。しかし、IBD患者の平均寿命は対照群に比べて、いずれの年でも常に短く、両群間での平均寿命の差は、女性で6.6~8.1年、男性で5.0~6.1年であった。一方、HALEに関しても、IBD患者は対照群に比べていずれの年でも常に短く、その差は、女性では9.5~13.5年、男性では2.6~6.7年であった。
Benchimol氏は、「IBD患者の平均寿命が延びたのは朗報ではある。しかし、IBD患者と非IBD者の寿命には、依然として差がある」と述べている。そして、「IBD患者は痛みに苦しんでいる。この痛みが、日常生活機能に悪影響を及ぼし、HALEの短縮を招いている」と指摘する。
一方、この研究論文の筆頭著者で、Children's Hospital of Eastern Ontario(カナダ)のEllen Kuenzig氏は、「カナダにおけるIBD有病率の増加傾向や、IBD患者が痛みを訴える頻度、そして、その痛みが健康関連QOLに及ぼす影響を考えると、より良い疼痛管理方法を開発する必要がある」と述べている。
[2020年11月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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