ビタミン摂取で風邪を予防できる?

ビタミンA、D、Eの摂取量が多い人は、風邪をひきにくい可能性があるとする研究結果を、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のSuzana Almoosawi氏らが、「BMJ Nutrition, Prevention & Health」10月27日オンライン版に報告した。
この研究は、英国の調査「National Diet and Nutrition Survey Rolling Programme(NDNS RP)」に2008~2016年に参加した、19歳以上の成人6,115人を対象としたもの。NDNS RPは、ランダムに抽出した一般家庭を対象に毎年実施され、健康状態や食事に関する情報が収集されている。今回の研究対象者は、3日以上の食事記録を提出していたほか、調査期間中に生じた呼吸器症状(咳、喉の痛み、呼吸困難、肺虚脱、ウイルス性肺炎による肺損傷など)についても報告した。Almoosawi氏らは、これらのデータを基に、食事またはサプリメント(以下、サプリ)からのビタミンA、C、D、Eの摂取が、風邪などによる呼吸器症状の予防に関連するのかどうかを検討した。
その結果、さまざまな呼吸器症状を報告したのは、6,115人のうちの33人であることが明らかになった。こうした人たちは、全般的に年齢が高く、ビタミンA、C、D、E、をサプリから定期的に摂取している人も少なかった。また、これらの人々では、呼吸器症状がなかった人々と比べて、食事からのビタミンAとEの平均摂取量も少ないことが明らかになった。
年齢、性別、BMI、世帯収入、喫煙の有無を調整して解析した結果、食事とサプリからのビタミンAとEの摂取量が多い人は、呼吸器症状が生じる頻度が低いことが明らかになった。また、ビタミンDをサプリメントから摂取している人でも同様の結果が得られたが、食事からのビタミンD摂取では、この関連は認められなかった。さらに、ビタミンCと呼吸器症状との関連は認められなかった。
呼吸器症状と聞くと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし、これらのビタミンがCOVID-19をはじめとする呼吸器疾患の予防に有効かどうかは不明だ。というのも、対象者のうち呼吸器症状を訴えていたのはわずか33人であり、その原因も感染症なのか、慢性肺疾患なのかが明らかになっていないからだ。また通常、この種の研究では、関連の有無を明らかにすることはできても、因果関係を証明することはできない。
さらにこの研究では、世帯収入や喫煙の有無など、ビタミン摂取量に影響を及ぼす可能性のある要因について考慮されていたが、それ以外の要因が結果に影響した可能性も考えられる。こうした点を踏まえて、この研究には関与していない米Novant Health Primary Care Lindley ParkのDaniel Jobe氏は、「興味深い結果だが、決定的とはいえない。ビタミンの摂取量の多さが何を改善しているのかを突き止めるのは困難だ」と指摘する。
なお、ビタミンAを含む食品には、赤色あるいはオレンジ色の野菜や乳製品、ビタミンAを強化したシリアルなどがある。また、ビタミンEは植物油やナッツ類、葉物野菜などに含まれている。一方、ビタミンDは近年、健康に関わるトピックとして注目を集めている。また、ビタミンD欠乏とCOVID-19重症化リスクの上昇との関連が複数の研究で示唆されたのをきっかけに、このビタミンへの関心はさらに高まっている。Almoosawi氏は「今のところ、ビタミンDは摂取した方が賢明だといえそうだ。ビタミンDが含まれている食品は少なく、ビタミンDが欠乏している人は珍しくないからだ」と話している。
Almoosawi氏らは、今後さらなる研究を行い、ビタミン摂取がその後の呼吸器症状のリスク低下に関連するのかどうか検証したいとしている。
[2020年10月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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