同性愛男性の角膜提供規制解除で数千人に光を

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/10/23

 

 ゲイやバイセクシャルの男性の角膜提供に関する米国やカナダの規制が移植治療の妨げとなっていて、視覚障害者の視力回復の機会が年間数千件も失われているとする報告が、「JAMA Ophthalmology」9月24日オンライン版に発表された。論文の筆頭著者である米コロラド大学のMichael Puente氏らは、このような角膜ドナー適格基準は改めるべきだと主張している。

 角膜の疾患などによる視覚障害は、角膜移植によって治療できる可能性が高い。しかし米国では、過去5年以内に同性との性行為を行った男性からの角膜移植は認められていない。カナダでは、その期間は12カ月間だ。

 米国におけるこの基準は、HIV感染への懸念から1994年に採用された。当時のHIV検査は、ウイルスに曝露後6カ月間以上経過していないと、結果の信頼性が低かった。しかし現在は、ウイルス曝露から4~8日以内に感染の有無を判定できる。さらにPuente氏らによると、「ゲイやバイセクシャルの男性から提供された角膜を移植した場合の有害性を裏付ける、科学的なエビデンスはない」という。

 Puente氏らは、米国とカナダにある全アイバンク65件に対して電話調査を行い、同性愛男性からの角膜提供が生かされなかった件数を推計した。65件中54件が調査に応じ、そのうち24件がこの調査に対する正確なデータを回答した。他のアイバンクからは、移植に生かされなかった理由を細分化していないなどの理由のため、解析に利用できるデータを得られなかった。

 回答を得られた24件のアイバンクで、ドナーが男性同性愛者だったために生かされなかった角膜は、2018年の1年で360件(角膜提供の機会としては720件)だった。この24件のアイバンクが関与する同年の角膜回収数は合計6万4,013件であり、米国とカナダでの回収数の46.2%に相当する。今回の調査でデータを得られなかったアイバンクでも、この24件のアイバンクと同率で男性同性愛者からの角膜提供を除外していたと仮定すると、米国とカナダ両国で、2018年に1,558件の角膜移植の機会が失われたと推定された。

 Puente氏らはこれとは別に、以下のようなデータに基づく推算も行っている。米国の男性の3.9%が過去5年以内に同性間の性行為を行っており、角膜ドナーの約6割は男性と報告されている。これらの数値を、2018年に米国内で回収された角膜総数13万3,576件という数値に乗ずると、生かされなかった角膜移植は年間3,126件と計算された。同様の手法により、カナダでは年間91件、両国の合計では2018年に3,217件の角膜移植の機会が失われたと推定された。

 「世界には数百万人もの角膜移植を必要とする患者がいる。米国やカナダで提供に至らなかった角膜を使用することができていれば、数多くの患者の視力を回復させることができたはずだ」と、Puente氏は語っている。

 米国では現在、角膜ドナーの適格基準を満たすには、HIVやB型肝炎、C型肝炎のウイルス学的検査を受ける必要がある。これらの検査が全て陰性であったとしても、過去5年以内に同性との性行為の経験がある場合は非適格とされる。Puente氏は「最新のウイルス学的検査が実施され、さらに、角膜移植を介してHIVが伝播するリスクは低いことが明らかになってきた。時代遅れの指針を規制当局は改めるべきだ」と主張している。

 なお、Puente氏らによれば、スペインやイタリア、チリ、アルゼンチンなどでは、ゲイやバイセクシャルの男性による角膜提供は規制されていない。またそれら以外の国も、規制対象となるのは過去3~4カ月以内に同性との性行為があった場合であり、米国やカナダよりも期間が短い。

[2020年9月29日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら