心原性ショックを合併した心筋梗塞患者の治療実態に男女差

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/10/27

 

 心筋梗塞後に心原性ショックと呼ばれる危険な状態に陥った患者の死亡率は、男性よりも女性の方が高いことが、米エモリー大学のSaraschandra Vallabhajosyula氏らの研究から明らかになった。この研究では、55歳以下の女性は、男性よりも検査や積極的な治療を受ける頻度が低く、入院中の死亡率は高いことが示された。詳細は、「Circulation: Heart Failure」9月29日オンライン版に発表された。

 心臓が十分な量の血液を送り出すことができなくなると起こる心原性ショックは、心筋梗塞後の主な死因である。実際、心筋梗塞を起こして入院した患者の約半数は、心原性ショックにより死亡している。

 Vallabhajosyula氏らは今回、全米入院患者データベース(Nationwide Inpatient Sample)を用いて、2000~2017年に、心筋梗塞後に心原性ショックを合併した18~55歳の男女9万648人(26%が女性)のデータを収集し、分析した。

 その結果、以下の検査や治療が実施された割合は、いずれも男性と比べて女性で低いことが分かった。

・心臓に血液を供給する血管である冠動脈に狭窄があるかどうかを調べる検査(冠動脈造影検査)(女性78.3%、男性81.4%)
・入院早期の冠動脈造影検査(女性49.2%、男性54.1%)
・狭窄した血管を広げるためのステントやバルーンを使った治療〔経皮的冠動脈インターベンション(PCI)〕(女性59.2%、男性64.0%)
・心機能を維持するための補助循環(女性50.3%、男性59.2%)

 また、女性であることが、入院死亡率の高さの独立した予測因子であることも明らかになった(入院死亡率は、女性23.0%対男性21.7%、調整オッズ比1.11、P<0.001)。そのほか、男性あるいは白人女性と比べて黒人女性は心筋梗塞後に心原性ショックを合併する割合が高いことなどが明らかになった。さらに、入院期間は男女間で同等であった(男性:平均10.3日、女性:平均10.6日)にもかかわらず、入院費用は男性よりも女性の方が少なかった〔男性:平均16万7,669ドル(約1770万円)、女性:平均15万6,372ドル(約1651万円)〕。その理由をVallabhajosyula氏は、「女性が男性と同等の治療を受けていなかったため」と説明している。

 Vallabhajosyula氏はこれらの結果について、「数値だけ見るとわずかな差に見えるが、この研究には多くの患者が組み入れられていることから、臨床的な影響は大きい」と主張する。そして、「このような男女差を生じさせている明確な要因を突き止めることは極めて難しい。女性や急性の心疾患に関わる問題には、意識的あるいは無意識の偏見が大きな影響を与えている。そのような偏見の元をたどると、医師や家族、医療システムに原因がある場合が多い」と指摘する。

 また、Vallabhajosyula氏は、「女性では、通常の心筋梗塞では現れない腹痛や頭痛などの非典型的な症状が生じることがある。そのため、女性の心筋梗塞は見逃されがちだ」と話す。さらに、女性は心筋梗塞の症状が現れてもそれに対応せず、時間が経過してから受診することが多い。そのため、症状が悪化して心原性ショックを起こす状態になりやすいことも、男女差を生じさせている可能性があるという。同氏は、「医学書に書かれている症状が、必ずしも全ての集団に当てはまるわけではない。医師や医療従事者は、無意識のうちに抱いている思い込みを捨て去るべきだ」と主張。それと同時に、「女性は自分の症状を軽視すべきではない」と強調している。

 一方、米ニューヨーク大学ランゴン医療センターのClaudia Gidea氏は、心筋梗塞のリスクや起こり得る症状に関して女性を教育する必要があると指摘。「救急外来を受診した女性患者を早期診断に導けるよう、教育プログラムを強化する必要がある」と主張している。

[2020年9月29日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら