脳への電気刺激でディスレクシアが改善

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2020/10/01

 

 脳の聴覚(音)情報の処理を担う領域への電気刺激が、ディスレクシアの成人の読む力を一時的に改善する可能性のあることが、ジュネーブ大学(スイス)のSilvia Marchesotti氏らによる小規模試験で示された。研究結果の詳細は、「PLOS Biology」9月8日オンライン版に掲載された。

 ディスレクシアは、知的能力に問題はないものの、文字の読み書きに困難を抱える学習障害の一種である。ディスレクシアの原因として有力なのは、言葉の音韻(意味の区別を成す最小の音の単位)の処理、つまり言葉の音韻構造を認識して区別し、操作することがうまくできない音韻障害である。ディスレクシアにおける音韻障害は、脳の聴覚情報処理領域である左聴覚野での神経活動の律動的、あるいは反復的パターンの変化と関連付けられているが、その因果関係については明らかになっていない。

 Marchesotti氏らの今回の研究は、ディスレクシアの診断歴を持つ成人15人(女性13人、平均年齢27.4歳)とディスレクシアでない成人15人(女性11人、平均年齢25.6歳)を対象にしたもの。同氏らは、ディスレクシア患者では、左聴覚野で30Hzの電気刺激に対する神経活動が特異的に低下することを確認した上で、脳の左聴覚野へ経頭蓋交流電流刺激(偽刺激、30Hz、60Hz)を20分間ずつ与え、その効果を調べた。

 その結果、ディスレクシア群では、30Hzの電気刺激を受けた直後に、音韻処理能力と、文章音読のスピードに変化は見られないものの、精度が有意に向上することが明らかになった。ただし、その効果は短く、1時間後には低下していた。この結果についてMarchesotti氏は、聴覚野の活動を非侵襲的に「正常化する」ことによって、ディスレクシアが改善するかどうかを探るための基礎データになると評価している。

 今回の研究には関与していない、米ボストン大学のTyler Perrachione氏は、この研究について、「ディスレクシアの根底にあるものを理解する上で、有望な手法を取り入れてはいるが、この研究によりディスレクシアの直接的な原因が明らかにされたとはいえない」と述べ、慎重な解釈を求めている。また、電気刺激による効果の継続時間が短い点を指摘し、電気刺激のみでの有効性についても疑問視している。その上で、ディスレクシアに対して通常行われる読字指導と電気刺激を組み合わせた場合の効果を試してみる価値はあるとの見解を示している。

 研究チームは今後、小児において、電気刺激によって左聴覚野の活動が正常化するかどうかを調べる予定であるという。Marchesotti氏は、「タスク遂行中の人の脳波活動を監視するモニターを用いた、ニューロフィードバックトレーニングなどの、さらに低侵襲性の方法でも同様な効果が認められる可能性がある」と期待を示している。

[2020年9月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら