抗HIV薬の短期服用も感染予防の有用な選択肢

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/09/21

 

 HIVに感染するリスクの高い人が、感染予防のために、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とエムトリシタビンの合剤(商品名ツルバダ)などの抗レトロウイルス薬を毎日服用する、曝露前予防内服(pre-exposure prophylaxis;PrEP)と呼ばれる方法が登場してから数年が経過した。米疾病対策センター(CDC)によると、PrEPによって、性交渉でHIVに感染するリスクは99%低下し、注射薬物の使用者でも、同リスクは少なくとも74%低下するという。PrEPで使用する薬剤費は、メディケイドを含めたほとんどの保険でカバーされている上に、副作用は軽く、一時的なものがほとんどだとされている。

 ただ、毎日薬を服用しなくてはならないことに抵抗を覚える人は少なくない。特に、しばらく性交渉の予定がない人は、そうした気持ちが強いだろう。そんな人々にとっては、抗レトロウイルス薬を短期間だけ使用する「バケーションPrEP」と呼ばれる方法が、有用な選択肢の一つになり得ることが、臨床試験で示された。米ピッツバーグ大学のJames Egan氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Acquired Immune Deficiency Syndrome」8月15日号に発表された。

 米マサチューセッツ州メドフォード在住の42歳のパラリーガル、Anthonyさんは、このバケーションPrEPを経験した同性愛者の一人だ。彼は1年前から、デイリータイプのPrEPを開始していた。

 Anthonyさんは、「必要がないのなら、薬を毎日飲むことは避けたかった。PrEPで服用する薬は強いため、副作用のことが少し心配だった」と振り返る。彼は医師に、「性交渉は定期的には行っていない。性交渉を持つとしたら、それがいつになるのかの予測は簡単にできる」と伝えたという。それを受けて医師が、実行可能な選択肢の一つとして彼に勧めたのが、バケーションPrEPだった。「この方法であれば、必要なときにだけ内服すれば事足りる」とAnthonyさんは説明している。

 HIVの感染拡大を抑えるためにはPrEPの普及が必要だが、2017年に実施されたCDCの調査によると、米国内のゲイおよびバイセクシュアルの人々でPrEPを利用している人は3分の1程度にとどまっている。専門家の間では、オンデマンドタイプのPrEPの導入がデイリーPrEPの普及につながる可能性があるとして、期待が寄せられている。PrEPはワクチンではないが、Egan氏は、「PrEPは細胞を守るコンドームのようなものだ」と説明している。

 Egan氏らによる臨床試験は、米ボストンおよびピッツバーグ在住の男性48人を対象に実施された。バケーションPrEPでは、休暇旅行中と、休暇の前後1週間に、抗レトロウイルス薬を毎日服用する。

 休暇旅行から戻った試験参加者に血液検査を実施したところ、ほとんどの男性(93.7%)で、PrEPの薬剤の血中濃度はHIVの感染予防に十分なレベルに達していた。この事実は、参加者がバケーションPrEPのプロトコルを守っていたことを示している。4分の3の参加者が、休暇中にコンドームを使わない性交渉を経験し、およそ3分の1の参加者が違法薬物を使用していたが、休暇中にHIVに感染した男性はいなかった。

 Egan氏は、試験に参加した男性たちが、休暇中とその前後にPrEPの服薬を遵守していたことに言及し、「素晴らしいことだ」とコメント。また、およそ70%の参加者がデイリーPrEPに対する関心を示したことに触れ、「バケーションPrEPがデイリーPrEPへの橋渡しになる可能性が示唆された」としている。

[2020年8月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら