COVID-19が男性で重症化しやすい理由の一端を解明

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/09/16

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疫学的研究が進むにつれて、女性よりも男性の方が重症化しやすい傾向にあることが明確になってきた。そのような中、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫システムの反応が、男女間で異なることを示す研究結果が発表された。この研究を実施した米イェール大学のAkiko Iwasaki氏らは、「女性と比べて男性ではCOVID-19が重症化しやすく、死亡リスクも高い理由の一端を説明し得る結果」と、同大学のニュースリリースの中で述べている。詳細は「Nature」8月26日オンライン版に掲載された。

 Iwasaki氏らによると、世界のCOVID-19による死亡例の約60%を男性が占めている。同氏は、「われわれの研究によって、COVID-19患者における免疫の全体像に性差があることを示す明確なデータを得ることができた。男性が重症化しやすいことには、このような免疫系の性差が関係している可能性がある」と説明。また、「治療薬やワクチン投与に際して男女ともに同程度の効果を得るためには、性差に基づくアプローチが必要であることを示唆する研究結果」との見方を示している。

 Iwasaki氏らは今回の研究で、COVID-19入院患者のうち、ICU入室患者、およびトシリズマブまたは高用量ステロイドが処方されていた患者を除いた患者群と、比較対照群としてCOVID-19に罹患していない同院の医療従事者から、鼻腔ぬぐい液、唾液、血液、尿を採取し分析。さらに、COVID-19から回復した患者と重症化した患者で、感染初期の免疫反応に違いがあるかどうかを分析した。その結果、男性では、IL-8やIL-18などの炎症を起こす数種類のタンパク質(サイトカイン)の量が多いなど、女性と比べて感染初期の免疫反応に違いのあることが判明した。

 サイトカインには、感染初期の段階で体内に侵入した病原体から体を守るために炎症を起こす働きもある。しかし、COVID-19の重症例ではサイトカインが過剰に産生され、免疫の暴走である「サイトカインストーム」と呼ばれる状態に陥ってしまうことがある。サイトカインストームが起こると、肺に水がたまって血液中の酸素が不足したり、組織の損傷やショック状態、多臓器不全に至る可能性がある。男性は感染初期にサイトカインの濃度が高くなりやすく、こうした深刻な状態に陥るリスクが高まると考えられる。

 一方、女性は男性よりも、T細胞の活性が高いことが明らかになった。T細胞は白血球の一部で、体内に侵入してくるウイルスを認識して排除する働きがある。男性では女性よりもT細胞の反応が弱いため、そのことも男性がCOVID-19に罹患すると重症化しやすい一因である可能性があるとIwasaki氏らは指摘している。ただ、女性でも感染初期にサイトカインの量が多い人は、重症化する頻度が高いという。

 このほか今回の研究では、高齢男性は若い男性に比べてT細胞の活性が低いことも明らかになった。一方、高齢女性のT細胞活性の低下は認められなかった。

 ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センター(ドイツ)のMarcus Altfeld氏は、「The New York Times」の取材に対して「ワクチンの接種回数は、若い人に対しては1回で十分だが、高齢男性には3回必要といったシナリオが考えられる」と話している。

 また米ジョンズ・ホプキンス大学のAmesh Adalja氏も、「男女別あるいは年齢層別にワクチンの反応の違いについて解明を進め、予後の改善につなげる方法を見つけ出すことは重要な課題だ」と指摘。そして「重症COVID-19に立ち向かうためには、個々の患者の特性に合わせたプレシジョン・メディシンのアプローチをとることがベストと考えられる」としている。

[2020年8月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら