リストバンドでトゥレット症候群の症状を緩和

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/07/08

 

 小児期に発症し、不随意な体の動きや発声などのチックを特徴とするトゥレット症候群に対し、電気パルスを発するリストバンドが症状の緩和に役立つ可能性を示した研究結果が報告された。「Current Biology」6月4日オンライン版に掲載された論文によると、トゥレット症候群患者にこのリストバンドを用いたところ、チックの症状とチックの衝動が抑制されたという。

 チックは、咳払い、まばたき、さらには汚言を吐く(下品な言葉を口走る)など、不随意に生じる動作や発声のこと。研究グループによると、これらの症状をもたらす脳の電気的な活動を抑えるには、脳振動(brain oscillation)と呼ばれる手法が役立つという。「末梢神経系に電気パルスを送ることにより、チックの頻度および強度のいずれも軽減させることができる。また、チックが出る前に多くの患者が感じている衝動も緩和された」と、論文の上席著者である英ノッティンガム大学のStephen Jackson氏は述べている。

 Jackson氏らは、19人のトゥレット症候群の患者に特殊なリストバンドを装着してもらい、この方法の有効性を検証した。被験者の右手首に巻いたリストバンドから、一定の電気刺激を加えたり止めたりする操作を、1分単位で無作為に繰り返した。その結果、刺激を加えた時には、チックおよびチックへの衝動が軽減することが分かった。

 このリストバンドによる電気刺激は、重症の被験者において、より大きな効果が認められた。また、累積的な効果も認められ、施行回数を重ねるほど有効性が高まったという。

 Jackson氏は「この治療法は非常に必要性が高い」とし、以下のような理由を挙げている。まず、トゥレット症候群の治療薬は約半数の患者にしか効果が見られず、副作用もあることから、多くの親は子どもに薬を飲ませたがらないという。また、脳に電極を埋め込む治療法もあるが、外科手術による短期的、長期的なリスクを伴う。さらに、行動療法については、その治療を受ける機会が十分に確保されていない。

 Jackson氏らは、患者自身が「チックが出そう」と感じた時に、自分で電気刺激を与えることができるリストバンドの開発を目指し、大規模な試験を計画しているという。

 この報告をレビューした米ノースウェル・ヘルス、運動障害プログラム部門長のAlessandro Di Rocco氏は、チックが日常生活にもたらす多大な影響を指摘し、「この研究は有望だ」とする。近年、脳活動の異常なパターンとチックの衝動の関連を示すエビデンスが蓄積され、脳深部刺激療法などの新しい治療法が臨床応用されている。しかし同氏は、「外科手術を伴う処置は深刻な合併症のリスクがあり、その他の外部刺激による治療法には高額な機器が必要で、施行可能施設も限られる」としている。

 それに対し、このリストバンドは「簡単に着用でき、手首の正中神経を刺激することにより異常な脳活動を停止させてチックを軽減させるというもので、リスクや副作用はほとんどない。効果が裏付けられれば、革新的な治療法となり、他の原因による不随意運動の治療にも応用できる可能性がある」とDi Rocco氏は述べている。

[2020年6月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら