さまざまな腫瘍の中に細菌叢を確認

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/07/07

 

 人間の身体には無数の細菌が生息しているが、幅広い種類のがん細胞の中にも細菌が存在していることが明らかになった。この研究論文の筆頭著者であるワイツマン科学研究所(イスラエル)のRavid Straussman氏は「人間の腫瘍細胞には高頻度で細菌が存在していることが分かった。このことから、細菌による腫瘍への局所的な影響や腫瘍免疫、免疫療法に対する反応などに関して、さまざまな疑問が浮かび上がってきた」と話している。詳細は「Science」5月29日号に掲載された。

 今回報告された研究結果は、複数の医療機関で登録された患者から採取された7種類の腫瘍の1,526点に及ぶ検体、および腫瘍周辺組織の検体に基づくもの。Straussman氏らはこれらの検体に含まれる細菌タンパク質や遺伝物質の解析を実施した。

 その結果、解析対象とした全てのがんについて、腫瘍細胞内に細菌叢が確認された。これまでにも、腸などいくつかの部位にある腫瘍細胞内に細菌が生息していることが明らかにされていた。しかし、Straussman氏らの研究では、乳がんや肺がん、骨や脳のがんなど、さまざまな種類の腫瘍細胞の中にも細菌叢が存在することが明らかにされた。また、こうした細菌叢を構成する細菌の種類はがん種ごとに異なっており、乳がんで細菌の多様性が最も高いことも分かった。

 現時点では、これらが何を意味するのかは不明だ。しかし、この研究からは、腫瘍細胞内で見られたものと同じ細菌が、がん患者の免疫細胞にも存在していることが確認された。このことからStraussman氏らは、腫瘍細胞に存在する細菌は、特定のがん治療に対する患者の反応に何らかの影響を与えている可能性を示唆している。

 がん治療に対する反応に細菌が影響を与えている可能性に関しては、既に過去の研究からも手掛かりが得られていた。例えば、2017年に報告された進行メラノーマ患者を対象とした研究では、免疫療法薬が奏効した患者と効果が得られなかった患者で、腸内細菌叢に明確な違いが認められた。今回の研究でも、メラノーマ患者において、腫瘍細胞中に存在する特定の種類の細菌の量と免疫療法に対する反応との間に関連が示された。

 ただし、この研究論文の付随論評の著者の一人で米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のPeter Turnbaugh氏は、「腫瘍内あるいは身体のそれ以外の場所に存在する細菌と治療効果との因果関係が明らかにされたわけではなく、結論を導き出すには時期尚早だ。未知のメカニズムが働いている可能性もある」と強調している。

 では、腫瘍に存在する細菌はどこに由来するのだろうか。Turnbaugh氏は可能性の一つとして、細菌が、腸などの離れた組織から腫瘍まで移動してきたと推測。また、がん種によって細菌叢に違いがある点については「身体の組織やがんの種類ごとにさまざまな微小環境が存在するが、こうした環境の違いが特定の細菌の増えやすさに関係しているのではないか」と考察している。ただし、同じ種類のがんでも常に同じ細菌叢が見られるわけではなく、患者によって細菌叢に個人差があることもこの研究で示されているという。

 Straussman氏は、腫瘍細胞中に存在する細菌が治療効果に影響を与えるのであれば、次の段階としては、そのことを踏まえた上で何ができるのかを検討することになるとし、「今後、研究を重ねていくことで、腫瘍細胞中の細菌を“操作”してがんの治療効果を上げていくことができるかもしれない」と話している。一方、Turnbaugh氏は「腫瘍細胞中の細菌が腸内細菌由来であることが判明した場合、腸内環境の改善で腫瘍内の細菌叢を改変できるかもしれない」と期待を示している。

[2020年5月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら