畜産がヒトの感染症リスクになる可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/05/26

 

 抗菌薬を多用するといった集約的な畜産業の慣行が、ヒトの感染症リスクを高めると、英国の研究者が警告を発している。畜産業で飼育される動物は、その個体数が多いことに加え、遺伝的多様性が低いことも感染症リスクに関係しているという。英バース大学ミルナー進化センターのSamuel Sheppard氏らの研究グループが、カンピロバクタージェジュニ(C. jejuni)という細菌の進化について研究を進める中で明らかになった。詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」5月4日オンライン版に掲載された。

 C. jejuniはトリやブタ、ウシの糞便中に含まれている細菌。富裕国におけるヒトの胃腸炎の主要原因の一つとして、主に畜牛が媒介するC. jejuniが知られている。畜牛の20%の糞便中に3万cfu/g(1gに3万個)の濃度でC. jejuniが存在すると考えられている。C. jejuniがヒトの疾患を引き起こす頻度は、大腸菌やサルモネラ菌、リステリア菌の合計の3倍に上るとされている。

 「地球上には推定15億頭の畜牛がいる。それぞれが1日約30キロの糞便を排出する。その約20%にこの菌が含まれているとすると、毎日30京個ものC. jejuniが排泄されていることになる。これは公衆衛生上の莫大な潜在的リスクである」とSheppard氏は述べている。

 ヒトは、C. jejuniに汚染された肉を食べることでこれに感染し、出血性の下痢を発症する。基礎疾患がある場合には重症化することがあり、健康が長期的に損なわれるケースもある。

 今回の研究では、農薬が多用された結果として生じている、抗菌薬に強い耐性を示すようになったC. jejuniの遺伝的進化を調べた。その結果、20世紀の急激な畜牛数の増加に伴って、畜牛特異的な細菌株が出現したことが明らかになった。

 畜牛の餌や、解剖学・生理学的変化も、C. jejuniがヒトへ容易に感染するような遺伝的変化につながった可能性があるという。さらに、動物の国境を越えての移動や集約的な飼育方法が、この細菌の世界的拡散につながったと、著者らは付け加えている。

 「過去数十年間で、野生動物からヒトへと宿主を変えたウイルスや細菌がいくつか出現している。HIVはサルから、H5N1インフルエンザはトリからであり、現在流行している新型コロナウイルスはコウモリからではないかと疑われている。今回の研究は、環境の変化に加えて家畜との接触機会の増加によって、動物由来の微生物がヒトの感染症として拡大していることを示している」とSheppard氏は述べている。

 同氏は今回の研究結果の影響について「この現状は、農業にはより大きな責務があることへの理解を促す警鐘と言える。その理解によって、感染症が突然アウトブレイクする将来的なリスクを抑制することができる」と語っている。

[2020年5月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら