米国で自殺念慮や自傷行為による救急外来受診が増加

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/02/24

 

 米国では、自殺念慮や自傷行為により救急外来(ED)を受診する人の数が増加傾向にあることが、米疾病対策センター(CDC)のEpidemic Intelligence Service(EIS)のMarissa Zwald氏らの分析から明らかになった。研究チームによると、その数は2017年から2018年にかけて25.5%増加していたという。この報告書は「Morbidity and Mortality Weekly Report」1月31日号に掲載された。

 Zwald氏らは今回、CDCの全米症候群サーベイランスデータ(National Syndromic Surveillance Program;NSSP)を用い、2017年1月から2018年12月までの2年間に自殺念慮や自傷行為を理由にEDを受診した10歳以上の男女のデータを解析した。

 その結果、この期間における米国内のED受診件数は約1億6300万件で、そのうち212万3,614件が自殺念慮や自傷行為による受診だったことが分かった(ED受診10万件当たり1,300.6件)。同期間内に、自殺念慮などによるED受診率は25.5%増加しており、1カ月当たりでは平均1.2%の増加であった。

 年齢に着目すると、女性では20~39歳以外の全ての年齢層で、男性では全ての年齢層で、自殺念慮などによるED受診件数の増加が認められた。特に増加が顕著だったのは、10~19歳の男児(62.3%増)および女児(33.7%増)だった。また、この年齢層の男女には、自殺念慮などによるED受診件数に季節変動が見られ、夏期に最も少なくなることが分かった。さらに、地域別に見ると、中西部(33.8%増)や北東部(16.0%増)、西部(13.3%増)で受診率の有意な増加が認められた。

 こうした結果について、米バトン・ルージュVAシステムの自殺予防コーディネーターであるApril Foreman氏は、「驚きはなかった」と話す。同氏は今回の報告書には関与していないが、「我々のような専門家のサービスが十分に活用されていないということではない。ただ、ケアを受けるまでの待ち時間が長過ぎるのだ」と問題点を指摘する。そのため、危機的な状況に陥ったときに、精神医療を受けられる数少ない場所の1つとしてEDを受診する人の数が増えているとの見方を示している。

 Zwald氏らによると、自殺者数は劇的に増加しているとはいえ、自殺の高リスク者に占める自殺者の割合は数パーセントに過ぎない。そのような高リスク者の多くがEDを受診しているのだという。Foreman氏も、米国には自殺の高リスク者が数百万人もいて、毎年約5万人が自殺によって命を落としていると説明し、「米国では毎年、数百万人もの人が自殺を図っているが、希死念慮から自傷行為に及ぶ人の数はさらに多く、1000万人に達すると推定されている。こうした苦しみを抱えている人たちを放置しておいてはならない」と訴えている。

 このような現状についてZwald氏は「自殺を予防するには、包括的かつ多部門によるアプローチを通じて、個人レベルだけでなく、人間関係や地域および社会レベルでリスクに対処していくことが必要だ」と述べている。

 一方、Foreman氏は「自殺者増加の根本原因は明確には分からない」とした上で、「自殺について現時点で分かっているのは、主要な死因の中で積極的な研究資金が提供されていない唯一のものであるという点だけだ」と指摘。また、自殺念慮などに対しては標準的な治療法がなく、医学教育の場においても研修の機会は全くないか、あっても不十分であること、EDを受診した自殺の高リスク者に対する退院後のフォローアップもほとんどなされていないことなどを問題点として挙げている。なお、同氏によると、最も自殺企図リスクが高いのは、退院後3カ月間であるという。

 こうした状況を踏まえ、Foreman氏は「今後、さらなる研究が望まれるとともに、研修を受けた精神医療従事者を増やし、誰もが専門的なケアを受けられるようにする必要がある。また、この危機的な状況についての国民の意識を高めなくてはならない」と話している。

[2020年1月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら