ベスビオ山噴火の犠牲者の脳は高温でガラス化

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/02/24

 

 西暦79年に発生したイタリアのベスビオ山噴火による犠牲者の一人は、極度の高温により脳がガラス状に変化していたとする研究結果を、フェデリコ2世・ナポリ大学(イタリア)のPier Paolo Petrone氏らが報告した。同氏らが、犠牲者の頭の中に発見したガラス状の塊を調べたところ、ヒトの脳組織に特徴的な複数のタンパク質や毛髪由来の脂肪酸が見つかったという。詳細は、「New England Journal of Medicine」1月23日号に掲載された。

 西暦79年のベスビオ山噴火は、詳細な記録が残る最古の火山噴火とされている。古代ローマの政治家・文人の小プリニウスが、約30km離れた場所からこの噴火を目撃し、噴火に伴い生じた地震や火山灰雲、津波などに関する詳細な記述を残しているからである。この噴火で消滅した都市として著名なポンペイでは、建物の屋根以外の全てが、3mほど降り積もった火山灰、火山塵、噴石に埋もれたとされる。ヘルクラネウム(現エルコラーノ)も同様に、噴火により約23mもの厚さの火山灰や土に覆われて失われた都市である。噴火時のヘルクラネウムの人口は約5,000人だったとされている。

 Petrone氏は、1990年代半ばからベスビオ山噴火による犠牲者の研究を続けている。今回、同氏らは、1960年代にヘルクラネウムで発見された一人の犠牲者の遺体の調査を依頼された。小さな部屋の中で木製のベッドに横たわった状態で埋まっていたその犠牲者は、皇帝崇拝のための施設の番人をしていたと見られ、骨の分析から20代半ばの若い男性であると推定された。同氏らが念入りに調べると、頭の内部に黒く光るものが見つかった。「ガラスのような小さな黒い断片で、黒曜石に似ていたが、明らかに黒曜石よりも脆かった」と同氏は話す。

 Petrone氏は、この黒い断片は男性の脳が「ガラス化」したものだと考えた。ガラス化とは、生体組織が高熱で焼かれた後、急速に冷やされた場合に、ガラス状に変化する現象のことである。分析の結果、この黒い断片には、脳や毛髪由来のタンパク質や脂肪が含まれていることが分かった。「ガラス化が自然界で起こることはまれであり、特に考古学の分野で見つかることは非常に珍しい。だが、我々の分析結果は、この番人の脳が、彼に死にもたらした火砕サージによりガラス化したことを裏付けていた」と同氏は語る。

 今回発見されたガラス化した脳の断片は、ヘルクラネウムの人たちが急激な速さで襲ってきた火山灰や高温ガスにより即死したことを示すエビデンスに加えられるものだとPetrone氏は結論付けている。過去の研究では、犠牲者は火山灰などに喉を詰まらせて死んだものと考えられていた。その上で、同氏は「研究結果は、火山噴火リスクを評価する上で非常に重要だ。結果が示しているのは、当時の人々が建物の中に避難しても高温に耐えられなかったということであり、これは、ベスビオ山噴火というリスクを抱えている現在のナポリ県に住む300万人の住民にとっては明確な意味を持つ問題だ」と話している。

[2020年1月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら