超音波によりがん細胞を選択的に破壊

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/01/28

 

 まだ初期段階ではあるが、健康な細胞に悪影響を与えることなくがん細胞を死滅させることができる低強度超音波の技術を、米カリフォルニア工科大学および米シティ・オブ・ホープ・ベックマン研究所の研究者たちが開発したとする報告が発表された。「今回の研究で実証された新しいがん治療では、がん細胞が特別な分子バイオマーカーを持っている必要はなく、また標的とするがん細胞と正常な細胞を区別する必要もない」と、研究論文の筆頭著者で同大学のDavid Mittelstein氏は述べている。研究結果の詳細は、「Applied Physics Letters」1月7日オンライン版に掲載された。

 集束超音波により腫瘍を破壊する治療法はすでに用いられており、たいていは、高強度の超音波ビームによって細胞を加熱して破壊するか、超音波を照射する前に造影剤を注入するかを方法として用いている。しかし、熱により正常な細胞まで影響を受けることがあり、また、造影剤はごく一部の腫瘍に対してしか有効ではない。

 今回、研究チームは、がん細胞と健康な細胞では物理的特性が異なるため、低強度の超音波に対する反応も違っており、それを利用すれば、がん細胞を選択的に死滅させることができるという仮説を立て、それを検証した。その結果、低強度の超音波は、ある特定の周波数であれば、がん細胞の細胞骨格を破壊し、かつ近傍の正常細胞にはダメージを与えないということが分かった。具体的には、低強度の超音波を、標的がん細胞に対し、周波数0.5~0.67MHz、照射時間20ms超で照射するというもので、この方法により、正常な免疫細胞や赤血球に事実上影響を与えることなく、乳がん、大腸がん、白血病の細胞モデルを破壊することに成功した。

 がん細胞をその物理的特性(特定の周波数の超音波に脆弱性を有する)に基づいて選択的に死滅させることを研究する「oncotripsy」と呼ばれる分野が最近になって現れてきたが、今回の研究は、oncotripsyにおける新たなる前進といえる。

 Mittelstein氏は「当てる超音波の周波数を変えるだけで、がん細胞と正常細胞の反応の仕方に劇的な差が認められた」と、米国物理学会(AIP)のニュースリリースの中で説明し、「正確なメカニズムについては検討すべきこともまだ多いが、今回得られた知見は非常に有望なものだ」と付け加えている。

 Mittelstein氏らは、今回の研究をきっかけとしてoncotripsyに関する研究が進み、いずれは化学療法、免疫療法、放射線療法、外科手術と並んで用いられるがん治療となることを期待しているという。

[2020年1月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら