バイスタンダーによる応急手当が心停止者の命を救う

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/01/20

 

 病院外で心停止を起こした米国人の生存率はわずか8%である。しかし、心停止の発生を察知して心肺蘇生(CPR)を行うことができるバイスタンダー(救急現場に居合わせた人)の数が増えれば、この数字は大いに改善する可能性があることが、バージニア大学の救急医William Brady氏らの研究で示された。研究の詳細は、「New England Journal of Medicine」12月5日オンライン版に掲載された。

 Brady氏は、広範囲にわたる医療訓練を受けていなくても、心停止を起こした人の命を救うためにできることとして、次の3つを挙げる。

1)意識消失、脈拍の消失、呼吸停止といった心停止の兆候を素早く察知し、緊急ダイヤルで通報する。
2)胸骨圧迫によるCPR(心臓マッサージ)を行う。
3)必要に応じてAED(自動体外式除細動器)を用いて心臓を蘇生するために電流を流す。

 アメリカ心臓協会(AHA)は、反応がなく呼吸が正常でない場合、バイスタンダーは心停止を疑いCPRを行うべきであるとしている。現在、AHAをはじめとする主要団体が推奨するのは、人工呼吸を伴わない胸骨圧迫のみのCPRである。またAHAは、胸骨圧迫を行う際はディスコミュージック「ステイン・アライブ(Stayin' Alive)」で刻まれるビートのように一定のリズムで圧迫するのが良いとしている。

 Brady氏らによると、院外心停止になった人では、CPRや除細動の実施が1分遅れるごとに生存率が7~10%ずつ下がる。院外心停止患者10,000人以上に関する2010年の調査では、バイスタンダーによるCPRを受けた人の生存率は22.1%であったのに対し、受けなかった人では7.8%であった。

 一方、バイスタンダーによるAED使用のベネフィットは多くの研究で示されているという。例えば、院外心停止患者50,000人以上を対象にした2018年の研究では、バイスタンダーによりAEDを実施された人の生存率は66.5%であったのに対し、救急隊員が到着してから心臓に電気ショックを与えられた人の生存率は43%であったとしている。

 バイスタンダーが心停止者に救命処置を行うにあたり大きな障害となっているのは、一般の人が救命講習を受けておらず、特にCPRのやり方を知らない点にある。Brady氏らは、米国でのCPRの訓練受講生は年間わずか2.4%にとどまると推定されていることを挙げ、院外心停止者の生存率を上げるためには、より多くの一般の人が、特にCPRの訓練を受ける必要があると強調する。そして、それを実現するためには、短期間で終わるトレーニングセッションの提供や、心停止患者が近くにいることを訓練受講者に知らせるスマートフォンアプリの開発といった取り組みが必要だと説明する。

 その上でBrady氏は、「心停止への対応を次の段階に進めていく上で重要になるのは、病院での新たな治療法でも救急隊員による処置でもない。救急隊員が到着する前に、そして病院へ搬送されるはるか以前に、バイスタンダーが心停止者に行うCPRやAEDといった応急手当である。バイスタンダーがこうした手当を行うことで、心停止になった人は元の生活に戻り家族と過ごせるようになる」と話している。

[2019年12月24日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら