特殊な染料で皮膚にワクチン接種を記録

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2020/01/17

 

 ワクチン接種時に、肉眼では見えない特殊な染料を皮膚に注入することで、紙や電子形式のワクチン接種記録の代わりにできるかもしれない。そんな可能性を示す新たな研究が公表された。研究を行った米ライス大学のKevin McHugh氏は「この技術は、電子カルテはもちろん、紙の記録すらない、あるいはあっても頻繁に紛失が起きる地域におけるワクチン接種に役立つ。この技術を使えば、特に小児のワクチン接種歴を迅速かつ匿名性を維持したまま確認することができるようになるからである」と述べている。この報告は「Science Translational Medicine」12月18日号に掲載された。

 McHugh氏は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)所属時に、ワクチン接種の際に、皮下に同時注入できる染料を同僚とともに開発。量子ドットと呼ばれるナノ結晶から成るこの染料は、銅をベースとしたもので、肉眼では見えないものの、赤外線フィルターを取り除いたスマートフォン(スマホ)で検知できる。ドットの直径はわずか4ナノメートルほどで、直径20ミクロンの生体適合性微粒子に包まれている。

 染料は、従来の注射器と針ではなく、マイクロニードル(微細な針)を並べてシート状にしたパッチを用いて注入する。マイクロニードルは、皮膚内で溶解する糖類とPVAと呼ばれる水溶性ポリマー、量子ドットおよびワクチンからできている。パッチを皮膚に貼ると、長さ1.5mmの針が部分的に溶解し、約2分以内にワクチンと染料が放出されるという仕組みである。パッチは、ワクチンの種類に応じて皮膚に違った模様を描くようカスタマイズできる。

 ヒトの遺体の皮膚を用いて日光曝露をシミュレーションする試験を行った結果、この染料の量子ドットパターンは最長5年間、スマホのカメラで確認できることが分かった。ラットを用いた試験では、マイクロニードルパッチでポリオワクチンとともに染料を接種したマウスの免疫応答は、従来の注射によるワクチン接種を受けたマウスとほぼ同等であることが示された。

 研究論文の著者の一人である同大学統合がん研究所のAna Jaklenec氏は、「多くの病原体から身を守るには、いくつものワクチンを接種する必要がある。しかし、開発途上国の一部の地域では、誰がワクチン接種を受けたのか、追加接種が必要かどうかについてのデータがないため、予定通りにワクチン接種を行うことが非常に難しい場合がある」と話す。

 麻疹や風疹などのワクチン接種用のマイクロニードルパッチは、現在、開発段階にあるが、今回の研究では、この染料をパッチ型ワクチンに容易に組み込めることが示された。Jaklenec氏は、「マイクロニードルパッチに染料を組み込んでも、ワクチンの効果や染料の検出に影響を及ぼさないことが確認された」と述べている。

 研究グループは、ヒトを対象とした試験を実施する前に、さらに安全性試験を重ねていく予定だという。ただし、動物を用いた研究の中には、ヒトを対象に実証できないものもある。

[2019年12月20日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら