糖尿病患者が水面下で治療必需品を授受――医療費が高騰する米国の報告

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/01/20

 

 米国では医療費の高騰や保険給付制限の影響を受け、治療薬や必需品を求めて水面下のマーケットを利用している糖尿病患者が少なくないという実態が、米ユタ大学看護学のMichelle Litchman氏らの研究により明らかになった。詳細は「Journal of Diabetes Science and Technology」12月4日オンライン版に掲載された。

 Litchman氏は「過去10年でインスリンの価格が高騰している。保険料や保険の免責額の高騰と相まって、より深刻な状況となっている」と指摘。「糖尿病の患者は健康でいたいと思うがゆえに、以前とは異なるルートでインスリンや糖尿病治療の必需品を手に入れようと必死になっている」という。

 若年性糖尿病研究財団(JDRF)のCynthia Rice氏は、「1型糖尿病では1日に複数回のインスリンが必要となる。必要なインスリンが手に入らないとはどういうことか、糖尿病でない人が理解するのは難しい」と述べている。米国糖尿病協会(ADA)によると、米国におけるインスリンの平均価格は2002~2013年にかけて約3倍になっている。同氏は「政策転換が必要である。医療政策を策定する議会やインスリンのメーカーは、インスリンを救命医薬品として取り扱う必要がある」と指摘している。

 Litchman氏らの研究グループは、糖尿病の水面下マーケットを利用している人を対象にオンラインで聞き取り調査を行った。回答した約160人のうち、約100人が糖尿病患者で、40人は糖尿病患者の配偶者や保護者であり、その他は不明だった。大多数が40代の白人女性で、多くが大卒であり、所得には開きがあった。

 回答者の56.6%がインスリンやその他の物品を他人に提供したことがあると回答した。34.6%は物品を他人から受け取ったことがあった(複数回答を含む)。実際に水面下マーケットで物品を購入したことがあると回答したのは15.1%にとどまった。水面下マーケットを利用する理由としては、糖尿病治療に伴う経済的ストレスが主な要因であることが分かった。

 こうした授受・売買にはリスクがある。インスリンは冷蔵保存されていないと約1カ月で使えなくなるほか、血糖測定試験紙やインスリンポンプの備品なども有効期限を過ぎていたり、内蔵電池が切れていたりすることもある。ただし、今回の調査でこのような問題を経験したと報告したのは3人のみだった。

 Litchman氏は、こうした状況は糖尿病に限らず、喘息治療のための吸入薬やエピネフリン注射薬(アレルギーによる緊急時の薬)、オピオイドの過剰摂取に用いられるオピオイド拮抗薬など、緊急性の高い救命医薬品でも起こる可能性があると指摘している。

[2019年12月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら