ありふれた降圧薬で自殺リスクが高まる?

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HealthDay News

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 ありふれた降圧薬の使用で自殺リスクが高まる可能性があることが、セント・マイケルズ病院(カナダ)のMuhammad Mamdani氏らの研究で明らかになった。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を使用している患者は、ACE阻害薬を使用している患者と比べて、自殺により死亡するリスクが有意に高いことが分かった。ただし、今回の研究では因果関係は明らかになっておらず、同氏らは結果の慎重な解釈を求めている。結果の詳細は「JAMA Network Open」10月16日オンライン版に掲載された。

 ARBとACE阻害薬はいずれも、血管を収縮させる「アンジオテンシンII」と呼ばれるホルモンの働きを阻害することで降圧効果を発揮する。例えば、ARBは、アンジオテンシンIIが受容体と結合するのを阻害するのに対し、ACE阻害薬は体内のホルモン産生量を減らすように作用する。これらの降圧薬は、高血圧や慢性腎臓病(CKD)、心不全、糖尿病の治療に世界中で汎用されている。

 Mamdani氏らのチームは今回、ARB使用と自殺リスクとの関連を示唆した過去の研究に着目。1995~2015年のカナダの診療報酬請求データベースを用いて、66歳以上の患者を対象とした症例対照研究を行った。

 ARBまたはACE阻害薬を処方されてから100日以内に自殺により死亡した964人を症例群とし、年齢や性などをマッチさせた、いずれかの降圧薬を処方された3,856人を対照群として比較した。両群の年齢中央値は76歳で、約80%は男性だった。その結果、ARB使用群では、ACE阻害薬使用群と比べて自殺による死亡リスクが統計学的に有意に高いことが分かった(調整オッズ比1.63、95%信頼区間1.33~2.00)。

 Mamdani氏によると、特に気分障害になりやすい患者では、自殺リスクはさらに高まる可能性があるという。同氏は「ARBは脳内のアンジオテンシンII濃度を上昇させる可能性がある。このことが気分障害に関連している可能性があり、自殺企図の引き金となることが考えられる」と説明している。

 今回の研究は因果関係を証明するものではなく、今後さらに研究を重ねる必要があるという。Mamdani氏は「今すぐARBの処方を見直す必要はない」としているが、「もし自分が患者として選ぶなら、ARBよりもACE阻害薬を選ぶだろう」と付け加えている。

 一方、今回の研究には関与していない米バージニア大学医学部名誉教授のRobert Carey氏は「現時点でアンジオテンシンIIが気分障害や自殺企図と関連するという科学的根拠はない」と主張する。同氏は、自殺リスクには他にもさまざまな要因が関与している可能性があるとし、「例えば、一部の患者が使用していた抗うつ薬やベンゾジアゼピン系薬が自殺率に影響した可能性がある」との見方を示している。

 同じく専門家の一人で、米マウント・サイナイ病院の心臓病専門医であるSuzanne Steinbaum氏は、この研究では物質乱用や精神病による入院歴、救急科の受診歴などが評価されていない点を指摘。「今回の研究結果がARBからACE阻害薬に切り替えるべき根拠になるとは考えていない。背景にあるメカニズムは不明で、もっと基礎的な研究が必要だ」と同氏は述べている。

[2019年10月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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