致死的な不整脈治療に放射線療法が有望

提供元:HealthDay News

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公開日:2019/09/30

 

 不整脈の一種で死に至る危険性もある心室頻拍(VT)患者を対象とした臨床試験で、高線量の放射線を標的部位にのみ照射する新たな治療法が、2年間にわたってVTの再発を抑制したことが示された。試験を率いた米ワシントン大学セントルイス校放射線腫瘍学・心臓病学准教授のClifford Robinson氏が米国放射線腫瘍学会(ASTRO 2019、9月15~18日、米シカゴ)で発表した。

 VTは、心臓の下部にある心室の脈拍が異常に早くなることで起こる疾患だ。従来の治療が奏効しないVTに対する治療選択肢は限られているが、Robinson氏によれば、この新たな治療法によってVTの回避やQOLの向上がもたらされる可能性が出てきた。しかも、この治療法は1回の外来治療で済むのだという。

 心臓突然死で死亡する人の多くは、心臓が止まる直前にVTを経験する。突然死は防げてもVTは再発する可能性があるため、心臓の動きを正常に戻す除細動器とペースメーカーを植え込む必要がある。しかし、こうしたデバイスが発する電気ショックには痛みを伴い、患者のQOLにも影響するといったデメリットがある。それに対し、新しい放射線療法では、植え込んだデバイスから電気ショックが発せられる回数が減少することが期待できると、Robinson氏は説明する。

 Robinson氏らによる臨床試験は、薬物療法やカテーテルアブレーションなどの従来治療がいずれも奏効せず、治療選択肢が残されていない19人の患者を対象に実施された。カテーテルアブレーションは不整脈の発生源となっている心臓の異常な部位を焼灼する治療法で、侵襲性が高く全身麻酔下で数時間かかる可能性がある。それでも約半数の患者は効果が得られないという。

 一方、放射線療法は侵襲性が低く、治療も10分かからないため、患者は治療を受けたその日のうちに帰宅できる。なお、がんの放射線療法と同様に、VTへの放射線療法でも、電気生理学的なマップを用いて放射線を照射する標的部位を定める。Robinson氏は「放射線療法がVTを抑制する機序は明らかになっていない」とする一方で、「がんの放射線療法を行う医療施設では、VTに対する放射線療法も行えるはずだ」と話す。

 Robinson氏らは以前、同じ19人の患者において、この放射線療法を実施から6カ月後までのVT発生率が94%低下し、生存率も改善したことを報告している。今回はその後の追跡結果が明らかにされ、1回の治療から2年後までのVTの発生率も80%低下したことが示された。また、生存率は、治療から1年後の時点では74%、2年後の時点では52%だった。

 治療後2年間に死亡した9人中6人の死因は心不全やVTなどの心臓に関連していた。残る3人は心臓には関連しない原因(事故や心疾患治療薬のアミオダロンによる副作用、膵臓がん)で死亡していた。また、生存している患者のうち2人で炎症による心膜液の貯留、1人で手術を必要とする心臓と胃の間の瘻孔がみられた。

 今回の報告を受け、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のByron Lee氏は「この結果は将来、不整脈治療に革命をもたらすかもしれない」と期待を寄せるが、「検討され始めてから間もなく、長期的なリスクは明らかになっていない」とした上で、「現時点では、この方法はVTのような重篤で致死性の高い不整脈の患者に限定すべきだ」と話している。

 今回の臨床試験は、資金の一部を米国立衛生研究所(NIH)の助成を受けて実施された。なお、学会発表された研究は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

[2019年9月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら