末梢動脈疾患の症状緩和に「温浴」が有用か

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HealthDay News

末梢動脈疾患の症状緩和に「温浴」が有用かのイメージ

 手足の血管に動脈硬化が起こり、血管の狭窄や閉塞を引き起こして血流が悪くなる末梢動脈疾患(PAD)の重要な治療法の一つに運動療法がある。今回、オタゴ大学(ニュージーランド)のAshley Akerman氏らが実施した小規模研究で、20~30分程度の温浴後に軽い運動を行うだけでも、より長時間の運動療法と同程度の症状軽減効果が得られることが分かった。ただ、この結果について、一部の専門家からは慎重な解釈を求める声も上がっている。研究の詳細は「American Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology」6月1日号に掲載された。

 米国のPAD患者数は約850万人に上るが、このうち約4人に1人は自分にPADがあることに気づいていないとみられている。米疾病対策センター(CDC)によると、PADの主な症状には、歩行時の足の痛みやしびれ(間欠性跛行と呼ぶ)、手足の筋肉量の低下や冷えなどが挙げられるほか、治りにくい痛みや潰瘍がみられることもある。その治療では、定期的な身体活動と監視下で行う運動療法が重要な治療法として位置付けられている。また、喫煙者は禁煙することが極めて重要であり、血圧や脂質、糖尿病の管理も行われる。

 Akerman氏らは今回の研究で、計22人のPAD患者を対象に、週に1~2回、90分間のウオーキングとレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を監視下で行う群(運動療法単独群、11人)と、週に3~5回、プールで約39℃のお湯に肩までつかった状態で20~30分間の温浴をした後に、15~30分間のランニングや腕立て伏せなどの自重トレーニングを行う群(温熱療法併用群、11人)にランダムに割り付けて12週間観察した。

 その結果、運動療法単独群と温熱療法を併用した群ではいずれも歩行距離が延長し、血圧が下がったが、それらの効果に両群間で差は認められないことが分かった。

 ただし、今回の報告を受けて、一部の専門家らからは「温熱療法を行えば、その後は短時間の運動療法で済むと結論づけるのは時期尚早だ」との声が上がっている。そのうちの一人で、米パデュー大学のBruno Roseguini氏は、この研究では温熱療法を併用した群でも15~20分の運動を行っていたことに言及し、「温浴による温熱療法そのものが運動療法の代わりになるのかどうかは不明だ」としている。また、介入の頻度も運動療法単独群では平均で週1回だったのに対し、温熱療法を併用した群では平均で週4回だったとして、「同じ条件下での比較が行われていない」と同氏は指摘している。

 一方、米ニューヨーク・プレスビテリアン/ワイルコーネル医療センターのDarren Schneider氏は「歩行時に痛みがあると、歩きたくなくなるものだ」とした上で、温熱療法は運動療法の代わりにはならなくても、PAD患者が歩くのを手助けする手段の一つになり得るとの見方を示している。

 また、米レノックス・ヒル病院の末梢血管インターベンション医であるYi-Ming Yang氏は「今回の研究では、温熱療法に監視下での運動療法を上回る効果は示されなかったが、温熱療法を併用した群でも歩行能力が平均で10%改善し、運動療法単独に匹敵する効果が得られた」と説明し、間欠性跛行の症状軽減に温熱療法を用いるというアイデアは「刺激的だ」と話している。

 ただし、いずれの専門家も、今回の研究はわずか22人の患者を対象とした小規模なものであり、より大規模な研究で結果を検証する必要があるとしている。また、前出のRoseguini氏は、温熱療法は専門家の指示のもとに行うことが望ましいと強調。「もし自分で行う場合には、特に心臓病がある人は温浴により血圧が急激に低下し、めまいや転倒を引き起こす危険があるため、慎重に行う必要がある」と注意を呼び掛けている。

[2019年6月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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