日本語でわかる最新の海外医学論文|page:613

糖尿病リスクに人種間格差はあるか?/JAMA

 米国において中年期男女の糖尿病リスクは、黒人のほうが白人に比べ有意に高いが、青年期の体格指数や本人・親の教育レベルといった修正可能なリスク因子で補正後は、人種間のリスク格差は認められなくなることが示された。米国・ノースウェスタン大学のMichael P. Bancks氏らが、1985~86年の期間から米国で行われている冠動脈疾患リスクに関する観察研究「CARDIA」(Coronary Artery Risk Development in Young Adults Study)の参加者4,251例のデータを解析し明らかにしたもので、JAMA誌2017年12月26日号で発表した。

非糖尿病のハイリスク高血圧患者、他の降圧薬追加の効果は/BMJ

 非糖尿病の心血管ハイリスク患者において、服用中の降圧薬レジメンへの新規クラスの降圧薬の追加投与は、収縮期血圧と主要心血管イベントリスクを大きく低下することが示された。この結果は、適応による交絡を補正後に示されたもので、追加投与による収縮期血圧への効果は、服用中降圧薬の全レベルおよび全患者サブグループ間で保持されることも確認された。米国・ミシガン大学のAdam A.Markovitz氏らが行った「SPRINT試験」の2次データ解析の結果で、これまでの観察試験では、降圧薬を追加投与してもベネフィットが減少することが示されていた。ただし、そうした結果は適応による交絡の可能性があることも示唆されていた。BMJ誌2017年12月22日号掲載の報告。

緑内障の長期点眼、マイボーム腺機能に注意を

 抗緑内障薬の負荷が高い緑内障患者は、涙液層が不安定で、重度のマイボーム腺脱落が認められることを、台湾・Kaohsiung Chang Gung Memorial Hospital/長庚大学のWan-Hua Cho氏らが報告した。著者は、「眼圧降下薬の長期点眼を行っている緑内障患者では、マイボーム腺疾患の観察がとくに必要である」とまとめている。Journal of Glaucoma誌オンライン版2017年12月13日号掲載の報告。

チェックポイント阻害薬でOSを得られる2次治療の肺がん患者

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)2次治療における、チェックポイント阻害薬の生存ベネフィットに関する臨床的・分子的な予測因子はどのようなものか。この研究は、チェックポイント阻害薬とドセタキセルの効果の関係を、全体的な観点および臨床病理的特徴によって定義されたサブグループにおいて予測するため、システマティックレビューが行われた。JAMA Oncology誌オンライン版2017年12月21日号掲載のオーストラリア・シドニー大学による研究。

黄色ブドウ球菌菌血症へのリファンピシン併用、効果は?/Lancet

 黄色ブドウ球菌菌血症の成人患者において、標準抗菌薬治療にリファンピシンの補助的投与を行っても、全体的なベネフィットは変わらないことが確認された。英国・オックスフォード大学のGuy E Thwaites氏ら英国臨床感染症研究グループ(UKCIRG)による多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ARREST試験」の結果として、Lancet誌オンライン版2017年12月14日号で発表された。黄色ブドウ球菌は、世界中で重症市中感染症や院内感染の原因としてよくみられる。研究グループは、リファンピシンの補助的投与は、黄色ブドウ球菌の死滅を早め、原病巣や感染血液を速やかに除菌し伝播や転移のリスクを減じることで、細菌学的定義の治療失敗や菌血症の再燃、死亡を減らせるのではないかと仮説を立て、検証試験を行った。

スクリーニング実施で高齢女性の骨折リスクが低減/Lancet

 高齢女性の骨折リスクを評価する地域ベースのスクリーニングプログラムは、骨折全般の発症は抑制しないものの、大腿骨近位部骨折のリスク低減には有効であることが、英国・イースト・アングリア大学のLee Shepstone氏らが実施したSCOOP試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年12月15日号に掲載された。骨粗鬆症およびその関連骨折については、有効な評価法や薬物療法があるが、英国では現在、骨折リスクのスクリーニングは提唱されていない。

出血と血栓:原病が重ければバランスも難しい(解説:後藤信哉氏)-793

自分の身の周りにもがん死が多いので、がんは特筆に重要な疾患である。日本人は幸いにして静脈血栓塞栓症が少ない。静脈血栓塞栓症を契機にがんが見つかることも多い。本論文の対象であるCancer Associated Thrombosis (CAT)は日本ではとくに重要である。がん細胞が血栓性の組織因子を産生する場合、がん組織が血管を圧迫して血流うっ滞が起こった場合など、血栓にはがんと直結する理由がある。CATでは、血栓の原因となるがんの因子の除去が第一に重要である。

統合失調症と自閉スペクトラム症における白質代謝率の増加

 統合失調症や自閉スペクトラム症は、しばしば白質の障害を有する。統合失調症におけるさまざまな白質領域における代謝率、脳灌流、基礎活動の上昇が、数々の研究で報告されているが、自閉スペクトラム症では研究されていなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のSerge A. Mitelman氏らは、自閉スペクトラム症患者(25例)と統合失調症患者(41例)および健常対照者(55例)の白質代謝率を、定位的に配置された関心領域について幅広く比較するため、18F-FDGポジトロン断層法(PET)を用いて、検討を行った。Brain imaging and behavior誌オンライン版2017年11月22日号の報告。

ヒドロクロロチアジドの使用、非黒色腫皮膚がんと関連

 ヒドロクロロチアジドは、米国および西欧で最も使用頻度の高い利尿・降圧薬の1つであるが、光感作性があり、これまでに口唇がんとの関連が報告されている。デンマーク・南デンマーク大学のSidsel Arnspang氏らの症例対照研究の結果、ヒドロクロロチアジドの累積使用量は、非黒色腫皮膚がん(NMSC)、とくに扁平上皮がん(SCC)リスクの著しい増加と関連していることが明らかとなった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年11月30日掲載の報告。

アテゾリズマブ、既治療の尿路上皮がんでOS延長せず/Lancet

 PD-L1高発現のプラチナ製剤抵抗性の局所進行/転移性尿路上皮がん患者において、化学療法と比較し、PD-L1阻害薬アテゾリズマブによる全生存期間(OS)の有意な延長は認められなかった。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のThomas Powles氏らが、多施設共同無作為化非盲検第III相試験「IMvigor211試験」の結果を報告した。プラチナ製剤併用化学療法後に増悪した、局所進行/転移性尿路上皮がんに対する治療の選択肢はほとんどないが、近年、免疫チェックポイント阻害薬の登場により転移性尿路上皮がんの治療は変化してきていた。Lancet誌オンライン版2017年12月18日号掲載の報告。

ジェネリックとブランド、中枢神経系用薬における自殺や自殺念慮の比較

 これまで、中枢神経系(CNS)に作用するそれぞれの異なるタイプの薬剤は、自殺や自殺念慮のリスク増加と関連しているといわれていた。しかし、CNS用薬のブランド医薬品とジェネリック医薬品との間に、自殺リスクの差異があるかは報告されていない。米国・オーバーン大学のNing Cheng氏らは複数のデータソースを用いて、CNS用薬のブランド医薬品とジェネリック医薬品における自殺の有害事象を比較した。Drug safety誌オンライン版2017年12月2日号の報告。

letermovirは造血幹細胞移植での有力なサイトメガロウイルス感染症発症予防薬となるか(解説:吉田 敦 氏)-792

造血幹細胞移植患者において、サイトメガロウイルス(CMV)は高率に活性化し、肺炎やGVHDを引き起こす。このためガンシクロビルやバルガンシクロビルが予防薬として用いられてきたが、効果が限定的であるうえ、骨髄抑制・回復抑制が問題であった。しかしながらこの2剤に頼らざるをえない状況は10年以上変わっていない。

統合失調症の再発リスク評価のための新規自己報告スクリーニングツール

 統合失調症患者の再発評価(RASP:Relapse Assessment for Schizophrenia Patient)は、患者の安定性を評価し、切迫した再発を予測するために、不安と社会的隔離の指標を測定する6つの自己報告スクリーナーとして開発された。米国・UT HealthのDawn Velligan氏らは、RASPの開発と心理測定の特徴について報告した。Clinical schizophrenia & related psychoses誌オンライン版2017年11月22日号の報告。

抗血小板薬3剤併用、脳梗塞急性期への有効性は/Lancet

 虚血性脳卒中(脳梗塞)や一過性脳虚血発作(TIA)の急性期患者における抗血小板薬3剤併用療法は、再発とその重症度を減少させることはなく、大出血リスクは有意に増大することを、英国・ノッティンガム大学のPhilip M Bath氏らが、無作為化非盲検第III相優越性試験「TARDIS試験」の結果、報告した。これまでの検討で、脳梗塞急性期の2次予防として抗血小板薬2剤併用療法は単剤療法より優れていることが示唆されている。3剤併用療法はそれらガイドラインで推奨されている抗血小板療法より有効である可能性があったが、結果を踏まえて著者は、「抗血小板薬3剤併用療法は、日常診療で使用されるべきではない」とまとめている。Lancetオンライン版2017年12月20日号掲載の報告。

PTSD心臓外科医のこだわりと肩すかし(解説:今中和人氏)-791

医療に必要不可欠な輸血療法の歴史は、肝炎やGVHDに代表される輸血後合併症との戦いの歴史でもある。多くの先人・関係者の研究とご尽力により、昨今、上記合併症は激減し、日本赤十字社の公式発表によれば、たとえば肝炎は2012年B型6例・C型ゼロ、2013年B型7例・C型1例、2014年B型2例・C型ゼロである。何よりも私たちは、このことに感謝しなければならない(もちろん、表面化していない症例はあるであろうが)。ただ、まれながら経験あるいは見聞した劇症肝炎やGVHDのすさまじさで、医療者、とくに輸血を頻用してきた心臓外科医はPTSDになっている。上記2つ以外の合併症も、遅発性溶血は1/2,500、急性肺障害1/5,000~10,000、アナフィラキシー8/100,000(いずれも対1単位)と学んでもなお恐れ、無輸血にこだわっている。

1型糖尿病発症予防は見果てぬ夢か?(解説:住谷哲氏)-790

1922年に初めてインスリンが臨床応用されるまで、1型糖尿病は不治の病であった。その後、1型糖尿病のnatural historyが明らかとなり、現在では1型糖尿病発症に至る3つのstageが提唱されている1)。1型糖尿病発症の高リスクグループの同定が可能となったことで、1型糖尿病発症予防の試験がこれまでにいくつか実施されてきた。大規模試験としては、インスリン投与による1型糖尿病発症予防を検討したDiabetes Prevention Trial-Type 1 Diabetes(DPT-1)2,3)と、ニコチンアミドの有効性を検討したEuropean Nicotinamide Diabetes Intervention Trial(ENDIT)4)があるが、残念ながら両試験において結果はnegativeであった。

ADHDの小児および青年における意図しない怪我のリスクとADHD薬の影響

 小児、青年におけるADHDと意図しない身体的な怪我のリスクとの関連を定量化するリスク分析およびこのリスクに対するADHD薬の効果を評価するため薬剤分析について、スペイン・Servicio Navarro de Salud-OsasunbideaのMaite Ruiz-Goikoetxea氏らは、メタ解析を用いたシステマティックレビューを行った。Neuroscience and biobehavioral reviews誌オンライン版2017年11月21日号の報告。

餅による窒息での院外心停止、三が日に集中

 餅は日本における食品窒息事故の主な原因であるが、餅が原因の窒息による院外心停止(OHCA)の疫学はよくわかっていない。今回、大阪府心肺蘇生効果検証委員会のウツタイン大阪プロジェクトにおける集団ベースの観察研究で、窒息によるOHCAの約10%が餅による窒息が原因であり、その25%が正月三が日に発生していたことが報告された。Journal of epidemiology誌オンライン版2017年10月28日号に掲載。