日本語でわかる最新の海外医学論文|page:745

SOCRATES試験:薬剤開発は難しい~良いと示すか、良さそうで終えるかの大きな相違(解説:後藤 信哉 氏)-539

薬剤の適応取得には、薬剤の有効性、安全性の科学的証明が必須と考えるのが世界のルールである。抗血小板薬を長期大量投与すれば出血イベントは増えると予想され、血栓イベントは減ると予想される。当局の認可承認を目指す試験では、過去の標準治療に比較して血栓イベントを減らし、出血イベントに差がないことを示すことが求められる。登録症例数が増えれば、臨床試験にかかるコストは増える。症例登録に時間がかかれば、認可承認されても十分利益を得る前に、薬剤の特許と独占販売権が消失してしまう。薬剤の認可承認を目指す臨床試験は本当に難しい。盲検のキーを開けるまで、試験関係者は胃がただれるほどのストレスであろう。

難治性てんかん患者へのケトン食療法、その有効性は?

 てんかんは、子供および成人の両方に影響を及ぼす脳障害である。1920年代より、難治性てんかん患者のための治療オプションとして、ケトン食療法が確立されている。チリ・Universidad de las AmericasのF Araya-Quintanilla氏らは、難治性てんかん患者における、単独ケトン食療法と他の食事療法を比較した無作為化臨床試験のシステマティックレビューを用い検討を行った。Revista de neurologia誌2016年5月16日号の報告。

重症肺気腫、両側気管支内コイル治療で運動耐性が向上/JAMA

 重症エアトラッピングが認められる肺気腫患者に対し、気管支拡張薬などによる標準的治療に加え両側気管支内コイル治療を行うと、標準的治療のみに比べ、6分間歩行などのアウトカムの改善に有効であることが判明した。一方で、重篤合併症の発生率は、コイル治療群で高かった。米国・ピッツバーグ大学のFrank C. Sciurba氏らが、315例を対象に行った無作為化比較試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、さらなる検討を行い、健康アウトカムへの長期的影響を調べる必要があるとまとめている。JAMA誌2016年5月24・31日号(オンライン版2016年5月15日号)掲載の報告。

75歳以上も降圧目標120mmHgが至適:SPRINT試験サブ解析/JAMA

 75歳以上の非糖尿病高血圧患者について、目標収縮期血圧値を120mmHgとする強化降圧治療を行ったほうが、同140mmHgとした場合に比べ、心血管イベントや全死因死亡のリスクが、いずれも3割強低下することが示された。米国・ウェイクフォレスト大学医学部のJeff D. Williamson氏らが、2,636例を対象に行った多施設共同無作為化比較試験「SPRINT」の結果で、JAMA誌オンライン版2016年5月19日号で発表した。高齢の高血圧患者への至適治療は、議論の的となっていた。

妊娠中のSSRI使用、妊婦や胎児への影響は

 SSRIは、世界中で最も一般的に処方される抗うつ薬である。しかし、うつ病をとくに発症しやすい期間である妊娠中のSSRI使用は、過去数十年に胎児の成長といった安全性の面で患者や医療者における大きな懸念点となっている。カナダ・BC Women's Hospital and Health CentreのSura Alwan氏らは、妊娠中のSSRI使用に関するレビューを行った。CNS drugs誌オンライン版2016年5月2日号の報告。

津波後の移住が心代謝リスク因子に関連

 2011年に起きた東日本大震災の津波被災者を対象に、移住に代表される震災関連の精神的および社会経済的問題とアテローム性動脈硬化症リスク因子の変化との関連を調査した縦断研究が報告された。この研究から、津波後の移住が被災者の体重の増加とHDLコレステロール(HDL-C)値の減少に関連しており、この変化は災害後の長期間にわたる精神的苦痛と社会経済的問題と関連することが示唆された。岩手医科大学の高橋 宗康氏らによるBMJ Open誌オンライン版2016年5月12日号掲載の報告。

ジャガイモは高血圧のリスク?/BMJ

 ジャガイモは、糖質(glycemic carbohydrate)とカリウム(高血圧などの慢性疾患の予防効果のエビデンスがある)の双方を豊富に含むため、高血圧の発症リスクへの影響は不明とされてきた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLea Borgi氏らは、今回、一般的なジャガイモ料理(焼き、ゆで、マッシュポテト)やフライドポテトをよく食べる人は、高血圧の発症リスクが増大するとの研究結果を、BMJ誌オンライン版2016年5月17日号で報告した。米国政府機関は、子供や低所得層へ健康的な食事を提供するプログラムにおいて、当初、ジャガイモなどのでんぷん質野菜に設けられていた制限を、最近、解除している。また、WHOはジャガイモを野菜に含めていないという。

認知症発症リスクが高い酒さ高齢患者

 酒さは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)や抗菌性ペプチド(AMPs)の発現上昇が観察される慢性炎症性皮膚疾患である。とくに、炎症、MMPs、AMPsは、アルツハイマー病(AD)などの認知症を含む神経変性疾患の病因とも関連している。いくつかの臨床観察に基づき、デンマーク・コペンハーゲン大学のAlexander Egeberg氏らは、ADを含むデンマークのレジスタより、酒さと認知症との関連を調査した。Annals of neurology誌2016年6月号の報告。

新生児期の皮膚バリア機能が食物アレルギー発症予測の指標に?

 食物アレルゲンへの経皮曝露が、食物感作/食物アレルギーを引き起こす可能性がある。アイルランド・コーク大学のMaeve M. Kelleher氏らは、経表皮水分蒸散量(TEWL)を指標とした皮膚バリア機能と食物アレルギーとの関連を調べる出生コホート研究を行い、新生児期の皮膚バリア機能障害が、アトピー性皮膚炎の有無にかかわらず2歳時の食物アレルギー発症を予測することを明らかにした。

関節リウマチへのリツキシマブ、TNF阻害薬に非劣性/Lancet

 関節リウマチ(RA)治療の生物学的製剤導入療法として、TNF阻害薬とリツキシマブを比較する、初となる無作為化比較試験が、英国・グラスゴー大学のDuncan Porter氏らにより行われた。有効性、安全性、費用対効果について調べた結果、リツキシマブのTNF阻害薬に対する非劣性が認められたという。Lancet誌オンライン版2016年5月16日号掲載の報告より。

サブプライムローンとEBMの類似性(解説:後藤 信哉 氏)-537

日本語と異なり、英語は決定論的、論理的言語である。日本語で考えるわれわれ日本人は、英語で考える米英人の発想法を完全には理解できない。サブプライムローンを販売した米国の金融会社は、「将来経済は成長する」という前提が正しい限り「サブプライムローンは破綻しない」と人々を説得し、その説得には論理性があったので、多くの人は自分の今の収入以上のローンを抱えた。確かに、100年の視点でみれば「経済は成長する」のかもしれないが、数年の規模では成長したり衰退したりすることを、われわれは感覚的に実感している。日本語の論理性は英語ほど精緻ではないので、日本人であれば自分の収入に見合わない借金は「なんか怖い」と感じる人が多いだろう。日本語は論理性では英語に劣るが、その分、日本語で考えるわれわれは米英人より直感力が優れている。

抗精神病薬の血漿中濃度とEPS発現

 抗精神病薬は、錐体外路系副作用(EPS)など、さまざまな望ましくない運動反応を誘発することがある。広く認識されているEPSの根底にある薬理学的メカニズムとして、線条体のD2受容体占有率がある。しかし、EPSの薬物動態の背景についてはわかっていない。ドイツ・アーヘン工科大学のGeorgios Schoretsanitis氏らは、リスペリドン(RIS)を処方され、EPSのためにビペリデンを用いた患者の薬物動態パターンをin vivoで分析した。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2016年5月10日号の報告。