日本語でわかる最新の海外医学論文|page:67

妊娠中のビタミンD摂取は子どもの骨を強くする

 妊娠中のビタミンDの摂取は、子どもの骨と筋肉の発達に良い影響をもたらすようだ。英サウサンプトン大学MRC Lifecourse Epidemiology CentreのRebecca Moon氏らによる研究で、妊娠中にビタミンDのサプリメントを摂取した女性の子どもは、摂取していなかった女性の子どもに比べて、6〜7歳時の骨密度(BMD)と除脂肪体重が高い傾向にあることが明らかにされた。この研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」11月号に掲載された。Moon氏は、「小児期に得られたこのような骨の健康への良い影響は、一生続く可能性がある」と話している。

前立腺肥大症治療薬のタダラフィルが2型糖尿病リスクを抑制

 前立腺肥大症(BPH)の治療に用いられているタダラフィルが、2型糖尿病(T2DM)発症リスクを低下させる可能性が報告された。京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野の髙山厚氏らによる研究の結果であり、論文が「Journal of Internal Medicine」に9月17日掲載された。  タダラフィルはホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)と呼ばれるタイプの薬で、血管内皮細胞からの一酸化窒素の放出を増やして血管を拡張する作用があり、BPHのほかに勃起障害(ED)や肺高血圧症の治療に用いられている。近年、T2DMの発症に血管内皮機能の低下が関与していることが明らかになり、理論的にはPDE5iがT2DMリスクを抑制する可能性が想定される。ただし、そのエビデンスはまだ少ない。これを背景として髙山氏らは、リアルワールドデータを用いて実際の臨床試験をエミュレート(模倣)し、観察研究でありながら介入効果を予測し得る、ターゲットトライアルエミュレーションによる検証を行った。

アブレーション後のAF患者における左心耳閉鎖術の安全性・有効性/NEJM

 カテーテルを用いた心房細動アブレーションを受け、脳卒中リスクが中等度~高度の患者において、経口抗凝固薬投与と比較して左心耳閉鎖術は、36ヵ月後の手技に関連しない出血(大出血および臨床的に重要な非大出血)のリスクが有意に低く、全死因死亡、脳卒中、全身性塞栓症の複合に関して非劣性であることが、米国・クリーブランド・クリニックのOussama M. Wazni氏らが実施した「OPTION試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年11月16日号に掲載された。  OPTION試験は、カテーテルアブレーションを受けた心房細動患者における左心耳閉鎖術の安全性と有効性の評価を目的とする国際的な無作為化臨床試験であり、2019年11月~2021年6月の期間に10ヵ国106施設で参加者を募集した(Boston Scientificの助成を受けた)。

HBV母子感染予防、出生時HBIG非投与でもテノホビル早期開始が有効か/JAMA

 B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染は新規感染の主要な経路であり、標準治療として母親への妊娠28週目からのテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)投与開始と、新生児への出生時のHBVワクチン接種およびHBV免疫グロブリン(HBIG)投与が行われるが、医療資源が限られた地域ではHBIGの入手が困難だという。中国・広州医科大学のCalvin Q. Pan氏らは、妊娠16週からのTDF投与とHBVワクチン接種(HBIG非投与)は標準治療に対し、母子感染に関して非劣性であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年11月14日号で報告された。

GLP-1受容体アゴニストの減量に対する長期の効果と糖尿病予防効果の強固さ(解説:名郷 直樹氏)

GLP-1受容体アゴニストを72週投与し、体重減少を1次アウトカムとした二重盲検ランダム化比較試験SURMOUNT-1研究の対象者に対し、176週まで治療を継続し、さらに治療中止後に17週の追跡を追加した2次解析結果の報告である。  BMI 30以上、または糖尿病以外の肥満関連のリスクを持つBMI 27以上の肥満者を対象として、チルゼパチド5mg、10mg、15mgの週1回投与とプラセボを比較して、176週後、193週時点の体重変化と糖尿病の発症をアウトカムに設定している。

酒で赤くなる人は睡眠満足度が低い?

 飲酒後に顔や首が赤くなる症状はアジアンフラッシュとして知られ、東アジア人の約36%がアジアンフラッシュの特徴を持っている。アジアンフラッシュに関連する遺伝的因子は睡眠時間と逆相関することが報告されているが、アジアンフラッシュと睡眠満足度との関連を報告した研究はない。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らがインターネット調査による横断研究で検討したところ、アルコール曝露に対する身体的反応の遺伝的特徴が睡眠の質にも影響を及ぼす可能性が示唆された。Medical Science誌2024年11月8日号に掲載。

手術ロボットが動画で手術手順を学習

 ロボットが初めて、経験豊富な外科医による手術動画を見て学習し、その手術手技を人間の医師と同じくらい巧みに実行できたとする研究結果が、米ジョンズ・ホプキンス大学のAxel Krieger氏らにより報告された。研究グループは、「このような模倣学習を利用して手術ロボットをトレーニングすることにより、手術中に必要な手技を逐一プログラムする必要がなくなり、ロボットが人間の手助けなしで複雑な手術を行えるようになることが期待される」と述べている。この研究結果は、ロボット学習学会(CoRL 2024、11月6〜9日、ドイツ・ミュンヘン)で発表された。

日中の眠気と熱意の低下は認知症の前段階と関連

 日中に眠気があり、活動への熱意を奮い起こすことが困難な高齢者は、そうした症状のない高齢者に比べて、認知症の前段階の一形態である運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome;MCR)になるリスクが3倍以上高いことが、新たな研究で明らかになった。MCRは主観的認知機能の低下と歩行速度の低下が併存した状態を指す。米アルバート・アインシュタイン医科大学のVictoire Leroy氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に11月6日掲載された。

大戦中の砂糖配給制の影響を胎児期に受けた人は糖尿病や高血圧が少ない

 第二次世界大戦中と終戦後しばらく、砂糖が配給制だった時期に生まれた人には、2型糖尿病や高血圧が少ないとする、米南カリフォルニア大学(USC)ドーンサイフ経済社会研究センターのTadeja Gracner氏らの研究結果が「Science」に10月31日掲載された。2型糖尿病リスクは約35%、高血圧リスクは約20%低いという。この結果は、現代の人々が砂糖のあふれた環境によって、いかに大きな健康被害を受けているかを示しているとも言えそうだ。  この研究では、第二次世界大戦中に英国で行われた砂糖配給制に焦点が当てられた。英国では1942年に砂糖が配給制となり、国民の砂糖摂取量は1日当たり平均40g(ティースプーンで約8杯分)となった。ちなみに、現在流通している一般的な加糖飲料の中には50gほどの砂糖が使われているものもある。英国の砂糖配給制は戦後もしばらく継続され、1953年9月になって終了した。それとともに砂糖の摂取量は平均80gへと倍増した。

禁煙後に体重が3kg以上増えると高血圧リスクが上昇

 禁煙後に体重が3kg以上増加すると、高血圧の発症リスクが有意に高くなることを示唆する研究結果が報告された。ただし、喫煙を継続していた場合は体重増加が3kg未満であっても、高血圧発症リスクが有意に高くなるという。日本医科大学衛生学公衆衛生学分野の大塚俊昭氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Medicine」に9月14日掲載された。  タバコは言うまでもなく体に悪く、高血圧発症リスク因子でもあり、全ての喫煙者に禁煙が推奨される。しかし、禁煙によってニコチンの持つ空腹感抑制作用がなくなることや、味覚・嗅覚および胃粘膜の血流改善によって、食欲が高まることがあり、体重増加を介して禁煙による健康へのプラス作用を弱めてしまう可能性がある。その悪影響の一つとして、血圧の上昇が挙げられる。ただ、禁煙後の体重変化と高血圧リスクとの関連については、不明点が少なくない。大塚氏らは、日本人労働者の健診データを用いた縦断的解析により、この点を検討した。

成人ADHD患者における自殺リスク評価、発生率や関連因子は

 注意欠如多動症(ADHD)と自殺傾向との関連性は、近年ますます研究対象としての関心が高まっている。自殺傾向の評価は、一般的にカテゴリ別に評価されており、検証済みの方法が使用されていないため、不均一あるいは矛盾する結果につながっている。自殺念慮や自殺企図の発生率は大きく異なり、関連するリスク因子も明らかになっていない。イタリア・トリノ大学のGabriele Di Salvo氏らは、次元アプローチおよび国際的に認められた検証済みの方法を用いて、ADHDにおける自殺傾向を調査した。Annals of General Psychiatry誌2024年11月1日号の報告。

MI後のスピロノラクトンの日常的使用は有益か?/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心筋梗塞(MI)患者において、スピロノラクトンはプラセボと比較し、心血管死または心不全の新規発症/増悪の複合イベント、あるいは心血管死、MI、脳卒中、心不全の新規発症/増悪の複合イベントの発生を低減しなかった。カナダ・マクマスター大学のSanjit S. Jolly氏らCLEAR investigatorsが、14ヵ国の104施設で実施した無作為化比較試験「CLEAR試験」の結果を報告した。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、うっ血性心不全を伴うMI患者の死亡率を低下させることが示されているが、MI後のスピロノラクトンの日常的な使用が有益であるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2024年11月17日号掲載の報告。

チルゼパチドのHFpEFを有する肥満患者への有効性/NEJM

 駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を有する肥満の患者において、チルゼパチドはプラセボと比較し、心血管死または心不全増悪の複合リスクを低減し、健康状態を改善することが示された。米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らが、9ヵ国129施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「SUMMIT試験」の結果を報告した。肥満は、HFpEFのリスクを高める。チルゼパチドは、体重減少をもたらすが、心血管アウトカムへの有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2024年11月16日号掲載の報告。

今、肺静脈隔離にシャム試験?(解説:高月誠司氏)

Sham-PVI試験は心房細動患者に対してクライオバルーンによる肺静脈隔離とシャム手術を行い比較する、無作為化比較試験である。結果的に肺静脈隔離群では有意に心房細動の再発は少なく、QOLは高かった。心房細動に対する肺静脈隔離法が始まって約20年、これまで心房細動に対する第一選択の治療法として薬物療法とクライオアブレーションを比較する試験は行われており、アブレーション治療のほうが洞調律維持率は高いことは確立していた。

患者はどう考えている?前立腺がんの治療選択/AZ

 新たな薬剤が登場し、個別化医療が進む前立腺がん。その治療選択を考えるうえで、共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)の重要性が増している。  アストラゼネカは2024年10月、「いま知っておきたい!前立腺がん~西川 貴教さんと学ぶ、前立腺がんと向き合うための医師とのコミュニケーションのポイント~」と題したメディアセミナーを開催。上村 博司氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 診療教授)、前立腺がん体験者の武内 務氏(NPO法人 腺友倶楽部 理事長)、アーティストの西川 貴教氏らが登壇した。

高齢者が健康長寿でいられるBMIは22.5~23.5/早大ほか

 高齢者が健康で長生きできる理想的な体型はあるのだろうか。このテーマに対して渡邉 大輝氏(早稲田大学スポーツ科学学術院)らの研究グループは、わが国の高齢者約1万人を対象に調査研究を行った。その結果、フレイルでもフレイルでもない高齢者のどちらでも、体格の指標であるBMIが22.5~23.5で最も介護認定を受けるリスクが低いことが示された。また、BMIが18.5未満の痩せている人は介護認定を受ける前に死亡する可能性が高く、その一方でBMIが27.5以上の肥満の人は障害を伴う生存期間が長いことが示された。International Journal of Obesity誌オンライン版2024年11月15日からの報告。

セマグルチド2.4mg、MASHで有意な改善示す(ESSENCE)/ノボ ノルディスク

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に有益であることが実証されているが、主要評価項目を「肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失」「MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」とする第III相ESSENCE試験1)のPart Iで得られた結果がAASLD 2024 The Liver Meeting(米国肝臓学会議)において発表された。  

鼻腔ぬぐい液検査でCOVID-19の重症度を予測できる?

 鼻腔ぬぐい液を用いた検査が、新型コロナウイルスに感染した人のその後の重症度を医師が予測する助けとなる可能性のあることが、新たな研究で示された。この研究結果を報告した、米エモリー大学ヒト免疫センター(Lowance Center for Human Immunology)およびエモリー・ワクチンセンターのEliver Ghosn氏らによると、軽度または中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患者の70%以上で特定の抗体が作られており、これらの抗体が、症状の軽減や優れた免疫応答、回復の速さに関連していることが明らかになったという。この研究の詳細は、「Science Translational Medicine」11月6日号に掲載された。

コロナ禍を経て高知県民の飲酒行動が変わった?

 お酒好きが多いことで知られる高知県から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが終息した後も、人々が羽目を外して飲酒する頻度は減ったままであることを示唆するデータが報告された。同県での急性アルコール中毒による搬送件数を経時的に解析した結果、いまだ2019年の水準より有意に少ない値で推移しているという。高知大学医学部附属病院次世代医療創造センターの南まりな氏らの研究によるもので、詳細は「Environmental Health and Preventive Medicine」に10月8日掲載された。

双極症I型に対するアリピプラゾール月1回投与〜52週間ランダム化試験の事後分析

 人種間における双極症の診断・治療の不均衡を改善するためには、その要因に関する認識を高める必要がある。その1つは、早期治療介入である。双極症と診断された患者を早期に治療することで、気分エピソード再発までの期間を延長し、機能障害や病勢進行に伴うその他のアウトカム不良を軽減する可能性がある。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのKarimah S. Bell Lynum氏らは、早期段階の双極症I型患者における長時間作用型注射剤アリピプラゾール月1回400mg(AOM400)の有効性および安全性を調査するため、52週間ランダム化試験の事後分析を行った。International Journal of Bipolar Disorders誌2024年10月27日号の報告。