日本語でわかる最新の海外医学論文|page:65

硬膜下血腫の再発に有効な新たな治療法とは?

 転倒などにより頭部を打撲すると、特に高齢者の場合、脳の表面と脳を保護する膜である硬膜の間に血液が溜まって(血腫)危険な状態に陥る可能性がある。このような硬膜下血腫に対しては、通常は手術による治療が行われるが、8〜20%の患者では、再発して再手術が必要になる。こうした中、標準的な血腫除去術と脳の中硬膜動脈の塞栓術(遮断)を組み合わせた治療が血腫の進行や再発のリスク低下に有効であることを示したランダム化比較試験の結果が報告された。米ワイル・コーネル・メディスン脳血管外科および介入神経放射線学分野のJared Knopman氏らによるこの研究結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に11月20日掲載された。

IL-6が新規診断2型糖尿病患者の肥満関連がんリスク予測に有用

 新たに2型糖尿病と診断された患者における肥満関連がんリスクの評価に、インターロイキン-6(IL-6)が有用だとする、ステノ糖尿病センター(デンマーク)のMathilde Dahlin Bennetsen氏らの研究結果が、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表された。  2型糖尿病は、肥満関連がんのリスク増大と関連のあることが知られている。この関連には、2型糖尿病と肥満の双方に共通するリスク因子である、軽度の慢性炎症が関与している可能性が想定されている。脂肪組織はIL-6や腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などの炎症性サイトカインを放出しており、そのため肥満に伴い軽度の慢性炎症が生じ、これが発がんリスク上昇に寄与すると考えられている。IL-6とTNF-αはともに炎症の初期に産生が高まるサイトカインだが、これらとは別の炎症マーカーとして臨床では高感度C反応性タンパク質(hsCRP)が広く用いられている。hsCRPは直接的には発がんメカニズムに関与せずに、全身の炎症レベルを反映する。Bennetsen氏らは、これらの三つの異なる炎症マーカーが、新規診断2型糖尿病患者の肥満関連がんの予測バイオマーカーになり得るかを検討した。

新薬muvalaplin、心血管リスク患者のリポ蛋白(a)を大幅減少/JAMA

 心血管イベントのリスクが高く、リポ蛋白(a)濃度が上昇した患者において、プラセボと比較して経口低分子リポ蛋白(a)阻害薬muvalaplinは、12週間の投与でリポ蛋白(a)を大幅に減少させ、忍容性も良好であることが、オーストラリア・モナシュ大学のStephen J. Nicholls氏らが実施した「KRAKEN試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年11月18日号で報告された。  KRAKEN試験は、リポ蛋白(a)濃度が上昇した患者におけるmuvalaplinのリポ蛋白(a)抑制効果の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2022年12月~2023年11月に日本を含む8ヵ国43施設で患者の無作為化を行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。

非急性硬膜下血腫、中硬膜動脈塞栓術は有効か/NEJM

 症候性の非急性硬膜下血腫患者(多くが穿頭ドレナージを受けた)の治療において、通常治療と比較して中硬膜動脈塞栓術は、90日の時点での症状を伴う硬膜下血腫の再発または進行の発生率はほぼ同じだが、重篤な有害事象の頻度は有意に低いことが、中国・海軍軍医大学のJianmin Liu氏らMAGIC-MT Investigatorsが実施した「MAGIC-MT試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年11月21日号に掲載された。  MAGIC-MT試験は、中国の31施設で実施した医師主導の非盲検無作為化対照比較試験であり、2021年3月~2023年5月に患者を募集した(Shanghai Shenkang Hospital Development Centerなどの助成を受けた)。

自殺念慮を伴ううつ病は治療抵抗性へつながるのか

 治療抵抗性うつ病は、自殺行動と関連している。自殺リスクは、治療抵抗性うつ病の予測因子であるため、自殺念慮を有するうつ病患者は、将来治療抵抗性うつ病を発症する可能性が高まる。そのため、現在自殺念慮を有するうつ病患者では、治療抵抗性うつ病のリスク因子の早期特定が非常に重要となる。フランス・モンペリエ大学のBenedicte Nobile氏らは、現在自殺念慮を有するうつ病患者におけるうつ病の非寛解率および治療抵抗性うつ病のリスク因子の特定を試みた。また、ベースライン時の自殺念慮が、ベースライン時のうつ病重症度や6週間後のうつ病寛解率に及ぼす影響を評価した。Psychiatry Research誌2024年12月号の報告。

がん診断後の禁煙、6ヵ月内のスタートで予後改善

 喫煙・禁煙ががんの罹患や予後に関連するとの報告は多いが、がん診断後の禁煙治療の開始時期は予後にどの程度関連するのかについて検討した、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らによる研究がJAMA Oncology誌オンライン版2024年10月31日号に掲載された。  研究者らは、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのたばこ研究・治療プログラムの参加者を対象とした前向きコホート研究を行った。参加者は、がん診断後に6~8回の個別カウンセリングと10~12週間の薬物療法からなる禁煙治療を受けた。禁煙治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に自己申告により禁煙の継続を報告した。

麻疹ワクチン、接種率の世界的な低下により罹患者が増加

 麻疹ワクチン接種率の低下により、2022年から2023年にかけて、世界中で麻疹罹患者が20%増加し、2023年には1030万人以上がこの予防可能な病気を発症したことが、世界保健機関(WHO)と米疾病対策センター(CDC)が共同で実施した研究により明らかになった。この研究の詳細は、「Morbidity and Mortality Weekly Report」11月14日号に掲載された。  CDC所長のMandy Cohen氏は、「麻疹罹患者が世界中で増加しており、人命と健康が危険にさらされている。麻疹ワクチンはウイルスに対する最善の予防策であり、ワクチン接種の普及拡大に向けた取り組みに引き続き投資する必要がある」とCDCのニュースリリースで述べている。

早発卵巣不全は自己免疫疾患と関連

 早発卵巣不全(POI)と診断された女性で、重度の自己免疫疾患の有病率が上昇するという研究結果が、「Human Reproduction」に9月25日掲載された。  オウル大学病院(フィンランド)のSusanna M. Savukoski氏らは、1988~2017年に自然発症のPOIと診断された女性3,972人と一般女性対照群1万5,708人を対象として、集団ベースの登録研究を行い、POI診断前後の重症自己免疫疾患との関連を検討した。  解析の結果、POIの女性における1つ以上の重度の自己免疫疾患の有病率は5.6%であった。POI女性は対照群と比較して、基準日以前に、多腺性自己免疫症候群、アジソン病、血管炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(IBD)、甲状腺機能亢進症を含む、複数の特異的な自己免疫疾患の有病率が高かった。1型糖尿病または強直性脊椎炎の有病率に、差は見られなかった。POI診断後の最初の3年間に重度の自己免疫疾患と初めて診断される標準化罹患比は2.8であったが、12年後には1.3に減少した。

蒸留酒、ワイン、ビール、最も悪い生活習慣に関係するのはどれ?

 好きな酒の種類が、その人の生活習慣を知る手がかりになる可能性を示す研究結果が報告された。ビール好きの人は、ワインや蒸留酒などを好む人と比べて不健康な生活習慣を送っている人が多いことが明らかになったという。米テュレーン大学医学部研修医プログラムのMadeline Novack氏らによるこの研究結果は、米国肝臓学会議年次学術集会(AASLD 2024、11月15~19日、米サンディエゴ)で発表され、「Nutrients」に11月13日掲載された。  Novack氏は、「米国では、アルコールの過剰摂取が肝硬変の主な要因となっている。また、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)も急増している」と話す。同氏はまた、「これらの肝疾患は併存することも多く、管理や予防には生活習慣の改善が重要だ。そのためには、飲酒と栄養不良の関係について理解することから始める必要がある」とAASLDのニュースリリースの中で述べている。

子宮内膜症・子宮筋腫の既往、早期死亡リスクと関連/BMJ

 子宮内膜症あるいは子宮筋腫の既往歴のある女性は、生殖可能年齢を超え70歳未満での早期死亡の長期的リスクが高まる可能性があり、主に婦人科系がんによる死亡リスクの増加とも関連し、子宮内膜症はがん以外の死亡リスクの増加とも関連していた。中国・上海交通大学のYi-Xin Wang氏らが、前向きコホート研究の結果を報告した。子宮内膜症と子宮筋腫は、慢性疾患の長期的リスクを高めることが示されているが、早期死亡リスクに及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2024年11月20日号掲載の報告。  研究グループは、米国で1989年に開始された前向きコホート研究「Nurses’ Health Study II」に登録された25~42歳の女性看護師を対象とした。同研究では2019年までの30年以上にわたり、生殖特性、行動因子および健康状態に関して2年ごとに郵送または電子アンケート調査が行われている。

持続性AF、線状アブレーション+肺静脈隔離術は有益か?/JAMA

 持続性心房細動(AF)患者の治療において、肺静脈隔離術(PVI)にマーシャル静脈内エタノール注入(EIVOM)を併用した線状アブレーションを追加することにより、PVI単独と比較して12ヵ月以内の心房性不整脈再発が有意に改善された。中国・Beijing Anzhen HospitalのCaihua Sang氏らPROMPT-AF investigatorsが、中国の3次医療機関12施設で実施した研究者主導の多施設共同無作為化非盲検試験「PROMPT-AF試験」の結果を報告した。これまでの無作為化試験では、PVI後に線状アブレーションを追加したときのPVI単独に対する優越性は検証されていなかった。EIVOMは僧帽弁輪峡部でのアブレーションを容易にし、線状アブレーション戦略の有効性を改善する可能性があるとされていた。JAMA誌オンライン版2024年11月18日号掲載の報告。

ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんに対するSERD+CDK4/6i+PI3Kiによる予後の改善(解説:下村昭彦氏)

inavolisibは新規PI3K阻害剤である。2023年の「San Antonio Breast Cancer Symposium」で全生存期間(OS)の改善が期待されるデータが公表されてから、その詳細が待たれていた。inavolisibはPI3Kαを特異的に阻害する薬剤で、既存のPI3K阻害剤よりも有害事象が軽減することが期待されていた。inavolisibの有効性を初めて証明した試験がINAVO120試験であり、2024年10月21日にNEJM誌に発表された。INAVO120試験では、ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+HER2-)進行乳がん(転移乳がんもしくは局所進行乳がん)のうち、組織、もしくはctDNAでPIK3CAの変異が検出された患者を対象として、フルベストラント+パルボシクリブにinavolisibまたはプラセボを上乗せするデザインとなっていた。この試験は進行乳がんの1次治療の試験ではあるが、適格基準に特徴がある。すなわち、術後ホルモン療法中の再発、もしくは術後ホルモン療法完了後12ヵ月以内の再発の患者を対象としており、いわゆるホルモン感受性の低い患者へのエスカレーションとなっている。

医師の「スーツ」事情、所持数や予算は?/医師1,000人アンケート

 ビジネスパーソンにとってユニフォーム的な存在である「スーツ」。一方、医師の仕事着といえば白衣のイメージがあるが、実際には勤務中に何を着ているのか?スーツを着る機会はいつなのか? ケアネット会員の男性医師を対象に、仕事中の服装やスーツの所有状況などについてアンケート形式で聞いた。

統合失調症患者が考える抗精神病薬減量の動機と経験

 統合失調症患者の多くは、時間の経過とともに、抗精神病薬の減量または中止を望んでいる。デンマークでは、政府の資金で専門外来クリニックが設立され、抗精神病薬の減量指導が行われてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のAlexander Nostdal氏らは、クリニック通院患者における抗精神病薬減量の動機および過去の経験に関するデータを収集し、報告を行った。Psychiatric Services誌2024年11月1日号の報告。

脳卒中の重症度を高める3つのリスク因子とは?

 喫煙、高血圧、心房細動の3つのリスク因子は、脳卒中リスクだけでなく、脳卒中の重症度を高める可能性のあることが、新たな研究により明らかになった。ゴールウェイ大学(アイルランド)老年医学分野のCatriona Reddin氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に11月13日掲載された。  Reddin氏は、「脳卒中は、障害や死にさえつながる可能性があるが、生活習慣の是正や薬物療法により改善できるリスク因子は数多くある。われわれの研究結果は、障害を伴う重度の脳卒中を予防するためには、さまざまな脳卒中のリスク因子の中でも特に、高血圧、心房細動、喫煙の管理が重要であることを強調するものだ」と述べている。

時間制限食でメタボ該当者のHbA1cが有意に低下

 メタボリックシンドローム(MetS)該当者の食事療法に時間制限食を用いることで、標準的な食事療法よりもHbA1cが有意に低下したとする研究結果が報告された。米ソーク生物学研究所のEmily N.C. Manoogian氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に10月1日掲載された。  時間制限食(time-restricted eating;TRE)は、1日の中でエネルギー量のある飲食物を摂取可能な時間帯を限定し、少なくとも14時間以上はエネルギーを摂取しないという食事療法。一方、摂取を禁止する時間帯以外はエネルギー量を考えず自由な飲食が可能で、総摂取量の増大が許容されることもある。この手軽さから人気が高まりつつあり、また減量や心代謝関連マーカーの改善につながるとする研究報告が増えているものの、まだ評価は確立されていない。

CKDの早期からうつ病リスクが上昇する

 腎機能低下とうつ病リスクとの関連を解析した結果が報告された。推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2を下回る比較的軽度な慢性腎臓病(CKD)患者でも、うつ病リスクの有意な上昇が認められるという。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏、候聡志氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Clinical Investigation」に9月27日掲載された。  末期のCKD患者はうつ病を併発しやすいことが知られており、近年ではサイコネフロロジー(精神腎臓学)と呼ばれる専門領域が確立されつつある。しかし、腎機能がどの程度まで低下するとうつ病リスクが高くなるのかは分かっていない。金子氏らは、医療費請求データおよび健診データの商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いた後ろ向き観察研究により、この点の検討を行った。

慢性硬膜下血腫、補助的中硬膜動脈塞栓術は有益か/NEJM

 症候性の慢性硬膜下血腫患者において、補助的中硬膜動脈塞栓術と標準治療の併用は標準治療単独と比べて治療失敗リスクを低下させ、短期的には後遺症を伴う脳卒中や死亡の発生の増加には至らなかった。米国・Stony Brook MedicineのDavid Fiorella氏らSTEM Investigatorsが、国際多施設共同非盲検無作為化比較試験「STEM試験」の結果を報告した。慢性硬膜下血腫の治療を受けている患者は治療失敗のリスクが高い。同患者集団における補助的中硬膜動脈塞栓術の、治療失敗のリスクへの影響は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年11月20日号掲載の報告。

世界の糖尿病罹患率、日本の女性が低下し世界最低群に/Lancet

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのBin Zhou氏らNCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)は、200の国と地域における1990~2022年の糖尿病の罹患率と治療動向を調べ、ほとんどの国、とくに低所得国と中所得国では、罹患率の上昇に比べて糖尿病治療率(糖尿病治療薬を使用している患者の割合)はまったく増えていないか、十分には増えていないことを示した。糖尿病はプライマリケアレベルでの検出が可能で、また効果的な治療により合併症リスクを低減できるが、糖尿病治療の実態と、それがどのように変化しているのかについて十分なデータはなかった。Lancet誌2024年11月23日号掲載の報告。

化膿性汗腺炎への適応が追加されたビメキズマブ、その特徴は?/UCB

 ユーシービージャパンは、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体ビメキズマブ(商品名:ビンゼレックス)について、2024年11月26日に化膿性汗腺炎(HS)の適応追加に関するメディアセミナーを行った。同薬剤は、9月24日にHSに対する適応追加の承認を取得している。セミナーでは、藤田 英樹氏(日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野)がHSの病態とビメキズマブの概要について講演を行った。  HSは、痛みを伴う慢性的かつ再発性の炎症性皮膚免疫疾患だ。腋窩や臀部、鼠径部、肛門周囲、乳房下部などの間擦部に好発し1)、しばしば炎症性の結節が生じ、膿瘍形成に進行、さらに毛包が破裂して排膿を伴う瘻孔を形成して、その後瘢痕化することがある2)。HSは痛みや瘢痕により、患者のQOLを損ないやすい疾患といえる。