日本語でわかる最新の海外医学論文|page:46

GLP-1受容体作動薬はパーキンソン病全般にも有効か?(解説:内山真一郎氏)

パーキンソン病患者に対するGLP-1受容体作動薬の効果を検討する第III相無作為化比較試験が英国で行われた。25~80歳でドーパミン治療を行っているHoehn & Yahrステージが2.5以下のパーキンソン病患者に、徐放型エキセナチド2mgかプラセボを96週間にわたって週1回皮下注射し、1次評価項目としてパーキンソン病の運動障害スケールであるUPDRS Part IIIを評価したところ、エキセナチド群とプラセボ群の悪化度には有意差がなく、疾患修飾薬としてのエキセナチドの有効性は証明されなかった。このエキセナチドの臨床効果の欠如は、DATスキャンの画像所見上の効果の欠如とも一致していた。

早期の緩和ケアは死期の近い高齢者の入院を予防できない?(解説:名郷直樹氏)

多疾患併存患者の死亡リスクを予測するGagne comorbidity score(1年時点での死亡予測のスコア:-2~26、高値ほどリスクが高い)が6点以上(1年後の死亡率が25%以上)の66歳以上を対象とし、救急外来受診時に、エビデンスに基づく多職種による教育、重大な疾患に関するコミュニケーションについての刺激に基づくワークショップ(救急外来での会話)、意思決定サポート、救急外来スタッフによる監査とフィードバックによる介入の効果を、入院をアウトカムとして検討したクラスターステップウェッジランダム化比較試験である。

MCI高齢者に対するVR介入の有効性〜メタ解析

 アルツハイマー病は、根治不能な疾患であるが、軽度認知障害(MCI)の段階で仮想現実(VR)を用いた介入を行うことで、認知症の進行を遅らせる可能性がある。中国・上海交通大学のQin Yang氏らは、MCI高齢者におけるVRの有効性を明らかにするため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Medical Internet Research誌2025年1月10日号の報告。  2023年12月30日までに公表された研究をWeb of Science、PubMed、Embase、Ovidよりシステマティックに検索した。対象研究は、55歳以上のMCI高齢者の認知機能、気分、QOL、体力に対するVRベース介入を自己報告で評価したRCT。調査されたアウトカムには、一般的な認知機能、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能、言語機能、視空間能力、うつ病、日常生活能力、筋力パフォーマンス、歩行/バランスなどを含めた。2人の独立した担当者により、特定された論文と関連レビューの検索結果およびリファレンスリストをスクリーニングした。介入の構成要素と使用された実施および行動変化の手法に関するデータを抽出した。適格基準を満たした場合に、メタ解析、バイアスリスク感度分析、サブグループ解析を実施し、潜在的なモデレーターを調査した。エビデンスの質の評価には、GRADEアプローチを用いた。

女性を悩ます第3の狭心症や循環器障害の指標とは/日本循環器協会

 日本循環器協会が主催するGo Red for Women Japan健康セミナー『赤をまとい女性の心臓病を考える2025』が、2月8日に東京大学の安田講堂で開催された。循環器疾患において、症状の違いや診断精度、治療法に対する性差がが明らかになっている昨今、日本国内でもそれらを学ぶための機会として、2024年より本イベントが始まった。本稿では、赤澤 純代氏(金沢医科大学総合内科学 臨床教授/女性総合医療センター センター長)と高橋 佐枝子氏(湘南大磯病院 副院長)の講演内容において、とくに患者に知っておいてほしい内容にフォーカスし、お届けする。

胃がんの術後補助化学療法、75歳超の高齢者にも有効/国立国際医療研究センターなど

 StageII/IIIの切除可能胃がん患者では、手術単独では再発リスクが高いため術後補助化学療法が標準治療となっている。しかし、臨床試験では75歳超高齢患者の参加が限られ、75歳超高齢者に対する術後化学療法に関しては、これまで明確なエビデンスが得られていなかった。  国立国際医療研究センター・山田 康秀氏らの研究グループは、日本胃癌学会が管理する全国胃癌登録のデータを用いて75歳超の高齢患者を含めた胃がん患者の特徴を解析、生存期間に影響を与える因子を特定し、術後補助化学療法の効果を検証した。本試験の結果はGlobal Health and Medicine誌オンライン版2025年1月25日号に掲載された。

認知症リスクが高い抗コリン薬はどれ?

 これまでの研究により、抗コリン薬の長期投与は、認知機能低下や認知症発症と関連することが報告されているが、個々の薬剤によってそのリスクには差がある可能性がある。今回、過活動膀胱治療に用いられるさまざまな抗コリン薬と高齢者の認知症リスクを調べた結果、オキシブチニン、ソリフェナシン、トルテロジンが認知症の増加と関連していたことを、英国・ノッティンガム大学のBarbara Iyen氏らが明らかにした。BMJ Medicine誌2024年11月12日号掲載の報告。  研究グループは、2006年1月1日~2022年2月16日に英国のClinical Practice Research Datalink GOLDデータベースに登録された一般診療所954施設の電子健康記録を用いてネステッドケースコントロール研究を実施した。対象は研究期間中に初めて認知症の診断を受けた、および/または認知症治療薬が処方された55歳以上の17万742例(認知症群)で、年齢、性別、臨床状態、期間を基に認知症ではない80万4,385例(対照群)をマッチングさせた。

睡眠時無呼吸症候群は自動車事故につながる?

 世界保健機関(WHO)の報告によると、2010年以降、交通事故による死亡は5%減少しているとはいえ、2021年には年間119万人を数え、依然として世界的な課題となっている。  閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)による睡眠障害は、高血圧、心臓病、糖尿病など多くの病気に関連していることが報告されているが、病気のほかに自動車事故との関連が加わるかもしれない。米トーマス・ジェファーソン大学シドニー・キンメル医科大学のElliott Sina氏らの最新の研究では、OSAを治療していない人は、自動車事故に巻き込まれる可能性が高いことが明らかになった。この研究結果は、「Otolaryngology-Head and Neck Surgery」に1月21日掲載された。

糞便移植で糖尿病に伴う消化器症状が改善する可能性

 1型糖尿病に伴う合併症で、吐き気、腹部膨満感、下痢などの消化器症状を来している人が、健康な人の糞便カプセルを服用すると、それらの症状が緩和するという研究結果が「eClinicalMedicine」1月号に掲載された。論文の筆頭著者である、オーフス大学(デンマーク)のKatrine Lundby Hoyer氏は、「本研究は1型糖尿病患者を対象に、糞便移植の有用性を対プラセボで検討した初の試みである。結果は非常に有望であり、糞便カプセル群に割り付けられた患者では、プラセボ群の患者で観察された変化を大きく超える、症状と生活の質(QOL)の改善が認められた」と語っている。  1型糖尿病患者の約4分の1が、合併症の糖尿病性胃腸障害を患っているとするデータがある。糖尿病性胃腸障害は、消化管の働きをコントロールしている神経が、慢性高血糖によってダメージを受けることで発症する病気であり、治療法はごく限られている。Hoyer氏らは、糖尿病性胃腸障害を来している患者の腸の状態を、糞便移植によって改善できないかを検討した。なお、糞便移植は健康な人の腸内細菌を患者に対して移植するという治療法で、重度の下痢を引き起こすことのある有害な細菌(クロストリディオイデス・ディフィシル)による感染症の治療などに応用されている。

ダラツムマブ配合皮下注、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に申請/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年2月14 日、ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)(商品名:ダラキューロ配合皮下注)について、「高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫」を効能又は効果として、製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。  今回の申請は、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)を対象にダラツムマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ配合皮下注単剤療法の有効性と安全性を検証した国際共同第III相AQUILA試験に基づくもの。

NRG1融合遺伝子陽性がんへのzenocutuzumab、とくに期待できるがん種は?/NEJM

 進行ニューレグリン1(NRG1)融合遺伝子陽性がんに対するzenocutuzumab(MCLA-128)の有効性および安全性を評価した第II相臨床試験の結果が、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAlison M. Schram氏らeNRGy Investigatorsにより報告された。とくに非小細胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんの患者において有効性が示され、有害事象の大部分は低Gradeであった。NRG1融合遺伝子は、複数の固形がんで確認されているリカレントながんドライバー遺伝子で、NRG1がヒト上皮成長因子受容体3(HER3)に結合し、HER2とのヘテロ二量体化と下流での腫瘍成長および増殖経路の活性化を引き起こす。zenocutuzumabは、HER2およびHER3を標的とする初の二重特異性抗体薬で、前臨床試験では複数の種類の腫瘍でzenocutuzumabの抗腫瘍活性が示されていた。NEJM誌2025年2月6日号掲載の報告。

GLP-1薬エキセナチド、パーキンソン病進行を抑制せず/Lancet

 パーキンソン病患者に対して、GLP-1受容体作動薬エキセナチドの安全性および忍容性は確認されたが、疾患修飾薬として支持するエビデンスは示されなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのNirosen Vijiaratnam氏らが、第III相の多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果を報告した。GLP-1受容体作動薬は、in vitroおよびin vivoのパーキンソン病モデルにおいて神経栄養特性を有することが示され、疫学研究や小規模無作為化試験でパーキンソン病のリスクおよび進行を抑制する可能性が示唆されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「パーキンソン病ヘのGLP-1受容体作動薬使用を支持するエビデンスの確立には、より優れた標的結合を示す薬剤を用いた試験や、特定のサブグループを対象とした研究が必要である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年2月4日号掲載の報告。

日本における精神科入院に対する向精神薬頓服処方モニタリングプログラムの有用性

 向精神薬の頓服処方は、精神疾患に対する通常の薬物療法に加えて、興奮や不眠などの症状に対し、必要に応じて使用される。しかし、向精神薬頓服処方の有効性は、関連するエビデンスの質が低く、多剤併用につながる懸念がある。北里大学の斉藤 善貴氏らは、精神科入院患者を対象に向精神薬頓服処方モニタリングプログラムを導入し、プログラム実施前後の処方の変化をレトロスペクティブに調査した。BMC Psychiatry誌2025年1月17日号の報告。

OTC類似薬の保険適用除外、日医が示した3つの懸念点

 日本医師会常任理事の宮川 政昭氏が、2月13日の定例記者会見で、OTC医薬品に係る最近の状況について日本医師会の見解を示した。社会保険料の削減を目的に、OTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化を進めることには重大な危険性が伴うと強調し、その理由として下記を挙げた。 1.医療機関の受診控えによる健康被害の懸念  はた目から見ると軽微な症状であっても、医師の診察を受けることで重篤な疾患の早期発見につながることがある。むしろ、重篤な疾患ではないことの確認こそが診察の大きな役割である。しかし、OTC類似薬の保険適用が除外されると、患者が自己判断で市販薬を使用して、適切な治療が受けられずに重篤化する可能性が高まる。結果として治療が遅れて合併症を引き起こし、かえって高額な医療費が発生するリスクがある。このリスクは「個々人の危険性が少し高まるだけ」という評価もあるが、国全体では多くの人が不幸を背負ってしまうため、政策として容認できるものではない。

血圧測定は騒がしい場所でも問題なし

 もし血圧を測定した場所が騒がしい公共空間であったとしても、心配は無用のようだ。騒がしい場所で測定された血圧値の正確性は、静かな環境で測定された血圧値と同程度であることが新たな研究で示された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院疫学分野のTammy Brady氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に1月28日掲載された。Brady氏は、「公共空間で測定された血圧値と静かな個室で測定された血圧値の差は極めて小さかった。このことから、公共空間は高血圧のスクリーニングの場として妥当であることが示唆された」と結論付けている。

脂肪の多い筋肉は心疾患リスクを高める

 霜降り肉のステーキはグリル料理で高く評価されるが、人間の筋肉に霜降り肉のように脂肪が蓄積していると命取りになるかもしれない。新たな研究で、筋肉中に脂肪が多い人は、心臓に関連した健康問題で死亡するリスクが高いことが明らかになった。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院心臓ストレス研究室のViviany Taqueti氏らによる研究で、詳細は「European Heart Journal」に1月20日掲載された。  この研究は、冠動脈疾患(CAD)の評価のために、2007年から2014年の間に同病院で全身PET/CT検査を用いた心臓ストレステストを受けた669人の患者(平均年齢63歳、女性70%)を対象にしたもの。PET/CT検査で左室駆出率(LVEF)、心筋血流量(MBF)、冠血流予備能(CFR)などを評価するとともに、CTで胸部の体組成として、皮下脂肪、骨格筋、筋肉間脂肪組織(IMAT)などを調べ、骨格筋内の脂肪の比率(fatty muscle fraction;FMF)を算出した。対象患者を中央値で5.8年にわたって追跡し、追跡期間中の主要心血管イベント(MACE、死亡または心筋梗塞か心不全による入院と定義)発生の有無を調べた。

10代の若者が自殺に向かう理由―未遂者対象解析

 10代の若者が自殺行動に至る理由やその手段などの特徴が明らかになった。日本医科大学付属病院精神神経科の成重竜一郎氏らの研究の結果であり、詳細は「BMC Psychiatry」に11月6日掲載された。学校や家庭の問題、および自閉スペクトラム症が、この世代の自殺リスクを押し上げている可能性があるという。  国内の自殺者数は近年減少傾向にあるが、10代の若者の自殺者数は変化が乏しく、依然としてこの世代の死因のトップを占めている。10代の自殺は他の世代とは異なる特徴を持つことが海外から報告されている。しかし日本人のデータは少なく詳細が不明。これを背景として成重氏らは、2010~2021年に同院救命救急センターに収容され、救命し得た症例を対象とする詳細な解析を行った。自殺企図の原因・動機や精神疾患の有無などは、2人以上の経験豊富な精神科医の討議により推定・診断した。

SGLT2阻害薬やGLP-1薬のベネフィット、年齢・性別で違いは?/JAMA

 SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者の主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連することが、英国・グラスゴー大学のPeter Hanlon氏らによる601試験のネットワークメタ解析の結果で示された。年齢×治療の交互作用の解析では、SGLT2阻害薬はヘモグロビンA1c(HbA1c)値の低下は小さいものの、若年者より高齢者で心臓保護効果が高く、一方、GLP-1受容体作動薬は若年者のほうで心臓保護効果が高いことが示された。先行研究で、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP4阻害薬は高血糖を改善し、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者のMACEリスクを軽減することが示されているが、これらの有効性が年齢や性別によって異なるかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2025年2月3日号掲載の報告。

未治療CLLへの固定期間のアカラブルチニブ併用療法、PFSを改善/NEJM

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、BTK阻害薬アカラブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法は、抗CD20抗体オビヌツズマブの追加有無にかかわらず、化学免疫療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJennifer R. Brown氏らAMPLIFY investigatorsが27ヵ国133施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「AMPLIFY試験」で示された。未治療CLL患者において、アカラブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用投与が、化学免疫療法と比べてPFSが優れるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年2月5日号掲載の報告。

2型糖尿病に対する新たな週1回インスリン製剤(解説:安孫子亜津子氏)

本論文では、新たな週1回注射の基礎インスリンであるefsitoraの2型糖尿病に対する第III相試験(QWINT-2)の結果が報告された。2型糖尿病に対する治療としては、インクレチン関連薬やSGLT2阻害薬の登場後、インスリン導入が遅くなったり、インスリン使用量が減量できる症例も増えてきている。ただし、わが国ではインスリン分泌能の低下した痩せ型の2型糖尿病で、インスリンを確実に補充することが必要な患者も多く認められる。とくに長期間SU薬を使用してきたような高齢者2型糖尿病に対するインスリン治療では、頻回注射や毎日の注射ができなくなる症例もあり、注射回数の減少は、わが国の糖尿病治療において必須の課題である。

重度精神疾患患者における第2世代抗精神病薬の心代謝プロファイルの安全性比較

 重度の精神疾患のマネジメントにおけるアリピプラゾールの心代謝への安全性および有効性の比較に関するエビデンスは限られており、その結果は一貫していない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlvin Richards-Belle氏らは、他の第2世代抗精神病薬と比較したアリピプラゾールの心代謝プロファイルおよび有効性を調査した。PLoS Medicine誌2025年1月23日号の報告。  英国・プライマリケアにおけるアリピプラゾールとオランザピン、クエチアピン、リスペリドンを直接比較した観察エミュレーションを実施した。データは、Clinical Practice Research Datalinkより抽出した。対象は、2005〜17年に新たに抗精神病薬を使用した重度の精神疾患(双極症、統合失調症、その他の非器質性精神病)成人患者。2019年までの2年間、フォローアップを行った。主要アウトカムは、1年後の総コレステロール値(心代謝安全性)とした。主な副次的アウトカムは、精神科入院(有効性)とした。その他のアウトカムには、体重、血圧、すべての原因による治療中止、死亡率などを含めた。分析では、人口統計、診断、併用薬、心血管代謝パラメータなどのベースライン交絡因子で調整を行った。