神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:15

長時間睡眠で認知障害リスク増、特定のアミノ酸不足でさらに増~日本人での研究

 睡眠時間とアミノ酸摂取量は、独立して認知機能の低下と関連している。今回、国立長寿医療研究センターの木下 かほり氏らは、60歳以上の地域住民における睡眠時間と認知障害発症の長期的な関連と食事による19種類のアミノ酸摂取量の関与を調べた。その結果、長い睡眠時間(8時間超)が認知障害発症率と有意に関連し、さらに、長時間睡眠者でシスチン、プロリン、セリンの摂取量が少ない人は認知障害を発症しやすいことがわかった。BMC Geriatrics誌2023年10月11日号に掲載。  本研究は地域ベースの縦断的研究で、ベースラインで認知障害のない60〜83歳の成人623人のデータを分析した。睡眠時間は自己申告質問票から、アミノ酸摂取量は3日間の食事記録から取得した。認知障害はMMSE(ミニメンタルステート検査)スコアが27以下と定義した。ベースラインの睡眠時間で、短時間睡眠群(6時間以下)、中程度睡眠群(7~8時間)、長時間睡眠群(8時間超)に分類し、認知障害発症率について中程度睡眠を基準とした短時間睡眠と長時間睡眠でのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。また、19種類のアミノ酸の摂取量の性別層別四分位数(Q)で、Q1を低摂取量群、Q2~Q4を中~高摂取量群とし、各睡眠時間群の認知障害発生率について中~高摂取量を基準とした低摂取量でのORと95%CIを推定した。

予測能の高い認知症リスクスコアが英国で開発

 認知症発症を予測するリスクスコアが英国で新たに開発され、既存のリスクスコアより高い予測能を有することが確認された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMelis Anaturk氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Mental Health」に8月21日掲載された。  認知症患者数が世界的に増加し、その対策が各国の公衆衛生上の喫緊の課題となっている。認知症発症リスクを予測し予防介入を強化することが、疾病負担の抑制につながると考えられることから、種々のリスクスコアが開発されてきている。ただし、いずれも予測能の限界が存在する。これを背景としてAnaturk氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」のデータを用いて新たなリスクスコアを開発し、その予測能を検証した。

「人生をエンジョイ」する人は認知症発症リスクが低い~JPHC研究

 人生をエンジョイすることは、自身の環境と楽しく関わる能力と関連しており、これは認知症リスクとも関連しているといわれている。順天堂大学の田島 朋知氏らは、日本の地域住民における人生のエンジョイレベルと認知症発症との関連を調査した。The Journals of Gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences誌オンライン版2023年9月18日号の報告。  対象は、Japan Public Health Center-based(JPHC)研究に参加した5年間のフォローアップ調査時点で45~74歳の日本人3万8,660例。心理的状態およびその他の交絡因子の特定には、自己記入式アンケートを用いた。認知症発症は、2006~16年の日本の介護保険(LTCI)制度に基づき評価した。Cox比例ハザードモデルを用いた、ハザード比[HR]および95%信頼区間[CI]を算出した。

eplontersen、遺伝性ATTRvアミロイドーシスに有効/JAMA

 ポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型(ATTRv)アミロイドーシス患者の治療において、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるeplontersenはプラセボと比較して、血清トランスサイレチン濃度を有意に低下させ、ニューロパチーによる機能障害を軽減し、良好なQOLをもたらすことが、ポルトガル・Centro Hospitalar Universitario de Santo AntonioのTeresa Coelho氏らが実施した「NEURO-TTRansform試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月28日号で報告された。   NEURO-TTRansform試験は、過去の臨床試験のプラセボ群(historical placebo)との比較を行う非盲検単群第III相試験であり、2019年12月~2021年6月に日本を含む15ヵ国40施設で患者のスクリーニングを実施した(米国・Ionis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

日本における軽度認知障害とアルツハイマー病の疾病負荷

 軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病の予防や管理対策の開発には正確な疫学データが必要とされるが、日本ではこのようなデータが不足している。九州大学の福田 治久氏らは、日本における新規発症のMCIまたはアルツハイマー病患者の疾病負荷と進行について調査を行い、急速に高齢化が進む国においてMCIやアルツハイマー病は優先度の高い疾患であり、本結果は日本におけるこれらの疾病負荷や進行について重要な初の考察を提供するものである、とまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年9月9日号の報告。

NSAIDなどを服用している高齢者、運転に注意

 認知機能が正常な高齢者の服用薬と、長期にわたる運転パフォーマンスとの関連を調査した前向きコホート研究の結果、抗うつ薬や睡眠導入薬、NSAIDsなどを服用していた高齢者は、非服用者と比べて時間の経過とともに運転パフォーマンスが有意に低下していたことを、米国・ワシントン大学のDavid B. Carr氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月29日号掲載の報告。  米国運輸省と米国道路交通安全局は、90種類以上の薬剤が高齢ドライバーの自動車事故と関連していることを報告している。しかし、自動車事故リスクの上昇が薬剤の副作用によるものなのか、治療中の疾患によるものなのか、ほかの薬剤や併存疾患によるものなのかを判断することは難しい。そこで研究グループは、認知機能が正常な高齢者において、特定の薬剤が路上試験における運転パフォーマンスと関連しているかどうかを前向きに調査した。

急性脳卒中への遠隔虚血コンディショニングは有効か?/JAMA

 急性脳卒中患者において、四肢虚血と再灌流の一過性サイクルによる遠隔虚血コンディショニング(RIC)を、病院到着前から病院到着後に継続して行っても、90日時点での機能的アウトカムは改善しなかった。デンマーク・オーフス大学病院のRolf Ankerlund Blauenfeldt氏らが、1,500例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、いつくかの有望な前臨床および臨床データが示されてはいたが、RICが急性脳卒中に対して有効な治療法かどうかは依然として不明であった。JAMA誌2023年10月3日号掲載の報告。

レビー小体病のバイオマーカーとして期待される「脂肪酸結合タンパク質」

 高齢人口の世界的な増加は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)などの認知症や運動機能障害といった、加齢に伴う疾患の増加につながる。これらの障害に関連するリスク因子の正確な予測は、早期診断や予防に非常に重要であり、バイオマーカーは疾患の診断やモニタリングにおいて重要な役割を担う。α-シヌクレイノパチーなどの神経変性疾患では、特定のバイオマーカーが疾患の有無や進行を示す可能性がある。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高用量rAAV9遺伝子療法後の死亡/NEJM

 米国・イェール大学のAngela Lek氏らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の27歳の男性患者において、dSaCas9(Cas9ヌクレアーゼ活性を不活化した“死んだ[dead]”黄色ブドウ球菌Cas9)-VP64融合を含有する組み換えアデノ随伴ウイルス血清型9(rAAV9)による治療を行った。投与後、患者は軽度の心機能障害と心嚢液貯留を発症し、遺伝子導入治療後6日目に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と心停止を来し、その2日後に死亡した。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号で「短報」として報告された。

運動誘発性ホルモンがアルツハイマー病の抑制に有望か

 運動中に分泌されるホルモンを用いた治療法が、アルツハイマー病(AD)に対する次の最先端治療となるかもしれない。運動により骨格筋から分泌されるイリシン(irisin)が、ADの特徴であるアミロイドβの蓄積を減少させる可能性が、米マサチューセッツ総合病院(MGH)Genetics and Aging Research UnitのSe Hoon Choi氏らの研究で示唆された。この研究の詳細は、「Neuron」に9月8日掲載された。  運動がアミロイドβの蓄積を減少させることは、ADモデルマウスを用いた研究によりすでに示されていたが、そのメカニズムは不明だった。運動をすると、骨格筋からのイリシン分泌が促されて、その血中濃度が上昇する。イリシンには脂肪組織中の糖と脂質の代謝を調節し、また、白質脂肪組織の褐色脂肪化を促すことでエネルギー消費量を増大させる働きがあると考えられている。過去の研究で、イリシンはヒトやマウスの脳に存在するが、AD患者やADモデルマウスではそのレベルが低下していることが報告されている。