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長期血圧変動性とCKD発症リスク~日本人5万人の調査

 非糖尿病者における長期血圧変動性が、他の血圧パラメータ(平均血圧、血圧への累積曝露など)と代謝プロファイルの変化に関係なく、慢性腎臓病(CKD)の新規発症リスクと関連しているかどうかは、いまだ不明である。今回、米国・ノースウェスタン大学の矢野裕一朗氏らは、糖尿病およびCKDではない中高年の日本人約5万人の調査データから、3年間の長期血圧変動性が、追跡期間中の血圧の曝露(平均もしくは累積)や代謝プロファイルの変化に関係なく、CKDの新規発症リスクと関連していたことを報告した。Hypertension誌オンライン版2015年5月18日号に掲載。 対象は、ベースライン時に糖尿病およびCKD(eGFR 60mL/分/1.73m2未満または尿試験紙で蛋白尿)ではなかった日本人4万8,587人。年齢は40~74歳(平均61.7歳)、男性の割合は39%であった。血圧測定は、ベースライン時ならびに年1回(3年間)の計4回実施した。この4回の血圧の標準偏差(SD)と平均変動幅を血圧変動性と定義した。 主な結果は以下のとおり。・3年目の血圧測定時に、全体の6.3%がCKDを発症していた。・多変量調整ロジスティック回帰モデルでは、臨床的特徴の調整後、収縮期血圧のSD(5mmHgごと)、拡張期血圧のSD(3mmHgごと)、収縮期血圧の平均変動幅(6mmHgごと)、拡張期血圧の平均変動幅(4mmHgごと)における1SDの増加が、CKDの新規発症と関連していた(それぞれのオッズ比[95%CI]は順に、1.15[1.11~1.20]、1.08[1.04~1.12]、1.13[1.09~1.17]、1.06[1.02~1.10]、すべてp<0.01)。また、測定した4回の血圧の平均とも関連していた。・血圧のSDおよび平均変動幅とCKDとの関連は、追跡期間中の代謝パラメータの変化について追加調整後も有意であった(各オッズ比:1.06~1.15、すべてp<0.01)。・性別、降圧薬の使用、高血圧の存在による感度分析でも、同様の結論を示した。

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ロシレチニブ、EGFR T790M耐性変異NSCLCに有効/NEJM

 ロシレチニブ(rociletinib)は、T790M耐性変異による上皮成長因子受容体(EGFR)変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)で、多くの前治療歴がある患者に対し、優れた抗腫瘍効果と持続的な病勢コントロールをもたらすことが、米国・マサチューセッツ総合病院のLecia V Sequist氏らの検討で示された。EGFR変異陽性NSCLC患者における既存のEGFR阻害薬に対する耐性の原因の多くはEGFR T790M変異である。ロシレチニブは新規の経口EGFR阻害薬であり、EGFR変異陽性NSCLCの前臨床モデルにおいて、T790M耐性変異の有無にかかわらず抗腫瘍活性が確認されている。NEJM誌2015年4月30日号掲載の報告。T790M耐性変異陰性例も含む第I/II相試験 研究グループは、EGFR変異陽性NSCLCに対するロシレチニブの安全性と有効性の評価を目的に第I/II相試験を行った。対象は、年齢18歳以上、全身状態が良好(ECOG PS 0/1)で、第1、2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療中に病勢が進行したEGFR変異陽性NSCLC患者であった。 T790M耐性変異の有無の同定のためにスクリーニング時に全例で腫瘍生検が行われた。第I相試験(用量決定期)の参加者はT790M耐性変異の有無は問われなかったが、第II相試験(拡大期)は中央判定による陽性例に限定された。 第II相試験では、ロシレチニブ500mg(1日2回)、625mg(同)、750mg(同)のいずれかの用量が投与された。治療は、21日を1サイクルとし、病勢進行、許容されない有害事象、患者の希望による中止のいずれかとなるまで継続した。 2012年3月~2014年4月に、米国、フランス、オーストラリアの10施設に合計130例が登録された。年齢中央値は60.0歳、女性が77%で、アジア人が15%含まれた。前治療レジメン数中央値は4、T790M耐性変異陽性例は57%だった。最大耐用量は不明、陽性例で奏効率59%、PFS中央値13.1ヵ月 最初に登録された57例は、遊離塩基型のロシレチニブ(150mg[1日1回]~900mg[1日2回])が投与された。残りの患者には、薬物動態プロファイルを改善した臭化水素酸塩(HBr)型のロシレチニブ(500mg[1日2回]~1,000mg[1日2回])が投与されたが、2型とも活性部分は同じである。 第I相試験では、最大耐用量(用量制限毒性の発現率が33%未満である最大投与量)は同定されなかった。頻度の高い用量制限毒性は高血糖のみであった。 治療用量(遊離塩基型900mg[1日2回]およびHBr型500mg[1日2回]、625mg[同]、750mg[同]、1,000mg[同])の投与を受けた92例で有効性解析を行った。63例(T790M耐性変異陽性例:46例、陰性例:17例)で評価が可能であった。 T790M耐性変異陽性例では、部分奏効(PR)が27例(59%)、病勢安定(SD)が16例(35%)で得られ、客観的奏効率は59%であり、病勢コントロール率は93%に達した。無増悪生存期間(PFS)中央値は13.1ヵ月であった。 一方、T790M耐性変異陰性例では、PRが5例(29%)、SDが5例(29%)で、客観的奏効率は29%、病勢コントロール率は59%であり、PFS中央値は5.6ヵ月であった。 治療関連有害事象は全般に頻度が低く軽度であった。治療用量投与例(92例)では、高血糖が47%、悪心が35%、疲労感が24%、下痢が22%、食欲減退が20%にみられた。Grade 3の有害事象として、高血糖が22%、補正QT間隔延長が5%に発現したが、下痢は認めなかった。 高血糖のほとんどは減量や経口血糖降下薬でコントロールが可能であり、治療中止例はなかった。Grade 3の補正QT間隔延長に症状はみられず、全例が減量にてコントロール可能であり、心室性不整脈の報告はなかった。また、ざ瘡様皮疹は認めなかったが、Grade 1の斑状丘疹状皮疹が1例にみられた。 著者は、「ロシレチニブは、中央値で4という多くの前治療歴のあるNSCLC患者において、T790M耐性変異陽性例で優れた抗腫瘍活性を示すとともに、陰性例にも一定の効果をもたらした」としている。

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第3世代EGFR-TKI、既存TKI耐性のNSCLCに有効/NEJM

 開発中の上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるAZD9291は、既存のEGFR-TKIに耐性となった非小細胞肺がん(NSCLC)に対し高い抗腫瘍効果を発揮することが、米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A Janne氏らの検討で示された。 EGFR T790M変異は、 EGFR 変異を認める肺がん( EGFR 変異陽性肺がん)患者のEGFR-TKIに対する薬剤耐性の獲得機構として最も頻度が高いとされる。AZD9291は、EGFR-TKI活性化変異およびT790M耐性変異を選択的かつ不可逆的に阻害する第3世代の経口EGFR-TKIで、前臨床モデルではこれらの変異の双方に有効であることが確認されている。NEJM誌2015年4月30日号掲載の報告より。約6割がアジア人の国際的第I相試験 本研究は、既治療の進行NSCLC患者におけるAZD9291の安全性と有効性を評価する国際的な第I相試験。対象は、EGFR-TKI活性化変異が確認されているか、または既存のEGFR-TKIによる前治療中あるいは治療後に画像検査で病勢の進行が確認された局所進行・転移性NSCLC患者であった。 被験者は、用量漸増コホートまたは用量拡大コホートに分けられ、両コホートとも5段階の用量(20、40、80、160、240mg、1日1回、経口投与)に無作為に割り付けられた。拡大コホートの患者は、 EGFR T790Mの有無を中央判定で確証するために、試験前に腫瘍生検が求められた。 日本、韓国、台湾を含む9ヵ国の33施設に253例が登録され、用量漸増コホートに31例、拡大コホートには222例が割り付けられた。女性が62%(156例)、アジア人が62%(156例)、腺がんが96%(242例)で、80%に細胞傷害性化学療法薬の投与歴があった。拡大コホートの62%(138例)で EGFR T790Mが検出された。T790M耐性変異例で奏効率61%、PFS中央値9.6ヵ月 本研究は進行中であり、2013年3月6日に患者登録が開始され、データのカットオフ日は2014年8月1日であった。用量漸増コホートの31例では、28日間の評価期間中に用量制限毒性(DLT)が発現しなかったため、最大耐用量(MTD)は確定されなかった。 全原因による有害事象で頻度の高いものとして、下痢(47%)、皮疹(40%)、悪心(22%)、食欲減退(21%)などが認められた。下痢と皮疹は用量依存性に増加する傾向がみられた。 Grade 3以上の有害事象は32%に発現した。有害事象による減量が7%、治療中止は6%に認められた。重篤な有害事象は22%にみられ、そのうち担当医が治療関連と判定したのは6%だった。アジア人と非アジア人で重症度や頻度の差はなかった。 肺臓炎様イベントは6例(2例は日本人以外のアジア人、4例は非アジア人)にみられ、いずれも治療中止となったが、データ・カットオフ時にすでに回復したか、回復しつつあった。また、高血糖が6例、補正QT間隔の延長が11例にみられた。7例が有害事象で死亡したが、薬剤関連の可能性が報告されたのは1例(肺炎)であった。 全体の客観的奏効率は51%(95%信頼区間[CI]:45~58%)であり(123/239例、完全奏効[CR]は1例)、病勢安定(SD)は33%(78例)であった。また、 EGFR T790M陽性例のうち評価が可能であった127例の奏効率は61%(95%CI:52~70%)、陰性例61例の奏効率は21%(95%CI:12~34%)だった。 奏効例のうち奏効期間が6ヵ月以上の患者の割合は85%であり、 EGFR T790M陽性例は88%、陰性例は69%であった。また、全体の無増悪生存期間(PFS)中央値は8.2ヵ月で、陽性例が9.6ヵ月(95%CI:8.3~未到達)、陰性例は2.8ヵ月(95%CI:2.1~4.3)であった。 著者は、「AZD9291は、EGFR-TKIによる前治療で病勢が進行した、 EGFR T790M変異陽性例を含む進行NSCLC患者において高い抗腫瘍活性を示した」とまとめ、「 EGFR T790Mは、NSCLCの予後バイオマーカーとされるが、今回の知見は本薬の有効性の予測バイオマーカーでもあることを示唆する」「EGFR-TKI耐性例ではMET阻害薬などと本薬の併用によりさらなる臨床転帰の改善が期待される」と指摘している。

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EGFR遺伝子変異検査、アジアで高い実施率

 ベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社(本社:東京都品川区)は2015年4月、肺がん専門医を対象としたの国際調査の結果を発表。この国際調査は、進行非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の診断、遺伝子変異検査、治療実態について把握することを目的として、10ヵ国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、スペイン、台湾、英国、米国)、562人の医師を対象に行われた。調査期間は2014年12月~2015年1月。ベーリンガーインゲルハイムがスポンサーとなり実施され、本年(2015年)の欧州肺癌学会議(ELCC)において発表された。 調査の結果、NSCLCと診断された患者のうちEGFR遺伝子変異検査を受けた割合はアジアでは92%と、欧州および米国の77%に対し高かった。なかでも日本では95%の患者に検査が実施されていた。 また、遺伝子変異検査前に1次治療を受けていた患者の割合は、アジアの12%に対し、米国26%、欧州30%と、地域により大きな差がみられた。検査が行われていない理由は、組織量が不十分であること、組織量が十分であるが不確実であること、患者の体力不良、検査結果が出るのが遅すぎることなどであった。またがん専門医の約半数(51%)が治療決定にEGFR遺伝子変異のサブタイプは影響しなかったと回答した。この点も、アジアでは28%、欧州では60%と、地域によって著しい差がみられた。ベーリンガーインゲルハイム ジャパンのプレスリリースはこちら。

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TAF配合の新規抗HIV薬、TDF配合薬に非劣性/Lancet

 HIV-1感染症の初回治療としての新規抗HIV薬配合薬エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビル-アラフェナミド(E/C/F/TAF、国内承認申請中)の安全性と有効性を、E/C/F/テノホビル-ジソプロキシルフマル酸塩(E/C/F/TDF、商品名:スタリビルド配合錠)と比較検討した2つの第III相二重盲検無作為化非劣性試験の結果が、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul E Sax氏らにより報告された。48週時点で両投与群とも90%超の患者で抗ウイルス効果が認められた一方で、腎臓と骨への影響は、E/C/F/TAF投与群がE/C/F/TDF投与群に比べて有意に低かった。著者は、「いずれの試験も、骨折や腎障害といった臨床的安全性イベントを評価する検出力はなかったが、E/C/F/TAFは、良好で長期的な腎臓および骨の安全性プロファイルを有すると思われる」と結論している。Lancet誌オンライン版2015年4月15日号掲載の報告より。TDF配合薬と比較、国際多施設共同の二重盲検無作為化非劣性試験 テノホビルのプロドラッグである既存のTDFは、血漿中の高いテノホビル濃度に関連した腎臓や骨への毒性作用を引き起こす可能性が指摘されている。TAFはテノホビルの新規プロドラッグで、TDFと比べて血漿中テノホビル濃度を90%低く抑えることを可能とした。第II相の試験において、TAF配合薬はTDF配合薬に比べて、eGFR、尿細管性蛋白尿、骨密度への影響の低下がみられ、腎臓や骨の安全性を改善する可能性が示唆された。同所見を確認するため第III相試験では、腎臓と骨の安全性に関するプロトコルを事前に規定して検討された。 報告された2つの試験は、日本を含む16ヵ国178施設の協力の下で行われ、推定クレアチニンクリアランス50mL/分以上で未治療のHIV感染症患者を対象とした。 被験者は、E/C/F/TAF(各含有量は150mg/150mg/200mg/10mg)またはE/C/F/TDF(TDF含有量300mg)を投与する群に無作為に割り付けられた。無作為化はコンピュータ生成配列法(4ブロック)にて行われ、HIV-1 RNA量、CD4数、参加国(米国とそれ以外)による層別化も行った。 主要アウトカムは、FDA が定義したSnapshot アルゴリズム解析を用いて、48週時点で血漿中HIV-1 RNA値50コピー/mL未満の患者の割合(事前規定の非劣性マージン12%)と、事前規定の48週時点の腎および骨のエンドポイントであった。 有効性と安全性に関する主要解析は、試験薬を1回受けたすべての患者を含んでintention-to-treatにて行われた。抗ウイルス効果は同等、腎臓と骨のエンドポイントはTAF配合薬のほうが良好 2013年1月22日~2013年11月4日に2,175例の患者がスクリーニングを受け、1,744例が無作為に割り付けられ、1,733例が治療を受けた(E/C/F/TAF群866例、E/C/F/TDF群867例)。 結果、48週時点の血漿中HIV-1 RNA値50コピー/mL未満患者の割合は、E/C/F/TAF群800/866例(92%)、E/C/F/TDF群784/867例(90%)、補正後両群差は2.0%(95%信頼区間[CI]:-0.7~4.7%)で、E/C/F/TAFのE/C/F/TDFに対する非劣性が認められた。 また、E/C/F/TAF群のほうが、血清クレアチニンの平均値上昇が有意に少なく(0.08 vs. 0.12mg/dL、p<0.0001)、蛋白尿(ベースラインからの%変化中央値:-3 vs. 20、p<0.0001)や、脊椎(同:-1.30 vs. -2.86、p<0.0001)および腰椎(-0.66 vs. -2.95、p<0.0001)の骨密度低下が有意に低かった。

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進行胃がん、c-MET陽性だと予後不良

 国立がん研究センター東病院の布施 望氏らは、標準化学療法を受けた進行胃がん患者において、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、上皮成長因子受容体(EGFR)、およびc-METの発現状況が独立した予後予測因子であるかどうかを検討した。その結果、c-METが陽性の場合に予後不良であることが示唆された。著者らは「これらのデータは今後、進行胃がんに対する治療薬剤の臨床試験のベースとして利用できる」としている。Gastric Cancer誌オンライン版2015年2月15日号に掲載。 組織学的に腺がんが確認され、1次化学療法としてS-1+シスプラチンの治療を受けた、切除不能・再発胃がんまたは胃食道接合部がん患者を適格とした。HER2、EGFR、c-METの状態は、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍サンプルを用いてIHC法で調べた。また、HER2の遺伝子増幅はFISH法を用いて調べた。陽性の定義は、HER2については、IHCスコア3+またはIHCスコア2+/FISH陽性、EGFRおよびc-METについては、IHCスコア2+または3+とした。 主な結果は以下のとおり。・9施設293例の患者のうち、HER2陽性が43例(15%)、EGFR陽性が79例(27%)、c-MET陽性が120例(41%)であった。10例(3%)がHER2、EGFR、c-METとも陽性であった。・追跡期間中央値は58.4ヵ月で、それまでに280例が死亡した。・HER2およびEGFRの発現状況(陽性/陰性)で全生存期間(OS)に有意差は認められなかったが、c-MET陽性例と陰性例ではOSに有意差が認められた[中央値:11.9ヵ月vs 14.2ヵ月、ハザード比:1.31(95%CI:1.03~1.67)、log-rank p=0.024]。・多変量解析によっても、c-MET陽性はOSの予後予測因子のままであった [ハザード比:1.30(95%CI:1.02~1.67)、p=0.037]。

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心房細動へのワルファリン、腎機能低いと大出血リスク増/BMJ

 心房細動でワルファリン服用を開始した高齢患者について、腎機能が低下しているほど、大出血リスクが増大することが明らかにされた。とくに服用開始30日以内でその傾向は顕著で、また消化管出血により増大することも示された。カナダ・カルガリー大学のMin Jun氏らが、アルバータ州の患者登録データを基に、約1万2,000例の患者について行った後ろ向きコホート試験により明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年2月3日号掲載の報告より。eGFRにより被験者を6分類 研究グループは2003年5月1日~2010年3月31日の間に、心房細動でワルファリンの服用を開始した66歳以上の患者で、ベースライン時に腎機能測定を行った1万2,403例について調査を行った。 被験者について、推定糸球体濾過量(eGFR)に基づき、90以上、60~89、45~59、30~44、15~29、15(mL/分/1.73m2)未満、の6群に分類し評価した。なお、末期腎不全患者については除外した。 主要評価項目は、頭蓋内や上部・下部消化管などの大出血による入院や救急外来の受診だった。服用30日の大出血率、eGFR値15mL/分/1.73m2未満群で63.4/100人年 被験者の平均年齢は77歳、49.3%が女性で、45%がeGFR値60mL/分/1.73m2未満だった。中央値2.1年の追跡期間中、大出血を呈したのは1,443例(11.6%)だった。 ワルファリン服用30日間の補正後出血率は、eGFR値が90mL/分/1.73m2超の人で6.1/100人年(95%信頼区間:1.9~19.4)だったのに対し、15mL/分/1.73m2未満の人で63.4/100人年(同:24.9~161.6)と高率だった。ワルファリン服用30日超の出血率についても同様な傾向が認められたが、その差は小さかった。この傾向は、主に消化管出血によるもので、eGFR値が15mL/分/1.73m2未満の人の同発症リスクは、90mL/分/1.73m2超の人の3.5倍に上った。頭蓋内出血については、腎機能低下によるリスクの増大は認められなかった。 また、eGFR値にかかわらず、ワルファリン服用開始30日以内の重大出血の発生率は、それ以降の追跡期間に比べ高率だった。

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安易な処方は禁物、リスク・ベネフィットを十分に評価すべき~分化型甲状腺がんに対するLenvatinib~(解説:勝俣 範之 氏)-312

 乳頭腺がん、濾胞腺がんは、甲状腺がんの80~90%を占め、分化型甲状腺がんと呼ばれる。一般に分化型甲状腺がんは、転移があっても緩徐な進行を示し、予後が良好とされる。一方、遠隔転移のある分化型甲状腺がんで、高齢者、ヨード治療に抵抗性になった場合には、予後不良となる。その場合、これまではこれといった有効な治療法はなかった。発育がきわめて緩徐であるため、化学療法剤にはほとんど反応せず、化学療法の適応になることはなかった疾患である。 しかし、ここ数年間で、分化型甲状腺がんに期待できる薬剤が開発されている。1つはSorafenibであり、もう1つが、今回New England Journal of Medicine誌に掲載されたLenvatinibである1)。両者とも、VEGFR(血管内皮細胞増殖因子受容体)に対するチロシンキナーゼ阻害剤で、VEGFRを阻害することにより、腫瘍増殖を抑制する。Sorafenibは、ヨード耐性分化型甲状腺がん患者に対し、無増悪生存期間(Progression-free Survival: PFS)をプラセボ群5.8ヵ月に対して、10.8ヵ月と有意に延長した結果をもたらした(hazard ratio [HR] 0.587、95% CI 0.454~0.758)2)。   この結果をもって、分化型甲状腺がんに対して、Sorafenibはわが国でも承認となった(2014年6月)。Lenvatinibは、VEGFRだけでなく、分化型甲状腺がんの増殖に関わるfibroblast growth factor receptors (FGFR)、BRAFにも作用し、作用の増強が期待される薬剤である。Sorafenibの試験と同様のヨード耐性分化型患者を対象として、臨床試験が行われ、プラセボ群3.6ヵ月と比較して、18.3ヵ月と大幅に無増悪生存期間を延長させた。ハザード比も、0.21(99%信頼区間0.14~0.31)というのは、 かなり驚異的な数字である。 注意しなければならないのは、副作用である。半数以上の患者に、高血圧、下痢、食欲不振、疲労、体重減少などが出現する。重篤な副作用として、肺塞栓なども出現した。加えて、Lenvatinib投与群では、副作用によると思われる治療関連死が6例(2.3%)あった。 前述のSorafenibと同様、この臨床試験のプライマリーエンドポイントが、真のエンドポイントであるOverall survivalではなく、PFSであったことは、この研究のウィークポイントである。プラセボ群の患者は、倫理的な面も配慮し、病状が悪化した際に、Lenvatinib投与、すなわち、クロスオーバーが認められている。クロスオーバーを認めたせいもあり、Overall survivalには、有意差を認めていない。著者らは、クロスオーバーを調整した解析も行っている(RPSFT解析)が、完全にクロスオーバーした影響を排除できるものではない。クロスオーバーしたことによりOverall survivalに影響を与える(プラセボ群の治療効果がよくなる)ということは、この対象患者に対して、すぐに治療を開始する必要がないとも考察できる。患者のQOLを評価していないことは、この研究のもう1つのウィークポイントである。 分化型甲状腺がんに対するLenvatinibは、2014年6月に承認申請されており、早ければ今年中にも承認される可能性がある。有効性に関しては、期待がされるものの、Overall survivalには影響を与えていないということ、重篤な副作用が報告されていて、治療関連死も存在することを認識すべきであり、決して安易に投与すべき薬剤ではない。投与を考慮する際にも、個々の患者に対して、十分にリスク・ベネフィットを考慮すべきである。 投与に際しては、分子標的薬に知識・経験が豊富な腫瘍内科医(がん薬物療法専門医)によって、投与されることが望ましい。すでに、Sorafenib投与に際して、日本甲状腺外科学会、日本内分泌外科学会、日本臨床腫瘍学会が連携して、甲状腺癌診療連携プログラムを施行することにより、患者に不利益がないように考慮されている。こうしたプログラムは有益なものと考えるが、より幅広く認知してもらうための工夫も必要と考えられる。

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甲状腺がん治療薬レンバチニブをFDAが承認

 エーザイ株式会社は16日、米国子会社であるエーザイ・インクが、自社創製の新規抗がん剤「Lenvima」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る適応で、米国食品医薬品局( FDA)より承認を取得したことをお知らせします。同剤は優先審査品目に指定されていたが、優先審査終了目標日より約 2ヵ月早い迅速な承認となったという。なお、今回の米国での承認が同剤に関する世界で初めての承認となる。 「Lenvima」は、血管新生や腫瘍増殖に関わるVEGFR、FGFR、RET、KIT、PDGFRなどに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な分子標的治療薬であり、とくに甲状腺がんの増殖、腫瘍血管新生に関与するVEGFR、FGFR およびRETを同時に阻害する。また、本剤は、VEGFR2 とのX線結晶構造解析から、新たな結合様式(タイプV)を有することが確認された最初の薬剤であり、速度論的解析からは、素早く強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されている。 今回の承認は、392人の進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんの患者を対象とした多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床第III相試験(SELECT試験)の結果に基づいているという。同試験において、「Lenvima」投与群はプラセボ投与群に比べ、主要評価項目である無増悪生存期間 (progression free survival: PFS)を統計学的に有意に延長した[p<0.001、Lenvima18.3ヵ月 vs プラセボ 3.6ヵ月(中央値)、ハザード比 0.21(99%信頼区間=0.14-0.31)]。また、Lenvimaは、プラセボに対して統計学的に有意に高い奏効率(完全奏効および部分奏効の割合)を示した(p<0.001、Lenvima 64.8% vs プラセボ 1.5%)。とくに、Lenvima投与群では、完全奏効が 1.5%(4例)確認されました(プラセボ投与群では0例)。Lenvima投与群において高頻度(頻度40%以上)に認められた副作用は、高血圧(67.8%)、下痢(59.4%)、疲労・無力症(59.0%)、食欲減退(50.2%)、体重減少(46.4%)、悪心(41.0%)でした。 同剤は、現在、日本、欧州のほか、スイス、韓国、カナダ、シンガポール、ロシア、オーストラリア、ブラジルで承認申請中であり、欧州では迅速審査品目に指定されている。引き続き、世界各国で承認申請を進め、承認取得後には同社が各国での販売を行なう予定。また、同剤に関しては、肝細胞がんを対象としたグローバル臨床第III相試験や腎細胞がん、非小細胞肺がんなど複数のがん腫を対象にした臨床第II相試験が進行中とのこと。詳細はプレスリリース(PDF)へ

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病院‐地域連携のコツ 糖尿病腎症の透析予防

 2015年2月5日、都内にて「糖尿病腎症の透析予防」をテーマにプレスセミナー(主催:ノボ ノルディスクファーマ株式会社)が開催された。本セミナーでは、糖尿病患者の腎障害が重症化して透析導入となることを防ぐため、病院と地元行政が連携して行っている新たな取り組みが発表された。■1人当たり年間500万円! 経済を圧迫する透析患者の医療費 高齢化が進展する日本において、透析による医療費増が財政圧迫の原因として課題となっている。透析患者の医療費は1人当たり年間500万超、総額約1.4兆円にも上り、とくに高齢化の進む地方自治体では深刻な問題となってきている。 糖尿病腎症は、15年以上にわたって新規透析導入の原因疾患の第1位となっており、現在その約44%を占めている。透析につながる糖尿病腎症の悪化は、患者のQOLの低下だけではなく医療経済への影響が大きいため、厚生労働省による「健康日本21(第2次)」では、「糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数の減少」が目標の1つとなっている。■行政と医療機関が連携するための3つのツールとは 上記のような国の政策を受けて、平井 愛山氏(千葉県循環器病センター 理事)は、糖尿病腎症の悪化による透析予防に対して、具体的な3つの対応策を紹介した。(1)「疫病管理MAP」を用いて、透析導入の可能性が高い患者を抽出し、優先的に介入する。(2)「透析予防指導ツール」を用いて、多職種が効率的に患者指導を行う。(3)「透析予防指導ワークフロー」を導入し、地域ぐるみの患者支援を実現する。 平井氏は、「今回の取り組みで、よりハイリスクな患者を優先して治療対象とし、多職種と連携して地域に根付いた質の高い患者指導を実践していくことが可能となった」と述べた。■優先的に治療患者を選定するには 平井氏が発案した「疾病管理MAP(以下、MAP)」は、尿検査(U-Alb、U-pro)と採血(eGFR、HbA1c)という簡便な検査結果を表計算ソフトにまとめることで、糖尿病患者の集団を危険度別に分類できる。この結果、効率的に治療患者を選定することができるという。MAPを用いることで、漏れのない腎症の評価と対象患者への積極的な指導介入が期待され、現在全国19の医療機関が導入している。■看護師・栄養士が連携して行う糖尿病透析予防指導とは 平井氏は、「糖尿病透析予防指導を実践するためには、『絵を用いた視覚的な指導』を『テーマを絞って』『短時間・頻回に』行うことが重要である」と強調した。そのうえで、多職種による協議を重ねて作成した「透析予防指導ツール(以下、指導ツール)」を基に、看護師による血圧・病態などの患者教育や栄養士による食事レシピ指導を紹介した。指導ツールをあらかじめ作成しておくことで、患者の診察の待ち時間などを利用した、短時間で効率的な指導を実践することが可能になるという。■地域連携における地元保健師が果たす役割とは 梅津 順子氏(埼玉県皆野町役場 健康福祉課)は、「透析予防指導ワークフロー(以下、指導ワークフロー)」を用いた医療機関と行政保健師の連携について紹介した。指導ワークフローを用いることで、病院から地域への情報提供をスムーズに行うことができる。地元保健師は指導ワークフローを基に患者宅を訪問し、指導内容の理解状況の確認・再指導やメンタルサポート、病院へのフィードバックをすることもできる。 梅津氏は、「指導ワークフローを基に地元保健師が患者の生活の場に赴くことで、患者の治療を困難とする原因を把握し、医療機関と共有することができた」と述べた。■今後の展望 継続した医療連携を行っていくためには、職域を越え、同じミッションを共有することで地域が一丸となって取り組む必要がある。平井氏は、「日本慢性疾患重症化予防学会」を立ち上げ、この取り組みを広げようとしている。同学会では、一人多病な高齢者の透析導入ハイリスク患者の抽出方法を確立し、透析予防に向け職種を越えた医療と行政の連携・協働を支援していく。 平井氏は、「本学会の取り組みは、特別な道具や薬を使用することなく、専門医がいない医療過疎地域でも糖尿病腎症の透析への悪化予防を期待できるものである」と強調した。

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腎除神経術は有効か?/Lancet

 これまでの検討で、治療抵抗性高血圧患者に対する腎除神経術の降圧効果は相反する結果が報告されている。フランス・パリ第5大学のMichel Azizi氏らは多施設共同前向き非盲検無作為化対照試験DENERHTNを行い、同患者へは段階的降圧薬治療(SSAHT)単独よりも、腎除神経術を併用したほうが、降圧効果が有意に大きいとの結果が得られたこと(6ヵ月時点の評価)を報告した。しかし著者は、いまだ腎除神経術の有効性、安全性評価の確立や、同手術による降圧の予測因子を明確にする必要があることを指摘し、「腎除神経術による降圧効果が長期に持続することが判明すれば、今回示された降圧効果が心血管罹患率の低減に寄与する可能性はある」と考察している。Lancet誌オンライン版2015年1月25日号掲載の報告より。腎除神経術+SSAHT vs. SSAHT単独で比較 DENERHTNは、フランス国内15ヵ所の3次医療センターで行われた。対象は、18~75歳の治療抵抗性高血圧患者で、無作為化前の4週間、標準的な3剤併用降圧治療(インダパミド1.5mg/日、ラミプリル10mg[またはイルベサルタン300mg]/日、アムロジピン10mg/日)の下でABPM測定を行い(たとえば4剤併用治療中だった患者は同3剤に切り替え)、治療抵抗性が確認された患者を適格とした。 適格患者は1対1の割合で、腎除神経術+SSAHTを受ける群(腎除神経術群)またはSSAHT単独群(対照群)に無作為に割り付けられた。腎除神経術は無作為化後2~4週に米国メドトロニック社製のSymplicityを用いて行われた。各センターでの施術は1~2人の専門医により行われた。 無作為化後のSSAHTは、両群とも血圧値が135/85mmHg以上となった場合、2~5ヵ月の間に順次、スピロノラクトン25mg/日、ビソプロロール10mg/日、プラゾシン5mg/日、リルメニジン1mg/日が追加された。 主要エンドポイントは、ABPM評価による日中の収縮期血圧のベースラインから6ヵ月時の変化の平均値とした。分析は盲検的に行われた。また安全性のアウトカムは、腎除神経術に関する急性有害事象の発生率、およびベースラインから6ヵ月時の推定糸球体濾過量(eGFR)の変化であった。降圧効果は腎除神経術+SSAHT群が有意に大きい 2012年5月22日~2013年10月14日に、1,416例の患者が適格性の有無に関してスクリーニングを受け、そのうち106例が無作為に割り付けられた(各群53例:intention-to-treat集団)。分析は、エンドポイントが得られなかった患者を除く101例で行われた(腎除神経術群48例、対照群53例:修正intention-to-treat集団)。 結果、主要エンドポイントは、腎除神経術群-15.8mmHg(95%信頼区間[CI]:-19.7~-11.9)、対照群-9.9mmHg(同:-13.6~-6.2)、両群差はベースライン補正後-5.9mmHg(同:-11.3~-0.5)で、腎除神経術群のほうが対照群よりも有意に降圧が大きかった(p=0.0329)。 また、6ヵ月時点の両群の降圧薬の剤数(中央値:5、IQR:4~7、p=0.7005)およびアドヒアランス(腎除神経術群74.5%、対照群72.5%、p=0.7704)は、いずれも同等であった。 腎除神経術関連の有害事象は3例示されたが、いずれも軽度であった(腰痛2例、軽度の鼠径部血腫1例)。 ベースラインから6ヵ月時のeGFR値は、両群で同様に軽度な低下が観察された(腎除神経術群-4.0%、対照群-6.2%、p=0.7260)。

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S3-01. The TNT trial: A randomized phase III trial of carboplatin (C) compared with docetaxel (D) for patients with metastatic or recurrent locally advanced triple negative or BRCA1/2 breast cancer (CRUK/07/012)(Tutt A, UK)

TNT試験:局所進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)またはBRCA1/2乳がんにおけるカルボプラチンとドセタキセルの効果を比較する第III相試験トリプルネガティブ乳がんで、転移性または再発局所進行乳がんにおいて、カルボプラチン6AUCを3週毎6サイクルまたはドセタキセル100mg/m2を3週毎6サイクル行う群に分けて治療を行い、PDになったらクロスオーバーする試験である(図1)。主要評価項目は3または6サイクルでのORR(CRとPR)、副次評価項目はPFS、OS、クロスオーバー後のORR、毒性である。各群188例(計376例)であり、大半が転移性、術後補助療法としてタキサン使用が約30%、肝転移または肺転移が約50%、再発までの期間は中央値2.1年であった。除外基準は12ヵ月以内に術後補助療法としてタキサンを使用、プラチナ製剤の治療歴、転移性乳がんの治療に対するアンスラサイクリン以外の使用である。サブグループ解析としてあらかじめ、BRCA1/2変異、basal-likeサブグループ(PAM50とIHC)、HRDのバイオマーカーの状況による比較を予定した。BRCA1/2変異はICR Genetics社とMyriad社で測定したが差はなく、BRCA1変異31例、BRCA2変異12例(計43例)であった。PAM50は、50遺伝子の発現をRT-PCR法とマイクロアレイの技術を使って評価し、乳がんのサブタイプを分類するものであり、luminal typeにおける再発リスクを予測するツールでもあるが、210例でサブタイプの評価がなされた。IHCはCK5/6とEGFRを使って中央評価された。HRD(Homologous recombination deficiency)スコアは、Myriad社で開発されたアッセイによりLOHの数を測定し、相同組換えの欠損を客観的に示すものであり、これが高値であることは、BRCA変異と関連している。治療のコンプライアンスとして85%以上の投与量で完遂できた割合は、両群とも72~73%であった。毒性は嘔気、嘔吐がカルボプラチンで多かった以外は、すべてドセタキセル群で高頻度であった(血小板減少については記載なし)。グレード3〜4に関しても同様であった。ドセタキセル群は途中から予防的G-CSFを用いるようにプロトコールの改訂が行われている。ORRはカルボプラチン群で31.4%、ドセタキセル群で35.6%と有意差は認められなかった。クロスオーバー(N=182)後もそれぞれ、22.8%、25.6%と有意差はなかった。PFS、OSも差はみられなかった。BRCA1/2の状況別にみてみると、変異のあった43例では、ORRがそれぞれ、68.0%、33.3%であり、絶対差が34.7%(95%CI:6.3~63.1、p=0.03)と有意差がみられたのに対し、変異のない273例では有意差はなく、むしろドセタキセルのほうでレスポンスが高い結果であった(28.1%対36.6%)(図2)。PFSは、カルボプラチン群で、BRCA1/2変異あり6.8ヵ月(95%CI:4.4~8.1)、BRCA変異1/2なし3.1ヵ月(95%CI:2.4~4.2)と倍以上の差があったが、タキソテール使用ではBRCA1/2変異の有無で差がみられなかった(4.8対4.6ヵ月)(図3)。HRDスコアはBRCA変異がある場合に高値を示す傾向があったが、HDRスコアの高値/低値で分けても、カルボプラチンとドセタキセルでORRに差はみられなかった。PAM50でサブタイプを評価したとき、basal-likeではカルボプラチンとドセタキセルでORRに差がなかったが、non basal-likeではカルボプラチンで16.7%であったのに対し、ドセタキセルで73.7%と大きな差がみられた。しかしIHCでbasalの評価をした場合には有意差は認められなかった。BRCA1/2変異を有するトリプルネガティブ乳がんにおけるカルボプラチンの効果は、過去の報告と合わせて見た場合ほぼ確定的と思われる。PrECOG 0105試験(第II相)ではカルボプラチンにゲムシタビンとイニパリブを加えた時のpCR率が、変異なしで33%、変異ありで47%、変異があるトリプルネガティブ乳がんで56%であった。ドイツのGeparSixto試験(第II相)の中で、トリプルネガティブ乳がんでアントラサイクリン/タキサンにカルボプラチンを上乗せしたpCR率は、乳がん・卵巣がん家族歴があったり、BRCA1/2変異があると、20%以上上昇することが示されていた(ASCO2014レポート:トリプルネガティブおよびBRCA変異とカルボプラチンの効果)。TBCRC009試験(第II相)では、転移性乳がんにおいてBRCA1/2変異がある場合のトリプルネガティブ乳がんでのプラチナ製剤の奏効率(PR+CR)が、BRCA1/2変異保有者で54.5%、非保有者で19.7%であった。今回の試験でもタキサンやゲムシタビン、PARP阻害剤を併用しなくても、BRCA1/2変異保有トリプルネガティブ乳がんにおけるカルボプラチン単独の効果が非常に高かったことから、使用価値がある薬剤と考えられる。術前後での使用については、まだ予後への影響が明確ではないものの、BRCA変異保有者では十分考慮されるべき薬剤であろう。【図1】図1を拡大する【図2】図2を拡大する【図3】図3を拡大する

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肺がん患者と医療者の乖離を埋める―WJOG

 「患者さんのためのガイドブック よくわかる肺がんQ&A(第4版)」(編集:NPO法人西日本がん研究機構、以下WJOG)の発行を記念して、「肺がんの最新治療に関するセミナー~分子標的薬の登場で肺癌治療は大きく変わった~」が2014年11月28日、都内にて行われた。当日は、中川和彦氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 教授)、本書の編集を行った澤 祥幸氏(岐阜市民病院 がん診療局長)が講演した。 中川氏の講演では、肺がん診療の最新情報が紹介された。講演の中で、中川氏は次のように述べた。肺がんの治療は最近の20~30年で大きく進歩している。とくに2002年のEGFR–TKIゲフィチニブの登場以降、ALK阻害薬、第2世代EGFR-TKIが次々に登場している。今後も第3世代EGFR-TKI、PD-1やPD-L1など新たな免疫療法なども治療選択肢として加わってくると考えられ、肺がん治療は大きく変化していくことが予想される、と述べた。また、このように新たな臨床試験が数多く出てくる中、EBMや診療ガイドラインを踏まえ、肺がんについての正しい情報を研究者から一般社会に伝えることが重要であるとも述べた。 続いて、澤 祥幸氏が、肺がん患者の疑問とその対応に関して次のように述べた。がん患者は告知の際、医療者に対し自分自身の不安を解決するため希望的回答を期待している。しかし、がんであるという事実は最悪の知らせである。将来への見通しを根底から否定的に変えてしまうため、冷静な状態ではいられない。担当医にしてみれば、しっかり説明したのに理解してもらえない。一方、患者も家族も真剣に説明を聞いていたはずなのに覚えていないという事態に陥る。また、希望的回答への期待を裏切られたことが医療者への不信を招き、診療への否認行動をとるなど、その後のトラブルにつながることもある。さらに、悪い知らせを聞いた後、一部の患者は適応障害やうつ病に陥る。がん患者の自殺率は健康人の4倍との報告もあり、これも大きな問題である。 がんと診断された後、がん患者・家族はどのような情報を求めているのか? 肺がんの種類・進行度、標準治療といった情報を伝えようとする医療者とは乖離があるようだ。WJOGはその乖離を明らかにするため、各地で開催する市民講座の際、患者・家族の疑問や質問を収集した。その結果、患者の疑問・質問の上位は、「もっといい病院・医者は?」「抗がん剤治療が不安」「補完代替医療、免疫療法」「術後の痛み」「がん告知の問題」などであった。実際にサプリメントや高額な民間療法に頼る患者、治療拒否により手遅れになる患者、医療費控除制度を知らず経済的不安から治療を拒否するケースも少なくないと、澤氏は言う。 「よくわかる肺がんQ&A(第4版)」は、このように収集した疑問・質問をまとめる形で、本年(2014年)11月7日に発行された。Q&A は119項目からなり、医師向けのガイドラインにはない、補完代替医療の説明、不安・衝撃へのアドバイス、医療費といった項目も含まれる。今版は市民の要望に応え、書店でも購入可能である。価格帯も市民が気軽に買えるよう2,200円(+税)に設定。今後はwebフリーダウンロードの予定もある。amazon リンク:「患者さんのためのガイドブック-よくわかる肺がんQ&A(編集;西日本がん研究機構-WJOG)」はこちら。

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アファチニブ LUX-Lung 3 試験の日本人サブグループ解析

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃)は 11 月 17 日、ジオトリフ(一般名:アファチニブマイレン酸塩)の国際共同第 3 相臨床試験LUX-Lung 3 試験の日本人のサブグループ解析結果を発表した。 この結果は第 55 回日本肺癌学会学術集会にて、本年(2014年)11月 16 日に発表されたもの。LUX-Lung3試験では、EGFR 遺伝子変異陽性を有する非小細胞肺がんの未治療の患者 345 人を、ジオトリフ群と、ペメトレキセド+シスプラチン群に 2:1 の割合で無作為割り付けし、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として OS などが検討された。 日本人患者83 人を対象として検討されたこのサブグループ解析の結果、全体のOSは、ジオトリフ群で 46.9ヵ月、ペメトレキセド+シスプラチン群で35.8ヵ月。一般的EGFR 遺伝子変異(Del19 および L858R)患者のOS は、それぞれ46.9ヵ月と35.0ヵ月。Del19 遺伝子変異患者のOS は、それぞれ46.9ヵ月と31.5ヵ月であった。 主なグレード 3 以上の有害事象(10%以上)の発現率は、ジオトリフ群で爪の異常 26%、下痢 22%、発疹/ざ瘡 20%、標準的化学療法群で好中球数減少 50%、白血球減少 25%であった。日本ベーリンガーインゲルハイムのプレスリリースはこちら

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nintedanib、FDAの特発性肺線維症(IPF)治療適応を取得

 ドイツ ベーリンガーインゲルハイムは10月16日、nintedanibが特発性肺線維症(以下IPF)の治療を適応として、米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得したと発表した。 IPFは重度かつ致死的肺疾患で、診断後の生存期間の中央値は2~3 年。これまでFDAで承認されたIPFに対する治療薬はなかった。 nintedanibは、肺線維症の発現機序への関与が示唆されている増殖因子受容体である血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤。臨床試験において早期疾患患者、蜂巣肺が認められない患者、肺気腫合併患者など、さまざまなIPF患者において呼吸機能の年間減少率を50%抑制し、病勢進行を遅らせることが明らかになっている。また、急性増悪発現のリスクを68%抑制した。FDA から「Breakthrough Therapy」の指定を受けている。 IPFは慢性かつ進行性の経過をたどり、最終的には死に至る肺線維化疾患だが、現時点で利用できる治療選択肢は限られている。有病率は、世界で14~43人/10万人と推定されている。IPFは時間経過と共に肺組織の瘢痕化によって呼吸機能が損なわれ、日常の身体活動にも支障をきたす。ベーリンガーインゲルハイムのプレスリリースはこちら

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EGFR-TKIで脳転移の放射線治療を温存

 非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の脳転移については、一般的に放射線治療が行われているが、EGFR-TKIの登場により変化が起こりそうである。2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、千葉県立がんセンターの井内 俊彦氏は「EGFR-TKI時代の非小細胞肺癌脳転移治療~非照射TKI単独治療の効果と安全性」と題し、自施設での臨床試験の結果を紹介した。 NSCLCの脳転移については、手術療法、放射線療法、薬物療法といった幅広い治療が行われる。なかでも、定位照射・全脳照射といった放射線療法は、EGFR変異の有無にかかわらず標準的に行われている。だが、転移性脳腫瘍に対する全脳照射の認知機能障害に対するコンセンサスは得られていない。それにもかかわらず、放射線療法が選択される理由の1つは、薬剤への期待度が低いことである。 しかし、全脳照射の後にEGFR-TKIを投与することで転移巣が縮小する症例に遭遇することがあり、臨床データの報告もある。くわえて、EGFR変異陽性例では脳転移との関連性が高い。井内氏らの施設におけるNSCLC 1,100例以上の統計では、EGFR変異陽性例の脳転移頻度は31%で野生型より有意に多く、かつ脳転移例の44%がEGFR変異陽性であった。こうした背景から、EGFR変異陽性NSCLC脳転移例に対するEGFR-TKIの効果が期待される。 井内氏らは、EGFR-TKIでコントロールすることで放射線治療の開始を遅らせ、認知機能障害の危険性を低くすることができるのでは、という仮説のもと、EGFR変異陽性NSCLC脳転移例に対するEGFR-TKI単独治療の有効性と安全性を評価した。評価項目は、EGFR-TKI奏効率、放射線治療を回避できた期間(脳転移診断から放射線治療までの期間)、頭蓋内制御期間(脳転移診断後のPFS)、脳転移診断後の生存期間とした。 対象は自施設のEGFR変異陽性非小細胞肺がん77例。初回治療でゲフィチニブを投与し、頭蓋内・外再発後はエルロチニブに変更。ゲフィチニブ投与後の脳転移例では、初回からエルロチニブを投与。以上の治療で病変が進行した際、放射線治療を行うというプロトコルとした。 結果、EGFR変異例は、Ex19delが62%、L858Rが32%、その他は少数であった。 ゲフィチニブ一次治療症例は66例、エルロチニブ一次治療は11例。ゲフィチニブ一次治療例のうち32例はエルロチニブの二次治療を行っている。 ゲフィチニブの奏効率(RR)は78%、病勢コントロール率95%、頭蓋内制御期間の中央値は11.9ヵ月ときわめて良好であった。エルロチニブの奏効率は71%、病勢コントロール率は93%、頭蓋内制御期間は5.0ヵ月であった。 放射線治療を回避できた期間は、中央値で16.7ヵ月。77例中、43%の症例で生涯にわたり放射線治療を必要としなかった。 脳転移診断時からの生存期間中央値は20.9ヵ月であった。 有害事象についてはグレード4のものは認められなかった。中枢神経系関連の有害事象も認められず、脳転移があっても安全にEGFR-TKIが投与できると考えられた。 今回の結果から、NSCLC脳転移に対するEGFR-TKIの有効性が示唆される。今後、さらなる試験で確認する必要はあるが、NSCLCの脳転移例に対するEGFR-TKIの選択に1つの可能性を提示したといえそうだ。

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急がれるAll RAS検査承認

 2014年7月29日(火)、東京都千代田区において大腸がんにおけるバイオマーカー「RAS遺伝子」をテーマにしたプレスセミナー(主催:メルクセローノ株式会社)が開催された。その中で、愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部長/外来化学療法センター長である室 圭氏が、「大腸がんのさらなる『個別化治療』に向けて バイオマーカーとしての『RAS遺伝子』の可能性」と題して講演を行った。 いまや「個別化治療」は、がんの領域においても広く用いられる言葉の1つである。がんにおける個別化治療とは、バイオマーカーである遺伝子の検査結果に基づき、その患者さんに効果が期待できる薬剤選択を行い、治療を進めることである。個別化治療が広く浸透することによって、患者さんにより高い治療効果が得られる薬剤を投与することができるだけでなく、治療効果が期待できない薬剤を投与しないことで無駄な出費が抑えられ、国民医療費の削減にもつながる。 現在、切除不能大腸がんに投与することのできる分子標的薬のうち、セツキシマブやパニツムマブなどの抗EGFR抗体薬は、KRAS(exon2)野生型の患者さんに効果を示すことがわかっている。そのため、治療薬を投与する前にKRASの遺伝子型を調べ、KRAS変異型の患者さんには他の治療法を選択することが一般的である。しかしながら近年、KRAS(exon2)野生型であっても、治療薬が奏効しない患者さんが存在し、それはKRASのexon3、exon4やNRASの変異型を持つ患者であることがわかってきた。そのため、KRAS、NRASを含むRAS(All RAS)遺伝子検査の必要性が高まっている。 これを受け欧米では、2013年よりセツキシマブやパニツムマブの適応を、KRAS野生型からRAS野生型へ変更したが、本邦でAll RAS検査が承認されるのは、おそらく2014年末から2015年になるだろうと室氏は語る。現時点で保険償還が認められている検査は、KRAS(exon2)遺伝子検査のみであるが、All RAS検査承認へ向け、日本臨床腫瘍学会のホームページでは、「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス」を公開しており、閲覧およびダウンロードができるため、参考にされたい。日本臨床腫瘍学会ホームページ2014年04月10日「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス」が完成しました。 大腸がんでは、近年さまざまな分子標的治療薬の登場により、生存期間中央値は30ヵ月まで延長している。今後、さらなる個別化治療を進めるためにも、一刻も早いAll RAS検査の承認が望まれる。

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日本における大腸がんの新薬開発状況

 切除不能大腸がんに対する化学療法においては、既に発売されている薬剤のHead to Headの比較試験が実施されている一方で、新たな治療薬の開発治験も進んでいる。7月17~19日に開催された第12回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「切除不能大腸がん治療戦略の展望」をテーマとしたインターナショナルセッションが企画され、そのなかで、日本における切除不能大腸がんに対する新規薬剤の開発状況について、吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院消化管内科)が講演した。その内容を紹介する。TAS-102 日本で開発されたTAS-102(一般名:トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)が今年3月に承認され、現在は日本でのみ販売されている。 本剤の国際共同第III相試験(RECOURSE試験)は、標準治療に不応・不耐の治癒切除不能進行・再発大腸がん800例を対象に、プラセボを対照として実施された。その結果、生存期間中央値はプラセボ群5.3ヵ月に対しTAS-102群で7.1ヵ月と延長し、全生存のハザード比は0.68(p<0.0001)であった。副作用は、骨髄抑制が比較的強いが、吉野氏によると発熱性好中球減少に注意すれば使いやすい薬剤という。TAS-102と他の薬剤との併用 実験モデルでは、TAS-102とイリノテカンとの併用で最も強い抗腫瘍効果が認められたが、イリノテカンの薬物強度が低く、さらなる検討が必要である。現在米国で投与スケジュールを変更した臨床試験が進行中である。 ベバシズマブとの併用レジメンの有用性を検討する多施設第Ib/II相試験(C-TASK FORSE)が、医師主導治験として吉野氏を中心に今年2月から実施されており、来年のASCOで最初の報告を予定している。nintedanib nintedanibは、VEGFR1-3、FGFR1-3、PDGFRα/β、RETをターゲットとする低分子チロシンキナーゼ阻害薬であり、現在、非小細胞肺がん、腎がん、肝がん、卵巣がんなどに対しても臨床試験が行われている。大腸がんにおいては、標準治療不応症例に対するプラセボとの比較試験(LUME Colon 1 Trial)が近々開始予定とのことである。BRAF阻害薬 大腸がんにおけるBRAF遺伝子変異陽性の割合は少ないものの非常に予後が悪い。BRAF遺伝子変異陽性大腸がんに対する治療としては、FOLFOXIRI単独またはFOLFOXIRIとベバシズマブの併用が有効であるが、副作用が強く全身状態(PS)が悪い場合は投与できない。 開発中のBRAF阻害薬のうち、悪性黒色腫に有効なvemurafenib(申請中)は、単独ではBRAF遺伝子変異陽性大腸がんに対する効果は小さく、現在、セツキシマブとイリノテカンとの併用で検討されている。また、encorafenib、dabrafenibにおいても、抗EGFR抗体(セツキシマブ、パニツムマブ)との併用や、さらにPI3Kα阻害薬、MEK阻害薬も併用するレジメンでの第II相試験が進行している。 最後に吉野氏は、自らが代表を務める多施設共同研究(GI screen 2013-01)における進捗状況を紹介した。本研究は、今後の新薬開発に役立てるため、日本人の切除不能大腸がん症例におけるKRAS、BRAF、NRAS、PIK3CAの遺伝子変異割合を検討することを目的に今年2月に開始。来年3月までに1,000例の登録を目標としているが、7月14日時点で313例に達していると報告した。

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肺がんに分子標的薬の同時併用? 臨床腫瘍学会2014

 非小細胞肺がんの化学療法未治療例に対し、EGFR-TKIと抗VEGF抗体の併用がPFSを延長する可能性が、第二相試験の結果から示された。2014年7月17日~19日まで福岡市で開催された第12回日本臨床腫瘍学会において、国立がん研究センター東病院 後藤功一氏が、再発非小細胞肺がんの一次治療におけるエルロチニブとベバシズマブの併用療法の試験結果を発表した。 EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)におけるEGFR-TKIの有効性は既に証明されているものの、EGFR-TKIを単独で用いるか併用するか、併用するならどの薬剤を用いるか、などは未だ明らかになっていない。前臨床試験では、EFGRとVGEFRの同時阻害による抗腫瘍活性の相乗効果が示唆されている。臨床試験では、第三相試験であるBeTa Lung studyで、EGFR変異陽性NSCLCの二次治療において、エルロチニブとベバシズマブの併用が、エルロチニブ単独に比べ、OSを延長する可能性を示唆している。そこで今回は、一次治療における同薬剤の併用療法を評価する、オープンラベル第二相無作為比較試験を行った。 対象患者は、化学療法未実施のステージIIIB~IVのEGFR変異陽性非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)。2011年2月から2012年3月まで、30施設で154例の患者が登録され、エルロチニブ+ベバシズマブ群77例、エルロチニブ群77例に無作為に割り付けられた。エルロチニブの用量は150mg/日、ベバシズマブの用量は15mg/kg。3週毎にPDとなるまで投与された。 主要エンドポイントはPFS。副次的エンドポイントはOS、奏効率、安全性、QOLである。統計的な優越性の検出をHR0.7に設定し、サンプルサイズは150とした。主要エンドポイントであるPFS中央値は、・エルロチニブ+ベバシズマブ群16.0ヵ月、エルロチニブ群の9.7ヵ月と、併用群で有意なPFSの延長を認めた(HR=0.54 95%CI:0.36~0.79、P=0.0015)。副次的エンドポイントについて奏効率は、・エルロチニブ+ベバシズマブ群69%、エルロチニブ群63%と同等であったが、病勢コントロール率は、エルロチニブ+ベバシズマブ群99%、エルロチニブ群88%と併用群で有意に高かった。・奏効期間の中央値は、エルロチニブ+ベバシズマブ群13.3ヵ月、エルロチニブ群9.3ヵ月と有意に併用群で長かった。安全性については、・有害事象による治療中断は両群で同程度であった。・両群に共有する主な有害事象は、皮疹、高血圧、タンパク尿、肝機能障害であり、高血圧とタンパク尿については、併用群で有意に多かった。・グレード3の間質性肺炎は、エルロチニブ群に3例認められた。・ベバシズマブの主な投与中止理由はタンパク尿と出血イベント。中断時期の中央値はそれぞれ、329日と128日で、出血イベントについては比較的早期に発現していた。 ちなみに、OSは中央値に達していない。 エルロチニブ+ベバシズマブ群はエルロチニブ群に比較して有意にPFSを延長し、新たな有害事象を認めることはなく、毒性に関しても従来の試験と同等であった。

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【JSMO見どころまとめ(3)】国内で開発された大腸がん治療薬

 2014年7月17日(木)から3日間にわたり、福岡国際会議場ほかにて開催される、第12回日本臨床腫瘍学会学術集会に先立ち、先月6月27日、東京都中央区にて日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催された。そこで行われた、馬場 英司氏(九州大学大学院医学研究院 九州連携臨床腫瘍学講座)による講演「消化器がん」を簡潔にまとめる。【まとめ】・本学術集会での重要なテーマの1つは、国内で開発された新規抗がん薬TAS-102である。TAS-102は、全生存期間を延長させると報告された大腸がん治療薬であり、大変注目度が高い。・大腸がんを中心に抗EGFR抗体薬、および抗VEGF抗体薬の開発が盛んに行われてきたが、はたして、より効果のある治療法はどちらなのか? KRAS野生型例に対し、FOLFIRIにセツキシマブもしくはベバシズマブを併用したFIRE-3試験などの結果についても検討が必要だ。 本学術集会でも議論を行っていく。< 大腸がんに関する注目演題 >■プレナリーセッションテーマ:“結腸・直腸癌におけるTAS-102臨床試験”日 時:2014年7月18日(金) 13:40~15:40  会 場:Room1(福岡サンパレス2F「大ホール」)■インターナショナルセッション7テーマ:“Future perspective of therapeutic strategy for metastatic colorectal cancer”日 時:2014年7月17日(木) 15:50~17:50  会 場:Room1(福岡サンパレス2F「大ホール」)【第12回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会 期:2014年7月17日(木)~19日(土)■会 場:福岡国際会議場、福岡サンパレス、福岡国際センター■会 長:田村 和夫氏(福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学 教授)■テーマ:包括的にがん医療を考える~橋渡し研究、がん薬物療法からサバイバーシップまで~第12回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページ

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