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第34回 10代のSNS利用増、認知テストのスコア低下と関連か?米国大規模調査が示す懸念と対策の必要性

「若者のSNS利用は良いこと? 悪いこと?」この問題をめぐる議論は、世界中の教育者の間で熱を帯びていると言っていいでしょう。SNSが心に悪影響を与えるという研究があれば、「測れるほどの影響はない」という反論も出ます。そんな混沌とした状況が、子供たちや家庭を守るための明確なルール作りを遅らせてきた側面は否めません。そんな中、JAMA誌に掲載された最新の研究は、私たちに新たな視点を与えてくれます1,2)。今回の記事では、思春期初期のSNS利用時間の増加が、10代の認知能力にどのような影響を与えているのかについて明らかにしたこの研究について解説していきます。SNS利用時間の追跡、10代の利用パターン今回ご紹介する研究は、アメリカで行われている大規模な追跡調査「Adolescent Brain Cognitive Development (ABCD) Study」のデータをもとにしています。研究チームは、6,554人の子供たちを9歳から13歳まで追跡しました。そして、彼らが3年間にわたって、具体的に「ソーシャルメディア(SNS)」にどれくらいの時間を費やしているか、その利用パターンの違いを分析したのです。その結果、子供たちのSNS利用には、大きく分けて3つの異なるグループがあることがわかりました。まず、過半数の子供たち(57.6%)は、「ほとんど、あるいはまったく使わない」グループに属していました。彼らのSNS利用時間は非常に少なく、13歳時点でも1日の平均利用時間はおよそ18分にとどまりました。次に大きなグループ(36.6%)は、「低い頻度で(徐々に)増加する」パターンを示しました。9歳時点では利用時間が少なかったものの、年齢とともに増え、13歳時点では1日の平均利用時間がおよそ78分に達していました。少数派ながら見過ごせないグループ(5.8%)は、「高頻度で(急激に)増加する」経過をたどりました。彼らの利用時間も最初は少なかったのですが、その後急激に増加し、13歳時点では1日の平均利用時間が3時間以上と、他のグループに比べて突出して長くなっていました。ここで重要なのは、これらの時間はあくまで「SNS」の利用時間であり、ゲーム、動画視聴、学習目的でのコンピュータ利用など、他のスクリーンタイムは含まれていないという点です。SNS利用と脳のパフォーマンス次に研究チームは、これらの異なるSNS利用パターンが、13歳時点での認知能力とどのように関連しているかを調べました。認知能力の測定には、米国国立衛生研究所が開発した標準化されたテストが用いられました。そして、分析に当たっては、研究開始時点(9歳)での認知スコアを考慮に入れることで、もともとあった能力差が結果に影響するのを最小限に抑えました。その結果、一貫した傾向が見られました。「ほとんど、あるいはまったく使わない」グループと比較して、「低頻度で増加する」グループと「高頻度で急増する」グループの両方が、13歳時点でいくつかの重要な認知テストにおいて低いスコアを示したのです。具体的には、以下の項目で有意な差が見られました。読解認識文章を読む能力に関連絵画語彙言語知識を測る絵画シーケンス記憶出来事を覚える能力を測る総合スコア全体的な認知能力を示すさらに、これらの差には「量反応関係」のような傾向が見られました。つまり、「高頻度で急増する」グループは、「低頻度で増加する」グループよりも、基準となる「ほとんど使わない」グループとのスコア差が大きい傾向があったのです。ただし、この結果を解釈するには注意も必要です。統計的には意味のある差(偶然とは考えにくい差)でしたが、標準化されたスコアで見ると、実際の点差は比較的小さかったのです。また、3つのグループすべての平均スコアは、年齢相応の「平均的な範囲」内に収まっていました。では、この「小さな差」は重要ではないのでしょうか? 必ずしもそうとは言えません。集団レベルで見ればわずかな認知能力の平均的な違いでも、実社会では大きな影響をもたらす可能性があるからです。たとえば、平均的に課題を終えるのに時間がかかるようになったり、数学や読解のような積み重ねが必要な科目で遅れが出やすくなったり、学業への意欲そのものが低下したりするかもしれません。とくに、今回の研究で影響が見られたのが、語彙力や読解力といった、学習や経験を通じて獲得される能力(結晶性知能と呼ばれる)であったことは、この懸念を裏付けているようにみえます。なぜ関連が? 考えられる理由この研究は、SNS利用時間の増加と認知スコアの低さの間に「関連がある」ことを示しましたが、SNSが認知スコア低下の「原因である」と証明したわけではありません。しかし、研究者たちは、その関連性を説明できるいくつかの有力なメカニズムを挙げています。一つは「置き換え仮説」です。SNSの画面をスクロールしている時間は、本来であれば宿題、読書、趣味、あるいは学校での活動など、認知能力の発達にとってより有益な活動に使われたかもしれない時間です。SNSがこれらの活動時間を奪ってしまうことが、とくに言語知識系のスコア低下につながっているのではないかと考えられます。もう一つの重要な要因は「睡眠」です。思春期は脳が劇的に発達する時期であり、質の高い睡眠は学習、記憶の定着、感情のコントロールに不可欠です。しかし、SNSプラットフォームは、絶え間ない通知、アルゴリズムによって無限に続くフィード、刺激的なコンテンツなどで、若者の就寝時間を遅らせ、夜中の睡眠を妨害することが知られています。慢性的な睡眠不足が、注意力や学習能力に直接的な悪影響を与えている可能性があります。もちろん、逆の関係性も考えられます。つまり、もともと認知能力があまり高くない若者が、退屈しのぎや、アルゴリズムに惹きつけられやすいといった理由で、SNSにより多くの時間を費やすようになる可能性です。原因と結果の関係をはっきりさせるには、さらなる研究が必要でしょう。政策を動かすのに「十分な証拠」と言えるのか?このように、まだ解明されていない点や研究上の限界はあるものの、今回の研究結果は、既存の証拠と合わせて考えれば、社会的な対策の導入を正当化するのに「十分な証拠」なのかもしれません。エビデンス自体の強固さに疑問がついたとしても、政策決定は、証拠の確かさだけでなく、問題の緊急性、対策を講じること・講じないことの利益と不利益、実現可能性などを総合的に考慮して判断しなければならないからです。SNSには、社会的なつながりを育んだり、疎外された若者を支援したりといった潜在的な利点もあるでしょう。しかし、利益追求を第一とするプラットフォーム企業が、本質的に子供の利益を最優先する動機を持っているわけではないとも指摘されています。そして、今回の研究で示唆された発達上のコストを考えれば、行動を起こさないことのリスクは大きいとも論じられています。実際、かつて鉛への曝露に関する研究が、比較的小さな認知能力への影響を示唆しただけでも、大きな政策変更や公衆衛生上の対策につながった例もあります。それならば、今回観察された認知能力の差も、政策立案者が真剣に受け止めるべきなのかもしれません。年齢制限、より安全性を考慮したプラットフォーム設計基準、企業への説明責任の強化といった規制措置が、今こそ必要なのかもしれません。さらなる研究が待たれる一方、今回の研究は、思春期初期という脳の発達にとって極めて重要な時期におけるSNS利用が、無視できない認知的コストを伴う可能性を強く示唆しています。若者の健全な発達をデジタル時代にどう守っていくか。今こそアクションを検討すべき重要な問いだと言えるでしょう。 参考文献 1) Nagata JM, et al. Social Media Use Trajectories and Cognitive Performance in Adolescents. JAMA. 2025 Oct 13. [Epub ahead of print] 2) Madigan S, et al. Developmental Costs of Youth Social Media Require Policy Action. JAMA. 2025 Oct 13. [Epub ahead of print]

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結腸がん術後ctDNAによるde-escalation、リスク低減も非劣性は示されず(DYNAMIC-III)/ESMO2025

 術後のctDNA検査の結果をその後の治療選択に役立てる、という臨床試験が複数のがん種で進行している。DYNAMIC-IIIは結腸がん患者を対象に、術後のctDNA検査結果に基づいて、術後化学療法の強度変更を検討した試験である。今年6月の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)ではctDNA陽性の治療強化例の解析結果が発表され、治療強化は無再発生存期間(RFS)を改善しないことが示された。10月17~21日に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、Peter MacCallum Cancer Centre(オーストラリア・メルボルン)のJeanne Tie氏がctDNA陰性のde-escalation(治療減弱)の解析結果を発表した。ctDNA陽性例と合わせた本試験の結果は、Nature Medicine誌オンライン版2025年10月20日号に同時掲載された。・試験デザイン:多施設共同ランダム化第II/III相試験・対象:切除可能、StageIII結腸がん患者。術後5~6週でctDNA検査を受け、試験群と対照群に1:1の割合で割り付け・試験群:de-escalation群(6ヵ月のフルオロピリミジン[FP]単剤療法→経過観察または3ヵ月のFP単剤に変更、3ヵ月のオキサリプラチン+FP併用療法→3~6ヵ月のFP単剤に変更、6ヵ月の併用療法→3ヵ月の併用療法または6ヵ月のFP単剤に変更、から選択)353例・対照群:標準治療群(ctDNA検査の結果は非表示、医師選択による治療)349例・評価項目:[主要評価項目]3年RFS(片側97.5%信頼区間の下限が-7.5%を超えない場合、非劣性と判断)[副次評価項目]治療関連入院、ctDNA陰性化など 主な結果は以下のとおり。・参加者968例のうち、702例(72.5%)がctDNA陰性だった。353例がde-escalation群、349例が標準治療群に割り付けられた。追跡期間中央値47ヵ月中、90.4%(319/353例)がde-escalationを受けた。・de-escalation群は、標準治療群と比較してオキサリプラチンベースの化学療法の実施率が低く(34.8%対88.6%、p<0.001)、Grade3以上の有害事象(6.2%対10.6%、p=0.037)および治療関連入院(8.5%対13.2%、p=0.048)も少なかった。しかし、3年RFSはわずかに低下し、de-escalationの非劣性は示されなかった(3年RFS:85.3%対88.1%、差:-2.8%)。・サブグループ解析では、低リスク群(T1~3N1)においては、de-escalationが非劣性となる可能性が示唆された(3年RFS:91.0%対93.2%、差:-2.2%)。 Tie氏は「術後ctDNA陰性例の3年RFSは87%と高く、再発リスクは低かった。ctDNAによるde-escalationは対象者の9割で実行可能で、オキサリプラチン曝露量と有害事象を低減した。標準治療と比較した非劣性は示せなかったものの、低リスク例においては標準治療に近い結果が得られる可能性が示された。今後は個々の患者によるリスク・ベネフィットをさらに議論する必要があるだろう」とした。

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心筋梗塞の非責任病変は結局どうしたら良いのか?(解説:山地杏平氏)

 非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)症例で多枝冠動脈疾患を有する患者を対象に、責任病変のみを治療する群と、非責任病変に対してFFR(fractional flow reserve)を用いた評価に基づき完全血行再建を行う群を比較したSLIM試験が、ESC 2025で発表され、同日JAMA誌に掲載されました。 本試験は、欧州の9施設で実施された多施設共同無作為化比較試験であり、NSTEMIおよび多枝病変を有する478例が登録されました。主要評価項目は、1年後の複合エンドポイント(全死亡、非致死性心筋梗塞、任意再血行再建、脳卒中)であり、完全再建群では13例(5.5%)、責任病変群では32例(13.6%)に発生し、完全再建群で有意に低値でした(ハザード比:0.38、95%信頼区間:0.20~0.72、p=0.003)。とくに再血行再建の発生率は、完全再建群で3.0%、責任病変群で11.5%と大きな差が認められました。 本試験を考えるうえで重要なのは、非責任病変の扱いです。責任病変のみ治療群でも、イベントには含まれない形で、ハートチームの判断により13%(31例)に非責任病変へのPCIが施行されました。一方、完全再建群ではFFRに基づく評価が行われ、約47%(116例)で非責任病変へのPCIが実施されました。 この「ハートチームの判断」という点が本研究のやや曖昧な部分であり、実質的には「FFRによる機能的評価」と「ハートチームによる臨床的判断」の比較になっています。そのため、今回の結果をそのまま実臨床に適用する際には慎重な解釈が求められます。たとえば、目視でFFRを算出できる熟練者がハートチームに参加していた場合や、冠動脈造影ベースでFFR評価を行った場合には、本試験で観察された差は見られなかった可能性があります。 いずれにせよ、今回の研究結果を踏まえると、NSTEMI症例のような高リスク症例においては、FFRで治療適応と評価される病変に対して積極的に完全血行再建を行うことが、その後の再血行再建イベントの予防に有効であると考えられます。一方で、FFRで治療適応がないと評価された病変でも、不安定プラークを有する場合には将来のイベントリスクが高いとされます。心筋梗塞における非責任病変のリスク層別化は、引き続き検討が必要な課題です。

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DLBCL 1次治療の動向と課題、今後の展望/日本血液学会

 第87回日本血液学会学術集会で企画されたシンポジウム「B細胞リンパ腫に対する新規治療」において、九州大学の加藤 光次氏が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する1次治療の動向と課題、今後の展望について講演した。標準治療はPola-R-CHOPへ DLBCLは悪性度が高いが治癒も望める疾患であり、1次治療の成否が予後を大きく左右する。1次治療は20年以上にわたりR-CHOP療法が標準治療であったが、「約30%の患者が再発または治療抵抗性となる点が大きな課題であった」と加藤氏は指摘した。 そのような中、ポラツズマブ ベドチンとR-CHOPを併用するPola-R-CHOPをR-CHOPと比較した国際共同第III相POLARIX試験において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、その効果は5年時点でも維持されていることを紹介した。この結果は国内の大規模リアルワールドデータ研究によっても裏付けられつつあり、Pola-R-CHOPは新たな標準治療として確立しつつあると述べた。DLBCL 1次治療における3つの課題 しかしながら、このような進歩にもかかわらず、治癒可能なDLBCLの1次治療には3つの重要な臨床的課題に直面していると加藤氏は述べ、1)初回治療抵抗性が残ること、2)初回治療後も20~30%が再発すること、3)患者の半数以上が70~80歳以上の高齢であることを挙げた。 なかでも高齢者治療は喫緊の課題である。リアルワールドデータでは、80歳以上の患者に対してもPola-R-CHOPは良好な奏効率(ORR:87.3%)を示しているが、実際には副作用を懸念して化学療法(とくにシクロホスファミドやドキソルビシン)が半量となっている場合が多く、最適な治療強度をいかに維持するかが鍵となると指摘した。 この課題に対し、日本では高齢者機能評価を導入し、高齢患者の治療前状態(Fit/Frail)を評価するG-POWER試験や、減量レジメン(R-mini-CHOP)とポラツズマブ ベドチンの併用を検討するPOLAR mini-CHP試験などが進行中であることを紹介した。分子サブタイプに基づく個別化医療へ 治療抵抗性や再発の根本的な原因として、加藤氏は、DLBCLが単一の疾患ではなく、生物学的に多様な不均一性を持つことを挙げた。 近年、DLBCLはABC型、GCB型といった従来の分類に加え、より詳細な分子サブタイプに分類されるようになり、特定のサブタイプに合わせた分子標的治療の開発が進行している。POLARIX試験のサブ解析においても、Pola-R-CHOPによるPFS改善は、DLBclassによる特定の分子サブタイプ(C5)で顕著であったことが報告されている。加藤氏は、これらの分子サブタイプ分類は、リスク層別化を強化し、今後プレシジョン・メディシンのアプローチにつながると期待を示した。今後の展望~ctDNAと新規薬剤 加藤氏は今後の展望として、治療効果をより早期かつ正確に判断するため、循環腫瘍DNA(ctDNA)や微小残存病変(MRD)評価の重要性を語った。POLARIX試験において、治療1コース後にctDNA量が多い患者は予後が悪かったことが報告されている。治療の早期にctDNAをモニタリングし、その後の再発リスクを予測することで、治療のescalationやde-escalationを判断するresponse-adapted strategyへの期待を語った。 加藤氏はその一例として第II相ZUMA-12試験を挙げ、1次治療早期に効果不十分な高リスク患者に対して、早期にCAR-T細胞療法に切り替えた場合、完全奏効率が86%と有望な成績が得られたことを紹介した。 現在、1次治療として二重特異性抗体、CAR-T療法、BTK阻害薬などの多くの新しい治療法が開発されている。加藤氏は「2028年には何を選ぶべきか決断を迫られるだろう」と予測し、さらに「将来の治療選択は、分子サブタイプ、患者特異的因子、response-oriented approachによって導かれるだろう」と述べ、講演を終えた。

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国際学会発表の「読み原稿」を作成する【タイパ時代のAI英語革命】第10回

国際学会での英語プレゼンは医師の必須スキル現在、国際学会で英語による研究発表を行うことは、医師にとって欠かせないスキルとなりつつあります。また、近年では国内の学会でも英語でのプレゼンテーションを求められるケースが増えており、多くの方が英語の発表に苦労した経験をお持ちではないでしょうか。今回から数回にわたり、国際学会での英語プレゼンテーションにおいて、ChatGPTをはじめとするAIツールをどのように活用できるかをご紹介します。英語の壁を克服する国際学会発表で最も大きなハードルとなるのは、やはり「英語の壁」です。とくに大きな課題の1つが、英語でわかりやすい発表原稿を作成し、流暢にプレゼンすることです。非ネイティブスピーカーの多くの日本人医師にとって、発表用に英語の読み原稿を作成するのが一般的だと思いますが、この作業は決して簡単ではありません。しかし、生成AIを上手に活用すれば、この読み原稿作成を飛躍的に効率化することができます。AIを使った原稿作成にはコツがありますが、一度慣れれば、誰でも短時間で質の高い原稿を準備できるようになります。今回は、「英語プレゼンテーションの読み原稿作成」を、ChatGPTを使ってやる方法を、2パターンに分けてご紹介します。ご自身のスタイルや準備状況に応じて、最適な方法を選択してください。2つの方法を組み合わせることも可能です。方法1:まずは日本語で完璧な原稿を作成し、AIに翻訳させる自分の研究内容について、日本語では完璧に説明できるものの、英語で説明するのは難しいと感じる人は多いかもしれません。とくに論理展開をはっきりとさせたい場合などは、まずは日本語で記述してからそれを翻訳するというプロセスを踏むとよいでしょう。文章が完成したら、ChatGPTに翻訳を依頼します。その際、単に「翻訳して」とお願いするのではなく、どのような目的の文章なのかを具体的に伝えることが、より精度の高い翻訳を得るための鍵です。プロンプト例#役割あなたは医学論文や学会発表の翻訳を専門とする翻訳家です。#命令以下の日本語の文章を、国際的な医学学会での口頭発表用の英語原稿に翻訳してください。#制約条件専門用語は正確に翻訳してください。聴衆にわかりやすい、明瞭な表現を用いてください。スピーチとして自然な、丁寧な口語体でお願いします。#日本語原稿[ここに、作成した日本語の原稿を貼り付ける]実際にこのプロンプトを使った際に、私が用意した日本語原稿がこちらです。「皆さん、こんにちは。本日はこのような貴重な機会をくださり誠にありがとうございます。私はマウントサイナイ医科大学の原田 洸と申します。本日は生成AIをいかにして医療現場で活用するかについてお話をさせていただきます。生成AIは生活の至る所で活用されるようになっています。しかし、医療現場のAI活用はまだ十分ではありません」それに対するAIの回答がこちらです。“Hello everyone. Thank you very much for giving me the opportunity to speak today. My name is Ko Harada, and I am a physician at the Icahn School of Medicine at Mount Sinai. Today, I would like to talk about how generative AI can be integrated into clinical practice. As many of you know, generative AI is increasingly being used in various aspects of our daily lives. However, its application in the medical field is still quite limited.”詳しく見てみると、“As many of you know,”などの適切なフレーズを補って、プレゼンとして適切な文章にしてくれていることがわかります。方法2:スライドから原稿を作成するすでにスライドやポスターが完成しており、プレゼン用の原稿を作成したいという場合は、こちらの方法をお勧めします。作成したpptファイルをアップロードして、それを基に原稿を作成するというものです。なお、ChatGPTの場合、無料版ではファイルのアップロードに制限がある可能性があるのでご注意ください。今回は、プレゼンスライドが完成した状態で原稿を作るためのプロンプトの例を紹介します。プロンプト例#役割あなたは○○を専門とする医師です。#命令添付ファイルのプレゼンについて、読み原稿のスクリプトを作成してください。#制約条件プレゼンは英語です。プレゼンの長さは○分程度の予定です。スライド○からスライド○まで、それぞれのスライドの読む内容を作成してください。専門用語は正確に翻訳してください。聴衆にわかりやすい、明瞭な表現を用いてください。スピーチとして自然な、丁寧な口語体でお願いします。アウトプット例Slide 1: Title SlideScript: Good morning, everyone. Thank you for being here today.My name is Dr. Ko Harada, and I’m from the Department of Geriatrics and Palliative Medicine at the Icahn School of Medicine at Mount Sinai. Today, I will be talking about falls in older adults ― why they happen, how we can prevent them, and what we can do to support older patients after a fall.Slide 2: Learning ObjectivesScript: Here are the learning objectives for today’s presentation. First, we will identify key risk factors that increase fall risk in older adults. Second, we will look at medications and comorbidities that contribute to falls, and discuss safer alternatives.Finally, we will explore evidence-based interventions to reduce fall risk and prevent serious complications.Slide 3: Case PresentationScript: Let’s begin with a clinical case. This is a 92-year-old female with a history of depression, hypothyroidism, COPD, hypertension, and high cholesterol.She recently visited the emergency department after falling and injuring her left shoulder. X-rays showed no fracture or dislocation, and she was advised to wear a sling. Three days later, she came to the clinic because the pain was still severe.このように、スライドに基づいて原稿を作成してくれます。注意点としては、図や表など文字が少ないスライドでは情報が少ないため、原稿も短くなる傾向があります。それらのスライドでは方法1で紹介したように、そのスライドで伝えたい内容を日本語で作成し、翻訳するのがよいでしょう。

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将来的には点眼薬で老眼を改善できるかも?

 1日に2~3回使用する点眼薬が、将来的には老眼鏡に取って代わる老眼対策の手段となる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。点眼薬を使用した人のほとんどが、視力検査で使用されるジャガーチャート(以下、視力検査表)を2、3行以上余分に読めるようになっただけでなく、このような視力の改善効果が2年間持続したことが確認されたという。老眼先端研究センター(アルゼンチン)センター長であるGiovanna Benozzi氏らによるこの研究結果は、欧州白内障屈折矯正手術学会(ESCRS 2025、9月12~16日、デンマーク・コペンハーゲン)で発表された。 この点眼薬には、瞳孔を収縮させ、近見の焦点を調節する筋肉を収縮させるピロカルピンと、ピロカルピン使用に伴う炎症や不快感を軽減するNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)のジクロフェナクという2種類の有効成分が含まれている。研究グループは、766人(平均年齢55歳、男性393人、女性373人)を対象に、異なるピロカルビン濃度(1%、2%、3%)の点眼薬を投与する3つのグループに分けて、その有効性を調べた。対象者は、最初に点眼薬を投与されてから1時間後に老眼鏡なしで視力検査表をどの程度読めるかをテストし、その後2年間にわたって追跡調査を受けた。 その結果、ピロカルピン1%群(148人)の99%が最適な近見視力に達し、視力検査表で読むことができる行数が2行以上増えたことが示された。また、ピロカルピン2%群では69%、ピロカルピン3%群では84%が3行以上多く読むことができた。点眼薬によるこのような視力の改善効果は、最長で2年間、中央値で434日、持続した。副作用は概ね軽度であり、患者の32%が一時的な視界の暗さやぼやけを経験し、3.7%が点眼時の刺激感、3.8%が頭痛を報告したが、使用を中止した患者はおらず、眼圧の上昇や網膜剥離などの深刻な目の問題は見られなかった。 Benozzi氏は、「これらの結果は、老眼の重症度に応じて異なる濃度の点眼薬を処方できる可能性があることを示唆している。老眼が軽度の患者は1%の濃度で最もよく反応したが、老眼がより進んだ患者では、視力の大幅な改善を達成するために2%または3%のより高い濃度が必要だった」と述べている。 この研究結果をレビューしたボーフム大学(ドイツ)眼科病院の眼科部長Burkhard Dick氏は、「この研究結果は、老眼手術を受けられない人にとっては特に重要な可能性がある」と話す。ただし同氏は、ピロカルピンとNSAIDを長期使用すると、望ましくない副作用が生じる可能性があると指摘し、「この治療法が広く推奨される前に、安全性と有効性を確認するためのより広範で長期にわたる研究が必要だ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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利尿薬による電解質異常、性別・年齢・腎機能による違いは

 高血圧や心不全の治療に広く用いられる利尿薬には、副作用として電解質異常がみられることがあり、これは生命を脅かす可能性がある。これまでの研究では、利尿薬誘発性の電解質異常は女性に多く発現することが示唆されている。電解質バランスは腎臓によって調節されており、腎機能は加齢とともに低下する傾向がある。慶應義塾大学の間井田 成美氏らは、性別、腎機能、年齢が利尿薬誘発性の電解質異常の感受性に及ぼす影響を考慮し、利尿薬の副作用リスクが高い患者を特定するため本研究を実施した。Drug Safety誌2025年10月号の報告。 日本の利尿薬服用患者6万7,135例のレセプトデータをDeSCヘルスケアから入手し、2020年4月~2021年3月のデータを分析対象とした。 主な結果は以下のとおり。・カイ二乗検定を用いた患者数の解析では、高カリウム血症は男性で女性より多く(326例vs.271例、p=0.003)、低カリウム血症は女性で男性より多くみられた(413例vs.285例、p<0.001)。・女性において年齢と腎機能(推算糸球体濾過量:eGFR)を考慮し、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。・75歳以上の高齢患者では、女性は男性と比較し、低カリウム血症発症のORが、eGFR 30~60mL/分/1.73m2の場合で1.47(95%CI:1.13~1.91)、eGFR 30mL/分/1.73m2未満の場合で2.05(95%CI:1.08~4.10)であった。 著者らは「75歳以上の女性では、eGFRが低い場合、男性よりも低カリウム血症のORが高かった。本結果は、eGFRが低い高齢女性では、利尿薬の副作用、とくに低カリウム血症のモニタリングが重要であることを強調するものである」と結論付けている。

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がん治療関連心機能障害のリスク予測モデル、性能や外部検証が不十分/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学のClara Gomes氏らは、がん治療関連心機能障害(CTRCD)のリスクを予測するために開発または検証されたすべての予測モデルのシステマティックレビューと、性能の定量的解析を目的としたメタ解析を行った。その結果、現存するCTRCD予測モデルは臨床応用に先立ち、さらなるエビデンスの蓄積が必要であることを報告した。現存するモデルについては、重要な性能指標に関する報告が不足し外部検証も限られていたことが正確な評価を妨げており、Heart Failure Association-International Cardio-Oncology Society(HFA-ICOS)ツールは、とくに軽度CTRCDに関する性能が不十分であった。著者は、「今後は、さまざまながん種を対象とする大規模なクラスター化データセットを用い、既存モデルの検証と更新を進め、その性能、汎用性および臨床的有用性を高めるべきである」とまとめている。BMJ誌2025年9月23日号掲載の報告。CTRCDのリスク予測モデルを開発または検証した56件の研究について解析 研究グループは、Medline(Ovid)、Embase(Ovid)、およびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、データベース開始から2024年8月23日までに発表された文献を検索した。 適格基準は、がん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスクを推定するための予測モデルの開発・検証・更新を報告している論文で、欧州心臓病学会(ESC)のcardio-oncologyガイドラインに記載されているCTRCDのいずれかを含み、CTRCDが主要アウトカムもしくは複合心血管アウトカムの一部であり、対象集団が化学療法または分子標的治療(チロシンキナーゼ阻害薬、モノクローナル抗体、免疫療法など)を受けた患者で、予測モデルは少なくとも2つ以上の予測因子を含み、予測モデルの使用予定時期が全身性抗がん治療の開始前または治療後のサバイバー期であることであった。適格基準を満たせば、非がん患者向けに開発された心血管リスク予測モデルの外部検証研究も対象とした。放射線誘発性心毒性に関する研究は除外した。 2人の評価者がそれぞれ研究のスクリーニングとデータ抽出を行い、Prediction model Risk Of Bias ASsessment Tool(PROBAST)を用いてバイアスリスクを評価した。予測モデルの性能はランダム効果メタ解析で統合した。 1万935件の論文がスクリーニングされ、適格基準を満たした56件の研究が解析対象となった。このうち29件が1つ以上の予測モデルを開発し、20件が外部検証を実施し、7件が開発と外部検証の両方を実施していた。ほぼすべてのモデルでバイアスリスク高、HFA-ICOSツールは軽度CTRCDを過小評価 最終的にがん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスク予測モデルとして51件が特定された。67%(34/51件)は成人データから開発され、その多くは乳がん(20/34件、59%)または血液悪性腫瘍(6/34件、18%)を対象とし、治療前リスクの予測を目的としていた(33/34件、97%)。一方、小児・青年・若年成人(39歳以下)を対象としたモデルでは、大半(16/17件、94%)ががん生存者を研究対象とし、血液悪性腫瘍や胚細胞腫瘍を含む多様ながん種(14/17件、82%)が含まれた。 開発モデル51件のうち25%(13件)、外部検証44件のうち14%(6件)でのみ性能指標や較正指標が報告されていた。ほぼすべてのモデルで、バイアスリスクが高かった。 開発モデル51件中12件(24%)(若年群4/17件[24%]、成人群8/34件[24%])が開発モデルに対して外部検証を受けていた。最も多く検証されたのはHFA-ICOSツール(11回)であり、主にHER2標的療法を受ける乳がん患者(5/11件、45%)で使用されていた。このツールは、すべての外部検証でリスクを過小評価する傾向を示し、とくに軽度CTRCDが多く報告された研究では、観察されたイベント発生率が予測リスクを上回っていた。抗HER2治療を受けた乳がん患者における統合C統計量は0.60(95%信頼区間:0.52~0.68)であった。同集団にて観察されたイベント発生率は、低リスク群で12%(予測値<2%)、中リスク群で15%(2~9%)、高リスク群で25%(10~19%)、超高リスク群で41%(≧20%)であった。

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白内障の両眼同日手術、安全性と有効性が示される

 白内障の両眼同日手術は安全かつ有効で、実用的である可能性が、2件の研究で示された。白内障手術は通常、数週間から数カ月の間隔を開けて片眼ずつ行われる。しかし、両眼を同時に手術しても安全性や有効性に違いはなく、手術後に患者が自宅で自立して過ごす能力を妨げることはないことが示されたという。これらの研究結果は、欧州白内障屈折矯正手術学会(ESCRS 2025、9月12~16日、デンマーク・コペンハーゲン)で発表された。 英ムーアフィールズ眼科病院の眼科医Gabriele Gallo Afflitto氏は、「患者にとって、これらの結果は心強いものだ。特に、多焦点レンズの挿入と組み合わせた場合、同日に両眼の白内障手術を受けることで優れた視力を得られ、眼鏡に頼る必要性も減り、より早い回復が期待できることを、これらの結果は示している」と話している。 白内障は両眼に発生することが多い。眼の水晶体が濁って視界がぼやけ、視力が低下した場合に手術が必要になり、濁った水晶体を人工のレンズ(眼内レンズ)に置き換える。眼内レンズには単焦点と多焦点があり、眼鏡のレンズのように選択することができる。 1件目のAfflitto氏らの研究では、ムーアフィールズ眼科病院で2023年12月から2024年12月の間に両眼の白内障手術を受けた1万192人の患者のデータが分析された。その結果、同日に両眼に多焦点レンズを挿入した患者の85%、単焦点レンズを挿入した患者の約70%で20/20以上の視力が得られたことが明らかになった。一方、片眼ずつ2回に分けて手術を受けた患者では、77%が20/20以上の視力が得られたという。さらに、手術後に、手術前の目標屈折度数と術後の実測値との差が小さかった(±0.5ディオプター)患者の割合は、同日に両眼に多焦点レンズを挿入した患者の88%、片眼ずつ2回の手術で単焦点レンズを挿入した患者の67%、同日に両眼に単焦点レンズを挿入した患者の71%であった。 ムーアフィールズ眼科病院のコンサルタント眼科外科医であるVincenzo Maurino氏は、「患者と病院にとって、このアプローチには待機時間の短縮や視力の早期回復、通院回数の削減、さらには全体的なコスト削減といった効率面でのメリットがある。しかも、患者のアウトカム低下を伴わずにこれらのメリットが得られるのだ」とニュースリリースの中で述べている。 Silkeborg Regional Hospital(デンマーク)のMia Vestergaard Bendixen氏らによる2つ目の研究では、デンマークで白内障の同日両眼手術を受けた157人の患者を対象に、退院後の生活における支援の必要性について調査が行われた。その結果、88%が「自宅内を自分で移動できた」と回答していたほか、79%が「食事の準備ができた」、51%が「携帯電話の使用に支援は必要なかった」と回答していた。全体として、62%が「手術後24時間以内に介助者の必要性は全くなかった」と回答した。一方で、51%が「点眼薬の使用にはまだ助けが必要だった」と回答していた。 Bendixen氏は、「患者の多くは手術後すぐに自立した生活ができるようになると期待して良いだろう。このことは、支援の必要性についての不安の軽減につながるかもしれない。ただし、術後1日目は介助者からのサポートが有益な場合もある」と話している。また、同氏は「臨床医にとって、この研究結果は両眼同日手術の実施を支持するとともに、患者教育や必要に応じた一時的なサポートの計画の重要性を強調するものでもある」としている。 ESCRSのJoaquin Fernandez氏は、2件の研究について、「一度に両眼の白内障手術を安全に行えること、術後も自宅で良好な回復が得られること、そして何よりも、2回に分けて手術を行った場合と同等かそれ以上の視力予後が得られることが示された。このことは、患者やその家族、そして外科医にとって、(両眼の手術を同日に行っても)安全性が損なわれないという安心感を与えるはずだ」とする見解を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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小児・青年期の医用画像による被曝、血液がんリスクへの影響は?/NEJM

 小児・青年期における医用画像診断による放射線曝露は、わずかではあるが血液がんのリスク増加と有意に関連していることが、米国・カリフォルニア大学のRebecca Smith-Bindman氏らによる後ろ向きコホート研究「Risk of Pediatric and Adolescent Cancer Associated with Medical Imaging retrospective cohort study:RICコホート研究」で示された。小児・青年期における医用画像診断による放射線誘発性血液がんのリスクを評価することは、画像検査の実施に関する意思決定を支援することにつながる。NEJM誌2025年9月17日号掲載の報告。米国・カナダの小児約370万人で医用画像診断と血液がんの関連性を評価 研究グループは、1996年1月1日~2016年4月30日に出生し、米国の6つの統合医療システム(Kaiser Permanente北カリフォルニア・北西部・ワシントン・ハワイ、Marshfield Clinic、Harvard Pilgrim Health Care)またはカナダ・オンタリオ州健康保険制度のいずれかに生後6ヵ月間継続加入しており、生後3ヵ月以内に1回以上受診し、生後6ヵ月時点で生存かつがんを発症していない372万4,623例の小児を対象とした。 対象児を、出生時からがんまたは良性腫瘍の診断、死亡、オンタリオ州からの転出または米国医療システムからの脱退後6ヵ月、21歳、または研究終了(2017年12月31日)のいずれか早い時点まで追跡調査した。 医用画像診断による活性骨髄の放射線被曝量を定量化し、6ヵ月のラグを設けて累積被曝線量を算出して、層別Cox比例ハザードモデルを用い時間依存性累積放射線量と血液がんとの関連を、被曝なしとの比較において推定した。骨髄への累積放射線量は血液がんのリスクと有意に関連 3,571万5,325人年(1人当たり平均10.1年)の追跡期間中、2,961件の血液がんが診断された。内訳は主にリンパ腫(2,349例、79.3%)、骨髄系または急性白血病(460例、15.5%)、組織球または樹状細胞腫瘍(129例、4.4%)であった。 1mGy以上の放射線に被曝した小児の平均(±SD)被曝量は、全体で14.0±23.1mGy(参照として、頭部CTスキャン1回当たりの被曝量は13.7mGy)、血液がんを発症した小児では24.5±36.4mGyであった。 累積線量の増加とともにがんのリスクが増加し、相対リスク(被曝なしと比較)は1以上5mGy未満で1.41(95%信頼区間[CI]:1.11~1.78)、15以上20mGy未満では1.82(1.33~2.43)、50以上100mGy未満では3.59(2.22~5.44)であった。 骨髄への累積放射線量は、すべての血液がんのリスク上昇と関連しており(100mGy当たりの過剰相対リスク:2.54[95%CI:1.70~3.51]、p<0.001、30mGy vs.0mGyの相対リスク比:1.76[95%CI:1.51~2.05])、ほとんどの腫瘍サブタイプでも同様であった。 30mGy以上(平均57mGy)被曝した小児では、21歳までの血液がんの過剰累積発生率は、1万人当たり25.6であった。 本コホート研究では、血液がんの10.1%(95%CI:5.8~14.2)が医用画像診断による放射線被曝に起因する可能性があり、とくにCTなどの高線量医用画像診断によるリスクが高いと推定された。

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帯状疱疹ワクチンは心血管イベントリスクを低下させる?

 帯状疱疹ワクチンは、痛みを伴う皮膚感染症を予防するだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントのリスクも低下させる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。帯状疱疹ワクチンのシングリックスを製造販売するグラクソ・スミスクライン(GSK)社のワクチン担当グローバル・メディカル・アフェアーズ・アソシエイト・メディカル・ディレクターのCharles Williams氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。 帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)を引き起こす水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によって引き起こされる。水痘に罹患すると、治癒後もウイルスが神経系に潜伏し続け、加齢に伴い免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化して帯状疱疹を引き起こすことがある。研究グループによると、水痘罹患経験者の約3人に1人は、ワクチンを接種しなければ帯状疱疹を発症する可能性があるという。米疾病対策センター(CDC)は、50歳以上の人に対して帯状疱疹ワクチンの接種を推奨しているほか、免疫不全状態にある19歳以上の人にも接種を推奨している。さらに研究グループによると、帯状疱疹の発症は心筋梗塞リスクを高める可能性や、ウイルスが頭部の大小の血管に侵入して脳卒中リスクを高める可能性も示唆されているという。 今回の研究でWilliams氏らは、帯状疱疹ワクチン(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン、生弱毒化帯状疱疹ワクチン)の心血管イベントに対する効果を検討した研究を検索し、基準を満たした9件(観察研究8件、ランダム化比較試験1件)のデータを統合してメタアナリシスを実施した。9件の研究の参加者は男性が53.3%を占め、平均年齢は53.6~74歳だった。 その結果、帯状疱疹ワクチンを接種した群では未接種の群に比べて、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントの発生リスクが有意に低下することが明らかになった。リスク低下の大きさは、18歳以上の人では18%、50歳以上の人では16%であった。 これらの結果からWilliams氏は、「現時点で入手可能なエビデンスを検討した結果、帯状疱疹ワクチンの接種は心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントのリスク低下と関連していることが分かった」と述べている。ただし研究グループは、対象とした9件の研究のうち8件は観察研究であるため、本研究によりワクチン接種と心血管イベントの発生リスク低下との間に因果関係があることを証明することはできないと指摘している。 さらにWilliams氏は、「メタアナリシスに用いられた研究は全て、一般集団における帯状疱疹予防の手段としてのワクチンの効果を調べることを目的としたものである。それゆえ、今回の結果を、心血管イベントリスクが高い集団に一般化するには限界がある可能性がある。これは、帯状疱疹ワクチンの接種と心血管イベントとの関連を検討するためのさらなる研究が必要であることを意味する」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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音楽は血圧の調節に役立つ?

 英語では「Music hath charms to soothe the savage breast(音楽には怒りを鎮める力がある)」というフレーズがあるが、音楽は心臓の健康状態にも同様の効果をもたらし得るようだ。新たな小規模研究で、血圧が音楽のパターンに「同期」する可能性のあることが明らかになった。この研究を実施した、英キングス・カレッジ・ロンドン工学教授でピアニストでもあるElaine Chew氏らは、「このことは、身体の血圧を調節する能力である圧受容体反射感受性を高める助けになるかもしれない」との見方を示している。この研究結果は欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。 Chew氏は、「この研究から、将来的に、特定の生物学的反応を引き起こすための音楽療法を設計できる可能性が生まれた。音楽療法を個々の患者に合わせて調整することも考えられ、プレシジョンメディシン(個別化医療)としての音楽の活用にも1歩近付く。長期的には、音楽を使って心臓病を予防する、あるいは進行を遅らせる、止める、回復に向かわせるといったことが可能になるかもしれない」と説明している。 Chew氏らの研究は「フレーズ構造」と呼ばれる音楽の側面に着目したものである。演奏中、音楽家は楽曲のフレーズの境界を際立たせるためにテンポや音の強弱を変化させ、聴衆を引き付ける音楽パターンを作り出す。Chew氏らによると、一部の楽曲には他の楽曲よりも予測しやすいフレーズ構造が存在するという。同氏らは過去の研究で、楽曲のフレーズが予測しやすいものであるほど呼吸や心拍数の調節に役立つことを突き止めていた。そこで、同じことが血圧にも当てはまるのかどうかを調べることにした。 今回の研究でChew氏らは、92人の参加者(平均年齢42歳、女性60人)が、著名なピアニストが演奏した30曲のピアノ音源のうち9曲を聴いている間の心臓の活動を調べた。各曲の「音楽のテンポと音の強弱のフレーズの弧の境界」は、コンピューターアルゴリズムを用いて特定された。Chew氏らが特に着目したのは「エントレインメント(同期、同調)」だった。これは、音楽のような外部刺激に対して生理的リズムを同期させる身体の能力のことである。 その結果、血圧は多くの場合、テンポの変化よりも音の強弱の変化に同期しやすいことが示された。また、フレーズ構造の予測可能性が高い曲では、聞き手が次の変化を先読みできるため、血圧と音楽の同期が強まった。Chew氏らは、こうした仕組みが血圧を調節する能力を高める可能性があるとの考えを示している。 このことは直感的にも納得できるとChew氏は言う。「時代や文化を超えて、人間は音楽に合わせて体を動かすことを楽しんできた。外部のリズムに自分の動きを合わせる能力には、ボートの上で息を合わせてオールを漕ぐ人たちに見られるように、生物学的にも社会的にも利点がある可能性がある」と同氏は指摘している。 この種の協調的な動作には、リズムのサイクルの始まりと終わりを予測する能力が必要であるとChew氏は言う。同氏は、「この予測こそが、われわれの心臓や呼吸のリズムに影響を与えている可能性が高い」と付け加えた上で、「音楽の構造に同期すると心地良く感じられる。音楽は食べ物やセックス、ドラッグと同じ報酬系が関与していることが研究から明らかにされている」と説明している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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GLP-1受容体作動薬は気候変動対策にも有益

 肥満症治療薬として使用されているオゼンピックやゼップバウンドなどのGLP-1受容体作動薬は、単に体重を減らすだけでなく、地球環境の保護にも役立っている可能性のあることが、新たな研究で示された。これらの薬が心不全患者の減量目的で使用されると、温室効果ガス排出量の削減につながるという。米Lahey病院・医療センターのSarju Ganatra氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。 Ganatra氏らは、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者(GLP-1受容体作動薬を投与された患者1,914人、プラセボを投与された患者1,829人)を対象とした4件の臨床試験のデータを統合して解析した。HFpEFとは、心臓の収縮機能は保たれているものの、心筋が硬いために十分に拡張できず、血液を十分に取り込めない状態を指す。米国心臓病学会(ACC)によれば、心不全患者のほぼ半数がこのタイプに分類される。 心不全悪化イベントの発生数は、GLP-1受容体作動薬を投与された患者では54件であったのに対し、プラセボを投与された患者では86件だった。心不全悪化イベントには入院と病院の往復を伴うと仮定して二酸化炭素(CO2)排出量を推算すると、GLP-1受容体作動薬を使用したHFpEF患者の年間CO2排出量は1人当たり9.45kgと推定され、プラセボ群の9.7kgと比べて少ないことが示された。 Ganatra氏は、「この数値をGLP-1受容体作動薬による治療の対象となる何百万人もの患者に当てはめると、20億kg以上のCO2換算量の削減につながる」と言う。同氏らによると、20億kgのCO2は、満席のボーイング747型機の長距離フライト2万便にほぼ相当し、また、この量のCO2を吸収するには、植えられてから10年が経過した約3,000万本の木が必要になるという。 Ganatra氏はさらに、ESCのニュースリリースの中で、医療廃棄物の発生量や水の使用量についても、同様の規模の削減が見られた」と述べている。その上で同氏は、「今回の研究は、個々の小さな改善の積み重ねが、集団全体として大きなインパクトをもたらすことを明確に示している」と説明している。 さらに、GLP-1受容体作動薬を使用した患者では食物の摂取量が減り、そのことが気候にも良い影響を与えると推定された。Ganatra氏らの推計によると、プラセボ群と比べてGLP-1受容体作動薬群では1日当たりの摂取カロリーが減少したことで年間およそ695kg分のCO2排出量の削減につながったという。 今回の研究結果についてGanatra氏は、「薬物治療から患者の健康状態の改善と地球環境の健全化という2つのメリットを得られる可能性を示した結果だといえる」と述べ、「将来的には政策立案者が医療技術の評価や医薬品の保険適用の決定、医薬品調達の枠組みなどにサステナビリティの指標を組み込むことを期待している」と付け加えた。 Ganatra氏らは次の段階として、実際の排出データと臨床アウトカムを用いてモデルを検証する予定だ。同氏は、「将来的には、臨床試験のデザインや医薬品の規制プロセス、処方の決定に環境への影響が組み込まれ、医療システムがプラネタリーヘルス(地球環境と人類の健康の両立)に関する目標と連携できるようになることを期待している」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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第27回 なぜ経済界トップは辞任したのか?新浪氏報道から考える、日本と世界「大麻をめぐる断絶」

経済同友会代表幹事という日本経済の中枢を担う一人、サントリーホールディングスの新浪 剛史氏が会長職を辞任したというニュースは、多くの人に衝撃を与えました1)。警察の捜査を受けたと報じられる一方、本人は記者会見で「法を犯しておらず潔白だ」と強く主張しています。ではなぜ、潔白を訴えながらも、日本を代表する企業のトップは辞任という道を選ばざるを得なかったのでしょうか。この一件は、単なる個人のスキャンダルでは片付けられません。日本の厳格な法律と、大麻に対する世界の常識との間に生じた「巨大なズレ」を浮き彫りにしているかもしれません。また、私たち日本人が「大麻」という言葉に抱く漠然としたイメージと、科学的な実像がいかにかけ離れているかをも示唆しているようにも感じます。本記事では、この騒動の深層を探るとともに、科学の光を当て、医療、社会、法律の各側面から、この複雑な問題の核心に迫ります。事件の深層 ― 「知らなかった」では済まされない世界の現実今回の騒動の発端は、新浪氏が今年4月にアメリカで購入したサプリメントにあります。氏が訪れたニューヨーク州では2021年に嗜好用大麻が合法化され、今や街の至る所で大麻製品を販売する店を目にします。アルコールやタバコのように、大麻成分を含むクッキーやオイル、チョコレートやサプリメントなどが合法的に、そしてごく普通に流通しています。新浪氏は「時差ボケが多い」ため、健康管理の相談をしていた知人から強く勧められ、現地では合法であるという認識のもと、このサプリメントを購入したと説明しています。ここで重要になるのが、大麻に含まれる2つの主要な成分、「THC」と「CBD」の違いです。THC(テトラヒドロカンナビノール)いわゆる「ハイ」になる精神活性作用を持つ主要成分です。日本では麻薬及び向精神薬取締法で厳しく規制されており、これを含む製品の所持や使用は違法となります。THCには多幸感をもたらす作用がある一方、不安や恐怖感、短期的な記憶障害や幻覚作用などを引き起こすこともあります。CBD(カンナビジオール)THCのような精神作用はなく、リラックス効果や抗炎症作用、不安や緊張感を和らげる作用などが注目されています。ただし、臨床的に確立されたエビデンスはなく、愛好家にはエビデンスを過大解釈されている側面は否めません。「時差ボケ」を改善するというエビデンスも確立していません。日本では、大麻草の成熟した茎や種子から抽出され、THCを含まないCBD製品は合法的に販売・使用が可能です。新浪氏自身は「CBDサプリメントを購入した」という認識だったと述べていますが、問題はここに潜んでいます。アメリカで合法的に販売されているCBD製品の中には、日本の法律では違法となるTHCが含まれているケースが少なくありません。厚生労働省も、海外製のCBD製品に規制対象のTHCが混入している例があるとして注意を呼びかけています2)。まさにこの「合法」と「違法」の境界線こそが、今回の問題の核心です。潔白を訴えても辞任、なぜ? 日本社会の厳しい目記者会見での新浪氏の説明や報道によると、警察が氏の自宅を家宅捜索したものの違法な製品は見つからず、尿検査でも薬物成分は検出されなかったとされています。また、福岡で逮捕された知人の弟から自身にサプリメントが送られようとしていた事実も知らなかったと主張しています。法的には有罪が確定したわけでもなく、本人は潔白を強く訴えている。にもかかわらず、なぜ辞任に至ったのでしょうか。その理由は、サントリーホールディングス側の判断にありました。会社側は「国内での合法性に疑いを持たれるようなサプリメントを購入したことは不注意であり、役職に堪えない」と判断し、新浪氏も会社の判断に従った、と説明されています。これは、法的な有罪・無罪とは別の次元にある、日本社会や企業における「コンプライアンス」と「社会的信用」の厳しさを物語っているのかもしれません。とくにサントリーは人々の生活に密着した商品を扱う大企業です。そのトップが、たとえ海外で合法であったとしても、日本で違法と見なされかねない製品に関わったという「疑惑」が生じたこと自体が、企業のブランドイメージを著しく損なうリスクとなります。結果的に違法でなかったとしても、「違法薬物の疑いで警察の捜査を受けた」という事実だけで、社会的・経済的な制裁が下されてしまう。これが、日本社会の現実です。科学は「大麻」をどう見ているのか?この一件を機に、私たちは「大麻」そのものについて、科学的な視点からも冷静に見つめ直す必要があるでしょう。世界中で医療大麻が注目される理由は、THCやCBDといった「カンナビノイド」が、私たちの体内にもともと存在する「エンドカンナビノイド・システム(ECS)」に作用するためです3)。ECSは、痛み、食欲、免疫、感情、記憶など、体の恒常性を維持する重要な役割を担っています。この作用を利用し、既存の薬では効果が不十分なさまざまな疾患への応用が進んでいます4)。がん治療の副作用緩和抗がん剤による悪心や嘔吐、食欲不振を和らげる効果。アメリカではTHCを主成分とする医薬品(ドロナビノールなど)がFDAに承認されています。難治性てんかんとくに小児の難治性てんかんにCBDが効果を示し、多くの国で医薬品として承認されています。その他多発性硬化症の痙縮、神経性の痛み、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、幅広い疾患への有効性が研究・報告されています。このように、科学の視点で見れば、大麻はさまざまな病気の患者を救う可能性を秘めた「薬」としての側面を持っています。「酒・タバコより安全」は本当か? リスクの科学的比較「大麻は酒やタバコより安全」という言説を耳にすることもあります。リスクという側面から、これは本当なのでしょうか。単純な比較はできませんが、科学的なデータはいくつかの客観的な視点を提供してくれます。依存性生涯使用者のうち依存症に至る割合は、タバコ(ニコチン)が約68%、アルコールが約23%に対し、大麻は約9%と報告されており、比較的低いとされます5)。しかし、ゼロではなく、使用頻度や期間が長くなるほど「大麻使用障害」のリスクは高まります。致死量アルコールのように急性中毒で直接死亡するリスクは、大麻には報告されていません6)。長期的な健康への影響精神への影響大麻の長期使用、とくに若年層からの使用は、統合失調症などの精神疾患のリスクを高める可能性が複数の研究で示されています。とくに高THC濃度の製品を頻繁に使用する場合、そのリスクは増大すると考えられています7)。また、うつ病や双極性障害との関連も指摘されていますが、研究結果は一貫していません。身体への影響煙を吸う方法は、タバコと同様に咳や痰などの呼吸器症状と関連します。心血管系への影響(心筋梗塞や脳卒中など)も議論されていますが、結論は出ていません8)。一方で、運転能力への影響は明確で、使用後の数時間は自動車事故のリスクが有意に高まることが示されています6)。国際的な専門家の中には、依存性や社会への害を総合的に評価すると、アルコールやタバコの有害性は、大麻よりも大きいと結論付けている人もいます。しかし、これは大麻が「安全」だという意味ではなく、それぞれ異なる種類のリスクを持っていると理解するべきでしょう。世界の潮流と日本のこれからかつて大麻は、より危険な薬物への「入り口」になるという「ゲートウェイ・ドラッグ理論」が主流でした。しかし近年の研究では、もともと薬物全般に手を出しやすい遺伝的・環境的な素因がある人が複数の薬物を使用する傾向がある、という「共通脆弱性モデル」のほうが有力だと考えられています9)。アメリカでは多くの州で合法化が進みましたが、社会的なコンセンサスは得られていません。賛成派は莫大な税収や犯罪組織の弱体化を主張する一方、反対派は若者の使用増加や公衆衛生への悪影響を懸念しています。合法化による長期的な影響はまだ評価の途上にあり、世界もまた「答え」を探している最中です。ただし、新浪氏の問題は、決して他人事ではないと思います。今後、海外で生活したり、旅行したりする日本人が、意図せず同様の事態に陥る可能性は誰にでもあります。また、この一件は、私たちに大きな問いを投げかけています。世界が大きく変わる中で、日本は「違法だからダメ」という思考停止に陥ってはいないでしょうか。もちろん、法律を遵守することは大前提。しかし同時に、大麻が持つ医療的な可能性、アルコールやタバコと比較した際のリスクの性質、そして世界の潮流といった科学的・社会的な事実から目を背けるべきではありません。今回の騒動をきっかけに、私たち一人ひとりが固定観念を一度リセットし、科学に基づいた冷静な知識を持つこと。そして社会全体で、この複雑な問題について、感情論ではなく建設的な議論を始めていくこと。それこそが、日本が世界の「ズレ」から取り残されないために、今まさに求められていることなのかもしれません。 1) NHK. サントリーHD 新浪会長が辞任 サプリメント購入めぐる捜査受け. 2025年9月2日 2) 厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部. CBDオイル等のCBD関連製品の輸入について. 3) Testai FD, et al. Use of Marijuana: Effect on Brain Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Stroke. 2022;53:e176-e187. 4) Page RL 2nd, et al. Medical Marijuana, Recreational Cannabis, and Cardiovascular Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2020;142:e131-e152. 5) Lopez-Quintero C, et al. Probability and predictors of transition from first use to dependence on nicotine, alcohol, cannabis, and cocaine: results of the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC). Drug Alcohol Depend. 2011;115:120-130. 6) Gorelick DA. Cannabis-Related Disorders and Toxic Effects. N Engl J Med. 2023;389:2267-2275. 7) Hines LA, et al. Association of High-Potency Cannabis Use With Mental Health and Substance Use in Adolescence. JAMA Psychiatry. 2020;77:1044-1051. 8) Rezkalla SH, et al. A Review of Cardiovascular Effects of Marijuana Use. J Cardiopulm Rehabil Prev. 2025;45:2-7. 9) Vanyukov MM, et al. Common liability to addiction and “gateway hypothesis”: theoretical, empirical and evolutionary perspective. Drug Alcohol Depend. 2012;123 Suppl 1:S3-17.

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高齢者への不適切処方で全死亡リスク1.3倍、処方漏れで1.8倍

 高齢者に対する薬剤治療においては、ポリファーマシーや処方漏れなどの問題点が指摘されている。イスラエルの研究グループによる長期前向きコホート研究によると、高齢者の80%以上が不適切な処方を受けており、不適切な薬剤を処方された群では死亡リスクが上昇した一方で、必要な薬剤の処方漏れも死亡リスクの上昇と関連していたという。本研究の結果はJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年8月11日号に掲載された。 研究者らは、イスラエルの縦断前向きコホート研究の第3回追跡調査(1999~2007年)で収集されたデータを使用し、地域に住む高齢者1,210例(平均年齢72.9歳、女性53%)を対象に、不適切処方と長期死亡率との関連性を評価した。不適切な処方には「不要あるいは有害になり得る薬剤の処方(Potentially Inappropriate Medications:PIM)」と「必要処方の省略(Prescribing Omissions:PPO)」が含まれており、それらの識別には米国の2023年版Beers基準と欧州のSTOPP/START基準(v3)が用いられた。死亡は診断コードで特定され、主要アウトカムは全死亡率と非がん死亡率だった。参加者は死亡または2022年3月まで追跡され、追跡期間の中央値は13年だった。 主な結果は以下のとおり。・参加者の81.2%が1件以上の不適切な処方を受けており、PIMはBeers基準で52.6%、STOPP基準で45.0%、PPOは59.3%だった。・PIMが2件以上の場合、Beers基準では全死亡リスクが1.3倍(HR:1.31、95%CI:1.04~1.69)、STOPP基準では1.25倍(HR:1.25、95%CI:1.00~1.55)増加した。PIMが2件以上の場合、非がん死亡リスクの増加とも関連した(両基準とも1.4倍)。・PPOが1件の場合、非がん死亡リスクは1.3倍になった。PPOが2件以上の場合、全死亡リスクは1.8倍、非がん死亡リスクは2倍となった。男性ではより強い関連性が認められた(相互作用p=0.012)。 著者らは「薬剤の過剰処方と必要な薬剤の不足の両方が、高齢者の死亡リスクを著しく増加させていた。これは定期的な薬剤処方見直しの必要性、性別に応じた薬剤ガイドラインの確立、処方問題の特定と是正のためのシステム改善の重要性を示している」としている。

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心房細動と動脈硬化、MRIで異なる脳血管病変示す/ESC2025

 心房細動(AF)とアテローム性動脈硬化症(以下、動脈硬化)は、一般集団と比較して脳血管病変の発生率を高める。今回、AF患者は動脈硬化患者と比較して、非ラクナ型脳梗塞、多発脳梗塞、重度の脳室周囲白質病変の発生頻度が高いことが明らかになった。本研究結果はカナダ・マクマスター大学のTina Stegmann氏らが8月29日~9月1日にスペイン・マドリードで開催されたEuropean Society of Cardiology 2025(ESC2025、欧州心臓病学会)の心房細動のセッションで発表し、European Heart Journal誌オンライン版2025年8月29日号に同時掲載された。 本研究は、AF患者と動脈硬化患者の脳MRIによる血管性脳病変の有病率と分布を比較するため、スイスの心房細動コホート研究(Swiss-AF、AF患者を対象)とCOMPASS MIND研究(COMPASS MRIサブ解析、AFのない動脈硬化患者を対象)を実施。ベースライン時点の臨床データと標準化された脳MRIを使用して、ラクナ梗塞と非ラクナ型脳梗塞、脳室周囲および白質高信号(WMH)、微小出血(CMB)の発生率をグループ間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象は3,508例(AF群:1,748例、動脈硬化群:1,760例)であった。・平均年齢±SDはAF群73±8歳、動脈硬化群71±6歳、女性比率はそれぞれ28%と23%であった。・AF群の90%は抗凝固療法が行われ、動脈硬化群の93%は抗血小板療法が行われていた。・AF群は動脈硬化群と比較し、非ラクナ型脳梗塞の発生率が高く(22%vs.10%、p<0.001)、一方で動脈硬化群ではラクナ梗塞の発生率が高かった(21%vs.26%、p=0.001)。・AF患者では脳室周囲白質病変の重症度が高く(49%vs.37%、p<0.001)、CMBは、動脈硬化群でより多く認められた(22%vs.29%、p<0.001)。・多変量解析では、AF群は動脈硬化群と比較して、非ラクナ型脳梗塞のオッズ比(OR)が高く(OR:2.28、95%信頼区間[CI]:1.86~2.81、p<0.001)、ラクナ梗塞では低かった(OR:0.66、95%CI:0.56~0.79、p<0.001)。また、重度の脳室周囲白質病変はOR1.42と高かった(95%CI:1.22~1.67、p<0.001)。 研究者らは「これらの知見は、心血管疾患患者での血管性脳病変の発症における疾患特異的なメカニズムを裏付けている」としている。

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鼻をほじる人、何%?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第289回

鼻をほじる人、何%?鼻をほじったことがない人は、存在しないと思います。ティッシュで包んで捨てて、手を洗うのが正しい対応ですが、そもそも「ほじるな」というのは難しいのは、誰しも認識しているはず。コロナ禍では、こういった行動が感染を広げる一因になっているのでは、と議論されたことがありました。しかしながら、一般集団における鼻ほじり行動に関する文献は世界的にほとんどありません。Andrade C, et al. A preliminary survey of rhinotillexomania in an adolescent sample. J Clin Psychiatry. 2001 Jun;62(6):426-31.本論文は、インド・バンガロール市の4校に通う200人の高校生を対象に、鼻ほじり行動の頻度、背景、合併する習慣的行動や精神医学的関連について調査した研究です。調査に参加した200人のうち、ほぼ全員が鼻ほじりアリと判断されました。平均回数は1日8.4回で、中央値は4回、最頻値は2回でした。31.8%が1日5回以上、15.3%が10回以上、7.6%が20回以上と報告しており、一部ではきわめて頻繁に行われていることがわかりました。また36%は公共の場でも鼻ほじりをすると答えました。鼻ほじりをまったくしないと答えたのはわずか7人でした。鼻ほじりの理由としては「清潔を保つため」(34%)、「不快感やかゆみを和らげるため」(31.2%)、「鼻道を通すため」(28.6%)が多く挙げられました。方法としては80.5%が指を使っていました。ダイレクトフィンガーはむしろ不潔なので、ティッシュを使う人などもいそうですね。ウィスコンシン州の住民1,000人に郵送調査を行ったもので、高い鼻ほじり率が確認されており、91%が現在も鼻ほじりをしていると答えています1)。1.2%は1時間に1回以上の頻度だったそうです。鼻ほじりは多くの場合「よくある癖」として軽視されますが、時に強迫性障害の一部として位置付けられるべき行動である可能性があり、精神医学的にも耳鼻咽喉科学的にも、さらなる研究が必要かもしれません。 1) Jefferson JW, Thompson TD. Rhinotillexomania: psychiatric disorder or habit? J Clin Psychiatry. 1995;56(2):56–59.

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心不全入院へのダパグリフロジンの効果~DAPA ACT HF-TIMI 68試験/ESC2025

 SGLT2阻害薬は、外来での心不全治療において心血管死または心不全増悪のリスク低減に寄与するが、心不全による入院での投与開始データは限定的である。今回、ダパグリフロジンによるさまざまな臨床研究を行っているTIMI Study GroupがDAPA ACT HF-TIMI 68試験を実施。その結果、ダパグリフロジンを入院中に開始してもプラセボと比較して2ヵ月にわたる心血管死または心不全悪化リスクを有意に低下させなかった。ただし、3試験のメタ解析からSGLT2阻害薬が心血管死または心不全悪化の早期リスクと全死亡リスクを有意に低下させることが明らかになった。本研究結果は米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDavid D. Berg氏らが8月29日~9月1日にスペイン・マドリードで開催されたEuropean Society of Cardiology 2025(ESC2025、欧州心臓病学会)のホットラインで発表し、Circulation誌オンライン版2025年8月29日号に同時掲載された。 DAPA ACT HF-TIMI 68試験は、米国、カナダ、ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国の210施設で実施された二重盲検プラセボ対照無作為化試験。今回、心不全入院患者におけるダパグリフロジンの院内投与開始の有効性と安全性を評価する目的で実施された。対象患者は心不全を主訴として入院した18歳以上で、体液貯留の徴候や症状が認められた。試験への組み入れ条件は、初回入院時点でのBNP上昇であった。対象者はダパグリフロジン10mgを1日1回投与する群とプラセボ群に1対1で無作為に割り付けられた。主要有効性アウトカムは2ヵ月間における心血管死または心不全悪化の複合で、安全性アウトカムは症候性低血圧および腎機能低下であった。 なお、入院中の心不全患者に対するSGLT2阻害薬開始の評価において、本試験に加えエンパグリフロジンのEMPULSE試験、sotagliflozin(国内未承認)のSOLOIST-WHF試験を組み入れ、事前に規定されたメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・対象者2,401例の内訳は、年齢中央値69歳(Q1~Q3の範囲:58~77歳)、女性815例(33.9%)、黒人448例(18.7%)、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)1,717例(71.5%)であった。・入院から無作為化までの期間中央値は3.6日であった。・主要有効性アウトカムはダパグリフロジン群で133例(10.9%)、プラセボ群で150例(12.7%)に発生した(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.68~1.08、p=0.20)。・心血管死は、ダパグリフロジン群30例(2.5%)、プラセボ群37例(3.1%)に認められ(HR:0.78、95%CI:0.48~1.27)、心不全の悪化は、ダパグリフロジン群115例(9.4%)、プラセボ群122例(10.3%)に認められた(HR:0.91、95%CI:0.71~1.18)。・全死因死亡は、ダパグリフロジン群36例(3.0%)、プラセボ群53例(4.5%)に認められた(HR:0.66、95%CI:0.43~1.00)。・症候性低血圧はダパグリフロジン群で3.6%、プラセボ群で2.2%、腎機能低下はそれぞれ5.9%、4.7%であった。・事前に規定されたメタ解析の結果、SGLT2阻害薬は心血管死または心不全悪化の早期リスク(HR:0.71、95%CI:0.54~0.93、p=0.012)および全死因死亡(HR:0.57、95%CI:0.41~0.80、p=0.001)を低下させた。

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より長く、より速く歩くことが心臓の健康に有益

 毎日の散歩の距離を増やして歩くペースを上げると、高血圧に関連する心臓病や脳卒中のリスクを減らすのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。1日の歩数が2,300歩程度の場合と比較して、1,000歩増えるごとに心筋梗塞、心不全、脳卒中のリスクが低下することが明らかになったという。シドニー大学(オーストラリア)マッケンジー・ウェアラブル研究ハブ所長のEmmanuel Stamatakis氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Preventive Cardiology」に8月6日掲載された。Stamatakis氏は、「これらの研究結果は、たとえ一般に推奨されている目標である1日1万歩を下回る運動量であっても、身体活動を行うことが有益であることを裏付けている」と欧州心臓病学会(ESC)のニュースリリースの中で述べている。 この研究でStamatakis氏らは、高血圧を有するUKバイオバンク参加者3万6,192人(平均年齢64歳、男性48%)を対象に、1日の歩数や歩行強度と心血管疾患による死亡および、心不全・心筋梗塞・脳卒中(以下、主要心血管イベント〔MACE〕)との関連を検討した。対象としたUKバイオバンク参加者は、7日間にわたって加速度計を装着し、1日の歩数と歩行強度を測定していた。 平均追跡期間は7.8年であり、その間に1,935件のMACEが発生していた。解析からは、基準とした1日の歩数(2,344歩)を超える歩数はMACEリスクの低下と関連することが示された。具体的には、1日の歩数が1,000歩増えるごとにMACEリスクは17.1%(95%信頼区間10.2〜23.2)、心不全リスクは22.4%(同11.0〜31.7)、心筋梗塞リスクは9.3%(同−2.8〜19.6)、脳卒中リスクは24.5%(同5.3〜39.0)低下していた。ピーク歩行強度(1日の中で最も速く歩いた30分間での平均歩行速度〔歩数/分〕)の中央値76.6歩/分でのMACEのハザード比は0.70(95%信頼区間0.63〜0.79)であり、基準値(38.3歩/分)より速く歩くほどMACEリスクは低くなっていた。 さらに、高血圧のないUKバイオバンク参加者3万7,350人を対象に、歩数が1,000歩増えるごとにMACEおよびMACEの構成要素である心不全・心筋梗塞・脳卒中のリスクがどの程度変化するかが検討された。その結果、MACEリスクは20.2%、心不全リスクは23.2%、心筋梗塞リスクは17.9%、脳卒中リスクは24.6%低下することが示された。 こうした結果を受けてStamatakis氏は、「これらの結果から言えるのは、高血圧の人は、より速いペースでより長く歩くほど、将来、深刻な心血管疾患を発症するリスクが低くなるということだ」と述べている。 さらにStamatakis氏は、「本研究から、1日1万歩未満であっても、心臓の健康に有益な達成可能で測定可能な目標値が示された。高血圧患者に対する今後のウォーキングに関する推奨では、より高い歩行強度の推奨も検討される可能性がある」と話している。

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cN0乳がんのセンチネルリンパ節生検省略、リアルワールドで見逃されるpN+の割合は?

 INSEMA試験やSOUND試験の結果から、乳房温存術を受けるHR+/HER2-の臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)早期乳がんの一部の患者では、センチネルリンパ節生検(SNB)は安全に省略可能であるとされつつある。しかし、リンパ節転移の有無は術後治療の選択に極めて大きな影響を及ぼすため、SNB省略のde-escalation戦略の妥当性については依然として議論の余地がある。そこで、Nikolas Tauber氏(ドイツ・University Hospital Schleswig-Holstein)らは、INSEMA試験の基準を満たす患者にSNBを行い、その病理学的結果や術後治療への影響を解析することで、SNB省略時の影響をリアルワールドで推計した。その結果がEuropean Journal of Surgical Oncology誌2025年8月14日号に掲載された。 本研究は、ドイツの大学の乳がんセンター3施設を対象とした後ろ向き多施設コホート研究であり、2020~24年にHR+/HER2-乳がんと診断され、INSEMA試験の基準(cT1、グレード1~2、50歳以上、cN0、乳房温存術を施行)を満たす867例を解析した。病理学的リンパ節転移陽性(pN+)の割合、術後に上方修正された病期やグレードの割合、術後治療への影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者の内訳は、50~60歳が305例、61~70歳が275例、71~80歳が236例、80歳超が51例であった。・SNBによってpN+と診断されたのは124例(14.3%)であった。・微小転移と孤立性腫瘍細胞を除外した場合、SNBを省略すると見逃される転移の割合は10.5%であった。この割合は、INSEMA試験やSOUND試験とほぼ同等であった。・pN+は、若年、腫瘍径が大きい、Ki67値が高い患者で多かった。・pN+となった124例のうち101例で化学療法やCDK4/6阻害薬、放射線照射などの術後治療が新たに考慮された。・SNBで病期やグレードが術後に上方修正された割合は18.8%であり、もしSNBを省略していた場合には2次的にSNBが必要になった可能性があった。・CDK4/6阻害薬の適応症例における再発予防に必要な手術数は、年齢と腫瘍径によって大きく異なり、111~333例に1例であった。 これらの結果より、研究グループは「一部の患者ではSNBの省略は安全であると考えられる。しかし、今回のリアルワールドデータの解析では、遺伝子発現プロファイルなど他の予後予測ツールを併用しない限り、腋窩リンパ節の評価は依然として個別の治療方針の決定に重要であることを示唆している」とまとめた。

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