サイト内検索|page:20

検索結果 合計:588件 表示位置:381 - 400

381.

統合失調症に対する増強療法、評価が定まっている薬剤はこれだけ

 統合失調症における抗精神病薬の多剤併用は、その有効性や安全性が不明瞭であることが一般的でコストがかかるため、多くの議論がなされている。ドイツ・シャリテ大学のBritta Galling氏らは、統合失調症に対するセカンドチョイスの抗精神病薬増強療法と継続的な抗精神病薬単独療法とを比較した無作為化試験のシステマティック文献検索とランダム効果メタ解析を行った。World psychiatry誌2017年2月号の報告。 共主要アウトカムは、総症状の減少、試験で定義されたレスポンスとした。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の増強療法は、単独療法と比較し、総症状の減少に関して優れていた(16試験、694例、SMD:-0.53、95%CI:-0.87~-0.19、p=0.002)。・しかし、優位性はオープンラベルと低クオリティの試験でのみ明らかで(各:p<0.001)、二重盲検(p=0.120)、高クオリティ試験(p=0.226)では検出されなかった。・試験で定義されたレスポンスは、抗精神病薬増強療法と単独療法で同様であり(14試験、938例、RR:1.19、95%CI:0.99~1.42、p=0.061)、二重盲検、高クオリティ試験とも有意ではなかった(各:p=0.990)。・クロザピンと非クロザピン増強療法の研究で結果が再現された。・全原因/特定原因による中止、臨床全般印象度(CGI:clinical global impression)、陽性症状、総合的症状、うつ症状に関して差は認められなかった。・増強療法により陰性症状の改善が認められたが(18試験、931例、SMD:-0.38、95%CI:-0.63~-0.13、p<0.003)、それはアリピプラゾール増強療法の研究のみであった(8試験、532例、SMD:-0.41、95%CI:-0.79~-0.03、p=0.036)。・いくつかの副作用に関する違いとして、D2アンタゴニスト増強療法は、不眠の少なさと関連していたが(p=0.028)、プロラクチン値の上昇が多かった(p=0.015)。アリピプラゾール増強療法は、プロラクチン値の低下(p<0.001)、体重減少(p=0.030)と関連していた。 著者らは「これらのデータより、統合失調症に対する抗精神病薬増強療法の一般的な実践は、アリピプラゾール増強療法による陰性症状の改善を除き、有効性に関する二重盲検、高クオリティ試験のエビデンスが不足している」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬のスイッチング、一括置換 vs.漸減漸増:慶應義塾大 各抗精神病薬、賦活系と鎮静系を評価 高プロラクチン血症、アリピプラゾール切り替えと追加はどちらが有効か

382.

NOAC登場で変わる世界の心房細動の脳卒中予防

 心房細動(AF)は世界中で最もよく遭遇する不整脈で、脳卒中のリスクが5倍に高まる危険性がある。抗凝固薬、とりわけビタミンK拮抗薬が長い間、心房細動患者の基礎であり、過去の臨床試験において、コントロール群やプラセボと比較して、虚血性脳卒中を64%、全死亡率を26%減少させることが明らかになっている。Gloria-AF(Global Registry on Long Term Oral Antithrombotic Treatment in Patients with AF)は、脳卒中のリスクがあり、新規に診断された非弁膜症性心房細動に対する前向きのグローバルレジストリである。オランダのHuisman氏らは、このレジストリを用いて、ダビガトラン登場前後における世界全体での抗凝固療法の種類と割合を比較、検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年2月号の掲載。86.1%がCHA2DS2-VAScスコア2以上のハイリスク患者、79.9%が抗凝固薬を使用 最初の非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)であるダビガトランが使用可能となり、フェーズ2の研究が開始された。本研究では、フェーズ2のベースラインにおける患者データを、NOAC以前(フェーズ1)に集められたデータと比較した。 フェーズ2では、1万5,641例の患者がレジストリに登録され(2011年11月~2014年12月)、このうち1万5,092例が研究基準を満たした。横断的分析には、研究基準を満たした患者の特徴を示し、それによりAFの特徴、医学的転帰、併存疾患、薬剤の情報が集められた。解析には記述統計学の手法が用いられた。 全体の45.5%は女性で、平均年齢中央値は71歳(四分位範囲:64~78歳)であった。患者の47.1%はヨーロッパ、以下、北米(22.5%)、アジア(20.3%)、ラテンアメリカ(6.0%)、中東/アフリカ(4.0%)であった。また、86.1%の患者が、CHA2DS2-VASc スコア2以上の脳梗塞ハイリスク患者であった。13.9%はCHA2DS2-VASc スコアが1で、脳梗塞のリスクは中等度と考えられた。 全体の79.9%が経口抗凝固薬を使用しており、47.6%はNOAC、32.3%がビタミンK拮抗薬(VKA)、12.1%が抗血小板薬を使用し、7.8%は抗凝固療法を受けていなかった。比較対象のフェーズ1(1,063例)における割合は、VKA32.8%、アセチルサリチル酸41.7%、無投薬20.2%であった。ヨーロッパ、北米では半数以上がNOAC、アジアでは27.7%にとどまる ヨーロッパでは、フェーズ2においてNOACがVKAよりも頻繁に使用されており(52.3% vs.37.8%)、6.0%の患者が抗血小板薬を内服し、3.8%が抗血栓療法を受けていなかった。  北米ではNOAC、VKA、抗血小板薬がそれぞれ、52.1%、26.2%、14.0%であり、7.5%は抗血栓療法を受けていなかった。 アジアでは、ヨーロッパや北米と比較するとNOACは27.7%で、それほど頻繁に使われておらず、VKA27.5%、抗血小板薬25.0%で、19.8%は抗血栓療法を受けていなかった。 GLORIA-AF試験で示された、新たに診断された非弁膜症性心房細動の患者のベースラインデータにおいて、NOACが実臨床で広く使用されており、ヨーロッパや北米ではVKAよりも頻繁に使用されていることが明らかになった。しかしながら、世界全体をみると、かなりの割合の患者が依然として十分な治療を受けておらず、その傾向はとくに北米とアジアで顕著であった。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

383.

悪性黒色腫〔malignant melanoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義悪性黒色腫(メラノーマ:malignant melanoma)は、メラノサイト(メラニン色素産生細胞)ががん化して生じる悪性腫瘍である。表皮基底層部のメラノサイトが、がん化して皮膚に生じることが多いが、粘膜(口腔、鼻腔、肛門部など)や眼内(脈絡膜など)に生じることもある。■ 疫学人種によって発生頻度が大きく異なる。日本人では1~2/10万人年と見積もられている。白人では15~30/10万人年、黒人では0.5/10万人年程度の発生率である。■ 分類表皮に沿った悪性黒色腫細胞の組織学的増殖様式の特徴によって、以下の4型に分けるClark分類が用いられている(図1)1)。(1)表在拡大型: 白人の悪性黒色腫の70~80%を占める病型で、男性の背部や女性の下肢などに好発する(図1a)。日本人では全悪性黒色腫の20%程度を占め、近年増加している。(2)末端黒子型: 掌蹠や爪部を侵す病型であって(図1b)、日本人の悪性黒色腫の最多病型で50%程度を占める。(3)悪性黒子型: 高齢者の顔面に好発する病型で(図1c)、日本人、白人のいずれでも10%程度を占める。(4)結節型: 病変周囲に色素斑を伴わない病型で(図1d)、全身各所に生じうる。日本人の悪性黒色腫の15~20%を占める。なお最近、Bastianらによる新たな分類法が提案され、遺伝子変異を反映する分類として注目されている2)。■ 病因日光からの紫外線が主要発がん因子であり、表在拡大型は強い紫外線への間欠的曝露が、悪性黒子型は長年月にわたる慢性的な紫外線曝露が発生に関与するとされている。ただし、末端黒子型の発生には紫外線は関与せず、機械的刺激の関与が推定されている。■ 症状腫瘍細胞によるメラニン色素産生のために黒褐色調の病変としてみられることが多い1)。臨床的には濃淡不整な不規則形状の黒褐色斑として生じてくる。その後、一部に隆起性結節が生じ、さらに進行すれば潰瘍化を来す。■ 予後Tumor thickness(表皮顆粒層から最深部の悪性黒色腫細胞までの垂直距離をmm単位で表すもの)が最も重要な予後因子であり、T分類もこれによって規定される。AJCC(American Joint Committee on Cancer)の病期別の5年生存率は(同一病期でも亜病期によってかなり大きな差があるが)、病期Iが90%以上、病期IIが50~80%、病期IIIが25~60%程度、病期IVが10%程度である3)。後掲の表に各病期の概要を示した。なお、AJCCの予後予測ツールがネット上に公開されているので参考にされたい(http://www.melanomaprognosis.net/)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断悪性黒色腫の原発巣は、臨床的には大型で不整形状の黒褐色病変としてみられ、多くは色調に無秩序な濃淡差が認められる(図2a)。黒褐色調を呈する皮膚病変は悪性黒色腫以外にも多数存在するので、慎重に鑑別しなければならない1)。主要な鑑別診断と鑑別のポイントは、以下のとおりである。(1)色素細胞母斑: 径7mm程度までの小型の病変で、形状・色調に不規則、不整は目立たない(図2b)。ただし、先天性母斑は大きなことがある。(2)脂漏性角化症: 境界きわめて明瞭な隆起性結節としてみられ、表面が角化性で規則的な顆粒状凹凸を示すことが多い(図2c)。(3)基底細胞がん: 高齢者の頭頸部に好発し、青黒色調の局面、結節としてみられ、潰瘍化することも多い。周囲に色素斑を伴わないこと、病変表面が平滑で、透明感を呈することが特徴である(図2d)。■ ダーモスコピー診断近年、皮膚科診療に導入された診断法であり、乱反射を防止したうえで病変部に白色光を照射しながら10~20倍の拡大像を観察する。肉眼的に認識できないさまざまな所見を明瞭に観察することができ、とくに色素性皮膚病変の診断に有用である。その詳細は成書に譲るが4)、一点だけ日本人に多い掌蹠の悪性黒色腫の診断への有用性を記載する。掌蹠の悪性黒色腫は、ダーモスコピーにて早期段階から皮野(指紋)の隆起部(皮丘)に一致する色素沈着(parallel ridge pattern)を呈するのに対し、良性の母斑は皮野の溝(皮溝)に一致する色素沈着(parallel furrow pattern)を呈する(図3)。この所見の差異は両者の鑑別にきわめて有用であり、掌蹠の悪性黒色腫の早期検出と診断確定に役立つ4、5)。■ 病理組織診断臨床所見やダーモスコピー所見にて診断が確定できない場合は、生検して病理組織学的に診断を確定する。生検は可能ならば全摘生検が望ましい。生検することにより、もっとも重要な予後因子であるtumor thicknessを計測することもできる。悪性黒色腫は病理組織診断も難しいことが知られている。悪性黒色腫早期病変と良性のClark母斑の鑑別、結節型などの悪性黒色腫とSpitz母斑(良性の母斑の一種で、増殖するメラノサイトが顕著な核異型を示す)との鑑別がしばしば問題になる。疑わしい症例は、この方面のエキスパートにコンサルテーションすることが望ましい。■ 画像検査と病期の確定悪性黒色腫と診断されたら、AJCCの病期を決定する。原発巣のtumor thicknessを評価するとともに、理学的に所属リンパ節やその他の部位・臓器への転移がないかを検討する。必要に応じてCTやMRIなどの画像検査も施行する。PETも悪性黒色腫の転移の検出に、きわめて有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)AJCCの病期に対応して表のような治療を施行することが推奨されている。病期I、IIの段階ならば、原発巣の外科的切除を施行する。切除マージンはtumor thicknessによって規定されるが、早期病変は0.5~1cmのマージン、進行病変は2~3cmのマージンが推奨されている。症例によってはセンチネルリンパ節生検の実施を考慮する。病期IIIには原発巣の切除に加えて、所属リンパ節の郭清術を施行する。メラノーマは化学療法に抵抗性で、標準薬とされてきたダカルバジン(商品名:同)でも奏効率は15%程度に過ぎない。近年、分子標的薬が病期IVあるいは外科的根治術不能な病期IIICのメラノーマ患者に有効なことが明らかにされ、治療方針が激変した。病期IVにはMAPK経路の阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬が選択される6)。現在、わが国で保険適用となっているのは、MAPK阻害薬では変異BRAF阻害薬のベムラフェニブ(同:ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(同:タフィンラー)とMEK阻害薬のトラメチニブ(同:メキニスト)である。免疫チェックポイント阻害薬ではニボルマブ(抗PD-1抗体、同:オプジーボ)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体、同:キイトルーダ)とイピリムマブ(抗CTLA-4抗体、同:ヤーボイ)である。いずれの薬剤も特有の強い有害反応を有するので、施設内で治療チームを設けて対応することが望ましい。薬剤の選択順位は、確定的な推奨ではないが、増殖スピードの速いメラノーマにはまずベムラフェニブ単独またはベムラフェニブとトラメチニブの併用療法を考える。増殖スピードの遅いメラノーマには当初から抗PD-1抗体(ニボルマブまたはペムブロリズマブ)あるいはイピリムマブを用いる。抗PD-1抗体はイピリムマブよりも奏効率、有害反応の点から臨床的意義が高い可能性がある。ただし、腫瘍細胞がPD-L1陰性の場合はイピリムマブを選択する。これらの治療に抵抗性となった高度進行例には、適切な緩和療法を施行する。4 今後の展望ニボルマブとイピリムマブの併用療法の治験が進んでいる。また、上記以外の分子標的薬も続々と開発され、わが国においても臨床治験が進められている。術後補助療法としてニボルマブとイピリムマブの有用性の比較やペムブロリズマブの有用性も治験が実施されている。5 主たる診療科皮膚科が主たる診療科であり、診断から治療まで一貫した対応ができる。病理組織診断には病理科が、切除後の外科的再建などには形成外科が対応することもある。分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の使用にあたっては施設内に多職種診療チームを発足させることが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚悪性腫瘍学会が作成した日本皮膚科学会皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン(ほぼ同じものがMindsと日本がん治療学会のホームページにも掲載されている)(医療従事者向けのまとまった情報)米国NCCNの診療ガイドライン(リスト中“Melanoma”の項を参照)(医療従事者向けの英文のまとまった情報)国立がん研究センターがん情報サービス:「悪性黒色腫」患者用解説冊子(一般利用者向けのまとまった情報)1)斎田俊明ほか編. 1冊でわかる皮膚がん. 文光堂;2011.p.220-237.2)Curtin JA, et al. N Engl J Med. 2005;353:2135-2147.3)Balch CM, et al. J Clin Oncol. 2009;27:6199-6206.4)斎田俊明編. ダーモスコピーのすべて 皮膚科の新しい診断法.南江堂;2012.5)Saida T, et al. J Dermatol. 2011;38:25-34.6)宇原 久. 癌と化学療法. 2016;43:404-407.公開履歴初回2014年02月27日更新2017年02月21日

384.

統合失調症患者の再入院、ベンゾジアゼピンの影響を検証:東医大

 ベンゾジアゼピン(BZP)の高用量投与は、統合失調症患者の認知機能およびQOLに悪影響を及ぼすことが報告されている。しかし、統合失調症の臨床経過におけるBZPの効果は明らかになっていない。東京医科大学の瀧田 千歌氏らは、BZPと統合失調症患者の再入院との関連についてレトロスペクティブ研究を行った。Neuropsychiatric disease and treatment誌2016年12月15日号の報告。 対象は、2009年1月~2012年2月に東京医科大学病院から退院した統合失調症患者のうち、退院後2年以上治療を継続した108例。臨床的特徴、BZPおよび抗精神病薬などの処方量、退院時の機能の全体的評価(Global Assessment of Functioning:GAF)スコアを調査した。主要アウトカムは、何らかの理由による中止とした。 主な結果は以下のとおり。・2年間の研究期間中に44例(40.7%)が再入院した。・Cox比例ハザードモデルによる多変量解析では、教育歴の低さ(HR:2.43、p=0.032)、統合失調症発症年齢の低さ(HR:2.10、p=0.021)、ジアゼパム換算投与量の高さ(HR:6.53、p=0.011)が、退院後の再入院期間と有意に関連していた。 著者らは「統合失調症患者に対する退院時のBZP高用量投与は、再入院までの期間を短縮する可能性がある」としている。関連医療ニュース 不適切なベンゾジアゼピン処方、どうやって検出する 統合失調症の再入院、剤形の違いで差はあるのか 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには

385.

世界におけるがんの動向:2015年

 195の国と地域での1990~2015年における32のがん種の死亡率、罹患率、障害生存年数 (years lived with disability:YLD)、損失生存年数(years of life lost:YLL)、障害調整生命年(disability-adjusted life years:DALY)について、Global Burden of Disease Studyによる推計値が報告された。JAMA oncology誌オンライン版2016年12月3日号に掲載。 主な結果は下記のとおり。研究グループは、「今回の結果は、がんとの戦いにおいて前進が可能であることを示しているが、喫煙対策、予防接種、身体活動や健康的な食事の推進を含む、がん予防の取り組みにおけるアンメットニーズも浮き彫りにしている」と述べている。・2015年の世界におけるがん罹患数は1,750万人、死亡数は870万人であった。・2005年から2015年までにがん罹患数は33%増加し、そのうち人口の高齢化による増加が16%、人口増加による増加が13%、年齢別割合の変化による増加が4%であった。・男性で最も多かったのは前立腺がん(160万人)であった。一方、男性のがん死亡(150万人)とDALY(2,590万DALY)の主な原因は、気管・気管支・肺がんであった。・女性で最も多かったのは乳がん(240万人)で、女性のがん死亡(52万3, 000人)とDALY(1,510万DALY)の主な原因でもあった。・がんによる2015年のDALYは、世界で男女合わせて2億83万DALYであった。・2005年から2015年までに、がん全体の年齢調整罹患率は、国や地域195のうち174で増加し、年齢調整死亡率(ASDR)は140の国や地域で減少した。ASDRが増加した国の大部分はアフリカ大陸の国であった。・ホジキンリンパ腫による死亡数は、2005年から2015年の間に有意な減少がみられた(-6.1%、95%不確定区間:-10.6%~-1.3%)。食道がん・胃がん・慢性骨髄性白血病による死亡数も、統計学的に有意ではないが減少した。

386.

START研究が喘息診療の過去の幻想を拭い去った(解説:倉原 優 氏)-625

 過去のガイドラインにおいて、吸入ステロイド薬(ICS)治療は1週間に2日を超えて症状がある喘息患者、すなわちpersistent asthmaに推奨されてきた歴史がある。それ以下の症状の喘息をintermittent asthmaと呼び、吸入短時間型β2刺激薬などでその都度発作を解除してきた。 この2日というカットオフ値がエビデンス不足のまま現行GINAガイドライン1)へ至ることとなったため、軽症の喘息患者に対するICSの適否をはっきりさせるべきだという意見が多かった。そのため、START研究の事後解析が行われた。なお、現在のGINAガイドライン1)では、頻繁ではないが喘息症状を有し発作のリスクが高い患者に対しては低用量ICSでの治療開始(step 2)を推奨している1)。日本のガイドライン2)では治療ステップ1および2のカットオフ値は、週1回と月1~2回という問診が用いられている。 START研究について解説しておくが、これは今から13年前、発症2年以内の軽症持続型喘息患者を対象に長期追跡した有名な大規模試験である。この研究は、軽症持続型喘息患者においては発症早期から低用量ICSを使うべしという道筋を立てた、喘息診療のマイルストーンともいうべき存在である。 事後解析では、喘息症状の頻度を0~1日/週(0~1日群)、1~2日/週(1~2日群)、2日超/週(2日超群)で層別化し、複合プライマリアウトカムに初回の喘息関連イベント(SARE:入院、救急受診治療、死亡)およびベースラインからの肺機能の変化(気管支拡張後)が設定された。ICSは低用量ブデソニドが用いられ、これがプラセボと比較されている。 層別化はおおむねバランスのとれた頻度で、0~1日群が31%、1~2日群が27%、2日超群が43%だった。解析の結果、どの症状頻度サブグループにおいても初回のSAREまでの期間を有意に延長させることがわかった(0~1日群:ハザード比0.54 [95%信頼区間0.34~0.86]、1~2日群:ハザード比0.60 [95%信頼区間0.39~0.93] 、2日超群:ハザード比:0.57 [95%信頼区間0.41~0.79], p=0.94)。さらに、プラセボ群と比較すると、ブデソニド群は経口あるいは全身性ステロイドを要する重症発作のリスクを減らした(0~1日群:率比0.48 [95%信頼区間0.38~0.61]、1~2日群:率比0.56 [95%信頼区間0.44~0.71]、2日超群:率比0.66 [95%信頼区間0.55~0.80]、p=0.11)。 つまり、1週間あたりの症状が少なかろうと多かろうと、この軽症喘息というくくりでみた患者のすべてが低用量ICSの恩恵を受けることは間違いないということである。「1週間に2日」という幻想に縛られていた過去を、見事に拭い去る結果となった。 喘息であれば早期からICSを導入する、という考え方は正しい。しかし、咳喘息やアトピー咳嗽などの喘息以外の好酸球性気道疾患が増えてきたうえ、喘息とCOPDがオーバーラップしているという疾患概念まで登場している。疾患診断が昔より複雑になったことは否めない。その中で、経験的にICSをホイホイと処方するようになってしまうと、医学的効果がほとんど得られないにもかかわらず、将来の肺炎リスクのみを上昇させてしまうような事態にもなりかねない。 何よりも、喘息という疾患を正しく診断することが重要なのはいうまでもない。参考1)Global Strategy for Asthma Management and Prevention. Updated 20162)喘息予防・管理ガイドライン2015. 日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会編. 協和企画.

387.

小児/青年ICU患者の急性腎障害、重症度と死亡リスク/NEJM

 小児集中治療室に入院中の重症小児・若年成人において、急性腎障害(AKI)の発症頻度は高く、死亡率増加など予後不良と関連している。米国・シンシナティ小児病院のAhmad Kaddourah氏らによる、国際共同前向き疫学研究(Assessment of Worldwide Acute Kidney Injury, Renal Angina, and Epidemiology:AWARE)の結果、明らかになった。結果を踏まえて著者は、「ICU入室時には急性腎障害の系統的な検査が必要である」と強調している。小児および若年成人におけるAKIの疫学的特徴は、これまで単施設および後ろ向き研究で示されてきたが、AKIの定義や重症度などが異なり一貫した結果は得られていなかった。NEJM誌オンライン版2016年11月18日号掲載の報告。ICU入室の小児・若年成人を前向きに追跡しAKI発症を調査 研究グループは、2014年の連続した3ヵ月間に、アジア、オーストラリア、欧州、北米の小児ICU、32施設に、48時間以上入室した生後3ヵ月~25歳の全例について前向きに調査した。AKIの確定診断には、Kidney Disease:Improving Global Outcome criteria(KDIGO診断基準)を使用し、ステージ2および3(血清クレアチニンがベースラインの2倍以上、もしくは尿量0.5mL/kg/時未満が12時間以上持続)を重症AKIと定義して、ICU入室の最初の7日間におけるAKIを評価した。 主要評価項目は28日死亡率、副次的評価項目はICU在室期間、人工呼吸器使用の有無および期間、腎代替療法の実施などであった。ICU入室後7日間で27%がAKIを発症、重症AKIでは死亡リスクが約2倍に 解析対象は4,683例で、このうち1,261例(26.9%、95%信頼区間[CI]:25.6~28.2)がAKIを発症した。 重症AKIは543例(11.6%、95%CI:10.7~12.5)で発症が認められた。16の共変数を補正後、重症AKIは28日までの死亡リスクを有意に増加させることが確認された(補正オッズ比:1.77、95%CI:1.17~2.68、p<0.001)。死亡は、重症AKI患者で543例中60例(11.0%)に対し、非重症AKI患者では4,140例中105例(2.5%)であった(p<0.001)。 重症AKIは、人工呼吸器や腎代替療法の利用増加とも関連していた。また、AKIの重症度に応じて、28日死亡率が段階的に増加した(log-rank検定によるp<0.001)。尿量減少患者の67.2%は、血清クレアチニン値のみによるAKIの評価ではAKIと診断できなかった。

388.

意外に多い重病小児急性腎障害の発症―尿量チェックが大事―(解説:浦 信行 氏)-619

 従来より、種々の疾患で重病の状態にある患者は急性腎障害(AKI)を合併しやすく、これが生命予後を脅かすとの指摘がなされている。重病小児におけるAKIの生命予後に関する研究は2つあり、生命予後予測に関して一定の有用性が示されていたが、単一施設後ろ向き観察研究のみに限られていた。本研究は国際的な大規模前向き疫学研究であり、集中治療室(ICU)での治療を要する重病小児~若年成人の4分の1以上の26.9%がAKIを発症し、11.6%の重症のAKIでは死亡リスクの増加を招くことがNEJM誌に報告された。 同研究では、2014年の3ヵ月間にアジア、オーストラリア、欧米の小児ICU 32施設のいずれかに48時間以上滞在した、生後3ヵ月~25歳の4,683例を前向きに調査した。2012年のKidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)基準に従い、ICUに入室後7日間のAKIの発症頻度と重症度(ステージ)を評価し、ステージ2~3(血清Cr値がICU入室前3ヵ月間の最低値の2倍以上に上昇、または12時間以上の尿量が0.5mL/kg/時未満)のAKIを重症とした。主要評価項目は28日間の死亡率、副次評価項目の1つは腎代替療法の適用であった。ICU入室前3ヵ月以内の血清Cr値、およびICU入室後7日間と28日後の臨床および検査記録を取り、解析を行った。その結果、ICU入室7日以内にAKIを発症したのは1,261例(26.9%)で、543例(11.6%)が重症AKIと診断された。また、28日死亡率は、重症AKIの患者で11.0%と、その他(非AKIおよびステージ1のAKI)の患者の2.5%に比べ有意に高く、多変量解析の結果、重症AKIは28日以内の死亡を増加させる有意なリスクであった(オッズ比1.77、95%CI:1.17~2.68、p<0.001)。このほかに、腎代替療法の適用も強い因子だった(同3.38、1.74~6.54、p<0.001)。さらに、尿量の減少からAKIと診断された患者の67.2%は、血清Cr値が診断基準を満たしておらず、血清Cr値のみでの急性腎障害診断では患者を見落とす危険性があることが示された。 以上の結果は、成人を対象とした成績や、重病小児の2つの後ろ向き研究とほぼ一致するが、前向きで多施設国際共同試験での結果に大きな意義がある。試験プロトコルに関しては、KDIGOの診断基準(Cr値と尿量評価および判定期間が48時間ではなく7日間)がほかの基準(RIFLEやAKIN)より、生命予後を評価項目とした場合の感度が高かったとする先行研究の結果から、好ましいものである。ただし、細部に関しては、さらに検討を要することもある。 KDIGOの基準データの血清Cr値はJaffe法によるものであり、酵素法の値とは0.2 mg/dL程度差がある。また、KDIGOでの小児の基準に関しては、3ヵ月以上の小児は成人の基準とまったく同じである。しかし、小児の腎機能において、尿濃縮能が完成するのは1~2歳である。したがって、2歳まではやや希釈された尿しか作れないので、尿量の基準が同じでよいか、という疑問が残る。3ヵ月~2歳までの対象(4分位範囲の結果から少なくとも1,200例以上いるはず)のサブ解析があってもよいのではないか。また、ステージ3の腎機能評価の1項目に、eGFR 35mL/min/1.73m2以下とあるが、わが国では体格の違いなどから計算方法が違うので、そのままの値ではやや評価がずれる可能性がある。 しかし、以上のようなことを考慮しても、この研究結果の重要性はほぼ変わりないと考える。

389.

エボロクマブのプラーク退縮、AHAで発表:アムジェン

 アムジェン社は2016年11月15日、冠動脈疾患(CAD)患者に対して最適用量のスタチン療法にエボロクマブ(商品名:レパーサ)を上乗せした結果、統計学的に有意なアテローム性動脈硬化の退縮が確認されたことを発表した。この第III相プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験(GLAGOV試験)の結果は、2016年米国心臓学会議(AHA)学術集会での発表と同時に、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌にも掲載された。 GLAGOV試験では、サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤エボロクマブの、最適用量のスタチン療法を受けている患者に対する冠動脈のアテローム性プラーク進展への影響をベースラインおよび78週目の血管内超音波(IVUS)測定により検証した。 この試験は主要評価項目を達成し、エボロクマブの治療が、動脈血管内に占めるプラークの割合であるアテローム体積率(PAV:Percent Atheroma Volume)をベースライン時から統計学的に有意に減少することを明らかにした。 最適用量スタチン+エボロクマブ(エボロクマブ群)ではPAVがベースラインに対し0.95%の減少が認められたが、最適用量スタチン+プラセボ群では0.05%の増加が認められた(エボロクマブ群:p<0.0001、プラセボ群:p=0.78)。投与群間で統計的に有意な差が認められた(p<0.0001)。さらに、エボロクマブ群ではプラセボ(プラセボ群)と比較し、より多くの患者でPAVの退縮が認められた(エボロクマブ群:64.3%、プラセボ群:47.3%、p<0.0001)。 プラーク量測定のもう1つの基準である標準化した総アテローム体積(TAV:Total Atheroma Volume)の減少ついては、エボロクマブ群で平均5.8mm3、プラセボ群では0.9mm3で(エボロクマブ群:p<0.0001、プラセボ群:p=0.45)、2群間で統計的に有意な差が認められた(p<0.0001)。 ベースラインでは、いずれの群でも患者の平均LDL-C値は92.5mg/dLであり、両群で98%の患者が高用量から中用量のスタチン療法を受けていた。78週間の治療期間中、エボロクマブ群のLDL-C値の時間加重平均は36.6mg/dLで、プラセボ群の93.0mg/dLと比較し59.8%の低下が認められた。78週目において、エボロクマブ群の平均LDL-C値は29mg/dLで、プラセボ群が90mg/dLを示したのに対し、ベースラインから68.0%低下を認めた。  この試験では、安全性に関する新たな所見は認められなかった。治療中の有害事象の発現率は両群で同等であった(エボロクマブ群:67.9%、プラセボ群:79.8%)。本試験で検討された臨床的に重要な有害事象は筋肉痛(エボロクマブ群:7.0%、プラセボ群:5.8%)、新たに診断された糖尿病(エボロクマブ群:3.6%、プラセボ群:3.7%)、神経認知機能関連の事象(エボロクマブ群:1.4%、プラセボ群:1.2%)、注射部位反応(エボロクマブ群:0.4%、プラセボ群:0.0%)であった。 GLAGOV試験では結合抗体はほとんど認められず(エボロクマブ群:0.2%[1例])、中和抗体は検出されなかった。 また、心血管イベントへの影響を評価する目的では設計されていないものの、明確に主要心血管イベントと判定された事象の発現率はエボロクマブ群で12.2%、プラセボ群で15.3%であった。判定された事象の多くは、冠動脈血行再生術(エボロクマブ群:10.3%、プラセボ群:13.6%)、心筋梗塞(エボロクマブ群:2.1%、プラセボ群:2.9%)、その他の判定された心血管イベントの発現率はいずれの治療群でも0.8%以下であった。GLAGOV試験について GLAGOV(GLobal Assessment of Plaque ReGression with a PCSK9 AntibOdy as Measured by IntraVascular Ultrasound)試験は、臨床的に冠動脈造影が必要とされている最適用量のスタチン治療中の患者968例を対象に、冠動脈疾患における動脈硬化(プラーク)に対するエボロクマブの効果を評価するため設計された。患者は、最低4週間継続して定用量のスタチン療法を受けており、LDL-C80mg/dL以上か、60~80mg/dL の場合は、1件の重要な心血管リスク要因(冠動脈以外のアテローム性血管疾患、直前2年間における心筋梗塞または不安定狭心症による入院、もしくは2型糖尿病と定義)または3件の軽微な心血管リスク要因(現在喫煙している者、高血圧、HDLコレステロール低値、若年性冠動脈疾患の家族歴、2mg/dL以上の高感度C反応性タンパク質、50歳以上の男性、55歳以上の女性)があることが要件であった。被験者は、エボロクマブ420mg月1回またはプラセボに1:1で割り付けられた。最適用量のスタチン療法の定義は、20mg/日以上相当のアトルバスタチンを投与し、ガイドラインに沿ってLDL-Cを低下させられる投与用量とした。主要評価項目は、IVUS測定による、プラセボと比較した78週目におけるPAVのベースラインからの変化率。副次的評価項目は、PAVの減少(ベースラインからのすべての減少)、78週目におけるTAVのベースラインからの変化、およびTAVの減少(ベースラインからのすべての減少)であった。(ケアネット 細田 雅之)原著論文はこちらNicholls SJ, et al.JAMA. 2016 Nov 15. [Epub ahead of print]参考アムジェン社(米国):ニュースリリースGLAGOV試験(ClinicalTrials.gov)

390.

世界的に今後の認知症研究はどう進んでいくか

 2015年3月、WHO加盟国80ヵ国と4つの国連機関を含む160人の代表が集まり、認知症に対する世界的アクションに関する第1回WHO大臣級会合が開かれた。そのなかで、さらなる研究に向けて総力結集を後押しし、認知症の世界的な負担を軽減するためのアクションの呼びかけ(Call for Action)が発表された。米国・コロンビア大学のHiral Shah氏らは、この取り組みを促進するために、Child Health and Nutrition Research Initiative法の改良バージョンを用いて、世界の代表的研究の優先順位付けを行った。The Lancet Neurology誌2016年11月号の報告。 201人の参加者から863件の研究質問を収集し、59テーマの研究手段に統合した。39ヵ国、162人の研究者、利害関係者により、5つの基準に従って匿名により採点した。 主な結果は以下のとおり。・トップ10の研究優先順位のうち6件は予防に重点が置かれていた。その他、鑑別、認知症リスク低下、デリバリー、認知症者と介護者のためのケア品質であった。・診断に関する他の優先順位は、バイオマーカー、治療法の開発、疾患メカニズムの基礎研究、一般市民の意識、認知症への理解であった。・このシステマティックな国際法により識別された研究の優先順位は、世界的な認知症研究状況との重要なギャップを特定するためにマッピングする必要がある。そのうえで、通知し、政策立案者や資金提供者に動機を与え、研究者をサポートし、認知症の世界的な負担を軽減するための研究を行う必要がある。・Global Dementia Observatoryなどの国際プラットホームを介した継続的な研究への投資と進捗状況の監理するために、WHO、WHO加盟国、一般市民社会といったすべてのステークホルダーの努力が必要である。関連医療ニュース 認知症のための学部医療教育強化 認知症の世界的トレンドはどうなっているか 認知症に進行しやすい体型は

391.

小児のワクチン接種と死亡率、BCG vs.DTP vs.MCV/BMJ

 BCGおよび麻疹含有ワクチン(MCV)接種は、疾患予防効果を介して予想される以上に全死因死亡率を低下させ、ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン(DTP)接種は逆に全死因死亡率を上昇させる可能性があることが、英国・ブリストル大学のJulian P Higgins氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかとなった。これまでの研究で、麻疹やDTPなどのワクチン接種は、目的とする疾患の発症を顕著に減少させるにもかかわらず、目的の感染症以外に起因する死亡に影響を及ぼすことが示唆されていた。著者は、「今回の結果は、WHOで推奨されているワクチン接種の変更を支持するものではないが、ワクチン接種スケジュールにおけるDTPの順番の影響について無作為化試験で比較検討する必要がある」と述べるとともに、「すべての子供たちがBCG、DTP、MCVの予防接種を予定どおり確実に受けられるよう取り組むべきである」とまとめている。BMJ誌2016年10月6日号掲載の報告。5歳未満児コホート試験34件のシステマティックレビューとメタ解析を実施 研究グループは、5歳未満の小児におけるBCG、DTP、標準力価MCV接種の非特異的な影響や全死因死亡率への影響を評価するとともに、性別やワクチンの接種順序の修正効果について検討した。Medline、Embase、Global Index Medicus、WHO国際臨床試験登録プラットフォームを用い、各種臨床試験、コホート研究、症例研究を検索し、システマティックレビューとメタ解析を実施。組み込まれた研究の対象小児の重複を避けるため、地理的場所と時期で子供たちを出生コホートに分け、さらに同一出生コホートに関連する全論文を分類した。バイアスのリスク評価には、コクランツールを使用した。 出生コホート34件が本レビューに組み込まれた。一部は短期間の臨床試験で、ほとんどは観察研究であった。全死因死亡率に関しては大半の研究で報告されていた。全死因死亡率は、BCGと標準力価MCVで低下、DTPで上昇 BCGワクチン接種は、全死因死亡率の低下と関連していた。平均相対リスク(RR)は臨床試験5件で0.70(95%信頼区間[CI]:0.49~1.01)、バイアスリスクが高い観察研究9件(追跡期間がほとんど1年以内)では0.47(95%CI:0.32~0.69)であった。 DTP接種(ほとんどが経口ポリオワクチンと併用)は、バイアスリスクが高い研究10件で、全死因死亡率の増加の可能性と関連が認められた(RR:1.38、95%CI:0.92~2.08)。この影響は、男児よりも女児のほうがより強いことが示唆された。 標準力価MCV接種は、全死因死亡率の低下と関連していることが確認された(臨床試験4件でRR:0.74[95%CI:0.51~1.07]、観察研究18件でRR:0.51[95%CI:0.42~0.63])。この影響は男児よりも女児のほうがより強いようであった。 ワクチンの順番を比較した観察研究7件では、バイアスリスクが高いものの、DTP接種がMCVと併用あるいはMCV接種後で、MCV接種前より死亡率上昇と関連する可能性が示唆された。

392.

冠動脈de novo病変に対する「ステントレスPCI」

 薬剤溶出ステント(以下、DES:Drug Eluting Stent)の再狭窄率は低い。しかし、ステント血栓症、ステントフラクチャー、neo-atherosclerosisなどいくつかの問題が残る。一方、バルーン単独の経皮的冠動脈インターベンション「ステントレスPCI」はいまだに根強く、薬物溶出バルーン(DCB:Drug Coated Balloon)の臨床応用により注目されており、その有効性を支持する臨床試験もある。獨協医科大学 循環器内科の西山直希氏らは、de novo冠状動脈狭窄病変の治療におけるDCBの有効性を評価することを目的とした研究を行っている。International Journal of Cardiology誌2016年11月1日号の報告。 2014年5月~15年6月に待機的な経皮的PCIを受けた慢性冠動脈疾患患者から透析患者、再狭窄患者、重度石灰化、左主幹部、慢性完全閉塞病変を除外した60例を登録し、無作為にステントレス群(n=30)とステント群(n=30)に割り付けた。ステントレス群では初期拡張で至適径に拡張できた患者にDCBを施行、拡張できなかった患者にはDESを用いた。ステントレス群の3例はステント留置となり、結果的に、ステントレス群27例、ステント群33例となった。評価項目は8ヵ月後の標的病変再血行再建(TLR:Target Lesion Revascularization)率および晩期内腔損失(Late Lumen Loss)である。 主な結果は以下のとおり。・TLR率は両群で同等であった(ステントレス群:0.0%、ステント群:6.1%、p =0.169)。・PCI直後の最小血管径(MLD:Minimal Lumen Diameter)と初期獲得径(Acute gain)はステントレス群で有意に小さかった(MDLはステントレス群:2.36mm±0.46、DES群:2.64mm±0.37、p=0.011、Acute Gainはステントレス群:1.63±0.41mm、DES群:2.08±0.37mm、p<0.0001)。・しかし、PCI後8ヵ月のMLDおよびLate Lumen Lossについては、両群で有意な差はなかった(MLDは2.12±0.42mm vs. 32±0.52mm、p=0.121、Late Lumen Loss は0.25±0.25mm vs. 0.37±0.40mm、p=0.185)。 ケアネットの取材に対し、西山氏と共著者の小松孝昭氏、田口功氏は以下のように述べた。現在の試験の状況は? 登録数は倍以上となっている。しかしながら、DCBによるステントレスPCI群での再狭窄例は依然としてゼロである。実臨床でステントレスPCIの適応となる割合はどの程度? 透析患者、重度石灰化、左主幹部、慢性完全閉塞病変、病変長30mm以上などの病変は除外しているが、現在ではde novo症例の4割を超えている。初期拡張に用いるバルーンは? NSEバルーンを用いている。スコアリングによりプラークに亀裂を入れることで、解離ができずきれいに拡張できる。また、炎症も少なく再狭窄の予防につながると考えている。ステントレスPCIのメリットはどのようなものか? ステントという異物を入れることで、ステント血栓症や長期的にはステントに起因するneo-atherosclerosis、またステントフラクチャーによるイベントの可能性もある。ステントを入れないで済む患者にはDCBを用いることで、このようなイベントを避けることができると考えられる。また、抗血小板薬の減量または中止が可能であることもステントレスPCIのメリットだと考えられる。 バルーンで拡張し、ステントを留置するというのが現在のPCIの一連の流れであるが、その中にステントを入れないで済む患者が存在する。DES時代の中、これからもステントレスPCIの有用性を評価して臨床応用につなげていくべきであろう。それは、患者さんのQOLおよび予後の改善につながると考えられる、と田口氏は言う。

393.

世界の平均寿命、35年で約10年延長:GBD2015/Lancet

 1980年から35年間に、世界の年齢別死亡率は着実に改善し、この進展パターンは過去10年間持続しており、多くの国では当初の予測よりも迅速であったが、期待余命が短縮し、いくつかの死因の年齢標準化死亡率が上昇した国もあることが、米国・ワシントン大学のChristopher J L Murray氏らが実施したGlobal Burden of Disease Study 2015(GBD 2015)で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年10月8日号に掲載された。生存期間を改善し、寿命を延長するには、その時々の地域の死亡率や傾向に関する頑健なエビデンスが求められる。GBD 2015は、195の国と領地における1980~2015年の全死因死亡および249項目の原因別死亡を包括的に評価する世界的な調査である。新たな解析法による検討、GATHERに準拠 研究グループは、GBD 2013およびGBD 2010のために開発された解析法の改良版を用いて、年齢、性、地理、年代別の全死因死亡率を推算した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成による)。 GBD 2015では、エボラウイルス病を含む8つの死因が新たに加えられた。ほとんどの死因の予測値を生成するCause of Death Ensemble Model(CODEm)のほか、6つのモデリング法を用いて、原因別死亡率の評価を行った。 「保健推計報告の正確性、透明性のためのガイドライン(Guidelines for Accurate and Transparent Health Estimates Reporting; GATHER)」に準拠し、データ源とともに、解析過程の各段階を記述した。出生時期待余命が61.7歳から71.8歳へ、死亡数が増加し年齢標準化死亡率は低下 世界的な出生時の期待余命(寿命)は、1980年の61.7歳から、2015年には71.8歳に延長した。サハラ以南のアフリカ諸国では、2005年から2015年に期待余命が大幅に延長した国があり、HIV/AIDSによる大規模な生命の喪失の時代からの回復が認められた。 同時に、とくに戦争や対人暴力により死亡率が上昇した国など、期待余命が停滞または短縮した地域も多かった。シリアでは、2005年から2015年に期待余命が11.3年短縮し、62.6歳にまで低下した。 2005年から2015年に、全死亡数は4%増加したが、年齢標準化死亡率は17.0%低下しており、この間の人口増加と年齢構成の転換が示された。この結果は、全死亡数が14.1%増加したのに対し年齢標準化死亡率が13.1%低下した非感染性疾患(NCD)と類似していた。このパターンは、いくつかのがん種、虚血性心疾患、肝硬変、アルツハイマー病、その他の認知症にみられた。 これに対し、感染性疾患、妊産婦、新生児、栄養障害による全死亡数および年齢標準化死亡率は、いずれも2005年から2015年に有意に低下しており、その主な要因はHIV/AIDS(年齢標準化死亡率の低下率:42.1%)、マラリア(同:43.1%)、早産による新生児合併症(同:29.8%)、妊産婦の疾患(同:29.1%)による死亡率の低下であった。また、外傷による年齢標準化死亡率は、この間に有意に低下したが、例外として、とくに中東地域では対人暴力や戦争による外傷で多くの人命が失われた。 2015年における5歳以下の下痢による死亡の主な原因はロタウイルス性腸炎であり、下気道感染症による死亡の主原因は肺炎球菌性肺炎であったが、病原体別死亡率は地域によってばらつきがみられた。 全体として、人口増加、高齢化、年齢標準化死亡率の変化の影響は、死因ごとに実質的に異なっていた。SDIによるYLLの予測値と実測値 原因別死亡率と社会人口学的指標(SDI:学歴、出生率、1人当たりの所得に基づくサマリー指標)の関連の解析では、SDIの上昇にともなって、死因や年齢の構成が規則的に変化することが示された。 若年死亡率(損失生存年数[YLL]の指標)の国別のパターンには、SDIのみに基づくYLLの予測値との間にずれがあり、国や地域によって高度に不均一なパターンが明確に認められた。ほとんどの地域では、YLL増加の主要な原因は虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病であったが、多くの場合、地域内のSDIに基づくYLLの実測値と予測値の比には、顕著な不一致が認められた。 サハラ以南のアフリカのすべての国では、感染性疾患、妊産婦、新生児、栄養障害がほとんどのYLLの原因であり、依然としてマラリアやHIV/AIDSが早期死亡の主要原因の国では、YLLの実測値が予測値をはるかに超えていた。 著者は、「年齢標準化死亡率は改善したが、人口増加や高齢化が進んだため、多くの国でNCDによる死亡数が増加しており、これが保健システムへの需要の増加を招いている」とまとめ、「これらの知見は、SDIに基づく死亡のパターンを、より深く研究するための参考になるだろう」としている。

394.

TCT 2016注目の演題

2016年10月29日~11月2日、米国ワシントンD.C.でTCT 2016(心臓カテーテル学会)が開催されます。ケアネットでは、聴講スケジュールを立てる際の参考としていただくために、会員医師へ注目演題のアンケートを実施いたしました。その結果を、三井記念病院 循環器内科の矢作 和之氏のコメントとともにご紹介いたします。TCT 2016開催地、ワシントンD.C.のおすすめスポットはこちら※演題名および発表順は、10月14日時点でTCT 2016ウェブサイトに掲載されていたものです。当日までに発表順などが変更となる可能性がございますのでご注意ください。Sunday Oct. 30 9:00 - 10:00、Main Arena IPlenary Session II. Late-breaking Clinical Trials 1: Cosponsored by The LancetModerator: Gregg W. Stone1.ILUMIEN III (OPTIMIZE PCI): A Prospective, Randomized Trial of OCT-Guided vs. IVUS-Guided vs. Angio-Guided Stent Implantation in Patients with Coronary Artery Disease2.BIO-RESORT (TWENTE III): A Prospective, Randomized Three-Arm Trial Comparing Two Different Biodegradable Polymer-Based Drug-Eluting Stents and a Durable Polymer-Based Drug-Eluting Stent in an All-Comers Population of Patients with Coronary Artery Disease3.BIONICS: A Prospective, Randomized Trial of a Ridaforolimus-Eluting Coronary Stent vs. a Zotarolimus-Eluting Stent in a More-Comers Population of Patients with Coronary Artery DiseaseQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大するILUMIEN III:OCT ガイド vs. IVUSガイド vs. 血管造影ガイドILUMIEN III試験に注目が集まっているようです。イメージングが盛んな日本においてOCT ガイドPCI vs. IVUSガイドPCI vs. 血管造影ガイドPCIの比較は非常に関心の高いテーマです。BIO-RESORT試験はcircumferential biodegradable coating stentのORSIRO、abluminal biodegradable coating stentのSYNERGY、durable coating stentのRESOLUTEの1:1:1のランダム化比較試験です。biodegradable polymerとdurable polymerの違いについて何らかの結果は出るのでしょうか。Sunday Oct. 30 12:15- 13:00、Main Arena IPlenary Session VI. First Report Investigations 1: Cosponsored by The LancetModerator: David W.M. Muller1.ABSORB China: Two-Year Clinical Outcomes from a Prospective, Randomized Trial of an Everolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold vs. an Everolimus-Eluting Metallic Stent in Patients with Coronary Artery Disease2.ABSORB II: Three-Year Clinical Outcomes from a Prospective, Randomized Trial of an Everolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold vs. an Everolimus-Eluting Metallic Stent in Patients with Coronary Artery Disease3.LEADERS FREE: Two-Year Clinical and Subgroup Outcomes from a Prospective, Randomized Trial of a Polymer-Free Drug-Coated Stent and a Bare Metal Stent in Patients with Coronary Artery Disease at High Bleeding RiskQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大するABSORB IIの3年時とABSORB Chinaの2年時でのvery late scaffold thrombosisは?このセッションではABSORB試験のうちABSORB IIの3年時とABSORB Chinaの2年時の結果が発表されます。先日ローマで開催されたESC(欧州心臓病学会)ではABSORB Japanでvery late scaffold thrombosisの報告がありましたが、これら2つの試験ではどうかが注目です。Monday Oct. 31 9:00 - 9:45、Main Arena IIPlenary Session II. Late-Breaking Clinical Trials 2Moderator: Martin B. Leon1.EXCEL: A Prospective, Randomized Trial Comparing Everolimus-Eluting Stents and Bypass Graft Surgery in Selected Patients with Left Main Coronary Artery Disease2.NOBLE: A Prospective, Randomized Trial Comparing Biolimus-Eluting Stents and Bypass Graft Surgery in Selected Patients with Left Main Coronary Artery DiseaseQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大するXience、BioMatrix、新世代ステントの大規模臨床試験の成績は?従来、左冠動脈主幹部の病変に対する治療は冠動脈バイパス術が第1選択でしたが、近年の薬剤溶出性ステントの登場により、その有用性を示唆する報告がみられます。このセッションでは新世代ステントにおける左冠動脈主幹部の病変に対する治療成績の発表があります。EXCEL試験、NOBEL試験ともに1,000人を超える大規模な臨床試験で、EXCEL試験はXience、NOBEL試験はBioMatrixという、ともに実績十分のステントとの比較であり、結果が注目されます。Monday Oct. 31 12:00 - 13:00、Main Arena IIPlenary Session VI. First Report Investigations 2Moderator: Patrick W. Serruys1.REVELUTION: 9-Month Clinical, Angiographic, IVUS, and OCT Outcomes with a Polymer-Free Sirolimus-Eluting Drug-Filled Stent2.FANTOM II: 6-Month and 9-Month Clinical, Angiographic and OCT Results with a Radiopaque Desaminotyrosine Polycarbonate-Based Sirolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold in Patients with Coronary Artery Disease3.MeRes-1: 6-Month Clinical, Angiographic, IVUS and OCT Results with a Thin-Strut PLLA-Based Sirolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold in Patients with Coronary Artery Disease4.FORTITUDE: 9-Month Clinical, Angiographic, and OCT Results with an Amorphous PLLA-Based Sirolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold in Patients with Coronary Artery Disease5.FUTURE-I: 6-Month Clinical, Angiographic, IVUS and OCT Results with a Thin-Strut PLLA-Based Sirolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold in Patients with Coronary Artery DiseaseQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大する新世代デバイスのパフォーマンスをOCTで確認このセッションでは新世代の薬剤溶出ステント/スキャフォールドを用いた臨床試験の結果が報告されます。また、興味深いことにすべての試験において、6~9ヵ月のフォローアップをOCTを用いて行っています。新世代デバイスのパフォーマンスに注目です。Tuesday Nov. 1 9:00 - 10:00、Main Arena III,Plenary Session II. Late-breaking Clinical Trials 3: Cosponsored by the Journal of the American Medical AssociationModerator: Gregg W. Stone1.SENTINEL: A Prospective, Randomized Trial Evaluating Cerebral Protection in Patients with Severe Aortic Stenosis Undergoing Transcatheter Aortic Valve Replacement2.PARTNER II QUALITY OF LIFE: Health Status Benefits From a Prospective, Randomized Trial of Transcatheter and Surgical Aortic Valve Replacement in Intermediate Risk Patients with Severe Aortic Stenosis3.PARTNER I FIVE-YEAR ECHO: Long-Term Hemodynamic and Structural Outcomes After Transcatheter Aortic Valve Replacement in High-Risk and Inoperable Patients with Aortic StenosisQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大する今後のTAVRの方向性に示唆を与える研究報告このセッションは経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)関連の臨床試験の報告です。TAVR後の脳卒中は、デバイスの改良や手技の熟練により減少していますが、症例によっては重大な合併症となることがあります。SENTINEL試験ではClaret Medical社のプロテクションデバイスによる脳梗塞の発症予防に関しての報告を予定しています。PARTNER II試験では中等度手術リスク患者へのTAVRの短期の有効性が示されましたが、PARTNER II QUALITY OF LIFEでは中等度手術リスクの患者生活の質に関して、外科的大動脈弁置換術(AVR)と比較しています。今後のTAVRの行方に影響を与える可能性もあります。最後に、現在のTAVRの問題点として、外科的AVRと比較し長期成績のデータが不十分であることが挙げられます。PARTNER I FIVE-YEAR ECHOでは心エコーの指標から5年時点でのTAVRの有効性が報告される予定です。Tuesday Nov. 1 12:15 - 13:15、Main Arena IIIPlenary Session VI. First Report Investigations 3Moderator: Cindy L. Grines1.RESPECT: Final Long-Term Outcomes From a Prospective, Randomized Trial of PFO Closure in Patients with Cryptogenic Stroke2.COLOR: A Prospective, Multicenter Registry Evaluating the Relationship Between Lipid-Rich Plaque and Two-Year Outcomes after Stent Implantation in Patients with Coronary Artery Disease3.PLATINUM DIVERSITY: Outcomes from a Large-Scale, Prospective Registry of Coronary Artery Stent Implantation in Women and Minorities4.ReACT: A Prospective, Randomized Trial of Routine Angiographic Follow-up After Coronary Artery Stent ImplantationQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大する日本発! フォローアップCAGの長期転帰の影響を検討したReACT試験このセッションではRESPECT試験、COLOR試験、ReACT試験が注目されているようです。RESPECT試験は卵円孔開存(PFO)を有する原因不明の脳卒中患者において、Amplatzer PFO閉塞デバイスの有効性をみた研究ですが、今回はその長期の成績が発表されます。COLORレジストリはNIRS(近赤外線分光法)での脂質性プラークとPCI周術期の心筋梗塞発症の関係を調べた研究で、今回は2年フォローアップの報告です。ReACT試験は日本からの報告です。PCI成功例における、フォローアップCAGの長期転帰の影響を検討した試験です。フォローアップCAGをルーチンで行っている施設が多い日本で、今後、カテーテル検査のあり方の見直しにつながる発表です。Wednesday Nov 2 9:00 - 10:00、Main Arena IVPlenary Session VII. Late-breaking Clinical Trials 4Moderator: Martin B. Leon1.ILLUMENATE U.S.: A Prospective, Randomized Trial of a Paclitaxel-Coated Balloon vs. an Uncoated Balloon for Treatment of Diseased Superficial Femoral and Popliteal Arteries2.WATCHMAN US POST-APPROVAL STUDY: Multicenter, Prospective, Registry Results with a Left Atrial Appendage Closure Device for Stroke Prevention in Patients with Atrial Fibrillation3.AMULET OBSERVATIONAL STUDY: Multicenter, Prospective, Registry Results with a Left Atrial Appendage Closure Device for Stroke Prevention in Patients with Atrial FibrillationQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大する左心耳閉鎖の2大デバイス、リアルワールドでの成績は?このセッションは下肢動脈に対するインターベンションの1演題と左心耳閉鎖デバイス関連の2演題です。ILLUMENATE U.S.トライアルは大腿膝窩動脈病変に対するCovidien社のStellarex DCBと従来のバルーン治療のランダム化比較試験です。ILLUMENATE FIH試験において、Stellarex DCBの有効性、安全性が示されており、今回の結果は注目です。心房細動に伴う心原性脳梗塞の脳梗塞予防として左心耳閉鎖術が近年行われるようになっていますが、そのなかで、2大デバイスはBoston Scientific社のWATCHMANデバイスとSt. Jude Medical社のAmplatzerデバイスです。このセッションではこれらのデバイスによる多施設前向きレジストリ研究の結果が発表されます。実際の臨床での成績に注目です。Wednesday, Nov 2 12:15 - 13:15、Main Arena IVPlenary Session VII. First Report Investigations 4Moderator: Manel Sabate1.PRISON IV: A Prospective, Randomized Trial of a Bioresorbable Polymer-Based Sirolimus-Eluting Stent and a Durable Polymer-Based Everolimus-Eluting Stent in Patients with Coronary Artery Chronic Total Occlusions2.TOSCA-5: A Prospective, Randomized Trial Evaluating Collagenase Infusion in Patients with Coronary Artery Chronic Total Occlusions3.TRANSFORM-OCT: A Prospective, Randomized Trial Using OCT Imaging to Evaluate Strut Coverage at 3 Months and Neoatherosclerosis at 18 Months in Bioresorbable Polymer-Based and Durable Polymer-Based Drug-Eluting Stents4.RIBS VI: A Prospective, Multicenter Registry of Bioresorbable Vascular Scaffolds in Patients with Coronary Artery Bare Metal or Drug-Eluting In-Stent Restenosis – 6-9 Month Clinical and Angiographic Follow-up ResultssQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大するbioresorbable polymer DESとdurable polymer DES、アウトカムに違いはあるのか?現在、明らかにコンセプトの違う2種類のbioresorbable polymer DESとdurable polymer DESの差ははっきりしていません。このセッションでは、この点について2つの試験の発表があります。とくにTRANSFORM-OCT試験では3ヵ月のストラットの被覆化と18ヵ月でのneoatherosclerosisの発生率を調べています。両者に違いはあるのでしょうか?

395.

閉経後の骨粗鬆症性骨折、開発中のabaloparatideが有用/JAMA

 骨粗鬆症を有する閉経後女性に対し、abaloparatideはプラセボと比較して新規椎体および非椎体の骨折を低下することが、米国・Colorado Center for Bone ResearchのPaul D. Miller氏らによる第III相二重盲検無作為化試験ACTIVE(Abaloparatide Comparator Trial In Vertebral Endpoints)の結果、示された。abaloparatideは、開発中の副甲状腺ホルモン1型受容体選択的活性薬。18ヵ月間の試験期間中、新規椎体骨折を有意に抑制、非椎体骨折は有意差は示されなかったが減少が認められた。結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、リスク差の臨床的意義、abaloparatide治療のリスク・ベネフィット、その他の骨粗鬆薬との有効性の比較などを行う必要がある」とまとめている。JAMA誌2016年8月16日号掲載の報告。対プラセボ、テリパラチドで18ヵ月間の無作為化試験 骨粗鬆症性骨折の予防には付加的治療が必要とされる。研究グループは、abaloparatideの有効性と安全性を確認するため、骨粗鬆症性骨折のリスクがある閉経後女性の新規脊椎骨折予防について、同薬80μg対プラセボの試験を行った。ACTIVE試験は、10ヵ国28地点で2011年3月~2014年10月に行われた。 閉経後女性で、骨密度(BMD)Tスコアが腰椎または大腿骨頚部で-2.5以下-5.0超、放射線学的エビデンスで≧2の軽度または≧1の中等度の腰部または胸部の椎体骨折、または過去5年以内に低度の外傷性非椎体骨折歴を有するものを適格とした。 試験には、閉経後女性(65歳超)で、骨折基準を満たすTスコア-2.0以下-5.0未満、または骨折基準を満たさないTスコア-3.0以下-5.0未満が登録された。 被験者は、abaloparatide 80μg群、テリパラチド20μg群、プラセボ群の3群に無作為に割り付けられ、abaloparatide群とプラセボ群は盲検下で、テリパラチドには非盲検下でそれぞれ1日1回皮下注投与が18ヵ月間行われた。 主要エンドポイントは、abaloparatide vs.プラセボの新規椎体骨折患者の割合であった。サンプルサイズは、両群間で4%の差(57%リスク低下)を検出するようセットされた。副次エンドポイントは、abaloparatide vs.プラセボの総大腿骨、大腿骨頚部、腰椎それぞれのBMDの変化、新規椎体骨折発生までの期間などであった。また、事前規定の安全性エンドポイントとして、abaloparatide vs.テリパラチドの高カルシウム血症を評価した。対プラセボで新規椎体骨折について有意に減少 2,463例(平均年齢69歳[範囲:49~86])が無作為化を受け、abaloparatide群(824例)、プラセボ群(821例)、テリパラチド群(818例)に割り付けられた。試験を完了したのは1,901例(606例、637例、658例)であった。 骨折(新規椎体骨折、非椎体骨折)の発生は、abaloparatide群は4例(0.6%)、18例(2.7%)、プラセボ群30例(4.2%)、33例(4.7%)、テリパラチド群6例(0.8%)、24例(3.3%)であった。 主要アウトカムについてabaloparatide vs.プラセボの新規椎体骨折のリスク差は-3.64(95%信頼区間[CI]:-5.42~-2.10)、リスク比(RR)は0.14(95%CI:0.05~0.39、p<0.001)であった。なお、テリパラチド vs.プラセボでも同様の結果がみられている(リスク差:-3.38[95%CI:-5.18~-1.80]、RR:0.20[95%CI:0.08~0.47、p<0.001])。 また、副次エンドポイントとしてKaplan-Meier法で評価した非椎体骨折の発生について、abaloparatide群のほうがプラセボ群と比べて減少が認められた。リスク差は-2.01(95%CI:-4.02~-0.00)、ハザード比(HR)は0.57(95%CI:0.32~1.00、p=0.49)であった。 BMD変化は、いずれの部位でもプラセボ群よりabaloparatide群で有意に上昇した(すべてp<0.001)。 高カルシウム血症の発生は、abaloparatide群3.4%、テリパラチド群6.4%でリスク差は-2.96(95%CI:-5.12~-0.87、p=0.006)であった。

396.

40年間の爆破テロの解析【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第73回

40年間の爆破テロの解析 >FREEIMAGESより使用 最近のトルコをはじめ世界各地で自爆テロが起こっています。非常に悲しいことです。 さて、本日紹介する論文は、外傷診療医の間では有名のようです。爆破テロには、自爆テロ、時限爆弾テロ、遠隔操作によるテロなどいろいろなものがあります。最近の自爆テロの増加を懸念し、その影響を調べるためにメタアナリシスを実施したようです。 Edwards DS, et al. 40 years of terrorist bombings - A meta-analysis of the casualty and injury profile. Injury. 2016;47:646-652. Global Terrorism Database(GTD)やPubMedなどの電子データベースを用いて、1970年から2014年までの爆破テロの情報を集めました。GTDによれば、合計5万9,095人のテロリストによる爆破テロ情報が登録されていました。そのうち、5.08%が自爆テロだったようです。調査年が近年になるにつれて、テロの頻度は増えていました。テロ1回あたりの平均死傷者は、死亡1.14人、負傷3.45人という結果でした。しかし、これが自爆テロになると、死亡10.16人、負傷24.16人と被害は数倍に膨れ上がります (p<0.05)。自爆テロのほうが、死亡者の占める割合が増えていることもわかります。オンラインで報告されている41文献にデータを限定すると、爆発した場所については、開放空間だったのが23.5%で、その他は閉鎖された空間で起こったとされています。開放空間と閉鎖空間では死亡率に差はみられませんでしたが、開放空間のほうが負傷率は有意に高いという結果でした。これは爆破片が遠くまで飛散するためと考えられます。ビルの倒壊を来した爆破テロもあり、この場合の死亡率は有意に高かったそうです。日本でのテロといえば地下鉄サリン事件が最も記憶に新しいものですが、今後国内でも爆破テロが起こらないとは言えない時代になりました。インデックスページへ戻る

397.

健康効果に寄与する総身体活動量の上限は?/BMJ

 現行推奨レベルよりも数倍多い総身体活動量を達成している人の5疾病(乳がん、大腸がん、糖尿病、虚血性心疾患、虚血性脳卒中)のリスクは、有意に低いことが明らかにされた。米国・ワシントン大学のHmwe H Kyu氏らが、システマティックレビューとベイジアン用量依存メタ解析による世界の疾病負担研究2013の結果、明らかにした。これまでに多くのコホート研究およびメタ解析で、身体活動の健康効果が示され、WHOの最小身体活動量推奨値の提示(週に600MET分)に結び付いている。しかし、必要とされる総活動量の上限値は明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2016年8月9日号掲載の報告。総身体活動量と5疾病の用量依存の関連を定量化 研究グループは、総身体活動量と5疾病(乳がん、大腸がん、糖尿病、虚血性心疾患、虚血性脳卒中)イベントリスクの、用量依存の関連を定量化する検討を行った。1980~2016年2月のPubMed、Embaseを検索し、関連システマティックレビューも参照。身体活動(あらゆる領域)と5疾病のうち少なくとも1つとの関連を調べていた前向きコホート研究を適格とした。 用量依存メタ解析は、Study on Global AGEing and Adult Healthの2007~10年から6ヵ国(中国、ガーナ、インド、メキシコ、ロシア、南アフリカ)のデータ、およびUS National Health and Nutrition Examination Surveysの1999~2011年のデータを用いて、特異的領域の身体活動量(包含試験で報告されていた)を総活動量に割り振って評価した。リスク軽減幅が大きかったのは低次活動量(最高3,000~4,000MET分/週) 特定された論文は174本。乳がんとの関連が検討されていたものは35本、大腸がん19本、糖尿病55本、虚血性心疾患43本、虚血性脳卒中26本(複数の論文に複数アウトカムを含む)であった。 総身体活動量が高値であるほど、すべてのアウトカムについてリスクが有意に低かった。ただし、低次の活動量(最高で3,000~4,000MET分/週)で、大きなリスク軽減が図られていた。たとえば糖尿病リスクは、身体活動なしと報告した人との比較において、600MET分/週(最小推奨値)の人では2%低下、600から3,600MET分/週と増えるにつれて、さらに19%まで低下したが、それより多いと得られる利益は少なくなり、9,000から1万2,000MET分/週の増大の間に低下したリスクはわずか0.6%だった。 総身体活動量を4分類し(<600、600~3,999、4,000~7,999、≧8,000MET分/週)、不十分な人(600MET分/週未満)と比較した、身体活動量が高い人(≧8,000MET分/週)のリスク低下は、乳がんが14%(相対リスク:0.863、95%不確定性区間:0.829~0.900)、大腸がん21%(同:0.789、0.735~0.850)、糖尿病28%(同:0.722、0.678~0.768)、虚血性心疾患25%(同:0.754、0.704~0.809)、虚血性脳卒中26%(同:0.736、0.659~0.811)であった。 今回の結果を踏まえて著者は、「詳細な総身体活動量を定量化したさらに多くの研究を行うことで、活動量ごとのより正確な推定相対リスクが明らかになるだろう」とまとめている。

398.

PDE4阻害薬軟膏、小児・成人のアトピー性皮膚炎に有用

 アトピー性皮膚炎に対し、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬のcrisaborole軟膏は、有効性のすべての評価項目を改善し良好な安全性プロファイルを示したことが報告された。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らが行った、アトピー性皮膚炎の小児と成人を対象に行った第III相の2試験において示された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版7月7日号の掲載報告。 研究グループは、crisaborole軟膏の有効性および安全性を評価する2件の第III相試験(AD-301試験[NCT02118766]、AD-302試験[NCT02118792])を実施した。 2試験とも試験デザインは同じで、軟膏基剤を対照とした二重盲検試験。医師による全般重症度評価(Investigator's Static Global Assessment:ISGA)で軽症~中等症のアトピー性皮膚炎と診断された2歳以上の小児および成人患者を、crisaborole群と軟膏基剤塗布群に2対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ1日2回、28日間塗布した。 主要評価項目は、29日目のISGAスコア改善(症状消失[0]/ほぼ消失[1]、かつベースラインからのスコアが2グレード以上改善)であった。また、ISGAスコア改善までの期間、症状消失/ほぼ消失の患者の割合、アトピー性皮膚炎症状の重症度の低下、およびそう痒の改善までの期間についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・2試験ともに、ISGAスコア改善を達成した患者の割合は、crisaborole群が軟膏基剤群より高かった。AD-301試験(32.8% vs.25.4%、p=0.038)、AD-302試験(31.4% vs.18.0%、p<0.001)。・同様に症状消失/ほぼ消失の患者の割合も、crisaborole群が高かった。AD-301試験(51.7% vs.40.6%、p=0.005)、AD-302試験(48.5% vs.29.7%、p<0.001)。・crisaborole群では、軟膏基剤群よりISGAスコアの改善ならびにそう痒の改善が、より早期に達成された。・治療関連有害事象はまれで、有害事象の重症度は軽度~中等度であった。・なお結果は、試験期間が短く、限定的である。

399.

過体重・肥満は死亡リスクを増大:世界4地域のメタ解析/Lancet

 過体重および肥満により、世界の4つの地域で一貫して全死因死亡のリスクが増大していることが、Global BMI Mortality Collaborationの調査で明らかとなった。研究の成果はLancet誌オンライン版2016年7月13日号に掲載された。過体重(BMI 25.0~<30.0)およびGrade1の肥満(30.0~<35.0)では、標準体重(18.5~<25.0)に比べ全死因死亡のリスクは増大しないことが報告されている。一方、BMIと死亡との因果関係を高い信頼性の下で推定するには、逆因果関係の影響をできるだけ回避する必要があり、慢性疾患や喫煙はBMIに影響を及ぼす可能性があるという。過体重、肥満と死亡の関連をメタ解析で評価 研究グループは、過体重、肥満と死亡の関連を評価するために、BMIに関する前向き研究の参加者のデータを用いてメタ解析を行った(英国医学研究会議[MRC]などの助成による)。 交絡および逆因果関係を回避するために、喫煙未経験者に限定した解析を行い、既存疾患を有する者およびフォローアップ期間の最初の5年間のデータは除外した。 アジア、オーストラリア/ニュージーランド、欧州、北米で行われた239件の前向き研究(フォローアップ期間中央値:13.7年、四分位範囲:11.4~14.7年)に参加した1,062万5,411人のうち、登録時に慢性疾患がなく、5年以上生存した喫煙未経験者の189件に参加した395万1,455人であり、このうち38万5,879人が死亡した。 主要評価項目は、BMI 22.5~<25.0の集団との比較における他の8つのBMI集団の、試験、年齢、性別で補正した死亡のハザード比(HR)とした。BMIが低くても高くても死亡リスクが上昇 全死因死亡のリスクはBMI 20.0~25.0の集団が最も低く(BMI 20.0~

400.

ウイルス性肝炎の世界疾病負担、約20年間で上昇/Lancet

 ウイルス性肝炎は、世界的に死亡と障害の主な原因となっており、結核、AIDS、マラリア等の感染症と異なり、ウイルス性肝炎による絶対的負担と相対的順位は、1990年に比べ2013年は上昇していた。米国・ワシントン大学のJefferey D Stanaway氏らが、世界疾病負担(Global Burden of Disease:GBD)研究のデータを用い、1990~2013年のウイルス性肝炎の疾病負担を推定した結果、報告した。検討は、ウイルス性肝炎に対するワクチンや治療が進歩してきていることを背景に、介入戦略を世界的に周知するためには、疾病負担に対する理解の改善が必要として行われた。結果を踏まえて著者は、「ウイルス性肝炎による健康損失は大きく、有効なワクチンや治療の入手が、公衆衛生を改善する重要な機会となることを示唆している」と述べている。Lancet誌オンライン版2016年7月6日号掲載の報告。急性ウイルス性肝炎、肝硬変と肝がんの罹患率と死亡率を評価 研究グループは、GBDのデータを用い1990~2013年における、重要な4つの肝炎ウイルス(HAV、HBV、HCV、HEV)による急性ウイルス性肝炎の罹患率と死亡率、ならびにHBVとHCVによるウイルス性肝炎に起因した肝硬変および肝がんの罹患率と死亡率を、年齢・性別・国別に算出した。 方法としては、急性肝炎については自然経過モデルを、肝硬変・肝がんについてはGBD 2013の死因集合モデルを用いて死亡率を推定するとともに、メタ回帰モデルを用いて全肝硬変有病率および全肝がん有病率、ならびに各原因別の肝硬変および肝がんの割合を推定した。その後、原因別有病率(全有病率と特定の原因別の割合の積)を算出した。障害調整生存年(DALY)は、損失生存年数(YLL)と障害生存年数(YLD)の合計とした。ウイルス性肝炎に起因する死亡数は世界で63%増加 世界のウイルス性肝炎による死亡数は、1990年の89万人(95%不確定性区間[UI]: 86~94万)から2013年は145万人(134~154万)に増加した。同様にYLLは、3,100万年(2,960~3,260万)から4,160万年(3,910~4,470万)へ、YLDは65万年(45~89万)から87万年(61~118万)へ、DALYは3,170万年(3,020~3,330万)から4,250万年(3,990万~4,560万)に上昇した。 ウイルス性肝炎は、1990年では主要死因の第10位(95%UI:10~12位)であったのに対して、2013年では第7位(95%UI:7~8位)であった。 2013年にウイルス性肝炎に起因する死亡が最も多かったのは、アジア東部および南部で、ウイルス性肝炎関連死亡の96%(95%UI:94~97)をHBVとHCVが占めていた。この2つのウイルスの割合はほぼ同等で(HBV 47%[95%UI:45~49] vs.HCV 48%[46~50])であった。 ウイルス性肝炎による死亡数は、結核、AIDS、マラリアの年間死亡数と同等以上であった。

検索結果 合計:588件 表示位置:381 - 400