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SGLT2阻害薬は認知症の発症をも予防できるのか?(解説:住谷哲氏)

 SGLT2阻害薬の慢性腎臓病や心不全合併2型糖尿病患者における臓器保護作用は確立している。また、最近ではSGLT2阻害薬が肝臓がんの発症を抑制するとの報告もなされている1)。がんと並んで高齢者糖尿病患者で問題になるのが認知症である。本論文では韓国の住民コホートデータベースを用いて、DPP-4阻害薬と比較してSGLT2阻害薬の投与が2型糖尿病患者の認知症発症を抑制するかどうかが検討された。 本研究は無作為化試験ではなく観察研究なので、残余交絡residual confoundingをいかに最小化するかが重要となる。筆者らはそのために、種々の統計学的手法(active comparator new user design、extensive propensity score matching、target trial emulationなど)を駆使して、現時点で可能な限りの補正を実施している。さらに陽性コントロールとして性器感染症、陰性コントロールとして白内障と変形性膝関節症とを用いて、結果の内的妥当性internal validityを担保している。 以上のように可能な限りの統計学的処理を実施した結果であるが、やはり残余交絡をゼロにできたわけではない。たとえば、コホートに組み入れられた時点での糖尿病罹病期間は不明である。糖尿病網膜症の有無を罹病期間のproxyとして代用しているようであるが、それで十分に調整されたとはいえない。次に、観察期間中の血糖管理状態についても不明である。3つ目に、それぞれの患者のフレイルについての情報が不明である。読者の先生方も日常臨床で経験されることが多いと思うが、筆者はフレイルが懸念される患者にはSGLT2阻害薬ではなくDPP-4阻害薬を投与することが多い。これは筆者に限ったことではなく、大規模な横断研究からも同様の処方傾向が報告されている2)。これが適応による交絡confounding by indicationである。つまり、それぞれの薬剤が選択投与された患者は最初から異なったpopulationであり、当然ながら予後も異なることになる。この交絡を回避する方法は無作為化しかない。 したがって非常に有望な結果ではあるが、認知症の発症予防目的でDPP-4阻害薬ではなくSGLT2阻害薬を積極的に投与するエビデンスとはならないだろう。やはり認知症の発症を主要評価項目としたRCTの実施が待たれる。現時点ではSGLT2阻害薬の投与が積極的に推奨される患者にSGLT2阻害薬を投与して、それによって認知症発症の抑制をも期待するのが妥当だろう。

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SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬、食事や体重の変化の違い

 2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬によるエネルギー摂取量や糖尿病関連指標に対する影響の違いは不明である。今回、奈良県立医科大学附属病院臨床研究センターの五十川 雅裕氏らがカナグリフロジンとテネリグリプチンによるエネルギー摂取量と体重の変化を比較した結果、エネルギー摂取量への影響は逆で、体重についてはカナグリフロジンでのみ有意に減少した。BMC Endocrine Disorders誌2024年8月19日号に掲載。 本解析は日本人2型糖尿病患者においてカナグリフロジンとテネリグリプチンのメタボリックリスク因子に与える効果を比較したCANTABILE試験のサブ解析である。ヘモグロビンA1c(HbA1c)、エネルギー摂取量、体重などの糖尿病関連指標におけるベースラインから24週までの変化を、カナグリフロジン群(75例)とテネリグリプチン群(70例)で比較した。 主な結果は以下のとおり。・HbA1cは両群とも有意に低下した。・テネリグリプチン群では、エネルギー摂取量は有意に減少したが、体重に有意な変化はみられなかった。・カナグリフロジン群では、エネルギー摂取量は増加傾向だったが、体重は有意に減少した。 今回の結果から、著者らは「カナグリフロジンは、エネルギー摂取量が増加しても体重増加なしに血糖管理が可能であることが示唆された」としている。

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SGLT2阻害薬による長期治療、2型DMの認知症予防に有効/BMJ

 年齢40~69歳の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬と比較してSGLT-2阻害薬は認知症の予防効果が高く、治療期間が長いほど大きな有益性をもたらす可能性が、韓国・Seoul National University Bundang HospitalのAnna Shin氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年8月28日号に掲載された。傾向スコアマッチング法を用いた韓国のコホート研究 研究グループは、中高年の2型糖尿病患者における認知症リスクと、SGLT-2阻害薬およびDPP-4阻害薬との関連を比較する目的で住民ベースのコホート研究を行った(韓国保健産業振興院[KHIDI]の助成を受けた)。 解析には、2013~21年の韓国の国民健康保険サービスのデータを用いた。対象は、SGLT-2阻害薬またはDPP-4阻害薬の投与を開始した40~69歳の2型糖尿病患者で、傾向スコアでマッチさせた11万885組(22万1,770例、平均年齢61.9歳、男性55.7%)であった。 主要アウトカムは、認知症の新規発症とし、副次アウトカムは、薬物療法を要する認知症および認知症の個々の型(アルツハイマー病、血管性認知症など)とした。アルツハイマー病、血管性認知症のリスクもSGLT-2阻害薬で低い 平均追跡期間670(SD 650)日において、11万885組のうち1,172例が新規に認知症と診断された。As treated解析による100人年当たりの認知症発症率は、SGLT-2阻害薬群が0.22、DPP-4阻害薬群は0.35であり、ハザード比(HR)は0.65(95%信頼区間[CI]:0.58~0.73)とSGLT-2阻害薬群でリスクが低かった。 また、100人年当たりの薬物療法を要する認知症の発症率は、SGLT-2阻害薬群0.12、DPP-4阻害薬群0.21(HR:0.54、95%CI:0.46~0.63)、100人年当たりのアルツハイマー病の発症率はそれぞれ0.17および0.28(0.61、0.53~0.69)、100人年当たりの血管性認知症の発症率は0.02および0.04(0.48、0.33~0.70)といずれもSGLT-2阻害薬群で良好だった。今後、無作為化対照比較試験が必要 性器感染症のHRは2.67(95%CI:2.57~2.77)、変形性関節症のHRは0.97(0.95~0.98)、白内障手術のHRは0.92(0.89~0.96)であった。白内障手術によって測定された残余交絡を補正すると、認知症のHRは0.70(0.62~0.80)となった。 治療期間が2年以内の場合の認知症のHRは0.57(95%CI:0.46~0.70)であったのに対し、2年以上の場合は0.52(0.41~0.66)であり、治療期間が長いほうがSGLT-2阻害薬群の有益性が高い可能性が示唆された。 著者は、「本研究は観察研究であるため、残余交絡や打ち切りが起こりやすく、効果量が過大評価された可能性がある」と指摘したうえで「これらの知見は、今後の無作為化対照比較試験の必要性を強調するものである」としている。

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高K血症によるRA系阻害薬の中止率が低い糖尿病治療薬は?

 高血圧治療中の2型糖尿病患者が高カリウム血症になった場合、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RA系阻害薬)を降圧薬として服用していたら、その使用を控えざるを得ない。最近の報告によれば、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は尿中カリウム(K)排泄を増加させ、高K血症のリスクを軽減させる可能性があることが示唆されている。今回、中国・北京大学のTao Huang氏らは2型糖尿病患者の治療において、GLP-1RAは高K血症の発生率が低く、DPP-4阻害薬と比較してRA系阻害薬が継続できることを示唆した。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年8月12日号掲載の報告。 本研究はGLP-1RAとDPP-4阻害薬の新規処方患者における高K血症の発生率ならびにRA系阻害薬の継続率を比較するため、2008年1月1日~2021年12月31日の期間にGLP-1RAまたはDPP-4阻害薬による治療を開始したスウェーデン・ストックホルム地域の2型糖尿病の成人を対象に行ったコホート研究。解析期間は2023年10月1日~2024年4月29日。主要評価項目は、高K血症全体(K濃度>5.0mEq/L)および中等度~重度の高K血症(K濃度>5.5mEq/L)を発症する時間と、ベースラインでRA系阻害薬を使用している患者でのRA系阻害薬の中止までの時間であった。特定された交絡因子が70を超えたため、治療の逆確率重み付け法を用いた限界構造モデルによりプロトコルごとのハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ 対象者は3万3,280例で、その内訳はGLP-1RAが1万3,633例、DPP-4阻害薬が 1万9,647例、平均年齢±SDは63.7±12.6歳、男性は1万9,853例(59.7%)だった。・治療期間の中央値と四分位範囲(IQR)は3.9ヵ月(IQR:1.0~10.9)だった。・GLP-1RAはDPP-4阻害薬と比較して高K血症全体(HR:0.61、95%信頼区間[CI]:0.50~0.76)、中等度~重度の高K血症(HR:0.52、95%CI:0.28~0.84)の発生率の低さと関連していた。・RA系阻害薬を使用していた2万1,751例のうち、1,381例がRA系阻害薬を中止した。・GLP-1RAはDPP-4阻害薬と比較して、RA系阻害薬の中止率の低さと関連していた(HR:0.89、95%CI:0.82~0.97)。・本結果は、ITT解析および年齢、性別、心血管合併症、ベースライン時点の腎機能の層に渡って一貫していた。 研究者らは「糖尿病治療としてGLP-1RAを使用すれば、高血圧のガイドラインで推奨されている降圧薬をより広く使用できるかもしれない」としている。

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一部の糖尿病用薬の処方が認知症リスクの低さと関連

 メトホルミンやSGLT2阻害薬(SGLT2i)と呼ばれる糖尿病用薬の処方が、認知症やアルツハイマー病(AD)のリスクの低さと関連していることが報告された。慶煕大学(韓国)のYeo Jin Choi氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に5月3日掲載された。 2型糖尿病は多くの国で重大な健康問題となっており、世界中で約5億3000万人が罹患していて、その罹患によって認知機能障害や認知症のリスクが50%以上上昇する可能性が示されている。認知症もまた、高齢化に伴い世界的な健康問題となっており、患者数はすでに4000万人以上に上るとされている。 2型糖尿病がADのリスクを押し上げるメカニズムについて、インスリン抵抗性に伴う慢性炎症、酸化ストレス、血管障害の関与などが考えられており、一部の糖尿病用薬はインスリン抵抗性改善作用などを介してADリスクを低下させる可能性がある。ただし、糖尿病用薬のタイプによって認知症やADのリスクが異なるのかという点は、十分明らかにはなっていない。Choi氏らは、比較されている薬剤の組み合わせが異なる過去の複数の研究データを統合して、多くの薬剤の影響を比較可能とするベイジアンネットワークメタ解析により、この点を検討した。 文献データベースであるCENTRAL、MEDLINE(PubMed)、Scopus、Embaseのスタートから2024年3月までに収載された論文を対象とする検索により、16件の研究報告を抽出。それらの研究参加者数は合計156万5,245人で、7種類の治療レジメン(メトホルミン、SU薬、α-グルコシダーゼ阻害薬〔α-GI〕、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、SGLT2i、非薬物治療)が含まれていた。16件中7件は米国、3件はカナダで行われ、そのほかは英国、台湾、中国、香港、韓国などで行われていた。 第一選択薬として用いられていた薬剤のうち最も多くの研究で比較されていたのはSU薬とメトホルミンであり、後者は前者に比べて認知症リスクが有意に低かった(リスク比〔RR〕0.53〔95%信頼区間0.44~0.64〕)。第二選択薬として用いられていた薬剤について、SU薬を基準として比較すると、SGLT2iのみ有意なリスク低下が認められた(RR0.39〔同0.16~0.88〕)。 第一・第二選択薬を区別せずにSU薬を基準として解析すると、メトホルミン(RR0.53〔0.44~0.63〕)とSGLT2i(RR0.41〔0.25~0.66〕)、および非薬物治療(RR0.73〔0.56~0.97〕)でリスクが低く、α-GIはリスクが高かった(RR2.4〔1.2~5〕)。ADリスクについても対SU薬で、メトホルミンとSGLT2iのみ、リスク低下が示された。なお、年齢を75歳未満/以上に二分した層別解析では、SGLT2iによる認知症リスク低下は75歳以上でのみ有意だった。 著者らは、「メトホルミンとSGLT2iが用いられている糖尿病患者は、他の糖尿病用薬が用いられている場合に比較し認知症リスクが低いことが示された。ただし、患者固有の要因がこの関係に影響を及ぼしている可能性がある。例えばメトホルミンは一般的に、合併症が少ない非高齢期に処方が開始される傾向がある。これらの理由により、本研究の結果の解釈は慎重に行われる必要があり、また将来の大規模な臨床試験が必要とされる」と述べている。

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GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬、MASLD併発2型糖尿病のCVイベントを抑制

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)とSGLT2阻害薬(SGLT2i)は、DPP-4阻害薬(DPP-4i)に比べて、MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)併発2型糖尿病患者の心血管(CV)イベントや肝臓イベントのリスクを低下させる可能性を示唆するデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院およびハーバード大学医学大学院のAlexander Kutz氏らが、米国内分泌学会(ENDO2024、6月1~4日、ボストン)で発表した。 Kutz氏らは、2013~2020年のメディケアデータベース、および、2013~2022年の米国内の大規模健康保険データベースを利用して、GLP-1RA、SGLT2i、DPP-4iにより治療が開始されていたMASLD併発2型糖尿病患者のCVイベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、心不全入院)、および肝臓イベントなどの発生リスクを調査した。 まず、DPP-4iで治療が開始されていた群(1万7,084人)とGLP-1RAで治療が開始されていた群(1万3,666人)の比較では、後者のCVイベントの発生ハザード比(HR)が0.67であり、1,000人年当たりの発生率差(IRD)は-21.6と計算された。また肝臓イベントについては、HR0.47、IRDは-2.1だった。次に、DPP-4iとSGLT2iの比較では(該当患者数は同順に1万6,979人、1万1,108人)、CVイベントについてはHR0.82、IRD-11.0だった。肝臓イベントには両群のリスクに有意差がなかった。なお、重篤な有害事象の発生率については、GLP-1RA群、SGLT2i群ともにDPP-4i群と有意差がなかった。 Kutz氏は、「この研究以前は、これらの薬剤がMASLD併発2型糖尿病患者にどのような影響を及ぼすのかが明らかにされていなかった。われわれの研究は、GLP-1RAおよびSGLT2iが、DPP-4iなどの他のタイプの血糖降下薬に比べて、CVイベントの抑制という点で優れていること、およびGLP-1RAは肝臓イベントのリスク軽減にもつながることを示している」と話している。なお、MASLDは従来、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれていた病態を、主に海外の研究者を中心とする専門家パネルにより、代謝異常の関与をより重視して再定義された病態。Kutz氏によると、「2型糖尿病の患者数の増加が続いているが、その患者群のかなりの割合がMASLDも併発している」という。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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糖尿病患者の認知症リスク低減、GLP-1RA vs.DPP-4i vs.SU薬

 65歳以上の2型糖尿病患者9万例弱を最長10年間追跡した結果、GLP-1受容体作動薬を服用する患者では、スルホニル尿素(SU)薬やDPP-4阻害薬を服用する患者よりも認知症の発症リスクが低かったことが、スウェーデン・Karolinska InstitutetのBowen Tang氏らによって明らかになった。eClinicalMedicine誌オンライン版2024年6月20日号掲載の報告。 これまでの研究により、2型糖尿病患者は認知症の発症リスクが高いことが報告されている1)。一部の血糖降下薬は、プラセボまたはほかの血糖降下薬との比較において、2型糖尿病患者の認知障害および認知症のリスクを低減させる可能性が示唆されているが、相反する報告もあり、さらなる研究が求められていた。そこで研究グループは、糖尿病を有する高齢者の認知症リスクに対する3つの薬剤クラス(GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SU薬)の影響を比較するため、スウェーデンの全国登録から取得したリアルワールドデータを用いて、2010年1月1日~2020年6月30日に臨床試験を模した逐次試験エミュレーション(sequential trial emulation)を実施した。 対象は、65歳以上で2型糖尿病を有し、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬またはSU薬の投与を開始したスウェーデン居住者であった。認知症の既往や過去1年間に研究対象の薬剤クラスを服用したことがある参加者は除外した。基準を満たした参加者を、最初の月をベースラインとして試験に毎月組み入れた。 主な結果は以下のとおり。●ベースラインでGLP-1受容体作動薬(1万2,351例)、DPP-4阻害薬(4万3,850例)、SU薬(3万2,216例)が処方された8万8,381例が含まれた。平均年齢はそれぞれ71.62歳、74.78歳、74.21歳であった。●平均追跡期間は4.3年で、追跡期間中に4,607例が認知症を発症した。GLP-1受容体作動薬開始群では278例(発症率は1,000人年当たり6.7)、DPP-4阻害薬開始群では1,849例(11.8)、SU薬開始群では2,480例(13.7)であった。●ITT解析において、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の開始群では、SU薬開始群と比較して認知症リスクが有意に低かった。 ・GLP-1受容体作動薬vs.SU薬のハザード比(HR):0.69(95%信頼区間[CI]:0.60~0.79、p<0.000) ・DPP-4阻害薬vs.SU薬のHR:0.89(95%CI:0.82~0.97、p=0.0069)●GLP-1受容体作動薬開始群は、DPP-4阻害薬開始群と比較しても認知症リスクが有意に低かった。 ・GLP-1受容体作動薬vs.DPP-4阻害薬のHR:0.77(95%CI:0.68~0.88、p<0.0001)●パー・プロトコル解析において、GLP-1受容体作動薬開始群は、SU薬およびDPP-4阻害薬の開始群と比較して認知症リスクが有意に低かったが、DPP-4阻害薬開始群とSU薬開始群との間には有意な差は認められなかった。 ・GLP-1受容体作動薬vs.SU薬のHR:0.41(95%CI:0.32〜0.53、p<0.0001) ・GLP-1受容体作動薬vs.DPP-4阻害薬のHR:0.38(95%CI:0.30〜0.49、p<0.0001) ・DPP-4阻害薬vs.SU薬のHR:1.07(95%CI:0.98〜1.17、p=0.13)

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2型糖尿病薬で高K血症リスクが低いのは?/BMJ

 2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と比較して高カリウム血症のリスクが低いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のEdouard L. Fu氏らによる同国内の3つの医療保険請求データベースを用いた解析結果で示された。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬およびDPP-4阻害薬は、2型糖尿病の治療においてますます用いられるようになっているが、日常臨床における高カリウム血症の予防に関して、これらの薬剤の相対的な有効性は不明であった。著者は、「SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の各クラスにおける個々の薬剤で結果は一貫していることから、クラス効果が示唆される。このことは2型糖尿病患者、とくに高カリウム血症のリスクがある患者へのこれらの薬剤の使用を支持するものである」とまとめている。BMJ誌2024年6月26日号掲載の報告。傾向スコアマッチングでSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬の高K血症の発症を比較 研究グループは、2013年4月~2022年4月の3つの米国医療保険請求データベース(メディケア、Optum’s deidentified Clinformatics Data Mart、MarketScan)を用い、1対1の傾向スコアマッチングにより、新たに治療を開始したSGLT2阻害薬vs.DPP-4阻害薬(コホート1:77万8,908例)、GLP-1受容体作動薬vs.DPP-4阻害薬(コホート2:72万9,820例)、SGLT2阻害薬vs.GLP-1受容体作動薬(コホート3:87万3,460例)の3つのコホートを同定し解析した。 解析対象は、2型糖尿病と診断され、過去365日間に比較対象である2種類の薬剤のいずれかを使用しておらず、年齢18歳以上(メディケアの場合は65歳以上)、コホート登録前に12ヵ月以上継続して保険に加入していた患者であった。 主要アウトカムは、入院または外来における高カリウム血症の診断、副次アウトカムは、外来での追跡中における高カリウム血症(血清カリウム値5.5mmol/L以上)の発症、および入院または救急外来における高カリウム血症の診断とした。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬よりリスクが低い SGLT2阻害薬による治療開始は、DPP-4阻害薬より高カリウム血症の発症率が低く(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.73~0.78)、GLP-1受容体作動薬との比較でも発症率がわずかに低下した(HR:0.92、95%CI:0.89~0.95)。GLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬より高カリウム血症の発症率が低かった(HR:0.79、95%CI:0.77~0.82)。 3年間の絶対リスクは、SGLT2阻害薬(4.6%)がDPP-4阻害薬(7.0%)より2.4%(95%CI:2.1~2.7)低く、GLP-1受容体作動薬(5.7%)がDPP-4阻害薬(7.5%)より1.8%(95%CI:1.4~2.1)低く、SGLT2阻害薬(4.7%)がGLP-1受容体作動薬(6.0%)より1.2%(95%CI:0.9~1.5)低かった。 これらの結果は、副次アウトカム、および年齢、性別、人種、併存疾患、他の薬剤の使用、HbA1c値によって定義されたサブグループ間で一貫していた。SGLT2阻害薬ならびにGLP-1受容体作動薬のDPP-4阻害薬に対する絶対スケールでの有益性(率差)は、心不全、慢性腎臓病、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を使用している患者で最も大きかった。 DPP-4阻害薬と比較して高カリウム血症の発症率が低いことは、SGLT2阻害薬(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)およびGLP-1受容体作動薬(デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド)の個々の薬剤で一貫して観察された。

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メトホルミンに追加すべき薬剤はSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬それともSU薬?(解説:住谷哲氏)

 GRADE(Glycemia Reduction Approaches in Diabetes: A Comparative Effectiveness Study)研究1)は、メトホルミン単剤で血糖管理目標を達成できない患者に追加する血糖降下薬としてインスリン(グラルギン)、SU薬(グリメピリド)、GLP-1受容体作動薬(リラグルチド)またはDPP-4阻害薬(シタグリプチン)の有用性を比較検討したランダム化比較試験である。その結果は、HbA1c低下作用はグラルギンとリラグルチドが他の2剤に比べて優れており、体重減少効果はリラグルチドが最も優れていた。 米国が国家予算を投入したGRADE研究であるが、メトホルミンに追加する2剤目として経口血糖降下薬ではなく注射薬(グラルギンまたはリラグルチド)を選択することは実臨床においてそれほど多くない。さらに2剤目の追加薬剤の選択肢にSGLT2阻害薬が含まれていないのが、この研究の結果を実臨床に反映しにくい理由の1つである。 本研究は新しい解析手法であるtarget trial emulation(標的試験模倣と訳すべきか。概要については過去の本連載を参考されたい2])を用いて、メトホルミンに追加する薬剤としてSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬およびSU薬のいずれが優れているかを英国CPRD(Clinical Practice Research Datalink)のデータを対象にして検討したものである。結果は、HbA1c低下作用、BMI減少作用、収縮期血圧低下作用においてSGLT2阻害薬が他の2剤に比較して優れていた。さらにSGLT2阻害薬は、心不全による入院抑制はDPP-4阻害薬に比較して優れており、腎疾患の進行抑制はSU薬に比較して優れていた。 臓器保護薬としてのSGLT2阻害薬の有用性は、高リスク患者を対象としたランダム化比較試験で明らかにされてきた。したがって多くのガイドラインでは、心不全または慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者への積極的投与が推奨されている。しかし、われわれが通常外来で診察している低リスク患者に対する有用性はこれまで不明であった。本研究の結果は、低リスク患者においても血糖降下作用、BMI減少作用、収縮期血圧低下作用においてSGLT2阻害薬がDPP-4阻害薬、SU薬と比較して優れていることを示した点でインパクトが大きい。ただし本研究はメトホルミン投与患者への追加薬剤としての検討であり、この点には留意する必要がある。

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DPP-4阻害薬と良い関係の食材があります(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師なかなか血糖が下がらないんですよね。(DPP-4阻害薬服用者からの相談)それなら、いい方法がありますよ! この薬(DPP-4阻害薬)は、青魚をよく食べている人に効果が高いみたいです。患者 えっ、そうなんですか! 最近、お肉ばかり食べていました。どのくらい食べたらいいですか?医師 そうですね、たとえばサバ缶(約200g)なら、半分の量を週に3回くらいからスタートしてみてはいかがでしょう?患者 なるほど。焼いたり、揚げたりしてもいいですか?画 いわみせいじ医師 焼くと2割、揚げると5割くらい良質な油(EPA[エイコサペンタエン酸]やDHA[ドコサヘキサエン酸]など)が失われるので、お刺身や蒸し料理がお勧めです。患者 なるほど、わかりました。さっそく買って帰ります!(うれしそうな顔)ポイント青魚を勧める際は、1回に食べる量(約90g)、頻度(週3回以上)、調理法(生>蒸す>焼く>揚げる)などについて補足しましょう。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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イメグリミンのRWD、体重減少や肝機能改善も/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の年次学術集会(会長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])が、5月17日~19日の日程で、東京国際フォーラムをメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「『糖尿病』のない世界を目指して〜糖尿病学の挑戦〜」をテーマに、46のシンポジウム、169の口演、ポスターセッションなどが開催され、特筆すべきは糖尿病患者の参加プログラムやこれからの医療を担う高校生向けの参加プログラムなども開催された。 本稿では「口演118 薬物療法」から「当院におけるイメグリミンの有効性・安全性の検討」(演者:吉田 薫氏[名鉄病院内分泌・代謝内科])をお届けする。イメグリミンはHbA1cを低下させ、脂質、肝機能を改善する可能性 イメグリミン(商品名:ツイミーグ)は、ミトコンドリアへの作用を介し、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制および糖取込み能改善)により血糖降下作用を示すことで、糖尿病によって引き起こされる細小血管・大血管障害の予防につながる血管内皮機能および拡張機能の改善作用を有する可能性が示唆されている治療薬で、β細胞の生存と機能を保護する効果も期待されている。わが国では、2021年6月23日に製造販売承認、同年8月12日に薬価収載、同年9月16日に発売されている。 吉田氏らの研究グループは、リアルワールドでのイメグリミンの有効性と安全性の検討を行うとともに、患者の体組成分析の検討も行った。 対象・方法として、2022年9月より2型糖尿病患者のイメグリミンへの切り替え、追加投与を行い、6ヵ月以上観察可能の75例(男性55例/女性20例)について投与前後の各種臨床指標および体組成推移を比較検討した。患者背景としては、平均年齢62.6歳、平均HbA1c8.8%、平均病歴12年、平均BMIは26で、併用薬ではメトホルミン、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の順で多く、インスリンは28%の患者で使用していた。 主な結果は以下のとおり。・HbA1cは8.9±1.5%から8.0±1.1%へ低下、グリコアルブミン(GA)は21.1±6.2%から19.5±4.5%に有意に改善した。・GA/HbA1cには変化がなかった。・脂質、肝機能(AST、ALTともに)は改善傾向がみられたが、血圧、腎機能には変化がなかった。・FIB-4 indexに変化はなかった。・体重は71.5±15.2kgから67.3±14.4kgへと減少した。・体組成分析において、体水分量は減少したが体蛋白量は変化がなかった。・脂肪量、筋肉量に有意な変化はなかった。・安全性では6例に消化器症状があり中止となったが、特筆すべき事象はなかった。 以上から吉田氏らのグループは「イメグリミンは体重を増加させることなく、血糖コントロールを改善し、脂肪肝を改善する可能性がある。また、体重を減らすことなくHbA1cを改善する可能性が示唆される」と考察している。

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2型DM、メトホルミンに追加するなら?/BMJ

 日常診療における2型糖尿病患者の2次治療として、メトホルミンに追加する3種の一般的な経口血糖降下薬(SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬)の有効性を比較する検討が、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のPatrick Bidulka氏らにより行われた。SGLT2阻害薬は、SU薬およびDPP-4阻害薬と比較してHbA1c、BMI、収縮期血圧を低下させ、心不全による入院(対DPP-4阻害薬)および腎臓病の進行による入院(対SU薬)のリスクを抑制した。なお、その他の臨床エンドポイントでは差があるとのエビデンスは示されなかった。BMJ誌2024年5月8日号掲載の報告。SGLT2阻害薬vs.SU薬vs.DPP-4阻害薬、1年時点のHbA1c変化の絶対値を評価 研究グループは、有効性比較試験を模倣したコホート研究(target trial emulation)で、メトホルミンに追加する3種の一般的な経口血糖降下薬(SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬)の有効性を比較した。 2015~21年のイングランドにおけるプライマリケア、病院、死亡のデータを結び付け、メトホルミンにSU薬、DPP-4阻害薬またはSGLT2阻害薬を追加して経口血糖降下薬による2次治療を開始した、2型糖尿病の成人患者7万5,739例を対象とした。 主要アウトカムは、ベースラインからフォローアップ1年時点までのHbA1c変化の絶対値であった。副次アウトカムは、1年時点および2年時点のBMI、収縮期血圧、eGFRの変化、2年時点のHbA1cの変化、eGFRが40%以上低下するまでの期間、主要有害腎イベント、心不全による入院、主要有害心血管イベント(MACE)、全死因死亡などであった。操作変数法を用いて、ベースラインの欠測による交絡リスクを軽減して評価した。SGLT2阻害薬併用が、他の2種併用よりも優れる 7万5,739例が経口血糖降下薬による2次治療を開始した。SU薬追加は2万5,693例(33.9%、SU薬群)、DPP-4阻害薬追加は3万4,464例(45.5%、DPP-4阻害薬群)、SGLT2阻害薬追加は1万5,582例(20.6%、SGLT2阻害薬群)であった。 ベースラインからフォローアップ1年時点までのHbA1c低下の平均値は、SGLT2阻害薬群がDPP-4阻害薬群やSU薬群よりも大きく、SGLT2阻害薬がより有効であることが示された。操作変数解析後、HbA1c変化の平均群間差は、SGLT2阻害薬群vs.SU薬群が-2.5mmol/mol(95%信頼区間[CI]:-3.7~-1.3)、SGLT2阻害薬群vs.DPP-4阻害薬群は-3.2mmol/mol(-4.6~-1.8)であった。 BMIおよび収縮期血圧の低下においても、SGLT2阻害薬がSU薬またはDPP-4阻害薬よりも有効であることが示された。ただし、いくつかの副次エンドポイントで、SGLT2阻害薬がより有効であるとのエビデンスは示されなかった。たとえば、MACEに関するハザード比(HR)は、対SU薬で0.99(95%CI:0.61~1.62)、対DPP-4阻害薬で0.91(0.51~1.63)であった。 SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬(HR:0.32、95%CI:0.12~0.90)やSU薬(0.46、0.20~1.05)と比較して、心不全による入院のリスクを低下させた。 eGFR 40%以上低下について、SGLT2阻害薬がSU薬よりも保護効果があることが示された(HR:0.42、95%CI:0.22~0.82)。DPP-4阻害薬との比較では、推定HR(0.64、0.29~1.43)に高い不確実性が認められた。

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インスリン以外の血糖降下薬も先天奇形のリスクでない

 インスリン以外の血糖降下薬を妊娠中に使用しても、先天奇形リスクの有意な上昇は生じない可能性を示唆するデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のCarolyn E. Cesta氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に12月11日掲載された。 世界的に晩婚化が進み、妊娠時に2型糖尿病を発症している女性が増加している。2型糖尿病の血糖管理には一般的にまず非インスリン製剤が選択されるが、妊娠中は胎児の奇形リスクの懸念などのため、通常、催奇形性のないインスリン製剤が用いられる。しかし、計画妊娠によらずに妊娠が成立した場合には、妊娠に気付くまでの妊娠初期に、非インスリン製剤に曝露されることになる。このような場合に胎児の先天奇形リスクがどのように変化するのかは、これまで明らかにされていない。以上を背景としてCesta氏らは、妊娠成立時から妊娠初期の非インスリン製剤の使用が、先天性の大奇形(major congenital malformations;MCM)のリスク上昇と関連しているかどうかを検討した。 研究には、2009~2020年の北欧4カ国の医療データ、2012~2021年の米国の医療データ、2009~2020年のイスラエルの医療データが用いられた。それらのデータベースから2型糖尿病妊婦を抽出し、児の生後1年までの医療記録を追跡調査した。リスクを評価した薬剤は、スルホニル尿素(SU)薬、DPP-4阻害薬(DPP-4i)、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、SGLT2阻害薬(SGLT2i)の4種。それらの薬剤が、妊娠の90日前から妊娠第1三半期に1回以上処方されていたケースを、曝露された症例とした。比較対照はインスリンのみによって治療されていたケースとした(アクティブコンパレータ)。主要評価項目は、MCMの相対リスクであり、年齢、併存疾患(肥満、高血圧、心血管疾患、糖尿病合併症、多嚢胞性卵巣症候群)、他の処方薬(降圧薬、脂質低下薬)などの交絡因子の影響は調整した。 MCMの標準化有病率は全体で3.7%であった。それに対して2型糖尿病妊婦の児では5.3%であり、SU薬に曝露された児では9.7%、DPP-4i曝露では6.1%、GLP-1RA曝露で8.3%、SGLT2i曝露で7.0%であって、インスリンのみで治療されていた群は7.8%だった。インスリンのみで治療されていた群を基準とした交絡因子調整後のMCM相対リスクは、SU薬曝露で1.18(95%信頼区間0.94~1.48)、DPP-4i曝露0.83(同0.64~1.06)、GLP-1RA曝露0.95(0.72~1.26)、SGLT2i曝露0.98(0.65~1.46)であり、いずれも非有意だった。 著者らは、「インスリン製剤によらない糖尿病治療の普及とともに、妊娠初期の非インスリン製剤への曝露が急速に増加している。われわれの研究結果は、そのような非インスリン製剤への曝露によるMCMリスクの有意な上昇を示しておらず、安心につながるデータが得られた。ただし、より正確なデータが必要であり、他の研究での検証が求められる」と述べている。 なお、数人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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GLP-1受容体作動薬、従来薬と比較して大腸がんリスク低下

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬として日本をはじめ海外でも広く承認されている。GLP-1受容体作動薬には、血糖低下、体重減少、免疫機能調節などの作用があり、肥満・過体重は大腸がんの主要な危険因子である。GLP-1受容体作動薬が大腸がんリスク低下と関連するかどうかを調査した研究がJAMA Oncology誌2023年12月7日号オンライン版Research Letterに掲載された。 米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のLindsey Wang氏らの研究者は、TriNetXプラットフォームを用い、米国1億120万人の非識別化された電子カルテデータにアクセスした。GLP-1受容体作動薬と、インスリン、メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤(ただし、SGLT2阻害薬は2013年、DPP-4阻害薬は2006年が開始年)の7薬剤を比較する、全国規模の後ろ向きコホート研究を実施した。 コホートは、人口統計、社会経済的な健康決定要因、既往症、がんや大腸ポリープの家族歴および個人歴、生活習慣要因などで調整され、ハザード比(HR)および95%信頼区間[CI]を用いた解析を行った。次いで、肥満・過体重、性別で層別化した患者を対象にした解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2005~2019年に2型糖尿病を理由に医療機関を受診し、それまでに抗糖尿病薬の使用歴がなく、受診後に抗糖尿病薬を処方された、大腸がんの診断歴がない122万1,218例が対象となった。・追跡期間15年時点で、GLP-1受容体作動薬はインスリン(HR:0.56、95%CI:0.44~0.72)、メトホルミン(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97)と比較して、大腸がんのリスク低下と有意に関連していた。この有意差は男女でも一貫しており、肥満・過体重の患者ではインスリン(HR:0.50、95%CI:0.33~0.75)、メトホルミン(HR:0.58、95%CI:0.38~0.89)と、さらなるリスク低下が見られた。・SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤との比較でもリスク低下は見られたが、インスリン、メトホルミンほどではなかった。α-グルコシダーゼ阻害薬とDPP-4阻害薬との比較では、統計学的有意差は見出されなかった。 研究者らは、本研究の限界として「未測定または未制御の交絡因子、自己選択、逆因果、観察研究に特有のその他のバイアスの可能性があるため、本試験の結果は他のデータや研究集団による検証が必要である。また、抗糖尿病治療歴のある患者における効果、基礎となる機序、GLP-1受容体作動薬がほかの肥満関連がんに及ぼす効果についても、さらなる研究が必要である」としている。

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DPP-4阻害薬の副作用「類天疱瘡」、適切な処置の注意喚起/PMDA

 糖尿病治療薬DPP-4阻害薬やその配合剤の副作用として知られている類天疱瘡。DPP-4阻害薬服用後にこの副作用を疑う皮膚異常がみられたにもかかわらず、投与が継続され類天疱瘡の悪化を来し入院するケースが報告されているという。これに対して医薬品医療機器総合機構PMDAは7月27日に医薬品適正使用のお願いを発出した。DPP-4阻害薬の副作用として類天疱瘡は以前から添付文書に記載 PMDAは以下のように注意を呼びかけている。<DPP-4阻害薬による類天疱瘡への適切な処置について>DPP-4阻害薬の使用中に、そう痒を伴う浮腫性紅斑、水疱、びらん等が現れ、類天疱瘡の発現が疑われる場合には、速やかに皮膚科医と相談し、DPP-4阻害薬の投与を中止するなどの適切な処置を行うよう、注意をお願いいたします。【代表的な症例】70代・男性。シタグリプチン投与開始後、3~4ヵ月目に水疱出現、自然軽快を繰り返し、投与7ヵ月目に水疱が多発し全身に広がり、投与8ヵ月目にクリニック受診。内服薬および外用薬で治療したが改善せず、皮膚科を受診。水疱性類天疱瘡の診断となり、入院。治療により改善しプレドニゾロン減量のうえで、投与9ヵ月目に退院となったが、再度水疱が出現し、水疱形成増悪が確認され、再入院。プレドニゾロンを増量したが改善せず、血漿交換療法を施行。薬剤性の水疱性類天疱瘡が疑われ、シタグリプチンの投与を中止。プレドニゾロンを減量し、シタグリプチンの中止11日後、水疱性類天疱瘡は回復し、退院した。――― 類天疱瘡は、血液中に存在する皮膚の基底膜に対する自己抗体が自己抗原に反応して、皮膚を傷害し、皮膚に水ぶくれ(水疱)を作る病気1)。DPP-4阻害薬やその配合薬の各添付文書には以前から副作用として記され、日本糖尿病学会での演題にも上がるほど比較的認知度の高い副作用ではある。しかし、DPP-4阻害薬やその配合薬の副作用報告数は2018年(365件)をピークに右肩下がりではあるものの、2022年時点でもなお149件報告されている。<該当医薬品>アナグリプチン含有製剤(商品名:スイニー錠、メトアナ配合錠LD/HD)アログリプチン安息香酸塩含有製剤(ネシーナ錠、イニシンク配合錠、リオベル配合錠LD/HD)オマリグリプチン(マリゼブ錠)サキサグリプチン水和物(オングリザ錠)シタグリプチンリン酸塩水和物含有製剤(グラクティブ錠、ジャヌビア錠、スージャヌ配合錠)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物含有製剤(テネリア錠/OD錠、カナリア配合錠)トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック錠)ビルダグリプチン含有製剤(エクア錠、エクメット配合錠LD/HD)リナグリプチン含有製剤(トラゼンタ錠、トラディアンス配合錠AP/BP)

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肥満2型DMでのチルゼパチド、体重減少にも有効/Lancet

 過体重または肥満の2型糖尿病患者において、チルゼパチド10mgおよび15mgの週1回72週間皮下投与は、体重管理を目的とした他のインクレチン関連薬と同様の安全性プロファイルを示し、臨床的に意義のある大幅な体重減少をもたらしたことが示された。米国・アラバマ大学バーミンガム校のW Timothy Garvey氏らが、7ヵ国の77施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURMOUNT-2試験」の結果を報告した。肥満2型糖尿病患者の健康状態を改善するためには、体重減少が不可欠である。チルゼパチドは持続性のGIP/GLP-1受容体作動薬で、非2型糖尿病の肥満患者を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週間のチルゼパチドによる治療で体重が最大20.9%減少することが認められていた。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。BMI 27以上の2型DM患者で、チルゼパチド10mgまたは15mgをプラセボと比較 研究グループは、BMI値27以上、HbA1c 7~10%の2型糖尿病成人患者(18歳以上)を、チルゼパチド10mg群、15mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、週1回72週間皮下投与した(週1回2.5mgから投与を開始し、4週ごとに2.5mgずつ増量)。スクリーニング前3ヵ月以内に体重が5kg以上変化した患者、肥満に対する外科的治療を受けたことがあるまたは予定されている患者、抗肥満薬、DPP-4阻害薬、経口GLP-1受容体作動薬または2型糖尿病の注射薬を投与されていた患者は除外した。すべての試験参加患者、研究者およびスポンサーは治療割り付けをマスクされた。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから72週までの体重変化率および72週時点のベースラインからの体重減少が5%以上を達成した患者の割合とした。治療レジメンの推定は、治療の中止または抗高血糖レスキュー治療開始を問わず有効性を評価した。 有効性と安全性のエンドポイントの解析評価は、無作為化されたすべての患者のデータを用いて行われた。72週間で体重減少最大14.7%、5%以上体重減少の達成率は79~83% 2021年3月29日~2023年4月10日に1,514例が適格性の評価を受け、938例が無作為化された(チルゼパチド10mg群312例、15mg群311例、プラセボ群315例)。患者背景は、平均年齢54.2±10.6歳、女性476例(51%)、白人710例(76%)、ヒスパニック系/ラテン系561例(60%)であった。また、ベースラインの平均体重は100.7±21.1kg、BMIは36.1±6.6、HbA1cは8.02±0.89%であった。 72週時の体重のベースラインからの最小二乗平均変化率はチルゼパチド10mg群-12.8%(標準誤差[SE]0.6)、15mg群-14.7%(0.5)、プラセボ群-3.2%(0.5)であり、プラセボとの群間差はチルゼパチド10mg群-9.6ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.1~-8.1)、15mg群-11.6ポイント(95%CI:-13.0~-10.1)であった(いずれもp<0.0001)。また、72週時の5%以上体重減少達成率は、プラセボ群32%に対し、チルゼパチド10mg群79%、15mg群83%であり、チルゼパチド群で高かった(いずれもp<0.0001)。 チルゼパチドの主な有害事象は、悪心、嘔吐、下痢などの胃腸障害で、多くが軽度~中等度であり、治療中止に至った有害事象はほとんどなかった(<5%)。重篤な有害事象は、全体で68例(7%)が報告された。チルゼパチド10mg群で死亡が2例確認されたが、治験責任医師によりチルゼパチドとの関連はないと判断された。

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肥満2型DMへの経口セマグルチド、最適な用量・期間は?/Lancet

 十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病成人患者において、経口セマグルチド25mgおよび50mgは糖化ヘモグロビン(HbA1c)値低下および体重減少に関して、同14mgに対する優越性が確認され、安全性に関して新たな懸念は認められなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVanita R. Aroda氏らが、14ヵ国177施設で実施された第IIIb相多施設共同無作為化二重盲検比較試験「PIONEER PLUS試験」の結果を報告した。セマグルチド1日1回経口投与は2型糖尿病の有効な治療法であり、セマグルチドの経口投与および皮下投与試験の曝露-反応解析では、曝露量の増加に伴いHbA1c値の低下および体重減少が大きくなることが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年6月26日号掲載の報告。BMI値25以上、HbA1c値8.0~10.5%の1,606例を対象 研究グループは、HbA1c値8.0~10.5%、BMI値25.0以上、メトホルミン、スルホニルウレア系薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬のうち1~3種類の経口血糖降下薬の安定用量を投与されている18歳以上の2型糖尿病患者を登録し、セマグルチド14mg群、25mg群または50mg群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回朝空腹時の経口投与を68週間にわたって行った。 いずれの投与群もセマグルチド3mgから投与を開始し、4週時に7mg、8週時に14mg、その後、25mg群では12週時に25mg、50mg群では12週時に25mg、16週時に50mgに漸増した。また、ベースラインで服用していた経口血糖降下薬は、DPP-4阻害薬のみ中止とし、それ以外は同一の用法・用量で継続した。 主要エンドポイントは、HbA1c値のベースラインから52週時までの変化、検証的副次エンドポイントは体重のベースラインから52週時までの変化とし、intention-to-treat集団を対象に治療指針に基づく推定使用量(試験薬の中止やレスキュー治療の有無を問わない用量)を用いて評価した。また、セマグルチドを1回以上服用した全患者を対象に安全性を評価した。 2021年1月15日~9月29日に2,294例がスクリーニングを受け、1,606例が無作為に割り付けられた(14mg群536例、25mg群535例、50mg群535例)。患者背景は、男性936例(58.3%)、女性670例(41.7%)、平均(±SD)年齢58.2±10.8歳、平均HbA1c値9.0±0.8%、平均体重96.4±21.6kgであった。52週時のHbA1c値と体重の低下、14mg群と比較し25mg群、50mg群が有意に優れる 52週時におけるHbA1cの平均変化値(SE)は、セマグルチド14mg群-1.5%(SE 0.05)、25mg群-1.8%(0.06)、50mg群-2.0%(0.06)であった。治療指針に基づく推定使用量での評価の結果、セマグルチド14mg群に対する推定治療差(ETD)は、セマグルチド25mg群で-0.27%(95%信頼区間[CI]:-0.42~-0.12、p=0.0006)、50mg群で-0.53%(-0.68~-0.38、p<0.0001)であり、セマグルチド14mg群に対する優越性が示された。 52週時における体重の平均変化値(SE)は、セマグルチド14mg群-4.4kg(SE 0.3)、25mg群-6.7kg(0.3)、50mg群-8.0kg(0.3)であった。セマグルチド14mg群に対するETDは、セマグルチド25mg群で-2.32kg(95%CI:-3.11~-1.53、p<0.0001)、50mg群で-3.63kg(-4.42~-2.84、p<0.0001)であり、セマグルチド14mg群に対して優越性が示された。 有害事象は、セマグルチド14mg群で404例(76%)、25mg群で422例(79%)、50mg群で428例(80%)報告された。ほとんどが軽度から中等度であったが、胃腸障害が14mg群と比較して25mg群および50mg群で高率であった。死亡は10例報告されたが、治療との関連はないと判断された。 なお、著者は、用量漸増期間が最大16週と短期間であったこと、セマグルチド25mg群と50mg群の差は検証されていないこと、対象患者の大部分が白人であったことなどを研究の限界として挙げている。

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高齢者糖尿病診療ガイドライン2023、薬物療法のエビデンス増え7年ぶりに改訂

 日本老年医学会・日本糖尿病学会の合同編集である『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が5月に発刊された。2017年時にはなかった高齢者糖尿病における認知症、サルコペニア、併存疾患、糖尿病治療薬などのエビデンスが集積したことで7年ぶりの改訂に至った。今回、日本老年医学会の編集委員を務めた荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科)に『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』の改訂点について話を聞いた。 高齢者糖尿病とは、「65歳以上の糖尿病」と定義されるが、医学的な観点や治療、介護上でとくに注意すべき糖尿病高齢者として「75歳以上の高齢者と、身体機能や認知機能の低下がある65~74歳の糖尿病」と、より具体的な定義付けもなされている。高齢者糖尿病診療ガイドライン2023の改訂ポイント6点 日本老年医学会、日本糖尿病学会の両学会は上記のような高齢者糖尿病患者における「低血糖による弊害」「認知症などの併存疾患の影響」などの課題解決のために2015年に合同委員会を設立、その2年後に高齢者糖尿病診療ガイドライン2017年版を発刊した。当時は治療薬のエビデンスなどが乏しかったが、国内外の新しいエビデンスが集積したこと、新薬が登場したこと、そして併存疾患に対する対策や治療目的が明確になったことから、今回6年ぶりの発刊となった。そのような背景のある『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』について、荒木氏は改訂ポイント6点を示した。<注目すべき6つのポイント>1)2017年時点では得られていなかった認知症、フレイル、サルコペニア、悪性腫瘍、心不全などの併存疾患やmultimorbidityに関するエビデンスが記載されている、Question・CQ(Clinical Question)に反映2)血糖コントロール目標を設定するためのカテゴリー分類を行うことができる認知・生活機能質問票(DASC-21)を掲載[p.228付録3]3)運動療法が糖尿病のみならず認知機能やフレイルにも良い影響を与える4)薬物療法ではSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の心血管疾患や腎イベントに対するリスク低減効果に関するエビデンスも集積5)2型糖尿病患者の注射のアドヒアランス低下の対策として、インスリン治療の単純化を記載6)社会サポート制度の活用 このほか、「高齢者糖尿病患者の背景・特徴については第I章に、治療については第IX章p.151~170に掲載されているので一読してほしい」とし、「治療の基本的な内容は『糖尿病治療ガイド2022-2023』にのっとっているので、両書を併せて読むことが理解につながる」とも話した。インスリン治療の単純化はアドヒアランス向上だけでなく、低血糖を減らす 高齢者の場合、腎・肝機能低下による薬剤の排泄・代謝遅延から有害事象を来しやすい。そのため低血糖をはじめ、これまで注意点が強調されることが多かった。一方で、高齢者糖尿病ではポリファーマシーになりやすく、さらに認知機能障害のため服薬アドヒアランスの低下を来しやすい。そのため減薬だけでなく、複雑な処方をシンプルにする“治療の単純化”を行うことが必要になる。2型糖尿病のインスリン治療においても注射のアドヒアランス低下の対策としてインスリン治療の単純化を行う研究が行われている。 これについて同氏は「たとえば、インスリン注射を1日複数回注射している2型糖尿病患者の場合、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬などを追加することでインスリン投与回数を1日1回の持効型インスリンのみにすることが治療の単純化となる。このインスリン治療の単純化は、注射回数を1回にしても血糖コントロールは変わらない、もしくは改善し、インスリンの単位数が減ることで低血糖が減ることも報告されてきているため、インスリン治療の単純化は低血糖回避という観点からも有用であると考える。また、複数回のインスリン注射を週1回のGLP-1受容体作動薬やインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤に変更にすることも治療の単純化となり、低血糖を減らすことが可能となる」とコメント。「これは高齢者のインスリン治療法の大きな進歩」だとも述べ、また、「絶食の不要な経口のGLP-1受容体作動薬において種々の製剤が開発中であり、今後のインスリン治療の単純化にも役立つ可能性がある」ともコメントした。高齢者糖尿病診療ガイドラインにSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬のCQ追加SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は心・腎イベントに関するCQが『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』に新たに盛り込まれた。―――CQ IX-2:高齢者糖尿病でSGLT2阻害薬は心血管イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。CQ IX-3:高齢者糖尿病でSGLT2阻害薬は複合腎イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。CQ X-1:高齢者糖尿病でGLP-1受容体作動薬は心血管イベントを抑制する【推奨グレードA】。CQ X-2:高齢者糖尿病でGLP-1受容体作動薬は複合腎イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。――― これについて「高齢者糖尿病においてもSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の使用は心・腎イベントのリスクや心不全による再入院リスクを低減させるエビデンスがあり、additional benefitがあることが明らかになった。したがって、この両剤はこれらの心・腎に対するベネフィットと副作用のリスクのバランスを考慮しながら使用する必要がある」と同氏はコメントした。高齢者糖尿病診療ガイドライン2023でマルチコンポーネント運動を推奨 高齢者糖尿病でも若年者同様に運動療法は推奨され、血糖コントロールのみならず脂質異常症、高血圧、生命予後などの改善に有効とされ、『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』でも推奨されている。また、糖尿病のない患者と比べ筋量が減少しやすいため、サルコペニア予防としても重要な位置付けにある。今回、有酸素運動・レジスタンス運動・バランス運動・ストレッチングを組み合わせたマルチコンポーネント運動も推奨されている。ただし、高齢者糖尿病患者が行う際には、年齢や合併症、併存疾患、生活スタイルに合わせることがポイントである。 最後に同氏は、地域社会で高齢者糖尿病患者を支えることが今後より一層求められる時代になることから、『社会サポート制度』(p.217)についても言及し、「認知症然り、糖尿病でも地域で生活を続けていけるように、各自治体で高齢者糖尿病のQOLに寄り添うサービスが設けられている場合がある。たとえば、デイケア、通いの場、訪問看護、訪問栄養指導、訪問薬剤指導がそうであるが、そのようなサービスの存在に踏み込んだことも、本改訂での大きな特徴とも言える」と話した。

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急性冠症候群における早期SGLT2阻害薬使用の効果

 SGLT2阻害薬は糖尿病治療だけでなく、現在では心不全(HF)や腎不全の治療にその活躍のフィールドを拡大している。HFの臨床転帰を改善することは、すでにさまざまなエビデンスが報告されているが、早期の急性冠症候群(ACS)ではエビデンスは限定的であった。この疑問に対し、国立循環器病研究センターの金岡 幸嗣朗氏らの研究グループは、入院中の急性冠症候群患者に対し、SGLT2阻害薬の早期使用と非SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の使用の関連を検討した結果を報告した。European Heart Journal-Cardiovascular Pharmacotherapy誌オンライン版2023年5月12日掲載。ACSへのSGLT2阻害薬の早期介入はイベント抑制につながる可能性 本研究は、レセプト情報・特定健診情報データベースを用いて後方視的コホート研究で行われた。対象は2014年4月~2021年3月までに20歳以上のACSで入院した患者。 主要アウトカムは、全死因死亡またはHF/ACS再入院の複合とした。1:1の傾向スコアマッチングを用いて、HF治療に応じて、非SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬と比較した早期SGLT2阻害薬使用(入院後14日以下)の転帰との関連を明らかにした。 対象となった38万8,185例のうち、重度のHFを有する患者は11万5,612例、有さない患者は27万2,573例であった。 主な結果は以下のとおり。・SGLT2阻害薬非使用者と比較し、SGLT2阻害薬使用者は、主要アウトカムとのハザード比(HR)が、重症HF群で低かった(HR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.76~0.91、p<0.001)・非症状HF群では有意差はなかった(HR:0.92、95%CI:0.82~1.03、p=0.16)・SGLT2阻害薬の使用は、DPP-4阻害薬と比較し、重症HFおよび糖尿病患者における転帰のリスクが低いことが示された(HR:0.83、95%CI:0.69~1.00、p=0.049) 以上の結果から金岡氏らの研究グループは、「早期ACS患者におけるSGLT2阻害薬の使用は、重症HF患者において主要転帰のリスクを低下させたが、重症HFではない患者ではその効果は不明だった。そのほか、HFあり群のうち、糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の開始は、わが国でよく用いられているDPP-4阻害薬の開始と比較しても、主要エンドポイントの減少と関連していた」と早期使用がイベント抑制につながる可能性を示唆した。

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併存症のある患者での注意点~高齢者糖尿病診療ガイドライン2023/糖尿病学会

 5月11日~13日に城山ホテル鹿児島をメイン会場に第66回 日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。 高齢者の糖尿病患者では、糖尿病とは別に併存症があるケースが多い。では、糖尿病以外の疾病もある高齢者の糖尿病患者の診療はどうあるべきであろう。 本稿では、「シンポジウム10 より良い高齢糖尿病ケアを目指して」より「高齢者糖尿病の合併症と併存症」(杉本 研氏 [川崎医科大学総合老年医学])の口演をお届けする。 2023年5月に『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2023』(以下「ガイドライン」と略す)が上梓され、今回の口演は、このガイドラインの内容を踏まえて構成されている。 今回のガイドラインの改訂では、合併症と併存症につき、「併存症」が独立して章立てされた。また、併存症の予防・管理が、健康寿命の延伸には重要となることが改めて確認され、引き続き、高齢の糖尿病患者の診療では、平均余命の減少と低血糖の高リスクをどのように防止するかが重要とされている。 とくに杉本氏は「高齢者の併存疾患で注意したいのが、動脈硬化性疾患であり、高齢者のADLとQOLを大きく損ない健康寿命などに影響を与える」と診療での注意点を強調した。 続いて先のガイドライン中で「高齢者の併存疾患」を取り上げ、重要なポイントを説明した。 なお、ガイドラインでは、「CQ」と「Q」に分けて、「CQ」は「推奨度(推奨グレード)を問う疑問として回答が可能な臨床的疑問」を、「Q」は「CQ以外の臨床的疑問(推奨グレードは付さない)」について記述している。■高齢者の糖尿病治療が認知機能などの低下抑制になるかは不明 CQ V-3「高齢者糖尿病における(厳格な)血糖コントロールは認知機能低下・認知症発症の抑制に有効か?」というCQでは「血糖コントロールが認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU:推奨するだけの明確根拠がない)、「糖尿病治療薬による治療が認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU)として研究の余地を残している。 Q V-4「高齢者糖尿病の高血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病または高血糖は、フレイル、サルコペニアの危険因子である」とされ、これについて杉本氏は「8つのメタ解析から糖尿病はフレイルの危険因子となり(オッズ比1.48)1)、サルコぺニアはBMI25以下で増加する」と説明した。 同様にQ V-5「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコぺニアに危険因子である」としている。 Q V-6「高齢者糖尿病における血糖コントロールは筋量や筋力の維持に有効か?」というQでは「高齢者糖尿病の血糖コントロールが筋量や筋力の維持に有効かは明らかではない」としている。ただ、HbA1cとサルコぺニアの関係では、いくつかの論文で弱い相関を示唆するものもあり、今後研究が待たれる。また、薬物治療の影響については、フレイルとSGLT2阻害薬との関係は「現状では『明らかでない』としか言えない」と杉本氏は説明した。 Q V-8「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子であり、インスリン使用者ではとくに注意を要する」と転倒への注意を記載している。 Q V-9「高齢者糖尿病における血糖コントロールは転倒の予防に有用か?」というQでは「高齢者糖尿病における血糖コントロール状態は転倒に影響するが、厳格な血糖コントロールの影響は明らかではない」、「高齢者糖尿病における血糖コントロールの改善が転倒の予防に有用であるかは不明である」と研究の余地を残している。■高齢者糖尿病の心不全の予防・改善に糖尿病治療薬は有効か 悪性腫瘍や心不全、multimorbidity(多疾患罹患)についても触れ、とくに心不全、multimorbidityでは次の3つのQについて説明を行った。 Q V-16「高齢者糖尿病において糖尿病治療薬は心不全の予防・改善に有効か?」というQでは、「高齢者糖尿病においてSGLT2阻害薬は心不全の予防・改善に有効な可能性がある」とする一方で「高齢者糖尿病においてDPP-4阻害薬が心不全リスクに及ぼす影響は明らかではない」と記載している。 そして、このQに関して杉本氏は、SGLT2阻害薬による心不全への影響は70歳以上でより良かったとする報告2)がある一方で、有意なBNPの低下がなかったとする報告もある3)ことを述べ、自験例としながらもSGLT2阻害薬で左室心筋重量係数(LVMI)の低下がみられたことを報告した。 Q V-18「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすいか?」というQでは、「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすい」と記載している。 また、Q V-19「高齢者糖尿病のmultimorbidityではどのような点に注意すべきか?」というQでは「高齢者糖尿病のmultimorbidityにどのような対応を行うべきかのエビデンスは不足しているが、低血糖に注意し、多職種で患者・家族の意思決定の支援をしながら目標を設定していくことが望ましい」と記載している。 今回のガイドラインを受け杉本氏は75歳以上では4つ以上の疾患の合併割合が多くなること、とくに認知症、腎機能不全、骨折が多くなることを指摘するとともに、「重症低血糖では、糖尿病治療薬もインスリンやSU薬など3剤以上の併用も多くなり、ポリファーマシーへの配慮も必要」と述べ、口演を終えた。■参考文献1)Hanlon P, et al. Lancet Healthy Longev. 2020 Dec;1:e106-e116.2)Martinez FA, et al. Circulation. 2020;141:100-111.3)Tamaki S, et al. Circ Heart Fail. 2021;14:e007048.

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