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英語で「任せます」は?【1分★医療英語】第101回

第101回 英語で「任せます」は?《例文1》Please leave it to me.(私に任せてください)《例文2》I’ll leave it to you whether you start the medication today or not.(この薬を今日から飲み始めるかどうかは、あなたにお任せします)《解説》“leave”には「離れる」や「置いておく」といった意味がありますが、これに関連して「任せる」という意味もあります。同じく“leave”の動詞を使って「仕事を託す」といったイメージで、”I'll leave it to you.” または“I’ll leave it in your hands.”(あなたにお任せします)といったように使います。また、何か仕事を進めてもらうような状況では、“Please go ahead.”(どうぞ進めてください)という表現もよく使われます。また、「仕事を引き継いでもらう」といった状況では、“Over to you.”(よろしく)という表現もよく使われますが、目上の人にはやや失礼に当たるので注意しましょう。「任せる」という意味の表現には、“It’s up to you”というものもあります。これは「あなた次第です」と訳されることが多いですが、言い方によっては突き放した表現にも聞こえてしまうため、使う際には注意が必要です。上の表現にも出てきた“hand”を使って「仕事を託す」というイメージで、“It’s in your hands now.”(今からお任せします)という言い方も可能です。講師紹介

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第185回 ヘモグロビンの血液外での働きが判明~軟骨細胞が生き延びるのに必要

ヘモグロビンの血液外での働きが判明~軟骨細胞が生き延びるのに必要酸素を携えたタンパク質ヘモグロビンが大量に巡って血液を赤く染めています。血流のヘモグロビンは赤血球の中にあって酸素を遠方まで運ぶ役割を担うことがよく知られていますが、赤血球以外あるいは血流の外でのヘモグロビンの働きはよくわかっていませんでした。しかしついにヘモグロビンの赤血球以外での働きの1つが中国の研究者などによって突き止められました。軟骨を作る細胞である軟骨細胞が低酸素への対応として自前でヘモグロビンを作り、酸素が少ない環境で生きるための仕組みの一端を担うことがその研究で示されました1)。先立つ研究でドーパミン放出神経細胞、肺胞上皮細胞、免疫細胞(マクロファージ)、網膜色素上皮細胞などの赤血球以外のいくつかの細胞でのヘモグロビンの発現がすでに確認されています。しかしそれらの細胞でのヘモグロビンの役割の確かな裏付けは得られていませんでした。若いマウスの骨の発育の研究をしていた中国の病理学者Feng Zhang氏はその成長板(growth plate)に見慣れない軟骨細胞の塊があることを発見します。2017年のことです2)。それらの細胞は赤血球によく似た形をしていただけでなく、ヘモグロビンも豊富に携えていました。赤血球によく似たそれらの謎めいた細胞の一団は成長板で何をしているのか? Zhang氏は細胞生物学者Qiang Sun氏らと協力してその答え探しに乗り出します。骨を伸ばす原動力である成長板は酸素が乏しく、血液も届きません。にもかかわらず成長板の軟骨細胞は忙しく分裂しており、酸素が少なくてもやっていける何らかの仕組みを備えているようなのです。その仕組みにヘモグロビンが寄与しているかもしれないとチームは想定し、機能するヘモグロビンが枯渇したマウスを観察しました。すると成長板で大量の軟骨細胞が息絶えていました。続いて軟骨細胞に限ってヘモグロビンを枯らしたところやはり成長板の軟骨細胞が多く死にました。ヘモグロビンは酸素が乏しくても軟骨細胞が生きていけるようにする仕組みの一端をどうやら担うようです。それを裏付ける研究として、ヘモグロビンを欠く軟骨細胞は酸素が乏しいと大量に死に、ヘモグロビンを正常に備える軟骨細胞は酸素を放出してより生き延びるという結果が得られています。興味深いことにヘモグロビンは軟骨細胞内でサラダドレッシングの油滴のような相分離の様相を呈する膜のない凝集体(condensate)を形成していました。ヘモグロビンの端を少し切ってみる実験の結果によるとヘモグロビンの凝集体は行き当たりばったりではなく筋書きに沿って形成されるようです。ヘモグロビンの凝集はどうやら軟骨細胞に限ったことではなさそうであり、網膜色素上皮や緑内障の細胞では粒状のヘモグロビンの分布が確認されています。一定の条件でヘモグロビンは凝集体を形成するという考えをそれらの観察結果は示しています。細胞がヘモグロビン凝集体をどう扱っているかは今後調べる必要がありますが、不足しがちな酸素を周囲から吸収して小さくまとめてより多く貯蔵する働きがあるのかもしれません2)。酸素を盛んに消費するかあるいは血管が通っていなくて酸素が乏しい組織の細胞の長期の需要に応じてヘモグロビンに蓄えられた酸素が使われるのではないかとZhang氏らは示唆しています1)。若さ同様に成長板は短命です。人の成長板は生まれる前に作られ、思春期ごろに消滅します。しかし軟骨細胞は体のあちこちで生涯にわたって存続します。関節はその1つで、軟骨細胞はそこで軟骨組織を維持する役割を果たしています。実際、ヒトの膝関節軟骨組織の観察でヘモグロビン保有構造が検出されています。軟骨のような成長板以外の場所でもヘモグロビンが低酸素下での細胞生存に貢献しているかどうかはわかっておらず、今後調べる必要があります。また、低身長症などの骨の発達に支障を来す病態の数々に軟骨細胞でのヘモグロビン不足が寄与しているかもしれません。今回の成果をきっかけにしてさまざまな研究が始まるだろうとテキサス大学の歯や骨の研究者・小野 法明(Noriaki Ono)氏はScience誌に話しています2)。参考1)Zhang F, et al. Nature. 2023 Oct 04. [Epub ahead of print]2)More than red blood cells depend on hemoglobin, surprising study of cartilage reveals / Science

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eplontersen、遺伝性ATTRvアミロイドーシスに有効/JAMA

 ポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型(ATTRv)アミロイドーシス患者の治療において、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるeplontersenはプラセボと比較して、血清トランスサイレチン濃度を有意に低下させ、ニューロパチーによる機能障害を軽減し、良好なQOLをもたらすことが、ポルトガル・Centro Hospitalar Universitario de Santo AntonioのTeresa Coelho氏らが実施した「NEURO-TTRansform試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月28日号で報告された。historical placeboと比較する単群第III相試験 NEURO-TTRansform試験は、過去の臨床試験のプラセボ群(historical placebo)との比較を行う非盲検単群第III相試験であり、2019年12月~2021年6月に日本を含む15ヵ国40施設で患者のスクリーニングを実施した(米国・Ionis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 対象は、18~82歳、Coutinhoの病期分類でステージ1または2のATTRvポリニューロパチーと診断され、Neuropathy Impairment Score(0~244点、点数が高いほど身体機能が不良)が10~130点で、TTR遺伝子配列のバリアントを有する患者であった。 本試験と類似の適格基準およびエンドポイントが設定されたNEURO-TTR試験(inotersenの二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験、2013年3月~2017年11月)でプラセボの投与を受けた患者をプラセボ群(週1回、皮下投与)とした。eplontersen群は本薬45mgを4週ごとに皮下投与した。 有効性の主要エンドポイントは次の3つで、ベースラインから65週目または66週目までの変化量を評価した。(1)血清トランスサイレチン濃度、(2)修正Neuropathy Impairment Score +7(mNIS+7)の複合スコア(-22.3~346.3点、点数が高いほど身体機能が不良)、(3)Norfolk Quality of Life Questionnaire-Diabetic Neuropathy(Norfolk QoL-DN)の総スコア(-4~136点、点数が高いほどQOLが不良)。 eplontersen群144例(平均年齢53.0歳、男性69%)のうち136例(94.4%)、NEURO-TTR試験のプラセボ群60例(59.5歳、68%)のうち52例(86.7%)が66週のフォローアップを完了した。有効性の副次エンドポイントも良好 65週の時点で、血清トランスサイレチン濃度のベースラインからの補正後平均変化量は、プラセボ群が-11.2%であったのに対し、eplontersen群は-81.7%と有意に優れた(群間差:-70.4%、95%信頼区間[CI]:-75.2~-65.7、p<0.001)。 また、mNIS+7の複合スコアのベースラインから66週までの補正後平均変化量は、プラセボ群の25.1点に比べ、eplontersen群は0.3点と有意に低かった(群間差:-24.8点、95%CI:-31.0~-18.6、p<0.001)。 さらに、Norfolk QoL-DNの総スコアのベースラインから66週までの補正後平均変化量は、プラセボ群の14.2点に比し、eplontersen群は-5.5点であり有意に良好だった(群間差:-19.7点、95%CI:-25.6~-13.8、p<0.001)。 有効性の副次エンドポイントのうち、35週目と66週目のneuropathy symptom and change(NSC)総スコア、65週目のSF-36 PCSスコア、65週目の栄養状態(修正BMI)は、いずれもeplontersen群で有意に優れた(すべてp<0.001)。65週目のpolyneuropathy disability(PND)スコアI(介助なしでの歩行)は、eplontersen群ではベースラインから変化がなかった。 試験薬投与中の有害事象(TEAE)のうち、重篤なTEAEはeplontersen群が21例(15%)、プラセボ群は12例(20%)で発生した。66週目までに試験薬の投与中止をもたらした有害事象は、eplontersen群が6例(4%)、プラセボ群は2例(3%)で発現した。 eplontersen群の2例がATTAvアミロイドーシスの既知の続発症(心不整脈、脳内出血)で死亡したが、試験薬関連死は認めなかった。とくに注意すべき有害事象の1つである血小板減少症は、eplontersen群の3例(2%)、プラセボ群の1例(2%)でみられた。 著者は、「eplontersen群と過去の臨床試験のプラセボ群のアウトカムの結果の差は、ベースラインの種々の患者背景因子とは関連がなかった」とし、「現在進行中の非盲検延長試験では、eplontersenの長期的な安全性と忍容性の評価が行われている」と付言している。

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高血圧治療補助アプリで8mmHgも降圧、治療効果のある患者とは

 CureApp HT高血圧治療補助アプリ(以下、治療アプリ)が保険収載、処方が開始してから1年が経過した。現在までの治療効果について、株式会社CureAppが「スマート降圧療法RWD発表記者会見」において、全国の医療機関で処方された治療アプリに入力された血圧データの解析結果を説明した。 本データ解析によると、全体集団における12週後の収縮期血圧の変化は起床時では8.8mmHg、就寝前では8.5mmHgの低下がみられた。これについて同社取締役の谷川 朋幸氏は「治験で検証されていなかった65歳以上の患者を含む、幅広い患者集団において薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによるスマート降圧療法の効果が示された」とコメント。薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによる実臨床での降圧データの公開は世界初である。 本試験の概要ならびに結果は以下のとおり。<試験概要> 高血圧症向け治療アプリへの入力データを用いた後ろ向き研究で、以下の条件で実施された。対象者:2022年9月~2023年4月にアプリを処方された患者家庭血圧を少なくとも1回入力した患者情報の研究利用を拒否する旨の意思表示を行っていない患者主要評価項目:高血圧症向け治療アプリ使用開始(ベースライン)後12週間での降圧量(ベースラインの週およびアプリ使用開始12週後の週においてそれぞれ5日以上血圧を入力した患者が対象)解析方法:年齢、アプリ使用開始時点での服薬の有無、塩分チェックシートスコア、BMIでの層別解析結果:・解析対象者は554例で女性は263例(55.1%)だった。・アプリ使用者の平均年齢は55.1歳(範囲:22~87歳)で、そのうち65歳以上は115例(21%)だった。・薬物治療を行っていたのは248例(45%)であったが、その薬剤の種類や用量は不明であった。・アプリ使用開始後12週間での全体集団における収縮期血圧の降圧変化は、起床時は-8.8mmHg、就寝前は-8.5mmHgだった。・65歳以上での12週後の収縮期血圧変化は、起床時で-11.8mmHg、就寝前で-10.1mmHgだった。・ベースラインでの平均収縮期血圧は起床時が133.6mmHg、就寝前が129.7mmHgで、治験1)時(起床時:149.3mmHg、就寝前:143.3mmHg)より低い傾向にあった。・2023年8月時点で報告対象となる健康被害はみられなかった。―――医師に向き合ってもらえている、この感覚が患者のやる気に 実際に本治療アプリによるスマート降圧療法を行っている野村 和至氏(野村医院)は処方が推奨される患者の特徴や処方経験からみえたことについて語った。同氏は患者13例に処方を行い11例がプログラムを終了(1例中断、1例は導入後一度も使用せず)、そのうち8例が改善を示した。この患者変化について、「医師は患者の入力データをネット接続したPCで確認するわけだが、患者の生活習慣の問題点、配慮すべき心理面などを把握することができる。本治療アプリを通して患者の全体像がみえてくるため、患者の良い所をみつけて褒めることもできた。過去に薬物療法を自己中断していた方でも行動変容に合わせた声かけにより継続することができ、スマート降圧療法で血圧も改善した」と述べ、別の症例では「毎年冬に血圧上昇がみられ降圧薬を増量する患者に対しスマート降圧療法を勧めた結果、2剤服用していた降圧薬のうちCa拮抗薬を中止するに至った。また、それに伴いHbA1cなどの数値にも改善がみられた」といった、驚くべき改善が得られたことを報告した。 一方、治療アプリを処方する際に困った点として、予想以上に血圧低下するケース、スマート降圧療法を求め別の施設から同氏の元へ来院するケースがあったそうで、前者については、「血圧低下時の対処方法を決めておく必要がある」と説明。後者については、かかりつけの医療機関で治療ができないか相談してもらい、難しいようであれば半年間だけスマート降圧療法留学をお願いする」などの工夫を紹介した。 なお、同氏が考える“スマート降圧療法が推奨される”患者像は以下のとおり。 ■推奨される患者像 健康志向の強い人、高血圧症の早期、内服薬に抵抗のある人 ■推奨される併存疾患 メタボリックシンドローム、心不全、腎疾患(運動のみ注意) このほか、減塩、減量、運動が推奨される疾患を有するなど成功モデル・離脱モデルのデータ蓄積に期待 さらに、プログラム終了間近の患者が “終わってしまうのが寂しい”“まだ続けていたい”という感想を漏らしたことに同氏は驚いたそうで、「プログラム上で自身の話を受け止め、病気についてアドバイスしてくれる点が行動変容に効果があるのではないか」と見解を示した。 最後に同氏は、スマート降圧療法は治療効果や治療中断の防止もさることながら、「“やったらできる!”という自己効力感の向上に重要」と強調し、「行動変容モデルを意識した適切なアプローチ、マンネリ化の防止のために、データ蓄積と本治療アプリのアップデートに期待したい」と締めくくった。

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睡眠時無呼吸へのCPAP、MACEイベントの2次予防に有効か/JAMA

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と心血管疾患の双方を有する患者の治療において、持続陽圧呼吸療法(CPAP)はこれを行わない場合と比較して、主要有害心脳血管イベント(MACCE)の2次予防に全般的には有効ではないものの、CPAPのアドヒアランスが良好な患者ではMACCEのリスクを低減することが、スペイン・リェイダ大学のManuel Sanchez-de-la-Torre氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年10月3日号で報告された。MACCE再発リスクへのCPAPの影響をIPDメタ解析で評価 研究グループは、OSAに対するCPAPによる治療がMACCEのリスクに及ぼす影響を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(スペイン・カルロス三世保健研究所などの助成を受けた)。 医学関連データベースを用いて、2023年6月22日までに発表された論文を検索した。対象は、心血管疾患とOSAの双方を有する成人患者において心血管アウトカムおよび死亡に及ぼすCPAPの治療効果を評価した無作為化臨床試験であった。 選択された3つの研究(SAVE[2016年]、ISAACC[2020年]、RICCADSA[2016年])の論文の著者に、個別被験者データ(IPD)の提供を求めた。1段階および2段階のIPDメタ解析により、混合効果のCox回帰モデルを用いてMACCEの再発リスクに及ぼすCPAPの影響を評価した。また、CPAPの良好なアドヒアランス(≧4時間/日)の効果についても検討した。 主要アウトカムは、初発MACCE(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術、心不全による入院、不安定狭心症による入院、一過性脳虚血発作による入院)であった。1段階と2段階解析の双方で同様の結果 3研究の参加者4,186例を解析に含めた。82.1%が男性、平均BMIは28.9(SD 4.5)、平均年齢は61.2(SD 8.7)歳で、平均無呼吸低呼吸指数は31.2(SD 17)イベント/時であり、71%が高血圧を有し、50.1%がCPAPを受けており(平均アドヒアランス:3.1[SD 2.4]時間/日)、49.9%はCPAPを受けていなかった(通常治療)。平均追跡期間は3.25(SD 1.8)年。 主要アウトカムであるMACCEは691例(16.5%)で発生した(CPAP群349例、非CPAP群342例)。1段階解析によるITT解析では、MACCEの発生に関して両群間に統計学的に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.87~1.17、p=0.94)。 2段階解析は1段階解析の結果を裏付けるもので、両群間に有意差はみられなかった(HR:0.99、95%CI:0.82~1.19、p=0.32)。 一方、on-treatment解析では、CPAPのアドヒアランスが不良な患者(<4時間/日)と比較して良好な患者(≧4時間/日)では、MACCEのリスクが有意に低下した(HR:0.69、95%CI:0.52~0.92、p=0.01)。 著者は、「OSA患者における心血管疾患の2次予防では、CPAPのアドヒアランスが重要な因子であることが示唆された」とまとめ、「このメタ解析の結果は、OSAと心血管疾患を有する患者のうち、CPAP治療が最も有益である可能性が高い患者を特定するための厳格な根拠を提供し、患者の異質性が治療効果にどのように影響するかに関するより広範な議論に寄与する」と指摘している。

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エフガルチギモド、一次性免疫性血小板減少症に有効/Lancet

 一次性免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)は後天性の自己免疫疾患で、血小板抗原を標的とする自己抗体がその一部を媒介しており、ほかの疾患との明確な関連のない孤立性血小板減少症(血小板数<100×109/L)を特徴とする。患者は、出血イベント(まれに生命を脅かす)や疲労を呈し、QOLの低下を招く場合もある。米国・ジョージタウン大学のCatherine M. Broome氏らは「ADVANCE IV試験」において、ファーストインクラスの抗胎児性Fc受容体(FcRn)抗体フラグメント製剤エフガルチギモドが、プラセボと比較して、本症の慢性期の患者における血小板数の持続的臨床効果について有意に優れ、忍容性も良好で有害事象の多くは軽度~中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年9月28日号に掲載された。アジア、欧米の71施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 ADVANCE IV試験は、日本を含むアジア、欧州、北米の71施設が参加した24週間の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年12月~2022年2月の期間に患者のスクリーニングを行った(argenxの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、平均血小板数が30×109/L未満で、過去に少なくとも1回の免疫性血小板減少症の治療が奏効し、ベースラインで同時併用療法を受けているか、過去に少なくとも2回の免疫性血小板減少症の治療を受けている、慢性(罹患期間>12ヵ月)または持続性(同3~12ヵ月)の一次性免疫性血小板減少症の患者であった。 これらの患者を、エフガルチギモド(10mg/kg)またはプラセボを静脈内投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けた。最初の4週間は週1回の投与を行い、その後は担当医の裁量で、週1回投与を継続するか、血小板数≧100×109/Lの場合は2週に1回の投与に変更することが可能であった。 主要エンドポイントは、慢性の免疫性血小板減少症の集団における血小板数の持続的臨床効果(直近6週間のうち少なくとも4週で血小板数が≧50×109/L)とした。 131例(年齢中央値47.0歳[四分位範囲[IQR]:18~85]、女性54%)を登録し、86例をエフガルチギモド群に、45例をプラセボ群に割り付けた。これらの患者は、平均罹患期間が10.6年で、67%(88/131例)が少なくとも3回の免疫性血小板減少症の治療歴のある長期罹患者であった。131例のうち慢性の患者は118例(エフガルチギモド群78例、プラセボ群40例)だった。慢性だけでなく、全体でも有効 主要エンドポイントを達成した慢性期の患者の割合は、プラセボ群が5%(2/40例)であったのに対し、エフガルチギモド群は22%(17/78例)と有意に高かった(補正後群間差:16%、95%信頼区間[CI]:2.6~26.4、p=0.032)。 24週の治療期間のうち病勢コントロール(血小板数≧50×109/L)を達成した週数の中央値は、プラセボ群が0.0週(IQR:0.0~1.0)であったのに比べ、エフガルチギモド群は2.0週(0.0~11.0)であり有意に優れた(p=0.0009)。 全131例における主要エンドポイントを達成した患者の割合も、エフガルチギモド群で優れた(26% vs.7%、補正後群間差:19%、95%CI:5.7~29.6、p=0.011)。 安全性解析は全131例で行った。エフガルチギモド群は忍容性も良好で、試験薬投与中に発現した有害事象(TEAE)の重症度は多くが軽度~中等度であった。重篤なTEAEは、エフガルチギモド群が8%、プラセボ群は16%で、治療関連TEAEはそれぞれ17%、22%で発現した。注目すべきTEAEのうち、両群で最も頻度が高かったのは、頭痛(エフガルチギモド群16%、プラセボ群13%)、血尿(16%、16%)、点状出血(15%、27%)であった。 著者は、「本研究の結果は、一次性免疫性血小板減少症の慢性期の患者であっても、本症の病態生理においてはIgGが重要であることを示しており、とくに治療困難な患者の治療選択肢としてのIgG低下療法の適用可能性についての理解を深めるものである」とし、「このデータは、胎児性FcRnのIgG recyclingの阻害による病原性IgG抗体の減少が、複数の治療によっても病勢がコントロールされていない一次性免疫性血小板減少症の患者の治療において有効なアプローチとなることを示唆する」と指摘している。

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NSAIDなどを服用している高齢者、運転に注意

 認知機能が正常な高齢者の服用薬と、長期にわたる運転パフォーマンスとの関連を調査した前向きコホート研究の結果、抗うつ薬や睡眠導入薬、NSAIDsなどを服用していた高齢者は、非服用者と比べて時間の経過とともに運転パフォーマンスが有意に低下していたことを、米国・ワシントン大学のDavid B. Carr氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月29日号掲載の報告。 米国運輸省と米国道路交通安全局は、90種類以上の薬剤が高齢ドライバーの自動車事故と関連していることを報告している。しかし、自動車事故リスクの上昇が薬剤の副作用によるものなのか、治療中の疾患によるものなのか、ほかの薬剤や併存疾患によるものなのかを判断することは難しい。そこで研究グループは、認知機能が正常な高齢者において、特定の薬剤が路上試験における運転パフォーマンスと関連しているかどうかを前向きに調査した。 参加者は、有効な運転免許証を持ち、ベースライン時およびその後の来院時の臨床的認知症尺度のスコアが0(認知機能障害がない)で、臨床検査、神経心理学的検査、路上試験、投薬データが入手可能であった65歳以上の198人(平均年齢72.6[SD 4.6]歳、女性43.9%)であった。データは、2012年8月28日~2023年3月14日に収集され、2023年4月1~25日に分析された。 主要アウトカムは、Washington University Road Testによる路上試験の成績(合格または限界/不合格)であった。多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、運転に支障を来す可能性のある薬剤の服用と、路上試験の成績との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間5.7(SD 2.45)年で、70人(35%)が路上試験で限界/不合格の評価を受けた。・非服用者と比べて、すべての抗うつ薬(調整ハザード比[aHR]:2.82、95%信頼区間[CI]:1.69~4.71)、SSRI/SNRI(aHR:2.68、95%CI:1.54~4.64)、鎮静薬/睡眠導入薬(aHR:2.72、95%CI:1.41~5.22)、NSAIDs/アセトアミノフェン(aHR:2.72、95%CI:1.31~5.63)の服用は、路上試験で限界/不合格となるリスクの増加と有意に関連していた。・脂質異常症治療薬を服用している参加者は、非服用者に比べて限界/不合格となるリスクが低かった。・抗コリン薬や抗ヒスタミン薬と成績不良との間に統計学的に有意な関連は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「この前向きコホート研究では、特定の薬剤の服用が経時的な路上試験の運転パフォーマンスの低下と関連していた。臨床医はこれらの薬剤を処方する際には、この情報を考慮して患者に適宜カウンセリングを行うべきである」とまとめた。

1968.

クロザピン治療中の治療抵抗性統合失調症の喫煙患者、再発リスクにバルプロ酸併用が影響

 喫煙習慣とバルプロ酸(VPA)併用がクロザピンによる維持療法の臨床アウトカムに及ぼす影響を調査した研究は、これまでなかった。岡山県精神科医療センターの塚原 優氏らは、クロザピンを投与している治療抵抗性統合失調症患者の退院1年後の再発に対する喫煙習慣とVPA併用の影響を調査するため、本研究を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年9月8日号の報告。 日本国内の2つの3次精神科病院において入院中にクロザピン投与を開始し、2012年4月~2022年1月に退院した治療抵抗性統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。再発の定義は、退院1年間の精神疾患増悪による再入院とした。喫煙習慣とVPA併用が再発に及ぼす影響の分析には、多変量Cox比例ハザード回帰分析を用いた。喫煙習慣とVPA併用との間の潜在的な相互作用を調査するため、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者192例中、69例(35.9%)が再発基準を満たした。・喫煙習慣は、独立して再発リスクを増加させたが(調整ハザード比[aHR]:2.27、95%信頼区間[CI]:1.28~4.01、p<0.01)、喫煙習慣とVPA併用の有無との間に再発リスクに関する有意な相互作用が認められた(p-interaction=0.015)。・VPAの併用を避けることで、喫煙習慣に関連する再発リスク増加を効果的に修正する可能性が示唆された。・喫煙患者のうち、VPAを併用している患者(aHR:5.32、95%CI:1.68~16.9、p<0.01)では、併用していない患者(aHR:1.41、95%CI:0.73~2.70、p=0.30)と比較し、再発リスクが高かった。 著者らは「この結果により、喫煙習慣とVPA併用により、退院後の再発リスクが高まる可能性が示唆された。クロザピンの血中濃度低下など、これらの所見の根底にあるメカニズムを解明するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

1969.

腫瘍径の小さいER+/HER2-乳がんへの術後ホルモン療法は必要か

 マンモグラフィ検査の普及により、腫瘍径の小さな乳がんの検出が増加した。エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)のT1a/bN0M0乳がんにおける術後内分泌療法(ET)の必要性は明らかでない。広島大学の笹田 伸介氏らは同患者における術後ETの有効性を評価、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月9日号に報告した。 本研究では、2008年1月~2012年12月にJCOG乳がん研究グループ42施設で手術を受けたER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者のデータを後ろ向きに収集した。術前補助全身療法を受けた患者とBRCA陽性患者は除外された。主要評価項目は遠隔転移の累積発生率で、両側検定が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・適格患者4,758例(T1a:1,202例、T1b:3,556例)中3,991例(83%)に標準的な術後ETが実施された。・追跡期間中央値は9.2年。遠隔転移の9年累積発生率はETありで1.5%、ETなしで2.6%だった(部分分布ハザード比[SHR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.32~0.93)。・多変量解析の結果、遠隔転移の独立したリスク因子は、ET歴なし、乳房切除術、高悪性度、およびリンパ管侵襲だった。・9年全生存率はETありで97.0%、ETなしで94.4%だった(調整ハザード比:0.57、95%CI:0.39~0.83)。・術後ETは同側(9年発生率:1.1% vs.6.9%、SHR:0.17)および対側の乳がん発生率を減少させた(9年発生率:1.9% vs.5.2%、SHR:0.33)。 ER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者の予後は良好であり、臨床リスクによって層別化されることが確認された。また術後ETは、小さな絶対リスク差で遠隔転移の発生率と全生存率を改善した。著者らは、とくに低悪性度でリンパ管侵襲のない患者において、術後ET省略の検討を支持する結果とまとめている。

1970.

治療抵抗性うつ病、esketamine点鼻薬vs.クエチアピン/NEJM

 治療抵抗性うつ病に対し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)との併用において、esketamine点鼻薬はクエチアピン徐放剤と比較して8週時の寛解率が有意に高かった。ドイツ・Goethe University FrankfurtのAndreas Reif氏らが、24ヵ国171施設で実施された第IIIb相無作為化非盲検評価者盲検実薬対照試験「ESCAPE-TRD試験」の結果を報告した。治療抵抗性うつ病(一般的に、現在のうつ病エピソード中に2つ以上の連続した治療で有効性が得られないことと定義される)は、寛解率が低く再発率が高い。治療抵抗性うつ病患者において、SSRIまたはSNRIとの併用投与下で、クエチアピン増強療法と比較したesketamine点鼻薬の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌2023年10月5日号掲載の報告。SSRIまたはSNRIへのesketamine点鼻薬併用をクエチアピン増強療法と比較 試験対象者は、30項目の観察者評価によるうつ病症候学評価尺度(IDS-C)(スコア範囲:0~84、高スコアほど重症)のスコアが34以上、現在使用中のSSRIまたはSNRIを含め、少なくとも2つの異なるクラスの抗うつ薬による治療を2~6回連続して受けるも無効(症状の改善が25%未満)の、18~74歳の治療抵抗性うつ病患者であった。 研究グループは、被験者をesketamine群またはクエチアピン群に1対1の割合で割り付け、現在使用中のSSRIまたはSNRIと併用投与した(初期治療期8週間、維持期24週間、計32週間)。esketamine群への点鼻薬投与(鼻腔内噴霧)は可変用量(製品特性の概要に即して)にて、クエチアピン群には徐放剤を投与した。 主要エンドポイントは、無作為化後8週時点における寛解で、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)(範囲:0~60、高スコアほど重症)のスコアが10点以下と定義した。また、重要な副次エンドポイントは、8週時点で寛解後32週時まで再発がないこととした。 有効性解析対象集団は無作為化されたすべての患者(ITT)集団とし、治療を中止した患者は非寛解または再発とみなした。主要エンドポイントおよび重要な副次エンドポイントの解析は、年齢(18~64歳vs.65~74歳)および前治療数(2 vs.3以上)で調整したCochran-Mantel-Haenszelカイ二乗検定を用い治療群間を比較した。8週時点の寛解率、esketamine群27.1%vs.クエチアピン群17.6% 2020年8月26日~2021年11月5日の間に、676例がesketamine群(336例)およびクエチアピン群(340例)に割り付けられた。 8週時の寛解率は、esketamine群27.1%(91/336例)、クエチアピン群17.6%(60/340例)であり、esketamine群が有意に高かった(補正後オッズ比[OR]:1.74、95%信頼区間[CI]:1.20~2.52、p=0.003)。また、8週時に寛解後32週時まで再発が確認されなかった患者も、esketamine群が336例中73例(21.7%)、クエチアピン群が340例中48例(14.1%)で、esketamine群が多かった(補正後OR:1.72、95%CI:1.15~2.57)。 32週間の治療期間において、寛解した患者の割合、奏効(MADRSスコアがベースラインから50%以上の改善、またはMADRSスコアが10点以下)した患者の割合、およびベースラインからのMADRSスコアの変化量も、esketamine群のほうが好ましい結果であった。 有害事象の発現率はesketamine群91.9%、クエチアピン群78.0%、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ5.7%および5.1%で、安全性プロファイルは既報と一致していた。

1971.

カロリー制限と断続的断食の腸内細菌叢への影響は同等?

 減量を試みる人の腸内細菌叢への影響を、カロリー制限と断続的断食とで比較した研究結果が報告された。3カ月の介入では、どちらも同程度に、腸内細菌叢の多様性を高めたという。米コロラド大学のMaggie Stanislawski氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に8月16日掲載された。 肥満は腸内細菌叢の組成と関連のあることが知られているが、肥満に対する治療介入によって腸内細菌叢がどのように変化するのかや、介入方法が異なると腸内細菌叢の変化のパターンも異なるのかといった点は明らかになっていない。Stanislawski氏らはこれらの点を検討するため、過体重または肥満の成人47人を対象とする介入試験を行った。 研究参加者は年齢が40.9±9.7歳、女性が77%で、BMIは33.5±4.5だった。介入に用いたのは、カロリー制限(daily caloric restriction;DCR)または断続的断食(intermittent fasting;IMF)の2種類で、無作為にいずれかを割り当てた。DCR群では1週間の総摂取エネルギー量を最大34%減らすように指示。一方、IMF群では、1週間のうち非連続の3日は摂取エネルギー量を25%として、他の4日は自由に摂取して良いこととした。計算上は、IMF群も1週間の摂取エネルギー量がほぼ-34%となると予測された。 この研究の介入期間は1年間で、現在も進行中。今回の報告は、介入3カ月時点の変化をまとめたもので、十分なデータのそろっている40人を解析対象とした。 介入により、摂取エネルギー量は1,764±338kcal/日から1,284±380kcal/日に減少し、摂取エネルギー量に占める脂質の割合は39±7%から35±5%に低下、タンパク質は17±3%から21±4%に増加し、いずれも有意に変化していた(全てP<0.001)。また、食事の質を表すスコア(healthy eating index;HEI)は、57±12から62±12に有意に改善していた(P=0.022)。なお、食物繊維摂取量は介入前が16±5g/日、3カ月後には14±6g/日であり、有意に減少していた。炭水化物エネルギー比は同順に42±8%、42±7%であり有意な変化がなかった。 腸内細菌叢の多様性は、3カ月の介入で両群ともに有意に改善していた。Stanislawski氏は、「どちらか一方の群の多様性が、別の一群に比べてより大きく改善したということではなく、評価した全ての指標が同等に変化していた」と述べている。 同氏は腸内細菌叢について、「われわれが口にする物は、腸内細菌叢の助けがなければ十分に消化することができない。また腸内細菌叢は、食品に含まれている成分を重要な物質に変化させたり、炎症の抑制や亢進、満腹感の誘発など、体のさまざまな生体プロセスに関与している」と解説。その上で今回の研究結果を基に、「腸内細菌叢への影響という点では、検討した2種類の減量方法に違いはなく、その方法が自分に適していると感じる人にとってはどちらも良い選択肢となり得る」とまとめている。 この報告に対して米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、介入期間が短期間に限られていること、かつ因果関係は不明であるという解釈上の留意点を指摘した上で、「両群が腸内細菌叢に与えた影響の多くは、脂質の摂取量が減ったことによるものではないか」との考え方を述べている。また、「腸内細菌叢に関してはいまだ不明点が多く残されており、当面は米連邦政府による『米国人のための食事ガイドライン』を遵守することが優先され、それが腸の健康のメリットにもつながるだろう」と話している。

1972.

診察室での会話を基にした対話型AI、BRCA検査への疑問や不安に対応/AZ

 乳がんと診断されてから、患者は治療法選択のほか再建や遺伝子検査を行うかなどたくさんの意思決定を求められる。とくに遺伝子検査については、乳がんと遺伝の関係の理解に加え家族への配慮も必要となるが、外来で説明に十分な時間を設けるのが難しいことも多い。9月27日、アストラゼネカは「乳がんを遺伝子レベルで理解することの重要性~遺伝性乳がん治療における課題とは~」と題したメディアセミナーを開催し、大野 真司氏(相良病院)、乳がん経験者の園田 マイコ氏が登壇。BRCA検査やHBOCについての理解を促す患者向けのサポートツールとして、対話型人工知能WEBアプリ「ブルーカ」が紹介された。 ブルーカは、60例の患者と複数名の医師の診察室での実際の会話を分析して作られている。分析の結果みえてきたのは、・知りたいことの傾向(よくある質問)・患者の感情として恐れや悲しみが強い・「質問を考えること」が患者にとっては大変 という3点だった。これらを踏まえてブルーカには下記の機能が搭載されている。・よくある質問とその回答データを基に、回答を提示する機能・投げかけられた質問に共感を示し、ブルーカというキャラクターが色味や表情を変えて回答する機能・アプリ利用者(患者)の“沈黙”を察知し、集積されているよくある質問を例示する機能 開発に携わった大野氏は、「単純に回答が提示されるのではなく、ブルーカが共感を示しながら対話の中で回答を示すという点が大きいのではないか」と話し、園田氏は「先生に質問できる時間は限られていて、一度聞いただけでは理解できないことも多い。自宅などでゆっくりアプリを使い、繰り返し回答を確認できれば、自分の中で咀嚼しながら正しい情報を理解できるのではないか」と期待を寄せた。 ブルーカは主治医から「血液による遺伝子検査について」という冊子を渡され、表示されている二次元コードを読み込むと、スマートフォンで利用できる。

1973.

ステロイド漸減中再発のリウマチ性多発筋痛症、サリルマブが有効/NEJM

 グルココルチコイド漸減中にリウマチ性多発筋痛症が再発した患者において、サリルマブ+prednisone漸減投与は、プラセボ+prednisone漸減投与に比べ、持続的寛解の達成とグルココルチコイド累積投与量の減少に有意な有効性を示した。米国・コーネル大学のRobert F. Spiera氏らが、合計118例を対象に行った第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Sarilumab in Patients with Polymyalgia Rheumatica (SAPHYR)試験」の結果を報告した。リウマチ性多発筋痛症の患者の半数以上が、グルココルチコイド漸減中に再発する。先行研究では、インターロイキン(IL)-6の阻害がリウマチ性多発筋痛症の治療で臨床的に有用である可能性が示されていた。サリルマブは、ヒトモノクローナル抗体薬で、IL-6受容体αに結合しIL-6経路を効果的に阻害することから、研究グループは、グルココルチコイド漸減中にリウマチ性多発筋痛症が再発した患者におけるサリルマブの有効性と安全性を評価する検討を行った。NEJM誌2023年10月5日号掲載の報告。52週時点の持続的寛解率を比較 SAPHYR試験は、リウマチ性多発筋痛症で、12週間以内にグルココルチコイド療法の漸減中1回以上の再発があり、赤血球沈降速度(ESR)が30mm/時以上、またはC反応性蛋白(CRP)値10mg/L以上だった患者を対象とした。 研究グループは被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはサリルマブ(200mg用量を月2回、52週間皮下投与)+prednisone(14週間漸減投与)(サリルマブ群)を、もう一方にはプラセボ(月2回、52週間皮下投与)+prednisone(52週間漸減投与)(プラセボ群)をそれぞれ投与した。 主要アウトカムは、52週時点の持続的寛解で、12週までにリウマチ性多発筋痛症の徴候や症状が消失、12~52週にCRP値の正常化が持続し、疾患の再発なし、prednisone漸減が遵守されていることと定義した。52週時点の持続的寛解の達成率、サリルマブ群28%、プラセボ群10% 2018年10月~2020年7月に合計118例が無作為化された(サリルマブ群60例、プラセボ群58例)。このうち治療を受けたのは117例で、サリルマブ群の1例が割り付けられた治療薬の投与を受けなかった。また、治療を完了したのは合計78例(サリルマブ群42例、プラセボ群36例)だった。治療中断理由で最も多かったのは、サリルマブ群は有害事象(7例)、プラセボ群は効果がみられない(9例)。ベースラインでの両群の患者特性は概して類似していた。年齢中央値は69歳、70%が女性であり、リウマチ性多発筋痛症と診断されてからの全期間中央値は300日であった。 52週時点での持続的寛解率は、サリルマブ群28%(60例中17例)、プラセボ群10%(58例中6例)だった(群間差:18ポイント、95%信頼区間:4~32、p=0.02)。 52週時点のグルココルチコイド累積投与量中央値は、プラセボ群2,044mgに対しサリルマブ群777mgと、有意に少なかった(p<0.001)。 プラセボ群と比較してサリルマブ群で頻度が高かった有害事象は、好中球減少症(15% vs.0%)、関節痛(15% vs.5%)、下痢(12% vs.2%)だった。治療関連の投与中止は、プラセボ群よりサリルマブ群でより多く観察された(12% vs.7%)。

1974.

仕事のストレスは男性の心疾患リスクを高める

 過酷なのにやりがいの感じられない仕事は、男性の心臓の健康に大きな打撃を与える可能性のあることが、6,400人以上を対象にした大規模研究で示唆された。仕事にストレスを感じている男性の心疾患発症リスクは、仕事への満足度がより高い同世代の男性の最大で2倍に達することが明らかになったという。CHU de Quebec-Universite Laval Research Center(カナダ)のMathilde Lavigne-Robichaud氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に9月19日掲載された。 この研究は、心疾患のない6,465人(男性3,118人、女性3,347人)のホワイトカラー(平均年齢45.3±6.7歳)を2000年から2018年まで追跡して、職場ストレイン(仕事の要求度は高いが裁量権や支援が不足している状態)や、努力報酬不均衡(effort-reward imbalance;ERI、努力が適切な報酬や昇進に結び付いていないと感じている状態)と心疾患発症との関連を検討したもの。職場ストレインとERIはそれぞれ信頼性と妥当性が示されている質問票により評価された。 中央値18.7年の追跡期間中に男性571人と女性265人に冠動脈疾患(CHD)が生じた。解析の結果、職場ストレインまたはERIのいずれかを感じている男性では、仕事のストレスに曝露していない(軽度の職場ストレインはあるが報酬は低くない)男性に比べて、CHDの発症リスクが49%(ハザード比1.49、95%信頼区間1.07〜2.09)、職場ストレインとERIの両方を感じている男性では103%(同2.03、1.38〜2.97)、有意に高かった。これらの結果は、教育レベルや婚姻状態、喫煙や飲酒の習慣、糖尿病や高血圧などの健康状態を考慮しても変わらなかった。これに対して、女性では、職場ストレインやERIとCHD発症との間に有意な関連は認められなかった。 研究グループは、これらの結果は、仕事のストレスが男性の心臓には打撃を与えるが、女性の心臓には影響を及ぼさないことを証明するものではないと話す。それでも、成人が1日の大半の時間を費やす職場でのストレスが心疾患の原因になり得る理由はあるという。その一つとしてLavigne-Robichaud氏は、慢性的なストレスが心血管系に直接的に影響を及ぼし得ることを指摘する。「職場ストレインとERIは、心拍数の増加、血圧の上昇、心血管の狭窄を含む身体的反応を引き起こす。これらが直接的に心臓に負荷をかけ、血流や心拍リズムに問題が生じ、最終的に心疾患の発症リスクが高まる」と説明する。 仕事のストレスが、それほど直接的でない方法で心臓に害を与えることもあるという。Lavigne-Robichaud氏は、「仕事でストレスを抱えていると、健全な食生活を送り、定期的に運動を行い、リラックスする時間を見つける能力が妨げられる可能性がある」と指摘し、「健康的なライフスタイルを送ることが困難な状況下では、ストレスが心血管系に及ぼす直接的な影響がいっそう顕著になる可能性がある」と付け加えている。同氏は、この研究結果は、職場は従業員の心臓の健康を促進することができ、また促進すべきであるとする、すでに山と積み上げられたエビデンスに加わるものだと述べている。 なお、本研究で、女性では仕事のストレスとCHDとの間に関連が認められなかった点についてLavigne-Robichaud氏は、「この研究での女性のCHD症例が男性の半分程度だったように、女性は、人生の後半に心疾患を発症する人が男性よりも多い。そのため、仕事のストレスと心疾患との間に明確な関連性を見出しにくくなっている可能性がある」と説明している。 Lavigne-Robichaud氏によると、米国心臓協会(AHA)などの団体は、すでに雇用主に対して、健康診断の実施や栄養価の高い食事選択肢の提供などを含む「包括的なウェルネスプログラム」を推奨しているとのことだ。「われわれの研究は、これらのプログラムに仕事のストレス軽減を目的とした介入を取り入れることが、心疾患の予防に役立つ可能性を示唆するものだ」と述べている。

1975.

体重維持には朝に運動するのがベスト

 スリムな体型を保つには、タイミングこそが全てかもしれない。日常的に早朝に中等度から高強度の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行う成人は、遅い時間帯にMVPAを行う成人に比べて太り過ぎや肥満になる可能性の低いことが、新たな研究で示された。米フランクリン・ピアス大学運動生理学分野のTongyu Ma氏らによるこの研究の詳細は、「Obesity」に9月4日掲載された。 Ma氏らはこの研究で、2003〜2004年と2005〜2006年の米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者から抽出した5,285人のデータを用いて、MVPAを行う時間帯(早朝、昼間、夕方)と肥満(BMI、腹囲)との関連を検討した。参加者は7日連続で、起きている時間帯に腰部加速度計を装着するよう指示されており、週末を1日以上含む4日間(1日の装着時間が10時間以上)のデータがそろった場合を有効データとして用いた。このデータを基に参加者の身体活動(PA)のパターンを「朝」(642人)、「昼」(2,456人)、「夕方」(2,187人)の3群に分類した。 その結果、運動パターンが「朝」の参加者では、「昼」と「夕方」の参加者と比べて、BMIと腹囲の値が低いことが明らかになった。調整済みの平均BMIは、「朝」の参加者で27.4、「昼」の参加者で28.4、「夕方」の参加者で28.2であり、腹囲は同順で、95.9cm、97.9cm、97.3cmであった。また、PAに関するガイドラインで推奨されている週に150分以上のMVPAを行っていた参加者における調整済みの平均BMIは、「朝」の参加者で25.9、「昼」の参加者で27.6、「夕方」の参加者で27.2であり、腹囲は同順で、91.5cm、95.8cm、95.0cmであった。 このような結果についてMa氏は、「定期的に運動を行っている場合、朝に運動を行っている人の方が昼や夕方に運動を行っている人よりも、BMIが2単位低く、腹囲が1.5インチ(約3.8cm)小さかった」と述べ、「朝のワークアウトは、体重管理において有望な手段である」と主張している。ただしMa氏は、この研究により朝の運動が体重と関連することが示されたに過ぎず、両者の因果関係が明らかになったわけではないことも強調している。 Ma氏はまた、予想外の結果として、運動パターンが「朝」の参加者は、3群の中で座位時間が最も長かったことに言及。この点について同氏は、朝に運動をする人は、ソファーで過ごす時間が長いとしても、昼間や夕方に運動する人の活動量をしのぐ、「しっかりとした朝のワークアウトセッション」を行っている可能性が高いとの見方を示している。さらに、運動パターンが「朝」の参加者は、食生活が全体的に健康的であり、運動パターンが「昼」や「夕方」の参加者よりも摂取カロリーが少なかったという。 では、朝の運動が体型維持に有利となる理由は何なのだろうか。Ma氏は、「一晩の絶食を経た後の早朝には、われわれの体は低エネルギー状態にある。そのため、脂肪を使って運動に必要なエネルギーを作り出すことが多くなる。おそらくはこれが、朝の運動が体重管理に適している理由なのだろう」と述べている。 米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、今回の結果についてはさらなる研究で検討する必要があるとしながらも、「結果に驚きはなかった」と話す。同氏は、「われわれは以前より、朝一番の運動がより効果的であるとして推奨してきた。現時点で得られたエビデンスは、朝の運動が代謝を高めるというベネフィットに焦点を当てているが、そのエビデンスの強さは、『朝に運動をしなければならない』と言い切れるほど強いものではない」と説明する。 Diekman氏は、自分の都合に合わせて運動を行うことを勧めており、「健康な体を維持するためには、PAを日課にする必要がある。これが、管理栄養士である私からの最も重要なアドバイスだ。週に150分以上のPAを、自分の毎日/毎週のルーチンに最も適した方法で行うように努力してみてほしい」と話している。

1976.

第184回 熟睡を促す音刺激で心機能が向上しうる

熟睡を促す音刺激で心機能が向上しうる生きていくのに睡眠は不可欠で、ぐっすりと眠ることは健康を保つのにとりわけ重要です。より深い眠りに落ちていることを示す脳の活動である徐波(slow wave)を音で増やすことで高齢者の記憶を改善しうることが先立つ研究で示されています1)。また、軽度認知障害(MCI)患者の睡眠中にピンクノイズ※というかすかな音を流したところ徐波が増え、44の単語対を覚える記憶検査成績が改善しました2)。※ピンクノイズ:周波数が高いほどよりもの静か(周波数が1オクターブ上がるごとに音圧が3デシベルずつ下がる)という特性がある音(擦れる木の葉、雨、滝、心拍の音など)。そのピンクノイズがどうやら心臓機能の改善効果も有するらしいことがスイスの連邦工科大学やチューリッヒ大学のチームによる新たな試験で示されました3)。試験に参加した健康な男性18人には睡眠研究所で間を置いて3泊してもらい、そのうちの2泊ではピンクノイズを流し、1泊ではそうしませんでした。寝ている間の被験者の脳の活動、血圧、心臓の活動が記録され、深い睡眠に至ったことを示す合図があった時点から10秒間のピンクノイズが10秒間の間を挟んで4時間繰り返しコンピューターから発せられました。その結果、ピンクノイズが発せられている間は徐波が増え、翌朝の心エコー検査で左心室の伸縮機能の向上が示唆されました。今回の試験の被験者は全員男性で、年齢は30~57歳でした。男性に限ったのは女性に比べてより均一だからです。被験者と同年齢層の女性は睡眠に大きな影響を及ぼす月経周期や閉経があり、今回のような取っ掛かりの試験ではせっかくの効果がそれらの影響で検出できない恐れがありました4)。今後の試験では女性を含めた検討が必要なことを研究者は承知しています。睡眠や心血管の調子の明らかな性差が判明しつつあり、そういう性差を考慮した治療の開始が重要視されるようになっています。ピンクノイズやそれに似た脳刺激手段で将来的には心血管疾患の治療を向上させることができるかもしれません。また、心血管分野の治療のみならず運動選手にとっても意義があると研究者は考えています。ピンクノイズのような徐波睡眠の亢進手技で心機能を改善し、きつい練習や競技の後の回復を早めてより好調にできる可能性があります。研究者らはさらに先を見据えており、ピンクノイズよりもっと強力な刺激で心血管系を上向かせる手段も目指しています。今回の試験の筆頭著者であるStephanie Huwiler氏は試験を指揮したCaroline Lustenberger氏らとともに睡眠刺激の事業EARDREAMを立ち上げています。上述したとおり徐波睡眠を底上げすることは認知機能障害患者の記憶改善効果があるかもしれず、EARDREAMはアルツハイマー病患者の早期診断や睡眠不調を回復させる睡眠亢進手段に取り組んでいます5)。また、アルツハイマー病のみならず今回の成果の臨床応用に向けた開発も目指しています4)。参考1)Papalambros NA, et al. Front Hum Neurosci. 2017;11:109.2)Papalambros NA, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2019;6:1191-1201.3)Huwiler S, et al. Eur Heart J. 2023 Oct 05. [Epub ahead of print]4)Increased deep sleep benefits your heart / ETH Zurich5)Startups developing tailored sleep interventions for Alzheimer disease, aquafarming using mycellium technology, regeneration through protein engineering, a vital patient data stream, and revolutionizing open source each win CHF 10,000 / Venture Kick

1977.

2cm以下の乳がん、センチネルリンパ節生検を省略可能か/JAMA Oncology

 センチネルリンパ節生検(SLNB)は早期乳がんの腋窩リンパ節転移を調べる標準的な方法だが、リンパ節検査のための腋窩手術は治療が目的ではないため、その必要性が問われる場合もある。今回、超音波検査でリンパ節転移の疑いのない腫瘍径2cm以下の乳がん患者における無作為化試験(SOUND試験)で、腋窩手術を受けなかった群の5年遠隔無病生存(DDFS)率がSLNBを受けた群に対して非劣性を示したことを、イタリア・Istituto di Ricovero e Cura a Carattere ScientificoのOreste Davide Gentilini氏らが報告した。JAMA Oncology誌オンライン版2023年9月21日号に掲載。センチネルリンパ節生検群の5年遠隔無病生存率は97.7%で非劣性 本試験は、イタリア、スイス、スペイン、チリで実施された前向き第III相無作為化非劣性試験である。2012年2月6日~2017年6月30日に、腫瘍径2cm以下かつ超音波検査で腋窩リンパ節転移の疑いのない1,463例の女性を登録し、センチネルリンパ節生検を受ける群(SLNB群)と腋窩手術を受けない群(腋窩手術なし群)に1対1に無作為に割り付けた。ITT解析対象は1,405例、主要評価項目は5年DDFS率であった。 超音波検査でリンパ節転移の疑いのない腫瘍径2cm以下の乳がん患者におけるセンチネルリンパ節生検の必要性を評価した主な結果は以下のとおり。・ITT解析に組み入れられた1,405例(年齢中央値:60歳)を、SLNB群708例、腋窩手術なし群697例に無作為化した。・腫瘍径の中央値は1.1cm(四分位範囲:0.8~1.5)で、1,234例(87.8%)がエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性であった。SLNB群では、97例(13.7%)が腋窩リンパ節転移陽性であった。・5年DDFS率は、SLNB群で97.7%、腋窩手術なし群で98.0%であった(log-rank p=0.67、ハザード比:0.84、90%信頼区間:0.45~1.54、非劣性のp=0.02)。・SLNB群では局所再発12例(1.7%)、遠隔転移13例(1.8%)、死亡21例(3.0%)、腋窩手術なし群では局所再発11例(1.6%)、遠隔転移14例(2.0%)、死亡18例(2.6%)だった。 著者らは「これらの結果は、腫瘍が小さく、超音波検査で腋窩リンパ節転移のない乳がん患者は、病理学的情報の欠如が術後治療計画に影響を及ぼさない限り、安全に腋窩手術を免れられることを示唆する」としている。

1978.

コロナ罹患後症状の患者、ワクチン接種で症状軽減か?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種は、COVID-19の重篤化を予防する。しかし、コロナ罹患後症状を有する患者に対するコロナワクチン接種が罹患後症状や免疫応答、ウイルスの残存に及ぼす影響は不明である。そこで、カナダ・Montreal Clinical Research InstituteのMaryam Nayyerabadi氏らの研究グループは、コロナ罹患後症状を有する患者を対象にコロナワクチンの効果を検討し、コロナワクチンは炎症性サイトカイン/ケモカインを減少させ、コロナ罹患後症状を軽減したことを明らかにした。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月15日号に掲載された。ワクチン接種はコロナ後遺症を軽減させる可能性 研究グループは、コロナ罹患後症状(世界保健機関[WHO]の定義※に基づく)を有する患者83例を対象とした前向きコホート研究を実施した。対象患者のコロナワクチン接種前後の罹患後症状数、罹患後症状を有する臓器数、心理的幸福度(WHO-5精神健康状態表[WHO-5]に基づく)を評価した。また、全身性炎症のバイオマーカーや血漿中のサイトカイン/ケモカイン量、血漿中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原量、SARS-CoV-2由来のタンパク質に対する抗体量なども評価した。本記事では、組み入れ時にコロナワクチン未接種であった39例を対象に、ワクチン接種前後に評価した縦断的解析の結果を示す。※新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないもの。 コロナ罹患後症状を有する患者を対象にワクチンの効果を検討した主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種前後のコロナ罹患後症状数(平均値±標準偏差[SD])は、ワクチン接種前が6.56±3.1であったのに対し、ワクチン接種後は3.92±4.02であり、有意に減少した(p<0.001)。また、罹患後症状を有する臓器数(平均値±SD)はワクチン接種前が3.19±1.04であったのに対し、ワクチン接種後は1.89±1.12であり、こちらも有意に減少した(p<0.001)。・WHO-5スコア(平均値±SD)は、ワクチン接種前が42.67±22.76であったのに対し、ワクチン接種後は56.15±22.83であり、心理的幸福度が有意に改善した(p<0.001)。・コロナワクチン接種後において、16種類のサイトカイン/ケモカイン量がワクチン接種前と比較して有意に減少した。・ワクチン接種前において、血漿中からSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質とヌクレオカプシド(N)タンパク質がそれぞれ17.9%(7/39例)、38.5%(15/39例)に検出されたが、ワクチン接種前後において、血漿中濃度に有意な変化はみられなかった。・ワクチン接種前において、Sタンパク質、Nタンパク質、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対するIgG抗体およびIgM抗体が検出された。ワクチン接種後において、Nタンパク質に対する血中のIgG抗体、IgM抗体の濃度が有意に減少したが、Sタンパク質、RBDに対する血中のIgG抗体の濃度は有意に増加した。 本研究結果について、著者らは「コロナ罹患後症状を有する患者は、コロナ罹患後症状に関連する炎症反応が亢進していることが示され、コロナワクチン接種は炎症反応を低下させることによってコロナ罹患後症状を軽減させる可能性が示された。また、コロナ罹患後症状を有する患者には、ワクチン接種とは関係なくウイルス産物が検出される患者が存在し、炎症の持続に関与している可能性がある」とまとめた。

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抗コリン負荷の増大が、心血管イベントのリスクと関連/BMJ

 急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者においては、抗コリン薬による抗コリン作用の総負荷(抗コリン負荷)が、最近増加した集団で急性心血管イベントのリスクが高く、負荷の増加の程度が大きいほどリスクがより高いことが、台湾・国立成功大学のWei-Ching Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年9月27日号に掲載された。心血管イベントで入院した高齢患者の症例-症例-時間-対照研究 本研究は、台湾の全国的な健康保険研究データベースを用いた症例-症例-時間-対照研究(case-case-time-control[CCTC]study)であり、2011~18年に急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者31万7,446例を対象とした(台湾・国家科学技術委員会などの助成を受けた)。 CCTCは、適応症による交絡および潜在的なprotopathic bias(因果の逆転)の克服を目指した研究デザインであり、2つの自己対照分析(症例クロスオーバー分析と、将来の症例からなる対照クロスオーバー分析)で構成される。急性心血管イベントには、心筋梗塞、脳卒中、不整脈、伝導障害、心血管死を含めた。 主要アウトカムは、抗コリン負荷(Anticholinergic Cognitive Burden Scaleによる個々の薬剤の抗コリン作用スコアの合計)とし、3つの段階(0点[抗コリン作用なし]、1[軽度抗コリン作用]~2点[高度抗コリン作用]、3点[高度抗コリン作用]以上)に分類した。 ハザード期(心血管イベント発生前の-1~-30日)の抗コリン負荷のレベルを、レファレンス期(-61~-180日)から無作為に選択した30日間(-61~-90日、-91~-120日、-121~-150日、-151~-180日の4つから1つを選択)と比較し、急性心血管イベントと抗コリン負荷の最近の増加との関連を評価した。感度分析でも主解析と同様の結果 クロスオーバー分析には24万8,579例を含めた。イベント発生の時点(指標日)での平均年齢は78.4(SD 0.01)歳、53.4%が男性だった。最も頻度の高い併存疾患は、高血圧症(62.2%)、糖尿病(32.3%)、脂質異常症(24.0%)であった。抗コリン作用を有する薬剤として最も多く処方されていたのは、抗ヒスタミン薬(68.9%)、胃腸鎮痙薬(40.9%)、利尿薬(33.8%)であった。 ハザード期とレファレンス期で抗コリン負荷のレベルが異なっていた患者では、レファレンス期よりもハザード期で、負荷レベルが高い患者が多かった。たとえば、抗コリン負荷がハザード期は1~2点、レファレンス期は0点の患者は1万7,603例であったのに対し、ハザード期は0点、レファレンス期は1~2点の患者は8,507例だった。 現状の抗コリン負荷が1~2点の場合の0点の場合と比較した(1~2点vs.0点)心血管イベント発生のオッズ比(OR)は、症例クロスオーバー分析では1.86(95%信頼区間[CI]:1.83~1.90)、対照クロスオーバー分析では1.35(95%CI:1.33~1.38)であり、CCTCのORは1.38(1.34~1.42)だった。 同様に、3点vs.0点のCCTCのORは2.03(95%CI:1.98~2.09)、3点vs.1~2点のCCTCのORは1.48(1.44~1.52)であり、現状の抗コリン負荷が大きいほど心血管イベントのリスクが高い傾向を認めた。 感度分析として、抗コリン負荷カテゴリーのカットオフ値の再定義をしたり、抗コリン負荷の測定に別のスケールを使用した評価を行ったが、一貫して主解析と同様の結果が得られた。 著者は、「これらの知見は、観察研究の結果を解釈する際には、protopathic biasを考慮する必要があることを強調するものである」としている。

1980.

デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高用量rAAV9遺伝子療法後の死亡/NEJM

 米国・イェール大学のAngela Lek氏らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の27歳の男性患者において、dSaCas9(Cas9ヌクレアーゼ活性を不活化した“死んだ[dead]”黄色ブドウ球菌Cas9)-VP64融合を含有する組み換えアデノ随伴ウイルス血清型9(rAAV9)による治療を行った。投与後、患者は軽度の心機能障害と心嚢液貯留を発症し、遺伝子導入治療後6日目に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と心停止を来し、その2日後に死亡した。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号で「短報」として報告された。5歳時に診断、18歳で自立歩行能力を失う 患者は5歳時にDMDと診断され、21年間にわたりdeflazacort 1.1mg/kg/日の投与を受けてきた。18歳時に自立歩行能力を失った。腕の機能が進行性に低下し、心肺機能障害が徐々に増強した。 2022年10月4日、患者はCRISPR-transactivator治療薬(CK8e.dSaCas9.VP64.U6.sgRNA)を含有するrAAV9ベクターの投与を受けた。その時点で、除脂肪筋肉量の割合が45%と低く、拘束性換気障害および軽度の左室収縮機能障害を伴う重度の全身性筋力低下を呈していた。その後、左室駆出率(LVEF)は維持されていたが、肺機能は経時的に低下した。治療を行わなければDMDの筋症状の悪化が予測され、代替療法がないことから、遺伝子治療の候補と判断した。自然免疫反応がARDSを引き起こした 導入遺伝子は、custom CRISPR-transactivator療法として皮質型ジストロフィンをアップレギュレートするように設計された。使用したrAAV9の用量は、体重1kg当たり1×1014ベクターゲノムと、高用量であった。予防的免疫療法として、リツキシマブ、グルココルチコイド、シロリムスの投与を行った。 ベクター投与後1日目に、患者は心室性期外収縮を発症し、引き続き血小板数が減少傾向を示し、BNPとN末端proBNPの値が上昇した。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の上昇は、DMD患者に見られるように、クレアチンキナーゼ値の増加と比例した。γ-グルタミルトランスフェラーゼ値は正常だった。 3~4日目には、呼吸性アシドーシスを伴う無症候性高炭酸ガス血症が発現した。5日目には、心機能が悪化し、LVEFは45~50%に低下した。トロポニンI値が上昇し、心エコー図検査でタンポナーデの生理的特徴を示す心嚢液貯留が認められたため、患者は心筋心膜炎と推定された。6日目には、急性呼吸困難を呈し、胸部X線所見でARDSと左室収縮機能不全(LVEF:45~50%)を認めた。 この間、緩和的な治療として、グルココルチコイドの増量、エクリズマブ(抗C5モノクローナル抗体)、トシリズマブ(抗IL-6受容体モノクローナル抗体)、anakinra(IL-1受容体拮抗薬)の投与を行った。 患者は6日目に心肺停止となり、体外式膜型人工肺による治療を受けたが、2日後の遺伝子治療から8日目に、多臓器不全と重篤な低酸素性虚血性神経障害により死亡した。死後の検査では、重度のびまん性肺胞障害が認められた。肝臓における導入遺伝子の発現はわずかであり、臓器におけるAAV9抗体やエフェクターT細胞反応性は認めなかった。 著者は、「これらの所見は、高用量のrAAV9遺伝子治療を受けた進行性DMD患者において、自然免疫反応がARDSを引き起こしたことを示している」としている。この研究は、米国・Cure Rare Diseaseの助成を受けて行われた。

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