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不安定プラーク、至適薬物療法+予防的PCI追加で予後改善/Lancet

 冠動脈に血流を阻害しない不安定プラークを有する患者において、予防的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の追加は至適薬物療法のみと比較し、高リスクの不安定プラークに起因する主要有害心血管イベントが減少したことを、韓国・蔚山大学のSeung-Jung Park氏らが、韓国、日本、台湾およびニュージーランドの計15施設で実施した医師主導の無作為化非盲検比較試験「PREVENT試験」の結果を報告した。著者は、「PREVENT試験は不安定プラークに対する局所治療の効果を示した最初の大規模臨床試験であり、今回の知見はPCIの適応を、血流を阻害しない高リスクの不安定プラークに拡大することを支持するものである」とまとめている。急性冠症候群や心臓死は不安定プラークの破裂および血栓症によって引き起こされることが多く、その多くは冠血流を阻害しない。不安定プラークに対するPCIによる予防的治療の安全性と心臓有害事象の減少に対する有効性は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年4月8日号掲載の報告。狭窄率>50%、FFR>0.80の不安定プラークを有する患者が対象 研究グループは、心臓カテーテル検査を受けた18歳以上の安定冠動脈疾患または急性冠症候群の患者のうち、造影上の狭窄率>50%、冠血流予備量比(FFR)>0.80の病変を有し不安定プラークが確認された患者を対象とした。Webシステム(置換ブロック法、ブロックサイズ4または6)により糖尿病の有無および非標的血管への同時PCIの有無で層別化し、PCI+至適薬物療法群(PCI併用群)または至適薬物療法単独群(薬物療法群)に1対1の割合で無作為に割り付け、最後の登録患者が無作為化後2年に達するまで毎年追跡調査を行った。 不安定プラークは、(1)最小内腔面積<4.0mm2、(2)プラーク負荷>70%(血管内超音波検査)、(3)脂質に富むプラーク(近赤外分光法、4mm以内の最大脂質コア負荷指数が>315)、(4)TCFA(thin-cap fibroatheroma)(高周波血管内超音波検査または光干渉断層法)の4つの特徴のうち2つ以上を満たすプラークと定義された。 主要アウトカムは、2年間の心臓死・標的血管の心筋梗塞・虚血による標的血管血行再建術・不安定狭心症または進行性狭心症による入院の複合とした。ITT集団で評価し、初発までの期間はKaplan-Meier法で算出し、log-rank検定で比較した。PCI併用群で薬物療法群より2年複合イベントが有意に減少 2015年9月23日~2021年9月29日に、5,627例がスクリーニングされ、適格基準を満たした1,606例がPCI併用群(803例)または薬物療法群(803例)に無作為化された。1,177例(73%)が男性、429例(27%)が女性で、1,556例(97%)が2年間の追跡を完了した(PCI併用群780例、薬物療法群776例)。 主要アウトカムの2年複合イベントは、PCI併用群で3例(0.4%)、薬物療法群で27例(3.4%)に発生し、絶対群間差は-3.0%(95%信頼区間[CI]:-4.4~-1.8、p=0.0003)であった。予防的PCIの効果は、主要アウトカムの各要素において一貫していた。 重篤な臨床的有害事象は、PCI併用群と薬物療法群で差はなかった。2年以内の死亡は4例(0.5%)vs.10例(1.3%)であり(絶対群間差:-0.8%、95%CI:-1.7~0.2)、心筋梗塞は9例(1.1%)vs.13例(1.7%)であった(-0.5%、95%CI:-1.7~0.6)。

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難治性狭心症、冠静脈洞へのデバイス留置で症状改善/Lancet

 冠静脈洞狭窄デバイス(coronary-sinus reducer:CSR)は、狭心症患者の心筋血流を改善しなかったが、狭心症エピソード数を減少した。英国・Imperial College Healthcare NHS TrustのMichael J. Foley氏らが、英国の6施設で実施した医師主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ORBITA-COSMIC試験」の結果を報告した。CSRは、心筋血流を改善することにより、安定冠動脈疾患患者の狭心症を軽減することが示唆されていた。著者は、「今回の結果は、CSRが安定冠動脈疾患患者に対するさらなる抗狭心症治療の選択肢となりうるエビデンスを提供するものである」としている。Lancet誌2024年4月20日号掲載の報告。処置後6ヵ月間追跡、心筋血流と狭心症エピソード数を比較 研究グループは、抗狭心症治療(薬物療法、経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術など)のさらなる選択肢がない、18歳以上の狭心症、心外膜冠動脈疾患、虚血を有する患者を登録し、心臓MRによる定量的な心筋灌流マッピング(アデノシン負荷時および安静時)、症状およびQOLに関する質問(シアトル狭心症質問票、EQ-5D-5Lなど)、トレッドミル運動負荷試験を行った。その後、2週間の症状評価期にスマートフォンの専用アプリ(ORBITA-app)を用いた症状報告を完遂した患者を、CSR群と対照群に1対1の割合に無作為に割り付け追跡評価した。 二重盲検下で、CSR群ではCSR(商品名:Neovasc Reducer、Shockwave Medical)の植込み術を行い、対照群では患者に少なくとも15分間(CSRの植込みに要するおおよその時間)心臓カテーテルの検査台の上で鎮静状態を保持させた。処置後は、6ヵ月間の二重盲検下追跡調査期に、ORBITA-appで患者に日々の症状を報告してもらった。 主要アウトカムは、登録時にアデノシン負荷灌流心臓MRスキャンで虚血と判定されたセグメントにおける心筋血流、症状の主要アウトカムは1日の狭心症エピソード数とし、ITT解析を行った。CSR群で狭心症エピソード数が減少 2021年5月26日~2023年6月28日に447例がスクリーニングされ、61例が登録された。このうち51例(男性44例[86%]、女性7例[14%])がCSR群(25例)およびプラセボ群(26例)に無作為化され、CSR群の1例(無作為化手順の途中でデバイス塞栓事象が発現し適切な管理のため盲検を解除)を除く50例がITT解析に組み入れられた。 登録時の虚血セグメントは、画像化された800セグメント中454セグメント(57%)で、虚血セグメントにおける負荷心筋血流量の中央値は1.08mL/分/g(四分位範囲[IQR]:0.77~1.41)であった。 虚血セグメントにおいて、対照群と比較しCSR群で心筋血流量の改善は示されなかった(群間差:0.06mL/分/g、95%信用区間[CrI]:-0.09~0.20]、有益性の確率:78.8%)。一方、報告された1日の狭心症エピソード数は、対照群と比較してCSR群で減少した(オッズ比:1.40、95%CrI:1.08~1.83、有益性の確率:99.4%)。 安全性については、CSR群でデバイス塞栓イベントが2件発生し、両群とも急性冠症候群イベントおよび死亡の発生は報告されなかった。

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若さを感じたければ良い睡眠を

 良好な睡眠を取った朝は若々しい気分となる半面、質が低い睡眠から目覚めた朝は、何歳も歳を取ったように感じてしまうことが明らかになった。ストックホルム大学(スウェーデン)のLeonie Balter氏とJohn Axelsson氏の研究によるもので、詳細は「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に3月27日掲載された。論文の筆頭著者であるBalter氏は、「驚くことに、覚醒の感覚が最も強い状態と眠気が最も強い状態とでは、自分の年齢に対する評価に10年もの差が生じる」と話している。 Balter氏らの研究は二つのパートから成り、一つ目は横断研究として実施された。18~70歳の429人(女性66%)を対象に、自分の実際の年齢と主観的な年齢、睡眠時間、および眠気の程度〔カロリンスカ眠気尺度(KSS)〕を把握した。その結果、過去30日間で睡眠不足だった日が1日多いごとに、主観的な年齢が平均0.23年(約3カ月)高くなるという関連が認められた。睡眠不足の日数がゼロだった人は、主観的年齢が実際の年齢よりも5.81歳若かった。 KSSは、覚醒の感覚が最も強い状態を1点、眠気が最も強い状態を9点とする評価尺度だが、この点数が1点高いごとに主観的年齢が1.22歳高くなるという関連も見つかった。睡眠不足の日数と主観的年齢の関連はKSSスコアで調整後にも有意であったことから、睡眠不足は眠気を介する経路とは別の経路でも主観的年齢を高めるように働くと考えられた。なお、研究者らによると、これまでの研究で、実際の年齢よりも若いと感じている人は健康寿命が長いことが示されているという。 これらの結果を基に行われた二つ目の研究は、クロスオーバー研究として実施された。参加者は18~46歳の186人(女性55%)で、2晩連続で睡眠時間を1日4時間に制限する条件と、やはり2晩連続で睡眠時間を1日9時間とする条件を設定。睡眠時間4時間では9時間に比べて、主観的年齢が4.44歳高齢となることが示された。また、KSSスコアは3.4点高くなっていた。KSSスコアと主観的年齢との関連は一つ目の研究の結果と同様に、1点高いごとに1.23歳高くなるという関連があった。ただし、二つ目の研究では、睡眠時間と主観的年齢との関係が、KSSスコアで調整後には非有意となった。 二つの研究から、KSSスコアが1から9になると主観的年齢が10歳高くなることが示された。これらの研究結果を基に著者らは、「睡眠不足であることと眠気を感じることが主観的年齢に大きな影響を及ぼすようだ。年齢を重ねても若さを感じたいのなら、おそらく、睡眠を確保することが重要と言えるだろう」と述べている。またBalter氏は、「若々しい気持ちを維持するには、良好な睡眠を取ることが重要。それによって、より活動的なライフスタイルとなり、健康を増進するための行動につながる可能性がある。活動的になろうとする動機付けには、まず、自分の若さを感じることが大切だ」と付け加えている。

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膵体積とOGTTで1型糖尿病への進行を予測可能

 糖尿病関連自己抗体陽性の状態から1型糖尿病への進行を、MRIで評価した膵体積と経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)による糖代謝関連指標とによって予測できることが分かった。米テキサス大学オースティン校のJohn Virostko氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に12月27日掲載された。  これまでの研究で、1型糖尿病患者は膵体積が小さいことが明らかになっている。しかし、1型糖尿病発症前段階において、膵体積が小さいことが病態進行の予測因子であるか否かは不明。これを背景としてVirostko氏らは、1型糖尿病進行予防に関する国際共同研究(TrialNet)参加者を対象とする検討を行った。この国際共同研究には、1型糖尿病患者の血縁者で、糖尿病関連自己抗体を有するハイリスク者が参加している。進行ステージは、自己抗体が出現した状態の「ステージ1」、血糖異常が生じ始めた状態の「ステージ2」、および臨床的に1型糖尿病と診断される「ステージ3」という3段階に分類される。 今の検討の解析対象は、複数の自己抗体が陽性の65人。ステージ3への進行予測因子として、MRIで計測した膵体積を体重で除した値(pancreas volume index;PVI)、および、OGTTによる血糖値とC-ペプチドから算出するIndex60とDPTRS(diabetes prevention trial-type 1 risk score)という指標を設定。それら単独、または組み合わせた場合の予測能を評価した。 65人中11人が観察期間中にステージ3へ進行した。進行群と非進行群を比較すると、性別の分布、人種、BMI、MRI施行回数に有意差はなく、観察期間中央値は前者が18カ月、後者が7カ月で群間差は非有意であり(P=0.14)、平均年齢も同順に15.0±8.42歳、21.2±11.9歳で有意水準未満だった(P=0.054)。保有する自己抗体数は、前者が4.27±0.9、後者が2.72±1.5で前者の方が有意に多かった(P<0.001)。 一方、PVI、Index60、DPTRSという3種類の進行予測因子は全て、ベースライン時点において有意な群間差が認められた。このうちPVIに関しては、ベースライン時点で0.88mL/kgをカットオフ値として二分した場合に、ステージ3への進行に有意なリスク差が観察された(P=0.013)。なお、PVIはIndex60(R2=0.005、P=0.63)やDPTRS(R2=0.01、P=0.48)とは有意な関連がなかった。それに対してOGTTに基づき算出されるIndex60とDPTRSは、正相関していた(R2=0.60、P<0.0001)。 ステージ3への進行の予測能(AUC)は、PVIが0.76、Index60は0.79、DPTRSも0.79であり、PVIとDPTRSを組み合わせると0.91まで上昇した。これらの結果から、PVIとOGTTに基づく糖代謝関連指標は、ステージ3への進行のリスク評価に関して、それぞれ異なる要素を反映していると見られ、よってそれらを組み合わせることでより優れた予測能が得られると考えられた。著者らは、「膵臓の画像所見は、1型糖尿病の予防を目的とした臨床試験において評価すべき、新たな指標となり得るのではないか」と述べている。

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手掌と足底の皮疹の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第2回

画像を拡大するTake home message発熱と皮疹の鑑別診断は多岐にわたるが、手掌(palms)と足底(soles)の皮疹の有無で鑑別診断をある程度絞り込むことができる可能性がある。手掌と足底の皮疹の鑑別疾患は「MR. SMITH」で覚えよう。発熱と皮疹の鑑別疾患は感染性・非感染性と多岐にわたります。手掌と足底に皮疹を来した場合、鑑別診断をある程度絞り込むことができる可能性があります。それでは、一体どのような鑑別疾患が挙げられるのでしょうか。ここでは、なかでも感染性に焦点を当てて解説していきます。語呂合わせとして「MR. SMITH」と覚えると、手掌と足底の皮疹の感染性の鑑別疾患を網羅的に挙げることができます。MMeningococcemia (Neisseria meningitidis) 髄膜炎菌による菌血症RRickettsia リケッチア感染症(日本紅斑熱など)S(Secondary) Syphilis 二期梅毒MMeasles, Mpox 麻疹、M痘IInfective endocarditis 感染性心内膜炎TToxic shock syndrome, Travelers (Dengue/Chikungunya/Zika) トキシックショック症候群、デング熱、チクングニヤ熱、ジカ熱などの蚊媒介感染症HHand-Foot-Mouth syndrome (Coxsackievirus), HIV, HSV (erythema multiforme) 手足口病、急性HIV感染や単純ヘルペス感染による多形滲出性紅斑皆さんも積極的に、手掌と足底に皮疹を呈していないかどうかを確認してみましょう。1)Hughes KL, et al. Am Fam Physician. 2018;97:815-817.2)Giorgiutti S, et al. N Engl J Med. 2019;381:1762.3)McKinnon HD Jr, et al. Am Fam Physician. 2000;62:804-816.4)Staples JE, et al. Clin Infect Dis. 2009;49:942-948.5)Saguil A, et al. Am Fam Physician. 2023;108:78-83.6)Volpicelli FM, et al. N Engl J Med. 2023;389:1033-1039.7)Long B, et al. Am J Emerg Med. 2023;65:172-178.8)He A, et al. Am J Clin Dermatol. 2017;18:231-236.

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BPSDが死亡リスクに及ぼす影響~日本人コホート研究

 認知症の行動・心理症状(BPSD)は、認知症の初期段階から頻繁にみられる症状であり、軽度認知障害(MCI)でも出現することが少なくない。しかし、BPSDが予後にどのような影響を及ぼすかは不明である。国立長寿医療研究センターの野口 泰司氏らは、認知障害を有する人におけるBPSDと死亡率との関連を踏査した。Journal of epidemiology誌オンライン版2024年3月23日号の報告。 2010~18年に国立長寿医療研究センターを受診した、初回外来患者を登録したメモリークリニックベースのコホート研究であるNCGG-STTORIES試験に参加した、MCIまたは認知症と診断された男性1,065例(平均年齢:77.1歳)および女性1,681例(同:78.6歳)を対象に、縦断的研究を実施した。死亡関連の情報は、参加者または近親者から返送された郵送調査より収集し、最長8年間フォローアップ調査を行った。BPSDは、ベースライン時にDementia Behavior Disturbance Scale(DBD)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に死亡した患者は、男性で229例(28.1%)、女性で254例(15.1%)であった。・Cox比例ハザード回帰分析では、DBDスコアが高いほど、男性で死亡リスク増加との有意な関連が認められたが(最適四分位スコア群と比較した最高四分位スコア群のハザード比:1.59、95%信頼区間[CI]:1.11~2.29)、女性では認められなかった(同:1.06、95%CI:0.66~1.70)。・DBDの項目のうち死亡リスクの高さと関連していた項目は、日常生活に対する興味の欠如、日中の過度な眠気、治療拒否であった。 著者らは、「認知機能低下が認められる男性において、BPSDと予後不良との潜在的な関連性が示唆された」としている。

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人間の脳は世代を追うごとに大きくなっている

 人間の脳は、世代を重ねるごとに大きくなっていることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、脳のサイズが大きくなることで脳の予備能が高まり、それが認知症の発症リスクの低下に寄与している可能性があると考察している。米カリフォルニア大学デービス校アルツハイマー病研究センター所長のCharles DeCarli氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に3月25日掲載された。 この研究では、1925年から1968年の間に出生したフラミンガム心臓研究参加者3,226人(女性53%)の脳MRIのデータを用いて、出生年代により頭蓋骨および脳の容積に差が認められるのか否かを検討した。これらの参加者の中に認知症患者や脳卒中の既往歴のある人は含まれていなかった。参加者の脳MRIは、1999年3月18日から2019年11月15日の間に実施され、実施時の対象者の平均年齢は57.4歳(範囲45〜74歳)だった。 その結果、脳のサイズは年代を追うごとに徐々に大きくなっていることが明らかになった。例えば、1930年代生まれの人に比べて1970年代生まれの人では、頭蓋内容積が6.6%(1,234mL対1,321mL)、白質の体積が7.7%(441.9mL対476.3mL)、海馬の体積が5.7%(6.51mL対6.89mL)、脳表面積が14.9%(1,933cm2対2,222cm2)大きかった。 こうした結果を受けてDeCarli氏は、「生まれた年代は、脳の大きさと長期的な脳の健康に影響を与えるようだ」と話している。 研究グループは、これらの結果は米国でのアルツハイマー病発症の傾向と一致する可能性があるとの見方を示している。現在、米国のアルツハイマー病患者の数は約700万人に上り、その数は2040年までに1120万人を超えると予想されている。一方で、全人口に占めるアルツハイマー病患者の割合は減少傾向にあり、認知症の発症率は、1970年代から10年ごとに約20%減少していることが過去の研究で示されている。こうしたことを踏まえて研究グループは、「アルツハイマー病の発症率が低下している理由の一つには、脳のサイズが大きくなっていることが関係しているのかもしれない」との見方を示している。 DeCarli氏は、「今回の研究で観察されたような、より大きな脳の構造は、脳の発達および脳の健康状態の向上を反映している可能性がある。脳のサイズが大きいということは、脳の予備能が大きいということであり、アルツハイマー病やそれに関連する認知症のような加齢に伴う脳疾患の晩年における影響を緩和する可能性があるからだ」と話している。

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認知症の修正可能な3大リスク因子

 認知症のリスク因子の中で修正可能なものとしては、糖尿病、大気汚染、飲酒という三つの因子の影響が特に大きいとする研究結果が報告された。英オックスフォード大学のGwenaelle Douaud氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に3月27日掲載された。 Douaud氏らは脳画像データを用いて行った以前の研究で、アルツハイマー病やパーキンソン病、および加齢変化などに対して特に脆弱な神経ネットワークを特定している。このネットワークは、脳のほかの部分よりも遅れて思春期に発達し始め、高齢期になると変性が加速するという。今回の研究では、この脆弱な神経ネットワークの変性に関与している因子の特定を試みた。 研究には、英国で行われている一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者のうち、脳画像データやさまざまなライフスタイル関連データがそろっている3万9,676人(平均年齢64±7歳)のデータを利用。認知症リスクに影響を及ぼし得る161の因子と、脆弱な神経ネットワークの変性との関連を検討した。161の因子のうち、遺伝的因子などの修正不能のもの以外は、食事、飲酒、喫煙、身体活動、睡眠、教育、社交性、大気汚染、体重、血圧、糖尿病、コレステロール、聴覚、炎症、抑うつという15種類に分類した。 年齢と性別の影響を調整後の解析により、脆弱な神経ネットワークの変性への影響が強い修正可能な因子として、医師により診断されている糖尿病(r=-0.054、P=1.13E-24)、2005年時点の居住環境の二酸化窒素濃度(r=-0.049、P=5.39E-20)、アルコール摂取頻度(r=-0.045、P=3.81E-17)という三つの因子が特定された。また、遺伝的背景は多かれ少なかれ、脆弱な神経ネットワークの変性に影響を与えていることも分かった。 Douaud氏は、「われわれは既に特定の脳領域が加齢変化の初期に変性することをつかんでいたが、今回の研究により、その領域は糖尿病と交通関連の大気汚染、および飲酒に対しても脆弱であることが示された。また、その領域の変性は心血管死、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病のリスクにも関連があるようだ」と述べている。 論文共著者の1人である米テキサス大学リオグランデバレー校のAnderson Winkler氏は、「今回の研究は、脳の『弱点』とも言える脆弱な神経ネットワークに生じる変性のリスク因子について、その寄与の程度を定量的かつ網羅的に評価し得たことに意義がある」としている。

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cirrhosis(肝硬変)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第4回

言葉の由来肝硬変は英語で“cirrhosis”で、「サロースィス」というような発音になります。語源は、ギリシャ語で「褐色がかった黄色」を意味する“kirrhos”と、「状況」を表す“-osis”という接尾辞を組み合わせた単語です。“cirrhosis”という単語は、フランスのルネ・ラエンネック医師が1819年に発表した論文中で初めて使用されました。病気の肝臓が「褐色がかった黄色」に見えることから、この名前が付けられたとされています。それ以前から肝硬変の病態は認識されており、英国の病理学者たちはその100年ほど前からほかの病名を使用していましたが、かの有名なウィリアム・オスラー医師が1900年代に出版した教科書、“The Principles and Practice of Medicine”で“cirrhosis”の呼称を用いたことから、広く使われるようになったとされています。ちなみにこのラエンネック医師は、皆さんが毎日使っている「あるもの」を発明したことで有名です。それはなんと、聴診器です。当時は患者の身体に直接耳を押し当てる「直接聴診法」が一般的でしたが、ラエンネック医師は子供たちが長い中空の棒を使って遊ぶ様子からインスピレーションを得て、木製の中空の円筒を作成しました。それを患者の胸に押し当てて聴診する「間接聴診法」を開発したのです。彼はその円筒を“stethoscope”(聴診器)と名付け、現代の聴診器の先駆けとなりました。この聴診器の発明に関する論文を1819年に発表したのですが、その論文の中の脚注で使用したのが“cirrhosis”という病名だったのです。興味深い歴史ですね。併せて覚えよう! 周辺単語黄疸Jaundice腹水Ascites腹水穿刺Paracentesis低アルブミン血症Hypoalbuminemia女性化乳房Gynecomastiaこの病気、英語で説明できますか?Cirrhosis is a condition in which a liver is scarred and permanently damaged. Scar tissue replaces healthy liver tissue and prevents a liver from functioning normally.講師紹介

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うつ病の第2選択治療、機械学習で最適化できるか

 標準的な第1選択治療である抗うつ薬単剤療法で寛解を達成する患者は、うつ病患者の3分の1未満である。適切な第2選択治療を決定するためのプロセスは、多くの場合、臨床的直観に基づいており、長期にわたる試行錯誤を伴い、患者に多大な負担を与え、最適な治療機会の提供遅延につながる。この問題に対処するため、米国・マサチューセッツ総合病院のJoshua Curtiss氏らは、第2選択治療に応じた寛解の予測精度向上を目指し、アンサンブル機械学習アプローチを用いた検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2024年3月27日号の報告。 データは、STAR*Dデータセットのレベル2ステージより抽出した。本データには、第1選択の抗うつ薬治療で寛解を達成できなかった患者に対し7つの異なる第2選択治療のいずれかにランダムに割り付けられた患者1,439例が含まれた。いくつかの個別のアルゴリズムで構成されるアンサンブル機械学習モデルは、臨床指標や人口統計学的指標を含む155の予測因子についてネストされた交差検証を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・アンサンブル機械学習アルゴリズムは、7つの第2選択治療全体で寛解を予測する際、分類パフォーマンスの違いを示した。・予測因子のフルセットでは、第2選択治療タイプに応じて、AUC値は0.51~0.82の範囲であった。・寛解の予測は、認知行動療法で最も成功率が高く(AUC:0.82)、他の薬剤および併用療法が最も低かった(AUC:0.51~0.66)。 著者らは、「アンサンブル機械学習は、うつ病の第2選択治療の効果を予測する可能性がある。本研究では、予測性能は治療タイプにより異なり、薬物療法よりも行動療法のほうが寛解の予測精度が高かった。今後、第2選択治療による治療反応をより正確に予測するためにも、より有益な予測モダリティの検討が求められる」としている。

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若年乳がんサバイバーにおける2次原発性乳がんのリスク因子/JAMA Oncol

 40歳以下の原発性乳がんの女性は、それ以降に発症した女性よりも2次原発性乳がんのリスクが高いことが、過去のデータから示唆されている。今回、米国・Harvard T. H. Chan School of Public HealthのKristen D. Brantley氏らが、片側乳房切除術または乳房温存術を受けた40歳以下の乳がん患者を対象に検討したところ、生殖細胞系列遺伝子に病的変異がない女性では2次原発性乳がんの10年発症リスクが約2%であったのに対し、病的変異がある女性では約9%と高かったことが示された。JAMA Oncology誌オンライン版2024年4月11日号に掲載。 前向きコホート研究のYoung Women's Breast Cancer Studyには、2006年8月~2015年6月にStage0~III乳がんと診断された40歳以下の女性1,297例が登録された。そのうち、片側乳房切除術または乳房温存術を受けた685例(初回診断時の平均年齢:36歳)について、2次原発性乳がんの累積発症率とそのリスク因子を検討した。人口統計学的データ、遺伝子検査データ、治療データ、転帰データは、患者調査および診療記録から収集した。主要評価項目は 2次原発性乳がんの5年および10年累積発症率だった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.0年(四分位範囲:7.4~12.1)で17例(2.5%)が2次原発性乳がんを発症した。うち2例は乳房温存術後に同側乳房で発症した。・原発性乳がんの診断から2次原発性乳がん発症までの期間の中央値は4.2年(四分位範囲:3.3~5.6)であった。・遺伝子検査を受けた577例において、2次原発性乳がんの10年発症リスクは、生殖細胞系列遺伝子に病的変異のない女性では2.2%、病的変異がある女性では8.9%であった。・多変量解析では、2次原発性乳がん発症リスクは病的変異がある患者はない患者に比べて高く(部分分布ハザード比[sHR]:5.27、95%信頼区間[CI]:1.43~19.43)、初発乳がんが非浸潤性乳がんの場合は浸潤性乳がんに比べて高かった(sHR:5.61、95%CI:1.52~20.70)。 本研究の結果、生殖細胞系列遺伝子の病的変異のない若年乳がん患者は、診断後最初の10年間に2次原発性乳がんの発症リスクが低いことが示唆された。著者らは「若年乳がん患者において、生殖細胞系列遺伝子検査で2次原発性乳がん発症リスクが予測され、治療の意思決定やフォローアップケアに役立てるために重要であることを示している」としている。

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手術低~中等度リスク重症大動脈弁狭窄症、TAVI vs.SAVRの1年成績/NEJM

 手術リスクが低~中等度の症候性重症大動脈弁狭窄症患者において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は外科的大動脈弁置換術(SAVR)に対して、1年時の全死因死亡または脳卒中の複合アウトカムに関して非劣性であることが示された。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのStefan Blankenberg氏らが、同国の38施設で実施した医師主導の無作為化非劣性試験「DEDICATE-DZHK6試験」の結果を報告した。TAVIとSAVRの両方が適応となる手術リスクが低い症候性重症大動脈弁狭窄症患者では、日常診療における適切な治療戦略に関するデータが不足していた。NEJM誌オンライン版2024年4月8日号掲載の報告。1,414例を無作為化、1年時の死亡・致死的/非致死的脳卒中の複合を比較 研究グループは、65歳以上の症候性重症大動脈弁狭窄症で、各施設の学際的なハートチームの臨床評価に基づく手術リスクが低~中等度、かつTAVIまたはSAVRの両方に適格であると判断された患者を、TAVI群またはSAVR群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 TAVIでは経大腿動脈アクセスが推奨されたが、代替アクセスも可能であった。また、SAVRでは、術者の裁量で外科的アクセス(胸骨切開または低侵襲アプローチ)が選択された。 主要アウトカムは、1年時の全死因死亡、致死的または非致死的脳卒中の複合とし、ITT解析を行った。 2017年5月~2022年9月に計1,414例が無作為化された(TAVI群701例、SAVR群713例)。患者の平均(±SD)年齢は74±4歳で、男性が790例(57%)、米国胸部外科医学会予測死亡リスク(STS-PROM)スコア中央値は1.8%(外科的低リスク)であった。1年時の主要アウトカム、TAVIはSAVRに対して非劣性 主要アウトカムである1年時の複合イベントの発生率(Kaplan-Meier推定値)は、TAVI群5.4%、SAVR群10.0%であり、死亡または脳卒中のハザード比(HR)は0.53(95%信頼区間[CI]:0.35~0.79、非劣性のp<0.001)であった。 副次アウトカムについては、全死因死亡の発生率がTAVI群2.6%、SAVR群6.2%(HR:0.43、95%CI:0.24~0.73)、脳卒中の発生率がそれぞれ2.9%、4.7%(0.61、0.35~1.06)であった。 治療直後処置合併症は、TAVI群で1.5%、SAVR群で1.0%にみられた。大出血または生命を脅かす出血の発生率はそれぞれ4.3%、17.2%であった(HR:0.24、95%CI:0.16~0.35)。

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ChatGPTは医師の10倍の速さで事務作業をこなす

 医師の事務作業負担は、診察する患者の数を増やす上で妨げとなっているが、人工知能(AI)プログラムのChatGPT-4(以下、ChatGPT)を活用することで、その負担を効果的に軽減できる可能性が新たな研究で示唆された。ChatGPTは医師の10倍の速さで患者の退院時報告書を作成し、両者の作成した報告書の記述内容の質は専門家パネルにより同等と判断されたという。ウプサラ大学病院(スウェーデン)の整形外科医であるCyrus Broden氏らによるこの研究結果は、「ActaOrthopaedica」に3月21日掲載された。 この研究では、実際の症例に近い架空の整形外科症例の診療録を基に、整形外科医(若手の整形外科医と経験やスキルが高度な整形外科レジデント)とChatGPTにそれぞれの症例の退院時報告書を作成させ、その内容の質と効率性を15人の専門家パネルに評価してもらった。 その結果、整形外科医が作成した退院時報告書とChatGPTが作成した退院時報告書は、質の上では同等であると評価された。しかし、ChatGPTは整形外科医の10倍のスピードで報告書を作成していた。また、報告書の中のハルシネーション(事実とは異なる情報)の数は、ChatGPTが作成した報告書の中で4つ、整形外科医が作成した報告書の中では6つ見受けられた。 Broden氏らは、「これらの結果は、人間の整形外科医とChatGPTが作る退院時報告書は質の上では同等であるが、ChatGPTは人間の10倍の速さで書類を作成できることを明示するものだ」と話している。 研究グループは今後、1,000人の本物の患者の医療記録を用いたより大規模な研究で、医師の事務作業負担をAIが軽減できるかを検証する予定である。Broden氏は、「これは、多くの協力者を巻き込む、興味深く、多大なリソースを必要とするプロジェクトになるだろう。われわれはすでに、研究開始に必要な全てのデータ管理と機密保持の要件を満たすために精力的に取り組んでいるところだ」と話している。 Broden氏は、「事務作業は医師にとって悩みの種であり、患者を診る時間を奪い、医師のストレスレベルを高める原因となっている」と指摘する。そして、「何年もの間、医療の効率化をいかに図るかが議論の的となってきたが、生成AIとモデリング言語の進歩のおかげで、医療従事者の管理負担が軽減される可能性が芽生えた。これにより、医師は患者により多くの時間を割くことができるようになるだろう」と話している。

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日本人の遅発性ジスキネジアに対するバルベナジンの有効性と安全性

 アジア人精神疾患患者における遅発性ジスキネジア(TD)治療に対するバルベナジンの有効性および安全性が、患者の基礎精神疾患により異なるかを調査するため、田辺三菱製薬のMieko Nagano氏らは、多施設共同第II/III相ランダム化二重盲検試験の事後分析を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2024年3・4月号の報告。 多施設共同第II/III相ランダム化二重盲検試験であるJ-KINECT試験のデータを分析した。J-KINECT試験は、6週間のプラセボ対照期間とその後の42週間の延長試験で構成されており、日本人TD患者に対しバルベナジン40mgまたは80mgを1日1回投与した。統合失調症/統合失調感情障害患者(SCHZ群)と双極性障害/うつ病患者(MOOD群)において、異常不随意運動評価尺度(AIMS)合計スコアとTDの臨床全般改善度(CGI-TD)スコアのベースラインからの変化、および治療中に発生した有害事象の発生率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・プラセボ対照期間の参加患者256例中211例が長期延長試験を継続した。・6週間のAIMS合計スコアのベースラインからの平均変化は、基礎精神疾患とは関係なく、いずれの用量においてもプラセボと比較し有効であった。【SCHZ群】40mg:-1.8(95%信頼区間[CI]:-3.2~-0.5)、80mg:-3.3(95%CI:-4.7~-1.9)【MOOD群】40mg:-2.4(95%CI:-3.9~-0.9)、80mg:-3.5(95%CI:-5.1~-1.9)・これらの結果は48週まで維持されており、CGI-TDスコアの改善においても同様であった。・治療中に発生した重篤または致死的な有害事象の発生率は、基礎精神疾患による顕著な差が認められなかった。統合失調症やうつ病が悪化する割合は、基礎精神疾患の進行に起因すると考えられる。 著者らは「TDに対する長期バルベナジン治療の有効性および安全性は、基礎精神疾患によって違いが認められなかった」と報告した。

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セマグルチド、肥満関連の心不全・2型糖尿病に有効/NEJM

 肥満に関連した左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)と2型糖尿病を有する患者に対し、セマグルチドの週1回投与はプラセボ投与と比較し、1年時点で心不全関連の症状と身体的制限の軽減、および体重減少が大きかった。米国・Saint Luke's Mid America Heart InstituteのMikhail N. Kosiborod氏らSTEP-HFpEF DM Trial Committees and Investigatorsが、616例を対象とした無作為化試験の結果を報告した。肥満症と2型糖尿病は、HFpEF患者では一般的にみられ、症状の負荷が大きいことが特徴であるが、2型糖尿病を有する肥満に関連したHFpEFを標的とする治療法は、これまで承認されていない。NEJM誌2024年4月18日号掲載の報告。KCCQ-CSSと体重の変化を比較 研究グループは、BMI値が30以上で2型糖尿病を有するHFpEF患者を無作為に1対1の割合で2群に分け、セマグルチド(2.4mg)を週1回、またはプラセボをそれぞれ52週間投与した。 主要エンドポイントは、カンザスシティ心筋症質問票の臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:0~100で数値が高いほど症状と身体的制限が少ない)のベースラインからの変化量、体重のベースラインからの変化率だった。 検証的副次エンドポイントは、6分間歩行距離の変化量と、階層的複合エンドポイント(死亡、心不全イベント、KCCQ-CSSの変化量の差、6分間歩行距離の変化量の差など)、およびC反応性蛋白(CRP)値の変化だった。KCCQ-CSS変化量平均値、セマグルチド群は13.7点、プラセボ群6.4点 2021年6月15日~2022年8月19日に計616例が無作為化された(セマグルチド群310例、プラセボ群306例)。52週時点で投与を受けていた(各群260例)被験者において、セマグルチドの計画用量2.4mgで投与を受けていた被験者は209例(80.4%)、プラセボの同用量投与被験者は248例(95.4%)であった。被験者の年齢中央値は69歳、女性が44.3%、BMI中央値は36.9、KCCQ-CSS中央値は59.4点、6分間歩行距離中央値は280mだった。 KCCQ-CSS変化量の平均値は、セマグルチド群13.7点、プラセボ群が6.4点だった(推定群間差:7.3点、95%信頼区間[CI]:4.1~10.4、p<0.001)。体重の変化率の平均値は、それぞれ-9.8%、-3.4%だった(推定群間差:-6.4%ポイント、95%CI:-7.6~-5.2、p<0.001)。 検証的副次エンドポイントの結果も、セマグルチド群がプラセボ群より良好だった。6分間歩行距離の変化量は、群間差の推定値14.3m(95%CI:3.7~24.9、p=0.008)、階層的複合エンドポイントのwin ratioは1.58(95%CI:1.29~1.94、p<0.001)、CRP値の変化に対する治療間比の推定値は0.67(95%CI:0.55~0.80、p<0.001)だった。 重篤な有害事象はセマグルチド群55例(17.7%)、プラセボ群88例(28.8%)で報告された。

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コロナよりもインフルエンザの方が脳への影響が大きい

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)よりもインフルエンザの方が、神経疾患により病院で治療を受ける可能性の高いことが、COVID-19またはインフルエンザにより入院した患者を追跡した新たな研究で明らかになった。米ミシガン大学アナーバー校のBrian Callaghan氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に3月20日掲載された。Callaghan氏は、「われわれが予測していた通りの結果ではなかったが、COVID-19で入院しても、インフルエンザで入院した場合と比べて、一般的な神経疾患に対する治療が増えるわけではないことが分かった点では心強い結果だった」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 この研究では、世界的な健康に関する研究ネットワーク(TriNetX)のデータを用いて、COVID-19による入院患者とインフルエンザによる入院患者のその後1年間での神経学的診断に関わる受診について比較した。対象は、2020年4月1日から11月15日の間にCOVID-19により入院した18歳以上の患者と、2016年から2019年の間にインフルエンザにより入院した18歳以上の患者がそれぞれ7万7,272人ずつで、転帰の対象とした神経疾患は、片頭痛、てんかん、脳卒中、ニューロパチー(末梢神経障害)、運動障害、認知症の6種類だった。 その結果、上記6種類の疾患に対する治療を受けたCOVID-19患者とインフルエンザ患者の割合は、片頭痛で2.0%と3.2%、てんかんで1.6%と2.1%、脳卒中で2.0%と2.4%、ニューロパチーで1.9%と3.6%、運動障害で1.5%と2.5%、認知症で2.0%と2.3%であり、治療が必要になった患者は、前者の方が後者よりも少ないことが明らかになった。年齢や性別など影響を与える因子で調整して解析した結果、COVID-19患者で入院後に神経疾患により治療が必要になるリスクは、インフルエンザ患者よりも、片頭痛で35%、てんかんで22%、脳卒中で10%、ニューロパチーで44%、運動障害で36%、認知症で7%低いことが示された。罹患後1年間で6種類の神経疾患のいずれかの新規診断を受けたのは、COVID-19患者で2.8%であったのに対し、インフルエンザ患者では4.9%に上った。 論文の筆頭著者である米イェール大学神経学分野のAdam de Havenon氏は、「今や大半の米国成人がCOVID-19への罹患を経験済みであることを考えると、新型コロナウイルスが神経系に与える影響は、他の呼吸器系ウイルスと同様だと分かったことは朗報だ」と話し、「神経学的治療へのアクセスはすでに限定的であるが、COVID-19罹患後に神経学的治療が劇的に増加するのなら、そのアクセスはさらに縮小される可能性が懸念されていたからだ」と理由を説明している。 一方でCallaghan氏は、「この研究ではCOVID-19の罹患後症状(long COVID)に関連した転帰については検討していないこと、また、われわれの結果がlong COVID患者では神経学的症状を抱える人が多いことを示した先行研究の結果に必ずしも対立するものではないことに留意することは重要だ」と述べて慎重な解釈を求めている。 また、Callaghan氏とde Havenon氏の両氏は、この研究で使用されたデータは、米国を代表するサンプルではないため、得られた知見が米国の全てのCOVID-19罹患経験者に当てはまるとは限らないことを、米国神経学会(AAN)のニュースリリースの中で強調している。なお本研究は、AANから資金援助を受けて実施された。

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怒りの感情をぶちまけても効果なし

 他人に不平や不満をぶつけるのは怒りを抑える効果的な方法ではないようだ。米バージニア・コモンウェルス大学のSophie Kjaervik氏とBrad Bushman氏による研究で、怒りの要因を吐き出すことで、そのときは気持ちが晴れるかもしれないが、それによって怒りの感情が弱まるわけではなく、それよりも深呼吸やマインドフルネス、瞑想、ヨガなどのストレス低減法の方がはるかに効果的であることが示唆された。この研究の詳細は、「Clinical Psychology Review」4月号に掲載された。 Bushman氏は、「怒りの感情は発散させるべきという定説を打ち壊すことが極めて重要だと思う。怒りの発散は良いアイデアのように思うかもしれないが、カタルシス理論を支持する科学的根拠は一つもない」と話している。カタルシス理論とは、ネガティブな感情やストレスの発散が心理的な安定やストレスの軽減につながるという考え方だ。 Kjaervik氏らは今回、総計1万189人の参加者を含む154件の研究を対象にメタ解析を実施し、サンドバッグを殴る・蹴ること、ジョギング、サイクリング、水泳を行うといった覚醒度を高める活動と、深呼吸や瞑想などの覚醒度を低下させる活動を比較した。その結果、実験室でも実社会でも、さまざまな集団において、覚醒度を低下させる活動が怒りのコントロールに有効であることが示された。また、それとは対照的に、覚醒度を高める活動は、全般的に怒りのコントロールには全く効果がないことが明らかになった。ジョギングなどの運動も同様に興奮を高めることが示された。 ただし、どの運動が興奮を高めるかは必ずしも明確ではなかったとKjaervik氏らは説明している。ジョギングは怒りを増強させる可能性が最も高いことが示されたが、球技や体育の授業への参加は覚醒度を低下させる傾向が認められた。Kjaervik氏らは、「これらの結果は、運動に遊びの要素を取り入れることで、ポジティブな感情を高めたり、ネガティブな感情を打ち消したりすることができる可能性のあることを示唆している」と考察している。 Kjaervik氏は、今回の研究実施の背景には、最近の「レイジルーム(怒りの部屋)」の人気の高まりがあったと明かしている。レイジルームとは、怒りの感情に対処するためにコップや皿、電化製品などを破壊することができる施設だ。Kjaervik氏は、「怒りを表出することを対処法とする理論そのものを否定したかった」と話し、「われわれは、興奮を抑えること、実際にはその生理学的な側面が極めて重要であることを示したかった」と説明している。 Bushman氏はさらに、「覚醒度を高めるような運動は心臓には良いかもしれないが、怒りを抑える最も良い方法でないことは確かだ」と指摘し、「怒っている人はその感情を発散したいと思うだろうが、発散することで得られる良い気分が、実際には攻撃性を強めてしまうことがわれわれの研究で示されている。つまり、怒りを適切に対処するのは非常に難しいということだ」と述べている。

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薬剤コーティングバルーンでステントは不要となるか、不射之射の境地【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第71回

PCI発展の過程急性心筋梗塞や狭心症に代表される冠動脈疾患の治療では、冠動脈の流れを回復させるために冠血行再建が決定的に重要です。その方法として冠動脈バイパス手術(CABG)と、カテーテル治療である冠動脈インターベンション(PCI)があります。PCIの発展の過程は再狭窄をいかに克服するかが課題でした。再狭窄とはPCIで治療した冠動脈が再び狭くなることです。バルーンのみで病変を拡張していた時代は、再狭窄率が約50%でした。金属製ステント(BMS)が登場してからは約30%まで減少しましたが、それでも高い再狭窄率でした。再狭窄の要因は、ステント留置後に血管内の細胞が増殖しステントを覆ってしまい内腔が狭小化することです。この新生内膜の増殖抑制を治療ターゲットとして薬剤溶出ステント(DES)が開発されました。当初はステント血栓症などの問題もありましたが、DESの改良が進み再狭窄は劇的に改善されました。現在は、本邦だけでなく世界中でDESを用いたPCIが広く普及しています。「不射之射」皆さんは、「不射之射(ふしゃのしゃ)」という言葉をご存じでしょうか。小生の最も敬愛する作家である中島 敦の作品の『名人伝』に詳しく書かれています。中島 敦(1909~42年)は喘息により33歳という若さで没しています。『山月記』や『李陵』などが代表作ですが、その格調高い芸術性と引き締まった文章が魅力です。「名人伝」のあらすじを紹介します。紀元前3世紀に、中国の都で、天下第一の弓の名人を目指した紀昌(きしょう)という男がいました。伝説の弓の名人である甘蠅老師(かんようろうし)に勝負を挑みに出かけます。そこで、名人に想像を超えた境地を教えられます。弓の名人は、「弓」という道具を使わずに、「無形の弓」によって飛ぶ鳥を射落とすのです。「射之射」とは、弓で矢を射て鳥を撃ち落とすこと、 不射之射とは、矢を射ることなく射るのと同様の結果が得られることです。紀昌は、不射之射を9年かけて会得し都へ帰還します。「弓をとらない弓の名人」となった紀昌は、晩年には「弓」という道具の使い方も、名前すらも忘れてしまうという境地に到達したといいます。野球の川上 哲治氏は「打撃の神様」と言われた強打者で、日本プロ野球史上初の2,000安打を達成しました。全盛期には、ピッチャーの投げたボールが「止まって見えた」と言っていたそうです。このような境地に到達した者を名人と称賛し憧れるのが日本人です。ステントに代わる、薬剤コーティングバルーン(DCB)の登場日本におけるPCIで、注目されているコンセプトがステントレス PCIです。薬剤溶出ステント (DES) を留置するPCIは、冠動脈疾患の治療に革命をもたらし、最も行われている治療法の1つとなっています。しかし、DESは金属性のデバイスであり、その使用により冠動脈内に異物が永続的に留まるという制限があります。これを克服するために登場したのが、薬剤コーティングバルーン(DCB)です。このDCBによる治療は、金属製ステントを使用せず、バルーンに塗布されたパクリタキセルなどの薬剤を血管の壁に到達させて再狭窄を予防するものです。DCBによる、ステントレス PCI のメリットを考えてみましょう。DESを留置した後にはステント血栓症を防ぐため抗血小板薬の2剤併用(DAPT)が必要ですが、抗血小板薬1剤に比べて出血が増加します。高齢の患者では出血性の合併症が問題となります。DCBで治療すれば、抗血小板薬を減弱化することが可能となります。冠動脈CTによる評価法が普及していますが、金属製ステントがあるとノイズとなり冠動脈ステントの内部がよく見えません。PCI術後に何年か経ってから病変が進行し、CABGや2回目のPCIが必要になった場合には、既存の冠動脈ステントが治療の邪魔になる可能性があります。このような利点もありDCBの使用は増加しています。一方で、金属製ステントの効能の1つである、急性冠閉塞の予防効果がDCBでは期待できないことからリスク増加も懸念されます。DCBは、冠動脈内に異物を残さない治療を実現するもので、このコンセプトを、「leave nothing behind」と呼んでいます。欧米や諸外国においてもDCBを用いたステントレス PCIが話題として取り上げられることはありますが、日本ほど注目されている訳ではありません。日本でステントレス PCIへの議論が高まってきているのは、その背景に「不射之射」を尊ぶ東洋的思想があるように思います。ステントを用いずにPCIを完遂することが、あたかも弓矢を用いずに飛ぶ鳥を射落とすが如く捉えられているのです。冠動脈疾患の予防治療が将来さらに進化して、冠血行再建を必要とする患者がゼロとなり、CABGやPCIという道具や手技の名前を忘れてしまうという、「紀昌」の境地までに到達する日を夢みております。

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急性冠症候群へのPCI、血管内超音波ガイド下vs.血管造影ガイド下/Lancet

 急性冠症候群患者に対する最新の薬剤溶出性ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、血管造影ガイド下と比較して血管内超音波ガイド下では、心臓死、標的血管心筋梗塞、臨床所見に基づく標的血管血行再建術の複合アウトカムの1年発生率が有意に良好であることが、中国・南京医科大学のXiaobo Li氏らが実施した「IVUS-ACS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年4月8日号に掲載された。4ヵ国58施設の無作為化臨床試験 IVUS-ACS試験は、4ヵ国(中国、イタリア、パキスタン、英国)の58施設で実施した無作為化臨床試験であり、2019年8月~2022年10月に患者の登録を行った(Chinese Society of Cardiologyなどの助成を受けた)。 年齢18歳以上の急性冠症候群患者3,505例(年齢中央値62歳、男性73.7%、2型糖尿病31.5%)を登録し、血管内超音波ガイド下PCIを受ける群(1,753例)、血管造影ガイド下PCIを受ける群(1,752例)に無作為に割り付けた。1年間の追跡を完了したのは3,504例(>99.9%)であった。 主要エンドポイントは標的血管不全とし、無作為化から1年時点における心臓死、標的血管心筋梗塞、臨床所見に基づく標的血管血行再建術の複合の発生と定義した。心臓死には差がない、安全性のエンドポイントは同程度 主要エンドポイントの発生は、血管造影ガイド群が128例(7.3%)であったのに対し、血管内超音波ガイド群では70例(4.0%)と有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.41~0.74、p=0.0001)。 心臓死(血管内超音波ガイド群0.5% vs.血管造影ガイド群1.1%、HR:0.56[95%CI:0.24~1.29]、p=0.17)には有意差を認めなかったが、標的血管心筋梗塞(2.5% vs.3.8%、0.63[0.43~0.92]、p=0.018)と標的血管血行再建術(1.4% vs.3.2%、0.44[0.27~0.72]、p=0.0010)は血管内超音波ガイド群で有意に優れた。 1年の追跡期間中、安全性のエンドポイントの発生率は両群で同程度であった。ステント血栓症(definite、probable)(血管内超音波ガイド群0.6% vs.血管造影ガイド群0.9%、HR:0.82[95%CI:0.35~1.90]、p=0.64)、全死因死亡(0.8% vs.1.5%、0.64[0.32~1.27]、p=0.20)、大出血(0.9% vs.1.5%、0.57[0.30~1.08]、p=0.09)は、いずれも両群間に有意な差を認めなかった。 著者は、「血管内超音波ガイドは安全であったが、手技の所要時間が長くなり、必要な造影剤がわずかに多かった。これは、早期および晩期における心臓の重大な有害事象のリスクが低いこととのトレードオフとしては許容範囲内であった」としている。

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