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敗血症が退院後のQOLにもたらす影響とは?

 重症敗血症や敗血症性ショックは、長期生存率を低下させるだけでなくQOLに重大な悪影響を及ぼすことがブラジルの後ろ向き試験で明らかになった。Westphal GA氏らがRevista Panamericana de Salud Pública誌2012年6月号に報告した。 本試験は、2005年8月から2007年11月の間に重症敗血症または敗血症性ショックにより入院した患者217例について、年齢が近く、最近の入院歴がない同地区住民と対照比較した。2009年6月から11月にかけて、Short-Form 36(SF-36)を用い、退院後のQOLに重症敗血症、敗血症性ショックがどのような影響を与えるのか検討している。主な結果は以下のとおり・217例中、生存し退院し得た患者は112例(51.6%)・退院後の生存率は、180日後:41.02%、1年後:37.4%、1年半後:34.3%、2年後:32.3%・SF-36の結果  身体機能:59 ± 32 vs 91 ± 18; p < 0.001  活力:48 ± 13 vs 59 ± 14; p< 0.008  心の健康:48 ± 13 vs 59 ± 14; p < 0.03  体の痛み:50 ± 26 vs 76 ± 16; p < 0.001  全体的健康感:53 ± 18 vs 67 ± 13; p < 0.004  日常生活役割機能(身体):67 ± 45 vs 85 ± 34; p < 0.05  社会生活機能:70 ± 28 vs 90. ± 16; p < 0.05上記のように、重症敗血症や敗血症性ショックの既往は、有意にこれらの項目を悪化させた。

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診療科の垣根を越えNon Cancer Pain治療の啓発

 医師を対象とした慢性疼痛学習プログラムJ-PAT(Japan Pain Assessment and Treatment/企画・運営:ヤンセンファーマ)が、8月25〜26日開催された。このプログラムは医師の慢性疼痛に対する薬物療法の理解を深め、患者さんの治療満足度向上を目的に全国主要7都市で行われており、今回は大阪国際会議場を会場として実施された。 休みにも関わらず、プログラムには約40名の医師が参加した。参加者の内訳は整形外科医が半数以上と最も多く、次に麻酔科医、そして内科、外科系医であった。参加者の傾向も整形外科における疼痛治療の盛り上がりを反映しているようである。J-PATは整形外科、麻酔科、精神科、薬理専門家など多領域の専門医による監修を受けて企画・運営されているが、今回は西宮市立中央病院 麻酔科・ペインクリニック科 前田倫氏、尼崎中央病院 整形外科 三木健司氏、愛媛大学医学部 脊椎センター・整形外科 尾形直則氏、徳島赤十字病院 麻酔科 井関明生氏、ヤンセンファーマ サイエンティフィックアフェアーズ 川井康嗣氏の5人の講師がテーマ毎に講義を行った。講演内容は痛みの概念・定義、痛みの評価法、薬物療法の全般、オピオイドの適正使用、治療法の疾患各論など幅広く、2日目後半は実症例をもとに薬物療法の実際をケーススタディ形式で紹介した。セッション後の質疑応答では、各疾患領域での疼痛治療の実際、オピオイドの使い方、鎮痛補助薬の使い方など参加者から多くの質問が寄せられ、活発な議論が行われた。 日本の慢性疼痛患者は約2,200万人に達すると推計されている。しかし、患者さんの受診科は痛みの専門家であるペインクリニック以上に整形外科や一般内科に多く、専門外の知識が必要とされているのが現状である。 慢性疼痛においては、手術療法、薬物療法、リハビリテーション、心理療法などの多面的なアプローチが必要である。薬物療法が注目される傾向があるが、あくまで治療の一部である。痛みの原因となっている疾患の診断、がんなどリスク因子の鑑別、手術など適切な治療手段選択を検討した上で、初めて薬物療法を考慮することとなる。ここ数年、有効な薬剤が数多く登場し、薬物療法の適応は広がったものの、安易な薬物治療によるトラブルも少なくはないという。上記の原則を守った上で、適切に薬剤を使用する事が重要である。 一方で、日本における慢性疼痛に対する医学教育も十分とは言い難い。疼痛治療薬の選択を例にとっても欧米がNSAIDs、オピオイド、抗けいれん薬、抗うつ薬などの薬剤を疾患により使い分けているのに対し、日本ではどの疾患でもNSAIDsの使用比率が圧倒的に高いという結果もこの現れといえるかも知れない。痛みは、数値化しにくく、また患者さんの主観的な症状であるため、治療は非常に難しい。また、診療科や疾患によって痛みの背景も異なり、医師の捉え方も異なる。十分な知識を持ち合わせた医師を育成し、適正使用を推進する事が急務といえよう。そういう意味で、J-PATのようなセミナーを通じて、慢性疼痛を診る機会が多い麻酔科医、整形外科医、内科医が一堂に会し痛みおよびその治療についての理解を深めていくことは重要であり、画期的だといえる。慢性疼痛に対する薬物療法の理解が深まり、治療満足度の向上されることを期待したい。J-PATに関する問い合わせ先:ヤンセンファーマ株式会社 コミュニケーション・アンド・パブリックリレーションズ部(電話:03-4411-5046)または営業担当者まで

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肥満者の2型糖尿病発症予防には肥満外科手術が有効

 2型糖尿病の発症予防について、肥満者においては肥満外科手術が通常ケアと比べて顕著に有効とみなされることが、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLena M.S. Carlsson氏らが「Swedish Obese Subjects(SOS)study」の長期追跡データを解析し報告した。減量は2型糖尿病に対し防御的に作用するが、行動変容だけで減量を維持し続けることは難しい。肥満外科手術は、2型糖尿病発症リスクが最も高い重度肥満者において、減量を維持可能な現在唯一の治療法で、多くの試験で糖尿病を軽減することが報告されている。しかし長期追跡と対照群が必要であるため、予防効果について報告した試験はほとんどなかったという。NEJM誌2012年8月23日号掲載報告より。肥満外科手術群とマッチ対照群の追跡最長15年時点の2型糖尿病発症率を比較Carlsson氏らは、2型糖尿病予防に関する肥満外科手術の長期にわたる効果を検証するため、SOSの追跡データを解析した。SOSは1987年9月1日~2001年1月31日の間に被験者登録が行われた現在進行形の、肥満外科手術と通常ケアの長期効果の比較を目的とした非無作為化前向き対照介入比較試験。Carlsson氏らの解析対象となったのは、肥満外科手術を受けた1,658例と、マッチさせた(個人レベルではなくグループレベルで適合した)対照群1,771例で、全員ベースラインでは2型糖尿病を有していなかった。肥満外科手術の内訳は、胃バンディング術19%、垂直遮断胃形成術(VBG)69%、胃バイパス術12%。被験者は37~60歳でBMIが男性>34、女性>38だった。解析は、メイン試験の副次エンドポイントとして事前に規定されていた2型糖尿病の発症率にフォーカスされ行われた。解析が行われた2012年1月1日現在、被験者は最長で15年追跡されていた。なお15年時点で、36.2%がオリジナル試験から脱落、15年追跡調査を受けていなかった被験者は30.9%だった。2型糖尿病発症率について、手術群の対照群に対する補正後ハザード比は0.17両群の被験者はマッチングにもかかわらず、ベースラインでの特性が有意に異なった。たとえば対照群よりも手術群で、ベースラインの体重がより高く、また危険因子の頻度がより高かった。追跡期間中の2型糖尿病の発症は、対照群392例に対し手術群110例だった。発症率は1,000人・年につき対照群28.4、手術群6.8だった。手術群の補正後ハザード比は0.17(95%信頼区間:0.13~0.21、p<0.001)だった。肥満外科手術の効果は、空腹時血糖値異常の有無による影響が認められた(交互作用のp=0.002)。しかしBMIによる影響はみられなかった(p=0.54)。エンドポイントに焦点を合わせたということを含む感受性解析においても、全体としての結論に変わりはなかった。手術群における術後死亡率は0.2%だった。また合併症のために90日以内に再手術となったのは2.8%だった。これら解析結果を踏まえ、著者は、「肥満外科手術は、肥満者の2型糖尿病の発症予防に、通常ケアよりも顕著に有効と思われる」と結論している。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(13)〕 心房細動診療のピットフォール―心房細動で出血死させないために。CKDに配慮したリスク評価を!

非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う心原性塞栓による脳梗塞は、中大脳動脈などの主要動脈の急性閉塞による発症が多いため、アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞に比べて梗塞範囲が大きく、救命された場合でも後遺症による著しいADLの低下を招きやすい。周術期の肺血栓塞栓症同様に、予防が重要である。心房細動患者の脳梗塞発症率は、発作性、持続性の病型による差はなく同等であるが、併存疾患や年齢によって梗塞リスクが異なり、リスク定量化の試みがなされている。2010年のESC心房細動管理ガイドラインから、従来のCHADS2スコアの欠点(低リスク例の層別化が不十分)が改善されたCHA2DS2-VAScスコアが採用されている。CHA2DS2-VASCスコアは、0 pointでは脳梗塞発症率が0%で、CHADS2スコアよりも低リスクを判別できて、抗凝固療法を必要としない例を効率よく除外できる。 ワルファリンは、きわめて有用・有効な抗凝固薬であるが、安全治療域が狭く、至適投与量の個人差が大きいうえ、多くの食品、薬物と相互作用があるなどの欠点を持っている。ワルファリンコントロールに繊細なコントロールが要求される理由のひとつとして、アジア人では、白人に比べて頭蓋内出血の頻度が約4倍高い(Shen AY, et al. J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 309-315.)ことがあげられる。ESCガイドライン2010では、出血リスクの評価としてHAS-BLEDスコア(Pisters R, et al. Chest. 2010; 138: 1093-1100.)を用いている。 本研究の結果、CKDを合併したNVAFは、梗塞リスクのみならず、出血リスクも高い特徴があることが明らかになった。従来の評価法のうち、HAS-BLEDスコアには腎機能が含有されるが(A)、CHA2DS2-VAScスコアには含有されていない。本研究の詳細を検討すると、CKD合併NVAFでは、梗塞リスクに対する高血圧(H)、心不全(C)、血管疾患(V)、糖尿病(D)の寄与が有意ではなかった(原著Table 3参照)。本邦でダビガトランの市販後に、腎機能低下患者で致死的な出血合併症を認めたことは記憶に新しい。個々の医師がCKDに高い関心を持つとともに、NVAFに対する抗凝固療法の安全性・有効性をさらに高める、より普遍的なリスク評価法の開発が必要であろう。

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STEMIへのPCI、バイオリムス溶出性ステントで主要有害心血管イベントリスクが半減

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、バイオリムス溶出性ステントを用いた場合、べアメタルステントを用いた場合と比べて、標的血管に関連する再梗塞などの有害心血管イベント発生率がおよそ半減することが明らかにされた。スイス・ベルン大学病院のLorenz Raber氏らが、約1,200例の患者について行った前向き無作為化比較試験「COMFORTABLE AMI(Comparison of Biolimus Eluted From an Erodible Stent Coating With Bare Metal Stents in Acute ST-Elevation Myocardial Infarction)」の結果、報告したもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。1年後の心臓死、標的血管に関連する再梗塞などの複合イベントを比較STEMI患者へのPCIにおける薬剤溶出性ステントとベアメタルステントとの有効性および安全性についてはなお議論が続いている。バイオリムス溶出性ステントは、新規世代の生分解性ポリマー製の薬剤溶出性ステントで、重大有害臨床イベントに関して大規模試験で同じ薬剤溶出性ステントで前世代のシロリムス溶出性ステントと比べ非劣性か良好である可能性が示され、STEMI患者では明確なベネフィットが示唆された。Raber氏らは、バイオリムス溶出性ステントとベアメタルステントとを比較検討するため前向きコホート試験を行った。2009年9月19日~2011年1月25日の間、ヨーロッパとイスラエルの11ヵ所でSTEMIでPCIを行った患者1,157例を対象とした。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の575例にはバイオリムス溶出性ステントを用いたPCIを、もう一方の582例にはベアメタルステントによるPCIを行った。主要アウトカムは、1年後の心臓死、標的血管に関連する再梗塞、虚血による標的部位再建術の複合イベント発生率だった。標的血管に関連する再梗塞リスク、バイオリムス群がベアメタル群の0.2倍結果、主要アウトカムの有害心血管イベント発生率は、ベアメタル群が8.7%(49例)に対し、バイオリムス群は4.3%(24例)と、リスクはおよそ半減した(ハザード比:0.49、95%信頼区間:0.30~0.80、p=0.004)。なかでも、標的血管に関連する再梗塞発生率は、ベアメタル群が2.7%(15例)に対しバイオリムス群は0.5%(3例)と、ハザード比は0.20(同:0.06~0.69、p=0.01)だった。虚血による標的部位再建術の発生率もまた、ベアメタル群が5.7%(32例)に対し、バイオリムス群は1.6%(9例)と、ハザード比は0.28(同:0.13~0.59、p<0.001)だった。一方で、心臓死発生率は、ベアメタル群が3.5%(20例)に対しバイオリムス群が2.9%(16例)と、両群で有意差はなかった(p=0.53)。ステント血栓症発生率は、バイオリムス群が0.9%(5例)に対しベアメタル群は2.1%(12例)と、有意差は認められなかったがバイオリムス群で低率の傾向がみられた(p=0.10)。

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年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大

 認知症は転倒原因のひとつである。しかし、認知症高齢者における転倒リスクの研究はまだ十分になされていない。浜松医科大学 鈴木氏らは介護老人保健施設に入所している認知症高齢者における転倒の発現率、リスクファクターの検証を試みた。Am J Alzheimers Dis Other Demen誌9月号(オンライン版8月7日号)の報告。 対象は、認知症高齢者135例。調査期間は、2008年4月から2009年5月までの1年間。調査開始前に、認知機能検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)、日常生活動作能力(PSMS:Physical Self-Maintenance Scale)、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)、その他因子に関して調査した。統計解析は、転倒の有無による比較を行うため、検定、ロジスティック回帰分析を用いた。主な結果は以下のとおり。・調査期間中、50例(37.04%)が転倒を経験した。・多重ロジスティック回帰分析の結果、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)の総スコアは転倒との有意な関連性が示された。・11項目の転倒に関連する行動評価は、認知症高齢者の転倒リスクを予測する有効な指標であると考えられる。関連医療ニュース ・アルツハイマー病患者におけるパッチ剤切替のメリットは? ・「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり ・アルツハイマーの予防にスタチン!?

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10年後に10万人の“ジェネラリスト”創出を目指す!!

7月16日、東京大学伊藤国際学術研究センター(東京・文京区)において「Generalist Japan 2012」が、一般社団法人 Medical Studio(代表:野崎 英夫 氏)の主催、日本プライマリ・ケア連合学会、日本病院総合診療医学会の後援により開催された。当日は、祝日にも関わらず、全国より総合診療科の医師、研修医、医学生など300名以上が参集した。オープニング・リマーク:医療崩壊を救う“ジェネラリスト”特別に制作・編集された動画「Generalist Japan 2012 Opening Movie」で幕を開け、川島 篤志 氏(市立福知山市民病院 総合内科)の総合司会のもと開会を宣言、「今回の場は、ジェネラリスト(総合診療医)の将来を考え、実践する、その一歩として考え催されるものである。議論への積極的な参加をお願いしたい」と述べ、開始された。はじめに主催者代表として野崎 英夫 氏が「オープニング・リマーク」として自身が医師になった動機を語るともに、喫緊の問題を提起し、「医師不足により救急体制が崩壊しつつある、在宅医療でも現場の医師が不足している状況で、医師が早くこの事態に気づくことが重要。これからの病院はスペシャリスト(専門医)が集うところであり、医師はもっと院外へ出て、地域で共同体を作っていくことが大切だ。そして、未来の医療について大きく絵を描き、問題に気づき、解決するために行動を起こすことが求められている」と今回の開催の趣旨を述べた。オープニング・パネル:ジェネラリストは日本の医療を救うのか「オープニング・パネル」として「ジェネラリストは日本の医療を救うのか」をテーマに有識者4名のパネリストが会場を巻き込み、熱い議論を行った。問題提起として各パネリストから次のような発言がなされた。「現在は医療の知識の格差が顕著である。これからは命の延命の程度(社会、家庭、行政の関係で)が課題となる」や「ジェネラリストが今後の医療を変える突破口となると思う。今後は実態の把握、目指す目標、達成の手段など具体的にアクションを起こすことが大事」との指摘のほか、「沖縄は離島が多いため、自然とジェネラリストになることが求められる。そのノウハウを活かすために東京に来たが、地域医療について東京は遅れている。今後10年で10万人のジェネラリストを育成し、わが国の医療の格差(経済と知識の両方)を何とか解決しなくてはいけない」という目標設定や「日本とヨーロッパでは、医療者の定義が異なる。ヨーロッパでは、医師が医療・福祉・共同体作りを行っていて身近な存在だが、日本ではまだ遠い存在だと感じている。身近な存在には家庭医であるジェネラリストがなるべきだと考える」などのコメントが述べられた。続いてディスカッションとなり、「医療に関して情報公開が不完全であり、透明さがない。患者側も医療への理解力を上げていかないといけない」という意見や「地域での医師分布、専門領域での医師分布、昼夜間での医師分布の異常が起っている。医師全員が守備範囲を広げなくてはいけない。具体例として当院では、病院見学の際は見学者全員が院内PHSをもち医療活動を行う、参加型医療を実践させている。もちろん患者にも協力してもらい、医師の教育をポジティブに見てもらう、医師の育成の現場に参加させる試みを行っている」という事例紹介や「イギリスのGP(家庭医)のように『価値の実現共有』が必要。たとえば100個の医療変革アクションプランの発表が必要ではないか」という提案が行われた。会場からは、「ジェネラリストが活躍する時代だと実感している。これからは具体的な目標(増員人数や増員の方法、啓発方法など)を定め行動することが大事。若手医師には『総合医』という確固としたキャリアパスを示すことが大切」という提案や「専門医とジェネラリストが手を携えて診療にあたり、診療の見落としを無くすことが重要で張り合うものではない」という意見や「今までジェネラリストは、一般社会に存在を広めてこなかったことが反省点。現在の医療は、昔のように単純に診療をして、治療をしておしまいではなく、患者と寄り添い、患者の代弁人(アドボカシー)として関わることも重要な使命と考えている。このことを一般社会に広く周知する必要がある」などの提案がなされた。最後にパネリストが一言ずつコメントを寄せ、「今後の実行への期待」や「これから医療を変えるスタートとしたい」など抱負を述べた。午後からは会場を2ヵ所に分け、10名の識者から成る円卓会議「ジェネラリスト・ラウンドテーブル」と若手医師から構成される「エンパワーメント・セッション」が開催された。ジェネラリスト・ラウンドテーブル:ジェネラリスト大国ニッポンになるためにはジェネラリスト・ラウンドテーブルでは、「ジェネラリスト大国ニッポンになるためには」をテーマに3時間にわたるディスカッションが行われた。ディスカッションでは、次のような内容の問題提起や意見が出され、話し合いが行われた。――ジェネラリストの定義、教育、役割とは?活躍の場で名称は変わり、境界は曖昧である。ER、集中治療室、病院総合医、病院以外であれば家庭医と呼ばれる育てるには後期臨床研修後のキャリアパスが大事。ジェネラリストになるためのトレーニングはある程度必要(例:1次救急の患者を診療できるレベル)。そのため、へき地臨床研修と大病院での研修をバランスよく実施する必要がある専門医で補いきれない部分を補完するのはジェネラリストの役目――ジェネラリストをいかに広げていくか?ジェネラリストがこれから、行政、自治体とどうつながっていくのか、プロモートできる人(ジェネラリストの伝道師)を育てる総合診療部門は収益を生む部門であることを、より強調することと社会へのPRが大事ジェネラリストの横の連携が弱い。横の連携を強化し、診療ノウハウの交換やジェネラリストが語る場、居場所となる場(例:医師会)を作ることが必要――高齢者とジェネラリスト高齢者は疾患の数が多く、身体の恒常性も破たんしている場合もあり、治療して治すことは難しい。そこで、高齢者の患者に寄り添う医師としてジェネラリストが活躍するアメリカのように患者のQOLを重視し、患者とゆるい距離間で家族も巻き込み寄り添う、顧問的な役割にジェネラリストがぴったり合う。その際、もっとチーム力をもって看護師やセラピストを入れることも大切高齢者特有の終末期医療は、在宅医療で多くの経験を積む必要がある。研究がメインの大病院では学ぶことが難しい――ジェネラリストは医療の質を上げるか?わが国では、ジェネラリストになると生活環境が改善される。それを見越してジェネラリストが増えれば、過分な診療から解放された専門医の生活も改善され、医療の質全体が上がる今後、ジェネラリストが増えれば医療費が削減されるかどうかの検証は必要――ジェネラリストとしての研究への取り組みジェネラリストは個別化しているので医局のしがらみなく、コラボレーションをして研究、発表をしたらいい研究費用がなくてもジェネラリストでしかできないフィールド研究もある。今大事なのは、よく行われているリサーチ・クエスチョンではなく、ジェネラリストの素朴な疑問を整理し、研究・発表すること。ジェネラリスト全員の疑問を収集して、流すシステムが必要であり、それを指揮できる旗振り役も必要●自由討論――なぜジェネラリストはメジャーにならなかったのか?従来は精神論が多すぎた。ジェネラリスト自体の考えがバラけていて、一本化されていなかったのが問題。今後はジェネラリストが、医療の担い手として専門医に便利な存在であること、その効果を宣伝することが大事であり、社会に向かってわかりやすいものを作る必要がある一般への啓発は、マスコミを利用しないとうまくいかないジェネラリストとは、医療全体を見ることができる医師であると思う「ジェネラリストは収益が良い」という魅力あるモデルを示すことができれば、後に続く医師がでるエンパワーメント・セッション1:ジェネラリストの魅力を伝える医学教育孫 大輔 氏(東京大学 医学教育国際協力研究センター)の司会のもと、5名のパネリストから自己紹介とともにテーマに関するコメントが寄せられた。「研修医への教育内容の範囲(どこまで教えるか、任せるか)」、「1日の中での教育時間(指導の負担が大きすぎる)」、「医学教育の本質的な内容(医学教育が軽く見られている)」、「大学でのジェネラリストの低い地位について」などをもとに会場の参加者とディスカッションを行った。ディスカッションでは、若手医師をジェネラリストに導くために「大学等で居場所を作り、発表の場を作ることが必要」や「長い医学教育の中で臨床でしか教わらないヒドゥン(隠れた)カリキュラムがジェネラリストには大事。これをうまく活用すれば育成の時間節約になる」、「ジェネラリストを育てるためには臨床の現場を見せて、ベッドサイドで突き放して教えることで伸びる」、「指導医が研修医の診断能力を診断する。この時間を指導医が楽しめるかが教育のカギとなる」などの意見が寄せられた。最後に孫氏が、まとめとして次のポイントを示した。教育者自身が医学教育をとにかく楽しむヒドゥン(隠れた)カリキュラムの活用(背中で楽しさを見せる)大学での水先案内人を増やす(学内でジェネラリストの占めるポストを増やす)ジェネラリストだけでなく専門医とよい連携をする大学だけでなく地域とつながった医学教育が必要国民や市民参加型の医学教育を志向するエンパワーメント・セッション2:越境者たれ!コミュニティを変えるジェネラリストとはセッション2では、草場 鉄周 氏(北海道家庭医療学センター)の司会のもと、「地域とジェネラリストの関係について」ディスカッションが行われた。4名のパネリストが自己紹介とともに、テーマについて次のようにコメントを寄せた。「日本の医療はジェネラリスト待望の方向へ向かっている。地域で診療の格差が顕在化した今、その隙間を埋めることができるのがジェネラリストだと考える」という役割論や「地域医療の視点からジェネラリストは地域をつなげる大事な役目を担っていると思う」という地域との連携や「これから日本の医療で果たすジェネラリストの役割を考えていきたい。原発被災地で働いているが、将来の日本の姿が被災地にあるように思う。いかにチームの中心としてジェネラリストが活躍しなくてはいけないかをディスカッションしたい」という要望、そして「地方でも共同体がまとまっている地域とそうでない地域がある。その差が医療の受益の格差を生む一因ともなっている。どうすれば若手の医師が、ジェネラリストとして地域に残る、または入っていくのかその方法を考えたい」という問題提起が述べられた。以上のコメントに対し、会場からは「普段から地域の住民と医師とのコミュニケーションは大切である。何かのきっかけで急に行おうとしてもうまくいかないことがある」や「患者は医師の前ではかなり萎縮している。この見えない距離を縮めないと医師は、コミュニティのリーダーにはなれない」、「看護師などの他種職種と在宅医療のカンファレンスを行っている。医師はファシリテートをする役目だと思う」、「コミュニケーションの量が、活動の活発化に比例する。これからのコミュニティは、一方的な命令ではなく、対話をして納得してからではないと動いていかない」という意見などがあった。まとめとして草場氏から「ジェネラリストを育てるには、コミュニティを視野に入れた活動が必要。たとえば、地域医師会は限られた予算の中で医療をどうするか真剣に考えている。そうした地域の先輩の中に入り、活動を広げていくことが大切」と感想を述べ、セッションを終了した。ラップ・アップ・セッション:ジェネラリスト宣言「ラップ・アップ・セッション」として、1日の総括が行われた。セッションでは、司会の孫 大輔 氏が、「市民参加型の医療へ向け今日から新しいことが始まる予感がする。今後はジェネラリストの定義と質の保証が必要となるし、General Mindも養成する必要がある」と述べ、もう一人の司会者の坂本 文武 氏は「今回のように集い、考えることが大事。仕組みを変えていく努力が必要で、ディスカッションを通じて解決策を見つける。今後は医師だけでなく、別の立場の人の視点も大切」とコメントを寄せた。続いて当日の参加者全員に配布されたアブストラクト集の「私のジェネラリスト宣言」について説明が行われ、その場で参加者に「今からの気持ちの表明」として、個人の目標を記入してもらい、今後の取り組みへの奮起を促した。次に、事前に投票を行っていた「ジェネラリストが増えた社会のありかた」についての投票結果を発表。第1位には「ジェネラリストが協調・連携することで、スペシャリストの真価が効率的に発揮され、互いに尊厳をもって意見交換・連携できる社会」が選ばれた。最後にジェネラリスト宣言が発表され、次の一文が述べられ、はじめての「Generalist Japan 2012」は終了した。ジェネラリスト宣言「医療者が有機的に連携し、社会とのつながりを再構築することで、生老病死が生活の一部になっている社会」ジェネラリスト Japan 2012 Opening Movie http://www.youtube.com/watch?v=bE75pE66Y2gMedical Studio USTREAM(当日の動画が視聴できます)http://www.ustream.tv/channel/medical-studio-ustream#eventsMedical Studio のFacebookページ http://www.facebook.com/medicalstudio.jp

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軽度アルツハイマー病患者と介護者に対する社会心理的介入は有効か?

 DAISYと呼ばれる軽度アルツハイマー病患者とその介護者に対する多角的で準個別化された介入法は、患者の認知症の進行、うつ状態、QOLおよび介護者のうつ状態、QOLを改善しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のF B Waldorff氏らが行ったDAISY試験で示された。中等度~高度アルツハイマー病患者とその介護者に対するカウンセリングや心理社会的介入により、患者の病態が改善する可能性が示唆されている。しかし、患者と介護者双方への介入について検討した試験は少なく、軽度の患者を対象とした試験はこれまでなかったという。BMJ誌2012年8月18日号(オンライン版2012年7月17日号)掲載の報告。軽度患者・介護者への介入の効果を無作為化試験で評価DAISY(Danish Alzheimer Intervention Study)試験は、軽度アルツハイマー病の外来患者とその介護者に対する、早期の社会心理的なカウンセリングおよび支援プログラムによる介入の有効性を評価する多施設共同無作為化試験。デンマークの5つの地域のプライマリ・ケア施設および認知症外来を受診した330組の軽度アルツハイマー病患者と介護者が、通常の支援のみを受ける群あるいは通常支援に加えDAISY介入(多角的で準個別化されたカウンセリング、教育、支援)を受ける群に無作為に割り付けられた。評価者には割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、患者の認知症の進行度(mini mental state examination:MMSE)、うつ状態(Cornell scale for depression in dementia:CSDD)、QOL(European quality of life visual analogue scale:EQ-VAS)スコア、および介護者のうつ状態(geriatric depression scale:GDS)、QOL(EQ-VAS)スコアのベースラインから12ヵ月後までの変化とした。患者のうつ状態は改善の傾向に通常支援単独群に167組(患者:平均年齢75.9歳、女性55%、介護者:66.5歳、66.5%)、DAISY介入追加群には163組(患者:76.5歳、53%、介護者:65.5歳、66.9%)が割り付けられた。12ヵ月後に解析の対象となったのはそれぞれ145組、131組であった。多重検定の補正法としてBenjamini-Hochberg法を用い、偽発見率(false discovery rate)5%を有意水準とし、p<0.0005の場合に有意差ありとした。結果、1年後の評価において通常支援単独群とDAISY介入追加群の間には、主要評価項目、副次的評価項目のいずれにおいても有意な差は認めなかった。しかし、DAISY介入追加群では患者のCSDDのみ良好な傾向がみられた(補正前:p=0.0146、補正後:p=0.0103)。著者は、「軽度アルツハイマー病患者とその介護者に対する多角的で準個別化された介入法であるDAISYによる1年間の介入は、認知症の進行、うつ状態、QOLを改善しなかった」と結論し、「小さいながらも、うつ状態について改善効果を認めたため、うつ状態を併発するアルツハイマー病患者に焦点を当てた検討の余地があるかもしれない」と指摘している。

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糖尿病例の高リスク病変に対するPCI──、DES時代でもCABGに対する非劣性は証明できず:CARDia試験延長5年間追跡

8月27日の「クリニカルトライアル&レジストリ・アップデート II」セッションにおいて、CARDia(Coronary Artery Revascularisation in Diabetes)試験の延長5年間の追跡成績が報告された。当試験は、糖尿病例の高リスク冠動脈病変に対する予後改善作用を、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の間で比較した無作為化試験である。当初予定した1年間の追跡で、CABGに対するPCIの非劣性が証明されなかったため追跡期間を延長し(中央値:5.1年間)、今回の報告に至った。しかし、PCI群の約7割が薬物溶出ステント(DES)を用いていたにもかかわらず、CABGに対するPCIの非劣性は確認できなかった。そのため、DES登場前のBARI試験において示唆された「糖尿病例多枝病変ではCABGのほうが良好」との知見を覆すには至らなかった。イースト・アングリア大学(英国)のRoger Hall氏が報告した。CARDia試験の対象は、多枝病変、あるいは左前下行枝に複雑病変を認め、血行再建の適応があった糖尿病510例である。平均年齢は64歳、男性が74%を占めた。糖尿病罹患期間は10年。3枝病変は62%に認めた。これら510例は、CABG群(254例)とPCI群(256例)に無作為に割り付けられた。CABG群では、平均2.9枝に対しバイパスが行われた。グラフトの94%は左内胸動脈だった。一方PCI群では、平均3.6本のステントが留置された。うち69%はDES(シロリムス溶出)であった。第一評価項目は「死亡、初発の心筋梗塞および脳卒中」で、CABGに対するPCIの「非劣性」証明が目的とされた。しかし、結果としてCABGに対するPCIの「非劣性」は認められず、CABG群に比べPCI群では、一次評価項目のハザード比が増加傾向を示した(ハザード比:1.34、95%信頼区間:0.94~1.93)。有意差に至らなかったのは「検出力不足のため」とHall氏は説明している。事実、この症例数でも「十分な検出力を有する」(原著論文)とされた評価項目「一次評価項目+血行再建術再施行」のリスクは、PCI群で有意かつ著明に高かった(ハザード比:1.56、95%信頼区間:1.14~2.14)。また「非致死的心筋梗塞」リスクも、PCI群で有意に高かった。以上よりHall氏は、「多枝病変を認める糖尿病患者に対する、ルーチンなPCIを支持する明確なエビデンスは得られなかった」と述べた。一方、本試験では前出BARI試験と異なりPCI群における死亡の有意増加は認めなかったため、明らかにPCIが適している病変では考慮してもよいとの考えを示した。関連リンク

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(10)〕 糖尿病患者の生命予後に関連する因子

糖尿病患者の死亡に関連するリスク因子を検討したTRIAD (Translating Research Into Action for Diabetes) study (McEwen LN et al. Diabetes Care. 2007; 30: 1736-1741.)では、総死亡と関連するリスクとして、高齢、低収入、長期の(9年以上)罹病期間、BMI26未満、性別(男性)、喫煙、腎疾患が統計学的に有意な因子として報告されている。本論文ではFramingham Offspring Study(FOS) など5つの長期コホート研究(観察期間:7~28年)についてpooled analysis を行い、40歳以上で糖尿病を発症した2,625人についてBMI 25未満を正常体重、BMI 25以上を過体重と分類して、全死亡、心血管死、非心血管死を主要アウトカムとしてその臨床背景を検討した成績である。“Obesity paradox…” 血圧、脂質、ウエスト周囲径、喫煙について補正を行った際の死亡に関するハザード比は、正常体重/過体重で総死亡は2.08(95%信頼区間:1.52-2.85)、非心血管死は2.32(95%信頼区間:1.55-3.48)と正常対照群で2倍以上となったが、心血管死については1.52(95%信頼区間:0.89-2.58)と統計学的な有意差は認めなかったと報告されている。 今回の検討では、BMI 25未満での糖尿病の発症が多いアジア系の人種を除いており、糖尿病を発症した時点で何らかの悪性疾患が潜んでいる可能性を除くため、糖尿病を発症後2年以上の経過を追跡できたものや、登録時点に比較してBMIが2kg/m2以上低下している症例も除外している。長期にわたるコホート研究が対象であるため、データ収集の間隔も2~5年とばらつきはあるが、末期腎不全や心血管疾患の患者では非肥満者よりも肥満者のほうが生命予後は良い(”obesity paradox”)という報告とも一致する内容である。 欧米人の非肥満患者における糖尿病の発症に関連している遺伝因子、脂肪組織の分布やアディポカイン、炎症反応、膵β細胞機能などがどのように関連し、生命予後とどう結び付くのか、また、運動量や運動能力(fitness)の関与はないのかなど、「肥満=悪」とは簡単につながらない「何か」を思わせるpooled analysisである。

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現役CEOが医学生に語るキャリア形成、キャリア構築のコツ!

7月7日(土)慶應義塾大学信濃町キャンパスにおいて山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)主催による「山本雄士ゼミ」の第4回が開催された。今回は、ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長である三谷宏幸氏をゲストに迎え、日本と世界のキャリア形成の違いやリーダーシップ論などを中心に話を聞いた。山本雄士ゼミは、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した山本氏をファシリテーターに迎え、ケーススタディを題材に医療の問題点や今後の取組みをディスカッションによって学んでいく毎月1回開催のゼミである。産業構造の大転換講演では、三谷氏が自身のキャリアを述べた後、国際ビジネスマンとしての視点から現在の日本の産業と世界、そして医療について語った。はじめに日本の産業構造の変化について、以前なら市場は国内だけ見ていればよかったが、今では全世界を見なくてはならなくなったこと、そして、外国からの文化の流入と融合への取り組みが必要となったことなど、三谷氏の分析的視点から語られた。講演では、大手家電メーカーを例に説明し、「日本企業は時代のニーズへの対応が不得意であり、視野狭窄で国内市場しか目が向いていなかった(ガラパゴス化)。その結果、今日のような事態を招いた」と語った。日本的思考法、グローバルの思考法「日本的思考とグローバルの思考」の違いについて説明し、「日本では文化の同質性から『あ・うんの呼吸』で仮説から一気に結論までもっていくが、グローバル思考では文化が異なるため仮説から論証を積み上げて結論までもっていく。論理的な思考というものがきちんとなされている。また、組織構成とキャリアパスの違いから日本企業はなあなあの仲良しクラブになりがちだが、グローバル企業では個々人の責任の所在を明らかにし、リスクを選び、リスクに見合った利益を手にする考え方が主流である」と日本と外資系企業の違いを説明した。そのうえで、外資系企業の強さについて、その要素は3つあり、(1)規模、(2) 開発力、(3) 人材と企業文化であるとした。具体的に、製薬メーカーであれば規模が大きいほど研究・開発力が大きくなる。そして、開発に関して「規模で劣る日本の製薬メーカーが、研究・開発の分野の絞り込みをできていないところが心配だ」とコメントするとともに、(3) 人材と企業文化についてはリーダーシップ論とキャリア形成法を交えて詳しく説明を行った。求められるリーダーとは?三谷氏が以前所属していたGE(ゼネラル・エレクトリック)を例に「リーダーに求められる資質」として「『外部思考、想像力、専門性、明瞭な思考、包容力』の5つの資質が、大人数を納得させ、動かす資質である」と説明。そして、リーダーに求められる能力として「専門知識、ビジネス知識、企業価値にもとづく行動規範、リーダーシップ」が必要だと説明した。次に、混同されがちな「リーダー」と「管理職」の違いを説明し、「リーダーはアクセルであり、ビジョンを重視し、柔軟性をもっている。管理職はブレーキであり、ロジックを重視し、一貫性をもっている」とその差異を説明した。最後に主体的なキャリア構築の勧めとして、「継続的に挑戦し、学んでいくマインドが大切である」と述べ、次の言葉を聴講者に贈り、講演を終えた。“Control your destiny or someone else will”(自分の運命は自分で選べ)                                                                -Jack Welch(GE 元CEO)引き続き、質疑応答となり、多くの参加者が質問を寄せた。――人材教育は日本企業と外国企業のどちらがよいか?決して日本が劣っているわけではない。しかし、外資の戦い方やさまざまなプレゼンテーションの仕方は勉強になるし、ロジカルな思考も強くなれる。――社長になるための資格は?社長になる方程式はないので自分で作るしかない。ただロジカルな思考ができる面で、理系は有利だと思う。また、現場は人間性、リーダー力を養う場になるので現場に出て修行を積むことも大事。現場での人の動かし方や苦労を知り、失敗することで成功への意欲が出てくる。――キャリアを変えるために行うべきことは何か?キャリアの変更については、「自分の強み、将来の予想、過去の成功例」を見出すことだと思う。同じグループだけを見ているのではダメ。自分自身でいえば、自己実現の充足が今のポジションをもたらしている。学ぶことを止めないこと、私は、自分の学びの確認に海外を見ている。――医療業界で若手が元気になるには?日本の研究環境も変わりつつあるが、まだ世界レベルではないように思う。たとえば米国のボストン近郊のケンブリッジは大学、企業の研究所、ベンチャーが集積していて、研究者がお互いに刺激し合っている。日本では、価値を転換して臨床研究の評価を上げるなども必要だと思う。――医療の世界へ来た動機と今後の抱負以前いたGEで医療に関わり、興味があった。機会があれば挑戦したいと思い医療の世界に来た。これからも、さらなる自己実現と周りの人が驚くようなスピードで経営を行っていきたいと思う。『医療イノベーション 5か年戦略』とディスカッション後半のディスカッションでは、資料に『医療イノベーション 5か年戦略(案)』(医療イノベーション会議・発行)と『平成24年度診療報酬改定の概要』(厚生労働省・発行)を使い、前者の立案に参加した山本氏が、内容の要旨と今後の医療施策の動向について説明した。資料から「人口動態変動で今後は高齢者が増加し、死亡率が増加する(少子多死時代の到来)。この社会環境の中で医療をどう位置づけるかが問題。今までの日本は、低コストで効率のよい医療を提供していたが、今では国家財政的に厳しい時代に来ている」と将来への論点を提示した。次に『医療イノベーション5か年戦略』の内容を詳説し、「政府として今までの議論を基に、今後志向することは何か」を説明した。とくに今回「『広い視点から医療技術評価のあり方を検討する』、『予防から終末期に至る包括的なケアを考える』という2つの事柄が入ったことは画期的なこと」と述べた。この後、質疑応答となり、資料の内容やゼミの活動についてさまざまな質問が寄せられた。たとえば「今回の『医療イノベーション』の特色は何か?」という質問に「いままで基本理念がなかったが、健康長寿、産業振興(医薬品の開発)、世界への発信という3つを明記した。また、PDCAサイクルによるチェック機能を入れたところが大きな特色」と回答した。また、「日本の医療に明るさが見えない。さまざまなゼミや研究会で出された提案が、なかなか政策に反映されず、政府の審議会だけで決まってしまうことに、とても歯がゆさを感じている」という感想に対して、「このゼミは、いろいろな世代、立場の人が集まって議論する場であり、なかには中央省庁の方も出席されている。声が届かないことはないと思う。また、ゼミの場は、いわば道場であり、ゼミでの議論を自分のものにして、実現できるようになっていってもらいたい。今後はゼミでの議論も踏まえて、政策提言できる動きもしていきたい」と述べ、ゼミを終了した。なお今後のスケジュールは次の通り(いずれも16:00~19:00の開催予定)。第5回 9月8日(土):ワイス(製薬会社のケーススタディ)第6回 10月13日(土):後期ガイダンス&クリーブランド・クリニック(アメリカの病院のケーススタディ)第7回 11月10日(土):『医療戦略の本質』の読書会&西ドイツ頭痛センター(ドイツの病院のケーススタディ)第8回 12月8日(土):ピッツニーボウズ(アメリカの医療保険者に関するケーススタディ)第9回 1月12日(土)(仮):外部講師による講演会第10回 2月9日(土)(仮):セダケア(地域のヘルスケアシステムのケーススタディ)●ゼミ公式HP http://yamamoto.umin.jp/●ゼミ公式Facebook http://www.facebook.com/#!/groups/226064334073359/●講演者経歴■関連リンク・三谷宏幸氏著作『世界で通用するリーダーシップ』・山本雄士氏著作『医療戦略の本質』『奇跡は起こせる わが子を救うため、新薬開発に挑戦したビジネスマン』

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せん妄の早期発見が可能に

 高齢入院患者におけるせん妄発現は患者や家族の苦痛だけでなく、入院期間の延長や医療事故、医療スタッフの負荷増大などさまざまな弊害をもたらす。そのため対応方法の確立が急がれる。せん妄に対応するためには、早期発見が重要である。海外では、せん妄評価法(Confusion Assessment Method:CAM)が一般病棟におけるせん妄の早期発見に用いられている。Thomas氏らは、高リスク患者のせん妄のスクリーニングと診断についてICD-10およびDSM-IVと比較して、CAMアルゴリズムのせん妄判定基準が有用であるかを検討した。J Am Geriatr Soc誌オンライン版2012年8月6日号の報告。 対象は、大学病院に急性期内科疾患で入院した102名(年齢:80~100歳)。CAM診断アルゴリズム4項目を使用し、記録した。せん妄の診断は、専門家のコンセンサスによりDSM-IV、ICD-10に基づき評価を行った。主な結果は以下のとおり。・79名の入院患者にせん妄スクリーニングのためCAMを実施した(せん妄有病率はDSM-IV:24% 、ICD-10:14%)。・全CAM項目のうち、「急性発症または症状の動揺」は診断のために最も重要である(DSM-IV:AUC=0.92 、ICD-10:AUC=0.83)。・CAM診断アルゴリズムは、DSM-IVとの比較において感度74%、特異性100%、AUC=0.88であり、ICD-10との比較では感度82%、特異性91%、AUC=0.85であった。・ICD-10との比較においてCAMアルゴリズムに精神運動の変化を加えることで、特異性は97%に改善したが、感度は55%に減少した(AUC=0.96)。CAMアルゴリズムでせん妄でないと識別された群のみにそれぞれ精神運動の変化を適応すると、感度91%、特異性85%に改善した(AUC=0.95)。関連医療ニュース ・がん患者のせん妄治療に有効な抗精神病薬は… ・せん妄対策に「光療法」が有効! ・気温31℃超で気分症状が再発!入院も増加

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PSAスクリーニング、QALを考慮した場合のベネフィット

 前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングによる前立腺がん死亡率減少というベネフィットは、過剰診断やその後の長期にわたる治療で失われる質調整生存年(QALY)によって減じてしまうことが示された。オランダ・エラスムス医療センターのEveline A.M. Heijnsdijk氏らが、欧州前立腺がんスクリーニング無作為化試験(ERSPC)の追跡データをベースに作成したモデルを用いて解析した結果で、「スクリーニングを勧告する前に、より長期のERSPCとQOL解析の両者の追跡データが必須である」と結論している。NEJM誌2012年8月16日号掲載報告より。前立腺がん死亡27%減少のベネフィットがどれほど影響を受けるかを検証ERSPCの11年追跡の報告では、PSAスクリーニングを受けた男性の前立腺がん死亡率は29%減少したと報告されている。しかし、このベネフィットが、スクリーニングによるQOLへの悪影響を加味した場合、どれぐらい相殺されるかは明らかになっていなかった。Heijnsdijk氏らはERSPC追跡データをベースに、複数のPSAスクリーニング戦略モデル(55~69歳で年1回実施、55~74歳で年1回実施、55~69歳で4年ごとに実施、55歳時に1回実施、60歳時に1回実施、65歳時に1回実施)を作成。マイクロシミュレーションスクリーニング解析(MISCAN)にて、各モデルのスクリーニング後の前立腺がん検出、治療、死亡、およびQALYの予測値を算出した。55~69歳で年1回実施群の獲得QALYは未補正獲得生存年より23%減少結果、ベースモデルのスクリーニング戦略(55~69歳で年1回実施)では、寿命追跡した全年齢男性1,000人当たり、非スクリーニング群と比較して、前立腺がん死亡は9例(28%)減少、緩和ケアを受けた人は14例(35%)減少し、獲得生存年は総計73年(前立腺がん死亡を平均8.4年延長)と予測された。しかし、獲得QALYは56年(範囲:-21~97)で、未補正獲得生存年より23%減少することが示された。前立腺がん死亡1例を回避するには、スクリーニング実施98例中5例で前立腺がんが検出される必要があることが示された。55~74歳で年1回実施のスクリーニングモデルでは、獲得生存年はより大きく総計82年だったが、獲得QALYは56年とベースモデルと変わらなかった。

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「身体のために禁煙しましょう」、さて先生ご自身は?医師の喫煙率2012

分煙化、禁煙エリアの拡大と、社会全体として嫌煙モードが高まる一方の昨今。もちろん院内も例外ではなく、全館禁煙という施設も増加している様子。2011年の「全国たばこ喫煙者率調査」(JT実施)によると、日本全体では21.1%。2010年10月の値上げの影響を受けて大幅に下がった2011年調査と比較すると、減少率は鈍化しているようです。そんな中、患者さんに禁煙を勧める立場にある先生方の喫煙率はどうなのか?ケアネットで2011年9月に実施したアンケートでは8.6%。さて約1年後の今回の結果はいかに?「医師の喫煙率2012」、前回と比較しながらご覧下さい。また、疾患リスクとの関係から少しずつ高まりつつある「喫煙者は医療の負担額を上げるべき」という考え方についても賛否をうかがってみました!結果概要はこちらコメントはこちら設問詳細タバコについてお尋ねします。JTが2012年5月に実施した「全国たばこ喫煙者率調査」によると、現在の全国の喫煙者率は21.1%でした。うち男性は32.7%(前年比-1.0ポイント)、女性は10.4%(同-0.2ポイント)と、男女とも漸減傾向にあります。なお対前年比で見ると、昨年調査時は2010年10月の値上げの影響を受け全体で2.8ポイント下がりましたが、今年度調査では0.6ポイントの減少に留まりました。そこで先生にお尋ねします。Q1. 先生は喫煙されていますか。喫煙している以前喫煙していた喫煙したことがないQ2. 「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。賛成反対どちらともいえないQ3. コメントをお願いします(ご自身の喫煙に関して、禁煙された方はそのきっかけ、院内の喫煙環境、禁煙外来を含め患者・家族からの要望や状況など、タバコに関わることでしたら何でも結構です)アンケート結果Q1. 先生は喫煙されていますか。Q2. 「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。2012年8月17日(金)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員結果概要医師の喫煙率は7.1%、国民全体での変化に比較し高い減少率調査対象者の喫煙率は7.1%、2011年9月に実施した同調査では8.6%であり、1.5ポイントの減少となった。国民全体では2012年21.1%(前年比-0.6ポイント)、2011年21.7%(同-2.8ポイント)と減少率の鈍化が見られる一方(JT実施「全国たばこ喫煙者率調査」より)、医師の喫煙者は着実に減りつつあることが見て取れる。なお「喫煙したことがない」医師は、前回と変わらず56.7%という結果となった。「喫煙者は医療の負担額を上げるべき」 、考え方には約6割が賛成"喫煙は医療費増につながるため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき"という考え方に対する賛否を尋ねたところ、賛成58.1%、反対15.5%となった。賛成医師からは「なぜ非喫煙者が喫煙による疾患の医療費も負担しなければならないのか」「疾患リスクが上昇することは証明されているため、応分の負担を求めるべき」といった意見が多く寄せられた。反対派からは、「飲酒・肥満・塩分過多など他の生活習慣や嗜好品の扱いはどうするのか」「喫煙者確認が困難」などのコメントが寄せられた。禁煙のきっかけ「患者からの視線」「子供のため」「院内の禁煙拡大」など様々以前吸っていたが禁煙に成功した医師は全体の36.2%。きっかけとしては、「自身が禁煙を勧める側にあるため」「COPDの患者を見て」など立場上の理由のほか、「子供ができたこと」「院内が完全禁煙となり、喫煙のたびに外出しては仕事にならない」など環境の変化によるものも多く挙がった。CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「結婚を機に禁煙しました。家族への影響を考えると喫煙を続けるという選択肢はなく、喫煙歴は10年でしたが、あっさり禁煙できました。 今では嫌煙家で海外のように禁煙者をもっと守るような環境に日本も早くなってほしいと切に願っています。」(30代,男性,耳鼻咽喉科)「もともと喫煙していないが、医療費の増大につながっていることは明らかで、喫煙者に応分の負担を求めるべき。」(50代,男性,消化器科)「自動車保険のようにリスク細分化するのも手かと思う。不健康な人の負担を上げるよりも、健康な人にメリットが出る制度が望まれる。」(30代,男性,呼吸器科)「禁煙のきっかけは子供が生まれたことでした。 精神科病院なので病棟の全面禁煙はできておりません。」(40代,男性,精神・神経科)「禁煙に一番影響を与えるのは周囲の環境変化だと思う。実際自分の場合も結婚や子供の誕生がきっかけであった。そういうきっかけを利用すると不思議と難なく禁煙できるのではないか?」(40代,男性,内科)「職員の反対があり、禁煙外来が開設できていません。抵抗勢力が身内に多いです。」(30代,男性,神経内科)「体に何もいいことがないのに、いつまでも販売して続ける国の考えがさっぱりわからない」(30代,男性,外科)「喫煙をするのであればそのリスクとコストをかぶる覚悟が必要な時代なのでしょうね」(30代,男性,産業医)「勤務時間に喫煙している医師を見かけるが1回10分としても6回で1日1時間となり、非喫煙者に比べ労働時間も少なくなっている。喫煙者については保険料、医療費、たばこ税の増額は当然のこと。」(40代,男性,血液内科)「喫煙は嗜好の問題なので、他人に迷惑をかけない限りは許容されるべきと考えます。医療費増につながっているのは喫煙の他にも過食やアルコール多飲などもあるわけですから、喫煙者のみ負担額を上げるというのはおかしな話です。わたし自身は運動を始めたため、必然的に禁煙に至りました。喫煙していると運動が苦しかったからです。」(50代,男性,外科)「自分では喫煙歴はありません。あそびで1回ふかしたことがある程度。 個人的には喫煙には非常に冷たい気持ちですが、喫煙したい人が喫煙する場所が全くなってしまっているのはちょっとかわいそうに思うと気もあります。私に迷惑がかからないところで勝手に吸うことまで制限して欲しいとは思いません。」(40代,男性,耳鼻咽喉科)「患者によくないという以上、医者が喫煙していたらまったく信頼が得られない。」(40代,男性,外科)「喫煙が健康に悪いことはわかっていても医師が喫煙しているケースは多い。現在病院敷地内は禁煙だが、入り口の外に出て並んで吸っている人を多数見かけ、非常に印象が悪いと常々思っている。」(40代,男性,基礎医学系)「喫煙は百害あって一利無しなのは一目瞭然のため、とにかく全国民を強制的に禁煙させるように強く働きかけるべきである」(30代,男性,循環器科)「たばこ1箱1,000円に」(40代,男性,小児科)「自分だけへの影響であれば自己責任だが、間接喫煙として周囲へ悪影響を及ぼすため、売られていること自体間違い。」(30代,男性,総合診療科)「マナーの悪い喫煙者はどこにでもいます。喫煙は百害あって一利なし、健康にも、環境にも、有害です。喫煙自体を法律で禁じてもらいたいくらいです。」(30代,女性,形成外科)「禁煙した人にメリットがあるよう示してあげることも大切である。」(50代,男性,循環器科)「本人以外にも多大な影響を与える以上、一定の制限は止むを得ないと思います。本人の喫煙する権利とのバランス考量は必要と思いますが、原則として新規に習慣喫煙者が登場しない方向へ政策的に誘導すべきだと考えます。」(40代,男性,呼吸器科)「自分自身は喫煙しないから喫煙者がどう扱われても影響ないが,何でも厳しくしようという風潮はいずれ自分の身にも及ぶと予想されるので,一種の防波堤として喫煙者にそう厳しく当たるな,と思っている,」(50代,男性,皮膚科)「婚約時期に禁煙し、その後1度も喫煙したことがない。健康のためだけの禁煙は難しいのでは。家族などの大切なひとのための禁煙であれば、うまくいく可能性が高いと思う。」(50代,男性,泌尿器科)「全面禁煙に賛成です、ある意味、周りの人に迷惑がかかると考えると麻薬より悪いかも」(40代,男性,循環器科)「中途半端な値上げではなく、海外並に価格をあげるべき」(40代,男性,小児科)「今は禁煙の場所が増えたので、自分の家以外で吸おうと思うと、院外や学外へ行かなければならず、そうなると仕事にならないので、医者の喫煙者も本当に少なくなったと思います。」(30代,女性,神経内科)「30年前医局で禁煙の風が吹き、外来の机から突然灰皿がなくなったことをきっかけにやめました。」(60代,男性,内科)「喫煙者はリスクが高いので当然。また、禁煙治療が保険で行われるのもどうかと思う。タバコを吸わない人がなぜ喫煙者の禁煙にともなう治療費を払わないといけないのか」(50代,男性,呼吸器科)「30年前になりますが、病院の勤めが昼夜問わずで忙しすぎて、このままでは、恐らく健康を害してしまうと判断し、禁煙をしました。以後は全く吸っていません。喫煙する人の気持ちもわかりますし、喫煙したことのない人の気持ちもわかります。ただ、今の風潮ではやはり喫煙環境が悪くなるのは致し方ないことかと思います。」(60代,男性,小児科)「COPDの患者さんから「先生、俺みたいになりたくないなら、タバコはやめたほうがいいよ」と言われたのがきっかけで、ニコチンパッチやガムを使ってやめました。」(40代,男性,麻酔科)「受動喫煙による疾病リスクの増加の問題も有り,この厳しい財政状況の中では,喫煙者に多くの財政負担を求めるのは必然の流れ.」(40代,男性,内科)「喫煙は明らかに癌やCOPD、心血管疾患のリスク上げることが証明されているので、自己負担を上げ、責任を取らせるべき。非喫煙者が喫煙者の負担を強いられるのは問題。」(30代,男性,循環器科)「高校生の頃タバコ吸ってましたが、医学部に入って辞めました。あのころは運動していたんで、禁煙で成績が良くなったのが励みでした。禁煙は減塩と同じで個々人への働きかけとともに社会への働きかけも必要です。製薬メーカーももっと禁煙に力を入れてほしいです。MRさんでタバコを吸っているのは論外でしょう。 タバコはひと箱2000円でもいいと思います。」(40代,男性,代謝・内分泌科)「『タバコは嗜好品ではなく薬物』 『喫煙者は病気であり治療が必要』 『その害を国が率先してお墨付きを与え国民にまき散らしている』 という啓発が必要」(30代,男性,神経内科)「喫煙する人が疾患にかかりやすいのだから、受益者負担で高くすべきだと思う。父は吸っているから肺気腫のような症状が出ているが、自業自得であるし、医療費が高くても仕方がないと感じる。私自身はそれを見ているので吸いたくもないし周囲ですっているのも嫌である。」(40代,男性,神経内科)「喫煙者かどうか正しく申告するはずがないので、タバコの販売価格に上乗せする形で徴収し医療費へ回すべきだと思いますね。」(50代,男性,耳鼻咽喉科)「医療に従事する者として禁煙は早くしたかった。が、なかなかできなかった。子供ができたことで一念発起し、自分のためでなく、子供のために、とやめた。 現在院内では看護師と事務職の喫煙率が高い。喫煙後うがいなどをしているようだが、時々においが残り、そのまま患者さんのところに行くので、患者さんがどう思っているのか、気になる。」(40代,男性,産業医)「個人の嗜好なので、条例・法律規制しないかぎり個人の自由。副流煙・受動喫煙に対する配慮は必要。」(40代,男性,整形外科)「税金をたくさん払っているのだから、そこは考慮してほしい。やはり分煙。 喫煙者を悪者にするなら販売自体をやめてほしい」(40代,男性,泌尿器科)「禁煙外来の充実が望ましいが、労力の割には点数が少ないように感じられ、余裕のある医療施設でないと普及が難しいと思います。」(40代,男性,内科)「10数年間1日20本吸っていましたが30歳代後半に不整脈を自覚したのをきっかけに禁煙しました。当時は禁煙補助薬もなく、禁煙の最初の1-2週間がとてもつらかったのを今でも覚えています。」(50代,男性,内科)「禁煙外来をしたいが,保険で診療ではCO測定を必須としているが測定器は10万円以上もするため断念している。また,喫煙を止めた者の割合等を、社会保険事務局長に報告しなければならないなど敷居を高くしすぎている。当局は医師を全く信用していない。」(50代,男性,循環器科)「生活保護を受けている人が、明らかにタバコが原因になっているCOPDの治療を受けつつもタバコを吸い続けているのをみると、今の医療制度はおかしいんじゃないかと思う。」(30代,女性,外科)「保険料の設定において、各個人のリスクを勘案するのは現実的でない。 それよりもタバコが健康にすごい害をもたらす、タバコから市民権を奪うような風潮になってほしい。そのためにはマスコミの力が必要であるが、マスコミは大スポンサーであるJTに遠慮してタバコの真実の姿を視聴者に伝えられないところに大きな問題がある。」(30代,男性,呼吸器科)「受益者負担を考えると喫煙は医療費を押し上げているのだから押し上げている分は喫煙者に負担してもらうのが合理的。」(40代,男性,腎臓内科)「入院患者が職員の自転車置き場などでたむろしてたばこを吸っているのは何とかならないのかなぁと思います。小児の患者に付き添っている患者の母親が、患児を連れて他の人たちといっしょに吸っているのを見ると、受動喫煙の知識とかもないのかと唖然とします。」(40代,男性,その他)「まず、歩きタバコは傷害罪にしたほうがいい。」(40代,男性,精神・神経科)「健診学会、ドック学会のデータを見ても、喫煙の害は明らかです。健康を害して国民総生産を押し下げているものと思います。国の対応も甘くもっと積極的に禁煙キャンペーンをはるべきと思います。」(50代,男性,その他)「喫煙していたのは若いころだけで、特に抵抗なく禁煙しました。院内は室内禁煙で、喫煙所が1か所のみあります。医療費(保険診療)はリスクのある人にも平等に負担される仕組みが日本での前提ですから、これを崩せばいくらでもリスクを考えた負担(あるいは加入拒否)がまかり通るように思います。保険者に加入者の健康維持を働きかけさせるという観点からは、喫煙者が加入したら保険者に補助をして、そのかわり禁煙にどれだけ導いたかを評価してもよいかもしれません。」(50代,男性,小児科)「保険料や医療費をどのくらいにするのかを決めるのが大変でしょうし、現場も大変でしょう。「私は喫煙者です」という自己申告制ですね。 それよりもタバコの値段を上げる。 喫煙のきっかけは何だったのでしょうか。好奇心・大人ぶりたいなどではないでしょうか?」(70代以上,男性,産婦人科)「喫煙したことで医療費の増加に影響しているかもしれないが、1日1本の人と1日0本の人では程度が変わってくると思います。喫煙量に関係なくでは不満が出るでしょうし、その際にその人個人の喫煙量がどのくらいかを証明することができないでしょうし、難しいと思います。喫煙した結果の医療費を上げるよりも、喫煙する際のたばこ税を相当額上げることの方がいいと思います。」(30代,男性,救急医療科)「医師になった時に禁煙しました 喫煙が法律で禁止されているわけではないので、負担増については少し疑問です 喫煙だけでなく飲酒も問題ですし」(50代,男性,内科)「タバコや副流炎の害悪をアピールすることや分煙,禁煙の徹底が大切なのであって,喫煙者の医療費を上げることは当然,患者が嘘をつくことにつながるため反対である.金銭的に負のインセンティブをつけるならたばこ税を調整・増額すればよい.」(40代,男性,神経内科)「喫煙は中毒(依存症)です。誰かが適切に指導すれば禁煙もその継続も可能です。個人的には、あの臭いはもう受け付けないです。」(40代,男性,内科)「喫煙者のマナーの悪さ(道端でたばこを吸って吸殻はそのままポイ・・・など)は耐え難いものがある。たばこ税はもっともっと上げるべきだし喫煙者の医療費負担を上げてもいいぐらいだと思う。」(40代,男性,小児科)「自分は健康にかなり気を遣っているが、喫煙者と同じ保険料、医療費を払うのは解せない。喫煙者の負担を増やすべきである。たばこ関連税は全て医療保険に回すべきである。 目の前で吸わなくても、外で吸ってから部屋に入られると、それだけで部屋の中がタバコ臭くなり、迷惑である。」(40代,男性,放射線科)「禁煙してみると生活があまりに快適になるので、他人にも勧めたくなります。」(60代,男性,神経内科)「明らかな発ガン物質を"堂々と""合法的に""PRまでして"売っているなんて信じられない。」(50代,男性,産業医)「喫煙する医師は患者からどう見られているか考えた事が無いのだろうか?また人に迷惑をかけてはいないという言い訳は成立しない。」(40代,男性,代謝・内分泌科)「85歳です。40年ほど前完全禁煙しました。 小児科は忙しく余り吸う暇がありませんでしたが、当時タバコを吸うことは男のステイタスであったような気がします。まだ煙草の害が余り説かれていなかったころでしたが、医師の中にたばこの害を説く熱心な方がいて禁煙を勧めていました。その方の影響を受けました。それから強引に、喫煙する方の子供は診察しません。と張り紙をして禁煙運動をしてきました。3,40年も前ことです。少しは効き目があったようです。」(70代以上,男性,小児科)「全ての疾患をタバコにつなげる風潮がある。実際診療していてタバコはそれほどrisk factorになっているのか疑問をもつことが少なくない。今のところ健康寿命も世界一だがこの世代の人々は喫煙率は非常に高かった。日本の医療レベルが制度・技術ともに抜きんでていたから、と言えばそれまでだが果たしてそれが全てなのだろうか?」(40代,男性,外科)「咳が止まらないと受診した患者さんが喫煙を続けていることがよくあります。咳止め薬を希望されますが無駄だと思います。」(40代,男性,循環器科)

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治験、臨床研究データをリアルタイム入力 EDCシステム開発

先端医療振興財団 臨床研究情報センター(以下、TRI)は24日、治験、臨床研究の症例データを、インターネットを介してリアルタイムで入力することで、スピードアップと効率化を図れるEDC(Electronic Data Capture)システム『eClinical Base』を独自に開発し、提供を開始したことを発表した。『eClinical Base』の大きな特徴は、症例報告書に関する内容を記載した設定仕様書(エクセル)をシステムにインポートすることにより試験設定が完了すること。つまり、試験設定が非常に簡便であり、症例報告書の変更等にも迅速に対応することができるという。登録割付機能や、SASデータセット出力機能のほか、「Part11(21CFR Part11)システム仕様対応」「GCP(Good Clinical Practice)システム仕様対応」「ERES(Electronic Records and Electronic Signature)準拠」さらに国際共同治験に適合するため、「CDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)」や多言語での運用も可能だ。 これらもすべてTRIが開発し、運用している。TRIでは2003年の発足以来、一貫してアカデミアの臨床研究の立ち上げと運営を支援し、その数は2012年8月現在で165件に達している。また、EDCシステムを積極的に活用することで効率化を進め、現在稼動している研究の70%以上でEDCを利用している。今後『eClinical Base』を利用し、100%EDCにて実施する予定とのこと。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.tri-kobe.org/news/pdf/20120824_PressRelease.pdf

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薬物依存PTSD患者、PE法による統合治療でPTSD症状がより大きく改善

外傷後ストレス障害(PTSD)で薬物依存を有する患者に対して、PTSDの認知行動療法の1つである持続エクスポージャー法(prolonged exposure therapy:PE)を用いたPTSD・薬物依存の併用治療は、薬物依存の重症度を増大することなくPTSD症状をより大きく改善することが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKatherine L. Mills氏らが、103人の患者について行った無作為化対照試験の結果報告したもので、JAMA誌2012年8月15日号で発表した。薬物依存を有するPTSD患者は少なくないが、そうした患者に対するPE法の適切性については明らかでなかったという。治療9ヵ月後に、PTSDと薬物依存症の重症度変化を評価研究グループは2007~2009年に、オーストラリア・シドニーの医療機関で、精神疾患の診断基準「DSM-IV-TR」によりPTSDと薬物依存症の診断を受けた患者103人について試験を開始した。被験者を無作為に2群に分け、一方には、PE法によるPTSDと薬物依存症の併用治療(COPE)と、薬物依存症に対する通常の治療を行った。もう一方の対照群には、薬物依存症に対する通常の治療のみを行った。主要エンドポイントは、治療開始9ヵ月後の臨床診断面接尺度(CAPS)によるPTSD重症度の変化と、国際比較診断用構造化面接(CIDI)による薬物依存症の重症度の変化だった。CAPSでは15ポイント、CIDIでは1ポイント以上の変化を臨床的に有意な変化とした。PTSD重症度はCOPE群でより大きく改善、薬物依存症重症度改善幅は両群で同等その結果、両群ともに、試験開始9ヵ月後までにPTSD重症度の有意な改善が認められた。CAPS変化の平均値は、COPE群が-38.24(95%信頼区間:-47.93~-28.54)、対照群は-22.14(同:-30.33~-13.95)だった。両群の平均格差は-16.09(同:-29.00~-3.19)で、COPE群のPTSD重症度改善幅が対照群に比べて有意に大きかった。薬物依存症の重症度についても、両群ともに9ヵ月間で有意な改善が認められたが、その改善幅は、COPE群が0.43に対し対照群が0.52と、両群に有意な差は認められなかった(罹患率比:0.85、同:0.60~1.21)。その他、薬物使用、うつ症状、不安症状の変化幅についても、両群で有意な差は認められなかった。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(8)〕 結果は正しいが・・・

無作為化試験のメタ解析で得られたエビデンスのレベルは最も高いとされるが、どの試験を解析対象とするかといった点に解析者の作為が入る余地があることからより注意深い批判的吟味(Critical Appraisal)が必要である。しかしCTT Collaborationは公平、中立な解析を行うグループであり、その点では安心してよい(高血圧領域ではBPLTTCが有名)。 CTT Collaborationは、2010年にもメタ解析を行っており(Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration, et al. Lancet. 2010; 376: 1670-1681.)、スタチンでLDL-Cを1mmol/L低下させることによりMVEが22%減少し、その減少効果は、冠動脈疾患の既往、糖尿病、高血圧治療、年齢、性別、肥満、喫煙習慣、CKDといった患者背景の影響を受けないこと、また試験開始時のLDL-C値にも影響されないことを明確に示している。したがって今回のメタ解析の結果は予想された結果である。 MVEを減少させるベネフィットが有害性を上回る治療はすべて行うべきであろうか?スタチンの1日の単価を100円とする。5年間1,000人に使用すると100×365×5×1,000=1億8,250万円かかり、これでMVEの5年発症リスクが10%未満の低リスク群では11人の血管イベントを予防するのだから約1,660万円で1人の血管イベントを減らすことになる。高リスク群と低リスク群の相対リスク減少効果がほぼ同じということは、絶対リスク減少効果は高リスク群の方が大きいことになり高リスク群で1人の血管イベントを減らすために必要な費用は少なくて済む。無尽蔵に医療費を使ってよいのならこういった医療経済評価は不要かもしれないが、限られた費用で最大幸福を得るためにはスタチン服用の優先順位を決める必要があろう。実は、改訂された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」はこういった絶対リスクを考慮する姿勢を強く打ち出している。

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糖尿病発症時に正常体重の人、過体重・肥満の人に比べ死亡リスクが約2倍

 2型糖尿病発症時の体重が正常範囲(BMI 25未満)の人は、過体重や肥満の人に比べ、長期死亡リスクは約2倍に増大することが示された。米国・ノースウェスタン大学のMercedes R. Carnethon氏らが、5つのコホート試験を基に分析を行い明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月8日号で発表した。2型糖尿病発症時に正常体重の人は、いわゆる「隠れ肥満(metabolically obese normal-weight)」の代表と考えられている。しかしこれまで2型糖尿病発症時の体重と死亡との関連に関して、心不全や慢性腎臓病、高血圧などの慢性疾患でみられた「肥満パラドックス(obesity paradox:BMIが大きいほうが予後が良好)」が認められるかどうか、明らかでなかった。糖尿病発症の2,625人について、延べ2万7,125人・年追跡研究グループは、「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)study」(1990~2006)、「Cardiovascular Health Study(CHS)」(1992~2008)、「Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)」(1987~2011)、「Framingham Offspring Study(FOS)」(1979~2007)、「Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)」(2002~2011)の5つのコホート試験についてプール解析を行い、糖尿病患者の死亡と体重の関連を調べた。被験者のうち、40歳超で2型糖尿病を発症したのは2,625人で、追跡期間は延べ2万7,125人・年だった。被験者を、BMIが18.5~24.99を正常体重、BMIが25以上を過体重・肥満にそれぞれ分類し検討。主要アウトカムは、全死亡、心血管死、非心血管死だった。全死亡リスク2.08倍、心血管死1.52倍、非心血管死2.32倍2型糖尿病発症時に正常体重だった人の割合は、9%(ARIC)から21%(CHS)にわたった(全体では12%)。追跡期間中に死亡したのは449人で、そのうち原因が明らかだった人の中で心血管死は178人、非心血管死は253人だった。全死亡、心血管死、非心血管死の発症率は、いずれも、正常体重群が過体重・肥満群より高率だった。正常体重群の全死亡率は1万人・年当たり284.8、心血管死亡率は同99.8、非心血管死亡率は198.1だったのに対し、過体重・肥満群はそれぞれ、152.1、67.8、87.9だった。人口統計的特性や血圧、脂質値、喫煙などについて補正を行った後、過体重・肥満群に対する正常体重群の死亡に関するハザード比は、全死亡が2.08(95%信頼区間:1.52~2.85)、心血管死が1.52(同:0.89~2.58)、非心血管死が2.32(同:1.55~3.48)だった。著者は、今回の分析では、なぜ2型糖尿病発症時に正常体重の人の死亡率が高いのかは解明できなかったとしたうえで、先行研究で報告されている、2型糖尿病患者で正常体重の人と過体重・肥満の人との遺伝子プロファイルの違いに言及した。仮に、2型糖尿病患者で正常体重の遺伝子プロファイルが、糖尿病以外の疾患リスク増大を促すとすれば、そうした人の死亡率は遺伝的に高くなるのかもしれない、と考察している。そのため今後の研究では、そうした遺伝的素因による死亡率増大の可能性についても追究すべきだとした。そのうえで今回の結果は、米国民のうち、正常体重で2型糖尿病になりやすい、高齢者や非白人(アジア人、黒人など)といった人々にとって、重要な知見であるとまとめている。

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エキスパートに聞きました!「痛みの治療」に関する素朴なギモン Part1

CareNet.comでは8月の1ヵ月間を通し、痛み、特に神経障害性疼痛にフォーカスして様々な情報をお届けしてきました。そんな中で視聴者から寄せられた痛みの治療に関する質問に対し、小川 節郎 先生にご回答いただきます。神経障害性疼痛の鑑別診断は?一番重要なのは問診と簡単な神経学的検査です。たとえば、『1年前に帯状疱疹に罹患、原疾患は治癒したものの痛みが残っている』、『昨年脚を骨折、治癒したものの折った部位に痛みが残る』、などのケースでは炎症はすでになくなっているわけです。そのようなケースでは神経障害性疼痛の要素があると考えられます。また、『腰痛を有するが足の先まで痺れる』、『触ってみると痺れている部分の感覚が落ちている』など簡単な神経学的な所見が糸口になりえます。特に、触れただけで痛い、風があたっただけでも痛いなどアロディニア症状を呈する例では神経障害性疼痛の要素が強いといえます。神経障害性疼痛診療ガイドブック(南山堂)http://www.nanzando.com/books/30881.phpに掲載されている神経障害性疼痛の簡易調査票もご活用いただければと思います。肩手症候群、肩こり、頭痛、視床痛は神経障害性疼痛に含まれるのか?これらご質問の痛みにはすべて神経障害性の要素があるといえます。肩手症候群=神経障害性疼痛というわけではなく、肩手症候群の中に神経障害性疼痛の要素が含まれている患者さんがいるということです。頭痛も種類によっては神経障害性疼痛の要素が高いものがあります。頸性頭痛では頸椎から出る神経を傷害していることが多く、ビーンとした痛みを呈する場合などは神経障害性の要素が強いといえます。視床痛はほとんどが神経障害性疼痛といってよいでしょう。痺れと痛み、同じ認識で治療しても良いか?痺れ自体が十分解明されているとはいえないものの、神経繊維も違うようですし、最近は痺れと痛みは別のものであろうという認識になっています。もう少し時間が経過すると興味深い結果がでてくると思いますが、今のところは同じ認識で治療せざるを得ないというのが現状です。ペインクリニック専門医への紹介のタイミングは?オピオイド処方時は、「経口モルヒネ換算120mg/日でコントロールできないとき」というのも一つの目安だといえます。しかしながら、先生方ができる通常の治療経過で改善しない場合は、いつでも相談していただきたいです。慢性的に薬剤を出しているという状況は避けた方がよいでしょう。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(6)〕 女性の急性腎盂腎炎、抗菌薬の7日間投与が有効

急性腎盂腎炎の治療は、原因菌に感受性のある抗生物質を10~14日間投与するプロトコールが、本邦で長らく用いられてきた方法であろう。第一選択の薬剤は培養検査の結果が判明するまで、βラクタムあるいはニューキノロンが選択されるが、院内感染症対策部門の意向も取り入れて選ばれることと思う。 女性の単純性腎盂腎炎に関する診療ガイドラインには、Infectious Disease Society of AmericaおよびEuropean Society for Microbiology and Infectious Diseaseによる2010年版ガイドラインがある1)。これによると、フルオロキノロン耐性菌検出率が10%を超えない地域で入院の必要がない症例に対しては、シプロフロキサシン(500mg ×2回/日)を7日間投与というプロトコールが推奨されている。ただしその根拠となる研究は、シプロフロキサシン7日間とST合剤14日間との比較であり、対象症例は平均25歳、血液培養陽性症例は3%と、若年の軽症患者が主体であった2)。本研究はシプロフロキサシンの7日間と14日間投与との比較、しかも中高年症例(平均年齢46歳)、血液培養陽性症例27%と、ある程度対照症例に幅をもたせた研究であったが、7日間投与は14日間投与に劣らない結果となった。治療期間の短縮は患者さんにとって福音だし、医療経済的にもメリットがある。ただし、7日間投与の優良性はほかの抗菌薬にはかならずしも当てはまらないとしている。 この文章を執筆中、1週間程度の急性腎盂腎炎の治療を受け改善したのち、再発して筆者の外来を訪れた患者さんを拝見した。関節リウマチで少量ステロイド投与中の方だった。 今回はしっかり14日間の治療を行い、元気に退院された。シプロフロキサシンではなかったが、discussionの内容に合致していたので印象に残っている。

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