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降圧薬2剤併用にNSAIDsを追加併用、30日間は急性腎不全に注意が必要/BMJ

 利尿薬、ACE阻害薬あるいはARB、NSAIDsの組み合わせによる3剤併用制法は、急性腎不全リスクを増大することが、カナダ・Jewish General HospitalのFrancesco Lapi氏らによるコホート内症例対照研究の結果、報告された。リスクは、治療開始から30日間が最も強かったという。著者は、「降圧薬は心血管系にベネフィットをもたらすが、NSAIDsを同時併用する場合は十分に注意をしなければならない」と結論している。BMJ誌2013年1月12日号(オンライン版2012年12月18日号)掲載報告より。2剤併用とNSAIDsを追加した3剤併用療法の、急性腎不全リスク増大との関連を調査 研究グループは、降圧薬の利尿薬、ACE阻害薬あるいはARBの2剤併用療法に、NSAIDsを追加し3剤併用療法とした場合の、急性腎不全リスク増大との関連について調べた。 コホート内症例対照研究の手法を用いた後ろ向きコホート研究で、UK Clinical Practice Research DatalinkとHospital Episodes Statisticsデータベースから一般診療関連のデータを抽出して行われた。 主要評価項目は、直近の2剤または3剤併用療法との関連でみた急性腎不全の発生率[95%信頼区間(CI)]だった。3剤併用療法、開始後30日間の急性腎不全の補正後発生率比1.82 対象は、降圧薬を服用する48万7,372人であった。 平均追跡期間5.9年(SD 3.4)の間に、急性腎不全の発生が特定されたのは2,215件であった(発生率:7/1万人・年)。 全体として、利尿薬、ACE阻害薬、ARBのいずれかと、NSAIDsとの組み合わせによる2剤併用療法の利用者では、急性腎不全発生の増大はみられなかった。補正後発生率比は、利尿薬+NSAIDsは1.02(95%CI:0.81~1.28)、ACE阻害薬またはARB+NSAIDsは0.89(同:0.69~1.15)だった。 一方で、3剤併用療法の利用者では急性腎不全発生の増大がみられた。補正後発生率比は1.31(95%CI:1.12~1.53)だった。 また2次解析の結果、3剤併用療法で最も高率のリスクがみられたのは、使用開始後30日間だった。同期間の補正後発生率比は1.82(95%CI:1.35~2.46)だった(31~60日:1.63、61~90日:1.56、≧90日:1.01。またNSAIDs半減期別では、<12時間:1.29、≧12時間:1.77)。

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メディケアプランの5つ星評価、加入動機に反映されているのか?/JAMA

 米国のメディケア・メディケイドサービスセンターは、Medicare Advantage(民間保険会社がサービスを代行運営するプラン、通称:メディケアパートC)加入の判断指標とするために、5つ星評価プログラムを実施している。これまで同評価が加入者の判断指標として反映されているのかは調べられていなかったことから、同センターのRachel O. Reid氏らが調査を行った。JAMA誌2013年1月16日号掲載より。2011年の5つ星評価と加入者動向との関連を調査 Reid氏らが調査したのは、2011年にMAPD(Medicare Advantageと処方給付保険のメディケアパートDの統合)に関して行った5つ星評価の結果と加入との関連についてであった。 5つ星評価は、Healthcare Effectiveness Data、Information Set quality measures、Consumer Assessment of Healthcare Providers、Systems surveys、the Health of Seniors surveyなどのデータを組み込んで行われており、2011年のMAPD評価は2.5~5星にわたったという。 本研究では、それら5つ星評価と加入者(新規加入95万2,352人とプラン切り換え加入者32万2,699人)との関連について検討された。分析は、条件付き(加入者・プラン特性を調整)ロジット回帰モデルで分析にて行われた。星が上がることに、また最高評価が付いているものを選択している傾向がみられる 結果、新規加入者では、星が1ランクあがることに、加入傾向は9.5ポイント(95%信頼区間:9.3~9.6)上昇する傾向が認められた。最高評価が付いているサービスについては、1.9ポイント(同:1.8~2.1)上昇する傾向がみられた。 プラン切り換え加入者では、星が1ランクあがることに、加入傾向は4.4ポイント(同:4.2~4.7)上昇する傾向が認められた。以前の加入プランよりも高い評価が付いているプランへの加入の傾向は6.3ポイント(同:6.0~6.6)の上昇がみられた。 星の評価との関連は、黒人、地方在住、低収入、年齢階層で最も若いという加入者特性では、それほど強くなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「5つ星評価と加入決定との関連はポジティブであることが認められた」と結論している。

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女性医師1,000人に聞きました!出産後の復職どうする?復帰にあたっての不安材料は

先生の勤務先には、出産後に職場復帰された女性の先生はいらっしゃいますか?あるいは先生ご自身がまさに子育て真っ最中でしょうか。いまや国家試験合格者の3割が女性である現在、妊娠中のフォロー、出産・子育て期間中の業務分担をどうするかは避けて通れない問題です。今回は女性医師1,000人に、出産後の復職についてどのように考えるか、経験者の方へは経験談をお尋ねしました。制度の利用、上司・同僚の反応、仕事と家庭生活の両立、キャリア形成の壁などいくつもジレンマを抱えていることが明らかに…セキララコメントも必見です!コメントはこちら結果概要約7割の女性医師が時短・非常勤の勤務を望むが、経験者の半数近くがフルタイムで復帰今後出産を考えている女性医師のうち、施設の別を問わず『短時間あるいは非常勤で復帰したい』と回答したのは約7割。一方、実際に出産した医師の経験で最も多い回答は『同じ施設にフルタイム勤務』で37.7%。『別の施設でのフルタイム勤務』(8.4%)と併せると約半数がフルでの復帰という結果となった。50代以上では「時短勤務どころか育休すらなかったため」「妊娠中・授乳中も当直した」「夜間の呼び出しに子どもを連れて行った」といったエピソードが多く寄せられた。経験者のうち『時短・非常勤』を選択した医師は若い年代ほど増えるが、30~40代においても「フルで復帰するか退職かを迫られた」「上司の理解がなく、制度があっても使えなかった」といった声が多数見られた。いちばんの不安材料は『子どもを預ける施設』、病院に勤務しながら病児保育探しに奔走産後の生活を検討する際の不安材料について上位3つまで選択してもらったところ、経験者から最も多く挙がったのが『保育所・病児保育など施設の利用』で48.9%に上った。「自院の保育所は看護師しか利用できない」「自分が手術中に、発熱した子どもをすぐ迎えに来るよう保育所から連絡がきて途方にくれた」といったコメントが寄せられ、通常の保育所の確保に加え、病院勤務にも関わらず病児保育探しに奔走していることを嘆く声が多く挙がった。一方「子どもはペットではない、長時間預けっぱなしにできれば解決する問題ではなく、医師全体での勤務時間短縮が必要」といった意見も寄せられた。同僚の厳しい視線、精神的に耐えかねて退職・転職も産後の復帰形態を大きく左右する要因として、“上司・同僚の理解”を挙げる声が多く寄せられた。「施設の制度が整っていても、『所属科の前例がない』と言われる」「産後の当直免除について男性医師から『オレにも子どもはいる』などと反対された」などのほか、子どものいない女性医師の視線がいちばん厳しいといった意見もあった。周囲の冷遇に加えて、同僚の負担が増えることへの申し訳なさから退職を選んだとする回答も。子どものいる女性医師だけの問題ではなく、医師全体が過重労働であることの改善が必要との声も挙がった。家族の協力の有無に大きく左右される復帰形態特にフルタイム勤務の継続に関し、家族(特に実母)の育児協力の有無が大きいとした意見が多かった。実家から遠いその他の理由で協力が得られない状況の場合、時短・非常勤勤務を選ばざるを得ない医師が多いこともコメントからうかがえる。一方、「子どもはほとんど母が育てたようなもので、それでよかったのか疑問」といった声も。また夫も医師という場合は特に家事・育児への協力が得られない場合が多く、「夜中に患者が急変し、寝ている子どもをおいて出かけざるを得ず、綱渡りのような生活」など、周囲の環境と子ども、自分の心身のバランスに疲弊する日々を“綱渡り”と表現する医師も複数見られた。描いていた将来像に必要な知識・経験の不足から、やむなくキャリア転換も今後出産したいとする医師の最大の不安点として、『現場感覚の薄れ』『技術・知識の遅れ』が挙げられた。実際に経験者からは、「勉強や学会参加など自己研鑽に充てられる時間が大幅に減った」「病棟を担当できず知識・経験を蓄積できないため専門医取得ができないまま」、その他、本来の専門をあきらめ転科あるいは産業医や公衆衛生関係などに転向したというケースも寄せられた。設問詳細女性医師の出産後の復職についてお尋ねします。12月3日の長崎新聞によると『厚生労働省の2010年の調査によると、医師は全国に約29万5千人おり、そのうち女性は18.9%の約5万6千人。県内でも医師4062人のうち、15.3%の621人が女性で、1996年の327人からほぼ倍増した。20年後には医師の4人に1人が女性になるのではないかともみられている。しかし、医師不足などを背景に産休や育児休暇を取りにくいなど、職場環境が整備されていないために妊娠、出産を機に辞めてしまうケースもある。女性医師が増える中でそうした課題を放置しておくことは、医療崩壊を招く原因にもなるという(略)』とのこと。そこで先生にお尋ねします。Q1.ご自身について当てはまるものをお選び下さい。1.配偶者あり、子どもあり2.配偶者あり、子どもなし3.配偶者なし、子どもあり4.配偶者なし、子どもなしQ2.出産後数年間について、どういった働き方を選びたいですか?出産された方は当時の選択に近いものをお答え下さい。1.出産前と同じ施設にフルタイム勤務2.出産前と同じ施設に短時間あるいは非常勤で勤務3.一度退職し、別の施設でフルタイム勤務4.一度退職し、別の施設で短時間あるいは非常勤で勤務5.退職し、医師としての仕事はしない6.子どもをもうけるつもりはない7.その他(Q2で「子どもをもうけるつもりはない」を選択した方以外)Q3.出産後の生活をどうするか検討するにあたり、特に不安に感じることはありますか?出産された方はその当時の考えをお選び下さい(3つまで選択可) 1.医療技術・知識が遅れること 2.臨床現場の感覚が薄れること 3.勤務施設内で、短時間・非常勤勤務などの仕組みが整備されていないこと 4.勤務施設内で、先輩女性医師の実例があまりないこと 5.職場の同僚・上司の、理解・協力が得られるかどうか 6.託児所・保育所・病児保育など子どもを預ける施設の利用について 7.専門医など資格取得について 8.診療科選択、留学の有無などキャリア形成について 9.自分の働き方に対する、夫・家族との考えの違い10.仕事と家庭生活との両立について11.特にない12.その他Q4.コメントをお願いします(Q2.3の選択に関して思うこと、周囲の方を含め具体的なエピソード、出産された方は想像していたことと現実とのギャップ、施設や社会に望むことなどどういったことでも結構です)2012年12月19日(木)~29日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員の女性医師コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)【子どものいる医師】「託児所等は子供が病気になったとき預かってくれません。医療施設に勤めているのだから、そうなった時のサポートを配慮してくれたらいいのにと思いました。」(40代,内科,その他)「男性医師の感覚では、最も理解のある方々でさえ、子供を長時間預かる施設や病児保育所さえ開設すればよいと考える人が多いですが、子供はペットではないので勤務時間の短縮は不可欠。また、そして勤務時間短縮によってまず諦めなければいけないのは学会活動や研究、自己研鑽の時間となります。今の状況で子育て中の医師がバランスのよいキャリアを築くことはほぼ絶望的です。」(50代,麻酔科,一般病院)「17年前に第1子を出産。先輩女医の実例がほとんどなく、妊娠判明と同時に退職、医局に戻らされる状態でした。医局でも特に仕事に対する義務や強制はなく、自然と仕事の割合が減り家庭に入っていくという状態でした。しかしそれが前例となり、どんどん後輩達も出産後は当直なし・パートと負の連鎖となり、むしろ医局崩壊の一原因になったように思います。組織としての女医の未来のビジョンがあったらと思います。」(40代,小児科,一般病院)「医師としてキャリアを積むには病棟管理は必要。となると緊急呼び出しにも対応せざるを得ないが、子供が小さいうちは、夜間でもいつでも頼める人がいないと難しい。年老いた母に気軽に毎回お願いするのも気が引ける。信頼できる第三者にはなかなか巡り会えず、結局自分が非常勤でみている。外来だけで専門医の知識・経験の蓄積は難しいです。本当はフルタイム勤務したい。家事育児のサポートが必要。」(40代,腎臓内科,一般病院)「出産は女性にしかできないが、育児、家事は男性でもできる。男性の家事育児への積極的な参加が必要と思われる。男性は参加しているつもりでも、女性にしてみればまだ不十分と思うことはたくさんある。育児についての支援は、女性ばかりでなく、男性にも反映されるものである。」(40代,内科,一般病院)「出産前後で勤務先を変えるかどうかは出産前の勤務先が短時間勤務でも可能か、自宅から通いやすいか、職場での理解が得られるかなど、様々なことに影響されると思います。実際に産後、復帰に向けて勤務先と調整をしていく中では、事前に話し合っていた条件と少しずつずれる場合もあり、育児をしながらの復帰についてはまだまだ理解が得られにくいと感じています。保育園は長時間預かってもらえますが、小学校は下校が早い日も多く、仕事と育児の両立がより難しい。地域によって、学童保育の終了時間も様々なようです。」(20代,精神・神経科,一般病院)「勉強をする時間がない、病棟を持ちづらくなる、家事の負担は大きくのしかかる、加えて、とくに教育機関病院の場合診療時間を超えた仕事(研究会発表、学生の勧誘、指導など)ができないことで、年齢を重ねフルタイムで働いていても立場は研修医と同じ、それが現実です。」(40代,血液内科,大学病院)「祖父母の応援がない、子供が病気がちなど、どうしても突発での休み・早退が避けられないことがあります。特に医師は男性的社会なので育児に関して理解のない人が多い。『男性社会』でなく『男性的社会』というのは女性医師であっても理解のない人が数多くいることを指します。意識改革をしなければ働きにくい職場が減らず、復職しない又はフルタイムで働かない女性医師が増え、医師不足はどんどん加速すると思います。」(40代,放射線科,一般病院)「当時は院内保育所はあっても女医は利用できず、看護師さんのためだけのものでした。病院から一番近い保育所に預けましたが、手術中に保育所から電話がかかり、子供が発熱したのですぐに迎えに来て欲しいと言われ途方にくれたことがありました。「あと3時間何とかみていて欲しい、責任は自分が取るから」とお願いしたことが忘れられません。結局5時間後となり、保母さんたちから白い目で見られ針の筵のように感じました。病児保育がなかったことが一番つらいことでした」(50代,皮膚科,一般病院)「院内保育に預け、時短で勤務しています。時短ゆえ主治医免除なのですが、主治医制なので、担当がなく手持ち無沙汰なことも。周りは担当患者の仕事で忙しくしている中、どう観られているのだろうと気になります。手術も第2助手程度で、後輩たちが助手や執刀医として手術するのに焦りを感じます。かといって、主治医になって、こどもがインフルエンザにでもかかろうものなら遅刻、早退となりかねず・・・キャリアは頑張ればいつでも積めるが、子育ては今しかできない、そう言い聞かせて毎日仕事に向かっています。朝6時から夜11時、12時まで仕事をしているときにはつらいと思ったことはありませんが、今の勤務の方が精神的につらい。意外でした」(30代,産婦人科,大学病院)「勤務先は女性に優しい職場で、出産後は復帰を考えていました。 が、つわり時に半休を月1-2回取った時点で、”今後絶対に休まないという100%の保証ができないなら、年度末に辞めてもらう”と言われました。結局、妊婦検診のときの代診も他科Drに頼んで、必死で産休までつなげて職場を去ることになりました。産前、産後に使える制度があっても上司、同僚がそれを認めなければ何の意味もないと思いました。」(40代,腎臓内科,その他)「近くに頼れる親類がいないため、子供の急な病気の時や休日出勤、出張などで困る。自分はバリバリ働くタイプだと思っていたが、子供の病気の際などは置いて出たり病児保育に預けるのもはばかられ、結局比較的自由のきく研究職にとどまっています。一番仕事のできる30代をこのように過ごしてしまい、今後自分が医師としてどうやって生きていけばいいのかわからなくなることが多い。」(40代,消化器科,その他)「子供は急に病気をします。事前に急病時の体制を依頼し事務長も了解との事でしたが、実際は『代替えの医師はいない』と言われ困った記憶があります。診療所出向時は、3歳児と一緒に出勤した事があります」(50代,内科,一般病院)「子育てというと『3歳あるいは就学まで』ととらえられがちですが、子供の成長を見守る上では少なくとも大学入学までは親の目(見守り)が必要。子供一人あたり約20年間という長い目での支援が望まれます。具体的には小学生・中学生をひとり置いて、宿泊を伴う学会参加はかなりの困難が伴います。 未就学児であれば学会で託児が可能ですが、小学生以上はそれもありません。いざという時に子供を夜間、安心して任せられるサービスがあればと思います。保育園・学校・職場・学会活動、いつも「すみません」と謝ってばかりでちょっと疲れます。(心の中では「悪いことをしている訳ではないのに…」と独り言を言っていますが)」(50代,神経内科,一般病院)「どんな形でも働き続けていれば、いつかは貴重な戦力となりうる。子育ても社会貢献であり、プライベートなこととして切り捨てない社会であってほしい。子育ての経験は、患者に共感できる医師になるために大切」(50代,内科,診療所)「法的に産休があっても、教師の産休用員のような補填システムがないため同僚に多大な迷惑をかけることになり、精神的に非常につらい。また産休は6週(今は8週)しかないが、0歳児を預かる認可保育所でも4月時点で6カ月になっていなければ入れず、無認可保育所で浪人しなければならない。そういう制度の矛盾が障壁」(60代以上,内科,その他)「産休以外は働いてきました。子守りは両方の親に助けてもらいながら、2人目の出産後は夫の実家に同居。当時は出産した女性Drが復帰すること自体珍しく、出産前後の当直を免除する規定さえ院内にはありませんでした。妊娠4カ月目で当直の夜中にDOAがきて心マッサージをしながら病棟に挙げ、その後お腹が張って具合が悪くなり、やっと診療部長に当直免除を申し出たことを覚えています。今はだいぶん環境が整備されてきましたが、女性側から妊娠出産に関連する要望を主張しにくい雰囲気は続いていると感じます。また現在の女性医師復帰援助の流れ自体、『医師が不足しているから』であって、女性医師の生涯の負担の大きさについて本当に理解し改善しようとしているわけではないのではと皮肉に考えてしまいます。」(50代,神経内科,一般病院)「復帰に向けての研修制度のようなものがあれば利用したかった。フルタイム=朝から夜まで(残業有)の勤務・病棟主治医(休日回診、呼び出し有)と、パート=時短・外来のみの格差がありすぎ。もっと負担を軽減しながらも臨床の仕事が可能な制度の確立が必要と感じる。」(30代,消化器科,一般病院)「周囲の環境整備もとても大切ですが、一番大事なのは、子育てを楽しみながら、医者として第一線でよい仕事がしたいという高いモチベーションだと自分の経験上、確信しています。」(60代以上,眼科,大学病院)「専門医取得準備期間中に産休になりました。年齢的にも女性は専門医取得と出産は重なりやすいと思う。認定機関に連絡したところ、『産前6週、産前8週以上休むと専門医取得要件を満たさないため1年遅れになる』とのこと。産後8週の時点でまだ帝王切開の傷が痛んだし、歩くだけで痔になる状態での復帰をしましたが、産前産後の体調は全員が良好とは限らない。母乳も出ていたのにあきらめました。専門医を同級生が取っていく中で自分だけ遅れたくないとの思いで頑張りましたが、産休期間の取り扱いについてもう少し選択肢の幅を持たせてほしい」(30代,泌尿器科,一般病院)「女性医師は転地・休職・復職を余儀なくされがちである。その是非はさておき、キャリアが途切れがちであるからこそ資格取得は必須と考えられます。産休中の自宅学習についてプランニング・指導など厚生労働省が主導となりe-learning,各大学、大学院との連携モデルを確立していただきたい。男性の育児休業取得に繋がるよう確固なシステム構築をお願いしたい。医師はその人口問題に介入すべき職種と考える」(50代,内科,一般病院)「周囲におられる年配の女医は家政婦を雇って開業医を続けている人が多く、比較的若い女医さんは実家のお母様が同居され手助けをうけつつ勤務医を続けている人が多いように思います。逆に親のサポートがない女医さんは、子供を保育園に預けて勤務時間を短くされています。常勤で勤務しようと思ったら両親(特に実母)のサポートが不可欠のように思います。」(40代,耳鼻咽喉科,診療所)「育児と大学でのキャリアの両立を目指している。第1子出産時は産休のみの取得で復帰したが、キャリア上に受けた不利益を思い出すとなかなか第2子妊娠に踏み切れない。」(30代,神経内科,大学病院)「優秀でかつ人間的にも申し分ない女医の知人の多くが子どもをあきらめている。 こうした女性が子供を産まないことは社会にとって損失だと思う。」(40代,眼科,大学病院)「今は良い時代になったと思います。私はこどもと一緒に当直もしましたし、重症の患児がいるときは自分のこどもと小児科病棟で寝泊まりもしました。病児保育も未だそれほどなかった。核家族で、夫が産婦人科医で、私がフルタイムで働くことは無理で、2人目から非常勤に。ロールモデルもいなかったし、なにより孤独でした。」(40代,小児科,一般病院)「周囲の人々の協力なくしては、女性医師が仕事を続けていくことは不可能。保育園、自分の親、兄弟、知人、近所のおばちゃんなど、子育てに総動員。悩む時間すらもなかった、あのころが懐かしいなあ・・・」(50代,整形外科,診療所)「勤務医では周囲の理解が得られず、結局開業医をえらびました。」(40代,内科,診療所)「Q3は全部選びたいぐらいでしたが、上位3つにしました。 医師は“卒後○年目”で見られるので、年数だけ経ってしまい、復職した際の研修・指導が十分ではないのでは、などの不安があります。 医局などでの位置も産前より低いところに置かれているように感じます」(30代,代謝・内分泌科,一般病院)「しばらくは義母に子どもを預けて当直もしていましたが、どうしても帰宅時間が遅くて家事ができなくなり、当直なしの外来のみの個人病院へうつりました。そこで数年間働きましたが、自分の専門の患者さんを診る機会がなくなって技術も知識も古くなってしまいました。もう本来の専門分野の一線では働けないとあきらめています。」(50代,小児科,その他)「いわゆる「昇進」は遅れましたが、出産後研究生活で学位取得、専門領域での研究、学会発表等、得るものはたくさんありました。ただ、専門外来で予約制でしたので、子供が具合悪くても休めず、朝早く実家の母に1時間半かけて出てきてもらうことがあり「自分の子供は診られないの」と言われたのが、辛く、申し訳なかったです。」(50代,内科,診療所)「医師になるまでに、多くの税金や学費が使われている。女医は、出産育児などある一定の時期は、仕事をペースダウンせざるをえない。しかし、どのようなかたちであれ仕事を継続しやめないことが、社会への還元として重要と考える。そういう覚悟をもって、現在、育児と仕事を継続している。」(40代,耳鼻咽喉科,大学病院)「勤務先に病児保育室が併設されているのでとても便利です。保育園も勤務先から徒歩数分圏内。 発熱などで、園から連絡があったら、10分だけ仕事を中断し迎えに行き、そのまま病児保育室へ入れてます。恵まれた環境だと思います。育児が落ちつく数年間はお給料の安さや仕事の内容関係なく、今の環境で仕事する予定」(30代,小児科,一般病院)「当時は、フルタイムでの勤務でしたが、当直や病棟から外れて、外来、検査を中心とした仕事内容にかわりました。 周囲に女性医師が多く、経験した先輩に相談しながら、仕事を続けました。検査(心エコー)を中心に仕事をしましたが、のちにその仕事から、留学や論文に結び付き、帰国後の就職にも心エコーを中心の仕事に就くことができました。 出産を機に自分のできることが新たに見つかることもあるのだと思います。 若い先生にも、希望を持って仕事を続けていただきたいです。」(40代,循環器科,診療所)「就学前までは保育所やシッターサービス等、子供が病気の時や時間外、休日など保育をサポートしてくれる方法が複数ありました。むしろ小学校に入学し、1人で過ごさせるのが心配な1,2年生の頃、学童になじめなかったり、学童自体がなかったりして短時間勤務や休職を余儀なくされるケースが散見されました。低学年児童を抱えるワーキングマザーを支える方策(ワークシェアリングなど)がもう少しあった方がよいと思います。」(40代,産業医,その他)「私の働いている病院はとても制度も文化も恵まれていて、出産後、産休、育休をとって、娘が1歳から家庭医療の後期研修をスムーズにスタートし、育休中も給与はある程度保障されていましたし、働き始めても、こどもの急な病気などでの急な欠勤なども問題なく過ごすことができています。今後第2子も考えていますが、後期研修も途中で途切れても継続できる仕組みになっています」(20代,総合診療科,一般病院)「まだ勉強したいことも多いのにドロップアウトしそうで怖かった。大学院+パート勤務で復帰したが、子供の体調変化等で穴をあけがちで、気持ちと現実のギャップを感じました。周囲も忙しいし、身近に頼れる環境もなく皆さんに迷惑をかけた」(40代,内科,診療所)「看護師からの見えない意地悪に翻弄させられましたが、自分が先陣をきっているので、後輩たちが仕事をしやすいよう頑張り続けました。男性医師の三倍は仕事をしました。ひたすら根性です。子供の寝顔で救われました。」(50代,精神・神経科,一般病院)「出産まではほかの先生達とも問題なく仕事をしており、第1子出産後職場に復帰したところひどいいじめにあい、退職しました。その後もっと責任を持って働きたいのですが、近くの病院に適切な病院がなく、つらい思いをしています。子供をもつと他の医師と全く同じように働くことは不可能であり、 病院として枠組みをきちんと整備されていない現在、自分のような医師が多数いると思う」(30代,皮膚科,一般病院)「『夫も医師で経済的にも困っていないのにどうしてそんなに頑張るの?』と聞かれると心が折れそうになります。身近な友人や親戚から『子供がかわいそう』とか『しつけや教育が行き届かないのでは』と無神経な言葉を投げかけられることも。 そんな中、上司や同僚の励まし、夫の就業に前向きな姿勢に助けられています。」(30代,麻酔科,一般病院)「第2子出産後、仕事育児に関しての夫との考えの違いが広がった。第3子の妊娠中、育児と仕事に頑張りすぎ肉体的精神的無理がたたり、死産となった。この子の死をきっかけに夫と子育てについての歩み寄りができた。」(50代,小児科,一般病院)「実は、女性同士のほうがつめたい」(40代,腎臓内科,大学病院)「意外だったのは、独身女性の同僚や子育て経験のある15~20年上の女性医師の視線が1番厳しいこと。もっとも理解があるのは、同じ境遇か子育て世代の男性医師(特に奥様が女医の家庭)。」(20代,麻酔科,大学病院)「職場では、当時出産した女医はほとんどいなくて、こどもが1歳過ぎたら当直は当然という風潮がありました。が、こどもによって、母がいなくても夜寝られるかどうかは全く違い、私の場合は全く不可能でした。1年~小学校低学年の現在まで、当直でなく日直に振り替えてやらせてもらい、フルタイムの勤務を続けることができています。必要に応じて選択できるとありがたいです。 発熱時は、幸い主人の職場に病児保育があったので、外来に穴を開けずに済みましたが、働き続けるには、病児保育は必須と思います。」(40代,血液内科,一般病院)「出産前は大学病院に医員で勤めていました。出産時は当然のように一旦退職し、1年後に復帰しました。看護師は産休、育休などがきちんとあるのに、医師はやめてもらわなければ補充できないとのこと。すこし不満に感じました。」(40代,内科,一般病院)「大学院で研究をする・・という選択は時間的や精神的には非常に居心地がよかった。研究のペースを子供の病気などで都合することができたし、臨床に多忙を極める同僚にもあまりあてにされずに楽だったように思う。ただし、経済的な部分や臨床のスキルはどうしてもペースダウンしたが、その後非常勤として戻り、リハビリすることができた。」(40代,麻酔科,その他)「周囲は『働くのであれば前と同様に』って感じ。当直や緊急の呼び出しは無理なので、結局仕事をあきらめざるを得ない状況。健康診断ばかりで専門的な知識を活かす場所がない。周囲は別に頑張らなくてもいいんじゃないかという雰囲気。働きたいのに。」(40代,血液内科,一般病院)「短時間、非常勤のシステムがなく、自分のできないことをほかの医師に押し付けてしまう(当直、入院の受け持ち、救急など)ことに罪悪感を感じ、職場をやめた。」(40代,その他,その他)「大学病院勤務だが、附属の保育園が看護師しか利用できない。医師、検査技師、放射線技師、栄養士、医療事務など多数の女性職員がいるのに全く理解できない。一番困るのが病児保育や病後児保育の手配。せっかく病院が隣にあり、小児科も充実しているのだから是非とも院内保育園で病児保育を導入してほしい。」(30代,神経内科,大学病院)「多様な就労形態を許容するシステム作りが必要.例えば当直は一切しないが昼間はOK,という人と,当直も昼間の勤務もするという人との基本給が全く同じでは不公平感が生ずる可能性がある.基本給が同じで当直手当を手厚くするなど工夫が必要. 出産後の女性医師側も,日和らないでまずはフルで戻ることを考え,何が障害なのか,何ができないのかを考えて,戻るためにはどういう配慮が必要なのかを申し出るべき.最近は,出産したらフルで働きたくないから非常勤,という後ろ向きな人がいて不愉快かつ残念. 復帰は早い方がいい.時短でもいいから早く復帰する.育休が長い方がいいということは絶対ない.」(40代,産婦人科,大学病院)「いかに意識を維持するかが大切で、家族の考えも大きい。医師を妻にするという意義を良く考えていただきたいと思います。男性にも責任があります。」(50代,呼吸器科,大学病院)「働く母親にとっては自分の母親(もしくは実家)がしっかりとサポートしてくれている場合は比較的キャリアも子育ても安定しているケースが多いと思います。そうでなければ(自分含む)、自分が3役こなさなければならず、フルの仕事は厳しい。特に夫も医師で多忙である場合は余計困難 」(40代,腎臓内科,一般病院)「来年度から復職予定ですが、働き先は大学病院しかないと言われました。通勤にかなり時間がかかるため一歳の子供を一日12時間も保育園に預けることになり、心が痛みます。」(30代,代謝・内分泌科,大学病院)「上司が理解のある人で、その方のおかげで続けてこられたようなものだったと思う。今と比べ保育所も少なく、綱渡りのような生活だったが、続けてきてよかった。若い先生にも、短縮勤務でもいいから続けて欲しいと思うし、そのための助力としたいと願っています。医師会でも相談窓口を作っているので、困ったときには相談してみてください。医師会に加入していなくても構いません。」(50代,耳鼻咽喉科,その他)「実母と姑の全面的な応援により、仕事をすることができました。つらいことは沢山ありましたが、こどもは母が必死に仕事していたことをきちんと理解していました。 ただ、私のようなつらい思いは、娘や嫁にはさせたくありません。」(50代,耳鼻咽喉科,その他)「勤めていた施設に託児所がなく、別の病院に転勤しました。そこで二人目も出産しましたが、同僚の先生方が協力してくださるので、非常に快適に仕事を続けられました。職場の人間関係と院内保育園この二つが大事だと感じます」(40代,小児科,一般病院)「第1子妊娠時に痛烈な嫌味を言う上司がおり、大学では産後復帰は無理だなと思いました。復帰はアルバイトに行っていた先(保育所あり)の外来時短勤務を直接交渉してお願いしました。第2子出産後は家族のサポートが必要となるため転居し、以前お世話になっていた先輩に相談して新しい職場(保育所あり)で外来時短勤務で復職しています。実際に子供のことで急にお休みをせざるをえないことがあるので自分がやすんでも助けていただける環境を探しました。人の好まない仕事を率先してすることで他の先生方とのバランスをとって働いています。子供をもつまで救急対応をずっとしてきていたのでかなり違う状況になっているのが現状です。子供の成長をみつつ過ごせる時間をもつためには仕方がありません。」(30代,循環器科,一般病院)「独身の頃と同じように働きたいと思って努力したが、難しかった。身近な同僚、所属大学の医局は理解があったが、派遣先の病院では他科の男性医師から嫌味や陰口を言われ、辛かった。」(40代,眼科,一般病院)「主人も勤務医(中間職)で、子供が病気になった時も夜間の面倒はみられないと言われました。私も産前同様に仕事をしたかったが、夜間呼び出しに応じられないこともあり、短時間・非常勤勤務としました。」(40代,内科,診療所)「出産するまでは、育児中で当直をしない時短勤務の人が同じ職場にいると、働くモチベーションが激しく低下していました。自分が出産後に同様の勤務体制となったとき、同僚たちが同様に考えるのではないかと思い、時短勤務は自分としてしたくありませんでした。現在当直は免除させてもらってますが、それ以外はフルタイムで働いています。 周囲の人の理解とは言いますが、こちらが理解して欲しいと思っても、不公平と思ってしまうのは事実で、そう思われてまで働きたいとは思えません。」(30代,小児科,一般病院)「3人目を出産後、体力的にも精神的にもきつくなって、退職しました。一度退職してから、復職するのは大変でした。また、離職期間が長かったので、以前と同じような働き方はできなくなり、また専門医取得もできませんでした。」(50代,内科,診療所)「医師になった息子から『乳児期から何故自分を他人に預けてまで仕事をしたのか』と非難されました。仕事、育児、家事で息つく暇も無かった30年ほど前の自分の生活は、子供にとっては憎むべき姿だったのかと」(60代以上,内科,一般病院)「病院併設の保育園の充実が大切だと実感しました。当時無認可保育園でしたので保育士や職員のボーナスの獲得にバザーを開いたり寄付をお願いしたりしてなんとかしのぎました。技術的な遅れは後からとりもどせます。 最初はあせりましたが、63歳の現在もまだまだ勉強は続けています。家族や医局の先輩、後輩の理解があったこともラッキーだったと思います。娘たちも同じ職業を選んでくれました。大変な時は一時です。 恐れず、腐らず一生懸命やればなんとかなります。」(60代以上,循環器科,診療所)「職場で時間外勤務を免除してもらい、常勤で仕事を続けることができている。 しかし子供の病気の時に病児保育や親に頼らざるを得ず、場合によっては仕事を休まなければならないのでいつも綱渡りの状態。」(30代,代謝・内分泌科,一般病院)「出産前は脳神経外科専攻だったので、両立困難であった。私の場合は母親が子供をほとんど育ててくれたが、それはそれで寂しい思いもしたし、これでいいんだろうかとずいぶん迷った。結局は内科系に移らざるを得なかった」(60代以上,神経内科,一般病院)「子育てしながらフルタイムで働いていて、子どもの急な病気の時に、自分の外来を代われる医師がおらず、休むことが難しかった。ベビーシッター、病児保育、県外の祖父母など子どもをみてくれる人・場をやりくりしたり、夜中に患者さんが急変した時も、寝ている子どもだけを家において出かけることもあり、今から思い起こしても綱渡りのような生活だった。 一人で責任を負う形ではなく、仕事を同僚とシェアできたり、労働時間も個人の状況に合わせ、フレキシブルに選択できるような働き方ができると子育て中の女性医師は働きやすくなると思う。」(40代,小児科,一般病院)「単独主治医制でなく、複数主治医制になっていくことがこれからは必要と思う。」(40代,内科,一般病院)「臨床特有の「勘」が薄れてしまって、取り戻せるのかどうかがとても怖かったです。 出産して職場復帰して思うのは、「早めの復帰に限る」これに尽きます。 ただそれには、周囲の理解や環境整備がまだまだ必要だと思います」(30代,精神・神経科,一般病院)「出産後、大学勤務を退職し、夫の留学についていったが、子供が小さかったため自分はセミナーにしか参加できず、せっかくの海外留学の機会もうまく活かせなかった。また夫は医師であるため、育児を分担することはほぼ不可能で、帰国後も保育所、一時保育の問題から、常勤勤務、研究会、学会への参加は難しく、アルバイト生活を続けた。そのため、自分のキャリアは出産前から著しく後退してしまった。常勤復帰後、出産前に技術がもどるまで約2年がかかり、さらに専門医取得は同期男性と比べると4年以上遅れた。 常勤の職場や研究会にも保育所または学童等の施設を併設しなければ、女医が常勤で働くことは難しいと思われる。」(40代,基礎医学系,大学病院)「どんなに頑張っていてもつわりによる仕事の量激減で周囲の評価が下がる(出産経験のある女性医師からは理解が得られるが)。子供の突然の発熱などでの早退、休診の場合のフォロー体制、子供の迎え時間に制限があることなどなかなかまだ理解が得られにくい。『わかるけど、あとの仕事は誰がするの?』って感じです」(30代,外科,大学病院)「同僚に女性医師がいなかったので、その科の医局会(20名程度出席)で、『出産後はいつから当直が可能か』などその時点では答えることが困難な質問をいくつもされ、誰も助け舟を出してくれず、セクハラ・パワハラにあたるのではないかと思われる状況でした。若い医師であったならば退職に追いこまれていたかもしれません」(40代,内科,一般病院)「現在、子供2歳。フルタイムで夜間・休日呼び出しありの勤務であるが、正直きつい。近くに住む祖父母の助けを借りて何とかこなしているが、綱渡りのような日々である。そろそろ、勤務形態を変えようと思っている。」(30代,耳鼻咽喉科,一般病院)「保育園は子ども3人合わせて15年間通いました。毎朝診療前に保育園に送り届けるという戦争のような日々は、体力・気力が必要でとても疲れます。しかしこれなしには仕事も続けられず、フレキシブルな保育園の存在が大切」(50代,代謝・内分泌科,診療所)【子どものいない医師】「上司に来年度子供を作る予定だから妊娠中は当直業務からはずしてほしいというと『他の医師にしめしがつかない、今の働き方ができないなら辞めてもらう』といわれました。私だって働きたいけど、先輩たちの流産、切迫早産を見ているので退職することにしました。仕事を継続している医師でも、小学校に上がると子供を預けるシステムがなくなるためそこでやめざるを得ない、という人も。妊娠・育児しながら働きたい、けれども上司との意見の相違・医療界のシステム(36時間労働など)の問題でやめていく女医は本当に沢山いると思います。」(20代,心療内科,大学病院)「残念なことですが、女性が男性と対等になるには、同じではだめで、それ以上の働きを示す必要があります。 例え2~3か月の産休でさえ、劣ってみなされてしまいます。 そう考えると産む気になりません」(40代,形成外科,診療所)「出産適齢期に不妊治療を受けられるようにしてほしい」(40代,神経内科,その他)「出産後の女医が働きやすければ離職せず、独身女医や男性医師の負担も軽減するので、出産後の女医が働きやすい環境はすべての人にとって重要だと考えます。私の属する医局は今大変な人手不足ですが、職場環境が整備されていないため、医局を離れ民間病院に転職する女医が後を絶たないという悪循環。そういった女医のために、私たち後輩まで「女医はいつ妊娠してやめるかわからない」という目で見られて、非常に迷惑しているのも事実です。産後の女医ばかりに目が行って、独身女医や男性医師にしわ寄せが行くことはあってはならないと思います。この高齢社会では、男性医師も家族の看病や介護をする可能性は十分にあります。職場の全員が働きやすく、必要時は休みやすい環境を整えていくことが大切だと考えます。」(20代,産婦人科,一般病院)「医学部増設よりも女医の復職環境を整備する方が、医師不足の解決に繋がる」(40代,循環器科,診療所)「出産はしていませんが、介護でも結局同じことだと思います。経過さえ順調なら、ある意味出産のほうが気持ちの上での準備ができるだけよいのかも。患者から、医師は時間外対応も休日がつぶされても当然と思われているような状況では、一般病院は男女とも単身で親も元気というときでないと勤務は無理なのでは?」(40代,産業医,その他)「高齢となり、妊娠は難しそうです。当直して流産したことが悔やまれてなりません。」(40代,精神・神経科,一般病院)「今妊娠中ですが、不妊治療など含め理解を得ることが難しく、一生懸命働くことも一人の女性としての幸せも両方という選択肢を選ぶのが難しく感じてしまう。病院側は大事な戦力を最終的には失う方向になるのではないでしょうか。」(30代,消化器科,一般病院)「育児を理由に働かない先輩医師がいます。純粋に能力給が支払われるなら良いのですが。週4日外来のみ・入院診ない・オンコールや当直免除にも関わらず常勤扱いを受けている人をみると、働く意欲を失う」(30代,小児科,一般病院)「私は結婚しませんでした。どうしても医師として、しっかりした仕事をしたかった為です。周りの出産後の女医を見ていると、嫌な面が多くどうしても好きになれません。せっかく多くの税金を使って、あるいは親の金を使って医師になったのに辞めてしまう女医、そのために医学部に入れずに医師になれなかった人がでるんですよ、と言いたい。税金を、親の苦労を無駄にしている。仕事に出てくる人にも言いたい、仕事をするのなら、他医に甘えるな、負担をかけるな、どれだけ同僚に迷惑を掛けているかわかっているのか、と。」(60代以上,小児科,診療所)「キャリア・収入・勤務内容、これらに優先順位をつけて周囲と折り合っている女医さんは応援したいと思う。正直、自分のキャリアアップに繋がる仕事、収入に繋がる仕事はする、だが医局の皆でまわしている雑用は子持ちだからしない、という母親医師は応援したくない。周囲が納得して協力できるような体制も考えてもらえたらと思う。」(40代,内科,一般病院)「私の年代では育児をしながら仕事を続けている女性医師のロールモデルが身近にありませんでした。私自身こどもを持たない人生を選択しました。」(40代,精神・神経科,一般病院)「女性医師の出産や子育てを考えていくのはいいが、一方で結婚しない女性医師、子供を産まない女性医師、子供が産めない女性医師の気持ちは置き去りになっている気がする。ある意味、逆差別のような・・・。そう考えるのは、子供が産めない女のひがみでしょうか。」(40代,代謝・内分泌科,一般病院)「医師の世界は男性を中心に回っているので、結婚・妊娠・出産は考えられない状況にある。」(40代,代謝・内分泌科,診療所)「私の勤務先では女性医師の待遇改善を積極的に進めており、診療部長の先生や事務長が率先的に週30時間以上で常勤扱い、夜間オンコールや当直免除などを導入しているので、そういった病院を探して転職するのもよいかと思います。産婦人科のくせに医局員は妊娠出産禁止と言っていた大学病院とは大違いです。」(30代,小児科,一般病院)「女医さんが多ければ理解を得て働きやすいかと思いきや、若い女医さんが産休や当直免除に入ると晩婚の女医さんが妊娠出来なくて大変そう。男性と女性のバランスが大事。人手不足の診療科、医員を守れる医局かどうかは大事と思う。施設の整備(遅い時間の保育、病児保育)を進めて欲しい。」(30代,内科,大学病院)「欧米のように当たり前に働き方が選べたり、勤務時間の調整が受けられ、それに対して後ろめたさを感じないでいいようになればいいと思います。 男性医師がフルタイムで働けるのも、妻が女性医師の場合、そうやって時間をやりくりしているおかげだと思うから。 子育てで一時的に休職することは、とても大切なことだと思いますが、以後完全に医師をやめてしまう人に関しては少し憤りも感じます。 何のために医師になったのか。だったら、その人の代わりにずっと医師を続けられる人を合格させた方が社会にとって良かったのではと思います。」(30代,その他,一般病院)「出産後の女医が働きやすければ離職せず、独身女医や男性医師の負担も軽減するので、出産後の女医が働きやすい環境はすべての人にとって重要だと考えます。私の属する医局は今大変な人手不足ですが、職場環境が整備されていないため、医局を離れ民間病院に転職する女医が後を絶たないという悪循環。そういった女医のために、私たち後輩まで『女医はいつ妊娠してやめるかわからない』という目で見られて、非常に迷惑しているのも事実です。産後の女医ばかりに目が行って、独身女医や男性医師にしわ寄せが行くことはあってはならないと思います。この高齢社会では、男性医師も家族の看病や介護をする可能性は十分にあります。職場の全員が働きやすく、必要時は休みやすい環境を整えていくことが大切だと考えます。」(20代,産婦人科,一般病院)「2回の流産歴があり、通院しながら常勤で働いています。通院時間の都合もあり、専門病院の消化器内科から地域病院の内科に転職しました。無事に妊娠・出産する方も仕事を続けるにあたり苦労があると思いますが、不妊・不育症の場合は周りが気づかなかったり理解してもらえなかったりするので、本当のことを上司や同僚に伝えられず肉体的にも精神的にもつらかったことがあります。 専門分野は続けられないと思い半分あきらめていますが、非常勤でも勤務ができるところがないかまた探そうと思っています。 仕事は続けたいので、ワークシェアや非常勤など、ある程度自由の利く勤務体制が広まるといいなと思います」(30代,消化器科,一般病院)「家庭の協力がある先輩は上手に両立していて、独身の医者より活動的に働いていた。周囲の状況と本人自身の意思が、結果を左右すると思う。」(40代,麻酔科,診療所)「今妊娠中ですが、不妊治療など含め理解を得ることが難しく、一生懸命働くことも一人の女性としての幸せも両方という選択肢を選ぶのが難しく感じてしまう。病院側は大事な戦力を最終的には失うのでは」(30代,消化器科,一般病院)「両立という言葉はどちらも中途半端という意味に聞こえる」(30代,循環器科,一般病院)「外科医であるため妊娠から産後の落ち着くまでの期間は第一線を退かざるを得ないということが一番不安。現場に少しでも携われるように外来などにはできる限り関わっていたい。」(20代,外科,一般病院)「子供がいるという理由で、周りに何の配慮もなく早く帰り自分の論文を仕上げていた時には許せないと思った」(40代,内科,診療所)「診療体制としては主治医制度をやめていく方向とし,夫側は育児休暇を取りやすくする,本人側としては病児保育・24時間保育のある病院(もしくは確保できる病院環境)で出産・育児したり職場内で出産・育児期間が重ならないように計画するなどの工夫が必要。また両親・親族などの協力が得られない状況での出産・育児は無計画と言わざるを得ない。」(40代,その他,一般病院)「家庭を持ち、出産あるいは子供のいる同僚の手助けはもちろんしたいと考えています。しかし、「手助けされて当然」という受け身は納得いきません。全てではないが、そういった方に対しては、手助けするのも躊躇されます(終日の講習会や夜の飲み会などには出席するのに、午前中のみ1日のみの出勤を拒否される、とか)。」(30代,救急医療科,一般病院)「現在勤めている病院では、産休をとった先輩女性医師がおらず、自分が将来出産したり、復職したりする際、立場や勤務体制がまったく分からない。病院側からは、「将来出産しても勤務を継続してほしい」とのことだが、口約束であり心配である。出産・育児もしたいが、フルタイム勤務は難しいだろうし、親も年をとってきておりどれだけ子供を預かってもらえるか分からず、保育所の確保も難しそうで、不安だらけである。」(30代,眼科,一般病院)

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【CASE REPORT】非器質的疼痛とオピオイド治療 症例経過

運動器慢性疼痛の分類通常、器質的な「痛み」は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類され、それ以外のものはしばしば心因性疼痛と分類される。心因性疼痛の定義は明確でなく、器質的疼痛でないものの中に機能性疼痛症候群、中枢機能障害性疼痛と心因性疼痛などが存在するという考え方を提唱するものもある(図1)。機能性疼痛症候群は、King's College LondonのSimon Wesselyが提唱した機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome :FSS)という概念に含まれるものである。FSSは諸検査で器質的あるいは特異的な病理所見を明らかにできない持続的で特徴的な身体愁訴を呈する症候群で、それを苦痛と感じて日常生活に支障を来しているために、さまざまな診療科を受診する。愁訴としては「さまざまな部位の痛み」「種々の臓器系の症状」「倦怠感や疲労感」が多く、代表例として過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、線維筋痛症、脳脊髄液減少症、間質性膀胱炎、慢性骨盤痛などがある。FSSの病態のうち、不安、痛み、睡眠、食欲などの症状に脳内の神経伝達物質が関与していると考えられている。これらの中で中枢機能障害性疼痛(central dysfunctional pain)は痛みを主訴とするものであり、線維筋痛症はその代表例である。また整形外科で時々遭遇する術後疼痛症候群は、「痛み」の原因を特定することが難しい。痛みの機序には「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「中枢機能障害性疼痛(機能性疼痛症候群)」のように分類されるが、ヒトの「痛み」はあくまで主観的なものであり、完全に分類することができるわけではない。さらに、ほとんどの痛みはこれらが複雑に絡み合った混合性疼痛であると考えられる。痛みに含まれるこれらの構成要素のバランスを考えることは、痛みの治療選択の大きな助けになる1)。画像を拡大する不適切なオピオイド処方例症例経過37歳女性 肩腱板断裂手術後難治性疼痛転倒し発症した肩腱板断裂に対して肩関節鏡視下に腱板縫合術が行われた。術後肩関節周囲部痛が出現し、肩の可動域訓練が行えなかった。再度、肩関節の手術が行われたが、疼痛は変わらなかった。その後CRPS(複合性局所疼痛症候群)を疑い、術後難治性疼痛と診断され、NSAIDsにて効果が無かったことからオピオイドであるププレノルフィン貼付薬(商品名:ノルスパンテープ)5mgの投与が開始された。しかし、効果が無かったことから同剤が20mgまで増量された。その後も鎮痛効果が認められないため、当科を紹介受診した。肩関節の専門医の診察でも肩関節周囲部痛を説明できる器質的疾患は認められなかった。また、本人の申告では患側の上肢はまったく使用できず、常に三角巾にて固定が必要ということであったが、筋萎縮、骨萎縮は認められず、交感神経の異常を示唆する皮膚温・発汗・皮膚のツルゴール・皮膚色の異常を認めなかった。骨シンチでも異常を認めなかった。厚生労働省CRPS判定指標2)では、CRPSの診断には至らなかった。当院では、「痛み」の原因が器質的疼痛(侵害受容性疼痛および神経障害性疼痛)ではなく、心因性疼痛、機能性疼痛、中枢機能障害性疼痛を含めた非器質的疼痛と判断した。よって、ププレノルフィン貼付薬は不適切と判断し、1週間毎に15mg、10mg、5mg、0mgと減量した。さらに、「痛み」を受容しながら運動療法を行うための認知行動療法的アプローチを行った。当院での診察の経過中に精神疾患罹患があることが判明した。ププレノルフィン貼付薬を減量しても疼痛は変化しなかったが、認知行動療法的アプローチを導入したことで運動療法、可動域訓練が行えるようになり、患側上肢が日常生活動作で使用できるようになり、肩関節の可動域もほぼ正常化した。参考文献1)三木健司ほか.Practice of Pain Management.2012;3: 240-247. 2)住谷昌彦ほか.Anesthesia 21 Century.2008;10: 1935-1940.症例解説へ >>

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エキスパートに聞く!「花粉症」Q&A part2

CareNet.comでは1月の花粉症特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より花粉症診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、後藤 穣先生にご回答いただきました。今回は残りの5問について回答を掲載します。点鼻用抗ヒスタミン薬の有効性について教えてください。使用するのはどのような症例でしょうか?一般的に、薬剤の即効性を高め副作用発現を減少させるためには、局所投与が必要です。抗ヒスタミン薬の内服によって副作用の問題がある症例では、点鼻抗ヒスタミン薬を使用します。内服薬や点鼻薬で効果が不十分な場合、どのような治療をすればよいでしょうか?薬物療法で効果不十分の場合、レーザー治療を含めた手術療法やアレルゲン免疫療法を考慮します。高度の鼻中隔弯曲症や鼻粘膜腫脹があると、薬剤の無効例が増えてきます。専門医で鼻腔内の診察を受け、他疾患の合併も含めて評価すべきです。初期治療はいつから開始すればよいのでしょうか? また、花粉症予防のための点鼻薬、点眼薬は有効でしょうか?これまで初期療法は、花粉飛散開始日の2週間前からという方法が長く行われてきました。一般的にはそれで間違いないと思います。しかし、近年発売されている抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬では即効性が向上しているので、必ずしも一律に2週間にこだわらず、花粉症症状が少し出始めてからでも、十分効果があると考えられています。初期療法は内服薬だけでなく、点鼻薬、点眼薬でも同様に有効だと考えます。レーザー治療、アレルゲン免疫療法(減感作療法)を適応する症例の選択基準について教えてください。 また、それぞれ何歳から実施可能でしょうか?レーザー治療は、外科手術のひとつですので、薬物療法無効例や鼻粘膜腫脹が高度な症例に行います。また、薬物の副作用があった方や、妊娠中で薬物療法を行えないケースも対象です。免疫療法は、軽症例から重症例まで適応になるので、薬物療法の効果が不十分で、定期的な治療が可能であれば適応になります。手術、注射に耐えられる年齢に行っているので、おおむねレーザーでは10歳以降、皮下免疫療法では4~5歳以降なら実施可能です。ステロイド筋注の是非について教えてください。ステロイド筋注は、決して推奨できる治療方法ではありません。正確な臨床的有効性のデータが少なく、薬剤の特性から副作用が発現した場合にはそれ自体も長く続きます。ステロイド筋注による訴訟のケースも散見されています。

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子どもの母斑をダーモスコピーで見分けるコツ

 米国・ニュージャージー医科歯科大学のElena C. Haliasos氏らは、小児皮膚科医のためのダーモスコピー上のメラノサイト系病変所見の特徴に関するレビュー論文を発表した。小児のメラノサイト系病変は、本人および両親、医師に不安を喚起することがある。Haliasos氏らは、小児の母斑についてダーモスコープでみられる良性パターンと、メラノーマのダーモスコピー上の10の最も頻度の高い構造について考察した。Pediatr Dermatology誌オンライン版2012年12月18日号の掲載報告。 メラノサイト系母斑は、青色母斑、Spitz母斑、先天性および後天性母斑など種々の病変を含む。これらの母斑は、時にメラノーマ様の臨床形態学的特徴を呈している可能性があり、小児におけるそのような母斑の存在は、本人および両親、医師に不安を引き起こす。 ダーモスコピーは、メラノーマの高い診断精度を有し、母斑との区別に有用であることが示されており、生検を行うべきかの意思決定プロセスの最終的な判断材料となる。またダーモスコピーは、小児のメラノサイト系病変の評価において、無痛性であること、また適正な治療判断をもたらす重大情報を医師に提供するという点で、パーフェクトな器具である。 本レビューでは、母斑で認められる最も頻度の高いダーモスコピー上の良性母斑パターンを明確にするとともに、10の最も頻度の高いメラノーマ構造について考察した。 主な内容は以下のとおり。・ダーモスコピー上で良性パターンを呈し、メラノーマに特異的な構造を有していなければ、その母斑は切除する必要はなく、安全に経過観察が可能である。・対照的に、メラノーマなら、良性母斑パターンがみられることが常になく、メラノーマに特異的な次の10の構造のうち少なくとも1つを呈する所見が認められる。「非対称性の網目状組織(atypical network)」「暗褐色の網目状組織(negative network)」「線条(streaks)」「結晶構造(crystalline structures)」「均一でない小点・小球(atypical dots and globules)」「不揃いの斑点(irregular blotch)」「青白色ベール(blue-white veil)」「自然消褪構造(regression structures)」「辺縁のブラウン色構造領域(peripheral brown structureless areas)」「非定型の血管構造(atypical vessels)」。・幼児期のメラノーマは通常、臨床的ABCD特色を呈しないという事実を認識していることが重要である。それよりも、多くの場合は、対称性で、メラニン色素がなく、結節状の病変である。・臨床的印象は警告されない可能性があるが、ダーモスコピーによって、メラノーマには常に少なくとも1つの特異的な構造が認められる可能性があり、その最も頻度の高い所見は、非定型の血管構造と結晶構造である。

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高齢者介護ロボット、認知症対応でも効果を発揮できる?

ニュージーランド・オークランド大学のHayley Robinson氏らは、新たに開発されている高齢者介護ロボット「Guide robot」について、すでに介護ロボットとして成功しているアザラシ型「パロ」との比較で、認知症高齢者および介護スタッフへの適合性について調査した。その結果、認知症高齢者介護ロボットはシンプルかつ刺激的で楽しさをもたらしてくれるものでなければならないなど、改善のための示唆が得られたことを報告した。また本検討では、「パロ」の改善すべき点も明らかになったという。Journal of American Medical Directors Association誌2013年1月14日号の掲載報告。 断面調査の手法にて行われた本検討は、オークランドの認定認知症介護施設で、入居者と、その家族介護者、施設スタッフを対象として行われた。「Guide robot」と「パロ」とのふれあいについてビデオテープで録画し、入居者が両ロボットを見た回数、微笑んだ回数、触れた回数、話しかけた回数、および話題にした回数を調べた。また自由回答による定性分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・調査対象者は、認知症入居者10人、家族介護者11人、スタッフ5人であった。・入居者は、「Guide robot」よりも「パロ」のほうに微笑み、触れ、話しかけた回数が有意に多かった。・「パロ」は、家族介護者、スタッフそして入居者の認容性(acceptable)が高かった。一方で「Guide robot」については、多くの人が、認知症集団に対応するための人間工学的要素、および単純さを備えていれば有用な可能性はあると認識していることが判明した。・以上のように調査の結果、認知症対応のヘルスケアロボットは、刺激に富み楽しいものであると同時に、単純かつ使いやすいものでなければならないことが明らかとなった。・本研究により、高齢者介護ロボットが認知症対応で最も効果を発揮できる仕様が明確になった。・「パロ」については、認知症集団の受け入れを高めるために、音声の修正が必要であると結論される。・「Guide robot」については人間工学的設計を見直し、ソフトウエアアプリケーションを簡便化し認知症を有する人向けのものにしなければならないことが明らかとなった。関連医療ニュース ・認知症患者に対する抗精神病薬処方の現状は? ・認知症患者へタブレットPC導入、その影響は? ・重度の認知障害を有する高齢者、視力検査は行うべき?

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上部消化管出血への輸血、ヘモグロビン値7g/dL未満の制限輸血で死亡リスク半減/NEJM

 急性上部消化管出血への輸血戦略では、ヘモグロビン値7g/dL未満で輸血をする「制限輸血」のほうが、同値9g/dL未満での輸血戦略よりも、死亡リスクが約半減するなどアウトカムが良好であることが明らかにされた。スペイン・Hospital de Sant PauのCandid Villanueva氏らが900人超について行った無作為化試験の結果、報告したもので、NEJM誌2013年1月3日号で発表した。急性消化管出血への輸血について、ヘモグロビン値を基準に実施を判断する治療法については議論が分かれていた。制限輸血群の51%、非制限輸血群の15%で輸血行わず 研究グループは、重度急性上部消化管出血の患者921人を無作為に2群に分け、一方の群(461人)には制限輸血(ヘモグロビン値7g/dL未満で輸血)を、もう一方の群(460人)には非制限輸血(ヘモグロビン値9g/dL未満で輸血)を行い、有効性および安全性について比較した。被験者のうち肝硬変が認められた277人(31%)については、両群均等に割り付けを行った。 結果、輸血を受けなかったのは、制限輸血群225人(51%)、非制限輸血群は65人(15%)だった(p<0.001)6週間死亡リスク、制限輸血群は非制限輸血群の0.55倍 6週間後の生存率は、非制限輸血群が91%に対し、制限輸血群が95%と有意に高率だった(p=0.02)。死亡に関する、制限輸血群の非制限輸血群に対するハザード比は、0.55(95%信頼区間:0.33~0.92)だった。 再出血が発生したのは、非制限輸血群が16%に対し、制限輸血群は10%と有意に低率だった(p=0.01)。有害事象発生率は、非制限輸血群が48%に対し、制限輸血群は40%と有意に低率だった(p=0.02)。 サブグループ分析では、消化性潰瘍に関連した出血群の生存率については、制限輸血群のほうがわずかに高値であった(ハザード比:0.70、95%信頼区間:0.26~1.25、p=0.26)。肝硬変Child–Pugh分類別にみると、AまたはBの人については有意に高かったが(同:0.30、0.11~0.85、p=0.02)、Cの人については両群で同程度だった(同:1.04、0.45~2.37、p=0.91)。 また、非制限輸血群では当初5日間に肝静脈圧較差の増大が有意であった(p=0.03)。制限輸血群では有意な増大はみられなかった。

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一次予防ICDを試験で受けた人と臨床で受けた人の生存率に有意な差みられず/JAMA

 植込み型除細動器(ICD)を受けるよう無作為に割り付けられた臨床試験の患者と、一次予防ICDを受けた臨床試験登録患者との生存率を比較した結果、両者には有意な差がみられなかったことを、米国・Duke Clinical Research InstituteのSana M. Al-Khatib氏らが報告した。無作為化試験は、ICD療法が命を救うことを示す。これまで一次予防臨床試験でICDを受けた患者の生存と、臨床実践で一次予防ICDを受けた試験適格患者の生存と異なるのかについては明らかではなかった。JAMA誌2013年1月2日号掲載より。試験間の全死因死亡を比較 研究グループは、大規模全米レジストリに登録され一次予防ICDを受けた試験適格患者の生存率が、2つの大規模一次予防臨床試験でICD療法を受けた患者[MADIT-II(742例)、SCD-HeFT(829例)]の生存率と異なるのかを調べた。 2006年1月1日~2007年12月31日の間のNational Cardiovascular Data Registry ICD Registry登録患者について、MADIT-II試験基準(傾向スコア適合2,464例)、あるいはSCD-HeFT試験基準(傾向スコア適合3,352例)と適合させたデータ(適合コホート)を後ろ向きに解析して行われた。レジストリ患者の死亡データは2009年12月31日まで集め、Cox比例ハザードモデルにて全死因死亡を比較(主要評価項目)した。ICDを受けた人の生存率に有意な差はみられず 追跡期間中央値は、MADIT-IIが19.5ヵ月、SCD-HeFTが46.1ヵ月、ICDレジストリは35.2ヵ月だった。 臨床試験に登録された患者と比較して、ICDレジストリの患者は年齢が有意に高く、複数疾患を有する割合が高かった。 適合コホートでの検討の結果、ICDを受けるよう割り付けられた、レジストリのMADIT-II様患者群とMADIT-II患者群の生存率に有意な差はみられなかった。2年死亡率はそれぞれ13.9%と15.6%で、補正後ハザード比は1.06(95%信頼区間:0.85~1.31、p=0.62)だった。同様に、SCD-HeFT様患者群とSCD-HeFT患者群との生存率も有意な差はみられなかった。3年死亡率はそれぞれ17.3%と17.4%で、補正後ハザード比は1.16(95%信頼区間:0.97~1.38、p=0.11)だった。 一方で、薬物療法を受けた人については、それぞれの比較において有意な差がみられた(例:MADIT-II様患者群とMADIT-II患者群での2年死亡率補正ハザード比は0.73、p=0.007)。また、これらの結果は65歳以上の患者で検討した場合も、同様であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「本試験で得られた知見は、引き続き臨床試験で認められた類似の患者における一次予防ICDの使用を支持するものである」と結論している。

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エキスパートに聞く!「花粉症」Q&A part1

CareNet.comでは1月の花粉症特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より花粉症診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、後藤 穣先生にご回答いただきました。2回に分けて掲載します。非専門医が外来診療でできる有用な問診や検査法を教えてください。また、どの段階から耳鼻科にまかせたほうがよいでしょうか? 内科でも確定診断のうえ積極的に介入したほうがよいのでしょうか?問診では、症状がくしゃみ・鼻漏主体なのか、鼻閉主体なのか必ず聞き取るべきです。とくに小児では、鼻閉の訴えが乏しく、専門医でも正確に把握することが困難なケースもあるので注意が必要です。皮膚テストは結果が早く出るメリットはありますが、検査手技に慣れていない看護師では難しいと思いますので、血液検査でIgE抗体検査を行うのが最も標準的だと思います。また最近、ごく少量の血液を用いて、8種類のIgE抗体を20分で診断できる検査キットも発売されています。中等症の場合には、第2世代抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬の併用を行うケースが多いですが、それでも効果が不十分の場合には、耳鼻科で鼻内の検査を受けるべきだと思います。アレルギー性鼻炎は、喘息など、他疾患の増悪因子ですので、内科の先生方の治療介入は必要なことだと考えています。通年性のアレルギー性鼻炎で治療中の患者さんが花粉症を合併している場合、花粉症の時期の治療はどうすればよいでしょうか? 薬剤を増量または他剤を併用してもよいのでしょうか?花粉症の重症化を防ぐ意味でも、通年性アレルギー性鼻炎の治療は重要です。花粉症の時期に何らかの症状が悪化するのであれば、「くしゃみ・鼻漏」なら第2世代抗ヒスタミン薬、「鼻閉」なら抗ロイコトリエン薬か抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬を追加します。鼻噴霧用ステロイド薬を頓用として使用しているケースが見受けられますが、これは定期的に使用すべき薬剤ですので、通年性アレルギー性鼻炎・花粉症を問わず、定期的に使用して症状を安定させるべきです。第2世代抗ヒスタミン薬の有効性の違い、使い分け、副作用やその対処法について教えてください。第2世代抗ヒスタミン薬の有効率は、治験時のデータをみるとほぼ同等です。しかし、脳内ヒスタミン受容体の占拠率や実験的な検討からは、副作用発現率や即効性に差があるという報告もあります。このような薬剤の特性だけでなく、個人差によっても、有効性、副作用発現に違いが生じる可能性もあります。明確な基準はありませんが、抗ヒスタミン薬を変更することによって症状が改善することも経験します。副作用で問題になりやすいのは眠気ですが、脳内に移行しないという薬剤でも眠いという訴えが聞かれることもあります。この場合には、抗ロイコトリエン薬や鼻噴霧用ステロイド薬のようなまったく眠気の生じない薬剤・製剤への変更を試みます。常用量の抗ヒスタミン薬を処方しても、アレルギー症状がコントロール不十分の患者に対し、薬剤を増量することは有効でしょうか? また抗ヒスタミン薬の併用による効果についても教えてください。第2世代抗ヒスタミン薬のなかには重症のケースで倍量処方できるものもあり、増量も一案だと考えます。しかし、このようなケースでは抗ヒスタミン薬だけではコントロールできない病態も存在するはずですので、他剤を併用するほうがより効果的だと思います。抗ヒスタミン薬どうしの併用は、同じ理由により効果がそれほど期待できないと考えます。鼻噴霧用ステロイド薬における違い、使い分け、副作用やその対処法について教えてください。近年、鼻噴霧用ステロイド薬はバイオアベイラビリティの低い、すなわち副作用が起こりにくい製剤が、次々に発売されました。1日1回投与、液剤、パウダー製剤などの選択肢があります。液剤よりもパウダー製剤のほうが刺激も少なく、アドヒアランスがよいという報告がある一方、患者によっては、液剤が使い慣れていてよいという声も聞きます。大切なのは、いずれの薬剤でも頓用使用ではなく、定期的に毎日使用することです。内服薬は毎日使用しても、点鼻薬はひどい時だけ使用すればよいと患者は勘違いしがちです。副作用として多いのは鼻出血ですが、鼻中隔弯曲症があるとデバイスの先端が鼻中隔に当たってしまい、その刺激で出血を起こすケースが多くあります。鼻中隔弯曲症がある側に点鼻する時は、先端を外側に向けて噴霧するように指導しています。鼻噴霧用ステロイド薬を第一選択薬として使用し、それで十分だと感じていますが、抗ヒスタミン薬は必要でしょうか? ご指摘の処方の仕方は、海外のガイドラインでは推奨されている方法です。それで十分な症例には、鼻噴霧用ステロイド薬単独で治療可能と思います。

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小児アトピー性皮膚炎予防にLGG菌やGLA含有サプリメントが有効

 Negar Foolad氏らは、栄養サプリメントによる小児のアトピー性皮膚炎への効果について、システマティックレビューの結果、特定の乳酸菌や脂肪酸を含む栄養サプリメントに、発症予防や重症度軽減のベネフィットがあることを報告した。解析結果を踏まえて著者は、「さらなる研究で、アトピー性皮膚炎への栄養サプリメントの基礎的な作用について、そのメカニズムを明らかにすることが求められる」と述べている。Archives of Dermatology誌オンライン版2012年12月17日号の掲載報告。 本研究の目的は、プロバイオティクスやプレバイオティクス、フォーミュラ(人工乳)や脂肪酸などを含有した栄養サプリメントが、3歳未満児におけるアトピー性皮膚炎発症を阻止または重症度を軽減するかどうかを、システマティックレビューにて明らかにすることであった。 MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、LILACS(Latin American and Caribbean Health Science Literature)にて、1946年1月1日~2012年8月27日の間の発表論文を検索し、さらに手動での検索も行った。 適格とした試験は、3歳未満児におけるアトピー性皮膚炎の栄養サプリメントの予防や改善の効果について検討した無作為化試験とコホート研究とした。 主な結果は以下のとおり。・検索にて論文92本が選ばれ、適格基準に達した21本を解析に組み込んだ。・21の研究におけるサプリメント摂取者は合計6,859人(乳児または妊娠中か授乳中の母親)であった。対照群は、乳児または母親合計4,134人であった。・解析の結果、栄養サプリメントは、アトピー性皮膚炎の発症を阻止すること(11/17研究)、重症度の軽減(5/6研究)に有効な手段であることが示された。・エビデンスが最も良好であったのは、母親と乳児にプロバイオティクス含有サプリメントを与えた場合であった。・とくに、LGG菌(Lactobacillus rhamnosus GG、ラクトバチルス・ラムノーサス GG)は、アトピー性皮膚炎発症の長期予防に有効であった。・GLA(γ-Linolenic acid、ガンマ・リノレン酸)は、アトピー性皮膚炎の重症度を軽減した。・プレバイオティクスとクロスグリのシードオイル(GLAとω-3を含有)のサプリメントは、アトピー性皮膚炎発症の抑制に有効であった。・一方、アミノ酸ベースのフォーミュラ含有サプリメントについては、異なる研究グループから相反する所見が報告されていた。

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重度の認知障害を有する高齢者、視力検査は行うべき?

 カナダ・モントリオール大学のEstefania Chriqui氏らは、重度の認知障害を有する高齢者の視力検査の可否について検証した。30人を対象に行った試験の結果、19人が視力検査に対応でき、まったく反応しなかった人は1人であった。著者は「認知症がありコミュニケーション能力が低下した高齢者であっても、視力検査は行うことができ、少なくとも試みるべきである」と提言している。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2012年12月27日号の掲載報告。 認知障害のある高齢者の視力検査は、共同作業やコミュニケーション能力の低下を理由に制限される可能性がある。研究グループは、施設に入居する重度の認知症高齢者について、さまざまな視力検査表を用いて視力の評価を行った。試験は、30人ずつの3グループ[(1)若者、(2)認知障害やコミュニケーション障害歴のない高齢者、(3)重度認知症で長期ケア施設に入居するなど認知障害のある高齢者]を対象に行われた。施設入居者はMMSEで評価が行われていた。視力検査には、6つの検査表[スネレン視力表、Teller cards、ETDRS(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)の文字・数字・Patty Pics・Tumbling表]を用いた。多重比較のためのBonferroni法とHolm法で調整後、非母数テストにて視力表間の視力スコアを比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・グループ(1)と(2)は、すべての視力検査表に応じることができた。・認知症を有する人も大半(19人)がすべての視力検査表に応じることができた。いずれの視力検査表にも応じることができなかったのは1人のみであった。・グループ(3)において、最も視力スコアが低かったのは、認知障害の程度を問わず、Teller cards(20/65)とPatty Pics(20/62)であった。一方で、最も高いスコアが得られたのは、スネレン(20/35)とETDRS文字表(20/36)であった。・全グループにわたって、標準的なスネレン視力表で得られたスコアとETDRS文字表でのスコアとが異なっていなかった人は1人だけであった。関連医療ニュース ・認知症患者へタブレットPC導入、その影響は? ・認知症の原因疾患のひとつ「シェーグレン症候群」その関連は? ・認知症ケアでプライマリケア・リエゾンに求められる3つのポイント

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(47)〕 FREEDOM試験がもたらした「開放」とは?

複雑な冠動脈疾患患者にバイパス(CABG)か?PCIか?という問題は90年代のBARI試験から最近のSYNTAX試験まで、いろいろな側面から検討がなされ、さながら不整脈のreentry回路のように外科医と内科医の頭を悩ませてきた。だが、このFREEDOM試験はその回路(circuit)に楔を打ち込んだ研究といえるのではないか。【これまでに行われてきた研究との比較】糖尿病患者の再灌流療法に関しては、10年ほど前にBARI試験で単純なバルーン拡張術(Plain Old Balloon Angioplasty; POBA)が初めてCABGと比較された。さらに、5年ほど前にBARI-2D試験で非薬剤性のステント(Bare Metal Stent; BMS)がCABGと比較されている。周知のとおり、いずれの試験でも長期的にはCABGが予後改善効果に優れたという結果が得られている。FREEDOMは、PCIが薬剤溶出性ステント(Drug Eluting Stent; DES)の時代を迎え、三度その長期的な予後の比較が糖尿病患者で行われたものであるが、端的に言うとこれまでの結果を覆すものではない。これは、POBAからBMS、そしてDESに至るまで、いずれも再狭窄の抑制のためのデバイスの進歩であり、明確なイベントの抑制(急性心筋梗塞や心臓突然死)がもたらされていないことを踏まえると、驚くにはあたらない。【SYNTAXによるスコア化について】また、糖尿病患者限定ではなかったが、最近行われたSYNTAX試験サブ解析の結果、リスク層別の有力なツールとしてSYNTAX スコアが提唱されている。三枝病変もしくは左主幹部病変患者で、その病変複雑性がSYNTAXスコアにして0~22の間であればおそらくはPCIとCABGは同程度に有効であり、22以上であれば、その点数の上昇にしたがって、CABGのほうがPCIよりも予後改善に有用となる。FREEDOMの平均のSYNTAX スコアは26であり、病変の複雑性というところからもCABGが有利な患者群を扱っている。しかも、標準偏差は8と枠は狭い。したがってFREEDOMでは、このSYNTAXスコア26±8というCABGに有利な枠内で、やはり予想通りの結果が得られたということになる。しかし、このように予想通りの結果であったからといってFREEDOMの価値が減じられるわけではない。BARIやSYNTAXとはまったく別のグループが組んだ臨床試験でその結果が検証された意義は大きい。しかも、個々の患者にとって大きな価値を持つ「長期的予後」という観点から、である。このことだけでも、やはりFREEDOMの結果は特筆に値する。言うまでもなく、糖尿病患者、あるいはそれに類する複雑な患者へのアプローチで推奨されているのは、外科医と内科医を含めたHeart Teamによる総合的な検討である。わが国でこの試験の結果を適用するためには注意点がいくつか存在するが(文末の三点)、FREEDOMは間違いなく患者サイドへのインフォームドコンセントに有用であり、医療者側からより強く自信をもった提言を行うことを可能とした。現場でこの試験の結果を公平な判断へとつなげて初めて、「無知から開放(FREEEDOM from ignorance)」は達成される。FREEDOM試験の注意点1.わが国の糖尿病患者の予後は、おそらくは欧米のそれよりも良好である可能性があり(Kohsaka S,et al.Diabetes Care. 2012 ;35:654-659.)、CABGによる予後改善効果が「薄まる」可能性も捨てきれない。2.さらにこの試験は二度にわたりプロトコールの変更を行い、かなり患者の登録に難渋した形跡がみられる。その影響か、最後まで(7年間)追跡することができた症例は200例強にすぎない。今後、他のデータで長期的な検証が必要である。3.さらに、MIとStrokeのイベントの「重さ」がこの試験では同等に扱われているが、これは現実のケースでは必ずしもイーブンではない。心筋梗塞エンドポイント定義(30日以内)myocardial infarction was defined as the presence of new Q waves in 2 or more contiguous leads on electrocardiography, as compared with baseline.脳梗塞エンドポイント定義Stroke was defined as the presence of at least one of the following factors: a focal neurologic deficit of central origin lasting more than 72 hours or lasting more than 24 hours with imaging evidence of cerebral infarction or intracerebral hemorrhage.(執筆協力:循環器内科CRC 植田育子)

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ATLAS - 10 v 5 years of adjuvant tamoxifen (TAM) in ER+ disease: Effects on outcome in the first and in the second decade after diagnosis

ATLAS - エストロゲン受容体陽性乳癌における術後タモキシフェン5年対10年の比較:診断後10年間およびさらにその後10年間の効果ATLASはAdjuvant Tamoxifen: Longer Against Shorterの略である。本試験の結果は発表と同時にLancet oncologyに論文掲載された。EBCTCGのメタアナリシスによれば、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)を服用する群とまったく使用しない群を比較したとき、服用終了5年以降も15年以上にわたって生存率の差が開き続けており(Lancet. 2012; 378: 771-784)、これをCarryover effectと表現している。本試験では約5年間タモキシフェンを服用した乳癌女性15,244例が、世界36の国あるいは地域から1996年~2005年の間に登録された。そのうちエストロゲン受容体陽性の6,846例(53%)を解析対象とし、受容体不明(4,800例、37%)、受容体陰性(1,248例、10%)は除外した。アジアおよび中東から25%が登録されていた。対象者の89%が閉経後であった。また19%で子宮摘出術が行われていた。10年継続群と5年中止群で、再発は617対711例(2p=0.002)、乳癌死は331対397例(2p=0.01)、全生存率は639対722例(2p=0.01)であった。期間毎にみたとき乳癌死のハザード比は5年から10年未満で0.97(95%CI:0.79~1.18)、10年以上で0.71(同0.58~0.88、p=0.0016)となっており、より長期間の観察で有意差がみられていた。つまりCarryover effectが認められている。解析時点で77%が診断後15年まで経過観察中であり、今後より差が開く可能性もある。タモキシフェン服用率は、割り付けから2年経過した時点で10年服用群84%、中止群80%と4%の差であった。15年での子宮内膜癌と肺塞栓症による死亡は10年服用群で0.2%の上昇がみられた。これは乳癌死亡が3%減少するのと比べて、非常に少ないと判断される。本試験の特徴はpragmatic trial(実際的な試験)と表現され、世界的規模であり、組み入れ基準がゆるく、シンプルな実施および経過観察であり,死亡率のわずかな差をみるために非常に大きな登録数であることである。一般的に行われてきた無作為化比較試験のような厳格な基準でないということは、裏返せば実際の臨床により即した試験であると言える。そういった意味から、この結果はわれわれの日常臨床にすぐに適応できるものであると考えられる。症例の89%が閉経後であり、実際ほとんどの方は、MA.17試験の結果よりタモキシフェン5年終了後には、レトロゾール(商品名:フェマーラ)へのスイッチが推奨される。閉経前は11%と少なくみえるが、それでも630例であり、サブセットアナリシスをみても、閉経前と閉経後でのばらつきはない。さらに“閉経後”の定義は記載されておらず、タモキシフェン服用中の判断はかなり慎重でなければならないことから、実際には閉経後と判断しにくい方は相当数いる可能性がある。そういった場合には、やはりタモキシフェンの継続が推奨されることになろう。また、薬剤変更することによる有害事象への不安がある場合などは、やはりタモキシフェン延長を考えてよいと思われる。ATLAS試験以外にaTTom試験があり、来年報告される予定とされているが、ほとんどがエストロゲン受容体不明で、規模も7,000例であることから有意差はより出にくい可能性がある。さらにEBCTCGのメタアナリシスの結果も来年報告される予定であり、その中にはATLAS、aTTom、NSABP B-14、Scottish trialなども含まれると思われるが、いわゆる“ごちゃまぜバイアス”にも注意して解釈していく必要があろう。現時点で、タモキシフェン10年服用をどのような患者さんに適応するのがよいだろうか。そもそも絶対リスク減少は非常に小さいことから、予後良好なグループ、たとえばリンパ節転移陰性、腫瘍径2cm以下、核グレード1といったような場合にはほとんど差が出ない可能性が高い。逆に再発高危険群では絶対リスク減少は大きくなると予想される。これらのことを患者さんと話し合いながら決めていくのが現実的であろう。レポート一覧

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Association between the 21-gene recurrence score (RS) and benefit from adjuvant paclitaxel (Pac) in node-positive (N+), ER-positive breast cancer patients (pts): Results from NSABP B-28

リンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性乳癌における21遺伝子再発スコア(RS)とパクリタキセルの追加効果との関連:NSABP B-28の結果からNSABP B-14/B-20、SWOG 9914およびTransATAC試験から、21遺伝子再発スコア(RS)分析はリンパ節転移陰性/陽性のエストロゲン受容体陽性乳癌における10年の遠隔転移および生存率を予測することが証明されている。また、NSABP B-14/B-20、SWOG 9914試験から化学療法の上乗せ効果を予測することも示されている。さらに、E2197試験から、内分泌療法と化学療法を行ったリンパ節転移0から3個陽性のホルモン受容体陽性乳癌の再発率と死亡率も予測する。本試験のプライマリーエンドポイントは、内分泌療法と化学療法を行ったリンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性乳癌の、局所再発の予後因子としてのRSの意義を評価することである。セカンダリーエンドポイントは、ACにパクリタキセル(PAC、商品名:タキソール)を追加する効果を予測する因子としてのRSの意義を評価することである。今回の報告はセカンダリーエンドポイントの評価であった。 NSABP B-28はリンパ節転移陽性の3,060例においてACとAC→PACを比較した試験である。ホルモン受容体陽性ではタモキシフェンを化学療法と同時に服用していた。乳房部分切除術を受けた患者は術後に放射線治療を実施し、乳房切除術後は行われなかった。5年の時点で、AC→PACはAC単独と比べてDFSでの年間ハザード比が、6.6%から5.5%に減少した(HR=0.83、95% CI:0.72~ 0.95、p=0.006)。エストロゲン受容体陽性乳癌2,007例では、5.2%から3.9%に減少した(HR=0.78、95% CI:0.63~0.91、p=0.003)。OSの改善は小さく統計学的に有意ではなかった(HR=0.93、95% CI:0.78~1.12、p=0.46)。本試験の適格基準は、組織マイクロアレイにてエストロゲン受容体陽性、タモキシフェンで治療され、21遺伝子再発スコア分析が可能であることである。観察期間の中央値は11.2年であった。1,065例が解析可能であり、AC(519例)、AC→PAC(546例)であった。年齢は50歳未満が46%対46%、リンパ節転移1~3個は68%対71%、腫瘍径は2.0cm以下が57%対50%(p

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Chemotherapy prolongs survival for isolated local or regional recurrence of breast cancer: The CALOR trial (Chemotherapy as Adjuvant for Locally Recurrent breast cancer; IBCSG 27-02, NSABP B-37, BIG 1-02)

化学療法は局所または領域リンパ節の単独再発に対して予後を延長する:CALOR試験乳癌における局所または領域リンパ節の単独再発(Isolated local or regional recurrence, ILRR)は、予後不良の予測因子である。しかしILRRに対する術後化学療法に関する前向き比較試験は過去30年間行われてこなかった。CALOR試験適格基準は、乳房内、胸壁、乳房切除創または皮膚、腋窩または胸骨傍リンパ節の初回再発であり、再発部位が病理学的に完全に切除され、鎖骨上リンパ節や遠隔再発が認められていないことである。原発性乳癌術後の化学療法の有無、ホルモン受容体、ILRRの部位で層別化し、再発巣切除後に化学療法の有無について無作為化比較試験を行った。化学療法後はホルモン受容体陽性については内分泌療法を行い、HER標的療法は選択可能とした。化学療法剤の種類は責任医師の選択としたが、3~6ヵ月で2剤以上使用することが推奨された。放射線治療は全例に40Gy以上が推奨された。プライマリーエンドポイントはDFS、セカンダリーエンドポイントはOSであり、ITT解析が行われた。最初に設定されたハザード比は0.74で、997例の登録と347例のDFSイベントが予想されたが、患者登録の割合が低く、より有効な化学療法が確立されてきたことから、2008年3月に修正され、ハザード比0.6でサンプルサイズが再設定され、265例に対して124のイベントが起こること(観察群の5年DFS 50%)が予想された。しかし2010年1月に試験がクローズされ、その時点で162例であり、中間解析は行われなかった。分析は少なくとも2.5年以上の経過観察を必要とした。国際的共同試験として行われ、BIG 89例、GEICAM 20例、BOOG 12例、NSABP 73例であった。ベースラインの背景は化学療法群と観察群で、化学療法歴58対68%、LRR時閉経後状態76対82%、年齢中央値56対56歳、再発部位は乳房55対53%、切開創/胸壁32対34%、領域リンパ節13対13%、再発創のエストロゲン受容体陽性66対62%、ILRRに対する治療は、放射線治療44対39%、内分泌療法(エストロゲン受容体陽性例)91対92%、HER2標的療法7対5%、化学療法は単独療法としてタキサン20%、カペシタビン11%、複合療法としてアンスラサイクリンベース48%、アンスラサイクリン+タキサンベース1%、タキサンベース16%であった。5年DFSは化学療法(CT)群69%、観察(no CT)群57%であり、 CT群で有意に予後良好であった(p=0.0455、 HR=0.59、95%CI:0.35~0.99)。エストロゲン受容体別にみると、陽性ではCT群70%、no CT群69%と差がなく(p=0.87、HR=0.94、95%CI:0.47~1.89)、陰性ではCT群67%、no CT群35%と有意差がみられた(p=0.007、HR=0.32、95%CI:0.14~0.73)。多変量解析ではエストロゲン受容体、再発部位、化学療法歴の有無、初回手術からの期間では差がなく、再発後の化学療法の有無でのみ有意差が認められた(p=0.01、HR=0.50)。5年OSでもCT群88%、no CT群76%であり、CT群で有意に予後良好であった(p=0.02、HR=0.41、95%CI:0.19~0.89)。多変量解析ではやはり再発後の化学療法の有無でのみ有意差が認められた(p=0.02、HR=0.37)。結論として、再発後の化学療法はDFSイベントを41%減少させ、死亡を59%減少させる。エストロゲン受容体陰性の再発においてより効果が高く、受容体陽性についてはより長期の経過観察が必要と考えられた。局所再発に対する全身化学療法の意義というクリニカルクエスチョンに対し、複数の国にまたがる臨床試験を施行し、局所再発時の治療について再考すべき話題を提供してくれたことの意義は大きい。従来は局所再発時の全身療法に対するエビデンスがないということで、全く行っていなかった施設もあったかと思う。それにしても、これだけ世界の臨床試験グループが集まっても患者登録が進まなかったのは、患者が試験への参加を望まなかったか、医師が組み入れをかなり選定した可能性があり、選択バイアスがかなり大きいのかもしれない。再発時の受容体の状況が異なっていれば、実際は再発ではなく新規原発かもしれないし、初発時に行われた化学療法のレジメンと再発時に行われたレジメンの違いについて言及されていないため、どのような状況においてどのような化学療法を用いることがよいのか、不明のままである。アンスラサイクリン+タキサンベースがわずか1%であったところをみると、初回化学療法と異なるレジメンが採用されたものと考える。したがって現時点では個人的な治療の選択には変更はない。個々の場面に応じて、有効かもしれない全身治療の選択を考えるのが妥当と考えている。以下に例を挙げてみる。StageIのルミナルタイプ乳癌で術後内分泌療法のみを行っていた、あるいはT1bN0M0のトリプルネガティブ乳癌で術後経過観察のみを行っていたとする。3年後胸壁に2cmの浸潤癌または腋窩リンパ節再発を来したとすれば、内分泌療法抵抗性であり、また局所再発の時点で化学療法の適応になったと考えることができる。初回術後CMF療法を行っていて、浸潤癌の局所再発を来した場合、ルミナルタイプであればCMFとACの治療効果に通常差がないので、化学療法を選択するとすればタキサンベースであろう。しかしHER2陽性やトリプルネガティブ乳癌であれば、そもそもCMFでは効果が不十分であった可能性もあり、アンスラサイクリンとタキサン(+/-トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン))を選択したい。StageIIのHer2陽性乳癌で、乳房部分切除術後にアンスラサイクリンおよびタキサン+トラスツズマブを行っていて、早期に局所再発した場合、術後補助療法として十分な治療を行ったうえでの再発であり、局所再発後にさらに別の化学療法とハーセプチンを上乗せすることは、過剰治療の可能性が高い。まずは局所治療を十分に行って、慎重な経過観察を行うことが妥当であろうと考えられる。ルミナルタイプでアンスラサイクリンとタキサンを行い、その後アロマターゼ阻害剤を服用している最中に局所再発した場合も、局所治療をまずはしっかり行って、経過観察を行っていくのがよいのではないかと思う。反対にタモキシフェン服用中の再発であれば、アロマターゼ阻害剤が予後を改善する可能性があり、局所再発後に内分泌療法の変更を考える余地がありうる。カペシタビンを行う根拠は非常に弱いと考えられ、11%に行われていたのはどのような意志決定があったのか知りたいところである。これらの考え方には異なった意見もあるかと思うが、心配だからなんとなく行うのではなく、前治療と後治療とのバランスや予後を改善しうるパワーを持ちうる治療であるのかを十分考慮して、過小または過剰治療にならないようチームで十分吟味して決めることが大切であろう。レポート一覧

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Meta-analysis Results from the Collaborative Trials in Neoadjuvant Breast Cancer (CTNeoBC)

術前化学療法を行った乳癌の共同試験からのメタアナリシスpCRはEFSやOSのような長期間の臨床的予後と関連している可能性があるが、意見が分かれているところである。本演題は無作為化比較試験における術前化学療法のメタアナリシスであり、 pCRの定義が明確で、すべての必要なデータがそろっている12の試験が選択された。GBG/AGO 7試験―6,377例、NSABP 2試験―3,171例、EORTC/BIG 1試験―1,856例、ITA 2試験―1,589例、計12,993名の解析である。pCRの定義は、ypT0ypN0:乳房/腋窩の浸潤部、非浸潤部すべてが消失、ypT0/TisN0:乳房/腋窩の浸潤部が消失、ypT0/Tis:乳房の浸潤部が消失とした。pCR対no pCRの割合は、ypT0ypN0:1,554(13%)対10,401(87%)、ypT0/TisN0:2,131(22%)対9,824(82%)、ypT0/Tis:2,599(22%)対9,356(78%)であった。ypT0/TisN0をpCRと定義したとき、 pCRとno pCRとでEFS、OSともに有意な差が認められた(HR=0.48、p

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The role of sentinel lymph node surgery in patients presenting with node positive breast cancer (T0-T4, N1-2) who receive neoadjuvant chemotherapy - results from the ACOSOG Z1071 trial

リンパ節転移陽性(T0-T4)で術前化学療法を受けた乳癌患者でのセンチネルリンパ節生検の役割―ACOSOG Z1071試験本研究の適格基準は、18歳以上、経過観察可能、cT0-4/N1-2/M0、細胞診またはコア針生検で腋窩リンパ節転移陽性、浸潤性乳癌、術前化学療法(NAC)終了後12ヵ月以内の手術、インフォームドコンセントであり、除外基準は妊娠期/授乳期、鎖骨上/鎖骨下/胸骨傍リンパ節転移疑い、同側腋窩手術の既往、センチネルリンパ節生検/化学療法前の腋窩リンパ節生検の既往、炎症性乳癌である。センチネルリンパ節生検として推奨される方法は少なくとも2個のリンパ節摘出、RIと青い色素の2つの標識の使用である。病理学的評価はHE染色を用い、0.2mmより大きいものをリンパ節転移陽性とした。主目的は、センチネルリンパ節を2個以上摘出したcN1の乳癌女性で、偽陰性率が10%未満であるか決定することである。10%の偽陰性率を選択した理由は、NACを行っていない早期乳癌でのセンチネルリンパ節生検の偽陰性率がNSABP B-31で9.8%であったこと、NACではNSABP-B-27で10.7%、21試験のメタアナリシスで12%であったことからである。136施設から756例が登録され、除外基準となった53例を除く701例を対象とした。腋窩郭清が完全に行われなかった1例、腋窩郭清でリンパ節が1つもなかった1例、センチネルリンパ節生検が行われなかった12例を除くと687例となり、さらにセンチネルリンパ節が同定できなかった50例を除くと、637例(cN1:603例、cN2:34例)となった。701例の患者背景は、年齢49(23~93)歳、人種は白人が80.6%、腋窩診断はコア針生検61.2%、細胞診38.8%、cT2が54.9%、おおよそのサブタイプはHER2+が30.1%、トリプルネガティブが24.1%、HR+/HER2-が45.4%であった。センチネルリンパ節同定率は92.7%(639/689例)であった。637例中リンパ節転移陰性となったものが255例(40%)、センチネルリンパ節転移陽性が326例、センチネルリンパ節転移陰性で腋窩郭清時陽性が59名であり、センチネルリンパ節は転移状況を91.2%で正確に同定できた。cT1かつセンチネルリンパ節2個以上の患者では偽陰性率は12.6%であった。色素のみ22.2%、RIのみ20.0%、RIと色素の両方を使用10.8%(p=0.046)、センチネルリンパ節2個21.1%、3個9.0%、4個6.7%、5個以上11.0%(p=0.004)であった。cT1でセンチネルリンパ節1個のみでは偽陰性率31.5%であった。cT1かつセンチネルリンパ節2個以上で、リンパ節内にクリップを挿入した患者では、センチネルリンパ節内にクリップがあった96例のうち54例で転移が残存しており、偽陰性率は7.4%であった。サマリーとしてリンパ節の状態を正確に判定できたのは91.2%、pCRは40.0%、cT1かつセンチネルリンパ節2個以上での偽陰性率12.6%(RIと色素の併用で10.8%、センチネルリンパ節3個以上で9.1%)であった。これらのデータから、リンパ節転移陽性乳癌におけるNAC後のセンチネルリンパ節生検はリンパ節転移の状況を検出するのに有用な方法であり、手技としてRIと色素の併用、2個以上の摘出が重要であると結論づけている。また、リンパ節の診断時にクリップを挿入することや、治療効果をみるためのセンチネルリンパ節の病理学的検索をするなどのさらなる工夫で、より精度が上がるかもしれないとも述べている。患者数も多く非常に重要な試験ではあるが、後付けでさまざまなサブ解析をしたデータで結論づけるのは無理がある。T1かつセンチネルリンパ節2個以上かつRIと色素の併用と患者選択しても偽陰性率10.8%であり、本研究から、リンパ節転移陽性乳癌における化学療法後のセンチネルリンパ節生検は有用であるとはとても言い難い。これに引き続いて、ドイツからもセンチネルリンパ節と術前化学療法の関係について報告があった。 レポート一覧

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An international Ki67 reproducibility study

Ki67の再現に関する国際的な研究ASCOの腫瘍マーカーに関するガイドラインでは、どの増殖マーカーの使用も推奨されていないが、それは再現性が乏しく、臨床的な妥当性が不明であるからである。一方、J Natl Cancer Inst. 2011;103: 1656-1664 に掲載された論文「Assessment of Ki67 in Breast Cancer: Recommendation from the International Ki67 in Breast Cancer Working Group」では、解析前の設定、解析の設定、解釈とスコアリング、データの分析についての推奨が述べられている。本研究では、病理学者はKi67染色をどの程度再現性をもって確実に定量化できるか、という分析的妥当性を系統的に調べるため、観察者間および観察者自身のばらつきを同定することである。そのために、組織マイクロアレイスライドで各施設の方法で計測(第1相)→ウェブベースで補正後、標準的方法で計測(第2相)→針生検と組織全体の切片で計測、という順序で検討を行った。これにより期待される成果は、Ki67を評価するための解析の正当性、臨床的に意味のある方法の普及、そしてウェブベースの補正症例の標準的なセットの確立である。第1相は、十分な経験のある各施設での方法で、Ki67値が一致しているかを検討することである、そのため乳癌症例100例で3つの実験、1)観察者内でスコアリングを繰り返し評価、2)中央での染色で観察者間の評価、3)各施設での染色で施設間の評価を行った。施設はカナダ、フランス、英国、米国の大学、主要な癌センター、国際関連施設である。6施設で50症例を3回繰り返した結果、1)観察者内での一致率は非常によく、overall ICC(intraclass correlation coefficient、級内相関係数:連続データにおける信頼性を示すもの)=0.94(95%CI=0.93~0.97)であった。しかし2)中央での染色で、観察者間でのばらつきはかなりあり、overall ICC=0.71(95%CI=0.47~0.78)であった。Ki67のカットオフ値を仮に13.5%としたとき、32%の症例において、ある施設で低値であったのものが他の施設で高値と判定されていた。染色法もある程度のばらつきを生じさせたが、主な原因はスコアリングの方法であった。すなわち、どの領域をカウントするのか、浸潤癌だけをカウントしているか、どの程度茶色に染まった細胞を陽性と判定するか、である。第2相では標準化したスコアリング法をウェブベースで各施設に提供し、9つのトレーニングと9つのテストで補正を行った。結果として9の施設中4施設でテストに合格しなかった、この原因は染色性の弱い細胞に対する判定の違いからきていた。トレーニングの成功率としてはICC>0.9以上が基準として求められ、トレーニングにより測定法は改善したものの、統計学的には有意ではなかった(サンプルサイズによるものと思われる)。ウェブベースのトレーニングが成功すれば、次にコア針生検標本に適用し、臨床的有用性を確定し、臨床的に最もよいスコアリングの方法においてばらつきの範囲がどの程度みられるかが明確になるだろう。反対にもし失敗すれば、自動の画像プラットフォームとアルゴリズムが安定した結果をもたらすかテストすることになる。これらの失敗から、免疫染色によるKi67インデックスは、臨床でもリサーチでも妥当性の確認を行ってから活用されるべきである、と結んでいる。レポート一覧

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検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響

 抗てんかん薬は免疫グロブリンに影響を与えると言われている。ノルウェー・オスロ大学病院のS. Svalheim氏らは、レベチラセタム、カルバマゼピン、ラモトリギンなどの抗てんかん薬がてんかん患者の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響を検討した。Acta neurologica Scandinavica誌2013年1月号の掲載報告。 被験者は、てんかん患者211例および対照80例(18~45歳の男女)であった。てんかん患者は抗てんかん薬単独による治療を最低6ヵ月施行されていた。治療薬の内訳はレベチラセタムが47例、カルバマゼピンが90例、ラモトリギンが74例であった。免疫グロブリンG (IgG)、IgG サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、免疫グロブリンA(IgA)および免疫グロブリンM(IgM)の総濃度を測定し、患者群と対照群で比較した。なお、患者背景として喫煙、飲酒習慣、身体活動性の記録とともに、BMIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・ラモトリギンの治療を受けている男女、カルバマゼピンの治療を受けている男性において、IgG濃度およびIgG1濃度は有意に低値であった。・ラモトリギンの治療を受けている女性において、IgG2濃度およびIgG4濃度はより低値であった。・ラモトリギンの治療を受けている男性において、IgA濃度およびIgM濃度はより低値であった。・レベチラセタムの治療を受けている患者では、対照群との間で免疫グロブリン濃度に差はみられなかった。・以上の結果から、ラモトリギンおよびカルバマゼピンはてんかん患者の免疫グロブリン濃度を低下させることが示された。・本検討における対象患者が健康若年成人でなかったことを考えると、たとえば免疫不全症例などの特定の患者集団においては、抗てんかん薬が免疫グロブリン濃度に影響を及ぼしうることを特に認識しておく必要がある。そして、ラモトリギンやカルバマゼピンを服用中で感染症を繰り返しているような患者については、免疫グロブリン濃度を測定し、薬剤の変更を考慮すべきである。関連医療ニュース ・神経ステロイド減量が双極性障害患者の気分安定化につながる? ・側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに ・レベチラセタムは末梢性の鎮痛・抗浮腫作用を示す

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