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治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は?

 双極性障害患者では認知機能障害を呈することが少なくないが、これらの関係については十分に報告されていない。Ute Kessler氏らは、治療抵抗性の双極性障害I型およびII型の患者における、神経認知障害を評価した。その結果、認知障害はII型と比べてI型患者でより多く、とくに処理速度に関する障害の頻度が高かった。所見を踏まえて著者は「本結果は、臨床家は、とくに双極性障害I型の治療抵抗性の患者において神経認知障害が重度であることに留意すべきであることを示すものである」と述べている。BMC Psychiatryオンライン版2013年4月号の掲載報告。 本研究は、治療抵抗性の急性双極性障害が認められた入院患者の神経認知プロファイルを評価し、同I型とII型患者の神経認知について比較を行い、人口統計学的および臨床的疾患特性と認知機能との関連を特定することを目的とした。DSM-IV-TRで大うつ病エピソードが認められた急性期の双極性障害I型(19例)と同II型(32例)の入院患者について、MATRICS Consensus Cognitive Battery(MCCB)、Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence(WASI)、National Adult Reading Testなどで評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・神経認知障害は、MCCBの全評価において双極性障害I型およびII型の患者で明らかであった。・すべてのMCCB測定スコアが、II型群よりI型群で低値であった。あるカテゴリーについて名詞をどれだけ言えるか(category fluency)についての測定スコアは有意差が認められた。・I型患者の68.4%で、2つ以上の領域で障害(標準平均値より>1.5 SD低下)がみられ、これはII型患者の37.5%と比べて有意に多かった(p=0.045)。・発症前から直近にかけてのIQ低下は、I型患者では有意であったが、II型患者では有意ではなかった。・年齢が高いと、神経認知障害は年齢調整後標準値に比して大きかった。関連医療ニュース ・難治性双極性障害患者への併用療法は? ・双極性障害の再発予防に対し、認知療法は有効か? ・双極性障害の治療アドヒアランスを改善するには?

9002.

地方病院閉鎖の対策として開設されたCAH、質的改善が急務/JAMA

 米国では1997年に地方病院閉鎖への対策としてCritical Access Hospitals(CAH)プログラムが策定され、地方に住むメディケア受給者に入院医療を提供する拠点となっている。CAHは25床以下、隣接入院施設と35マイル以上離れていることが開設条件だが、その要件は一部猶予され、コスト償還は101%、国の質改善プログラムも免除されている。しかし、その限られた医療資源、患者が社会的弱者であるといったことから、質の改善に関しては遅れがちとなるリスクが高いと言われていた。ハーバード公衆衛生大学院のKaren E. Joynt氏らは、このCAHと、非CAHで治療を受けた患者の死亡率について調査を行い医療の質を検証した。その結果、CAHでは死亡率が過去10年間で有意に増大していたことを報告した。JAMA誌2013年4月3日号掲載の報告より。2002~2010年のCAHと非CAHにおける3疾患の死亡率の変遷を調べ比較 CAHプログラムは2010年までに全米数百ある病院の多くが採用し、公立病院の4分の1がCAHを設置しているという。 Joynt氏らは、メディケアの診療報酬対象患者のデータを用いて、後ろ向き観察研究を行った。患者のデータは、2002~2010年に米国急性期病院に入院した、急性心筋梗塞(入院190万2,586例)、うっ血性心不全(同448万8,269例)、肺炎(同389万1,074例)であった。 主要評価項目は、CAHと非CAHのリスク補正後30日死亡率の傾向とした。当初は同程度であったが10年後は有意な格差が 解析の結果、患者、病院、地域特性別にみると違いはあるが、3つの疾患について統合したベースラインでの両施設の死亡率は同程度であった[複合死亡率 CAH:12.8%vs. 非CAH:13.0%、格差-0.3%(95%信頼区間[CI]:-0.7~0.2)、p=0.25)。 しかし、2002年から2010年の間に、CAHでは死亡率が0.1%/年の割合で増大していた。一方で非CAHは-0.2%/年ずつ減少していた。そのため、年率0.3%(95%CI:0.2~0.3、p<0.001)の有意な格差が起きていた。 そのため2010年には、CAHのほうが非CAHよりも死亡率が有意に高くなっていた[13.3%vs. 11.4%、格差:1.8%(95%CI:1.4~2.2)、p<0.001]。同様の傾向は、疾患別にみた場合も認められた。またその他の小規模地方病院との比較でも同様の傾向がみられた。 著者は、CAH改善を支援する新たな手立てが必要と思われると指摘している。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(85)〕 アスピリンの時代の終焉?

急性心筋梗塞に代表される冠動脈疾患の予防、治療にはアスピリンが標準治療である。長年のエビデンスの蓄積により、有効性、安全性、経済性の観点から、アスピリンに勝る抗血小板薬はなかった。 クロピドグレルは、CAPRIE試験によりアスピリンに勝る有効性を示した。さらに、多くの国で特許を喪失しつつあるため、経済性もアスピリンに競合可能となった。冠動脈インターベンションを受ける症例では、アスピリン+クロピドグレルの抗血小板併用療法を受けることになる。 脳卒中リスクのある心房細動の症例では、抗凝固薬の服用も標準治療となった。抗血小板併用療法に抗凝固療法を併用すれば、長期間の観察期間における出血リスクが増加することは自明である。長期治療ではどれかを止めることが好ましいかも知れない。 脳卒中リスクを有する心房細動症例の脳卒中発症率は年間2%程度、抗凝固薬による予防効果は60%程度、ステント血栓症の発症率は年間0.2~0.5%。抗血小板併用療法による予防効果は相当程度であるが、数値化はされていないのが現状である。リスクの大きさと、薬剤の確立された効果を考えれば、抗凝固薬は残すというのが妥当な判断であろう。そこで、アスピリンを止めるか?、クロピドグレルを止めるか?、は極めて重要な決断である。 本研究は比較的小規模、オープンラベル、症例登録基準が広いという欠点を持ちながら、「アスピリンを止めてもいいかも?」という常識を覆す結果を支持した点で価値が高い。検証すべき臨床的仮説の重要性があまりにも大きいので、本研究に基づいて標準治療が変わることはない。しかし、「仮説の検証のためのランダム化比較試験を考えてもいいですよ」程度の意味はある。

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慢性腰痛患者におけるオピオイド療法の効果はうつや不安に影響される

 非がん性慢性疼痛患者ではしばしば、抑うつや不安といったネガティブ感情がみられる。こうしたネガティブ感情は疼痛の強さと関連しており、オピオイド治療が長期化する可能性が高い。米国・ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のRobert N. Jamison氏らは、ヒドロモルフォン徐放性製剤のプラセボ対照二重盲検試験について2次分析を行い、ネガティブ感情はオピオイド療法のベネフィットを減弱させ、臨床試験においては脱落の予測因子となることを報告した。Pain Practice誌2013年3月号(オンライン版2012年1月11日号)の掲載報告。 慢性腰痛を有するオピオイド耐性患者を対象としたヒドロモルフォン徐放性製剤のプラセボ対照二重盲検試験の2次分析を行い、試験開始時のネガティブ感情のレベルが治療関連予後を予測できるかについて検証した。 2~4週間の用量調節/変更期に459例が参加し、このうち268例がヒドロモルフォン群またはプラセボ群に無作為化された(二重盲検期)。 試験開始時、病院不安およびうつ尺度(HADS)を用いて評価し、そのスコアに基づきネガティブ感情が低群(157例)、中群(155例)、高群(147例)の3群に均等に分け、試験期間中に自宅や病院で測定した疼痛スコア、ローランドモリス障害スコア、主観的オピオイド離脱症状スコア(SOWS)を分析した。 主な結果は以下のとおり。・二重盲検期を完了したのは268例中110例であった。・ネガティブ感情が中および高群は、低群と比較して用量調節/変更期に有害事象または無効のため脱落例がより多かった(p<0.05)。・ネガティブ感情が中および高群は、低群と比較して疼痛スコア(p<0.05)およびローランドモリス障害スコア(p<0.01)が有意に高く、SOWSで高頻度に禁断症状がみられた(p<0.05)。・ネガティブ感情のスコアの高さは、用量調節期における試験薬に対する好感度の低さも予測した(p<0.05)。・プラセボ群では、ネガティブ感情が高群で最も大きな疼痛改善が示された(p<0.05)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例経過

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症自転車で転倒して腰部を打撲した直後から、腰部の持続痛と体動時の激痛を自覚し臥床して過ごしていた。近医整形外科を受診したところ腰椎レントゲン検査によって第4腰椎圧迫骨折と診断され、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を処方された。しかし疼痛、とくに体動時痛が非常に強いことから1%リン酸コデイン40mgを処方されたものの、疼痛に変化がなかった。そこで、転倒のエピソードから2週間目に塩酸モルヒネ散20mgを導入された。吐き気と便秘に対しては適切に制吐剤や緩下剤が使用されたため、オピオイド鎮痛薬による副作用はなかった。効果不十分のためモルヒネは30→50→60mgまで約2週間かけて漸増され、転倒から約1ヵ月後には持続痛と体動時痛のいずれも著明に改善し、日中も臥床して過ごしていた状態から体動時痛が増強しない程度に家事を行えるまでにADLは改善した。残存している痛みに対してモルヒネが漸増され、20~30mgずつ増量されると1~2週間程度は疼痛が緩和するが再び増悪することを繰り返すようになった。さらに、主治医から疼痛が増強しないように安静にするように指導されたことと、患者本人が体動時痛を過度に恐れることから、再び日中もほぼ臥床して過ごすようになりADLは低下していった。また、疼痛が増強した際の頓用薬には当初NSAIDsが処方されていたが、疼痛の増強の訴えに応じてモルヒネを頓用するように指導されていた。転倒から6ヵ月目にはモルヒネの服薬量は200mgになっていたが日中も臥床していることが多くなり家事のほとんどは夫が担当し、痛み以外に緩下剤に抵抗性の便秘や口渇、不眠も出現していた。モルヒネの頓用をしても鎮痛効果を実感していなかったが1日に数回はモルヒネの頓用を続けていた。転倒から約9ヵ月後、オピオイド鎮痛薬に抵抗性の難治性腰痛として当科を紹介され夫とともに受診した。当院受診時に下肢痛はなかったが、転倒当初の腰部に限局した疼痛ではなく腰背部全体の疼痛を訴え、痛みの増減は体動とは無関係であった。疼痛部位の感覚低下はなかった。また、両下肢の筋力低下は認められなかった。痛みの訴え以外には、不眠(入眠困難感と中途覚醒)を強く述べたが、夫から日中はしばしば傾眠傾向であることや夜間はいびきをかいて寝ていることが聴取された。患者本人は気分の落ち込みが強いが食欲はあり、夫が作った食事を食べておりADLの低下・不活動状態と相まって体重は増加していた。腰部MRIでは第4腰椎椎体に圧迫骨折所見があるが、新鮮な炎症所見や偽関節はなかった。現在の腰背部痛は、腰椎圧迫骨折に伴う侵害受容性疼痛ではなく、痛みの原因として妥当な器質的な障害を伴わない非特異的腰痛と診断した。オピオイド鎮痛薬の鎮痛効果を実感していないにもかかわらず、定期内服に加えて頓用を繰り返しており、オピオイド鎮痛薬の不適切使用(aberrant drug taking behavior)状態と評価した。モルヒネの頓用を禁止するとともに、1日量200mgから30mgずつ1週間毎に漸減し、夫にもモルヒネを中心とした鎮痛薬についての知識を教育しそれらの管理を患者と一緒に行うように指導した。加えて、痛みを理由とした行動制限を解除すること(具体的には、日中の臥床時間を減らすこと、積極的に家事に参加するようにすること)を指導し、ADLの改善とともに行動目標(散歩、ショッピング、家事全般)を段階的に増加させていった。当院初診から4ヵ月程度で腰痛は軽度残存しているが許容範囲内であり、不眠は解消した。モルヒネは漸減・中止でき、ADLおよびQOLは転倒前の状態に回復した。

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1型糖尿病への抗インターロイキン1薬単独投与、β細胞機能の改善効果示せず/Lancet

 発症後間もない1型糖尿病患者に対する、抗インターロイキン1薬の単独投与について、β細胞機能の改善効果は示されなかったことが報告された。米国・ミネソタ大学のAntoinette Moran氏らが、約140例について行った、2つの無作為化試験の結果、明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版4月5日号で発表した。1型糖尿病は先天免疫が発症に寄与している自己免疫疾患であるが、これまで先天免疫のキーメディエーターであるインターロイキン1を遮断するということに関して、無作為化対照試験は行われていなかったという。カナキヌマブ、アナキンラを投与し、9ヵ月、12ヵ月後のアウトカムをプラセボと比較 研究グループは、発症して間もない1型糖尿病患者138例を対象に、ヒトモノクロナール抗インターロイキン1抗体のカナキヌマブ(商品名:イラリス、CAPS治療薬として承認)と、ヒトインターロイキン1受容体拮抗薬のアナキンラ(国内未承認)について、それぞれプラセボ対照試験を行い、β細胞機能の改善効果について分析した。被験者の混合食負荷試験でのCペプチド値は、0.2nM以上だった。 カナキヌマブ試験は米国とカナダの12施設で行われ(2010年11月12日~2011年4月11日)、被験者の年齢は6~45歳であった。アナキンラ試験はヨーロッパの14施設で行われ(2009年1月26日~2011年5月25日)、被験者は18~35歳だった。 カナキヌマブ試験では被験者69例が、カナキヌマブ2mg/kg(最大300mg)を月1回12ヵ月間皮下注射(47例)またはプラセボを投与する群(22例)に無作為化された。アナキンラ試験(69例)では、アナキンラ100mg/日(35例)またはプラセボ(34例)を9ヵ月間投与する群に無作為化された。 主要エンドポイントは、混合食負荷試験のCペプチドの曲線下面積2時間値(ベースライン値で補正後)だった。カナキヌマブ、アナキンラいずれもプラセボと有意差なし カナキヌマブ試験を完了したのはカナキヌマブ群45例とプラセボ群21例であり、アナキンラ試験ではアナキンラ群25例、プラセボ群26例だった。 12ヵ月後の混合食負荷試験のCペプチドの曲線下面積2時間値について、カナキヌマブ群とプラセボ群の差は0.01nmol/L(95%信頼区間:-0.11~0.14、p=0.86)であり有意差はみられなかった。9ヵ月後の同値のアナキンラ群とプラセボ群の差も、0.02nmol/L(同:-0.09~0.15、p=0.71)と有意差はみられなかった。 有害事象の発生件数や重症度については、カナキヌマブ試験では両群で同等だったが、アナキンラ試験ではアナキンラ群がプラセボより有意に重度の発生が高率だった(p=0.018)。大半は注射部位反応によるものであった。 著者は、「発症後間もない1型糖尿病患者に対し、カナキヌマブ、アナキンラともに安全ではあったが、単剤投与の有効性は認められなかった。インターロイキン1の遮断は、臓器特異的な自己免疫不全で適応免疫をターゲットとした併用療法においては効果的であるのかもしれない」と述べている。

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ステロイド依存性皮膚症に対するトリアムシノロンアセトニド筋注、適正使用に道筋?

 米国・ボストン大学医学部のShalini Reddy氏らは、ステロイド依存性皮膚症に対するトリアムシノロンアセトニド筋注(商品名:ケナコルト)の有効性と安全性を評価する前向き観察試験を行った。その結果、6週間隔で2回にわたる接種についての安全性と、有意な改善が認められたことを報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年3月29日号の掲載報告。 Reddy氏らは、皮膚疾患に対するコルチコステロイド筋注に関して、投薬・投与に関する勧告がないことや、接種による視床下部・脳下垂体・副腎系への影響のリスクが不明なこと、および有効性が明らかになっていないことが使用を制限している可能性があるとして本検討を行った。 トリアムシノロンアセトニド筋注(IM TAC)を受けた患者の医原性クッシング症候群および続発性副腎機能低下症の発症と期間を評価することを目的とし、医師と患者のアウトカムの報告についても評価した。 試験は、ステロイド依存性皮膚症の診断を受けている14例に対し、IM TACを6週間隔で1回または2回の接種を行い、コルチゾル量、副腎皮質刺激ホルモン、医師・患者の全般的疾患活性評価尺度によるスコア、かゆみの視覚的アナログスケールスコアを、ベースラインと6週、12週時点で評価した。 主な結果は以下のとおり。・総コルチゾル値の平均値は、ベースラインと比べて6週、12週時点で有意に減少した。・一方で、IM TACによる医原性クッシング症候群や続発性副腎機能低下症は、いずれの患者においてもみられなかった。・医師・患者の全般的疾患活性評価尺度スコアの平均値は、ベースラインと比べて6週、12週時点で有意に改善した。・視覚的アナログスケールかゆみスコアの平均値は、ベースラインと比べて6週時点で有意な改善が認められた。・本試験はコホートサイズが小さく比較群がないという点で限定的なものであるが、以上の結果から、IM TACは6週間隔で2回の投与は安全であり、ステロイド依存性皮膚症について有意な改善をもたらすことは明らかであった。・今回の結果は、IM TACの臨床での適正使用を考慮している皮膚科医に対して、接種対象患者、接種回数および投与に関する指針となる可能性がある。

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日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは?

 これまで、アジア人を対象とした認知症リスクと食事との関係を評価した報告はない。九州大学の小澤 未央氏らは、日本人における食習慣と認知症のリスクに関して潜在的な関連性を調査した。The American journal of clinical nutrition誌オンライン版2013年4月3日号の報告。 対象は認知症でない60~79歳の日本人1,006人。追跡期間中央値は15年。食習慣を効率的に調査するために縮小ランク回帰を用いた。特定の食習慣による認知症発症の推定リスクは、Cox比例ハザードモデルを用い算出した。 主な結果は以下のとおり。・7つの食習慣を抽出した。そのうち食事パターン1は「大豆・大豆製品」、「野菜」、「藻類」、「牛乳・乳製品」の高摂取量および「米」の低摂取量と関連していた。・フォローアップ期間中、271人が認知症を発症した(アルツハイマー病144人、血管性認知症88人)。・潜在的な交絡因子の調整後、食事パターン1スコアの最低四分位の被験者と比較して最高四分位の被験者では、すべての原因による認知症リスクは0.66(95%CI:0.46~0.95)、アルツハイマー病リスクは0.65(95%CI:0.40~1.06)、血管性認知症リスクは0.45(95%CI:0.22~0.91)減少した。関連医療ニュース ・認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 ・認知症に対する非定型抗精神病薬処方、そのリスクは? ・Aβ沈着は認知機能にどのような影響を与えるか

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エキスパートに聞く!「関節リウマチ」Q&A part1

CareNet.comでは4月の関節リウマチ特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より関節リウマチ診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、慶應義塾大学 花岡 洋成先生にご回答いただきました。2回に分けて掲載します。プライマリ・ケア医がリウマチを疑うポイント、実施したほうがよい検査、専門医へ紹介するタイミングを教えてください。関節リウマチは骨破壊性の多発関節炎を主徴とする疾患である。発症早期に骨破壊が進行することが報告されて以来、早期診断・早期治療の重要性が認識されている。しかし、その早期診断は容易でなく、専門的知識と経験が要求される。現在、2010年の米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会新分類基準(Arthritis Rheum. 2010; 62: 2569-2581)(表)に基づき、分類(診断)を行うのが一般的である。この新分類基準ではおおまかに、罹患関節の種類と数、持続期間、血液検査所見(リウマトイド因子、抗CCP抗体、CRP、ESR)をスコア化し、分類する手法をとっている。血液検査所見のみでは診断できないことがポイントで、必ず1つ以上の関節炎の存在が必要である。しかし、プライマリ・ケア医が関節炎(滑膜炎)を識別することは困難であるため、以下のポイントを参考にしていただきたい。このスコアリング法では、とくに小関節の関節炎が多いほうが高くスコア化される。関節リウマチの好発罹患関節が小関節だからである。ここでの小関節とは、第2~5中手指節関節(metacarpophalangeal joint:MCP関節)、近位指節間関節(proximal interphalangeal joint:PIP関節)、第2~5中足指節関節(metatarsophalangeal joint:MTP関節)、第1指節間関節(interphalangeal joint:IP関節)、手関節を含む。簡単に言うと、指の第2・第3関節、手首、足趾の関節である。ここに何らかの症状がある場合は、専門医に紹介が必要である。さらに、上記血液検査で異常がある場合は積極的に紹介していただきたい。表画像を拡大するリウマトイド因子陽性でも、関節痛やほかの症状がなければ問題ないでしょうか? もしくは、リウマトイド因子陽性の場合はすべて、専門医に紹介したほうがよいのでしょうか?リウマトイド因子(RF)は、関節リウマチの診断において頻繁に測定されるバイオマーカーの1つである。1987年の米国リウマチ学会の関節リウマチ分類基準に唯一採択されていた血清マーカーであるが、その感度は60~70%、特異度は70~80%と必ずしも高くない。重要なことは、たとえRFが陽性であっても、それだけでは関節リウマチとは診断されない点にある。2010年の米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会新分類基準では、1つ以上の関節炎の存在が関節リウマチと診断する必要最低限の条件となっている。よって、RF陽性かつ1ヵ所以上の関節の腫脹・圧痛がある場合は専門医に紹介すべきである。一方、RAを発症する1.5年前からRFが陽性である患者が約30%存在するとの報告(Arthritis Rheum. 2003; 48: 2741-2749)もあるとおり、発症前からRFが陽性になることが知られている。よって、RF陽性で関節炎がない場合でも、患者さんに、1ヵ所以上の関節の腫れ・痛みが出現した際には再来院するよう伝えておくことが必要である。外来診療での治療効果(疾患活動性)の“簡単な”評価法があれば教えてください。昨今、関節リウマチの診療においてもTreat to Target(T2T)の概念が広く流布され、実臨床でも応用されている(Ann Rheum Dis. 2011; 70: 1999-2002)。T2Tとは目標達成に向けた治療のことである。1~3ヵ月毎に疾患活動性を評価し、寛解(長期罹患例は低疾患活動性)を達成・維持することを目標とするものである。疾患活動性の評価方法として、いくつかの指標が存在する。DAS28、SDAI、CDAI(Clin Exp Rheumatol. 2005; 23: s100-108)などが代表的なものである。DAS28は複雑な計算式により算出される指標(Ann Rheum Dis. 1990; 49: 916-920)で、計算機がないと日常診療では使用しづらいという難点がある。質問にある“簡単な”指標としてはCDAIが候補になる。採血結果も不要で、VAS(Visual Analogue Scale)の測定さえできれば簡便に行える。これは腫脹関節数、圧痛関節数、医師のVAS値、患者のVAS値を純粋に足し算したものである。10以下が低疾患活動性、~22が中等度疾患活動性、23以上が高疾患活動性、2.8以下が寛解である。メトトレキサートの増量の基準や方法について教えてください。関節リウマチの診療において、メトトレキサート(MTX)はアンカードラッグである。2011年2月より、日本でも第一選択薬として使用可能となり、用量も1週間に16mgまで増量可能となった。増量の基準は、T2T(Ann Rheum Dis. 2011; 70: 1999-2002)の概念から、低疾患活動性・寛解に至っていなければ、安全性を配慮しながら増量する。日本リウマチ学会MTX診療ガイドラインに基づくと、6mg/週から開始し、4~8週経過しても効果が不十分であれば適宜増量する、とある。ただし、これはあくまで推奨であり、初期投与量についても患者の保有する副作用危険因子や疾患活動性、予後不良因子を考慮して、適宜増減する、と付記されている。昨今、Intensive treatmentやRapid dose escalationと呼ばれるMTXの増量方法の有効性が検証されつつある。これは欧州を中心に行われた研究だが、早期関節リウマチを対象にMTX7.5mg/週から開始し、寛解を達成するまで5mg/週ずつ1ヵ月毎に増量するプロトコールである。このプロトコールで治療された群は、3ヵ月毎での診療群と比較して治療成績がよい(Ann Rheum Dis. 2007; 66: 1443-1449)。ただし、MTXによる有害事象での脱落例は強化治療群でより多く(39 vs 24%)、この強化治療の有益性がどこまであるか、世界規模での検証が必要かもしれない。専門医からの紹介で、引き続きメトトレキサートを処方する場合の注意点、専門医への受診間隔、専門医に紹介すべき所見(副作用出現や症状増悪の目安など)を教えてください。この患者さんが、メトトレキサート(MTX)内服によって低疾患活動性や寛解など、安定している状態と想定してお答えする。T2Tリコメンデーション(Ann Rheum Dis. 2011; 70: 1999-2002)によると、低疾患活動性もしくは寛解であっても、3~6ヵ月での活動性の評価が推奨されている。さらに治療方針の決定には、総合的疾患活動性の評価に加えて、関節破壊などの構造的変化および身体機能障害も併せて考慮すべきだと記載されている。つまり、関節X線も半年~1年に1回は撮影し、骨破壊の程度を詳細に評価することが望ましいとされている。これら「疾患活動性の評価」や「関節X線の読影」は専門的知識と経験が要求される。よって現実的には、状態が安定しているのであれば1年に1回程度の専門医への受診間隔が望ましいのではないかと考える。次に、副作用出現についてである。MTXの代表的な副作用は、肝酵素上昇、口内炎、消化管障害、血球減少と感染症である。日本におけるMTX承認以降、3年毎の副作用死亡例の内訳をみると、間質性肺炎は減少し、感染症とリンパ増殖性疾患の割合が増している。骨髄障害は減少していない。消化管障害、肝酵素上昇は葉酸の予防効果が確実であり、血球減少についても葉酸依存的との報告があるため、これらが出現した際には葉酸の追加や増量が必要である。骨髄障害の背景には腎機能障害などのハイリスク例があり、脱水を契機に突然、骨髄障害を発症することも経験する。よって、葉酸補充によって改善が見込まれる肝酵素上昇や口内炎などであれば、葉酸投与量を増加し改善するか確認する。改善しない例や、重篤な骨髄障害を認めた際などには、専門医受診を勧めるのが妥当であろう。また、長期MTX内服例でリンパ節腫脹が出現した場合も専門医へ戻すほうがよい。

9010.

I型の複合性局所疼痛症候群の運動障害には筋痛覚が関与している

 I型の複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者でよく観察される運動障害に、感覚処理障害がどのような役割を果たしているかは、現在のところ不明である。オランダ・ライデン大学病院のDiana E. van Rooijen氏らは、初めてCRPSにおける感覚機能と運動機能との関連について研究を行い、筋痛覚がCRPSにおける運動制御の障害に重要な役割を果たしている可能性があることを明らかにした。The Journal of Pain誌オンライン版2013年3月27日の掲載報告。 本研究は、CRPS患者における感覚機能と運動機能との関連を調査することが目的であった。 対象は、ジストニアを伴うCRPS患者、ジストニアを伴わないCRPS患者および健常者(対照群)で、定量的感覚検査(QST)および指タップ運動機能解析を行った。  主な結果は以下のとおり。・両CRPS群は、寒冷刺激ならびに温熱刺激に対する温度覚鈍麻と、寒冷刺激に対する痛覚過敏を示した。 ・両CRPS群で筋痛覚過敏を反映する圧痛閾値の減少が認められ、とくにジストニアを伴うCRPS群で顕著であった。 ・両CRPS群および対照群において、圧痛閾値のみが指タップ運動機能のパラメータと相関した。 ・ジストニアを伴うCRPS群は、対照群およびジストニアを伴わないCRPS群と比較して2点識別覚が増強していた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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Vol. 1 No. 1 ACSの治療-急性期のPCI/薬物療法

石井 秀樹 氏名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学はじめに急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)に対する急性期の治療として血栓溶解療法と経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の出現、それらの技術向上は、患者の予後改善に大きく寄与している。東京都CCUネットワーク(http://www.ccunet-tokyo.jp/)の統計では、急性心筋梗塞の死亡率は1982年には20.4%であったものが、2010年にはわずか6.0%にまで低下している(図:本誌p15参照)。安静が治療の主体であった冠動脈の再疎通療法以前の院内死亡率が3割強であったことを考えると、治療法の変遷と治療成績には極めて密接な関連があることがわかる。わが国では、医療保険制度をはじめとし、交通網や救急搬送システムなどの点で欧米とは異なることから、ACS、特に急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)の治療法としてPCIを第1選択とする施設が多い。10年ほど前のデータではあるが、欧米のデータベースのよる統計ではAMIに対するprimary PCI施行率は5.5~49.6%であったが、わが国では日本の施行率は75~94%と高率であり、さらに年間施行件数の少ない施設においてもPCIを選択することが多いという特徴がある1)。これは欧米では広大な医療圏内の中にPCIを行える施設が限られているため、AMI患者には血栓溶解療法が行われることが多いが、わが国ではかなりの地域でPCIを行うことができる施設に収容可能であることにも起因する。そして、このことはわが国のACS患者の予後改善に対して大きな貢献をしている要因と考えられている。これまでの知見で、ST上昇型のAMI(STEMI)に対するPCIの有効性は確立している。しかしながら、現在でも非ST上昇型AMIや不安定狭心症では、早期のPCIを含む侵略的戦術がよいのか、保存的加療を経てから症例を選んで冠動脈造影などの処置を行うのがよいのか、一定の見解は得られていない。わが国ではそのような症例に対してもSTEMI症例同様に侵略的戦術にシフトしていると考えられている。PCIなどによる再灌流は非常に有用な手段であるが、再灌流自体が再灌流障害という新たな心筋障害を生じさせることも知られており、薬物の併用などが検討されるべきである。急性心筋梗塞に対する再灌流療法ACS、特にAMIの治療において、冠血流の途絶を早期に開通、すなわち再灌流を得ることが重要なことである。このことにより、梗塞心筋の縮小効果や、左室リモデリングを抑制し、結果として長期的な予後改善効果が得られる。再灌流の手段としては、PCIが確実な方法であるが、PCIを行う施設まで搬送時間がかかる場合またはPCIまでに時間がかかると判断される場合には、血栓溶解療法単独あるいは血栓溶解療法とPCIのハイブリッド治療法であるfacilitated PCIを選択肢とするべきであるとされる2)。現在ACSに対して行うPCIは、血栓吸引のみあるいはバルーン単独での治療で終了することは少なく、ステントによる治療がほとんどの場合に行われており、PCI後の急性閉塞の低減や、再狭窄率の減少など心血管イベントの低減に貢献している。その際に考慮すべき問題として、ACSに対してbare metal stent(BMS)を使用するか、drug eluting stent(DES)を使用するのかという問題がある。ACSに対しても、安定狭心症症例同様に、本邦ならず世界的に見てもDESの使用が増加している。一時、ACSに対するDES使用は、血栓閉塞のリスクが高まるのではないかと論議されたものの、近年はDES留置も安全であるとする報告が相次いでいる3)。確かにDESは再血行再建術などに対してはBMSよりも有用であることは間違いない。しかしながら、DESが内皮障害やspasm発生に関与していることを示唆する報告があり4, 5)、spasmが多いと考えられる日本人の使用に対しては、今後も有効性と副作用の十分な検討を行うべきである。また筆者は、DES留置後の長期の予後改善が未だ不明であり、2剤併用抗血小板療法(dual anti-platelet therapy:DAPT)をいつまで行うかがまだ確立されていないことや、ACSという緊急の対応が必要ななかで出血の素因があるのかどうかを判断したり、近いうちに手術が必要なのかどうかなど確認することが困難な状況のなかで、DESを安易に使用すべきではないと考えている。加えて、近い将来に吸収性ステントや薬剤溶出性バルーンなどが日常診療において使用可能になりそうな状況において、特に年齢が若い症例に対しては、急性閉塞などには十分な注意を払いながら、バルーン単独でのPCIも考慮するべきとも考えている。再灌流療法と再灌流障害再灌流療法により、梗塞心筋の縮小効果や、左室リモデリングを抑制し、結果として長期的な予後改善効果が得られる。しかしその一方で、再灌流自体が新たな心筋障害を生じさせる。これを再灌流障害といい、PCIなどによる再灌流療法のメリットを減弱させてしまうものである。最近の知見では、1.no-reflow phenomenon:no-reflow現象(血管内皮などの障害による血管性障害)→TIMI flow grade、TIMI frame countなどによる造影所見からの判断、myocardial blush grade(造影剤による心筋染影度)、心電図によるS Tresolution(ST上昇の改善の程度)などで判断可能2.reperfusion arrhythmia:再灌流性不整脈→心電図によるモニターで判断可能3.lethal reperfusion injury:致死的心筋障害(不可逆的な細胞障害)→核医学検査法などによりにより評価可能4.Myocardial stunning:心筋スタンニング(虚血解除後に生存心筋で認められる機能低下で気絶心筋ともいわれる)→核医学検査法などにより評価可能6)に分類される。再灌流障害の発生を抑えるため、PCIの際に工夫することや、薬物を追加で使用することが重要と考えられる。特に虚血プレコンディショニング、ポストコンディショニングのメカニズムを応用することが近年注目されている(図)。虚血プレコンディショニングとは、本格的な虚血に先行して起きる短時間の虚血が心筋ダメージを軽減することであり、臨床の場でも、梗塞前に狭心症がある患者ではそれがなかった患者と比較して予後が良いことが知られている7)。また、ポストコンディショニングとは、心筋梗塞症例に対して、冠動脈再灌流直後に虚血と再灌流を短時間・複数回繰り返すことで、梗塞範囲の縮小効果など再灌流障害による心筋ダメージが軽減する現象のことをいう8)。図 プレコンディショニングとポストコンディショニングの概念画像を拡大する再灌流障害に対する戦略1.段階的再灌流 一気に再灌流するのではなく、虚血と再灌流を複数回繰り返すことで細胞内Ca2+ overloadを予防し、再灌流障害が低減する。臨床試験で良好な結果が認められているが、数十秒から数分間での冠動脈内におけるバルーンのinflation、deflationが必要で、血栓吸引療法が行われた場合にはこの機序による心筋保護は難しい可能性がある。2.血栓吸引カテーテル、末梢保護デバイス ACSの発症のほとんどに血栓が関与している。血栓のある冠動脈病変をバルーンで拡張した場合、破砕された血栓が微小循環において塞栓を生じ、再灌流障害の原因になることがある。そのため、バルーン拡張の前にあらかじめ血栓を吸引する方法や、末梢で血栓やデブリスをtrapする方法が開発された。 早い時期に発表されたEMERALD研究では、末梢保護デバイスの有用性が示されなかったが、2008年発表のわが国から報告されたVAMPIRE trialでは、TVAC™による血栓吸引をSTEMI患者に対して行うことにより、行わない群と比較して、brush gradeの有意な改善と8か月後のMACEの有意な低下を示した9)。また、TAPAS研究でも血栓吸引カテーテルがmyocardial blush gradeの有意な改善が示された。 わが国では血栓吸引療法は他国と比較しても汎用されている手技と考えられ、以下に示すような薬物の追加療法を行うことで、より質の高い再灌流が得られるものと考えられる。3.再灌流障害に対する薬物による追加的保護療法 再灌流障害に対して、さまざまな薬剤がこれまで試みられてきた10)。アデノシンはプレコンディショニング作用を持つ薬物として海外から多くの報告がなされている。また、ポストコンディショニング作用を持つ薬物もさまざまある(表)。 近年、わが国からも再灌流障害の予防、慢性期の左室リモデリング抑制と予後改善を目的とし、さまざまな検討がなされている。そのなかでもニコランジルとカルペリチドは本邦で開発、臨床の場で幅広く使用され、それらを使用した研究成果報告はわが国からの報告が極めて多い。以下一部を紹介する。表 RISK pathwayの活性化とmPTP開口阻害(文献6, 10より)画像を拡大するa.ニコランジル ニコランジルは、低血糖治療薬であるジアゾキサイドなどのK-ATPチャネル開口薬とは異なる、NOドナーである点が大きな特徴である。K-ATPチャネルは先に述べた虚血プレコンディショニングに関与しており、K-ATPチャネル開口薬であるニコランジルが薬理学的プレコンディショニングを生じるということがIONA試験などで証明されてきた。 AMIにおける再灌流障害に関する研究として、コントラストエコーによるno reflow現象の抑制効果や、左室梗塞部位における壁運動改善効果が1999年に発表され11)、その後もACSをはじめとした虚血性心疾患に対するニコランジルの有用性が数多く発表された。我われは、STEMI患者に対してPCIによる再灌流を行う直前にニコランジルを静注で約30分かけて12mg投与することにより、PCI後の微小循環障害予防、慢性期の左室リモデリング抑制と心不全発症予防などの効果があることを報告した12)。その後、J-WIND-KATP研究(ニコランジル0.067mg/kgボーラス投与後、24時間1.67μg/kg/min静注)13)では、ニコランジルの有効性は示されなかったものの、用量や投与法などのさらなる検討が必要であると考えられる。また、現在は、ニコランジルは急性心不全の適応が認められ、用量もより高用量の使用が可能となっている。 また、冠動脈内注(冠動脈注は緩やかな投与が重要!)による冠微小血管抵抗指数改善作用も報告されており14)、slow flow等の改善などに対しても臨床的に幅広く使用されている。筆者の見解であるが、ACSまた待機的な症例に対してもニコランジルはPCI前から投与しておくことがコツであり、再灌流障害やslow flowを発症しないためには、予防的な投与が極めて重要であると考えている。 最近のニコランジルのトピックとして、2011年のAHAで、岐阜大学より造影剤腎症の予防効果が発表され、世界的にも注目を集めた15)。b.カルペリチド(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド:hANP) カルペリチドは血管拡張作用、利尿作用があり、急性心不全に対する治療薬として広く使用されているが、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の抑制効果、交感神経系の拮抗作用、そして虚血プレコンディショニング、ポストコンディショニング効果と同様の作用をすると考えられているreperfusion injury salvage kinase(RISK)を活性化させる作用もあることが報告されている。この効果により、再灌流障害や左室リモデリングが抑制され、急性心筋梗塞に対して有効であるとする報告が数多く報告されている。J-WIND-ANP(AMI患者にカルペリチド0.025μg/kg/minで3日間投与)13)では、AMI患者の梗塞サイズがプラセボ投与群に比べ、14.7%の有意な減少と、慢性期の左室駆出率で、プラセボ群と比較して5.1%の有意な増加が見られ、長期にわたって心臓死・心不全による再入院も、有意に減少させることが報告されている。また、カルペリチドにも造影剤腎症予防効果の報告もある16)。c.その他 スタチンの中には、ポストコンディショニング様の作用があることがわかっている。海外のARMYDA-ACS研究では、PCI前のアトルバスタチンの投与により心筋障害が予防できることがわかっていた。本邦からは弘前大学より、AMI患者に対するdirect PCIの直前にプラバスタチンを投与することで再灌流障害が予防されたとする大変興味深い結果が報告されている17)。 また、本邦で開発され、脳梗塞治療薬として使用されているフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンが、direct PCIに伴う再灌流障害を抑制したとする報告がある18)。4.ACS患者に対する抗血小板療法の重要性 ACSの急性期では、血小板活性・凝固能の亢進と線溶能低下が起こっているため、血栓が非常に形成されやすい状況である。血小板が活性化すると膜表面の糖蛋白が発現し、血小板からADP、トロンボキサンA2などの生理活性化物質が放出され、血栓形成がさらに強まる。本邦では使用できないが、GP IIb/III阻害薬はその流れのなかで効果を示す薬剤である。 急性期ではアスピリン162-200mgの咀嚼投与が行われているが、PCIでステント治療となる場合には治療直前からチエノピリジンの投与が推奨される。特にクロピドグレルの場合には初期にローディングとして300mgの投与、以降75mgの投与が必要である2)。韓国からのデータではあるが、DESを用いたPCIを施行したSTEMI患者の検討では、抗血小板薬3剤(アスピリン+クロピドグレル+シロスタゾール)の投与が、2剤群(アスピリン+クロピドグレル)と比較して、8か月における主要心血管イベントを有意に低下させた(図:本誌p19参照)19)。ACSによる入院30日以内の消化管出血があると予後が悪化することも知られているが20)、わが国においても、出血に注意をしながら抗血小板剤の3剤投与も検討されてもよいかもしれない。おわりに日本ではSTEMIをはじめとするACS症例に広くPCIが行われている。特にSTEMI症例に対しては、ガイドラインでdoor-to-balloon timeは90分以内にすることが求められているが、わが国全体でもかなりの割合でそれがクリアされているものと考えられる。ACS治療が海外と比較して、日本で良好な成績を上げているのもそれが大きく起因していることは間違いない。また、多くの施設が24時間体制で緊急カテーテル・PCIに対応し、夜間や休日でも質の高いPCIを常に心がけており、循環器医療に携わるわが国の医師・パラメディカル・関係者の意識が高いことも寄与しているものと考えられる。さらに、薬物の使用においても、急性期には症例ごとにきめ細かな対応がなされ、慢性期にはエビデンスが構築された薬剤が高い比率で投与されているものと考えられる。これらのことはACSに限ったことでなく、わが国の医療レベルが非常に高い要因とも考えられる(図:本誌p19参照)21)。最近ACS症例に対しては、PCIや薬剤のみでなくremote ischemic conditioningや、再生医療に関する話題も豊富である。わが国からACS患者の予後改善に関する新たなエビデンスが構築されることが期待される。文献1)Ui S, Chino M, Isshiki T. Rates of primary percutaneous coronary intervention worldwide; Circ J 2005; 698(1): 95-1002)日本循環器学会ほか. 急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療に関するガイドライン(2006-2007年度合同研究班報告). Circ J 2008; 72(supplIV): 1347-14643)Mauri L, Silbaugh TS, Garg P, et al. Drug-eluting or bare-metal stents for acute myocardial infarction. N Engl J Med 2008; 359 (13): 1330-13424)Yoshida T, Kobayashi Y, Nakayama T, et al. Stent deformity caused by coronary artery spasm. Circ J 2006; 70(6): 800-8015)Lerman A, Eeckhout E. Coronary endothelial dysfunction following sirolimus-eluting stent placement: should we worry about it? Eur Heart J 2006; 27(2): 125-1266)Yellon DM, Hausenloy DJ. Myocardial reperfusion injury. N Engl J Med 2007; 357 (11): 1121-11357)Ishihara M, Sato H, Tateishi H, et al. Implications of prodromal angina pectoris in anterior wall acute myocardial infarction. Acute angiographic findings and long-term prognosis. J Am Coll Cardiol 1997; 30(4): 970-9758)Yang XM, Proctor JB, Cui L, et al. Multiple, brief coronary occlusions during early reperfusion protect rabbit hearts by targeting cell signaling pathways. J Am Coll Cardiol 2004; 44(5): 1103-11109)Ikari Y, Sakurada M, Kozuma K, et al. VAMPIRE Investigators. Upfront thrombus aspiration in primary coronary intervention for patients with ST-segment elevation acute myocardial infarction: report of the VAMPIRE (VAcuuM asPIration thrombus Removal) trial. JACC Cardiovasc Interv 2008; 1(4): 424-43110)Ishii H, Amano T, Matsubara et al. Pharmacological intervention for prevention of left ventricular remodeling and improving prognosis in myocardial infarction. Circulation 2008: 118(25): 2710-271811)Ito H, Taniyama Y, Iwakura K, et al. Hori M, Higashino Y, Fujii K, Minamino T. Intravenous nicorandil can preserve microvascular integrity and myocardial viability in patients with reperfused anterior wall myocardial infarction. J Am Coll Cardiol 1999; 33(3): 654-66012)Ishii H, Ichimiya S, Kanashiro M, et al. 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Early statin treatment before coronary intervention protects against reperfusion injury and reduces infarct size in patients with acute myocardial infarction. Circulation 2005; 112: II-569 Abstract.18)Tsujita K, Shimomura H, Kaikita K, et al. Long-term efficacy of edaravone in patients with acute myocardial infarction. Circ J 2006; 70(7): 832-83719)Chen KY, Rha SW, Li YJ, et al. Korea Acute Myocardial Infarction Registry Investigators. Triple versus dual antiplatelet therapy in patients with acute ST-segment elevation myocardial infarction undergoing primary percutaneous coronary intervention. Circulation 2009; 119(25): 3207-321420)Nikolsky E, Stone GW, Kirtane AJ, et al. Gastrointestinal bleeding in patients with acute coronary syndromes: incidence, predictors, and clinical implications: analysis from the ACUITY(Acute Catheterization and Urgent Intervention Triage Strategy)trial. J Am Coll Cardiol 2010; 54(14): 1293-130221)Bhatt DL, Eagle KA, Ohman EM, et al. REACH Registry Investigators. Comparative determinants of 4-year cardiovascular event rates in stable outpatients at risk of or with atherothrombosis. JAMA 2010; 304(12): 1350-1357

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統合失調症の治療ターゲット、新たな遺伝要因を特定

 統合失調症に関連する新たな遺伝要因を明らかにするため、Andrew E. Timms氏らは、頻度の少ない疾患関連遺伝子変異の同定を試みた。その結果、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体と関連するフレームシフト変異ならびにミスセンス置換が存在することを報告した。統合失調症は顕著な遺伝率を示す複雑な遺伝性疾患である。遺伝学的研究により、関連する種々の遺伝子および伝達経路が示されているが、遺伝的罹病性の多くの部分は依然として不明である。著者は、今回の統合失調症発症リスクと関連する遺伝子の存在の発見は、新たな有用な治療ターゲットとなるものだと報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2013年4月3日号の掲載報告。 統合失調症の遺伝形式の検討は、背景にある分子経路に関するよりよい理解につながり、疾患の予防と治療における標的アプローチを可能にすると考えられる。 本研究は、統合失調症家系を強く示唆する新たな遺伝因子の同定を目的とした。 academic medical centersから統合失調症の発端者とその家族を登録し、単一遺伝子による遺伝と思われる統合失調症の多発家系5家系において病因性突然変異の同定を試みた。主要アウトカムは頻度の少ない疾患関連遺伝子変異とし、ゲノムワイドアレイCGH法によるコピー数多型の同定、エクソンシーケンスによる変異の同定、そして連鎖解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・コピー数多型は検出されなかった。・5家系すべてにおいて、タンパク質コード領域に頻度の少ないシーケンス変化が認められ、3遺伝子のうち1つはNMDA受容体と関連していた。・1家系において、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)をコードし、NMDA受容体に結合してそのシグナル活性を増強するGRM5のミスセンス置換およびフレームシフト置換が認められた。なお、フレームシフト置換は、足場蛋白タマリンとの結合を妨げ、mGluR5内在化を促進することが知られている。 ・その他の家系では、カルモジュリン結合蛋白ホスファターゼをコードし、mGluR5レベルに影響を及ぼすPPEF2のミスセンス置換が認められた。・3家系において、NMDA受容体にも結合する低密度リポタンパク質(LDL)受容体関連タンパク質をコードするLRP1B内に異なるミスセンス置換が認められた。なお、LRP1Bは統合失調症と強い関連が示されている染色体2q22領域に位置する。関連医療ニュース ・統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 ・日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに ・統合失調症の診断・治療に期待!新たなバイオマーカー

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今後の日焼け対策キャンペーンはより若い年齢層を対象に

 英国・Royal Free Hampstead NHS TrustのD. P. Butler氏らは、皮膚がん予防を目的とする日焼け対策プログラムを今後どのように展開するべきかを企画するため、かかりつけ医(GP)を通じて幅広い患者を対象に、皮膚がんに対する認識や向き合う姿勢などの現状を調査した。その結果、プログラムはより若い年齢層を対象とすべきであり、またすでに皮膚がんを呈する患者に対してヘルスケア専門家は、安全な太陽光曝露の重大性の認識が強化できるよう働きかける必要があることを報告した。Clinical and Experimental Dermatology誌オンライン版2013年3月27日号の掲載報告。 調査は、さまざまな患者における皮膚がんに関する知識および認識、対策に向き合う姿勢を明らかにし、今後の英国日焼け対策キャンペーン(UK sun-awareness campaigns)を企画することを目的とした。 2010年6月1日~7月31日の期間に英国内3つのGP(2施設は都市部、1施設は地方)のうちの1施設で受診した16歳以上の患者を対象に、太陽光曝露に関する行動データを集めるため質問票への回答を求めた。 主な結果は以下のとおり。・総計1,000人(男性327人、女性673人)から回答を得た。・16~30歳群が高齢者群よりも、より有意に多く日焼けしている可能性があった。・また16~30歳群は、皮膚がん回避の方法の理解が、他の年齢群よりも有意に不良であった。・さらに同群は高齢者群との比較において、日中の太陽光の回避(p<0.001)や日なたでは日差しをカバーする(p<0.001)ということが有意に少なかった。・皮膚がんの病歴や家族歴の有無による、太陽光曝露や日焼けの頻度に有意差はみられなかった。・皮膚がんの病歴を持つ人で、日焼け止めを使って対策をしている傾向がみられた(p<0.001)が、日差しの完全防備や回避はしていなかった。

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ロタウイルスワクチン、定期接種化後の有効性を確認

 米国疾病管理予防センター(CDC)のDaniel C. Payne氏らは、ロタウイルスワクチン5価(RV5、商品名:ロタテック、接種回数3回)および単価(RV1、同:ロタリックス、同2回)の両定期接種化後初となる予防効果に関する評価を行った。その結果、両ワクチン効果(VE)は1回以上接種で80%であり、5歳未満児のロタウイルス胃腸炎による病院救急部門(ED)受診および入院に対する顕著な減少効果が認められたことを報告した。米国ではRV5は2006年に、RV1は2008年に定期接種化されたが、それ以前はほとんどの乳幼児がロタウイルスに感染し、ロタウイルスが冬場の急性胃腸炎の最高70%を占め、毎年10億ドルを超える医療・社会的コストが生じていたという。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2013年3月13日号の掲載報告。 研究グループは、RV5とRV1のワクチン効果(VE)を評価するため、人口動態的および地理的に多様な小児を登録し、ロタウイルス急性胃腸炎での入院およびED受診の低下の状況を調べた。 全米7施設において、2009年11月~2010年6月、2010年11月~2011年6月に急性胃腸炎(AGE)症状で入院またはED受診した5歳未満児を登録し、糞便検体を用いた酵素免疫測定法にてロタウイルス感染の有無および遺伝子型の確認を行い、感染が確認されたケースのワクチン接種状況をロタウイルス非感染AGEケース(対照例)と比較した。回帰モデルにて、各ワクチン、年齢、民族性、優勢を占めた遺伝子型、臨床評価項目(入院、ED受診)についてVEを算出し検討した。 主な結果は以下のとおり。・RV5接種群は、ロタウイルス感染例359例、対照(ロタウイルス陰性)例1,811例であった。RV1接種群は、同60例、155例であった。・ロタウイルス関連のED受診および入院に対するVEは、RV5(3回完全接種)は84%(95%CI:78~88)、RV1(2回完全接種)は70%(同:39~86)であった。・いずれかのワクチン接種1回以上のVEは80%(95%CI:74~85)であった。・臨床評価項目別にみたRV5のVEは、ロタウイルス関連のED受診に対しては81%(95%CI:70~84)、入院に対しては86%(同:74~91)であった。・同じくRV1については、ED受診に対して78%(95%CI:46~91)のVEが認められた。入院については試験の検出力が不十分で評価ができなかった。・明らかな免疫の減衰は、RV5は接種後4年間、RV1は同2年間はみられなかった。・遺伝子型別にみた場合、RV5は4種類の主要なロタウイルス(G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G12P[8])に対するVEが統計的に有意であった。RV1も、最も頻度の高い遺伝子型であるG3P[8]に対するVEが統計的に有意であった。

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禁煙で体重が増えても心血管疾患リスクは減少/JAMA

 非糖尿病者では、禁煙により心血管疾患(CVD)のリスクが大きく低下する一方で体重の増加がみられるが、禁煙による心血管ベネフィットは体重増加では損なわれないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のCarole Clair氏らの検討で明らかとなった。米国では喫煙は予防可能な死亡の主要因とされ、CVDの重要なリスク因子である。禁煙によりCVDリスクは実質的に低減するが、禁煙の数少ない有害作用に体重増加があり、肥満もCVDのリスク因子であることから、禁煙を考慮中の喫煙者の高い関心を呼んでいる。JAMA誌2013年3月13日号掲載の報告。禁煙後の体重増加の影響をフラミンガム子孫研究のデータで解析 研究グループは、禁煙後の体重増加は糖尿病の有無にかかわらず禁煙のベネフィットを損ねないとの仮説を立て、これを検証するためにプロスペクティブな地域住民ベースのコホート試験を行った。 解析には、1984~2011年までに収集されたフラミンガム子孫研究のデータを用いた。4年ごとに調査を行い、自己申告に基づく喫煙状況を4つのカテゴリー[喫煙、短期禁煙(≦4年)、長期禁煙(>4年)、生涯非喫煙]に分類した。 Cox比例ハザードモデルによるプール解析を行って禁煙と6年CVDイベントの関連を評価し、禁煙後4年間の体重の変化が禁煙とCVDイベントの関連に及ぼす影響について検討した。評価項目は6年間の総CVDイベント(冠動脈心疾患、脳血管イベント、末梢動脈疾患、うっ血性心不全)とした。体重は増加したが、CVDリスクは喫煙者の半分に 平均フォローアップ期間は25年であった。この間に、対象となった3,251人(平均年齢47.8歳、女性51.7%、平均体重74.8kg、平均BMI 26.1kg/m2)に631件のCVDイベントが発生した。 4年間の体重増加中央値は、短期禁煙の非糖尿病の参加者が2.7kg、短期禁煙の糖尿病の参加者は3.6kgと、長期禁煙非糖尿病の0.9kg、長期禁煙糖尿病の0.0kgに比べて大きかった(p<0.001)。 非糖尿病参加者における年齢・性別で調整後の100人-調査当たりのCVD発症率は、喫煙者が5.9件[95%信頼区間(CI):4.9~7.1]、短期禁煙者が3.2件(同:2.1~4.5)、長期禁煙者が3.1件(同:2.6~3.7)、生涯非喫煙者は2.4件(同:2.0~3.0)であった。 喫煙者との比較における、CVDリスク因子で調整後のCVDのハザード比(HR)は、短期禁煙者が0.47(95%CI:0.23~0.94)、長期禁煙者は0.46(同:0.34~0.63)であった。調整因子に体重変化を加えても、これらの関連への影響はほとんどなかった(短期禁煙者のHR:0.49、95%CI:0.24~0.99、長期禁煙者のHR:0.46、95%CI:0.34~0.63)。 糖尿病の参加者では、非糖尿病と類似の点推定値が得られたが、CVDリスクの低減と禁煙との関連には、統計学的な有意差を認めなかった(短期禁煙者のHR:0.49、95%CI:0.11~2.20、長期禁煙者のHR:0.56、95%CI:0.28~1.14)。これは試験のパワーが不足していたためと考えられた。 著者は、「非糖尿病の参加者は禁煙によりCVDイベントのリスクが低下し、禁煙後にみられた体重増加はこの効果に影響を及ぼさなかった」とまとめ、「この知見は、たとえ禁煙の結果として体重が増加しても、禁煙による心血管ベネフィットは、損なわれずに本質的なものとして保持されることを示す」と指摘している。

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統合失調症患者とタバコ、どのような影響を及ぼすのか?

 藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らは、ニコチン依存が統合失調症の中間表現型に影響を及ぼすか否か、またニコチン依存の病態生理について遺伝学的側面から検討を行った。その結果、ニコチン依存は統合失調症患者の言語記憶および実行機能に影響を及ぼしている可能性があること、ニコチン依存に関連するニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)遺伝子における一塩基多型(SNP)の存在を示唆した。Human Psychopharmacology: Clinical and Experimental誌オンライン版2013年4月4日の掲載報告。 本研究の目的は、日本人統合失調症患者において、ニコチン依存が統合失調症の中間表現型に影響を及ぼすか否か、また、nAChR遺伝子のα4 サブユニット(CHRNA4)およびβ2サブユニット(CHRNB2)とニコチン依存との関連を検討することであった。対象は、統合失調症患者100例、健常対照者107例であった。まず、統合失調症患者の認知機能および聴性驚愕反応を調べた。認知機能は、統合失調症認知機能簡易評価尺度(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia:BACS)により評価した。続いて、現在喫煙中の統合失調症患者および健常対照者について、TDS(Tobacco Dependence Screener)、FTND(Fagerstrom Test for Nicotine Dependence)、ブリンクマン指数によりニコチン依存度を評価し、認知機能および聴性驚愕反応との関連を検討した。さらに、CHRNA4およびCHRNB2における12のタグSNPについて、ニコチン依存との関連を重回帰分析により検討した。主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者において、ニコチン依存の存在と重症度は言語記憶および実行機能と関連していた。・一方、ニコチン依存と聴性驚愕反応との間に関連は認められなかった。・健常対象者において、CHRNA4のrs755203およびrs1044397はニコチン依存と関連していた。・以上のことから、統合失調症患者におけるニコチン依存は言語記憶および実行機能のレベルに影響を及ぼしている可能性があると考えられた。さらに、日本人健常者におけるニコチン依存の病態生理に、CHRNA4のrs755203およびrs1044397が関与している可能性が示唆された。関連医療ニュース第二世代抗精神病薬、QT延長に及ぼす影響:新潟大学ブプロピオンで統合失調症患者の禁煙達成!?統合失調症の症状悪化に関連?「喫煙」「肥満」の影響

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てんかんと寄生虫感染との関連説を確認

 システマティックレビューとメタ解析の結果、線虫オンコセルカ(回旋糸状虫)の寄生虫感染によるオンコセルカ症と、てんかんとの関連説を支持する知見が得られたことを、ウガンダ・Basic Health Services Kabarole & Bundibugyo DistrictsのChristoph Kaiser氏らが発表した。未治療者における小結節の触診とミクロフィラリア数で定義する感染の強度が、てんかんの病因に関与していることが確認されたという。PLoS neglected tropical diseases誌3月号(オンライン版3月28日号)の掲載報告。 研究グループは、オンコセルカ症とてんかんとの関連について入手可能なすべてのケースコントロール試験を対象にシステマティックレビューとメタ解析を行うことを目的とした。感染に関して年齢および居住地域の感染レベルが重要な規定因子となることを踏まえて、追加解析を行い、これら交絡因子の調整を満たした試験に限定した。文献の検索は2012年5月までにアップされたものについて、African Neurology Database、Institute of Neuroepidemiology and Tropical Neurology、Limogesの医学データベース、および参考文献リスト、商用検索エンジンにて行った。てんかんを有する患者(PWE)と有さない患者(PWOE)におけるオンコセルカ症の感染状態を調べており、ランダムエフェクトモデルを用いたプールオッズ比(ORp)、標準化平均差(SMD)が算出可能なデータを提示している試験報告を適格とした。 主な結果は以下のとおり。・解析には、オンコセルカ症の診断について定量的皮膚生検データを提示していた11試験を特定し組み込んだ。・総サンプル(PWE患者876例、PWOE患者4,712例)の複合解析の結果、ORpは2.49(95%CI:1.61~3.86、p<0.001)であった。・年齢、居住者、性について調整していた試験に限定した解析(PWE患者367例、PWOE患者624例)においては、ORpは1.29(95%CI:0.93~1.79、p=0.139)であった。・オンコセルカ症の診断で小結節を評価していたのは4試験で(PWE患者225例、PWOE患者189例)、ORpは1.74(95%CI:0.94~3.20、p<0.076)であった。限定解析に組み込まれたのは2試験で(PWE患者106例、PWOE患者106例)、ORpは2.81(95%CI:1.57~5.00、p<0.001)であった。・ミクロフィラリア未治療の患者についてミクロフィラリア数を調べていたのは1試験であり、PWOE患者よりもPWE患者のほうが有意に数量が高値であった。関連医療ニュース ・てんかん患者、脳内ネットワークの一端が明らかに ・抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害 ・検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響

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PCI施行後の大出血で院内死亡率が上昇/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後の大出血により院内死亡率が有意に上昇し、出血関連死は推定で約12%にのぼることが、米国Saint Luke’s Mid America Heart InstituteのAdnan K. Chhatriwalla氏らの検討で示された。出血は最も高頻度にみられるPCIの合併症で、死亡率の上昇や医療費の増大をもたらす。米国では、これまでPCI後の出血関連死のデータはなく、出血リスク、部位と死亡率の関連も不明であった。JAMA誌2013年3月13日号掲載の報告。338万件以上のCathPCIの登録データを解析 研究グループは、PCI施行後の大出血と院内死亡の関連を評価し、PCI施行後出血関連死の調整済み人口寄与リスク(出血関連死リスクとして推算)、リスク差、有害必要数(NNH、1件の院内死亡に要する出血件数)について検討を行った。 2004~2011年までに米国で行われた338万6,688件のCathPCIの登録データを解析した。人口寄与リスクはベースラインの人口統計学的、臨床的、手技的な変数で調整して算出した。出血関連死のNNHの算定には傾向マッチ分析(propensity-matched analysis)を用いた。とくに高出血リスク群、非アクセス部位出血群で死亡リスクが高い 338万6,688件のPCI手技のうち、出血イベントは5万7,246件(1.7%)、院内死亡は2万2,165件(0.65%)で発生した。全体の大出血に関連する死亡の調整済み人口寄与リスクは12.1%であった[95%信頼区間(CI):11.4~12.7]。 傾向マッチ分析[大出血イベント群:5万6,078件、対照群(非出血群):22万4,312件]では、大出血と院内死亡の関連が示された[院内死亡率:5.26 vs 1.87%、リスク差:3.39%(95%CI:3.20~3.59)、NNH:29(95%CI:28~31)p<0.001]。 大出血と院内死亡の関連は、手技前の出血リスクが低~高の群のすべてで認められた[低リスク群の院内死亡率:1.62 vs 0.17%、リスク差:1.45%(95%CI:1.13~1.77)、NNH:69(95%CI:57~88)、p<0.001、中リスク群の院内死亡率:3.27 vs 0.71%、リスク差:2.56%(95%CI:2.33~2.79)、NNH:39(95%CI:36~43)、p<0.001、高リスク群の院内死亡率:8.16 vs 3.45%、リスク差:4.71%(95%CI:4.35~5.07)、NNH:21(95%CI:20~23)、p<0.001)]。 出血部位別の解析では、アクセス部位[院内死亡率:2.73 vs 1.87%、リスク差:0.86%(95%CI:0.66~1.05)、NNH:117(95%CI:95~151)、p<0.001]および非アクセス部位[院内死亡率:8.25 vs 1.87%、リスク差:6.39%(95%CI:6.04~6.73)、NNH:16(95%CI:15~17)、p<0.001]のいずれにおいても出血と院内死亡の関連を認めたが、NNHは非アクセス部位で低いという違いがみられた。 著者は、「PCIの合併症としての出血の頻度は1.7%と低かったが、出血関連の院内死亡率は12.1%と推定された。すべての出血リスク群で出血と院内死亡の関連を認めたが、死亡リスクは高出血リスク群および非アクセス部位出血群で実質的に高く、1件の院内死亡に要する出血件数はそれぞれ21、16と低値を示した」とまとめている。

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重度皮膚有害反応の医薬品特定にパッチテストが有用・安全

 重度皮膚有害反応(severe cutaneous adverse drug reactions:SCAR)の医薬品特定にパッチテストが有用かつ安全であることが、フランス・ナンシー大学のA. Barbaud氏らによる多施設共同研究の結果、示された。検討されたのは3つの主要なSCARである、急性汎発性膿疱性発疹症(AGEP)、薬剤性過敏症症候群(DRESS)、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症(SJS/TEN)であった。British Journal of Dermatology誌2013年3月号の掲載報告。 パッチテストは、遅延型薬物過敏症を再現できる可能性があるが、患者の医薬品に対する中程度の再曝露を伴う可能性がある。著者らは、SCARを引き起こしている医薬品の特定に、パッチテストが有用であるかについて調べた。 複数施設において、発症から1年以内のDRESS、AGEP、SJS/TENで紹介されてきた患者を対象とした。SCAR発症前2ヵ月から前週まで服用していたすべての医薬品について調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は134例で、男性が48例、平均年齢は51.7歳であった。パッチテストに用いられた医薬品は24種類であった。・パッチテストで陽性反応が確認されたのは、DRESS患者64%(46/72例)、AGEP患者58%(26/45例)、SJS/TEN患者24%(4/17例)であった。・再発が起きたのはAGEPの1例のみであった。・パッチテストの有用性は、医薬品の種類およびSCARの種類により異なった。たとえば、カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)は、DRESS症例では11/13例で陽性反応がみられたが、SJS/TEN症例では0/5例であった。・陽性反応の頻度が高かったのは、βラクタム系抗菌薬(22例)、プリスチナマイシン(11例)、DRESS症例におけるプロトンポンプ阻害薬(5例)であった。・一方で常に陰性であったのは、アロプリノール(商品名:ザイロリックほか)とサラゾスルファピリジン(同:サラゾピリンほか)であった。・DRESS患者18例のうち8例では、ウイルス再活性化とパッチテストの陽性反応が認められた。また、DRESS患者では、複数の薬品の有害反応の頻度が高く(症例のうち18%)、長年にわたって感作が持続していた。

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頸椎の軽度外傷による急性脊髄損傷のリスクはMRIで評価可能

 頸椎の軽度外傷後に急性脊髄損傷(SCI)を呈する患者が報告されているが、外傷の重症度と脊髄損傷の重症度が一致しない理由として脊柱管狭窄症の関与が考えられる。スイス・対麻痺センターのNikolaus Aebli氏らは、これまで脊柱管狭窄症の評価にはX線像における脊柱管/椎体比が用いられてきたが、椎間板レベルでの軟組織狭窄症や管狭窄を評価できないため、MRI画像におけるパラメータのほうが有用である可能性があることから、これを実証するためのレトロスペクティブな放射線学的研究を行った。その結果、椎間板レベルの脊柱管前後径カットオフ値を8mmとすることで、頸椎の軽度外傷後に急性SCIのリスクを有する患者を特定できることを報告した。The Spine Journal誌オンライン版2013年3月25日掲載の報告。 本研究の目的は、頸椎のMRIパラメータが軽度外傷後の急性SCIのリスクと重症度の予測に使用できるかを検討することであった。 対象は、連続する急性SCI患者52例(SCI群)および神経障害のない頸椎の軽度外傷患者131例(対照群)とした。 頸椎(C3~C7)のMRI矢状断面像(T2強調画像)にて、椎体前後径、頸椎中間位の脊柱管前後径、椎間板レベルでの脊柱管前後径および脊髄前後径を計測し脊柱管/椎体比、脊髄余裕空間、脊柱管/脊髄比を算出した。また、単純X線側面像にて椎体前後径と頸椎中間位での脊柱管前後径を計測し脊柱管/椎体比を算出し、SCIのリスク、重症度および経過を予測する各パラメータの分類精度を、ROC曲線を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・SCI群におけるすべてのMRIパラメータは、対照群と比較して有意に小さかった(p<0.001)。・椎間板レベルでの脊柱管前後径最小値が8.0mmをカットオフ値とした場合に、SCI予測に関する陽性予測値ならびに尤度比が最大となった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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