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抗リン脂質抗体症候群にmTORC経路が関与/NEJM

 抗リン脂質抗体症候群(APS)の血管病変の形成には、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体(mTORC)の分子経路が関与している可能性があることが、フランス国立保健医学研究機構(INSERM)、パリ・デカルト大学(第5大学)のGuillaume Canaud氏らの検討で示された。APSの主な特徴は血栓症とされるが、慢性血管病変もよくみられ、とくに生命に関わる合併症を有する患者で頻度が高く、移植を要する患者では再発病変が高頻度にみられるという。APSの血管障害に関与する分子経路は知られておらず、適切な治療法は確立されていない。NEJM誌2014年7月24日号掲載の報告。mTORC経路への関与を臨床研究とin vitro実験で検証 研究グループは、原発性および続発性のAPS腎症患者の血管において、二重免疫染色を用いてmTORC経路の活性化および細胞増殖の機序の検討を行った。また、劇症型APS患者の剖検標本も評価した。 in vitroにおいて、mTORC経路に関与する分子経路を検証し、阻害薬の薬理学的な検討も行った。また、腎移植術を受けたAPS患者におけるシロリムスの作用を検証した。 対象は、APSと診断され生検で腎症が確認された患者(APS群12例)、全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する腎炎がみられる患者(SLE群45例、このうちAPSを伴う患者[続発性APS]が20例、非APS患者は25例)、がんによる摘出腎由来の正常腎組織標本(対照群10例)の4群に分けられた。 対象となった腎移植患者は111例で、このうち74例には抗リン脂質抗体がみられず、抗体を有する患者は37例であった。後者のうち、10例にシロリムスが投与され、27例には投与されていなかった。PI3K-AKT経路で活性化、mTOR阻害薬投与例で12年生着率良好 APS腎症患者の増殖性の腎内血管の内皮において、mTORC経路の活性化を示す徴候が確認された。培養された血管内皮細胞において、APS患者由来のIgG抗体はホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)–AKTの経路を介してmTORCを刺激していた。 APS腎症のため移植を要し、シロリムスの投与を受けている患者では、血管病変の再発は認めなかった。また、これらのシロリムス投与例は、抗リン脂質抗体を有するがシロリムス投与を受けていない患者に比べ、生検標本における血管増殖が少なかった。 腎移植後144ヵ月の時点で、シロリムス投与患者10例のうち7例(70%)で移植腎が機能していたが、非投与患者27例では3例(11%)のみであった。劇症型APS患者の剖検標本の血管でもmTORCの活性化が確認された。 著者は、「APS関連血管病変にはmTORC経路の関与が示唆される」とし、「APS腎症患者の血管でmTORCが高度に活性化しているという事実は、腎臓の病態生理におけるmTORC機能の多面的(pleiotropic)作用を示唆する」と指摘している。

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HIV感染者の肝・心血管疾患死が減少/Lancet

 最近10年ほどの間に、HIV感染患者のAIDS関連疾患死、肝疾患死、心血管疾患死が実質的に減少したが、AIDS非関連腫瘍による死亡が増えていることが、イギリス・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのColette J Smith氏らが行ったD:A:D試験で示された。有効性の高い抗レトロウイルス療法(ART)の出現に伴い、HIV感染患者の余命は一般人口に近づきつつある。その結果として、AIDSに関連のない従来の合併症の重要性が相対的に増大しているという。Lancet誌2014年7月19日号掲載の報告。全死因・死因別死亡の動向を経時的に検討 D:A:D試験の研究グループは、1999~2011年におけるHIV感染患者の全死因死亡および死因別死亡の動向を経時的に検討した。解析には、Data collection on Adverse events of anti-HIV Drugs(D:A:D)に登録された個々の患者の1999年3月から死亡、追跡不能または2011年2月1日までのデータを用いた。 D:A:D試験は11のコホート試験の共同解析であり、欧州、アメリカ、オーストラリアの212施設で治療を受けるHIV-1陽性患者が対象となった。すべての致命的事象は、HIV死因分類(coding causes of death in HIV:CoDe)の方法を用いて、D:A:D調整センターの中央判定による検証が行われた。 フォローアップ期間30万8,719人年の間に、試験参加者4万9,731例(ベースラインの平均年齢38歳、男性74%)のうち3,909例(8%)が死亡した(粗死亡率:12.7人/1,000人年)。非特異的予防介入の改善で肝・心血管疾患死が減少か 主な死因は、AIDS関連疾患が1,123例(29%)、AIDS非関連腫瘍が590例(15%)、肝疾患が515例(13%)、心血管疾患が436例(11%)であり、その他(侵襲性細菌感染症、自殺、薬物過剰摂取など)と不明が1,245例(32%)であった。 1,000人年当たりの全死因死亡率は、1999~2000年の17.5人から2009~2011年には9.1人に低下した。同期間の死因別死亡のうち、AIDS関連疾患死(1,000人年当たり5.9人から2.0人へ)、肝疾患死(2.7人から0.9人へ)、心血管疾患死(1.8人から0.9人へ)が全死因死亡と同様に低下を示したが、AIDS非関連腫瘍死は1999~2000年の1.6人から2009~2011年には2.1人とわずかに増加した(p=0.58)。 AIDS関連疾患死の1999~2000年から2009~2011年の間の低下には、経時的に変化するCD4陽性細胞数などの因子で補正すると、有意な差を認めなかった(率比:0.92、95%信頼区間[CI]:0.70~1.22)。一方、この間の全死因死亡(同:0.72、0.61~0.83)、肝疾患死(同:0.48、0.32~0.74)、心血管疾患死(同:0.33、0.20~0.53)の低下には有意差が認められた。 1999~2000年の全死亡に占めるAIDS関連疾患死の割合は34%(87/256例)であったが、2009~2011年には22%(141/627例)まで低下した。肝疾患死も16%(40/256例)から10%(64/627例)へと低下した。これに対し、AIDS非関連腫瘍死は9%(24/256例)から23%(142/627例)へと増加していた。 著者は、「最近のAIDS関連死の減少は、持続的なCD4陽性細胞数の減少と関連するが、肝疾患死や心血管疾患死の減少はこれでは説明できない。われわれは、肝疾患死や心血管疾患死の経時的な実質的減少は、HIV非特異的な予防介入(禁煙、食事療法による減量、運動、脂質改善薬など)の改善で説明できると考えている。AIDS非関連腫瘍は現在、AIDS非関連死の主要原因であるが、その理由は明らかではなく、今後の検討を要する。治療の長期化によるARTの毒性の蓄積や、ARTが臨床症状の発現を遅延させていることも考えられるため、注意深い監視の継続が重要である」と考察を加えている。

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夜間持続型の早朝高血圧が危険

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド早朝高血圧早朝高血圧と心臓肥大の発症率(%)患者数も危険度も「早朝上昇型」<「夜間持続型」40夜間持続型30発症率 20早朝上昇型正常100血圧のタイプ(東京都健康長寿医療センター)メモ早朝上昇型より夜間持続型の人のほうが1.5倍多い。夜間持続型のほうが血圧が高い時間帯が長いため、血管病になりやすい。監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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シェーグレンに免疫抑制薬、効果なし/JAMA

 原発性シェーグレン症候群に対する免疫抑制薬ヒドロキシクロロキン(国内未承認)の投与について、24週時点の症状改善効果は認められなかったことが判明した。フランス・ストラスブール大学病院のJacques-Eric Gottenberg氏らが、120例の患者を対象に行った無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験の結果、明らかになった。ヒドロキシクロロキンは日本では未承認であるが、海外では同症候群に対して最も多く処方されている。しかし、その有効性に関するエビデンスは限定的なものしか報告されていなかった。なお今回の結果について著者は、「さらなる試験を行い長期のアウトカム評価が必要である」としている。JAMA誌2014年7月16日号掲載の報告より。ヒドロキシクロロキン400mg/日を投与、症状改善をスケールで評価 Gottenberg氏らは、2008年4月~2011年5月にかけてフランス15ヵ所の大学病院を通じ、AECG(American-European consensus group)基準で診断された原発性シェーグレン症候群の患者120例を試験に登録した。被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはヒドロキシクロロキン400mg/日を、もう一方にはプラセボを、それぞれ0~24週まで投与し、続く24~48週は被験者全員にヒドロキシクロロキン400mg/日を投与した。 ベースライン時、12週、24週、48週の時点で評価を行い、主要エンドポイントは、0~24週の、乾燥、疼痛、疲労の3症状の数値評価スケール(スコア0[最良]~10[最悪]で評価)のうち2症状のスコアが30%以上改善した場合とした。最終評価日は、2012年5月15日だった。24週の主要エンドポイント達成率、両群で有意差なし 結果、24週時点で主要エンドポイントを達成したのは、ヒドロキシクロロキン群56例中10例(17.9%)、プラセボ群64例中11例(17.2%)であり、両群間に有意差はなかった(オッズ比:1.01、95%信頼区間[CI]:0.37~2.78、p=0.98)。 また0~24週の乾燥、疼痛、疲労の各スコア変化の平均値(SD)についても、両群間の差は有意ではなかった。乾燥スコアの変化SD両群差は0.23(p=0.55)、疼痛スコアについては-0.71(p=0.06)で、疲労スコアについては0.25(p=0.54)だった。 なお、1例を除くヒドロキシクロロキン群の全被験者で、血中にヒドロキシクロロキンが検出された。 ヒドロキシクロロキンの投与は、抗SSA抗体、IgG高値または全身性に症状を有する患者についての効果はみられず、0~24週で報告された重大有害事象は、ヒドロキシクロロキン群2件、プラセボ群3件、24~48週ではそれぞれ3件、4件だった。

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悪性黒色腫、抗PD-1抗体が奏効/Lancet

 イピリムマブ(国内未承認)耐性の進行期悪性黒色腫に対して、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(pembrolizumab、国内未承認)の3週間ごとの投与は、2mg/kgまたは10mg/kgの用量のいずれでも、全奏効率(ORR)が26%であった。フランスのギュスターヴ・ルシィ研究所のCaroline Robert氏らが、第I相試験の非盲検多施設共同拡大コホート試験を行った結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「ペムブロリズマブは、有効な治療選択肢がない患者にとって有効な治療となるかもしれない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年7月15日号で発表した。2mg/kgまたは10mg/kgを3週間ごとに1回投与、安全性と有効性を比較 Robert氏らは、イピリムマブ耐性の進行期悪性黒色腫の患者(18歳以上)173例を、無作為に2群に分け、一方にはペムブロリズマブを2mg/kg(89例)、もう一方には10mg/kg(84例)を、それぞれ3週間ごとに1回静注投与した。病状の進行や、耐えられない毒性の発生、また患者の同意により服用中止をするまで追跡した。 主要エンドポイントは、固形がんに対する抗腫瘍効果の判定基準(RECIST ver1.1)によるORRだった。中央値8ヵ月追跡、ORRは26% 追跡期間の中央値は8ヵ月だった。完全および部分奏効が認められたのは、2mg群は81例中21例、10mg群は76例中20例で、ORRは両群ともに26%だった(p=0.96)。 最も頻度が高かった薬剤関連有害事象は、疲労感(2mg群:33%、10mg群:37%)、そう痒(それぞれ26%、19%)、発疹(いずれも18%)だった。 患者2例以上に認められたグレード3以上の薬剤関連有害事象は、グレード3疲労感の2mg群5例(3%)の報告だけだった。

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早期肺がん、肺葉切除か区域切除か

 肺葉切除と縮小手術を比較したLung Cancer Study Groupの試験結果などから、現在の肺がんの標準術式は肺葉手術となっている。しかし、近年の後ろ向き観察試験では、区域切除の予後成績が、肺葉切除に近づいてきたとの報告もある。 この試験では、傾向スコアマッチング法によって、ステージI非小細胞肺がんにおける、この2つの切除手技の予後を比較している。米国・ピッツバーグ大学のRodney J Landreneau氏らによる研究。Journal of clinical oncology誌 オンライン版 2014年6月30日の掲載報告。 ピッツバーグ大学の肺がんデータベースから、後ろ向きに区域切除または肺葉切除を実施したステージI非小細胞肺がん患者、それぞれ392例と800例を解析し、術前の患者の交絡因子を組み入れた傾向スコアマッチングアルゴリズムを用いて、傾向スコアの対応した肺区域切除実施例と肺葉切除実施例を各312例特定した。主要評価項目は、無再発率と全生存率。生存期間に影響する因子は、cox回帰分析とカプランマイヤー推定法で評価した。 主な結果は以下のとおり。・周術期死亡率(30日)は、区域切除群1.2%、肺葉切除群2.5%(p=0.38)であった。・同(90日)は、区域切除群2.6%、肺葉切除群4.8%(p=0.20)であった。・観察期間中央値5.4年における局所再発率は、区域切除群5.5%、肺葉切除群5.1%(p=1.00)であった。・同期間における遠隔再発率は、区域切除群14.8%、肺葉切除群11.6%(p=0.29)であった。・5年無再発率は、区域切除群70%、肺葉切除群71%(p=0.467)であった。・5年生存率は、区域切除群54%、肺葉切除群60%(p=0.258)であった。・肺区域切除は、独立した再発因子にはならなかった(HR=1.11, 95%CI: 0.87~1.40)。また、独立した生存期間の影響因子にもならなかった(HR=1.17, 95%CI: 0.89~1.52)。 この傾向スコアマッチング法による比較では、肺葉切除は肺区域切除に比べ、統計学的に有意な無再発率と生存率の増加を示すことはなかった。区域が限定された末梢の小さな腫瘍における、肺区域切除の可能性を示唆するものであった。この結果を踏まえ、今後は前向き無作為化比較試験による検証が必要であろう。

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なぜコーヒーでがんリスクが低下?

 習慣的なコーヒー摂取はいくつかのがんのリスク低下に関連付けられている。その機序として、コーヒー摂取により発がんの重要な経路である酸化的DNA損傷が減少する可能性がある。国立国際医療研究センター 客員研究員の堀 愛氏らは、コーヒー摂取と、体内の酸化的DNA損傷・修復のバイオマーカーである尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)濃度の関連を調査した。その結果、女性ではコーヒー摂取により体内貯蔵鉄が減少し、このことが体内の酸化的DNA損傷の減少に関連している可能性が示唆された。Nutrition and Cancer誌オンライン版2014年7月25日号に掲載。 著者らは、健常人507人(21~67歳、男性298人・女性209人)において、多変数回帰モデルで、年齢、性別、喫煙状況、BMI、仕事のタイプ、空腹時血糖を調整し、コーヒー摂取量と尿中8-OHdG濃度の関連性を調べた。また、緑茶の摂取量との関連も評価した。 主な結果は以下のとおり。・女性では、尿中8-OHdG濃度がコーヒー摂取により減少する傾向が認められ(傾向のp=0.046)、1日2~3杯を摂取する女性で尿中8-OHdG濃度平均値が最も低かった。・この関連は、体内の貯蔵鉄のマーカーである血清フェリチン濃度による調整後に、大きく減弱した(傾向のp=0.96)。・緑茶の摂取量は尿中8-OHdG濃度と関連していなかった。

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アポ蛋白C3は動脈硬化性疾患の新たな治療標的か?(解説:山下 静也 氏)-229

APOC3は血清アポリポ蛋白(アポ)C3をコードする遺伝子であり、アポC3はトリグリセライド(TG)リッチリポ蛋白、とくに動脈硬化惹起性の強いレムナントリポ蛋白の蛋白成分の1つである。カイロミクロン、VLDLなどのTGリッチリポ蛋白のTGが、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の働きで分解され、遊離脂肪酸を放出してレムナントリポ蛋白となる過程で、アポC3はLPLによる加水分解を阻害することにより血清TGレベルを上昇させる1)。この作用はアポC2のLPL活性化作用とはまったく逆である。さらに、アポC3はTGリッチレムナントリポ蛋白の肝臓での取り込みを抑制する2)。したがって、アポC3の過剰は高TG血症、高レムナント血症、食後高脂血症を引き起こすことが知られている。 一方、アポC3の細胞内での作用として、アポC3がTG合成を促進し、肝臓でのVLDLのアセンブリーと分泌を増加させることも知られている3)。また、マウスでAPOC3遺伝子を欠損させると血清TGが低下し、食後高脂血症が防御されることも報告されている4)。ヒトではLancaster Amish の約5%がAPOC3遺伝子の欠失変異であるR19Xのヘテロ接合体であり、これらの症例ではアポC3濃度が半減し、空腹時および食後のTG値が有意に低く、冠動脈石灰化の頻度が60%も低いことが示されている5)。 このコペンハーゲン大学のJorgensen氏らの論文では、デンマークの2つの地域住民を対象とした前向き調査、すなわちCopenhagen City Heart Study(CCHS)とCopenhagen General Population Study(CGPS)とに参加した7万5,725人(CCHS:1万333人、CGPS:6万5,392人)のデータが前向きに解析され、APOC3遺伝子変異を保因するため生涯にわたりTGが低値の集団が、虚血性心血管疾患のリスクが低いか否かについて初めて検討された。 この中で虚血性血管疾患とは、虚血性心疾患または虚血性脳血管疾患と定義されている。その結果、虚血性血管疾患および虚血性心疾患のリスクは、ベースラインの非空腹時TG値の低下に伴って減少し、<1.00mmol/L(90mg/dL)の被験者は≧4.00mmol/L(350mg/dL)の場合に比べ発症率が有意に低かった(虚血性血管疾患のHR=0.43、虚血性心疾患のHR=0.40)。 遺伝子解析の結果、APOC3遺伝子の3つのヘテロ接合体の機能欠失変異(R19X、IVS2+1G→A、A43T)の保有者では、変異のない被験者に比べて非空腹時TGが平均44%低値であり、虚血性血管疾患および虚血性心疾患の発症は有意に少なく、リスク減少率はそれぞれ41%、36%であった。したがって、APOC3遺伝子の機能欠失型変異はTG値の低下および虚血性血管疾患のリスク減少と関連し、APOC3は心血管リスクの低減を目的とする薬剤の有望な新たな標的と考えられた。しかしながら、これらのAPOC3遺伝子の変異がなぜ同じようにTG値を低下させるのかは不明である。本報告はこれまでの疫学的な成績をさらに遺伝的なレベルまで詳細に確認した貴重なデータであり、類似論文が別の集団でN Engl J Medに発表されている6)。 本論文では各遺伝子変異に伴う、アポC3の血中レベルの変化と虚血性血管疾患との関係については示されていない。また、non-functionalな変異と考えられるAPOC3遺伝子のV50M変異では低TG血症は認められなかったにもかかわらず、虚血性血管疾患の減少傾向が認められたことから、APOC3遺伝子と虚血性血管疾患の関係は必ずしもアポC3の血中レベルとは関係せず、アポC3の血管壁細胞への直接作用が影響している可能性も考えられる。 また、本論文ではAPOC3遺伝子変異に伴う非空腹時TG値の低下と、虚血性血管疾患との関連性が示されたが、同様にAPOC3遺伝子変異に伴う空腹時TG値の変化と虚血性血管疾患との関連性についてはデータが示されていない。つまり、APOC3遺伝子変異による食後高脂血症の抑制が虚血性血管疾患を減少させたのか、空腹時TG値も減らして虚血性血管疾患を減少させたのかについては今後の検討が必要であろう。さらに、APOC3遺伝子変異が虚血性脳血管疾患単独の発症に及ぼす影響については記載がないが、興味ある点である。 一方、タイトルではアポC3の機能欠失型変異となっているが、R19X、IVS2+1G→A、A43Tの変異のすべてがアポC3の持つさまざまな機能を同様に欠失しているのか否かについても検討が必要であろう。最も重要な点は、Supplemental Figure S14に示されているように、APOC3遺伝子変異が虚血性血管疾患を抑制したにもかかわらず、総死亡率にはまったく影響がなかったという点であろう。今後、アポC3が動脈硬化性疾患の新たな薬物治療の標的となるためには、アポC3の他の多面的作用の解析とこの疑問点に対する真摯な検討がなされることが必要であろう。【参考文献はこちら】1)Ginsberg HN, et al. J Clin Invest. 1986; 78: 1287-1295. 2)Windler E and Havel RJ. J Lipid Res. 1985; 26: 556-565. 3)Qin W, et al. J Biol Chem. 2011; 286: 27769-27780.4)Maeda N, et al. J Biol Chem. 1994; 269: 23610-23616.5)Pollin TI, et al. Science. 2008; 322: 1702-1705.6)TG and HDL Working Group of the Exome Sequencing Project, National Heart, Lung, and Blood Institute, et al. N Engl J Med. 2014; 371: 22-31.

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精神疾患患者、救急受診の現状は

 米国では年間推定約9万件の、精神疾患治療薬に関連した薬物有害事象での救急部門受診(ADE ED)が発生していることが、米国疾病予防管理センター(CDC)のLee M. Hampton氏らによる分析調査の結果、明らかになった。処方薬の種類ごとのADE ED受診率なども分析され、著者は「ADEを減らす努力は、すべての年代の成人を対象に必要だが、有害事象での救急部門受診が多発している薬物を優先する必要がある」とまとめている。JAMA Psychiatry誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。 米国において、2011年に精神疾患のために処方薬を使用した人は年間推定2,680万人で、全成人の11.5%であったという。精神疾患治療薬はメンタルヘルスに重要な役割を果たしているが、重大な有害事象を引き起こす可能性もある。 そこで研究グループは、2009年1月1日~2011年12月31日の間に発生した精神疾患治療薬に関連したADE ED受診件数および受診率を明らかにする検討を行った。全国傷害電子監視システム-医薬品有害事象共同監視(NEISS-CADE)システムを用いて全米を代表するADE ED受診サーベイランスの記述的分析と、全米外来医療調査(NAMCS)および全米病院外来医療調査(NHAMCS)を用いて、外来受診の処方状況の記述的分析を行った。国を代表するサンプルとして19歳以上成人の、EDおよび外来受診医療記録をレビューし分析した。被験者は、抗うつ薬、抗精神病薬、リチウム、鎮静薬、抗不安薬、刺激薬の処方を受けていた。主要評価項目は、精神疾患治療薬の使用によるADE ED受診、および外来での精神疾患治療薬の処方数1万当たりのADE ED受診であった。 主な結果は以下のとおり。・2009~2011年において、精神疾患治療薬ADE ED受診は、年間推定8万9,094件(95%信頼区間[CI]:6万8,641~10万9,548件)であった。・そのうち入院となったのは19.3%(95%CI:16.3~22.2%)、また19~44歳の患者は49.4%(同:46.5~52.4%)であった。・処方薬別にみると、鎮静薬と抗不安薬によるものが3万707件(95%CI:2万3,406~3万8,008件)、抗うつ薬2万5,377件(同:1万9,051~3万1,704件)、抗精神病薬2万1,578件(同:1万6,599~2万6,557件)、リチウム3,620件(同:2,311~4,928件)、刺激薬2,779件(同:1,764~3,794件)であった。・外来処方1万当たりでみると、抗精神病薬は11.7件(95%CI:10.1~13.2件)リチウムは16.4件(同:13.0~19.9件)であったのに対し、鎮静薬は3.6件(同:3.2~4.1件)、刺激薬2.9件(同:2.3~3.5件)、抗うつ薬2.4件(同:2.1~2.7件)であった。・鎮静薬で使用頻度の高いゾルピデム酒石酸塩は、すべての成人精神疾患治療薬ADE EDの11.5%(95%CI:9.5~13.4%)を占めており、また、65歳以上の受診患者が21.0%(同:16.3~25.7%)と、いずれも、そのほかの精神疾患治療薬と比べて症例数が有意に多かった。関連医療ニュース 救急搬送患者に対する抗精神病薬の使用状況は 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには 急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える  担当者へのご意見箱はこちら

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トリプルネガティブ乳がんでのCOX-2発現

 エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PR)、HER2がすべて陰性のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)とシクロオキシゲナーゼ(COX)-2過剰発現は、ともに原発性乳がんにおける予後不良マーカーとして知られている。 米国MDアンダーソンがんセンターのKailash Mosalpuria氏らは、TNBC患者の原発腫瘍でCOX-2蛋白が過剰発現しているとの仮説を立て検証した結果、非転移性TNBCと原発腫瘍のCOX-2蛋白過剰発現との関連を認めた。今回の知見は、切除可能なTNBC患者におけるCOX-2標的治療について、さらなる研究を支持するものである。Molecular and clinical oncology誌2014年9月号(オンライン版2014年6月23日号)に掲載。 著者らは、2005年2月~2007年10月に治療されたステージI~III乳がん患者125例の原発腫瘍サンプルにおけるCOX-2発現レベルを、前向きに検討した。臨床病理学的要因に関する情報は前向きのデータベースから取得した。ベースラインの腫瘍特性と患者属性におけるTNBCと非TNBCとの比較は、カイ2乗およびFisherの正確確率検定を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・患者のうち、ER陽性が60.8%、PR陽性が51.2%、HER2/neu増幅が14.4%、TNBC が28.0%であった。・COX-2過剰発現が33.0%に認められた。・TNBCは、COX-2過剰発現(p=0.009)、PR発現(p=0.048)、高グレード(p=0.001)と関連していた。・年齢、閉経状態、BMI、リンパ節転移状況、術前化学療法の調整後、TNBCはCOX-2過剰発現の独立予測因子であった(p=0.01)。

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ランレオチド 腸膵NETのPFS延長/NEJM

 転移性腸膵神経内分泌腫瘍に対し、ソマトスタチンアナログ製剤のランレオチドは無増悪生存期間を有意に延長したことが、英国のロイヤル・フリー病院Martyn E. Caplin氏らによる国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告された。ソマトスタチンアナログ製剤は、神経内分泌腫瘍でホルモン過剰分泌関連症状の治療に用いられることが多い(日本では、商品名ソマチュリンが先端巨大症・下垂体性巨人症を適応症として承認されている)。しかし、その抗腫瘍効果のデータは限定的なものであった。神経内分泌腫瘍は稀少な疾患で、米国における年間発生例は10万人に5例の頻度であるという。NEJM誌2014年7月17日号掲載の報告より。無増悪生存期間を主要エンドポイントにランレオチドvs. プラセボを検討 試験は、進行した高分化型または中分化型で非機能性、グレード1または2(腫瘍増殖指数[Ki-67抗原染色による]<10%)のソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍を有する患者を対象に行った。腫瘍は膵臓、中腸または後腸由来、もしくは原発不明であった。 研究グループは患者を無作為に、ランレオチドの徐放性水性ゲル製剤Autogel(米国でデポ剤として知られる)120mgもしくはプラセボを投与する群に割り付け、28日間に1回投与を96週間(24ヵ月間、最大24回投与)にわたって行った。 主要エンドポイントは無増悪生存期間で、増悪(固形がん効果判定基準[RECIST] ver.1.0による)または死亡までの期間と定義した。副次エンドポイントは、全生存期間、QOL(欧州がん研究・治療機構[EORTC]質問票QLQ-C30およびQLQ-GI.NET21で評価)、安全性などであった。ランレオチド群の進行または死亡のハザード比0.47 試験には、2006年6月~2013年4月に14ヵ国(欧州12ヵ国、米国、インド)48施設(2次、3次医療施設)で204例が登録された。被験者は、ランレオチド群に101例、プラセボ群に103例が無作為に割り付けられた。大半の患者(96%)は、無作為化前3~6ヵ月において腫瘍の進行はみられなかった。なお、33%の患者が肝腫瘍量が25%超だった。 試験薬曝露期間の中央値は、ランレオチド群24.0ヵ月、プラセボ群15.0ヵ月であった。 増悪が認められたのはプラセボ群58例、ランレオチド群30例、死亡はそれぞれ2例ずつで、主要エンドポイントの無増悪生存期間は、ランレオチド群がプラセボ群と比べて有意に延長した(中央値未到達vs. 18ヵ月、層別化log-rank検定のp<0.001、進行または死亡のハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.30~0.73)。 24ヵ月時点の推定無増悪生存率は、ランレオチド群65.1%(95%CI:54.0~74.1%)、プラセボ群33.0%(同:23.0~43.3%)であった。 事前規定のサブグループ(腫瘍部位別、グレード別、肝腫瘍量別)の治療効果は、信頼区間が広範であった小規模のサブグループを除けば、全体集団の治療効果とおおむね一致していた。 QOLや全生存については、治療群間で有意差はみられなかった。 最も頻度が高かった治療関連の有害事象は、下痢であった(ランレオチド群26% vs.プラセボ群9%)。

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変性脊椎すべり症の腰痛にPRF法が有効

 変性脊椎すべり症は、椎間関節由来の腰痛症の原因としてよく知られている。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのMasoud Hashemi氏らは、変性脊椎すべり症患者における椎間関節性腰痛に対し、C神経線維への疼痛伝達を遮断するパルス高周波法(PRF)が、ステロイド+局所麻酔薬注射より腰痛軽減と機能改善に優れる可能性があることを示した。European Spine Journal誌オンライン版2014年7月6日号の掲載報告。 対象は、椎間関節性腰痛を有する変性脊椎すべり症患者80例で、PRF群およびステロイド群(トリアムシノロン+ブピバカイン)に無作為に割付けた。 治療開始3、6および12ヵ月後に、腰痛(数値的評価スケール〔NRS〕による)、Oswestry Disability Index(ODI)、満足度および鎮痛薬摂取量を評価した。 主な結果は以下のとおり。・PRF群では、ステロイド群と比較して6ヵ月後の腰痛が有意に軽度であった。・PRF群におけるODIは、治療前75.6±14.3%、6ヵ月後19.3±9.5%であった(p=0.001)。・ODIは、12週後および6ヵ月後においてPRF群がステロイド群より有意に低かったが(各評価時点でp=0.022およびp=0.03)、6週後は有意差を認めなかった(p=0.31)。・鎮痛薬を必要としなかった患者の割合は、PRF群で有意に高かった(log-rank検定によるp=0.001)。

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大人のリンゴ病 4つの主要パターン

 フランス・パリ第5大学のValentia Mage氏らは、成人のパルボウイルスB19感染症について、皮膚症状の特徴を明らかにするため多施設共同の記述的後ろ向き研究を行った。結果、同感染症では多彩な皮膚症状を呈するが、主要なパターンとして、「発疹(網状か環状)」「手足」「屈面周囲」「明らかな紫斑」の4つが、個別にまたは重複してみられることを報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌2014年7月号(オンライン版2014年4月14日号)の掲載報告。 検討は、1992~2013年に多施設において、パルボウイルスB19の1次感染が確認された18歳超の29例の患者(女性17例、男性12例)を対象に行われた。 主な結果は以下のとおり。・病変部にみられる皮膚症状は、大半は紅斑(86%)であったが、紫斑(69%)の頻度も高かった。・かゆみは、症例の48%で報告された。・皮膚症状が顔面にみられる頻度は低く(20%)、むしろ発疹が下肢(93%)、体幹(55%)、腕(45%)に認められた。・4つのパターン、すなわち皮疹(網状、場合によっては環状)(80%)、手足パターン(24%)、屈面周囲パターン(28%)、明らかな紫斑(24%)がみられた。4つのパターンは重複することもあった(45%)。・本検討は、3次医療センターで行われた後ろ向きデザインの潜在的な被験者募集バイアスがあった試験という点で限定的であった。

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女性のほうが血管年齢が若い

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド女性 のほうが血管年齢 は若い!?メモ男性と女性の平均寿命の差は約7年(男性:約79歳、女性約85歳)。動脈が硬くなっていく現象も女性のほうが男性より約10年遅れています。これには女性ホルモンが関係しています。閉経後、女性の血管は急に硬くなり、65歳以上になると男女の差はなくなります。監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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早朝高血圧には2タイプある

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド早朝高血圧は「早朝上昇型」と「夜間持続型」の2タイプ。あなたはどっち!?血圧の早朝上昇型と夜間持続型(mmHg)収縮期血圧夜間持続型200150早朝上昇型100起床就寝メモ早朝上昇型・・・朝、目覚めると急に血圧が高くなる夜間持続型・・・夜から朝まで、ずっと高血圧が続く(通常、夜間は血圧が低くなるはずが、動脈硬化により血管が硬くなると血圧が下がりにくくなってしまう)監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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白衣高血圧とは

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド「白衣高血圧」は心配ご無用 !?メモ「白衣高血圧」とは、診察室などで白衣を着た医師や看護師を前にすると、緊張したり不安を感じ、ふだんの血圧よりも高くなってしまうケースです。診察室での血圧にかかわらず、ふだんの家庭血圧の値によって安全度が決まります。監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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仮面高血圧とは

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド「仮面高血圧」にご用心 !!メモ診察室で血圧を測ると正常値なのに、ふだんの生活では高血圧である状態を「仮面高血圧」といいます(白衣高血圧とは反対のケース)。診察時に見逃されやすいタイプの高血圧なので、注意が必要です。監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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乾癬を長く患っている人は骨密度に注意

 乾癬患者と骨密度の関連を調査した結果、骨減少症/骨粗鬆症の被験者では、乾癬の罹患期間が有意に長いことが、ローマ・ラ・サピエンツァ大学のSofia D'Epiro氏らによって報告された。本調査の結果を踏まえて筆者らは、「乾癬患者、とくに長期罹患者では、より早期から骨代謝の評価が必要である」とまとめた。The Journal of Dermatology誌オンライン版2014年7月3日掲載報告。 乾癬と骨粗鬆症の発症には、全身性炎症、乾癬治療薬の服用、乾癬性関節炎による関節機能不全といったいくつかの要因が関与していると考えられている。本研究の目的は、乾癬患者の骨密度を評価し、骨減少/骨粗鬆症の有病率や乾癬病変部位、重症度(PASIスコア)、平均罹患期間、乾癬性関節炎、乾癬治療歴との相関を調査することであった。 主な結果は以下のとおり。・調査には、乾癬を有している連続患者43例が登録された。うち19例は関節変形を来していた。・乾癬の重症度はPASIスコア、CASPAR診断基準、乾癬性関節炎の確定診断のための超音波検査、罹患期間の推定により判定した。・骨密度の測定には、腰椎と大腿骨頸部の二重エネルギーX線吸収法(DEXA法)が実施された。・骨減少/骨粗鬆症の被験者では、骨密度が成人若年者の平均値と同等の被験者に比べ、有意に乾癬罹患期間が長かった(17年vs. 8.8年、p=0.04)。・ロジスティック回帰分析の結果、乾癬の平均罹患期間と骨密度の変化には明らかな関連がみられた(p=0.04)。

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日本における大腸がんの新薬開発状況

 切除不能大腸がんに対する化学療法においては、既に発売されている薬剤のHead to Headの比較試験が実施されている一方で、新たな治療薬の開発治験も進んでいる。7月17~19日に開催された第12回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「切除不能大腸がん治療戦略の展望」をテーマとしたインターナショナルセッションが企画され、そのなかで、日本における切除不能大腸がんに対する新規薬剤の開発状況について、吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院消化管内科)が講演した。その内容を紹介する。TAS-102 日本で開発されたTAS-102(一般名:トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)が今年3月に承認され、現在は日本でのみ販売されている。 本剤の国際共同第III相試験(RECOURSE試験)は、標準治療に不応・不耐の治癒切除不能進行・再発大腸がん800例を対象に、プラセボを対照として実施された。その結果、生存期間中央値はプラセボ群5.3ヵ月に対しTAS-102群で7.1ヵ月と延長し、全生存のハザード比は0.68(p<0.0001)であった。副作用は、骨髄抑制が比較的強いが、吉野氏によると発熱性好中球減少に注意すれば使いやすい薬剤という。TAS-102と他の薬剤との併用 実験モデルでは、TAS-102とイリノテカンとの併用で最も強い抗腫瘍効果が認められたが、イリノテカンの薬物強度が低く、さらなる検討が必要である。現在米国で投与スケジュールを変更した臨床試験が進行中である。 ベバシズマブとの併用レジメンの有用性を検討する多施設第Ib/II相試験(C-TASK FORSE)が、医師主導治験として吉野氏を中心に今年2月から実施されており、来年のASCOで最初の報告を予定している。nintedanib nintedanibは、VEGFR1-3、FGFR1-3、PDGFRα/β、RETをターゲットとする低分子チロシンキナーゼ阻害薬であり、現在、非小細胞肺がん、腎がん、肝がん、卵巣がんなどに対しても臨床試験が行われている。大腸がんにおいては、標準治療不応症例に対するプラセボとの比較試験(LUME Colon 1 Trial)が近々開始予定とのことである。BRAF阻害薬 大腸がんにおけるBRAF遺伝子変異陽性の割合は少ないものの非常に予後が悪い。BRAF遺伝子変異陽性大腸がんに対する治療としては、FOLFOXIRI単独またはFOLFOXIRIとベバシズマブの併用が有効であるが、副作用が強く全身状態(PS)が悪い場合は投与できない。 開発中のBRAF阻害薬のうち、悪性黒色腫に有効なvemurafenib(申請中)は、単独ではBRAF遺伝子変異陽性大腸がんに対する効果は小さく、現在、セツキシマブとイリノテカンとの併用で検討されている。また、encorafenib、dabrafenibにおいても、抗EGFR抗体(セツキシマブ、パニツムマブ)との併用や、さらにPI3Kα阻害薬、MEK阻害薬も併用するレジメンでの第II相試験が進行している。 最後に吉野氏は、自らが代表を務める多施設共同研究(GI screen 2013-01)における進捗状況を紹介した。本研究は、今後の新薬開発に役立てるため、日本人の切除不能大腸がん症例におけるKRAS、BRAF、NRAS、PIK3CAの遺伝子変異割合を検討することを目的に今年2月に開始。来年3月までに1,000例の登録を目標としているが、7月14日時点で313例に達していると報告した。

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妊婦への百日咳ワクチン接種は安全か/BMJ

 妊娠第3三半期の妊婦に対し百日咳ワクチンを接種しても、非接種妊婦に比べて死産のリスクは増大しないことが、英国医薬品庁(MHRA)のKatherine Donegan氏らの検討で示された。グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)に起因する百日咳は、初期症状は比較的軽いものの、とくに3ヵ月未満の幼児に重篤で致死的な合併症を引き起こす可能性がある。米国では、市販後調査で安全性に関する懸念が払拭された2011年以降、妊婦への接種が推奨されているが、接種率は現在も低迷しており、安全性に関するエビデンスは限られたものだという。BMJ誌オンライン版2014年7月11日号掲載の報告。妊婦への接種の安全性をコホート研究で評価 研究グループは、英国における妊婦に対する百日咳ワクチン接種の安全性を評価する観察的コホート研究を実施した。年齢中央値30歳のワクチン接種妊婦と背景因子をマッチさせた非接種妊婦の転帰を比較した。 妊婦、ワクチン接種、妊娠関連有害事象のデータの収集にはClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いた。CPRDには英国の650以上のプライマリ・ケア関連データベースが参画し、全国の1,250万例以上の患者データが登録されている。 妊婦の有害事象は妊娠中の診療記録で同定し、子供の有害事象はCPRDの母子関連データで確認した。 主要評価項目は死産(妊娠24週以降の子宮内死亡)とした。接種後の死産率:0.19 vs. 0.23%、新生児死亡率:0.03 vs. 0.03% 30歳の妊婦2万74人が百日咳ワクチンの接種を受け、1万7,560人(87%)で接種後28日以上のフォローアップが行われた。このうち1万3,371人(76%)で在胎期間の予測が可能であり、ワクチン接種時の在胎期間中央値は31週だった。 ワクチン接種群の接種後2週以内の短期的な死産リスクは、非接種群に比べ増大していなかった(死産件数:接種群5件vs. 非接種群7.2件、率比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.23~1.62)。 フォローアップ期間が44週以上のワクチン接種妊婦は6,185人(年齢中央値30歳、接種時の在胎期間中央値33週)であった。これら接種群の分娩までの期間は、非接種群との間に有意な差はみられなかった(全体の在胎期間中央値:40週、ハザード比:1.00、95%CI:0.97~1.02)。 ワクチン接種群における全体の死産率は0.19%(12/6,185人、出産500件当たり約1件)であり、非接種群の0.23%(42/1万8,523人)との間に有意な差は認めなかった(率比:0.85、95%CI:0.45~1.61)。 出生7日以内の新生児死亡(発生率:0.03 vs. 0.03%、率比:1.00、95%CI:0.20~4.95)、妊娠高血圧腎症/妊娠高血圧(同:0.36%vs. 0.29%、1.22、0.74~2.01)、前置胎盤(同:0.03%vs. 0.08%、0.40、0.09~1.75)、子宮内発育遅延/低出生時体重/体重<2,500g(同:2.04%vs. 1.68%、1.20、0.98~1.48)のほか、帝王切開、分娩後出血などにも、両群間に有意な差はなかった。 ワクチン接種後の母体死亡、分娩前出血、子宮破裂、胎盤早期剥離、前置血管、胎児機能不全、新生児腎不全は認めなかった。 著者は、「妊娠第3三半期のワクチン接種により、短期的および接種後の全妊娠期間を通じて、死産のリスクは増大しなかった」とまとめ、「本研究は、妊婦に対する百日咳ワクチン接種の安全性に関する初めての大規模観察試験であり、ワクチン接種に関わる医療従事者にとって有益で、ワクチン接種関連の施策の立案に資すると考えられる」と指摘している。

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