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不眠の解消が高齢OA患者の疼痛の改善に

 不眠症を有する変形性関節症(OA)の高齢患者において、不眠の短期的な改善は長期的な転帰にどのような影響を及ぼすのだろうか。米国・ワシントン大学のMichael V. Vitiello氏らは、プライマリ・ケアを受診している同患者集団を対象とした認知行動療法の無作為化比較試験の2次解析から、短期的な不眠の改善が長期的な不眠、疼痛および疲労の改善をもたらす可能性があることを明らかにした。Pain誌2014年8月号(オンライン版2014年5月1日号)の掲載報告。 研究グループは、疼痛と不眠に対する認知行動療法の有用性を調べるため、疼痛に対する認知行動療法またはOAに対する患者教育とを比較する無作為化試験を行った。対象は、OAと不眠症を有する60歳以上の高齢患者367例であった。 今回の検討では、同被験者について、治療群とは無関係に睡眠改善群(不眠症重症度質問票[ISI]スコアがベースラインから2ヵ月後に30%以上減少)と非改善群に分類し、睡眠の短期改善と長期にわたる睡眠、疼痛および疲労の転帰との関係を評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療群と潜在的な交絡因子を調整後、睡眠改善群は非改善群と比較して、疼痛重症度(p<0.001、調整後平均差:-0.51、95%信頼区間[CI]:-0.80~-0.21)、関節炎症状(p<0.001、同:0.63、0.26~1.00)、および恐怖回避(p=0.009、同:-2.27、-3.95~-0.58)が、18ヵ月間にわたって有意かつ持続的に改善することが認められた。・一方、破局的思考およびうつの改善はみられなかった。・改善群はさらに、ISI(p<0.001、同:-3.03、-3.74~-2.32)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)合計スコア(p<0.001、同:-1.45、-1.97~-0.93)、一般的な睡眠の質のスコア(p<0.001、同:-0.28、-0.39~-0.16)、フリンダース疲労尺度(p<0.001、同:-1.99、-3.01~-0.98)、および睡眠に対する機能障害性信念尺度(Dysfunctional Beliefs About Sleep Scale、p=0.037、同:-2.44、-4.74~-0.15)の有意かつ持続的な改善を示した。・睡眠の機能的転帰に関する質問票(FOSQ)およびエプワース眠気尺度(ESS)の改善はみられなかった。・睡眠の短期改善(2ヵ月後)が長期(9ヵ月、18ヵ月後)の睡眠、疼痛および疲労に関する複数の評価項目の改善を予測した。・これらの改善は、精神的健康(うつの改善など)に関する非特異的な恩恵によるものではなかった。

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臨床予測ルールが簡単に確認できるiPhoneアプリ「ドクターKの診療ナビ」

 株式会社ウェルビーは8月1日に、臨床予測ルール(Clinical Prediction Rule)のチェックや医療計算を行うiPhoneアプリ「ドクターKの診療ナビ」をリリースした。 ドクターKの診療ナビは、疾患ごとの臨床予測ルールが簡単にチェックできるアプリで、医療計算も簡単にできる。近年はスマートフォンやタブレット端末が急速に普及し、多忙な臨床医にとって、こうしたモバイル端末が日常診療において強力な武器となってきている。 臨床予測ルールには、疾患の診断や重症度判定、治療法選択に使われる医療計算式などがある。ルールは数多く存在するが、詳細をその都度医学書で調べたり、計算するのは時間と手間がかかるという難点があった。ドクターKの診療ナビは、目の前の患者さんの臨床判断をするのにすぐに使え、医療計算式の詳細を暗記する必要もなく、もちろん電卓を使う必要もない。 また日々の臨床現場での利用だけでなく、医学生や研修医の自己学習ツールとしても役立つという。プライマリケアのサポートツールとしても実用性を発揮し、今まであまり臨床予測ルールを利用していなくても直感的に使用できるという。収載されている臨床予測ルールは50以上。 監修医は、総合内科専門医・救急科専門医である金井伸行氏(医療法人社団 淀さんせん会 金井病院 理事長)。アプリの価格は800円。利用にはウェルビーへの会員登録が必要で、IDとパスワードはウェルビーの他のiPhoneアプリと共通で使用できる。「ドクターKの診療ナビ」の詳細はこちらアプリのダウンロードはこちら(AppStore)

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高齢者へのインフルワクチン、高用量で効果増/NEJM

 65歳以上高齢者への高用量3価不活化インフルエンザワクチン(IIV3-HD)接種は、標準量同ワクチン(IIV3-SD)接種に比べ、インフルエンザ様疾患の予防効果が高く、抗体反応の誘導は有意に高いことが示された。米国・ピッツバーグ大学のCarlos A. DiazGranados氏らが約3万2,000例の高齢者を対象に行った第IIIb~IV相臨床試験の結果、報告した。これまでの報告で、抗体反応が向上することは報告されていた。NEJM誌8月14日号掲載の報告より。株当たり赤血球凝集素60μgの高用量ワクチンを投与 研究グループは、米国・カナダ126ヵ所の研究施設で、3万1,989例の65歳以上を対象に、多施設共同無作為化二重盲検試験を行った。試験では、株当たりの赤血球凝集素が60μgのIIV3-HD接種と、同15μgのIIV3-SD接種の、インフルエンザ予防効果を比較。被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはIIV3-HDを(1万5,991例)、もう一方にはIIV3-SD(1万5,998例)を接種した。 北半球インフルエンザ流行期2011~2012年シーズンと2012~2013年シーズンに、相対的有効性、効果、重篤な有害事象などの安全性、免疫原性を評価。疾患調査期間は毎年4月30日までで、被験者はその間、呼吸器症状が発生した場合には報告し、また電話による週1~2回の追跡調査を受けた。高用量群の標準量群に対する相対的有効性は24.2%、安全性は同等 事前に規定した、インフルエンザ様疾患の発症が確認されたのは、IIV3-HD群は228例(1.4%)、IIV3- SD群は301例(1.9%)だった(相対的有効性:24.2%、95%信頼区間:9.7~36.5%)。 調査期間中に1回以上の重篤有害事象が発生したのは、IIV3-HD群の1,323例(8.3%)、IIV3-SD群の1,442例(9%)だった(相対リスク:0.92、同:0.85~0.99)。 ワクチン接種後28日のHAI抗体価と血清抗体保有率(HAI抗体価が1対40以上だった人の割合)は、IIV3-HD群で有意に高かった。

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眠りのメカニズム

そもそも、どうして眠たくなるの?疲れたから眠る(睡眠恒常性維持機構)睡眠が足りないと、体を良い状態に保とうとして眠くなります。また、疲れ具合に応じて睡眠の質がコントロールされます。夜になると眠る(体内時計維持機構)日中に活動して、夜間に休息するように、体内のリズムが調整されます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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不眠症がもたらすリスク

不眠症は放っておいていい?睡眠が不足すると、糖尿病、高血圧、心筋梗塞などの生活習慣病の発症リスクが高くなるといわれています。Vgontzas AN, et al. Diabetes Care. 2009; 32: 1980-1985.Fernandez-Mendoza J, et al. Hypertension. 2012; 60: 929-935.Laugsand LE, et al. Circulation. 2011; 124: 2073-2081.Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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良質な睡眠を得るために

良質な睡眠を得るためには、生活を改善することが重要です定期的な運動規則正しい食生活寝酒は眠りが浅くなる快適な寝室環境を整える厚生労働科学研究・障害者対策総合研究事業、日本睡眠学会編. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン2013年改訂より作成Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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睡眠障害対処 12の指針

睡眠障害対処12の指針睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分1刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない同じ時刻に毎日起床光の利用でよい睡眠5規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣昼寝をするなら、15時前の20~30分7眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに8睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全41021136912厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費 睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班. 平成13年度研究報告書Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.睡眠障害対処12の指針(説明編)1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分睡眠の長い人短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない。歳をとると必要な睡眠時間は短くなる。2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法就寝前4時間のカフェイン摂取、就寝前1時間の喫煙は避ける。軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング。3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする。4. 同じ時刻に毎日起床早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる。日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる。5. 光の利用でよい睡眠目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン。夜は明るすぎない照明を。6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く。運動習慣は熟睡を促進7. 昼寝をするなら、15時前の20~30分長い昼寝はかえってぼんやりのもと。夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意背景に睡眠の病気、専門治療が必要10.十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談。車の運転に注意。11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全一定時刻に服用し就床。アルコールとの併用をしない。厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費 睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班. 平成13年度研究報告書Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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高齢者のうつとペットの意外な関連

 高齢者において、うつは大きな問題となる。これまでの研究では、動物と暮らす高齢者のメンタルヘルスが改善することが示されているが、逆の結果も存在する。そこで、ノルウェー・ノルトロンデラグ大学のIngela Enmarker氏らは、ペット非所有・イヌ所有・ネコ所有の高齢(本研究では65歳以上と定義)男女において、自己評価による抑うつ症状を集団研究で比較した。その結果、都会以外でイヌやネコを飼う高齢の男女において、抑うつ症状に違いが認められた。老人ホームのような環境でイヌやネコを利用する場合に、これらの集団研究のデータが使えるかもしれないという。Aging & mental health誌オンライン版2014年7月3日号に掲載。 この横断集団研究には65~101歳の1万2,093人が参加した。そのうち1,083人がネコを、814人がイヌを所有していた。自己評価による抑うつ症状は、自己記入式スケールであるHADS-D(Hospital Anxiety and Depression Scaleにおける抑うつ症状の項目)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・ネコ所有者は、イヌ所有者・ペット非所有者に比べて、HADS-Dの平均値が高かった。・ペット非所有者は、抑うつ症状を最も低いと評価した。・抑うつ症状を高評価と低評価に分けた場合、ネコ所有の男性はネコ所有の女性よりも抑うつ症状が低いと感じる可能性が高いことが、ロジスティック回帰分析より示された。・ペット所有と、一般健康状態・独居・配偶者の有無との相互関係は認められなかった。

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ピロリ除菌、糖尿病だと失敗リスク2倍超

 Helicobacter pylori(HP)の除菌において、糖尿病の存在が抗菌薬の有効性を低下させることが懸念されている。新潟大学の堀川 千嘉氏らは、糖尿病患者の除菌失敗リスクに及ぼす糖尿病の影響を調べるためにメタ解析を行った。その結果、糖尿病患者のHP除菌失敗リスクが非糖尿病者に比べて高いことが確認され、糖尿病患者のHP除菌での治療延長や新たな除菌レジメン開発の必要性が示唆された。Diabetes research and clinical practice誌オンライン版2014年7月23日号に掲載。 著者らは、2012年11月30日まで、Biosis、MEDLINE、Embase、PASCAL、SciSearchを用いて文献検索した。選定した研究から、2人の著者がそれぞれ別に、HP感染の除菌治療を受けた人数と糖尿病の有無別のHP除菌失敗データを抽出した。 主な結果は以下のとおり。・適格な8研究を選択し、データを取得した(計693人、うち糖尿病患者273人)。・全体では、非糖尿病者と比べた糖尿病患者のHP除菌失敗の統合リスク比(RR)は2.19(95%CI:1.65~2.90、p<0.001)であった。・標準プロトコル以外でHP除菌を行った2つの研究を除いた場合、非糖尿病者と比べた糖尿病患者のHP除菌失敗リスクはより高かった(RR:2.31、95%CI:1.72~3.11)。

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脳転移乳がんのタイプ別予後~国内24施設

 東海大学の新倉 直樹氏らは、脳転移した乳がん患者の予後因子を調べるために、国内24施設で脳転移と診断された乳がん患者において、乳がんのサブタイプごとに臨床経過と予後を比較し、死亡原因を分析した。その結果、脳転移した乳がん患者における転移前・後の臨床経過および予後は、サブタイプにより異なることが示唆された。著者らは、乳がんのサブタイプに着目することにより、脳転移の予防や早期発見、治療の改善を最大限に行えるとしている。Breast cancer research and treatment誌オンライン版2014年8月9日号に掲載。 著者らは、日本臨床腫瘍グループ(JCOG)の24施設で、2001年4月1日~2012年12月31日に脳転移と診断された乳がん患者1,466例を後ろ向きに検討した。 主な結果は以下のとおり。・全部で1,256例の脳転移乳がん患者が対象となり、全生存期間(OS)中央値は8.7ヵ月(95%CI:7.8~9.6)であった。・単変量および多変量解析から、乳がんの転移の診断から6ヵ月以内に脳転移と診断された患者、無症候性脳疾患の患者、HER2+/ER+の患者でOSが延長したことが明らかになった。・サブタイプ別の脳転移後のOS中央値(95%CI)は、以下のとおりであった。- Luminalタイプ:9.3ヵ月(7.2~11.3)- Luminal-HER2 タイプ:16.5ヵ月(11.9~21.1)- HER2タイプ:11.5ヵ月(9.1~13.8)- トリプルネガティブタイプ:4.9ヵ月(3.9~5.9)・Luminal-HER2タイプでのOSは、Luminalタイプ(HR:1.50、p<0.0001)、トリプルネガティブタイプ(HR:1.97、p<0.0001)に比べ有意に延長した。一方、HER2タイプとは有意差は認められなかった(HR:1.19、p=0.117)。

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腰椎椎間板ヘルニア、手術 vs 非手術は同程度?

 米国・The Dartmouth Institute for Health Policy and Clinical PracticeのDana Kerr氏らは、多施設前向き無作為化研究のSpine Patient Outcomes Research Trial(SPORT)から、腰椎椎間板ヘルニアに対する手術的治療と保存的治療を比較した解析結果を報告した。追跡期間8年において、intent-to-treat解析ではすべての主要評価項目で差がみられなかったという。ただし、坐骨神経痛症状、患者の自己評価による改善などの副次評価項目については手術的治療の有効性が示唆された。Clinical Orthopaedics and Related Research誌オンライン版2014年7月24日号の掲載報告。 6週以上続く症候性腰椎神経根障害があり、画像診断で椎間板ヘルニアと確認された患者を、米国の13施設にて無作為化コホート(501例)と観察コホート(743例)のいずれかに登録した。 無作為化コホートの患者は手術群か非手術群に無作為に割り付け、椎間板切除術または通常の保存的治療を行った。 主要評価項目は、6週、3ヵ月、6ヵ月、1年、以後1年ごとのSF-36身体的疼痛スコアおよび身体機能スコア、ならびにオスウェストリー障害指数(ODI)であった。 主な結果は以下のとおり。・8年間で、手術群245例中148例(60%)、非手術群256例中122例(48%)が実際に手術を受けていた。・無作為化コホートの intent-to-treat解析では、手術群と非手術群とで主要評価項目に差はなかった。・副次評価項目(坐骨神経痛症状、下肢痛、症状についての満足感、自己評価による改善)は、クロスオーバーが多かったにもかかわらず手術群のほうが改善を認めた。・無作為化コホートと観察コホートを合わせたas-treated解析(実際行われた治療に基づいた解析)では、潜在的交絡因子で補正後、すべての主要評価項目について手術的治療群のほうが優れていることが示された。・喫煙者および、うつ病または関節症を合併している患者は、手術的治療でも保存的治療でも、機能に関する評価項目がすべて悪化していた。・遊離型ヘルニアの患者、ベースラインの腰痛が高度で症状が6ヵ月以上持続していた患者、およびベースラインにおいて障害もなく仕事もしていない患者では、手術的治療の効果が大きかった。

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Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸と心血管イベント 臨床的側面からその意義を考える

木島 康文 氏岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 循環器内科学はじめに動脈硬化プラークに蓄積しているのはコレステロールである。コレステロールの中でも特に低比重リポ蛋白コレステロール(low density lipoprotein cholesterol:LDL-C)と心血管疾患との関連性については広く認知されており、それに対して、スタチンの投与は、心血管イベントの1次予防、2次予防、ハイリスク群に対する投与のいずれにおいても20~30%の相対リスク減少をもたらす1)。では、これで十分かといえば、残りの70%を超える症例がスタチンを投与されているにもかかわらず、心血管イベントを起こしていることになる。すなわち、スタチン単独療法には限界があることを示しており、近年“残余リスク”として注目されている。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』では心血管リスク因子がない患者群に対して、リスクの高い患者群ではより低いLDL-Cの目標値が設定されている。これはLDL-Cの“質”がリスク因子の影響を受けることを意味している。つまり、これからは心血管リスク因子としての脂質においてはLDL-Cの量とともにリポ蛋白の“質”により注目すべきといえる。リポ蛋白の“質”に影響を及ぼす残余リスクに、多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid:PUFA)のバランス異常がある。具体的には、アラキドン酸(arachidonic acid:AA)に対するエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid:EPA)の相対的低下に代表される、オメガ6系PUFAとオメガ3系PUFAのバランス異常である。オメガ3系PUFAの代表的なものとして魚介由来のEPAやドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid:DHA)と植物由来のα-リノレン酸(alpha-linolenic acid:ALA)がある。これらオメガ3系PUFAには中性脂肪低下作用だけでなく、血小板凝集抑制作用、抗炎症作用、プラーク安定化作用、抗不整脈作用、自律神経調節作用などの多面的効果を有し、これらの効果を介し心血管系に保護的に働くと考えられる。本稿ではオメガ3系PUFAと心血管イベントとの関係について臨床的側面を中心に述べる。オメガ3系PUFAと心血管イベントの関係:その根拠は?オメガ3系脂肪酸の最初のエビデンスは疫学調査によるものである。1970年代に、デンマーク領グリーンランドのイヌイットでは、デンマークの白人に比し、心筋梗塞・狭心症による死亡率が有意に低いことが報告された(白人34.7% vs. イヌイット5.3%)2)。食事内容を比較すると、総摂取エネルギーに対する脂肪の割合はいずれも約40%であったが、白人は主に牛や豚から、イヌイットは主に魚や(魚を大量に摂取する)アザラシから脂肪を摂取していた3)。また、血清コレステロールエステル中にイヌイットではEPAが15.4%存在し、AAが0%であったのに対し、白人ではそれぞれ0%、4.4%と著しい差を認めた。これにより、虚血性心疾患による死亡には脂肪の“質”が関与していることが示唆され、オメガ3系PUFAの心血管イベント抑制効果が注目されることとなった。1985年に、オランダの50~69歳男性852人を20年間追跡し、30g/日以上の魚介を食べる人はまったく食べない人と比べて虚血性心疾患による死亡が約半分であったことが報告された4)。その後、アメリカの40~55歳の健常男性を追跡調査した結果では、35g/日以上の魚介類摂取を行っている場合には心筋梗塞による死亡の相対危険率は0.56で、冠動脈疾患全体では0.62と、魚介類摂取による死亡抑制効果が認められた5)。また、アメリカのPhysicians' Health Studyにおいて、40~80歳までの医師20,551人を対象として最長17年間追跡調査した報告では、週1回以上の魚介類摂取習慣と心臓突然死との関連性が認められた。そして、実際の血清サンプル脂肪酸解析から突然死群のオメガ3系PUFAが対照群と比べて有意に低値であることも報告された6)。そのほかにも、イギリスにおける心筋梗塞後患者の追跡比較試験では、魚介類摂取指導がある群ではない群と比較して総死亡、虚血性心疾患死が有意に少なくなっていたことも報告されている7)。一方、日本人の冠動脈疾患の発症率は欧米に比し低いものの、近年その増加が指摘されている。国民1人当たりの魚介類消費量と男性における冠動脈疾患による死亡率を国別に比較すると、魚介類消費量と冠動脈疾患死の間には明らかな負の相関が認められる。欧米に比べて日本人の魚介類の摂取量は多く、冠動脈疾患の死亡率は低い。このことより、魚介類の摂取量が多いから日本人は冠動脈疾患が少ないものと考えられてきた。近年、日本人が摂取する脂肪の割合は増加しており、増加した脂肪の多くがオメガ6系PUFAに属する動物性油や植物性油である。それに対し、魚介由来のオメガ3系PUFAの摂取量は低下してきている。つまり、本邦における脂肪酸摂取の“質”は近年変わりつつあるといえる。本邦における総脂肪に対するEPAの推定比と脳梗塞あるいは虚血性心疾患による死亡率の経年的変化をみると、1950年代から総脂肪に対するEPAの推定比が低下するとともに、脳梗塞あるいは虚血性心疾患による死亡が増加している8)。これは、オメガ3系PUFAの摂取の減少が動脈硬化性疾患の増加に関与していることを示唆する所見と考えられる。実際に本邦のJapan Public Health Center-Based(JPHC)Study CohortⅠでは、40~59歳までの一般人41,578人を対象として約11年間の追跡調査を行っているが、魚介摂取量に準じて分割された5つの集団において、最も摂取量の多い群では最も少ない群に比べて冠動脈疾患のリスクが37%、心筋梗塞のリスクが56%低値であったと報告された(本誌p.10図を参照)9)。オメガ3系PUFAによる心血管イベントの抑制効果:その効果は?オメガ3系PUFAによる大規模な介入研究としては、これまで2つの報告がなされている。イタリアのGISSI-Prevenzione Trialでは、3か月以内に心筋梗塞に罹患した男性11,324人を対象とし、1g/日のオメガ3系PUFA(EPA+DHA)摂取群、ビタミンE摂取群、両者の摂取群、対照群の4群に分けて約3.5年間追跡調査したところ、オメガ3系PUFA摂取群では対照群に比べ、心血管死亡が30%、総死亡が20%の相対的低下を認め、併用群でも同様であったことが報告された10)。その後の再解析で、オメガ3系PUFAの総死亡や突然死、心血管死の抑制効果が比較的早期から認められる可能性が報告された(本誌p.11図aを参照)11)。一方本邦では、1996年から日本人の高脂血症患者における高純度EPA製剤による冠動脈イベントの発生抑制効果を検討するため、世界初の大規模無作為比較試験JELIS (Japan EPA Lipid Intervention Study)が実施された。JELISでは、高コレステロール患者18,654例(総コレステロール≧250mg/dL、男性:40~75歳、女性:閉経後~75歳)を対象に、スタチン単独投与群(対照群)とスタチンに高純度EPA製剤1.8g/日を追加投与した群(EPA群)で、約5年間、主要冠動脈イベントの発症を比較検討した。その結果、EPA群では対照群と比較して、主要冠動脈イベントが19%抑制され、特に2次予防における抑制効果が認められた(本誌p.11図bを参照)12)。次に、JELISの1次予防サブ解析の結果によると、中性脂肪(triglyceride:TG)≧150mg/dLかつ高比重リポ蛋白コレステロール(high density lipoprotein cholesterol:HDL-C)<40mg/dLの高リスク群では、正常群に比し主要冠動脈イベント発症は有意に高く、この患者群では、EPAの追加投与により主要冠動脈イベント発症が53%抑制された(本誌p.12図aを参照)13)。2次予防のサブ解析では、心筋梗塞の既往かつ冠動脈インターベンション施行例では、EPA群において主要冠動脈イベント発症が41%抑制されることが報告され14)、この患者群における高純度EPA製剤の積極的投与を支持する結果であった。ほかにも、サブ解析の結果、脳梗塞再発予防や末梢動脈疾患の冠動脈イベント予防に有効であることが示されている15, 16)。オメガ3系PUFAを臨床に生かす:その対象は?オメガ3系PUFAが心血管イベントに対する抑制効果を有することはわかってきたといえるが、それではどのような患者群で強い抑制効果が見込めるのだろうか?EPA/AA比を指標として、オメガ3系PUFAが不足している患者に投与しようと考えるのは妥当なことといえる。JELIS脂肪酸サブ解析で、EPA/AA比をもとに冠動脈イベント発生リスクを検討した結果では、EPA/AA比が0.5以上の高値群では低値群に比べて冠動脈イベントリスクに有意差を認めなかった。これに対して、0.75以上の高値群では低値群に比べ冠動脈イベントリスクに有意差が認められた17)。このことから、EPA/AA比0.75以上の維持が心血管イベント抑制につながる可能性が示唆されたといえる。また、JELISの1次予防サブ解析では、高TGおよび低HDL-C群でその他の群に比べイベント発生率が高いことが明らかとなった。そして、この群においてEPAの冠動脈イベントの抑制効果が強く現れていた(本誌p.12図aを参照)。また、このJELISの糖代謝異常に注目したサブ解析でも、糖代謝異常を有する患者群では血糖の正常患者群に比べて冠動脈イベント発生率が高かった。また、この糖代謝異常群においては、HbA1c値やLDL-C値によらず、EPA群のイベント発生リスクが対照群に比べて22%抑制されたことも報告された(本誌p.12図bを参照)18)。つまり、これらはdiabetic dyslipidemiaとも称されるインスリン抵抗性を基盤とした脂質異常をきたしている患者群が、EPA投与のよい適応となる可能性を示しているともいえる。オメガ3系PUFAは各ガイドラインに記載もあるが、高リスク症例の心血管イベントの抑制に有用であるとされている。つまりは、LDL-Cの量を十分に低下させてもイベントを抑制できないような残余リスクが問題となる高リスク症例に対して、リポ蛋白の“質”を改善することでイベント抑制効果がより顕著に発揮されるといえるのではないだろうか。おわりに魚介類摂取およびオメガ3系PUFAと心血管イベントとの関連性についてはほぼ確立されているものの、日本人が伝統的に欧米人と比べ魚介摂取量が多いことを考慮すると、欧米の研究結果をそのまま日本人にあてはめることには抵抗を感じる方も少なくないだろう。JELISは、欧米人よりも一般的にEPA/AA比が高い日本人においてもオメガ3系PUFAが心血管イベントをさらに抑制する可能性を示したといえる。メタボリックシンドロームの増加などが進む本邦において、diabetic dyslipidemiaの増加は今後も予想されている。若者の魚離れが重なることで、脂肪酸の“質”の根幹をなす魚介由来のオメガ3系PUFAの重要性は日本人においてもさらに増し、循環器領域の臨床に携わる医師にとってこの領域の知識は必須となるものと考えられる。不整脈や心不全などオメガ3系PUFAとの関連性が議論されている循環器領域も含めて、今後さらなるエビデンスの確立が期待される。文献1)Alagona P. Beyond LDL cholesterol: the role of elevated triglycerides and low HDL cholesterol in residual CVD risk remaining after statin therapy. Am J Manag Care 2009; 15: S65-73.2)Dyerberg J et al. A hypothesis on the development of acute myocardial infarction in Greenlanders. Scand J Clin Lab Invest Suppl 1982; 161: 7–13.3)Bang HO et al. The composition of the Eskimo food in north western Greenland. Am J Clin Nutr 1980; 33: 785-807.4)Kromhout D et al. The inverse relation between fish consumption and 20-year mortality from coronary heart disease. N Engl J Med 1985; 312:1205-1209.5)Daviglus ML et al. Fish consumption and the 30 year risk of fatal myocardial infarction. N Engl J Med 1997; 336: 1046-1053.6)Albert CM et al. Blood levels of long-chain n-3 fatty acids and the risk of sudden death. N Engl J Med 2002; 346: 1113-1118.7)Burr ML et al. Effects of changes in fat, fish, and fibre intakes on death and myocardial reinfarction: diet and reinfarction trial (DART). Lancet 1989; 2: 757-761.8)厚生統計協会: 国民衛生の動向, 厚生の指標. 1989; 36: 48.9)Iso H et al. Intake of fish and n3 fatty acids and risk of coronary heart disease among Japanese:the Japan Public Health Center-Based (JPHC)Study CohortⅠ. Circulation 2006; 113: 195-202.10)GISSI-Prevenzione Investigators. Dietary supplementation with n-3 polyunsaturated fatty acids and vitamin E after myocardial infarction:results of the GISSI-Prevenzione trial. Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Infarto miocardico. Lancet 1999; 354: 447-455.11)Marchioli R et al. Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per Io Studio della Sopravvivenza nell’Infarto Miocardico (GISSI) -Prevenzione. Circulation 2002; 105: 1897-1903.12)Yokoyama M et al. 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出血性脳卒中、日本は欧米の2倍

 秋田県立脳血管研究センターの鈴木 一夫氏らは、秋田県脳卒中発症登録における1995年~2004年の新規発症例(2万8,781例)の脳画像を評価し、日本における出血性脳卒中の割合は欧米諸国の約2倍であることを報告した。Neurological sciences誌オンライン版2014年8月10日号に掲載。 対象症例を脳画像により脳梗塞(1万8,018例、62.6%)、脳出血(7,423例、25.8%)、クモ膜下出血(3,340例、11.6%)の3つに分類した。脳梗塞および脳出血はそれぞれ病変領域で分類し、クモ膜下出血は破裂動脈瘤の場所により3つに分類した。 主な結果は以下のとおり。・日本における出血性脳卒中の割合は37.4%であり、欧米諸国の約2倍であった。・脳梗塞のうち、ラクナ梗塞が5,437例(30.2%)、皮質梗塞が6,121例(34.0%)、テント下梗塞が2,703例(15.0%)であった。・脳出血のうち、被殻出血が1,379例(18.6%)、視床出血が2,251例(30.3%)、皮質下出血が1,204例(16.2%)であった。・破裂脳動脈瘤の場所は性別により異なり、女性では内頸動脈の割合が最も高く(40.8%)、男性では前交通動脈の割合が最も高かった(46.8%)。

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新規抗てんかん薬の催奇形性リスクは

 新規抗てんかん薬(とくに、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート)の催奇形性リスクを評価するため、オーストラリア・メルボルン大学のF J E Vajda氏らは検討を行った。Acta neurologica Scandinavica誌オンライン版2014年7月18日号の報告。 胎児の催奇形性リスクは、妊娠初期の妊婦における抗てんかん薬曝露群(1,572例)と非曝露群(153例)で比較した。信頼区間は回帰法を用いて検討を行った。新規抗てんかん薬の催奇形性リスクを分析 新規抗てんかん薬による催奇形性リスクの主な分析結果は以下のとおり。・妊娠初期に治療を受けていなかったてんかん女性における胎児の催奇形性率(3.3%)と比較して、新規抗てんかん薬の曝露群ではラモトリギン4.6%、レベチラセタム2.4%、トピラマート2.4%(いずれも単剤投与)と、統計学的な有意差は認められなかった。・ただし、トピラマート併用投与の一部で14.1%、バルプロ酸単剤投与13.8%、バルプロ酸併用投与10.2%であり、いずれも統計学的に有意に高かった。・新規抗てんかん薬の単剤投与と併用投与のデータを合わせた回帰分析では、ラモトリギンとレベチラセタムは、催奇形性リスクの有意な増加は認められなかった。しかし、妊娠初期のトピラマート(p=0.01)およびバルプロ酸(p<0.0001)では、催奇形性リスクは統計学的に有意であり、かつ用量依存的であった。

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大腸がん診断後のスタチンで生存延長

 英国・クイーンズ大学ベルファストのChris R Cardwell氏らは、大規模な大腸がん患者のコホートにおいて、大腸がん診断後のスタチン使用が大腸がん特異的死亡リスクを低下させるかどうかを調査した。その結果、大腸がん診断後のスタチン使用が生存期間延長に関連することが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年8月4日号に掲載。 著者らは、National Cancer Data Repository(英国のがん登録データ)から、1998年~2009年に新たにステージI~III大腸がんと診断された患者7,657例を同定した。さらにこのコホートを、処方箋記録を提供する臨床試験研究データベースと国家統計局の死亡データ(2012年まで)に結合し、大腸がん特異的死亡1,647例を同定した。なお、診断後のスタチン使用によるがん特異的死亡のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)の算出、および潜在的交絡因子に対するHRの調整のために、時間依存Cox回帰モデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・大腸がん診断後のスタチン使用は、大腸がん特異的死亡率減少と関連していた(完全調整HR:0.71、95%CI:0.61~0.84)。・スタチン使用量と大腸がん特異的死亡率に関連が認められ、1年以上のスタチンを使用している大腸がん患者では、より顕著な減少が認められた(調整HR:0.64、95%CI:0.53~0.79)。・大腸がん診断後のスタチン使用患者において、全死因死亡率の減少が認められた(完全調整HR:0.75、95%CI:0.66~0.84)。

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PALB2変異で乳がんリスクが5~9倍/NEJM

 PALB2遺伝子の機能喪失型変異は遺伝性乳がんの重要な原因であることが、英国・ケンブリッジ大学のAntonis C Antoniou氏らの検討で示された。生殖細胞系におけるPALB2遺伝子の機能喪失型変異は、乳がん発症の素因となることが知られているが、この変異がもたらす乳がんの生涯リスクは明らかにされていないという。NEJM誌2014年8月7日号掲載の報告。変異保因女性の乳がんリスクを年齢別に解析 研究グループは、PALB2遺伝子に有害性の短縮変異やスプライス変異、欠失変異を有する154家族362人の乳がんリスクを分析した。 PALB2遺伝子の遺伝型と家族集積性の影響を考慮した複合分離比分析変法(modified complex-segregation-analysis methods)を用いて、変異保因者の乳がんリスクを年齢層別に推定した。 適格基準を満たした154家族311例のうち229例が乳がんを発症した。年齢層別の乳がん患者数は、20歳台が7例、30歳台が50例、40歳台が84例、50歳台が55例、60歳台が24例、70歳台が7例、80歳以上が2例であった。機能喪失型変異はPALB2遺伝子の48部位でみつかった。乳がんリスクは一般集団の5~9倍 PALB2遺伝子変異保因女性の年間乳がん発症率は、20~24歳の0.01%から50~54歳の1.60%まで加齢とともに上昇し、55歳以降は年間約1.4%で横ばいとなった。 変異保因女性の乳がんリスクは一般集団に比べ、40歳未満で8~9倍、40~60歳で6~8倍、60歳以上では約5倍の上昇であった。また、変異保因女性における乳がんの推定累積リスクは、50歳までは14%(95%信頼区間[CI]:9~20%)、70歳までは35%(同:26~46%)と推算された。 変異保因女性の出生年別の乳がんリスクは、1940年以前に出生した女性に比べ、1940~59年に生まれた女性は2.84倍、1960年以降生まれの女性は6.29倍であり、有意な差が認められた(p<0.001)。さらに、遺伝、環境、生活様式などの家族因子も有意な影響を及ぼしていた(p=0.04)。一方、居住国別の乳がんリスクには差はみられなかった(p=0.11)。 変異保因女性が70歳までに乳がんを発症する絶対リスクは、乳がんの家族歴がない場合の33%(95%CI:25~44%)から、50歳の時点で乳がんに罹患していた第一度近親者(母親、姉妹)が2人以上いる場合の58%(95%CI:50~66%)までの幅があった。 著者は、「PALB2遺伝子の機能喪失型変異は、乳がんの素因となる変異の頻度およびそれらに関連するリスクの双方の点で、遺伝性乳がんの重要な原因である」と結論し、「今回のデータにより、PALB2遺伝子変異の保因者の乳がんリスクはBRCA2遺伝子変異の保因者と部分的に重複する可能性が示唆された」と指摘している。

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合併症の予防が大切

【関節リウマチ】合併症にも注意!メモ関節リウマチは、他の自己免疫の病気を合併することがある。・リウマチ患者さんの5人に1人が「シェーグレン症候群」・シェーグレン症候群は、自己免疫にかかわる病気。涙腺や唾液腺に炎症が起こり、目や口が乾きやすくなる。・日ごろからリウマチの炎症をコントロールして、合併症を予防することが大切。監修:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 金子祐子氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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QOLに焦点をあてる糖尿病診療

 2014年8月6日(水)、アストラゼネカ株式会社は「Patient Centered Care-患者さんの生活の質(QOL)を中心とした治療アプローチについて」をテーマに都内でプレスセミナーを開催した。 糖尿病の診療では、診療を中断する患者が問題となっている。こうした背景の下、今回の講師である石井 均氏(奈良県立医科大学糖尿病学講座 教授)は、患者中心の治療アプローチに取り組み、治療継続について研究、成果を上げている。本セミナーでは、石井氏がその取り組みについて詳しく語った。■糖尿病の今 糖尿病を治療する意味は、病状進展による網膜症や腎症などの合併症を防ぐこと、そして健康な人と変わらない生活の質(QOL)を保つことである。そのためには、わが国の学会が定める、合併症予防のための血糖コントロール目標値HbA1c 7%未満に保つことが重要、と石井氏は説明した。 また、2型糖尿病患者のうち、早い人は診断後5年くらいで合併症を併発する。石井氏は、最近の研究を基に合併症の傾向について述べた。いわく、糖尿病特有の細小血管障害、肥満や脂質異常と関係する動脈硬化性疾患のほか、認知症、脂肪肝、がん、骨折などの疾患もみられること。とくに2型糖尿病の半数は脂肪肝が疑われるという。そのうえで、糖尿病の現実的な目標は、「cure(治療)」ではなく「care(管理)」であり、このケアが続くことが患者に中断をもたらす一因ともなっているのではないか、と指摘した。■なぜ患者は医師の話を聞かないか 石井氏が、日々の診療を通じて気付いたことは、「患者さんの耳には、正しいことは入っていかない」ということだ。主に2型糖尿病では、顕著な症状は病初期では現れない。患者は、血糖値測定や治療薬の服用を通じてでしか、糖尿病を実感することができない。そのため今まで通りの生活をしたり、治療の自己中断をしたりするという。医師が患者の将来のためを思い、糖尿病合併症予防のため食事制限やタバコ、飲酒など嗜好品の制限を説いても、患者がなかなか守ってくれないのは、このためである。 また、現在の医師と患者の関係が、「コンプライアンスモデル(医師からの伝達型で患者の自主性がない)」であることも関係している、と石井氏は指摘した。 欧米では、すでにこのモデルから脱却しつつあり、患者の自主性を引き出しながら治療につなげていこうという「アドヒアランスモデル」が志向されている。わが国でも、最近になって多くの医療者が取り入れるようになり、臨床現場で実践されている。 アドヒアランスモデルが上手くいくには、患者の自発性を促すために医療者が患者に深く関わることが必要である。たとえば、医師の診療前に看護師など別のスタッフが患者の具合や悩みなどを聞くといった対応が重要となる。これからは、患者が理解し、行動するように寄り添っていく医療にしなくてはいけないと説明を行った。■患者のQOLを重視し、一緒に治療戦略を立てる 一度、糖尿病と診断されると、患者は人生の多くの時間を、病と過ごすことになる。だからこそ医療者は、患者の価値観を尊重し、診療にあたらなければならない。患者の長寿だけが最大目標ではなく、「いかにQOLを保ちつつ、健常人と同じように過ごすことができるかが重要」と石井氏は指摘する。そのため、多彩な血糖降下治療薬がある中で、その選択基準に患者のQOLも考慮に入れることが大切であるという。 たとえば、GLP-1受容体作動薬は、アナログ製剤であるために経口薬と比べ処方が進んでいない。しかし、持続性エキセナチドは、週1回の注射で済むために、働き盛りや高齢者の患者には、QOLを落とすことなく継続使用できる。また、血糖値を-1.1%(26週投与データ)程度降下させるとともに、体重増加を来さないという特徴を持つ。 こうした患者の生活サイクルや事情に合った治療薬を用いることで、治療継続できるように医療者がアプローチすることが大切だと講演をまとめた。

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