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SSRI抵抗性、脳内ヒスタミンが関与か

 治療抵抗性うつ病の背景に存在する神経生物学的変化については、不明な部分が多い。一方で選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)不応については、ヒスタミンなどのセロトニン作動性神経を活性化する神経伝達物質システムの異常に起因している可能性がある。イタリア・フィレンツェ大学のLeonardo Munari氏らは、ヒスタミン合成不能マウスモデルを用いて、抗うつ薬抵抗性のメカニズムについて検討を行った。その結果、ヒスタミン合成不能マウスにおいて、レボキセチンやイミプラミンは抗うつ効果を発揮することが示唆された一方、SSRIはセロトニン作動性神経系が機能している場合でも効果が認められなかった。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年4月21日号の掲載報告。  研究グループは、ヒスタミン合成不能マウスを用い、行動的(尾懸垂試験)および神経化学的(in-vivoマイクロダイアリシス法、ウエスタンブロット解析)アプローチによる検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・検討により、SSRI(シタロプラムまたはパロキセチン)の抗うつ効果は、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子(HDC, -/-)の標的破壊、あるいはこの酵素の自殺阻害剤であるα-フルオロメチルヒスチジン(α-FMHis)の注入により阻害されることが確認された。・尾懸垂試験では、検討したすべての種類の抗うつ薬において、対照群と比べ無動時間の短縮が認められた。・ヒスタミン合成不能マウスにおいて、レボキセチンまたはイミプラミンの全身投与は無動時間を短縮させたが、SSRIsはセロトニン作動性神経系が機能している場合でも効果が認められなかった。・in-vivo マイクロダイアリシスの実験において、シタロプラムは、自由行動下マウスの大脳皮質における神経外ヒスタミン濃度を有意に増加させ、メチセルジド、5-HT1/5-HT2受容体アンタゴニストはこの効果を阻害した。これは、内因性セロトニンの関与を示唆するものであった。・ヒスタミン欠損マウスにシタロプラムを投与したところ、抗うつ薬の分子レベルでのメカニズムに関連するCREBのリン酸化が阻害された。 ・8-Br-cAMPの投与によりCREB経路のリン酸化が亢進したため、HDC-/-マウスではCREB経路に障害はなかった。・また、尾懸垂試験では、いずれの遺伝子タイプのマウスにおいても、無動時間が有意に減少した。・以上の結果から、SSRIsがその前臨床反応を引き出すためには、脳内ヒスタミン系が完全に機能していることの必要性が示唆された。 結果を踏まえて、著者らは「とくにSSRIでは、脳内ヒスタミンによる神経伝達物質経路の異常が治療抵抗性の一因となっている可能性が示唆された」と報告している。関連医療ニュース 難治性うつ病に対する効果的な治療は何か 治療抵抗性うつ病に対し抗精神病薬をどう使う 難治性うつ病発症に肥満が関連か  担当者へのご意見箱はこちら

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慢性心不全に適度なワイン

 日常的に適度なワインを飲むことは、心血管イベントリスクの低下と関連するが、慢性心不全患者におけるデータは不足している。GISSI-HF試験の研究グループは、イタリア人慢性心不全患者の大規模コホートを対象とした多施設臨床研究により、ワイン摂取と健康状態、バイオマーカー、臨床アウトカムとの関連性を評価した。著者らは「本研究は、慢性心不全患者の大規模コホートにおいて、適度なワインがより良い主観的/客観的健康状態、低い抑うつ傾向、血管炎症の少なさと関連することを示した、初の研究である。ただし、より良好な4年後臨床アウトカムとの関連性は認められなかった」とした。Circulation: Heart failure誌オンライン版2015年4月29日号の掲載報告。 GISSI(Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Insufficienza cardiaca)-HF試験に参加した6,973例を対象に、ベースライン時に生活習慣に関する簡易アンケートを行った。ワイン摂取と致死的/非致死的臨床イベント、QOL、うつ症状、心機能・炎症性バイオマーカー(一部の患者において検査)との関連について、単変量解析および多変量解析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者の約56%が「1日1杯以上ワインを飲む」と報告していた。・調整後、臨床アウトカムはワインの摂取量で分けた患者4グループにおいて、有意な違いは認められなかった。・しかし、潜在的交絡因子の調整後、ワインの摂取量が多い患者ほど、より良い健康状態を認識しており(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire [KCCQ]スコアによる自己評価、p<0.0001)、抑うつ症状が少なく(The Geriatric Depression Scale [GDS]:高齢者うつ病評価尺度)、血管炎症性バイオマーカー値が低い(osteoprotegerin、C-terminal pro-endothelin-1;共に調整後p<0.0001、pentraxin-3;p=0.01)ことが示された。

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ニコチンの依存性、強い?弱い?

ニコチンの依存性、強いの?弱いの?しばらくタバコを吸わないでいると、多くの喫煙者がイライラ、そわそわ……ニコチンの禁断症状に襲われることになります。そのことが禁煙を難しくしている理由とされています。ニコチンの禁断症状は非常に弱く、幻覚が見えたり、幻聴が聞こえたりするようなことはありません。ニコチンは脳内で生理活性物質※ときわめてよく似た働きをするため、余計な作用が起こりにくいのです。※アセチルコリンそれだけに、ニコチンは身体になじみやすく、医者から「死ぬぞ!」と脅かされたくらいではやめられないくらい強い依存性を示すことになります。ニコチンの脳への作用メカニズムから判断すると、禁断症状が弱いことと、依存性が強いことは矛盾しないのです。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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うつ病 症状の有無のみの治療評価は危険

 2015年5月8日、都内にて「うつ病における社会機能回復の重要性」をテーマにプレスセミナー(主催:ファイザー株式会社)が開催された。本セミナーにおいて、日米間で異なるうつの治療環境や、うつ病の再発を防ぐための考え方が紹介された。今回は、デイビッド・シーハン氏(米国・南フロリダ大学 精神医学行動医学センター 教授)の講義に注目し、概要を紹介する。日米間で異なるうつの治療環境 うつ病を患う労働者は、日米において異なる治療環境にあるという。日本ではうつと診断されると医師より休職を勧められるのに対して、米国では労働を休むことなく外来にて治療していくケースが大多数を占める。これには、米国が厳しい競争主義の状況下にあり、十分に働けない者は自分の地位を失うという厳しい現状が背景にあるようだ。しかし、うつ病に苦しむ患者への社会的な支援があまり大きくない点は日米間で共通しており、それぞれの国においてうつ病の発症・再発予防の必要性が再認識されつつある。うつ病を評価するための指標 うつ病は症状の有無だけでなく、社会機能障害も含めたリスク管理を行う必要がある。うつ病を評価するための指標として、シーハン氏は自身が考案したシーハン障害尺度(Sheehan Disability Scale:SDS)を紹介した1)。この指標は疼痛評価における視覚的評価スケール(Visual Analog Scale:VAS)と同様に社会機能障害を数字で評価することができる。その簡便さと治療効果に対する正確性ゆえに、現在米国においてこの指標が広まりつつあるという。うつ病を再発させないために シーハン氏によると、患者個人で苦しむのではなく、まずは医師に相談すること、医師と共に問題解決を行っていくことが大切だという。また、抗うつ薬治療の安易な中断は再発のリスクを高める。身体症状や精神症状が軽減されてもSDSなど各種尺度を用いた社会機能障害を含めたうつの評価と、十分な期間の薬物治療の継続が必要となる。また、日本では、平成27年12月1日より労働者50人以上の企業に対して企業ストレスチェックが義務化されるため2)、この制度を活用してうつ病を1次予防していくこともポイントとなってくる。 シーハン氏は、「一般に抗うつ薬は効果を発揮するのに4~6週間かかる傾向にあるが、それまでに治療を中断されることもある。きちんとした治療を続ければ続けるほどうつ病の再発を抑えることができる。患者が医療従事者と協力し、治療を継続できるような支援体制を整え、患者1人で頑張らせる治療からシフトしていくべきだ」とメッセージを送り、講演を締めくくった。

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「P-CAB」で酸関連疾患治療は変わるのか

 2015年4月14日、東京都中央区で武田薬品工業株式会社と大塚製薬株式会社の共催により、「酸関連疾患の最新情報 ~治療の現状と課題解決に向けて~」をテーマに、酸関連疾患メディアセミナーが開催され2つの講演が行われた。酸関連疾患の現状と既存PPIの課題 はじめに、三輪 洋人氏(兵庫医科大学 内科学消化管科 主任教授)により本セミナーのテーマとなる「酸関連疾患の最新情報 ~治療の現状と課題解決に向けて~」の講演が行われた。 日本の胃食道逆流症(GERD)患者は、1990年代後半から年々増加しており、三輪氏によると「検診を受けた患者の約15%でGERDが見つかる」という。 GERD治療では、第1選択薬としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)が使用されるが、PPIを服用しているにもかかわらず「GERD患者の約3人に2人が週1回以上GERD症状を感じる」という報告もある。GERD診療ガイドラインでもPPIの使用は推奨されているが、既存PPIには現在4つの課題が挙げられている。1)酸に不安定であるため、腸溶性製剤にする必要がある、2)最大効果を得るまでに内服後約3~5日間を要する、3)夜間に認められる酸分泌を十分に抑制できない、4)(代謝の関係で)酸分泌抑制効果に個人差がみられる、の4つである。 2015年2月に発売された酸分泌抑制薬タケキャブ(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー[P-CAB]、一般名:ボノプラザン)は、内服開始後、数時間で最大効果を発揮する点や、代謝酵素(CYP2C19)の影響を受けにくい点が特徴である。P-CABは即効性を持つだけでなく、より強力に胃酸分泌を抑制する必要があるピロリ菌除菌や、重度のGERDでも効果を発揮するという特徴もある。 しかし、GERDなどの酸関連疾患は慢性疾患であり、再発しやすいため継続的に薬剤が処方される傾向がある。三輪氏は、「薬剤服用の負担を減らすためにも、飲食習慣や生活習慣の改善も大切である」と指摘した。P-CABの特性 中村 浩己氏(武田薬品工業 メディカルアフェアーズ部長)より「P-CABの阻害特性や臨床試験成績」の報告が行われた。 今回発売されたボノプラザンは、プロトンポンプを抑制するだけではなく、管腔側(acid space)に高濃度かつ持続的に貯留するため長時間胃酸分泌抑制効果を発揮する。実際、ピロリ菌除菌(PH>5を長期間保つ必要がある)の効果を検討した二重盲検比較試験では、ボノプラザン20mgとアモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用投与終了4週後に1次除菌率92.6%、2次除菌率98.0%という結果が得られている。 GERD患者を対象とした第III相試験でも、ボノプラザン20mg投与4週で96.6%、投与8週で99.0%の治癒率であり、「ボノプラザン20mg投与4週の治癒率と、ランソプラゾール30mg投与8週の治癒率が同程度であった」と中村氏は述べた。 ロサンゼルス分類グレード別ではC/DのGERD重症患者の治癒率は、ボノプラザン20mg投与4週で96.0%、投与8週で98.7%であり、再発率は投与24週後で4.7%であることが明らかにされた。また、CYP2C19活性が高くボノプラザンが速やかに代謝されてしまうEM(extensive metabolizer)型に対して、治癒率は、投与4週で96.1%、投与8週で98.9%であり、再発率は投与24週後で1.8%であることも示された。 中村氏は、「以上の結果から、ボノプラザンは治癒率および再発抑制に関して、従来のPPIの課題を克服する薬剤である。しかしながら、長期の安全性については、今後も注視していく必要がある」と述べた。 P-CABの登場で酸関連疾患の治療がどのように変わっていくのか、P-CABの位置付けがどうなるのか、今後の動向に注目していきたい。

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1型糖尿病への強化療法、眼科手術リスク抑制/NEJM

 1型糖尿病患者に対する早期の強化療法は、眼科手術を受けるリスクを長期にわたり著明に抑制することが、米国ハーバード・メディカル・スクールのLloyd Paul Aiello氏らDCCT/EDIC研究グループの最新の検討で示された。DCCT試験(Diabetes Control and Complications Trial)では6.5年間の強化療法により網膜症の発症が従来療法に比べ76%減少し、引き続き行われたEDIC試験(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)では、血糖値がほぼ同等であるにもかかわらずDCCT試験の強化療法例において細小血管および大血管の合併症の進展が持続的に抑制されたことが報告されている。NEJM誌2015年4月30日号掲載の報告より。最長27年の追跡データで眼科手術施行状況を評価 研究グループは、今回、北米で行われたDCCT試験の参加者の最長27年に及ぶ追跡データを解析し、眼科手術の施行状況を評価した。 DCCT試験では、1983~1989年に年齢13~39歳の1型糖尿病患者1,441例が、血糖値を可能な限り非糖尿病の範囲に近づける強化療法を行う群(711例)または高血糖症状の予防を目的とする従来療法を行う群(730例)に無作為に割り付けられ、1993年まで追跡が行われた。 その後、DCCT試験の従来療法群を強化療法群に移行し、1994年から観察研究であるEDIC試験(1,375例)で追跡を継続した。  患者の自己申告による眼科手術歴の調査を年1回実施した。これら2つの試験期間中の眼科手術の施行状況および費用を2群間で比較した。眼科手術:8.9 vs. 13.4%、メタボリック・メモリーの概念を裏付ける知見 DCCT試験のベースラインの平均年齢は27歳、罹病期間は6年、HbA1cは9.1%であり、患者の80%以上が正常視力(20/20以上、日本の視力1.0以上に相当)であった。追跡期間中央値は23年であり、この間に161例が319件の眼科手術を受けた(DCCT試験の期間中は6件のみ)。 眼科手術の施行率は、強化療法群が8.9%(63/711例、130件)であり、従来療法群の13.4%(98/730例、189件)に比べ有意に低かった(p<0.001)。 また、DCCT試験のベースラインの背景因子で補正すると、強化療法群は従来療法群に比し糖尿病関連の眼科手術を1回以上受けるリスクが48%減少し(p<0.001)、眼科手術全体のリスクは37%低下した(p=0.01)。 白内障手術を受けた患者は、強化療法群が42例、従来療法群は61例であり、補正後の強化療法群のリスク減少率は48%(p=0.002)であった。 硝子体手術または網膜剝離術、あるいはその両方を受けた患者は、それぞれ29例、50例であり、補正後の強化療法群のリスク減少率は45%(p=0.01)であった。 一方、手術の費用は強化療法群が32%低かった(42万9,469 vs. 63万4,925ドル)。また、補正後のCox比例ハザードモデルや多変量モデルによる解析では、糖尿病関連の眼科手術のベースラインのリスク因子として、女性、加齢、罹病期間の長さ、HbA1c高値、正常より低い視力などが挙げられた。 著者は、「眼科手術の長期リスクにおける早期の強化療法による血糖コントロールの重要性が浮き彫りとなった」とし、「これらの知見は、早期の強化療法導入が腎症のリスクにもたらす長期的なベネフィットの報告と類似しており、過去の高血糖の程度やその曝露期間が、その後の糖尿病関連合併症の進展に影響を及ぼすとするメタボリック・メモリーの概念を支持するもの」と指摘している。

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若者の新型うつ病へのアプローチとなりうるか

 日本では、とくに若者の間で「新型うつ病」や「ひきこもり(6ヵ月以上持続している重度の社会的なひきこもり)」と表現される新たな精神医学的事象が報告されてきている。信頼ゲームと呼ばれる経済ゲームが現実社会における対人関係の評価に利用できることから、早稲田大学高等研究所の渡部 幹氏らは、大学生を対象に予備的研究を行った。その結果、信頼行動が精神医学的評価スケールと関連していることを報告した。著者は、「新型うつ病やひきこもり等の人々における経済ゲームの妥当性が研究されるべきである」とまとめている。PLoS One誌オンライン版2015年4月2日号の掲載報告。 研究には、日本人大学生81人が参加した。ゲームの相手40人の写真を提示した後に、その写真を参考にお金をいくら提供するかを決定してもらい、Lubben Social Network Scale(LSNS)-6およびPatient Health Questionnaire(PHQ)-9を含む7つの評価スケールに回答してもらった。 結果は以下のとおり。・先行研究と同様に、男子学生のほうが女子学生よりも相手を信頼した。・回帰分析の結果、男子学生ではLSNS-6の「家族」(家族からのサポートの認知)が、女子学生ではPHQ-9の項目8(主観的な焦燥性興奮や遅延)が、それぞれの信頼行動と関連していた。・男子学生において、家族からのサポートは家族以外の人への協力行動と、負の相関を示した。これは社会科学者の主張と一致した。・主観的な焦燥性興奮(および/または遅延)がより強い女子学生は、対人関係において魅力が少ない女性に対してよりも、男性およびより魅力的な女性に対してお金をあまり提供しなかった。関連医療ニュース 若年者への抗精神病薬使用、93%は適応外処方 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか? 若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき  担当者へのご意見箱はこちら

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僧帽弁疾患に合併した持続性/長期持続性心房細動に対する外科手術(解説:大野 貴之 氏)-356

 日本循環器学会「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」では、心房細動手術の適応は僧帽弁疾患に合併した心房細動で、弁形成術または人工弁置換術を行う場合はclass Iと記載されている。また、2014 AHA/ACC/HRSガイドラインでは“An AF surgical ablation procedure is reasonable for selected patients with AF undergoing cardiac surgery for other indications.(Class IIa, Level of Evidence:C)”と記載されている。 この論文は、僧帽弁手術を必要とする持続性(7日を超えて持続)あるいは長期持続性(1年以上持続)心房細動に対する、心房細動手術の有効性を調査したランダム化試験の報告である。 心房細動手術施行群(133例)と非施行群(127例)に分けて、洞調律復帰、心脳血管事故(死亡・脳梗塞・心不全)、死亡、僧帽弁あるいは心房細動に対する再手術、QOLについて、1年間追跡している。 両群で全員に対して左心耳血栓リスクを減らすために左心耳閉鎖は施行している。また、心房細動手術施行群はランダムに肺静脈隔離術単独群(67例)と、右房切開を加えたフルメイズ手術群(66例)に分けている。両群の患者背景に差はなく、術前持続性心房細動群45.8%、長期持続性心房細動群54.2%であった。手術時間は心房細動手術施行群が約15分長かった。 全患者の20%は6ヵ月・12ヵ月目の追跡ができていないが、12ヵ月後の洞調律復帰率は心房細動手術施行群63.2%、非施行群29.4%(p<0.001)であった。肺静脈隔離術単独群61%、フルメイズ手術群66%(p=0.06)で洞調律復帰率は有意差を認めなかった。心脳血管事故、死亡、再手術、QOLも差を認めなかったが、心臓ペースメーカー植え込みは心房細動手術施行群26例、非施行群9例であり、心房細動手術施行群で有意に高率であった。 肺静脈隔離術単独群とフルメイズ手術群で、心臓ペースメーカー植え込みに差があったか否かに関して記載はない。心房細動手術施行群は非施行群と比較して洞調律復帰率は高いにもかかわらず、脳梗塞率(3.0% vs. 1.6%)は差を認めなかった。その原因として著者らは、追跡期間が1年間と短いことと、両群で左心耳閉鎖施行していることの2点を挙げている。 全患者の20%が追跡調査できていないのが残念であるが、心臓外科手術の治療効果を、ランダム化試験で検証しようと試みている貴重な報告である。長期追跡の結果が楽しみである。

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コーヒー摂取量と死亡リスク~日本人9万人の前向き研究

 これまで、コーヒー摂取と死亡・主要死因別死亡との関連を検討した前向きコホート研究はほとんどなかったが、今回、わが国における前向き大規模コホート研究(JPHC Study※)により、習慣的なコーヒーの摂取が全死亡および心疾患、脳血管疾患および呼吸器疾患による死亡リスクを減らす可能性が示唆された。The American journal of clinical nutrition誌2015年5月号(オンライン版2015年3月11日号)に掲載。 本研究では、ベースライン調査において、がん、脳血管疾患、虚血性心疾患の既往のない40~69歳の日本人9万914人について、コーヒー摂取量と主要死因別死亡(全死因、がん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、外傷、その他)との関連を調査した。平均18.7年追跡調査を行い、その間に1万2,874人が死亡した。潜在的な交絡因子の調整後、コーヒー摂取量と全死亡および死因別死亡リスクとの関連について、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・男女とも、コーヒー摂取量と全死亡リスクとの間に逆相関の関連が認められた。・コーヒーをまったく飲まない人と比べた全死亡のハザード比(95%CI)は、コーヒー摂取量が1日1杯未満の人は0.91(0.86~0.95)、1~2杯の人は0.85(0.81~0.90)、3~4杯の人は0.76(0.70~0.83)、5杯以上の人は0.85(0.75~0.98)であった(傾向のp<0.001)。・コーヒー摂取量は、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクと逆相関していた。※JPHC Study「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」(主任研究者:国立がん研究センター 津金 昌一郎氏)において、全国11保健所と国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大学、研究機関、医療機関などとの共同研究として行われている。

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デング熱の重症度、ウイルス特異的メモリーT細胞応答が関与

 これまでにデングウイルス(DENV)に自然感染した人において、DENVに対する抗体反応が詳細に調べられたが、DENV特異的メモリーT細胞の機能性と臨床的な疾患重症度との関連は完全に解明されていない。スリランカ・スリ ジャヤワルダナプラ大学のChandima Jeewandara氏らは、DENV特異的メモリーT細胞によって産生されるサイトカインの種類が、臨床的な重症度に影響することを報告した。T細胞応答を用いた新しいアッセイ法により感染血清型を特定できることも示され、免疫疫学的研究やデング熱ワクチンの臨床試験で役立つと期待される。PLOS Neglected Tropical Diseases誌オンライン版2015年4月13日号の掲載報告。 スリランカで得られたDENV自然感染者(デング熱で入院または軽度~不顕性感染)338例の検体について、ex vivoでIFNγ ELISpotアッセイを用いてサイトカイン産生を測定しDENV特異的メモリーT細胞応答を調べた。 主な結果は以下のとおり。・軽度~不顕性感染者または入院歴のある感染者のどちらにおいても、T細胞はDENV-NS3 抗原刺激時に複数のサイトカインを産生した。・しかし、軽度~不顕性感染者のDENV-NS3特異的T細胞はグランザイムBのみを産生する傾向にあったのに対して、入院歴のある感染者ではTNFαおよびIFNγの両方、またはTNFαのみを産生する傾向にあった。・T細胞応答を利用して感染血清型を調べたところ、DENV血清陽性者の92.4%で、1つ以上の血清型が認められた。・DENV血清陰性であるが日本脳炎ワクチンも受けたことのある個人では、感染血清型のアッセイでT細胞応答がみられなかった。したがって、このアッセイに用いた抗原ペプチドは、日本脳炎ウイルスと交差反応しないと考えられる。

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タバコとストレスの妙な関係!?

タバコとストレスの妙な関係!?吸えないとイライラするタバコ……では、吸うのをやめたらどうなるのでしょうか?(点)15ストレスチェックリストの平均点の変化12実は、ストレスが減ることがわかっています。10■9.550女性男性4.1■2.7初診時禁煙3ヵ月時矢野直子.日禁煙会誌.2007;2:51-61.タバコをやめれば「タバコを吸いたい」というストレスから解放されるのですから、当たり前の話ですね。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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急性虚血性脳卒中、血栓除去術の追加は有用/NEJM

 急性期虚血性脳卒中患者に対する発症後8時間以内のステント型リトリーバー(血栓回収デバイス)を用いた血栓除去術は、脳卒中による障害の重症度を改善し、機能的自立の割合を増加させることが、米国・ピッツバーグ大学医療センターのTudor G Jovin氏らが実施したREVASCAT試験で示された。近年、機械的血栓除去療法の臨床的有効性が複数の無作為化試験によって報告されているが、脳卒中の血管内治療の試験では、間断のない連続的な患者登録が困難なことが問題とされる。その解決策として、本試験では地域住民ベースの前向き患者登録システムが用いられた。NEJM誌オンライン版2015年4月17日号掲載の報告。標準的薬物療法への追加の効果を無作為化試験で評価 REVASCAT試験は、急性期虚血性脳卒中の治療において、標準的な薬物療法への血栓除去術の追加の有用性を評価する無作為化第III相試験。対象は、年齢18~85歳、発症後8時間以内の前方循環近位部閉塞(画像検査で中大脳動脈M1部[主幹]の閉塞が確認され、内頸動脈閉塞を伴う場合も含む)で、広範梗塞巣のない患者であった。 被験者は、標準的な薬物療法に加えステント型リトリーバーによる血栓除去術を行う群または標準的薬物療法のみの群(対照群)に無作為に割り付けられた。全例が、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA、アルテプラーゼ)の投与で再灌流が達成されなかったか、または禁忌の患者であった。 主要評価項目は、90日後の修正Rankinスケール(mRS、0:無症状~6:死亡)による機能障害重症度とした。なお、本試験は690例の登録を予定していたが、試験期間中に他の同様の試験で血栓除去術の有効性が確認されたため早期中止となった。QOLも改善、死亡や頭蓋内出血に差はない 2012年11月~2014年12月までにスペイン・カタロニア地方の4施設に206例が登録され、血栓除去術群に103例(平均年齢65.7歳、男性53.4%、t-PA投与例68.0%)、対照群にも103例(67.2歳、52.4%、77.7%)が割り付けられた。全体の発症から割り付けまでの期間中央値は225分で、血栓除去術群のうち実際に除去術が行われたのは98例だった。 90日時点のmRSスコアの補正共通オッズ比(OR)は1.7(95%信頼区間[CI]:1.05~2.8)であり、血栓除去術群で有意に優れていた。また、90日時点の機能的自立(mRSスコア0~2:軽度の障害)の両群間の絶対差は15.5%(43.7 vs. 28.2%、補正OR:2.1、95%CI:1.1~4.0)であり、血栓除去術群で有意に良好だった。 劇的神経学的回復(24時間後のNIH脳卒中スケール[NIHSS]の8点以上の減少または0~2点の達成)の補正ORは5.8(95%CI:3.0~11.1)であり、血栓除去術群で有意に優れた。 さらに、90日時のNIHSS中央値の補正β係数は-2.4(95%CI:-4.1~-0.8)、Barthelインデックス(0~100点、点が高いほど日常生活動作が良好)の95~100点の達成の補正ORは4.2(95%CI:2.1~8.4)、EQ-5Dスコア(-0.33~1点、点が高いほどQOLが良好)中央値の補正β係数は0.11(95%CI:0.02~0.21)であり、いずれも血栓除去術群で有意に優れた。 24時間後の梗塞容積中央値(16.3 vs. 38.6mL、p=0.02)も、血栓除去術群で有意に小さかった。また、血栓除去術群の再灌流達成率は中央判定で66%、担当医判定では80%だった。 90日時点の死亡率(18.4 vs. 15.5%、p=0.60)および症候性の頭蓋内出血の発症率(1.9 vs. 1.9%、p=1.00)は、両群間に差はなかった。他の重篤な有害事象の発症率も両群間でほぼ同等だった。

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アリピプラゾール、脳卒中後の抑うつに対するメカニズム

 虚血性脳卒中後、うつ病を発症することは少なくない。虚血性脳卒中の発作後、慢性弱ストレス(chronic mild stress:CMS)が加わることにより抑うつに進展するか否かに関し、韓国・釜山大学校のYu Ri Kim氏らは、マウスを用いて検討を行った。その結果、発作後のCMSにより生じるドパミン作動性ニューロン損傷や海馬におけるニューロン新生低下をアリピプラゾールが回復させ、抗うつ作用を発揮する可能性を示唆した。Behavioural Brain Research誌2015年7月号の掲載報告。 マウスを用い、CMS、左中大脳動脈閉塞(MCAO)、MCAO後のCMS(MCAO+CMS)の各種条件下におけるうつ障害を、行動学的および病理組織学的分析により評価した。抑うつスクリーニングテストとしてオープンフィールドテスト、スクロース嗜好性試験、強制水泳試験、モリス水迷路試験を実施した。 主な結果は以下のとおり。・MCAO+CMSマウスはMCAOマウスに比べ、有意な抑うつ行動を示した。・MCAO+CMSマウスはCMSマウスに比べ、強制水泳試験およびモリス水迷路試験において明らかな障害を示した。・病理組織学的分析において、MCAO治療マウスはCMSマウスに比べ、線条体と中脳に顕著な萎縮性変化が認められた。・MCAO+CMSマウスはCMSあるいはMCAO単独治療マウスに比べ、中脳におけるドパミン作動性ニューロンの損傷と線条体および海馬における神経細胞の増殖および分化の減少が顕著に認められた。・MCAO+CMSマウスをアリピプラゾールで治療したところ、評価したすべての抑うつ行動が減少し、とくにモリス水迷路テストにおいてその効果がみられた。・中脳におけるドパミン作動性ニューロンの損傷回復および海馬におけるニューロン新生の増強も示された。関連医療ニュース 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学 難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か 抗精神病薬間で虚血性脳卒中リスクに違いはあるか

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術前CT冠動脈造影、周術期心イベント予測能高まるが…/BMJ

 動脈硬化性疾患、またはそのリスクがある患者で非心臓手術が予定されている患者について、術前にCT冠動脈造影を行うことで、心血管死や術後30日以内の非致死的心筋梗塞発症リスクの予測能が高まることが示された。しかし同時に、そうしたイベントを発症しない人についても、ハイリスクと過剰評価してしまう傾向があることも示された。カナダPopulation Health Research InstituteのTej Sheth氏らが、955例の患者について行った前向きコホート試験で明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年4月22日号掲載の報告より。CT冠動脈造影の結果を4分類 検討は、8ヵ国、12ヵ所の医療機関を通じて、動脈硬化性疾患またはそのリスクがあり、非心臓手術を受けた955例の患者を対象に行われた。 被験者に対し、術前にCT冠動脈造影を行い、その結果を(1)正常、(2)非閉塞(狭窄50%未満)、(3)閉塞(1枝または2枝で狭窄50%以上)、(4)広範囲閉塞(冠動脈左前下行枝近位部を含む2枝、または3枝、もしくは左冠動脈主幹部で狭窄50%以上)の4つに分類した。結果については、左側主要疾患が疑われた場合を除き、医師には伝えなかった。 主要評価項目は、術後30日間の心血管死と非致死的心筋梗塞の複合アウトカムだった。なお、これらを従属変数として、また改訂版心リスク指標(revised cardiac risk index:RCRI)のスコアとCT冠動脈造影の所見を独立変数としてCox回帰分析で評価した。非発症者の約1割について「ハイリスク」と過剰評価も 主要アウトカムは74例(8%)の患者で発生した。 RCRIスコアやCT冠動脈造影の所見を加えた予測モデルの検討で、CT冠動脈造影は、独立した予後予測を提供可能であることが示された(p=0.014、C統計量:0.66)。補正後ハザード比は、非閉塞群が1.51(95%信頼区間:0.45~5.10)、閉塞群2.05(同:0.62~6.74)、広範囲閉塞群が3.76(同:1.12~12.62)だった。 RCRIスコアのみの予測モデルに比べ、CT冠動脈造影の所見を加味したモデルを用いることで、主要アウトカム発生の30日間のリスクカテゴリ(5%未満、5~15%、15%超)が再分類でき、予測が改善されることが示された。具体的に、患者サンプル1,000例における主要アウトカム発症者77例のうち17例について、より適切なハイリスク群へと評価分類することができた(p<0.001)。 一方で同予測モデルでは、主要アウトカムの非発症者923例のうち98例についても、誤ってハイリスクと過剰に予測してしまった。 周術期の心筋梗塞を発症した人のうち、術前に冠動脈に広範囲閉塞が認められた人は31%、閉塞は41%、非閉塞は24%、正常だった人は4%だった。

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日本人難治性てんかん、レベチラセタムは有用か

 静岡てんかん・神経医療センターの井上 有史氏らは、日本人の成人難治性部分てんかん発作患者を対象に二重盲検プラセボ対照検証的試験を行い、レベチラセタム追加投与の有効性と安全性を検討した。その結果、主要有効性解析においてレベチラセタム群とプラセボ群の間で有効性に有意差は認められなかったが、探索的解析においてレベチラセタム3,000mg群はプラセボ群に比べ有意な発作減少が確認されたことを報告した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2015年4月8日号の掲載報告。 日本人の成人難治性部分てんかん発作患者に対するレベチラセタム追加投与の有効性と安全性を検討するため、二重盲検プラセボ対照検証的試験を行った。適格例をレベチラセタム500、1,000、2,000、3,000mg/日群、またはプラセボ群に無作為に割り付け、16週間投与した。主要評価項目は、12週の評価期間における1週間当たりの発作頻度のベースラインからの減少率とした。忍容性についても評価を行った。そして、本結果と過去の無作為化二重盲検試験の結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングを行った401例のうち352例が無作為に割り付けられ、316例が試験を完了した。・1週間当たりの発作頻度のベースラインからの平均減少率は、プラセボ群の12.50%に対し、レベチラセタム500 mg/日群は12.92%、以下1,000mg/日群18.00%、2,000mg/日群11.11%、3,000mg/日群31.67%であった。・過去に実施された試験と異なり、レベチラセタム1,000および3000mg群とプラセボ群を比較した主要有効性解析において、統計学的有意差は認められなかった(p=0.067)。 ・探索的解析において、レベチラセタム3,000mg群とプラセボ群の発作減少率の差は14.93%(95%信頼区間:1.98~27.64、p=0.025)であった。・レベチラセタムの、すべての用量群で忍容性は良好であった。・2件の試験における主な違いは、今回の試験でプラセボ群の反応性が高かったことであった。・結果を踏まえて著者は「主要有効性解析では統計学的有意差には至らず、それはプラセボ群における予想外の高い反応によるものであった。とはいえ、探索的解析によりレベチラセタム3000mg/日投与は、わずかながら難治性部分てんかん発作患者に有効であることが示された」とまとめている。■関連記事難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か日本人、レベチラセタム静注の薬物動態レベチラセタム、部分てんかん患者に対する1年間の使用結果レビュー:聖隷浜松病院抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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高齢者の喫煙リスク~50万例でのエビデンス/BMJ

 高齢者においては、喫煙は心血管イベントや心血管死の独立した強力なリスク因子であるとの従来のエビデンスを、あらためて裏付ける知見が、ドイツがん研究センター(DKFZ)のUte Mons氏らCHANCESコンソーシアム(http://www.chancesfp7.eu/)が実施したメタ解析で得られた。一般に、喫煙は疾患や死亡の修正可能な主要リスク因子であり、禁煙は喫煙関連リスクの抑制に有効とされる。一方、心血管イベントのほとんどが高齢者で発現しており、この年齢層のデータを代用して一般化されているが、高齢者に焦点を当てた検討は少ないという。BMJ誌オンライン版2015年4月20日号掲載の報告より。25コホートのデータをメタ解析、RAPを算出 1964年に、男性喫煙者は冠動脈心疾患による死亡リスクが非喫煙者よりも高いとの研究結果が米国で初めて報告されて以降、その因果関係を支持する強力なエビデンスが蓄積されてきた。この50年間に、先進国ではタバコの消費量の減少に伴い心血管死亡率が低下しているものの、心血管疾患は主要な死亡原因であり続けている。 心血管疾患の発症率は加齢と共に増加し、イベントの多くは高齢者にみられる。現在の人口統計学的な傾向を考慮すると、心血管疾患の疾病負担を抑制するには、高齢者のリスク因子の管理による予防がきわめて重要とされる。 そこで、CHANCESコンソーシアムは、60歳以上のコホートにおける心血管死、急性冠イベント、脳卒中イベントに及ぼす喫煙および禁煙の影響の評価を目的にメタ解析を行った(欧州委員会DG-RESEARCHの第7次枠組計画などの助成による)。従来の疫学的な相対リスクに加え、心血管死の「リスク進展期間(risk advancement period:RAP)」を算出した。 喫煙のリスクや禁煙の効果を一般社会に伝えることは、禁煙の促進に有効な手段であるが、一般人にとって相対リスクは把握が難しい可能性があり、リスク情報伝達(risk communication)においてRAPが有用な方法として提唱されている。RAPは、「あるリスク因子に曝露した集団において、曝露していない集団と比較し、そのリスク因子に起因するイベント(たとえば疾患の発症や死亡)の発生が早まる期間」と定義される。 解析には、CHANCESコンソーシアムに参加する25のコホート(欧米23ヵ国)のデータを使用した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いてコホートごとに解析を行い、メタ解析により統合した。喫煙者は心血管死が5.5年早まる、禁煙はリスク抑制に有効 60歳以上の50万3,905例が解析の対象となった。60~69歳が86.6%、70歳以上が13.4%で、男性が56.0%であり、生涯非喫煙者が40.2%、元喫煙者が47.4%、現喫煙者は12.4%であった。このうち3万7,952例が心血管疾患で死亡した。5,966例が急性冠イベントを、5,497例が脳卒中を発症した。 ランダム効果モデルによる非喫煙者に対する喫煙者の心血管死のハザード比(HR)は2.07(95%信頼区間[CI]:1.82~2.36)、元喫煙者のHRは1.37(95%CI:1.25~1.49)であり、喫煙者、元喫煙者ともリスクが有意に高かった。 RAPは喫煙者が5.50年(95%CI:4.25~6.75)、元喫煙者は2.16年(95%CI:1.38~2.93)であり、いずれも心血管死が非喫煙者に比べ有意に早く発生した。また、喫煙者の心血管死のリスクはタバコの消費量が多いほど高く、元喫煙者のリスクは禁煙開始以降の時間が長いほど低かった。 これら喫煙関連の心血管死の相対リスクと同様のパターンが、急性冠イベントと脳卒中イベントにも認められたが、心血管死よりもわずかにリスクが低かった。 著者は、「これらの知見は、高齢者でも喫煙が心血管イベントおよび心血管死の独立の強力なリスク因子であるとの従来のエビデンスを支持し、さらに発展させるものである」とし、「禁煙は依然として過度のリスクの抑制に有効であることが示された」と指摘している。

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βラクタム薬アレルギー申告は不確実?

 先行研究の2次医療における研究で、「βラクタム薬に対してアレルギーがある」との申告の85%超が、アレルギー検査で確認されたものではなかったことが示されている。日常診療で、もし患者がβラクタム薬アレルギーありと申告したら、第2選択の抗菌薬を処方せざるを得ないだろう。βラクタム薬アレルギーの過大評価は、狭域抗菌薬の適切な使用を妨げるとともに、医療費の増加や耐性菌の出現を招くことになる。そこでオランダ・Julius Center for Health Sciences and Primary CareのOdette A E Salden氏らは自国の現状について調査し、カルテの記載に基づくβラクタム薬アレルギーの有病率は2%であったが、アレルギーの徴候や症状に関する記載がない患者が多く、診断はほとんどの患者で不確実であることを報告した。著者は、「プライマリケアでは、βラクタム薬アレルギーをスクリーニングするアルゴリズムを用いて、より良い記録を行う必要がある」と提言している。Family Practice誌オンライン版2015年4月7日号の掲載報告。 研究グループは、オランダのプライマリケアにおけるβラクタム薬アレルギーの記録と過剰診断を評価することを目的に、レトロスペクティブ研究を行った。 プライマリケアを受診した8,288例を対象に、プライマリケア国際分類(ICPC)を用いてアレルギーを有する患者を特定し、その患者のカルテからアレルギーの徴候・症状および患者背景などについてデータを得るとともにアンケート用紙を送付した。 アレルギーの可能性については、これらの情報を複合参照基準に照らし合わせ、2人の研究者が独立して判定した。 主な結果は以下のとおり。・カルテに「βラクタム薬アレルギーあり」と記載されていたのは163例(2%)であった。・このうち51.5%の患者では、カルテにアレルギー反応の特徴が何も記載されていなかった。・複合参照基準に基づくと、19例(11.7%)はアレルギーではないと判定された。・βラクタム薬アレルギーありと記載されていた患者の特徴は、女性、年齢が5歳以上、喘息・アレルギー・皮膚疾患の合併であった。

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うつ病と抗うつ薬治療は乳がんリスクに影響しているのか

 うつ病および抗うつ薬の使用がそれぞれ乳がんのリスクを高めるという仮説があるが、これらに同時に曝露した場合を考慮した先行研究はなく、うつ病によるリスク上昇が抗うつ薬使用に起因したものか、あるいはそうでないのかは未解決であった。米国マサチューセッツ大学アマースト校のKW Reeves氏らは、うつ病と抗うつ薬の使用を同時に考慮したモデルを用いて、乳がんリスクに及ぼす影響を検討した。その結果、うつ病は乳がんリスクと関連しなかったこと、抗うつ薬がわずかであるが乳がんのリスクを増加させ、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によるリスク上昇が確認されたことを報告した。Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention誌2015年4月号の掲載報告。うつ病と乳がんリスクとの関連は認められなかったが抗うつ薬使用は有意にリスク増加 検討は、前向きコホートである米国看護師健康調査(Nurses’ Health Study)に2000年初頭に登録された女性7万7,482例の、うつ病と抗うつ薬使用に関するデータを使用して行われた。医師によるうつ病の診断歴、特定の種類の抗うつ薬使用について自己報告をしてもらい、2012年の1年間に乳がんと自己報告された症例を精査し、浸潤性がんと確定された症例のみをアウトカムに含めた(2,567例)。ロジスティック回帰モデルを用い、ベースライン時のうつ病ならびに抗うつ薬使用の乳がんリスクに及ぼす影響を、個々におよび相互調整後の両面から評価した。 うつ病ならびに抗うつ薬使用の乳がんリスクに及ぼす影響を評価した主な結果は以下のとおり。・被験者の平均年齢は66.2(SD 7.1)歳であった。臨床的にうつ病と診断された患者は8.9%で、8.7%が抗うつ薬を使用していた。・年齢、BMI、閉経状況で調整後、うつ病と抗うつ薬使用それぞれの個別モデルにおいて、うつ病(オッズ比[OR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.81~1.08)あるいは抗うつ薬使用(同:1.07、0.93~1.22)と、乳がんリスクとの間に統計的に有意な関連は認められなかった。・うつ病と抗うつ薬使用を1つのモデルに同時に組み込んだ場合、うつ病と乳がんリスクとの関連は依然認められなかったが(OR:0.87、95%CI:0.74~1.03)、抗うつ薬使用は有意なリスク増加と関連していた(同:1.15、0.98~1.35)。ただし、その差は小さく、有意差は境界線上であった。・抗うつ薬使用と乳がんリスクとの関連は、SSRIにおいて常に確認されたが(OR:1.16、95%CI:0.96~1.39)、他の種類の抗うつ薬では明らかではなかった(同:1.07、0.85~1.35)。・これら最初に得られた結果は、うつ病が乳がんリスクと関連しないことを示しているが、SSRI使用とリスクのわずかな上昇との関連は除外できなかった。 結果を踏まえて著者は、「さらなる分析でフォローアップ時の曝露情報が更新され、閉経状況やホルモン受容体サブタイプによる関連性の評価が可能となると思われる」と述べ、また「うつ病と抗うつ薬使用の乳がんリスクに及ぼす影響が明確になれば、うつ病や抗うつ薬を使用する数百万の女性に重要な情報を提供しうる」とまとめている。関連医療ニュース 片頭痛予防にSSRIやSNRIは支持されない がん患者のうつ病を簡単にスクリーニングするには SSRIは月経前症候群の治療に有用か?

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心房粗動の患者さんへの説明

心房粗動監修:公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下 武志氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?・洞結節由来の心房波が消え、複数あるいは単一の興奮波が心房の中を旋回しています。・心房粗動が起こると、1分間に250~350回心房が興奮します。通常の心臓はこのように興奮が伝わりますが…①洞結節心房粗動では、心房が速い速度で細かく収縮するため、外から見るとけいれんしているような状態になります。①洞結節②房室結節②房室結節③ヒス束③ヒス束④脚④右脚⑤プルキンエ線維プルキンエ線維Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?◆通常の心臓は興奮が伝わり規則正しく収縮しますが…トントントントン◆心房粗動では、心房細動よりは低いものの、速い速度で細かく収縮します。しかし、収縮の一部が心室一定に伝わるため、心室の収縮は規則的です。そのため、脈拍は1分間に150回、75回など一定になることが多いです。トントントントントントン脈拍は一定であることが多いです。無症状の方から、動悸、息切れなどの症状を訴える方までさまざまです。心房の収縮心室の収縮(脈)Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?・心房粗動自体が直接命に関わることはありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こすことで間接的に悪影響を及ぼすため、治療が必要です。血栓が血管を閉塞脳梗塞心房細動や心房粗動では、心房がけいれんするように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため心房内 の血液の流れがよどみ、心房の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓から動脈に沿って、脳 の中の大きな血管を突然閉塞するのが心原性脳塞栓症です。心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍といわれています。この塞栓症を予防することが心房細動や心房粗動治療の最も重要な目的です。血液がよどむ→血栓ができる→血栓が全身に飛ぶ(運ばれる)→脳梗塞、心筋梗塞などの塞栓症Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動の治療は・抗不整脈薬はあまり効果がありませんが、カテーテルアブレーションは高い効果(根治確率90%以上)が認められます。そのため、治療はカテーテルアブレーションが主体となります。・心房粗動が長い間続いているなど脳梗塞を起こす危険がある場合は、血栓が起きないように抗血栓薬を飲みます。高周波通電カテーテルアブレーション電極アブレーションカテーテル高周波発生装置カテーテルアブレーション血管を通して心臓まで細い管(カテーテル)を入れ、不整脈の原因となっている場所を探して、その部位を低温やけどさせ、不整脈の原因を取り除くという治療です。心房粗動のほとんどは右心房が発生部位であることがわかっています。静脈からカテーテルを挿入すると、すぐに右心房に到達し、治療も短時間で終了します。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.生活上の注意◆カテーテルアブレーションで根治した場合、その後の治療や管理は不要です。◆長期的には心房細動を発生することもありますので、定期的な検査は受けたほうがよいでしょう。【根治しなかった場合は、下記に注意しましょう】◆高血圧、糖尿病、心臓の病気などがあると脳梗塞を起こしやすくなるので、しっかり管理してください。◆睡眠不足、ストレス、アルコールは不整脈を起こしやすくしますので注意してください。◆生活改善を行っても症状が気になる場合は、薬物療法を行い、症状を少なくします。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.抗血栓薬による脳梗塞予防◆血栓の形成を抑制する薬剤を用いた治療です。◆ワルファリンは血液の凝固に必要なビタミンKを減らすことによって血栓ができるのを抑えます。◆薬の必要量には個人差があり、また他の薬剤や食事の内容に影響されるため、適正な量を決めるために受診のたびに血液検査を行う必要があります。◆ビタミンKを多く含む納豆や青汁、クロレラといった食品を食べると薬が効かなくなります。最近では、そのような食事制限の必要のない新しい抗凝固薬も使用できるようになっています。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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