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TN乳がんへの術前CBDCA+PTXにアテゾリズマブ追加でpCR改善/第II相試験

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前療法として、アントラサイクリンを含まないカルボプラチン(CBDCA)+パクリタキセル(PTX)にアテゾリズマブの追加を評価する無作為化第II相試験において、病理学的完全奏効(pCR)率の有意な増加が示された。米国・ワシントン大学のFoluso O. Ademuyiwa氏らが、NPJ Breast Cancer誌2022年12月30日号に報告。 これまで、転移を有するPD-L1陽性TNBCを対象としたIMpassion130試験ではnab-PTXへのアテゾリズマブ追加による無増悪生存期間と全生存期間の改善、また早期TNBCを対象としたIMpassion031試験ではアテゾリズマブとアントラサイクリンおよびタキサンをベースとした術前化学療法によるpCR改善が報告されている。 本試験では、StageII/IIIのTNBC 67例(年齢中央値:52歳、範囲:25~78歳)をArm A(CBDCA+PTX)22例、Arm B(CBDCA+PTX+アテゾリズマブ)45例に無作為に割り付け、アテゾリズマブ追加でpCR率および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合が増加するかどうかを、修正ITT集団(評価可能で1回以上併用療法を受けた全患者)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・修正ITT集団において、pCR率はArm Aで18.8%(95%信頼区間[CI]:4.0~45.6)、Arm Bで55.6%(同:40.0~70.4)だった(群差の推定値:36.8%、95%CI:8.5~56.6、p=0.018)。・Grade3以上の治療関連有害事象は、Arm Aで62.5%、Arm Bで57.8%に発現した。・TILの割合は、ベースラインから第1サイクルまで、Arm A(平均±SD:0.6%±21.0%)およびArm B(同:5.7%±15.8%)ともわずかに増加した。・TILの割合の中央値は、pCR例(24.8%)で非pCR例(14.2%)より高かった(p=0.02)。 本試験において、術前化学療法のみよりアテゾリズマブ追加でpCR率が有意に高かった。著者らは「非アントラサイクリンベースの化学療法+免疫療法は、早期TNBC治療の代替オプションとなる可能性がある」としている。

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正しいがんの原因への認識、ワクチン拒否・代替医療・陰謀論支持者で低調/BMJ

 がんの原因に対する認識傾向について、スペイン・Catalan Institute of OncologyのSonia Paytubi氏らが、約1,500人を対象に行ったオンライン横断調査の結果、ほぼ半数が「何もかもががんの原因になるように思える」と感じていることが明らかになった。著者は、「大量の情報が、事実に基づく原因と根拠のない原因を見分けることを困難にしていることが浮き彫りになった」と述べている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン拒否者、代替医療や陰謀論を支持する人々では、それぞれの対照群と比べ、根拠のないがんの原因を支持する傾向が高く、事実に基づくがんの原因を支持する傾向は低かった。著者は、「これらの結果は、誤ったデジタル情報と誤った健康認識が関連していることを示すものであり、予防可能ながん率を示している可能性もある」と述べている。BMJ誌2022年12月21日クリスマス特集号「DON’T BELIEVE THE HYPE(誇大宣伝を信じるな)」掲載の報告。ネット上フォーラムやがん予防ウェブサイトからデータ収集 研究グループは、インターネット上のフォーラム「ForoCoches」(スペイン語)、「Reddit」(英語)、「4Chan」(英語)、「HispaChan」(スペイン語)、およびがん予防に関するスペイン語ウェブサイト(mejorsincancer.org)から、2022年1~3月にかけてデータを収集し、ワクチン懐疑論や陰謀論への公言とがん予防に対する態度について、横断研究を行った。 Cancer Awareness Measure(CAM)とCancer Awareness Measure Mythical Causes Scale(CAM-MYCS)を用いて、がんに対する考え(cancer beliefs)を評価した。事実に基づくがんの原因に関する認識度、CAMスコア中央値63.6% 回答者1,494人のうち、COVID-19ワクチン非接種者は209人、従来医療よりも代替医療を好む人は112人、天動説またはレプティリアン(ヒト型爬虫類の異星人)陰謀説の信者は62人だった。 事実に基づくがんの原因に関する認識度は、根拠のない原因への認識度より高かった(CAMスコア中央値:63.6% vs.41.7%)。最も支持されていた根拠のないがんの原因は、食品添加物や人工甘味料の摂取、ストレス、遺伝子組み替え食品の摂取だった。 ワクチン非接種者、代替医療支持者、陰謀論支持者の3群の、事実に基づくがんの原因の特定率中央値は54.5%だった。一方、3群の対照群では63.6%だった(それぞれ、p=0.13、p=0.04、p=0.003)。根拠のないがんの原因の特定率中央値は、ワクチン非接種者群が25.0%、代替医療支持者群が16.7%、陰謀論支持者群が16.7%だったのに対し、各対照群は中央値41.7%と高率だった(いずれも、補正後p<0.001)。 「何もかもががんの原因になるように思える」に同意した人の割合は、全体では673人(45.0%)だった。同割合は、ワクチン非接種者群は44.0%、陰謀論支持者群は41.9%、代替医療支持者群は35.7%で、各対照群(45.2%、45.7%、45.8%)と有意差はなかった。

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lecanemab、FDAがアルツハイマー病治療薬として迅速承認/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは2023年1月7日付のプレスリリースで、可溶性(プロトフィブリル)および不溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体lecanemabについて、米国食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したことを発表した。 本承認は、lecanemabがADの特徴である脳内に蓄積したAβプラークの減少効果を示した臨床第II相試験(201試験)の結果に基づくもので、エーザイでは最近発表した大規模なグローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータを用い、フル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請(sBLA)をFDAに対して速やかに行うとしている。lecanemabの米国における適応症<適応症> lecanemabの適応症はアルツハイマー病(AD)の治療であり、lecanemabによる治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の患者において開始すること。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性に関するデータはない。本適応症は、lecanemabの治療により観察されたAβプラークの減少に基づき、迅速承認の下で承認されており、臨床的有用性を確認するための検証試験データが本迅速承認の要件となっている。<用法・用量(対象者・投与方法・ARIAのモニタリング)> 治療開始前にAβ病理が確認された患者に対して、10mg/kgを推奨用量として2週間に1回点滴静注。lecanemabによる治療の最初の14週間は、アミロイド関連画像異常(ARIA)についてとくに注意深く患者の様子を観察することが推奨される。投与開始前に、ベースライン時(直近1年以内)の脳MRI、および投与後のMRIによる定期的なモニタリング(5回目、7回目、14回目の投与前)が行われる。<副作用> lecanemabの安全性は、201試験においてlecanemabを少なくとも1回投与された763例で評価されている。lecanemab(10mg/kg)を隔週投与された被験者(161例)の少なくとも5%に報告され、プラセボ投与被験者(245例)より少なくとも2%高い発生率であった。主な副作用は、infusion reaction(lecanemab群:20%、プラセボ群:3%)、頭痛(14%、10%)、ARIA浮腫/滲出液貯留(ARIA-E;10%、1%)、咳(9%、5%)および下痢(8%、5%)だった。lecanemabの投与中止に至った最も多い副作用はinfusion reactionであり、lecanemab群は2%(161例中4例)に対して、プラセボ群は1%(245例中2例)だった。lecanemabの重要な安全情報<重要な安全情報(警告・注意事項)>アミロイド関連画像異常(ARIA) lecanemabはARIAとして、MRIで観察されるARIA-E、あるいはARIA脳表ヘモジデリン沈着(ARIA-H)として微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症を引き起こす可能性がある。ARIAは通常無症候であるが、まれに痙攣、てんかん重積状態など、生命を脅かす重篤な事象が発生することがある。ARIAに関連する症状として、頭痛、錯乱、視覚障害、めまい、吐き気、歩行障害などが報告されている。また、局所的な神経障害が起こることもある。ARIAに関連する症状は、通常、時間の経過とともに消失する。[ARIAのモニタリングと投与管理のガイドライン]・lecanemabによる治療を開始する前に、直近1年以内のMRIを入手すること。5回目、7回目、14回目の投与前にMRIを撮影すること。・ARIA-EおよびARIA-Hを発現した患者における投与の推奨は、臨床症状および画像判定による重症度によって異なる。ARIAの重症度に応じて、lecanemabの投与を継続するか、一時的に中断するか、あるいは中止するかは、臨床的に判断すること。・ARIAの大半はlecanemabによる治療開始後14週間以内にみられることから、この期間はとくに注意深く患者の状態を観察することが推奨される。ARIAを示唆する症状がみられた場合は臨床評価を行い、必要に応じてMRIを実施すること。MRIでARIAが観察された場合、投与を継続する前に慎重な臨床評価を行うこと。・症候性ARIA-E、もしくは無症候でも画像判定によって重度のARIA-Eとされた場合に投与を継続した経験はない。無症候でも画像判定によって軽度から中等度のARIA-Eとされた場合に投与を継続した症例に関する経験は限られている。ARIA-Eの再発症例への投与データは限られている。[ARIAの発現率]・201試験において、lecanemab群の3%(5/161例)に症候性ARIAが発現した。ARIAに伴う臨床症状は、観察期間中に80%の患者で消失した。・無症候性ARIAを含めると、ARIAの発現率はlecanemab群の12%(20/161例)、プラセボ群の5%(13/245例)であった。ARIA-Eは、lecanemab群の10%(16/161例)、プラセボ群の1%(2/245)で観察された。ARIA-Hは、lecanemab群の6%(10/161例)、プラセボ群の5%(12/245例)で観察された。プラセボと比較して、lecanemab投与によるARIA-Hのみの発現率の増加は認められなかった。・直径1cmを超える脳内出血は、lecanemab群の1例で報告されたが、プラセボ群では報告されなかった。他の試験では、lecanemabの投与を受けた患者において、致死的事象を含む脳内出血の発生が報告された。[アポリポタンパク質Eε4(ApoEε4)保有ステータスとARIAのリスク]・201試験において、lecanemab群の6%(10/161例)がApoEε4ホモ接合体保有者、24%(39/161例)がヘテロ接合体保有者、70%(112/161例)が非保有者であった。・lecanemab群において、ApoEε4ホモ接合体保有者はヘテロ接合体保有者および非保有者よりも高いARIAの発現率を示した。lecanemabを投与された患者で症候性ARIAを発症した5例のうち4例はApoEε4ホモ接合体保有者であり、うち2例は重度の症状が認められた。lecanemab投与を受けた被験者で、ApoEε4ホモ接合体保有者ではApoEε4ヘテロ接合体保有者や非保有者と比較して症候性ARIAおよびARIAの発現率が高いことが、他の試験でも報告されている。・ARIAの管理に関する推奨事項は、ApoEε4保有者と非保有者で異ならない。・lecanemabによる治療開始を決定する際に、ARIA発症リスクを知らせるためにApoEε4ステータスの検査が考慮される。[画像による所見]・画像による判定では、ARIA-Eの多くは治療初期(最初の7回投与以内)に発現したが、ARIAはいつでも発現し、複数回発現する可能性がある。lecanemab投与によるARIA-Eの画像判定による重症度は、軽度4%(7/161例)、中等度4%(7/161例)、重度1%(2/161例)であった。ARIA-Eは画像による検出後、12週までに62%、21週までに81%、全体で94%の患者で消失した。lecanemab投与によるARIA-H微小出血の画像判定の重症度は、軽度4%(7/161例)、重度1%(2/161例)であった。ARIA-Hの患者10例のうち1例は軽度の脳表ヘモジデリン沈着症を有していた。[抗血栓薬との併用と脳内出血の他の危険因子について]・201試験では、ベースラインで抗凝固薬を使用していた被験者を除外した。アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬の使用は許可された。また、臨床試験中に併発事象の処置のため4週間以内の抗凝固薬を使用する場合は、lecanemabの投与を一時的に中断した。・抗血栓薬を使用した被験者はほとんどがアスピリンであり、他の抗血小板薬や抗凝固薬の使用経験は限られており、これらの薬剤の併用時におけるARIAや脳内出血のリスクに関しては結論づけられていない。lecanemab投与中に直径1cmを超える脳内出血が観察された症例が報告されており、lecanemab投与中の抗血栓薬または血栓溶解薬(組織プラスミノーゲンアクチベーターなど)の投与には注意が必要である。・さらに、脳内出血の危険因子として、201試験においては以下の基準により被験者登録を除外している。直径1cmを超える脳出血の既往、4個を超える微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症、血管性浮腫、脳挫傷、動脈瘤、血管奇形、感染病変、多発性ラクナ梗塞または大血管支配領域の脳卒中、重度の小血管疾患または白質疾患。これらの危険因子を持つ患者へのlecanemabの使用を検討する際には注意が必要である。infusion reaction・lecanemabのinfusion reactionは、lecanemab群で20%(32/161例)、プラセボ群で3%(8/245例)に認められ、lecanemab群の多く(88%、28/32例)は最初の投与で発生した。重症度は軽度(56%)または中等度(44%)だった。lecanemab投与患者の2%(4/161例)において、infusion reactionにより投与が中止された。infusion reactionの症状には、発熱、インフルエンザ様症状(悪寒、全身の痛み、ふるえ、関節痛)、吐き気、嘔吐、低血圧、高血圧、酸素欠乏症がある。・初回投与後、一過性のリンパ球数の減少(0.9×109/L未満)がプラセボ群の2%に対して、lecanemab群の38%に認められ、一過性の好中球数の増加(7.9×109/Lを超える)はプラセボ群の1%に対して、lecanemab群の22%で認められた。・infusion reactionが発現した場合には、注入速度を下げ、あるいは注入を中止し、適切な処置を開始する。また次回以降の投与前に、抗ヒスタミン薬、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ステロイドによる予防的投与が検討される場合がある。

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脂質異常症(高脂血症)とは?

脂質異常症(高脂血症)とは?血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。脂質の異常には、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常があります。これらはいずれも、動脈硬化の促進と関連します1)。脂質異常症の診断基準2)LDLコレステロールHDLコレステロール140mg/dL以上高LDLコレステロール血症120~139mg/dL境界域高LDLコレステロール血症40mg/dL未満低HDLコレステロール血症悪玉が多いタイプ善玉が少ないタイプ150mg/dL以上トリグリセライド (空腹時採血)(中性脂肪)175mg/dL以上高トリグリセライド血症中性脂肪が多いタイプ(随時採血)non HDLコレステロール170mg/dL以上高non HDLコレステロール血症(総コレステロール-HDLコレステロール)150~169mg/dL境界域高non HDLコレステロール血症1)厚生労働省 e-ヘルスネット善玉以外が多いタイプ脂質異常症(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html)2)日本動脈硬化学会編. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p22 表2-1より一部改変Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第143回 アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」FDA迅速承認を聞いて頭をもたげたある疑問、「結局高くつくのでは?」

満を持してエーザイが放つレカネマブは成功するか?こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年末年始は愛知県の実家に帰省し、少々ボケてきた91歳の父親のマイナポイント申請と、買い与えたiPhoneの使い方指導を行って来ました。マイナポイントの申請はiPhoneを使ってなんとかできたのですが、超高齢者がスマホを使いこなすのはなかなかハードルが高いなと実感した次第です。最大の障壁はタッチパネルです。スマホに電話がかかってきても、タッチパネルをタップしてうまく受けられないのです。指の爪の部分でタッチしてしまったり、押す部分がズレてしまったり。ある日などは指先を怪我したとかで絆創膏を貼った指でタッチしようとしていました。電話を正しく取れる成功率は4割ほど。ま、認知症にもならず、90歳を超えてスマホを使ってみようという意欲だけは買いますが、この先どこまで使えるようになるか。ちなみに父親は万歩計代りにもなる「フィットネス」アプリ(何も操作しなくても歩いた距離と歩数が記録される)だけはいたく気に入ったようでした。さて、今回は1月6日(現地時間)に米食品医薬品局(FDA)が迅速承認した、エーザイと米国バイオジェン社が共同開発しているアルツハイマー病治療薬・レカネマブ(LEQEMBI)について書いてみたいと思います。2021年6月に米国で承認されたアデュカヌマブについては、本連載でも、「第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)」、「第63回 同(後編)」、「第91回 年末年始急展開の3事件、『アデュカヌマブ』『三重大汚職』『町立半田病院サイバー攻撃』のその後を読み解く」などで何度か取り上げました。薬価が高額だったことや治験データの不十分さなどから、保険適用が治験参加者に限られることとなり、普及は失敗に終わっています。アデュカヌマブの挫折を乗り越え、満を持してエーザイが放つレカネマブは果たして成功するのでしょうか。18ヵ月の治療で27%の進行抑制レカネマブは、アルツハイマー病(AD)の原因物質とされるアミロイドβプラークに対するヒト化IgG1モノクローナル抗体で、アミロイドβの脳内への蓄積を抑制する効果があったとされています。今回の迅速承認は、レカネマブがADの特徴である脳内に蓄積したアミロイドβプラークの減少効果を示した臨床第II相試験(201試験)の結果に基づくものです。なお、昨年NEJM誌に掲載された早期ADを対象とした臨床第III相Clarity AD検証試験の結果1)では、レカネマブ投与は、投与18ヵ月時点における認知機能・全般症状の評価項目について、プラセボに対して悪化抑制を示し(18ヵ月の治療でCDR-SB[Clinical Dementia Rating Sum of Boxes]において27%の進行抑制など)、一方で有害事象は想定の範囲内だったとのことです。なお迅速承認が下りたその日のうちに、FDAに対し完全承認に向けた申請を行っています。Aβ検査がボトルネックに今回承認された適応症は、早期のアルツハイマー病(AD)の治療です。治療開始前にアミロイドβの病理所見が確認された患者に対し、10mg/kgを推奨用量として2週間に1回点滴静注するとしています。米国では「LEQEMBI(レケンビ)」の商品名で1月23日の週に発売を始めるとのことです。1月7日午後に東京で開かれたエーザイの投資家説明会で内藤 晴夫最高責任者は「MCI(MCI due to AD:アルツハイマー病による軽度認知障害)と軽度ADのうち、実際の医療機関で早期ADとの診断を受け、さらにアミロイドPET検査またはCSF腰椎穿刺検でアミロイドβ陽性と判定された患者が投与対象となる。米国では今後3年間で10万人が対象。2030年までに世界で250万人が対象になる」と述べました。内藤氏は同薬の普及にあたってはアミロイドβ検査がボトルネックになるとの見解を示し、「より簡便な血液検査の開発・普及に期待する」と話していました。年間卸業社購入価格を2万6,500ドル(約350万円)に設定この日の説明会で内藤氏は、米国における価格設定についてその考え方を説明しました。それによれば、レカネマブの米国における治療を受ける患者1人当たりの社会的価値は年間3万7,600ドルと見積もる一方、年間卸業社購入価格(WAC:Wholesale Acquisition Cost)を2万6,500ドル(約350万円)と1万ドル以上安価に設定したとのことです。内藤氏は「より幅広い当事者様アクセスの促進、経済的負担の軽減、医療システムの持続可能性への貢献を目指しての設定」と話していました。米国の高齢者向け公的保険メディケア加入者の実質的な自己負担額は1日あたり数ドル〜14.5ドルだそうです。QALY(Quality-Adjusted Life Year:質調整生存年)などを使った算出式は複雑過ぎて私にはよく理解できませんでしたが、アデュカヌマブの価格設定においては米国のアルツハイマー病の支援団体から批判が噴出したことから、相当神経を使って価格設定を行ったということは伝わってきました。日本でも「一日も早い申請」を目指す気になる日本での発売時期の見込みについて内藤氏は明言を避けました。ただ、PMDAとの話し合いはすでに進めているとのことで、「一日も早い申請」を目指すとのことでした。仮に日本で承認されたとしても、やはりPET検査や腰椎穿刺検などによる病理所見の確認が大きな障壁になりそうです。また、米国ではADによるMCIと軽度ADが対象ですが、日本でもMCIが保険適用になるかも注目ポイントとなります。日本の保険診療上、MCIは疾患ではなく現状使用できる薬剤はありません(MCIはドネペジルも保険で使えません)。そう考えると、承認後も広く使われる薬になるには、それなりの時間がかかりそうです。患者対応やケアはこれまで以上に後回しにされる危険性さて、アデュカヌマブが米国で承認された1年半前、私はこの連載の「第63回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(後編)」で、「アデュカヌマブが承認されたとしても、医師たちは『どういう患者に使えるか』『アミロイドβの蓄積はどうか』といった診断面ばかりに目が行き、患者対応やケアはこれまで以上に後回しにされる危険性があります。『患者を診ず病気しか診ない』どころか、『患者を診ず検査値しか見ない』というわけです」と書きました。この心配はレカネマブについても当てはまります。患者の症状や行動を見ず、糖尿病のHbA1cのようにアミロイドβの値ばかり気にする医師が増えそうです。そしてさらに、内藤氏の「レカネマブの米国における治療を受ける患者1人当たりの社会的価値は年間3万7,600ドル」との発言を聞いて、新たな疑問も頭をもたげてきました。ADの罹患期間を長くしてしまい最終的に医療費・介護費は高くつくのではそれは、「ADの進行を遅らせるということは、結果その人のADの罹患期間を長くしてしまい、最終的にその人にかかる医療費は高くついてしまうのではないか」ということです。軽度ADの人のレカネマブ投与中の社会的価値は確かに上がるかもしれませんが、いずれ中等度・重度に移行し、上がった分は結局はチャラになってしまい、罹患期間が長くなることでむしろトータルの医療費・介護費はかさむ結果になると思うのですが、皆さんいかがでしょう。この疑問を、医薬品開発に詳しい知人の記者にぶつけたら、「アミロイドβをターゲットとした治療薬はそもそも根本治療ではないのだから、そうした疑問は昔からある。でも、今できるのはそこしかないので、次のAD治療薬のステージに行くためにもレカネマブ承認の意味はある」と話していました。全体として、投資家含め、医薬品産業畑の人たちはレカネマブ登場に好意的過ぎる印象です。私は父親のボケ抑制のために、せいぜいスマホ訓練を地道に続けようと思いました。参考1)H van Dyck C, et al. N Engl J Med. 2023;388:9-21.

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HER2+乳がん脳転移例、tucatinib追加でOSを約9ヵ月延長(HER2CLIMB)/JAMA Oncol

 HER2陽性(ERBB2+)転移乳がん(MBC)患者の最大50%が脳転移を有し、予後不良とされている。脳転移症例を含むHER2+MBCに対するトラスツズマブ、カペシタビンへのtucatinib追加投与の有効性を検討したHER2CLIMB試験について、探索的サブグループ解析の最新フォローアップデータを、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏らがJAMA Oncology誌オンライン版2022年12月1日号に報告した。 今回の探索的サブグループ解析の評価項目は、脳転移症例における全生存期間(OS)およびCNS無増悪生存期間(CNS-PFS)、ベースライン時点で測定可能な頭蓋内病変を有する症例における頭蓋内奏効率(ORR-IC)および頭蓋内奏効期間(DOR-IC)、全症例における脳内新病変の非出現期間など。OSのみ事前に設定されていた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点で、612例中291例(47.5%)が脳転移を有していた。・脳転移症例の年齢中央値は52歳(22~75)、289例(99.3%)が女性だった。・追跡期間中央値29.6ヵ月(0.1~52.9)において、OS中央値はtucatinib併用群21.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:18.1~28.5)vs.プラセボ併用群12.5ヵ月(95%CI:11.2~16.9)となり、9.1ヵ月延長した。・tucatinib併用群ではプラセボ併用群と比較して、CNS-PFS(9.9ヵ月vs.4.2ヵ月)およびORR-IC(47.3% vs.20.0%)においてより高い臨床的有用性を示した。・DOR-ICは、8.6ヵ月(95%CI:5.5~10.3)vs.3.0ヵ月(95%CI:3.0~10.3ヵ月)だった。・全症例における脳内新病変の非出現期間中央値は、tucatinib併用群24.9ヵ月vs.プラセボ併用群13.8ヵ月となり、11.1ヵ月延長した。最初の進行部位となる新たな脳病変の発生または死亡リスクは、tucatinib併用群でプラセボ併用群に対して45.1%減少した(ハザード比[HR]:0.55、95%CI:0.36~0.85、p=0.006)。 著者らは、tucatinibとトラスツズマブおよびカペシタビンの併用は、新たな脳病変の発生リスクを低減しながらOSを改善することが明らかとなり、脳転移症例を含むHER2+MBC患者に対するこの治療選択肢の重要性がさらに支持されることになったとまとめている。

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定量化が困難な冠動脈疾患、機械学習で可能に/Lancet

 冠動脈疾患のバイナリ診断では、疾患の複雑性が保持されず、重症度や死亡リスクを定量化できないため、冠動脈疾患の定量的マーカーの確立が求められている。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のIain S. Forrest氏らは、電子健康記録(EHR)に基づく機械学習を用いて、動脈硬化と死亡リスクを連続スペクトルで非侵襲的に定量化し、過小診断された患者の特定が可能な冠動脈疾患のin-silicoマーカー「ISCAD」を開発した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年12月20日号で報告された。定量的マーカーとしてのISCADを評価するコホート研究 研究グループは、機械学習モデルに基づく確率から導出される冠動脈疾患の定量的マーカーの評価を目的にコホート研究を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 2つの大規模なバイオバンク(BioMe Biobank、UK Biobank)の参加者9万5,935人のEHRを用いて冠動脈疾患を検出する機械学習モデルを開発・検証し、ISCADスコア(0[確率が最も低い]~1[確率が最も高い])としてその蓋然性を評価した。 さらに、ISCADと臨床アウトカム(冠動脈狭窄、閉塞性冠動脈疾患、多枝冠動脈疾患、全死因死亡、冠動脈疾患の後遺症)の関連について検討した。高ISCAD/未診断者の46%が、ACC/AHAガイドラインを満たした 9万5,935人のうち、3万5,749人がBioMe Biobank(年齢中央値61歳、男性41%、冠動脈疾患診断率14%)、6万186人はUK Biobank(62歳、42%、14%)の参加者であった。 このモデルは、BioMe Biobankの検証セットとホールドアウトセットで、受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)がそれぞれ0.95(95%信頼区間[CI]:0.94~0.95、感度:0.94[95%CI:0.94~0.95]、特異度:0.82[95%CI:0.81~0.83])および0.93(95%CI:0.92~0.93、感度:0.90[0.89~0.90]、特異度:0.88[0.87~0.88])であった。また、UK Biobankの外部テストセットでは、ROC AUCは0.91(95%CI:0.91~0.91、感度:0.84[0.83~0.84]、特異度:0.83[0.82~0.83])だった。 ISCADは、既知のリスク因子、リスク予測式(pooled cohort equations)、多遺伝子リスクスコアから、冠動脈疾患のリスクを把握することができた。閉塞性冠動脈疾患、多枝冠動脈疾患、主要な冠動脈(左冠動脈主幹部、左前下行枝近位部など)の狭窄のリスクを含め、冠動脈狭窄はISCADの四分位数が上昇するに従って定量的に増加した(四分位ごとに12ポイントの増加)。 全死因死亡のハザード比(HR)と有病率は、ISCADの十分位数の上昇に従って段階的に増加した(第1十分位数のHR:1.0[95%CI:1.0~1.0]、有病率:0.2%、第6十分位数のHR:11[3.9~31]、有病率:3.1%、第10十分位数のHR:56[20~158]、有病率:11%)。冠動脈疾患の後遺症としての心筋梗塞の再発にも、同様の傾向が観察された。 高ISCAD(≧0.9)で冠動脈疾患の診断を受けていない26人と、傾向スコアでマッチさせた低ISCAD(≦0.1)で冠動脈疾患の診断を受けていない26人(全体の年齢中央値73歳、男性40%)で検討したところ、高ISCADの未診断者のうち12人(46%)が、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)作業部会による2014年版ガイドラインの冠動脈疾患の臨床的エビデンスを満たした。 著者は、「機械学習に基づく冠動脈疾患の定量的マーカーの導入は、患者の病態と臨床アウトカムの定義に有益で、疾患の検出を最適化し、過小診断を抑制する可能性がある」としている。

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アラーム付き間歇スキャンCGM vs. SMBG-試合前から勝負あり?(解説:住谷哲氏)

 持続グルコース測定器(continuous glucose monitoring:CGM)は大きく分けて3種類ある。現在わが国で使用できる機器も併せて記載すると、(1)リアルタイムCGM(real-time CGM[rtCGM]):そのときの血糖値が常に測定表示されるもの(Dexcom G6、ガーディアン コネクト)、(2)間歇スキャンCGM(intermittently scanned CGM[isCGM]、flash glucose monitoring[FGM]とも呼ばれる):患者がセンサーをスキャンしたときにのみグルコース値が表示されるもの(フリースタイルリブレ)、(3)professional CGM(pCGM):患者はグルコース値を装着中に見ることができず検査終了後に解析するもの(フリースタイルリブレPro)、になる。最も汎用されているのはフリースタイルリブレであるが、欧米ではすでに低血糖・高血糖アラーム付きのフリースタイルリブレ2にほぼ移行しており、他の新規医療機器と同じくわが国は周回遅れの状況である。 現在の糖尿病診療においてCGMの活用は血糖管理に必要不可欠のものとなりつつある。2019年にCGMデータ解釈に関するコンセンサスステートメントが報告されてから、TIR(time in range)やGMI(glucose management indicator)などの指標も次第に普及してきた1)。新規薬剤と同じく、その普及にはCGMの市場を広げたい企業の競争も大きく影響している。現時点ではrtCGMのDexcomとisCGMのAbbottが火花を散らしているが、アラーム付きのrtCGMであるDexcom G6が血糖管理においてはAbbottのフリースタイルリブレを一歩リードしている2)。そこにAbbottが送り込んだのがアラーム付きのフリースタイルリブレ2(本邦未発売)である。本来であればDexcom G6 vs.フリースタイルリブレ2の直接比較試験が望ましいが、本論文FLASH-UKは残念ながらフリースタイルリブレ2 vs.SMBGの比較試験である。その結果は、フリースタイルリブレ2群が24週後のHbA1cの低下度および<70mg/dLの低血糖時間に関してSMBG群に比較して優れていた。これまでのCGMの有効性に関する報告からこの結果は試験前から当然予想されたように筆者には思われるが、きちんとしたRCTで証明した点がNEJM誌に掲載された理由だろう。 2022年4月の診療報酬改定で、フリースタイルリブレがインスリン使用中のすべての糖尿病患者に対して保険診療で使用可能となった。さらに同年12月にはDexcom G6も保険診療上はフリースタイルリブレと同じ扱いとなり、今後は使用患者の増加が予想される。またCGMのデータをApple Watchに代表されるsmart watchで読み取ることも可能となりつつあり、血糖管理のハイテク化はまだまだ続きそうである。

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英語で「最悪の場合」は?【1分★医療英語】第62回

第62回 英語で「最悪の場合」は?In the worst case scenario, he would not survive this.(最悪の場合、お亡くなりになることもあり得ます)I understand.(わかりました)《例文1》医師In the worst case scenario, you have to wait three more hours to be tested.(最悪の場合、あと3時間待たなくてはいけません)患者That is unacceptable.(それは困ります)《例文2》医師We have to prepare for the worst case scenario.(最悪の事態に備えておかなくてはいけません)患者Yes we do.(そのとおりです)《解説》“In the worst case scenario”(最悪の場合は)、この表現は医療現場に限らず使えるものですが、医療現場においてはとくにリスクや予後の説明をするときに有用です。治療がいつも上手くいけばよいのですが、残念ながら見通しが良くないこともあります。そのような時に、「最悪の場合」を想定した話をしておくことが非常に大切です。医師にとっても、患者さんや家族にとっても大変なコミュニケーションとなりますが、これも医師と患者間の信頼関係を築くために必要な過程でしょう。伝えにくい内容の前に“In the worst case scenario”を挟むことで、聞き手に心の準備をさせることができますので、そのような場面で使ってみてください。講師紹介

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第145回 家にいながらにしてのコロナ検査と治療の提供を米国が開始

家にいながらにして新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の検査からその治療までの一通り全部を済ませるようにする無料の遠隔医療の試験運用を米国国立衛生研究所(NIH)が開始します1,2)。Home Test to Treatと銘打つその取り組みは去年2022年9月に同国政府が初めて表明し3)、検査で陽性だった人に抗ウイルス治療を施して重症化、入院、死亡を防ぐことを目指します。Home Test to Treatは今月中にまずはペンシルバニア州バークス郡の住民最大8千人を募って試験的な運用が始まります。運用指揮者はそれら参加者から集まった情報を使って最適な手順を確立し、より大規模な運用にも堪えうるようにHome Test to Treatの仕様を改善します。米国全域の他の地域もバークス郡に続いてHome Test to Treatに参加していく予定です。参加地域はそういう治療の需要のほど、医療の普及のほど、SARS-CoV-2感染(COVID-19)率予想、社会経済状況に基づいて選定されます。Home Test to Treatは各地の保健担当部門と協力して向こう1年間に米国人10万人ほどの手当てを賄うことを目指します。Home Test to Treatの運用は遠隔医療提供会社eMedが担います。目下のCOVID-19流行下で何百万件もの遠隔医療を取り仕切った経験を持つ同社は使い勝手が良いウェブサイトを準備し、参加者はそのウェブサイトに登録し、症状を報告し、遠隔診療を受け、必要に応じて抗ウイルス治療の配達を申し込み、必要な検査を手配することができます。Home Test to Treatの参加地域から集まった情報は家にいながらの検査や治療の意義、参加者のHome Test to Treatとの関わり方、治療の経過などの解析に使われます。それらの解析はeMedの協力を仰いでマサチューセッツ大学医学部(UMass Chan Medical School)が引き受けます。Home Test to Treatは目下のCOVID-19流行や将来の同様の事態で別け隔てなく救いの手を差し伸べ、人命救出に必要な最良の手順を見つけることを後押しするでしょう。各地域それぞれのチームが改善策を見つけて実行することはそれら地域、州、はては米国全体の求めに応えるよりよい体制作りを可能にします1)。参考1)NIH launches Home Test to Treat, a pilot COVID-19 telehealth program / NIH2)NIH launches pilot COVID telehealth program / Reuters3)Biden Administration Outlines Plan to Get Americans an Updated COVID-19 Vaccine Shot and Manage COVID-19 this Fall / White House

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肺臓炎発症例、オシメルチニブのリチャレンジの実施可能性/Eur J Cancer

 軽症肺臓炎を発症したEGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)へのオシメルチニブのリチャレンジを検証したリアルワールド試験の結果が発表された。 オシメルチニブは、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療の標準だが、治療に影響を及ぼすオシメルチニブの有害事象として、薬剤性肺臓炎が挙げられる。オシメルチニブの適正使用ガイドでは、肺臓炎発症後は全例治療中止が推奨されている。一方、症例報告や後ろ向き試験では、肺臓炎発症後のオシメルチニブリチャレンジの実施可能性や有効性についての報告がある。ただし、リチャレンジの主要評価項目とした多症例の検証はなかった。 和歌山県立医科大学の今地 美帆子氏らは、オシメルチニブの1次治療を受けた患者の多施設共同コホートから、肺臓炎を発症し同剤のリチャレンジを受けた患者を後ろ向きに検討した。主要評価項目は、リチャレンジ後の全Gradeの肺臓炎の発症率、副次評価項目は、オシメルチニブリチャレンジ後の治療効果であった。 主な結果は以下のとおり。・画像データが入手可能であった試験全体の患者452例中、肺臓炎を発症した患者は82例、そのうちオシメルチニブのリチャレンジを受けた患者は33例であった。・上記33例の肺臓炎の内訳はGrade1が26例、2が6例、3が1例であった。・オシメルチニブのリチャレンジ後、15%(33例中5例) が軽度の再発性肺炎を発現した。・上記5例中3例は、初期肺臓炎と再発肺臓炎の画像パターンが類似していた。・オシメルチニブリチャレンジ後の無増悪生存期間中央値は未到達であった。 筆者らはオシメルチニブによる軽症肺臓炎発症患者に対し、オシメルチニブのリチャレンジは治療選択肢となり得る、と述べている。

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パニック症やPTSDに対するデジタル治療の有効性

 これまでの研究で、パニック症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するデジタル治療であるCapnometry Guided Respiratory Intervention(CGRI)の臨床的ベネフィットが報告されている。米国・FreespiraのRobert N. Cuyler氏らは、実臨床におけるCGRIの治療アウトカムの報告を行った。その結果、これまでの研究結果と同様に、CGRIは、有意な症状改善効果と良好なアドヒアランスが期待できる治療介入であることが確認された。結果を踏まえ著者らは、パニック症患者およびPTSD患者に対するCGRIは、短い治療期間で良好なアドヒアランスを示し、臨床的ベネフィットに優れることから、有望な治療オプションとなりうるとしている。Frontiers in Digital Health誌2022年11月17日号の報告。 パニック症患者1,395例およびPTSD患者174例を対象に、CGRI治療前後の自己報告による症状変化、呼吸数および呼気終末CO2レベル、治療脱落率、治療アドヒアランスを評価した。CGRIは、呼吸数および呼気終末CO2レベルを測定するとともに、呼吸の正常化、ストレス、不安、パニック症状に対処する患者の対応力向上を目的として、28日間在宅療法として実施した。また、治療エピソード中、毎週のフォローアップによる初期トレーニングを提供するため、遠隔医療コーチングサポートを行った。遠隔データのアップロードおよびモニタリングにより、個別のコーチングと集計結果分析を簡便化した。主要アウトカムは、治療前後の自己報告によるパニック症重症度尺度(Panic Disorder Severity Scale:PDSS)およびDSM-5のPTSDチェックリスト(PCL-5)のスコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・パニック症患者では、治療前後のPDSS合計スコアが平均50.2%減少していた(p<0.001、d=1.31)。・パニック症患者における治療反応(PDSS合計スコア40%以上の低下)率は、65.3%であった。・PTSD患者では、治療前後のPCL-5合計スコアが41.1%減少していた(p<0.001、d=1.16)。・PTSD患者における治療反応(PCL-5スコア10ポイント以上の低下)率は、72.4%であった。・個人レベルでの治療反応の追加分析では、Reliable Change Indexを用いた治療反応率は、パニック症患者で55.7%、PTSD患者で53.5%であった。・ベースライン時の呼気CO2レベルが正常値または正常値未満の患者では、同等の効果が認められた。・28日間の治療期間全体では、平均アドヒアランス率は、パニック症患者で74.8%、PTSD患者で74.9%であった。・治療脱落率は、パニック症患者で10%、PTSD患者で11%であった。

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首・腰痛、姿勢療法は医療費増大/JAMA

 急性または亜急性の頸部痛/腰痛を有する患者において、集学的な生物心理社会的介入または個別化姿勢療法は、いずれも経過観察と比較して3ヵ月後の疼痛関連障害スコアをわずかではあるが統計学的に有意に改善した。ただし、個別化姿勢療法では1年間の脊椎関連医療費が経過観察より有意に増加した。米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学医学大学院のNiteesh K. Choudhry氏らが、米国の33施設で実施した3群の実用的非盲検クラスター無作為化試験「SPINE CARE試験」の結果を報告した。JAMA誌2022年12月20日号掲載の報告。急性/亜急性の頸部痛/腰痛患者を対象に、33施設でクラスター無作為化試験を実施 SPINE CARE試験の対象は、持続期間が3ヵ月以内の頸部痛または腰痛を主訴に来院した18歳以上の患者であった。過去3ヵ月間に、連続して7日以上麻薬を服用、あるいは6回以上の理学療法・カイロプラクティック治療・鍼治療・姿勢療法などを受けたことがある患者、過去6ヵ月以内に脊椎の手術・注射または神経根切断術を受けたことがある患者などは除外した。 研究グループは、参加したプライマリケア診療所33施設を、集学的な生物心理社会的介入(identify, coordinate, and enhance [ICE] care model、ICE)群、個別化姿勢療法(individualized postural therapy、IPT)群または通常ケア群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、各施設の適格患者に割り付けられた治療を行った。 ICEケアモデルとは、STarT Backスクリーニングツールを用いて、理学療法、ヘルスコーチによる痛みを軽減するためのカウンセリング、およびかかりつけ医へのコンサルテーションを組み合わせ、適切な介入を行うケアモデルである。また、IPTは、エゴスキューメソッドを用いて標準化された方法で、自己効力感と自己管理を重視し、脊柱の筋肉の再調整とリバランスによって痛みを治療する試みである。通常ケア群では、介入を行わなかった(経過観察のみ)。  主要評価項目は、Oswestry Disability Index(ODI、0~100点、点数が高いほど疼痛関連障害が重度)スコアのベースラインから3ヵ月後までの変化量(臨床的に意義のある最小変化量を6と定義)、および1年間の脊椎関連医療費とした。各治療群と通常ケア群との比較では、有意水準を両側0.025とした。疼痛関連障害スコアは2介入とも有意に改善、ただし姿勢療法では医療費が増加 2017年6月~2020年3月に2,971例が無作為化された(通常ケア群992例、ICE群829例、IPT群1,150例)。最終追跡は2021年3月であった。2,971例(平均年齢51.7歳、女性1,792例[60.3%])のうち、2,733例(92%)が試験を完遂した。 平均ODIスコアは、ICE群ではベースラインの31.2点から3ヵ月後には15.4点に、IPT群では29.3点から15.4点に、通常ケア群では28.9点から19.5点に改善した。3ヵ月後における平均ODIスコアの通常ケア群との絶対差は、ICE群で-5.8(95%信頼区間[CI]:-7.7~-3.9、p<0.001)、IPT群で-4.3(-5.9~-2.6、p<0.001)であった。 1年間の平均脊椎関連医療費は、ICE群1,448ドル、IPT群2,528ドル、通常ケア群1,587ドルであり、通常ケア群と比較しICE群では139ドル減(リスク比:0.93、95%CI:0.87~0.997、p=0.04)、IPT群では941ドル増(1.40、1.35~1.45、p<0.001)であった。

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早くも選考の時期!1年半後のフェローシッププログラムに応募【臨床留学通信 from NY】第42回

第42回:早くも選考の時期!1年半後のフェローシッププログラムに応募さて、3年間の循環器フェローシッププログラムも、この12月でようやく折り返し地点に来ました。次の所属先を決めるにはまだかなり早い気もしますが、1年半後の循環器カテーテル治療フェロー(Interventional Cardiology Fellowship)の選考があったことを報告します。通常はERAS(electronic residency application system)というウェブサイトを通じて応募し、プログラム側が均一化されたフォーマットをもとに応募者を選定し、面接に呼び、最終的にマッチングシステムのNRMP(national ranking matching program)を通して作成されたランキングを基にマッチングするという仕組みになっています。その点は、日本の研修病院選びと大差はないでしょう。通常だと、7月のプログラム開始に合わせて、フェローの場合は、前年の7月に申請が始まり、11月まで面接があり12月にマッチングの発表が行われます。レジデントの場合は、9月より申請が始まり、プログラム開始の5ヵ月前の3月に結果が出るため、ビザ申請などを含めるとあまり余裕がない日程になっています。しかしながら、循環器カテーテル治療フェローの選考はERASを経由して候補者が申請し、プログラム側がそれを審査するところまでは同じなのですが、申請開始時期が前々年の12月からと非常に早く、さらに不公平なことに現時点ではマッチングシステムを採用していません。プログラム側が選定した候補者と面接をした後に随時オファーを送り、候補者側は48時間以内にそれを受けるか判断しなければいけないという仕組みになっています。たとえば、より良い病院の面接を控えている状況で、少しランクの落ちる病院からのオファーが来た時に、候補者側が大変悩ましい選択を強いられるような仕組みです。あまり魅力的でないオファーを蹴って、ランクの高い病院に勝負をかけてもいいのですが、逆にオファーを蹴ったことで、よりランクの落ちる病院になる可能性もあります。はたまた、循環器のサブスペシャリティの中でInterventional Cardiologyは最も競争が激しいため、アンマッチになることもありえます。この仕組みはプログラム側が有利だと言えます。また、ある程度上位のプログラムは内部生で固まってしまうため、外部から有名な病院のプログラムには入りにくくなっています。このような不公平さへの批判から、この仕組みはわれわれの学年までで終了し、1学年下からはNRMPを通じたマッチングシステムに変わります。病院がNRMPのシステムを採用すると、マッチング外からの採用は禁止されるため、さらに多くの病院が参加することとなります。さて、システムの逆境の中ではありましたが、私はなんとか2024年7月から、ハーバード・メディカルスクール マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School)のカテーテルフェローのポジションを獲得できました。そのプロセスについて、次回お伝えしたいと思います。Column先日、JAMA Pediatricsにコロナワクチンと若年者の心筋炎に関する論文を掲載したので、ここに報告させていただきます。筆頭著者は大学テニス部の時のダブルスパートナーで、まさに二人三脚で挑んだ2本目のダブルス論文です。また、共同筆頭著者の先生は臨床留学を目指しているとのことで、今後もアカデミックに頑張ってほしいと思います。Yasuhara, J, Masuda K, Kuno T, et al. Myopericarditis After COVID-19 mRNA Vaccination Among Adolescents and Young Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2022 Dec 5. [Epub ahead of print]

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治療抵抗性統合失調症に対する新規抗精神病薬および薬理学的戦略の最新情報

 適切な用量および投与期間による2種類以上の抗精神病薬治療で反応が得られない治療抵抗性統合失調症は、精神医学の中で最も治療困難な病状の1つであるといえる。疫学的には、治療抵抗性統合失調症は統合失調症患者の3分の1に影響するとされ、全体的な機能の観点からも患者に深刻な結果をもたらす。しかし、50年間で治療抵抗性統合失調症の適応で承認された治療薬はクロザピンのみであり、クロザピンでも反応の得られない耐性患者も少なくない。イタリア・ナポリ大学のAndrea de Bartolomeis氏らは、現在報告されている文献を批判的に評価し、治療抵抗性統合失調症の治療における新旧薬剤の役割についてレビューを行った。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌2022年12月号の報告。 主なレビューは以下のとおり。・治療抵抗性統合失調症に対する治療は、クロザピンに匹敵または併用する治療法がいくつか報告されており、主に次の3つの戦略が挙げられる。 1)第2世代抗精神病薬(amisulprideなど)の併用 2)従来の抗精神病薬と異なる受容体プロファイルを有する第2世代抗精神病薬(アリピプラゾール、cariprazineなど)の併用 3)ドパミンD2/D3受容体占有を超える新規アプローチ(xanomeline+trospium、TAAR1アゴニスト、安息香酸ナトリウム、D-アミノ酸など)・代替治療や併用療法の有効性を評価するためには、治療抵抗性統合失調症やクロザピン耐性の現行の基準を適用した、より質の高い臨床試験が求められる。

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褐色細胞腫・パラガングリオーマ〔PPGL:pheochro mocytoma/paraganglioma〕

1 疾患概要褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)は副腎髄質または傍神経節のクロム親和性細胞から発生するカテコールアミン産生腫瘍で、前者を褐色細胞腫、後者をパラガングリオーマ、総称して「褐色細胞腫・パラガングリオーマ」と呼ぶ。カテコールアミン過剰分泌による症状と腫瘍性病変による症状がある。カテコラミン過剰により、動悸、頭痛などの症状、高血圧、糖代謝異常などの種々の代謝異常、心血管系合併症、さらには各種の緊急症(高血圧クリーゼ、たこつぼ型心筋症による心不全、腫瘍破裂によるショックなど)を呈することがある。すべてのPPGLは潜在的に悪性腫瘍の性格を有し、実際、約10〜15%は悪性・転移性を示す。それ故、早期の適切な診断と治療が極めて重要である。原則として日本内分泌学会「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018」1)(図)に基づき、診断と治療を行う。図 褐色細胞腫・パラガングリオーマの診療アルゴリズム画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ PPGLを疑う所見カテコラミン過剰による頭痛、動悸、発汗、顔面蒼白、体重減少、悪心・嘔吐、心筋梗塞類似の胸痛、不整脈などの多彩な症状を示す。肥満はまれである。高血圧を約85%に認め、持続型、発作型、混合型があるが、特に発作性高血圧が特徴的である。持続型では治療抵抗性高血圧の原因となる。発作型では各種刺激(運動、ストレス、過食、排便、飲酒、腹部触診、メトクロプラミド[商品名:プリンペラン]静注など)で高血圧発作が誘発される(高血圧クリーゼ)。さらに、急性心不全、肺水腫、ショックなどを合併することもある。発作型の非発作時には、まったくの「無症候性」であることも少なくない。また、高血圧をまったく呈さない無症候性や、逆に起立性低血圧を示すこともある。副腎や後腹膜の偶発腫瘍として発見される例も多い。■ スクリーニングの対象PPGLは二次性高血圧の中でも頻度が少なく、希少疾患に位置付けられるため、全高血圧でのスクリーニングは、費用対効果の観点から現実的ではない。PPGLガイドラインでは、特に疑いの強いPPGL高リスク群(表)での積極的なスクリーニングを推奨している。表 PPGL高リスク群1)PPGLの家族歴ないし既往歴(MEN、Von Hippel-Lindau病など)のある例2)特定の条件下の高血圧(発作性、治療抵抗性、糖尿病合併、高血圧クリーゼなど)3)多彩な臨床症状(動悸、発汗、頭痛、胸痛など)4)副腎偶発腫特に近年、副腎偶発腫瘍、無症候例の頻度が増加しているため、慎重な鑑別診断が必須である。スクリーニング方法カテコールアミン過剰の評価に際しては、運動、ストレス、体位、食品、薬剤などの測定値に影響する要因を考慮する必要がある。まず、外来でも実施可能な血中カテコールアミン(CA)分画(正常上限の3倍以上)、随時尿中メタネフリン分画(メタネフリン、ノルメタネフリン)(正常上限の3倍以上または500ng/mg・Cr以上)の増加を確認する。メタネフリン、ノルメタネフリンはカテコールアミンの代謝産物であり、随時尿でも安定であるため、スクリーニングや発作型の診断に有用である。近年、海外で第1選択である血中遊離メタネフリン分画も実施可能となったが、海外とは測定法が異なるため注意を要する。機能診断法上記のスクリーニングが陽性の場合、24時間尿中カテコールアミン分画(≧正常上限の2倍以上)、24時間尿中総メタネフリン分画(正常上限の3倍以上)の増加を確認する。従来実施された誘発試験は著明な高血圧を来すため推奨されない。アドレナリン優位の腫瘍は褐色細胞腫、ノルアドレナリン優位の腫瘍はパラガングリオーマが多い。画像診断臨床的にPPGLが疑われる場合は腫瘍の局在、広がり、転移の有無に関する画像診断(CT、MRI)を行う。約90%は副腎原発で局在診断が容易であり、副腎偶発腫瘍としての発見も多い。約10%はPGLで時に局在診断が困難なため、CT、 MRI、123I-MIBGシンチグラフィなどの複数のモダリティーを組み合わせる。(1)CT副腎腫瘍確認の第1選択。造影剤使用はクリーゼ誘発の可能性があるため、わが国では原則禁忌であり、実施時には患者への説明・同意とフェントラミンの準備が必須となる。(2)MRI副腎皮質腫瘍との鑑別診断、頭頸部病変、転移性病変の診断に有用である。(3)123I-MIBGシンチグラフィ疾患特異性が高いが偽陰性、偽陽性がある。PGLや転移巣の診断にも有用である。ヨウ化カリウムによる甲状腺ブロックを行う。(4)18F-FDG PET多発性病変や転移巣検索に有用である。病理学的診断(1)良・悪性を鑑別する病理組織マーカーは未確立である。組織所見とカテコールアミン分泌パターンを組み合わせたスコアリング(GAPP)が悪性度と予後判定に有用とされる。(2)コハク酸脱水素酵素サブユニットB(SDHB)の免疫染色の欠如はSDHx遺伝子変異の存在を示唆する。遺伝子解析(1)PPGLの30~40%が遺伝性で、19種類の原因遺伝子が報告されている2)。(2)若年発症(35歳未満)、PGL、多発性、両側性、悪性では生殖細胞系列の遺伝子変異が示唆される2)。(3)SDHB遺伝子変異は遠隔転移が多いため悪性度評価の指標となる。(4)全患者において遺伝子変異の頻度と臨床的意義、遺伝子解析の利益と不利益の説明を行うことが推奨されるが、必須ではなく、[1]遺伝カウンセリング、[2]患者の自由意思による判断、[3]質の担保された解析施設での実施が重要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)過剰カテコールアミンを阻害する薬物治療と手術による腫瘍摘除が治療原則である。1)薬物治療α1遮断薬が第1選択で、効果不十分な場合、Ca拮抗薬を併用する。頻脈・頻脈性不整脈ではβ遮断薬を併用するが、α1遮断薬に先行しての単独投与は禁忌である。循環血漿量減少に対して、術前に高食塩食あるいは生理食塩水点滴を行う。α1遮断薬でのコントロール不十分な場合はカテコールアミン合成阻害薬メチロシン(商品名:デムサー)を使用する。2)外科的治療小さな褐色細胞腫では腹腔鏡下副腎摘除術、悪性度が高い例では開腹手術を施行する。潜在的に悪性であることを考慮して、腫瘍被膜の損傷に注意が必要である。家族性PPGLや対側副腎摘除後の症例では副腎部分切除術を検討する。悪性の可能性があるため、全例で少なくとも術後10年間、悪性度が高いと判断される高リスク群では生涯にわたる経過観察が推奨される。3)悪性PPGL131I-MIBG内照射、CVD化学療法、骨転移に対する外照射などの集学的治療を行う。治癒切除が困難でも、原発巣切除術による予後改善が期待される。■ 診断と治療のアルゴリズム上述の日本内分泌学会診療ガイドラインの診療アルゴリズム(図)を参照されたい。PPGL高リスク群で積極的にスクリーニングを行う。外来にて血中カテコラミン、随時尿中メタネフリン分画などを測定、疑いが強ければ、蓄尿でのCA分画と画像診断を行う。内分泌異常と画像所見が合理的に一致していれば、典型例での診断は容易である。無症候性、カテコールアミン産生能が低い例、腫瘍の局在を確認できない場合の診断は困難で、内分泌検査の反復、異なるモダリティーの画像診断の組み合わせが必要である。単発性病変であれば、α1ブロッカーによる適切な事前治療後、腫瘍摘出術を行う。術後、長期にわたり定期的に経過観察を要する。悪性・転移性の場合は、ガイドラインに準拠して集学的な治療を行う。診断と治療は専門医療施設での実施が推奨される。4 今後の展望今後解決すべき課題は以下の通りである。PPGL疾患概念の変遷:分類、神経内分泌腫瘍との関連診療アルゴリズムの改変診断基準の精緻化機能検査:遊離メタネフリン分画の位置付け画像検査:オクトレオチドスキャンの位置付け、68Ga-DOTATEシンチの応用遺伝子検査の臨床的適応頸部パラガングリオーマの診断と治療内科的治療:デムサの適応と治療効果核医学治療:123I-MIBG、ルテチウムオキソドトレオチド(商品名:ルタテラ)の適応と実態5 主たる診療科初回受診診療科は一般的に代謝・内分泌科、循環器内科、泌尿器科、腎臓内科など多岐にわたるが、以下の場合には専門医療施設への紹介が望ましい。(1)PPGLの家族歴・既往歴のある患者(2)高血圧クリーゼ、治療抵抗性高血圧、発作性高血圧などの患者(3)副腎偶発腫瘍で基礎疾患が不明な場合(4)PPGLの局所再発や遠隔転移のある悪性PPGL(5)遺伝子解析の実施を考慮する場合6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難治性副腎疾患プロジェクト(医療従事者向けのまとまった情報)1)成瀬光栄、他. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」研究班 平成22年度報告書.2010.2)Lenders JW、 et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014;99:1915-1942.3)日本内分泌学会「悪性褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」委員会(編).褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018.診断と治療社;2018.公開履歴初回2023年1月5日

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ARNi【心不全診療Up to Date】第4回

第4回 ARNiKey PointsARNi誕生までの長い歴史をプレイバック!ARNiの心不全患者に対するエビデンス総まとめ!ARNiの認知機能への影響は?はじめに第4回となる今回は、第1回で説明した“Fantastic Four”の1人に当たる、ARNiを取り上げる。第3回でSGLT2阻害薬の歴史を振り返ったが、実はこのARNiも彗星のごとく現れたのではなく、レニンの発見(1898年)から110年以上にわたる輝かしい一連の研究があってこその興味深い歴史がある。その歴史を簡単に振り返りつつ、この薬剤の作用機序、エビデンス、使用上の懸念点をまとめていきたい。ARNi開発の歴史:なぜ2つの薬剤の複合体である必要があるのか?ARNiとは、Angiotensin Receptor-Neprilysin inhibitorの略であり、アンジオテンシンII受容体とネプリライシンを阻害する新しいクラスの薬剤である。この薬剤を理解するには、心不全の病態において重要なシステムであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)とナトリウム利尿ペプチド系(NPS)を理解することが重要である(図1)。アンジオテンシンII受容体は説明するまでもないと思われるが、ネプリライシン(NEP)はあまり馴染みのない先生もおられるのではないだろうか。画像を拡大するネプリライシンとは、さまざまな心保護作用のあるナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP、 CNP)をはじめ、ブラジキニン、アドレノメデュリン、サブスタンスP、アンジオテンシンIおよびII、エンドセリンなどのさまざまな血管作動性ペプチドを分解するエンドペプチダーゼ(酵素)のことである。その血管作動性ペプチドにはそれぞれに多様な作用があり、ネプリライシンを阻害することによるリスクとベネフィットがある(図2)。つまり、このNEP阻害によるリスクの部分(アンジオテンシンIIの上昇など)を補うために、アンジオテンシン受容体も合わせて阻害する必要があるというわけである。画像を拡大するそこでまずはACEとNEPの両方を阻害する薬剤が開発され1)、このクラスの薬剤の中で最も大規模な臨床試験が行われた薬剤がomapatrilatである。この薬剤の心不全への効果を比較検証した第III相試験OVERTURE(Omapatrilat Versus Enalapril Randomized Trial of Utility in Reducing Events)、高血圧への効果を比較検証したOCTAVE(Omapatrilat Cardiovascular Treatment Versus Enalapril)にて、それぞれ心血管死または入院(副次評価項目)、血圧をエナラプリルと比較して有意に減少させたが、血管性浮腫の発生率が有意に多いことが報告され、市場に出回ることはなかった。これはomapatrilatが複数のブラジキニンの分解に関与する酵素(ACE、アミノペプチダーゼP、NEP)を同時に阻害し、ブラジキニン濃度が上昇することが原因と考えられた。このような背景を受けて誕生したのが、血管性浮腫のリスクが低いARB(バルサルタン)とNEP阻害薬(サクビトリル)との複合体であるARNi(サクビトリルバルサルタン)である。この薬剤の慢性心不全(HFrEF)への効果をエナラプリル(慢性心不全治療薬のGold Standard)と比較検証した第III相試験がPARADIGM-HF (Prospective Comparison of ARNi With ACE Inhibitors to Determine Impact on Global Mortality and Morbidity in HF)2)である(図3、表1)。この試験は、明確な有効性と主要評価項目が達成されたことに基づき、早期終了となった。つまり、ARNiは、長らく新薬の登場がなかったHFrEF治療に大きな”PARADIGM SHIFT”を起こすきっかけとなった薬剤なのである。画像を拡大する画像を拡大するARNiの心不全患者に対するエビデンス総まとめARNiの心不全患者を対象とした主な臨床試験は表1のとおりで、実に多くの無作為化比較試験(RCT)が実施されてきた。2010年、まずARNiの心血管系疾患に対する有効性と安全性を検証する試験(proof-of-concept trial)が1,328例の高血圧患者を対象に行われた3)。その結果、バルサルタンと比較してARNiが有意に血圧を低下させ、咳や血管浮腫増加もなく、ARNiは安全かつ良好な忍容性を示した。その後301人のHFpEF患者を対象にARNiとバルサルタンを比較するRCTであるPARAMOUNT試験が実施された(表1)4)。主要評価項目である投与開始12週後のNT-proBNP低下量は、ARNi群で有意に大きかった。36週後の左室充満圧を反映する左房容積もARNiでより低下し、NYHA機能分類もARNiでより改善された。そして満を持してHFrEF患者を対象に実施された大規模RCTが、上記で述べたPARADIGM-HF試験である2)。この試験は、8,442例の症候性HFrEF患者が参加し、エナラプリルと比較して利尿薬やβ遮断薬、MR拮抗薬などの従来治療に追加したARNi群で主要評価項目である心血管死または心不全による入院だけでなく、全死亡、突然死(とくに非虚血性心筋症)も有意に減少させた(ハザード比:主要評価項目 0.80、全死亡 0.84、突然死 0.80)。本試験の結果を受け、2015年にARNiは米国および欧州で慢性心不全患者の死亡と入院リスクを低下させる薬剤として承認された。このPARADIGM-HF試験のサブ解析は50本以上論文化されており、ARNiのHFrEFへの有効性がさまざまな角度から証明されているが、1つ注意すべき点がある。それは、サブグループ解析にてNYHA機能分類 III~IV症状の患者で主要評価項目に対する有効性が認められなかった点である(交互作用に対するp値=0.03)。その後、NYHA機能分類IVの症状を有する進行性HFrEF患者を対象としたLIFE(LCZ696 in Advanced Heart Failure)試験において、統計的有意性は認められなかったものの、ARNi群では心不全イベント率が数値的に高く、進行性HF患者ではARNiが有効でない可能性をさらに高めることになった5)。この結果を受けて、米国心不全診療ガイドラインではARNiの使用がNYHA機能分類II~IIIの心不全患者にのみClass Iで推奨されている(文献6の [7.3.1. Renin-Angiotensin System Inhibition With ACEi or ARB or ARNi])。つまり、早期診断、早期治療がきわめて重要であり、too lateとなる前にARNiを心不全患者へ投与すべきということを示唆しているように思う。ではHFpEFに対するARNiの予後改善効果はどうか。そのことを検証した第III相試験が、PARAGON-HF(Prospective Comparison of ARNi With ARB Global Outcomes in HF With Preserved Ejection Fraction)である7)。本試験では、日本人を含む4,822例の症候性HFpEF患者を対象に、ARNiとバルサルタンとのHFpEFに対する有効性が比較検討された。その結果、ARNiはバルサルタンと比較して主要評価項目(心血管死または心不全による入院)を有意に減少させなかった(ハザード比:0.87、p値=0.06)。ただ、サブグループ解析において、女性とEF57%(中央値)以下の患者群については、ARNiの有効性が期待できる結果(交互作用に有意差あり)が報告され、大変話題となった。性差については、循環器領域でも大変重要なテーマとして現在もさまざまな研究が進行中である8,9)。EFについては、その後PARADIGM-HF試験と統合したプール解析によりさらに検証され、LVEFが正常値(約55%)以下の心不全症例でARNiが有用であることが報告された10)。これらの知見に基づき、FDA(米国食品医薬品局)は、ARNiのHFpEF(とくにEFが正常値以下の症例)を含めた慢性心不全患者への適応拡大を承認した(わが国でも承認済)。このPARAGON-HF試験のサブ解析も多数論文化されており、それらから自分自身の診療での経験も交えてHFpEFにおけるARNiの”Sweet Spot”をまとめてみた(図4)。とくに自分自身がHFpEF患者にARNiを処方していて一番喜ばれることの1つが息切れ改善効果である11)。最近労作時息切れの原因として、HFpEFを鑑別疾患にあげる重要性が叫ばれているが、BNP(NT-proBNP)がまだ上昇していない段階であっても、労作時には左室充満圧が上がり、息切れを発症することもあり、運動負荷検査をしないと診断が難しい症例も多く経験する。そのような症例は、だいたい高血圧を合併しており、もちろんすぐに運動負荷検査が施行できる施設が近くにある環境であればよいが、そうでなければ、ARNiは高血圧症にも使用できることもあり、今まで使用している降圧薬をARNiに変更もしくは追加するという選択肢もぜひご活用いただきたい。なお、ACE阻害薬から変更する場合は、上記で述べた血管浮腫のリスクがあることから、36時間以上間隔を空けるということには注意が必要である。それ以外にも興味深いRCTは多数あり、表1を参照されたい。画像を拡大するARNi使用上の懸念点ARNiは血管拡張作用が強く、それが心保護作用をもたらす理由の1つであるわけだが、その分血圧が下がりすぎることがあり、その点には注意が必要である。実際、PARADIGM-HF試験でも、スクリーニング時点で収縮期血圧が100未満の症例は除外されており、なおかつ試験開始後も血圧低下でARNiの減量が必要と判断された患者の割合が22%であったと報告されている12)。ただ、そのうち、36%は再度増量に成功したとのことであった。実臨床でも、少量(ARNi 50mg 2錠分2)から投与を開始し、その結果リバースリモデリングが得られ、心拍出量が増加し、血圧が上昇、そのおかげでさらにARNiが増量でき、さらにリバースリモデリングを得ることができたということも経験されるので、いったん減量しても、さらに増量できるタイミングを常に探るという姿勢はきわめて重要である。その他、腎機能障害、高カリウム血症もACE阻害薬より起こりにくいとはいえ13,14)、注意は必要であり、リスクのある症例では初回投与開始2~3週間後には腎機能や電解質、血圧等を確認した方が安全と考える。最後に、時々話題にあがるARNiの認知機能への懸念に関する最新の話題を提供して終わりたい。改めて図2を見ていただくと、アミロイドβの記載があるが、NEPは、アルツハイマー病の初期病因因子であるアミロイドβペプチド(Aβ)の責任分解酵素でもある。そのため、NEPを持続的に阻害する間にそれらが脳に蓄積し、認知障害を引き起こす、あるいは悪化させることが懸念されていた。その懸念を詳細に検証したPERSPECTIVE試験15)の初期結果が、昨年のヨーロッパ心臓病学会(ESC2022)にて発表された16)。本試験は、592例のEF40%以上の心不全患者を対象に、バルサルタン単独投与と比較してARNi長期投与の認知機能への影響を検証した最初のRCTである(平均年齢72歳)。主要評価項目であるベースラインから36ヵ月後までの認知機能(global cognitive composite score)の変化は両群間に差はなく(Diff. -0.0180、95%信頼区間[CI]:-0.1230~0.0870、p=0.74)、3年間のフォローアップ期間中、各時点で両群は互いに類似していた。主要な副次評価項目は、PETおよびMRIを用いて測定した脳内アミロイドβの沈着量の18ヵ月時および36ヵ月時のベースラインからの変化で、有意差はないものの、ARNi群の方がアミロイドβの沈着が少ない傾向があった(Diff. -0.0292、95%CI:0.0593~0.0010、p=0.058)。これは単なる偶然の産物かもしれない。ただ、全体としてNEP阻害がHFpEF患者の脳内のβアミロイド蓄積による認知障害リスクを高めるという証拠はなかったというのは間違いない。よって、認知機能障害を理由に心不全患者へのARNi投与を躊躇する必要はないと言えるであろう。1)Fournie-Zaluski MC, et.al. J Med Chem. 1994;37:1070-83.2)McMurray JJ, et.al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.3)Ruilope LM, et.al. Lancet. 2010;375:1255-66.4)Solomon SD, et.al. Lancet. 2012;380:1387-95.5)Mann DL, et.al. JAMA Cardiol. 2022;7:17-25.6)Heidenreich PA, et.al. Circulation. 2022;145:e895-e1032.7)Solomon SD, et.al. N Engl J Med. 2019;381:1609-1620.8)McMurray JJ, et.al. Circulation. 2020;141:338-351.9)Beale AL, et.al. Circulation. 2018;138:198-205.10)Solomon SD, et.al. Circulation. 2020;141:352-361.11)Jering K, et.al. JACC Heart Fail. 2021;9:386-397.12)Vardeny O, et.al. Eur J Heart Fail. 2016;18:1228-1234.13)Damman K, et.al. JACC Heart Fail. 2018;6:489-498.14)Desai AS, et.al. JAMA Cardiol. 2017 Jan 1;2:79-85.15)PERSPECTIVE試験(ClinicalTrials.gov)16)McMurray JJV, et al. PERSPECTIVE - Sacubitril/valsartan and cognitive function in HFmrEF and HFpEF. Hot Line Session 1, ESC Congress 2022, Barcelona, Spain, 26–29 August.

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患者に伝えたいアナフィラキシー症状

患者さん、その症状はアナフィラキシー ですよ!アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性アレルギー症状が引き起こされ、生命に危険を与え得る過敏反応」のこと。以下のような症状を伴います。□紅潮□そう痒感□蕁麻疹□立毛□結膜の充血□流涙□口腔内腫脹□気道狭窄感□息切れ□嗄声(声がれ)□激しい咳・喘鳴□鼻閉・鼻汁・くしゃみ□腹痛□下痢□血圧低下□拍動性頭痛□浮動性めまい□嘔気・嘔吐□意識障害 □動悸・頻脈□嚥下障害◆こんな場合も要注意!• 蕁麻疹が出なくても、急に息切れや腹痛、血圧低下が起こればアナフィラキシーと診断されます。• 薬剤や食べ物で起こりますが、約半数の患者さんでは原因が特定できないことも。• 薬物投与などの数時間後に症状が起こる場合もあるので、治療によっては院内でしばらく待機する必要があります。出典:日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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英語で「皮下注射」は?【1分★医療英語】第61回

第61回 英語で「皮下注射」は?Insulin is administered by subcutaneous injection.(インスリンは皮下注射します)Oh no… I'm scared of needles.(えぇ、針が怖いです…)《例文1》How to make subcutaneous injections less painful?(どうすれば、皮下注射の痛みを軽減できますか?)《例文2》What are the best subcutaneous injection sites?(どの部位に皮下注射するのがよいですか?)《解説》医療者であれば毎日のように使っている用語ですね。皮下注射は“subcutaneous”(略語:SQあるいはSub Q)、筋肉注射は“intramuscular injection”(同:IM)と言います。皮下注射の場合、手順について、パンフレット等を見せながら実演することも多いかと思います。《例文》のように、患者さんから質問が出ることがありますので、回答の準備や、“abdomen”(腹部)、“upper arms”(上腕)、“thighs”(太もも)、“buttocks”(臀部)等の身体の部位を示す単語も、一緒に覚えておくとよいでしょう。加えて、“self-monitoring of blood glucose”(血糖値自己測定)の説明をする機会も多くあります。テクニカルな方法(手技)だけでなく、“motivational interview”(患者さんに治療への理解を促し、やる気を引き出す面談)等のコミュニケーションスキルを用い、「何のためにインスリン注射や血糖値測定が必要なのか」という十分な説明が必要です。たとえば、次のようなフレーズを使ってみましょう。“I understand your fear and concerns.”(不安なのはわかります)“However, self-monitoring helps protect you by allowing them to immediately confirm acute hypoglycemia or hyperglycemia.”(ただ、自己測定によって、急な血糖の上昇や低下がすぐにわかり、対処することができるんですよ)講師紹介

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統合失調症患者の味覚障害

 精神疾患患者では、味覚障害が認められることが少なくない。これまでの研究では、統合失調症患者において症状とグルタミン酸ナトリウム(MSG)の味覚障害との間に関連がある可能性が示唆されている。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのMichal Wronski氏らは、MSGの味覚レベルが症状の重症度と関連しているかを検討した。Brain Sciences誌2022年11月9日号の報告。 対象は、妄想型統合失調症と診断(ISD-10)された患者200例。MSGまたは水を含む3つの液体サンプルを舌下投与することにより、MSG検出閾値を評価した。MSGのサンプルには、サンプルごとに異なる濃度を用いた。被験者に、どのサンプルがMSGを含有しているかを示してもらい、味の強さや不快感(快適、不快、どちらでもない)を評価させた。 主な結果は以下のとおり。・味覚の平均強度と症状の数との間に、有意な負の相関が認められた。・統合失調症患者でみられる味覚障害の症状が味覚機能の欠損なのか、精神症状としての味覚に対する幻覚症状なのかを判断するために、臨床医は味覚障害を報告する患者をモニタリングする必要がある。

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