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ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する次世代治療薬repotrectinib(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ROS1融合遺伝子は非小細胞肺がんの約2%に認められるドライバー遺伝子変異である。現在、本邦でもROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対し、クリゾチニブおよびエヌトレクチニブが承認されている。「PROFILE 1001試験」においてROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対してクリゾチニブはORR 72%、PFS中央値19.2ヵ月、OS中央値51.4ヵ月という有効性を示した(Shaw AT, et al. N Engl J Med. 2014;371:1963-1971. , Shaw AT, et al. Ann Oncol. 2019;30:1121-1126.)。また同じくROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するエヌトレクチニブ単剤療法を評価した「ALKA-372-001試験」と「STARTRK-1試験」「STARTRK-2試験」の3つの臨床試験の統合解析では、ORR 77%、PFS中央値19.0ヵ月という結果が示された。いずれも『肺癌診療ガイドライン2023年版』では推奨度「1C」という位置付けとなっている。 ただし、現在承認されているROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する治療薬は、耐性の出現や脳転移での再発の頻度が高いことが知られている。今回紹介するrepotrectinibはROS1のトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)A/B/Cを選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)である。repotrectinibは過去の臨床試験において、ROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性肺がんに対する活性が示された次世代のROS1-TKIとされている。 今回行われた「TRIDENT-1試験」の第I相試験の結果に基づき、repotrectinibの推奨用量は160mg、1日1回を14日間投与後、15日目以降は160mg、1日2回投与とされた。ROS1-TKI未治療の拡大コホート1に含まれた71例では、奏効率79%、PFS中央値35.7ヵ月と高い効果が示された。また化学療法治療歴がなくROS1-TKIで1種類の治療歴のある56例の拡大コホート4でも、奏効率38%、PFS中央値9.0ヵ月と期待される結果が示された。ベースラインに脳転移がない症例における、頭蓋内の12ヵ月時点でのPFS率は拡大コホート1で91%、拡大コホート4で82%と高い効果が示された。また、第II相試験の用量で治療された426例のうち、頻度の高い有害事象はめまい、味覚障害、異常感覚であり、Grade3以上の有害事象は29%であったと報告された。治療中止に至った有害事象は3%となっている。 第III相試験が行われたわけではないので、純粋に比べることはできないが、この「TRIDENT-1試験」の結果からは次世代ROS1-TKIであるrepotrectinibは既存の治療薬と並べても、奏効率も無増悪生存期間も期待できることがわかる。とくに拡大コホート4で行われたROS1-TKIが1種類使用された症例群においても奏効率38%、PFS 9.0ヵ月というのは有望である。既存のROS1-TKIでも制御が難しい脳転移に対しても、高い頭蓋内PFS率が示されたことも心強い結果であり、早期の承認が望まれる。 ただ、本研究に使用されたROS1融合遺伝子の検索は「Guardant360 CDx」あるいは「GeneseeqLite circulating tumor DNA-based assays」に基づいている。本邦の医療機関では一般的に扱っていない検査キットであり、今後、このrepotrectinibが実臨床で活用されるためにはコンパニオン診断の問題が出てくるのであろう。

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乾癬の患者報告アウトカム、PSSDスコアの有意な改善とは?

 カナダ・Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らは、乾癬患者を対象とした第III相試験で用いられた患者報告に基づくPsoriasis Symptoms and Signs Diary(PSSD)スコアの変化を、Patient Global Impression of Change(PGI-C)スコアおよびPatient Global Impression of Severity(PGI-S)スコアに照らし合わせ、患者にとって臨床的に意義のある有意な改善を示すPSSDスコアの変化量を検討した。解析の結果、PSSDスコアのベースラインからの改善が15ポイント以上の場合、PGI-Cスコアに意義のある変化が示された。乾癬の臨床試験では、PSSDスコアのベースラインからの変化が、患者報告アウトカムとして広く用いられているが、臨床的に意義のあるスコア変化の閾値が、臨床試験の設定では確立されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月20日号掲載の報告。 研究グループは、Program to Evaluate the Efficacy and Safety of Deucravacitinib, a Selective TYK2 Inhibitor(POETYK), PSO-1(POETYK PSO-1)試験のデータを用いて、PSSDの臨床的に意義のあるスコア変化の閾値を評価した。 POETYK PSO-1試験は、成人の中等症~重症の乾癬患者を対象に、選択的TYK2阻害薬デュークラバシチニブの有効性と安全性を評価した国際共同第III相多施設共同無作為化二重盲検試験。本試験は、2018年8月7日~2020年9月2日に行われた。対象患者には、デュークラバシチニブ6mg(1日1回)またはプラセボ、アプレミラスト30mg(1日2回)のいずれかを投与し、追跡調査した。 今回の解析では、PSSDを毎日報告していた成人患者を対象とし、ベースラインから16週時までのPSSDスコアの平均変化量を、PGI-CおよびPGI-Sの改善のカテゴリーに照らし合わせて、臨床的に意義のあるスコア変化の閾値を導出した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、666例が含まれた。平均年齢は46.1(標準偏差13.4)歳、男性が453例(68.0%)であった。・ベースラインでPGI-SとPSSDを報告していたのは601例であった。16週時点でPGI-SとPSSDを報告していたのは481例であり、PGI-CとPSSDを報告していたのは486例であった。・609例を対象とした解析により、以下の3つの閾値が特定された。・PSSDスコアのベースラインから16週までの変化が15ポイント以上の場合、PGI-Cの臨床的に意義のある改善のカテゴリーに該当することが示された。・PSSDスコアの変化が25ポイント以上の場合、PGI-SおよびPGI-Cの両方が臨床的に意義のある改善のカテゴリーに該当することが示された。・PSSDスコアの変化が30ポイント以上の場合、乾癬の症状が大きく改善(PGI-Cによる評価が非常に大きく改善/大きく改善)した患者が特定された。

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自宅で受ける病院レベルの医療の安全性と有効性を確認

 自宅で病院レベルの医療を受けた人は、入院して治療を受けた人と同程度に良好な経過をたどる可能性のあることが、米ハーバード大学ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のDavid Michael Levine氏らによる研究から明らかになった。同研究では、自宅で病院レベルの医療を受けた人の死亡率は低く、すぐに救急外来受診を必要とする状態に陥る可能性も低いことが示されたという。詳細は、「Annals of Internal Medicine」に1月9日掲載された。 Levine氏は、「患者の自宅で提供される病院レベルの医療は非常に安全で質も高いようだ。本研究では、患者の生存期間が延び、再入院の頻度も抑えられることが示された」と話した上で、「もし、自分の母親や父親、きょうだいがこのような形で医療を受けるチャンスがあるならば、そうすべきだ」と付け加えている。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに対する対応として、米国のメディケア&メディケイドサービスセンター(CMS)は、2020年にAcute Hospital Care at Home Waiver initiative(在宅急性期医療の規制免除イニシアチブ)を発足し、メディケア認定病院が、患者の自宅で病院レベルの医療を提供できるようにした。これを受け、米国37州、300施設の病院の数千人の患者が、病院ではなく自宅で医療を受けた。ただし、現行の規制免除プログラムは2024年12月に終了する見通しだ。 米国病院協会(AHA)によると、技術の進歩により病院は幅広いサービスを患者の自宅で提供できるようになった。例えば、X線検査や最新の心臓画像検査、静脈注射による治療や検査のための検体の採取が可能であり、ベッドサイドまで食事や薬を届けることもできる。 Levine氏らは今回の研究で、自宅で病院レベルの医療を受けた患者の状態を評価するため、出来高払い制のメディケアパートAの2022年7月1日から2023年6月30日の間の請求データを用いて、在宅急性期医療の規制免除プログラムによる医療を受けた患者5,858人(女性54%、白人85.2%、75歳以上61.8%、身体障害あり18.1%)のデータを分析した。対象患者のうち、42.5%が心不全、43.3%が慢性閉塞性肺疾患(COPD)、22.1%ががん、16.1%が認知症を抱えていた。 解析の結果、対象患者の死亡率は0.5%であり、24時間以内に病院に戻ることになった患者の割合も6.2%に過ぎないことが示された。さらに、自宅での急性期医療の終了から30日以内に介護施設への入所が必要となった患者の割合は2.6%、同期間に死亡した患者の割合は3.2%、病院への再入院が必要となった患者の割合は15.6%だった。 Levine氏は、「病院レベルの医療を自宅で受けることが良好な転帰につながる理由と思われるものは数多くある」と説明する。例えば、「医療専門家は、患者の自宅で患者にどのように自身のケアをすべきかを教えることができる上に、自宅という環境は、患者にとって病院よりも起き上がって動き回りやすい」ため、治療後の移行がスムーズなのだという。また、患者の自宅で医療を提供することを通じて、医療専門家が患者の生活を垣間見ることができるため、患者の健康状態の悪化につながり得る要因などに気付くことができるのも理由だという。 さらに今回の研究では、患者の人種や民族、あるいは障害の有無によって自宅で病院レベルの医療を受けた場合のアウトカムに差はないことも明らかになった。Levine氏は、「従来の入院治療ではアウトカムに大きな格差があることが分かっているだけに、社会的に疎外されている集団で臨床的に意味のある差がなかったことは心強い。このことは、自宅での急性期医療が多様な患者や家庭に対応できることを示唆している」と述べている。

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古代人のDNAから多発性硬化症の起源が明らかに

 英ケンブリッジ大学およびコペンハーゲン大学(デンマーク)教授のEske Willerslev氏を中心とする国際的な研究グループが、アジアと西ヨーロッパで見つかった中石器時代から青銅器時代までの古代人の遺物のDNA解析により、世界で最大規模の古代人の遺伝子バンクを構築。これを用いて、時代の流れの中で人々の移動とともに遺伝子の変異や疾患などがどのように伝播したのかを明らかにした。この研究結果は、1月10日付の「Nature」に4本の論文として掲載された。 このうち、ケンブリッジ大学動物学分野のWilliam Barrie氏が筆頭著者を務めた1本の論文では、中枢神経系の自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)の有病率が、世界的に見て北欧で高い理由の説明となる結果が得られた。 Barrie氏らは、古代人の歯や骨のサンプルを用いたDNAデータと既存の古代人のゲノムデータを組み合わせて作成された、1,600人以上の古代人のDNAプロファイルに中世以降(11〜18世紀)のデンマーク人86人のゲノム解析データを加え、「白人の英国人」を自称する約41万人のUKバイオバンク参加者のDNAデータと比較し、現代人の遺伝子における古代人の遺伝子の影響を調べた。 その結果、MSの発症リスクに関わる遺伝子変異は、約5,000年前に東方からポントスステップ(現在のウクライナ、ロシア南西部、カザフスタン西部の一部にまたがる地域)に移住してきたヤムナ族と呼ばれる牧畜民とともにヨーロッパにもたらされたことが明らかになった。牛や羊などを家畜化していたヤムナ族は、動物を介した感染症罹患の脅威に常にさらされていた。このことを踏まえてWillerslev氏は、「ヤムナ族がヨーロッパに移住した後もMSのリスク遺伝子を受け継いでいたことは、これらの遺伝子が、たとえMSリスクの上昇をもたらすとしても、感染症から身を守る上で有利だったからに違いない」と話す。 Willerslev氏は、「このMSに関する発見は、遠い過去を見る以上のものをもたらす。この知見は、MSの原因に関するわれわれの見方を変え、治療法にも影響を与えるものだ」と強調する。一方、Barrie氏は、「これらの結果はわれわれを驚かせた。MSや他の自己免疫疾患の進化についてのわれわれの理解を大きく飛躍させる結果だ。われわれの祖先のライフスタイルが現代の疾患リスクに及ぼす影響を明らかにすることで、現代人がいかに古代人の免疫システムの影響を受けているかが明確になる」と話している。 4本の研究で明らかにされたそのほかの主な結果は以下の通り。 身長:北欧の人は南欧の人より背の高い傾向があるが、その違いの背景にもヤムナ族の遺伝子が関係している可能性がある。 他の疾患のリスク:南欧の人は古代の農耕民族のDNAを色濃く受け継いでおり、双極性障害のリスクが高い傾向がある一方で、東欧の人が古代人から継承した遺伝子はアルツハイマー病や2型糖尿病の発症リスクを高める可能性がある。 乳糖に対する耐性:初期の人類は、離乳後に牛乳を消化する(牛乳に含まれている乳糖を分解する)ことができなかった。成人での乳糖に対する耐性は、約6,000年前にヨーロッパで獲得された可能性がある。 野菜の摂取:菜食のみで生活する能力と耐性は、おそらく約5,900年前にヨーロッパで獲得された可能性がある。 1本の論文の筆頭著者であるコペンハーゲン大学グローブ研究所のEvan Irving-Pease氏はニュースリリースの中で、「過去1万年にわたるユーラシア大陸の人々のライフスタイルが、現代人の身体的特徴や多くの疾患リスクに関わる遺伝的遺産をもたらしたことは驚くべきことだ」と述べている。■原著論文Allentoft ME, et al. Nature. 2024;625:301-311.Allentoft ME, et al. Nature. 2024;625:329-337.Irving-Pease EK, et al. Nature. 2024;625:312-320.Barrie W, et al. Nature. 2024;625:321-328.

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第200回 非オピオイド鎮痛薬が米国承認申請へ

まずは急性痛第III相試験が成功本連載で2年ほど前に取り上げた依存やその他のオピオイドにつきものの副作用の心配がない経口の非オピオイド鎮痛薬が2つの第III相試験で術後痛を有意に緩和し、いよいよ米国FDAの承認申請に進みます1)。試験の1つには腹部の脂肪を除去する腹壁形成手術患者1,118例、もう1つには外反母趾の瘤(バニオン)を取る手術患者1,073例が参加しました。それら2試験のどちらでも米国のバイオテック企業Vertex Pharmaceuticalsの神経ナトリウムチャネル阻害薬VX-548の時間加重合計(SPID48)がプラセボを有意に上回りました。SPID48は点数が大きいほど48時間に痛みがより鎮まったことを意味し、腹壁形成手術患者と外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はプラセボ群をそれぞれ有意に48点と29点上回りました。しかしながら、定番のオピオイド薬との比較ではVX-548は勝てませんでした。腹壁形成手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬(ヒドロコドンとアセトアミノフェンの組み合わせ)より高めでしたが勝ったとはいえず、外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬未満でした。オピオイド薬との比較は残念な結果となりましたが、第一の目標であるプラセボとの比較で勝利したことを受けてVX-548はいよいよ今年中頃までに米国FDAに承認申請されます。手術や手術以外も含む多様な患者へのVX-548の効果や安全性を調べた別の第III相試験の結果も踏まえ、急な痛みの治療薬として承認申請される予定です。対照群なしのその第III相試験ではVX-548使用患者の83%が好転(good, very good, or excellent)したと自己評価しました。慢性痛の用途も目指すVX-548は慢性痛への効果の検討も進んでおり、去年の12月には糖尿病患者の神経痛(糖尿病神経障害)への効果を調べた第II相試験での有望な結果が報告されています2)。点数が大きいほどより痛いことを意味する下限0で上限10の数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale:NPRS)が一日一回のVX-548投与で有意に2点強下がり、糖尿病神経障害の治療薬プレガバリンの1日3回投与と同程度の効果がありました。プレガバリンと効果が同程度でもVX-548の1日1回投与は強みになるかもしれません。Vertex社はFDAとの協議の後に糖尿病神経障害へのVX-548の大詰め試験を始める予定です。糖尿病神経障害は末梢神経痛の2割を占めます。Vertex社はさらに患者数が多い腰仙部神経根障害への同剤の第II相試験も昨年の12月に開始しています3)。腰仙部神経根障害は末梢神経痛の実に4割を占めます。装い新たなオピオイド薬も健闘オピオイド薬はとくに慎重な扱いが必要とはいえ、VX-548が勝てなかったことも示すように頼りになる薬として引き続き出番は多そうです。それゆえより安全に使えるようにする取り組みが脈々と続いています。米国のサンディエゴを拠点とするEnsysce Biosciences社が開発している半減期が長いオピオイド薬PF614はその1つで、第II相試験後のFDAとの協議結果を踏まえたうえで今年後半に第III相試験が始まります4)。VX-548の試験でも使われたhydrocodoneとアセトアミノフェンの合剤の製品Vicodinは4~6時間ごとの服用が必要ですが5)、PF614は半減期が12時間と長いので1日2回の服用で事足ります。また、乱用されやすさを確認する試験でPF614はオキシコドンに比べて好まれず、再び使いたいという欲求の程がより低くて済むことが確認されています。米国のオピオイド乱用の惨禍は深刻で、2021年のオーバードーズによる死者10万例(10万6,699例)の75%が処方用オピオイドを含む何らかのオピオイドに関連するものでした6)。ゆえにオピオイドの代わりとして使いうるVX-548やPF614のようなより安全な新しい処方薬の役割は大きいに違いなく、同国のオピオイド惨禍を落ち着けることに役立つでしょう。参考1)Vertex Announces Positive Results From the VX-548 Phase 3 Program for the Treatment of Moderate-to-Severe Acute Pain / BUSINESS WIRE 2)Vertex Announces Positive Results From Phase 2 Study of VX-548 for the Treatment of Painful Diabetic Peripheral Neuropathy / BUSINESS WIRE3)Evaluation of Efficacy and Safety of VX-548 for Painful Lumbosacral Radiculopathy (PLSR)4)Ensysce Biosciences Announces Positive End of Phase 2 Meeting with FDA for PF614 to Treat Severe Pain / ACCESSWIRE5)Vicodin / FDA6)Drug Overdose Death Rates / NIH

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固形がん治療での制吐療法、オランザピン2.5mgが10mgに非劣性/Lancet Oncol

 オランザピンは効果的な制吐薬であるが、日中の傾眠を引き起こす。インド・Tata Memorial CentreのJyoti Bajpai氏らは、固形がん患者における催吐性の高い化学療法後の低用量オランザピン(2.5mg)と標準用量オランザピン(10mg)の有効性を比較することを目的に、単施設無作為化対照非盲検非劣性試験を実施。結果をLancet Oncology誌2024年2月号に報告した。 本試験はインドの3次医療施設で実施され、固形がんに対しドキソルビシン+シクロホスファミドまたは高用量シスプラチン投与を受けているECOG PS 0~2の13~75歳が対象。患者はブロックランダム化法(ブロックサイズ2または4)により2.5mg群(1日1回2.5mgを4日間経口投与)または10mg群(1日1回10mgを4日間経口投与)に1:1の割合で無作為に割り付けられ、性別、年齢(55歳以上または55歳未満)、および化学療法レジメンによって層別化された。研究スタッフは治療の割り当てを知らされていなかったが、患者は認識していた。 主要評価項目は、修正intent-to-treat(mITT)集団における全期間中(0~120時間)の完全制御(催吐エピソードなし、制吐薬追加なし、悪心なしまたは軽度の悪心で定義)。日中の傾眠は関心のある安全性評価項目とされた。非劣性は治療群間における完全制御割合の差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が非劣性マージン10%未満の場合と定義された。 主な結果は以下のとおり。・2021年2月9日~2023年5月30日に、356例が適格性について事前スクリーニングを受け、うち275例が登録され、両群に無作為に割り付けられた(2.5mg群:134例、10mg群:141例)。・267例(2.5mg群:132例、10mg群:135例)がmITT集団に含まれ、うち252例(94%)が女性、242例(91%)が乳がん患者であった。・2.5mg群では132例中59例(45%)、10mg群では135例中59例(44%)が全期間において完全制御を示した(群間差:-1.0%、片側95%CI:-100.0~9.0、p=0.87)。・全期間において、2.5mg群では10mg群に比べ、Gradeを問わず日中の傾眠が認められた患者(65% vs.90%、p<0.0001)および1日目に重篤な傾眠が認められた患者(5% vs.40%、p<0.0001)が有意に少なかった。 著者らは、催吐性の高い化学療法を受けている患者においてオランザピン2.5mgは10mgと比較して制吐効果が非劣性で、日中の傾眠を減少させることが示唆されたとし、新たな標準治療として考慮されるべきとしている。

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妊娠中期のEPA/DHA摂取量が少ないと低出生体重児の割合が高い

 日本人女性では、妊娠中期の食事やサプリメントから摂取するエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)といったn-3系脂肪酸の摂取量が少ないと、低出生体重(low birth weight;LBW)児の割合が高いという研究結果を、山形大学大学院看護学専攻の藤田愛氏、吉村桃果氏らの研究グループが「Nutrients」に11月18日発表した。妊娠中期までのn-3系脂肪酸の摂取不足は、LBWの危険因子の一つだとしている。 これまでの研究から、妊娠中の母親の栄養不足はLBWの危険因子であり、中でも食事中のEPAやDHA不足はLBWリスクの上昇と関連することが報告されている。ただし、これまでの解析では、EPA、DHAの摂取量は食事からのものに限られており、サプリメントによる摂取量は考慮されていなかった。そこで、研究グループは、The Japan Pregnancy Eating and Activity Cohort Study(J-PEACH Study、代表:春名めぐみ氏)の一環として、妊娠中期(妊娠14~27週)におけるEPA/DHAの摂取量とLBWとの関連を検討する前向きコホート研究を実施した。 J-PEACH Studyは、妊娠中の食事摂取や身体活動などのライフスタイルと、妊娠中および産後1年間の健康状態との関連を明らかにすることを目的とした多施設共同の前向きコホート研究だ。今回は、2020年2月から10月までに、J-PEACH Studyに参加した504人の妊婦から収集した妊娠中期(妊娠14~27週)と分娩時のデータを用いて分析した。 研究では、まず、参加者に2種類の質問票に回答してもらった。一つは、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて58種類の食品や飲料の摂取量を尋ね、EPA/DHAの摂取量を算出した。もう一つは、自記式質問票を用いて、過去1カ月以内のDHAおよび/またはEPAサプリメントの摂取頻度(毎日、週に5~6回、3~4回、1~2回、時々、まったく摂取しない)を尋ねた。さらに、医療記録から、分娩時のアウトカムに関する情報を得た。参加者を、食事とサプリメントからのEPA/DHA総摂取量に基づき、低摂取群(172.3mg未満)、中摂取群(172.3mg以上374.9mg未満)、高摂取群(374.9mg以上)の3つに分けた上で、EPA/DHA摂取量とLBWとの関連を分析した。 分娩時の母親の平均年齢は34.2歳、妊娠中の体重増加は平均9.9kg、妊娠週数は平均38.9週だった。生まれた児は男児が47.0%、平均出生体重は3068.6gで、33人(うち男児8人)はLBW(2500g未満)だった。解析の結果、妊娠中期のEPA/DAH総摂取量が低い群ではLBW児の割合が高かった(P=0.04)。LBW児の割合には、男児、女児ともに有意な傾向は認められなかった。 以上の結果を踏まえ、研究グループは「妊娠中期までにn-3系脂肪酸の摂取量が少ない妊婦では、LBW児の割合が高くなる可能性がある。妊娠後期に十分量のEPAとDHAを胎児に移行するためにも、妊娠中期のうちにこれらを十分に摂取し、蓄積しておくことが重要ではないか」と強調。「そのためには、少なくとも妊娠中期までには食習慣を改善し、EPAやDHAなどの必要な栄養素を自ら摂取できるようにするため、妊婦一人ひとりの生活習慣や考え方に合わせた栄養指導を行うことが必要だ」と述べている。

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ようやくドイツで災害医療向けのガイドラインが完成【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第33回

2024年、日本は大変なスタートとなってしまいました。連日、能登半島地震の被害状況がメディアで報道され、痛ましい映像が流されている状況です。毎年50億円くらいの予算を投じて作成されている地震ハザードマップでは、能登半島はむしろ「安全」な地域になっていました。と、言いますか新潟県中越地震(2004年)、熊本地震(2016年)のときもハザードマップでは、危険が低い地域になっていたと思います。うーん、どうやら地震の予測はまだまだ難しそうです。日本に住んでいる限りは、本当に明日はわが身と思っておかなければいけないことを痛感しています。災害の多い日本は、災害派遣医療チーム(DMAT:Disaster Medical Assistance Team)をはじめてとして、災害医療のレベルが本当に高いですよね。大きな災害のたびに、何かしらの課題が指摘されて、次にはちゃんと修正されています。避けることができない災害なら、被害を最小限にするための努力を諦めない、そういった強い意志を感じます。自然災害が少ないドイツもやっと救急医療の整備を始めたドイツはほとんど地震がありません。近年は気候変動による河川の氾濫など、自然災害は増加傾向にありますが、わが国と比べると自然災害の頻度は低くなっています。実はドイツには救急に関して専門医制度が確立しておらず、大きな病院でも救急部門がありません。救急に関して遅れている国と言えます。救急認定医みたいな制度がありますが、医師会が実施している講習会を受けて、ちょっと実習するだけで取れるみたいです。以前、実習をさせてもらっていた開業医の先生が取っていましたが、「結局、救急のことはよく知らない」と言っているレベルでした。そんなドイツですが、最近、麻酔科学会と集中治療学会が中心となって、28個の学会が共同して災害医療のガイドラインの作成が行われました。ドイツの「災害医療のプレホスピタルガイドライン」です。画像を拡大する右上に作成日が書かれていますが、「2023年4月」と本当に最近作成されています。これまでなかったことにも驚きです。どちらかと言えば内容は自然災害よりもバイオテロなどへ意識を向けている印象となっています。自然災害が少ない代わりに、戦争や大規模テロのリスクが高いとされるヨーロッパ。一口に「災害医療」と言っても、国によってニーズがまちまちであることを感じます。

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何はさておき記述統計 その1【「実践的」臨床研究入門】第40回

いきなり!多変量解析?臨床研究における統計解析というと、みなさんはいきなり多変量解析を行ったり、臨床研究といえば多変量解析というようなイメージを持っていないでしょうか。重回帰分析、ロジスティック回帰分析、Cox回帰分析などの多変量解析のさまざまな手法を用いたことがある方や、学会などでこれらの統計解析手法を聞いたこと、論文で目にしたことがある方は多いでしょう。しかし、統計解析手法を正しく選択するためには、変数やアウトカム指標の型をよく知ることが必要となります。また、いきなり多変量解析に飛びつく前に、まずは変数やアウトカム指標の型を意識して正しく記述すること(記述統計)が重要です。今回からは、具体的な統計解析手法について、筆者らが行い英文論文化された臨床研究の実例などを引用して解説します。また、架空の臨床シナリオを元に立案したClinical Question(CQ)とResearch Question(RQ)に基づいた仮想データ・セットを用いて、統計解析の実際についても実践的に説明したいと思います。まずはここで、これまでブラッシュアップしてきたわれわれのRQの研究デザイン、セッティング、およびPECOについて整理します。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうかD(研究デザイン):(後ろ向き)コホート研究S(セッティング):単施設外来P(対象):慢性腎臓病(CKD)患者組み入れ基準:診療ガイドライン1)で定義されるCKD患者除外基準:ネフローゼ症候群、透析導入(または腎移植)された患者E(曝露要因):推定たんぱく質摂取量 0.5g/kg標準体重/日未満C(比較対照):推定たんぱく質摂取量 0.5g/kg標準体重/日以上*外来受診ごとに行った連続3回の24時間蓄尿検体を用いてMaroniの式より算出O(アウトカム):1)末期腎不全(慢性透析療法への導入もしくは先行的腎移植)*打ち切り(末期腎不全発症前の死亡、転院、研究参加同意撤回などによる研究からの離脱)2)糸球体濾過量(GFR)低下速度われわれのRQのプライマリアウトカムは末期腎不全であり、アウトカム指標はその発生率となります。発生率は下記の計算式で求められるのでした(連載第37回参照)。発生率=一定の観察期間内のアウトカム発生数÷at risk集団の観察期間の合計実際の臨床研究論文では、発生率は人年法という手法を用いて、1,000人を1年間観察すると(1,000人年)何件アウトカム(イベント)が発生したか、という形式で記述されることが多いです。以下に、筆者らが2023年に出版した臨床研究論文2)の実際の記述を示します。CKD患者において血清鉄代謝マーカーの1つであるトランスフェリン飽和度(TSAT)レベルと心血管疾患(CVD)およびうっ血性心不全(CHF)の発生リスクの関連を検討した論文です。Resultsの”Incidence of outcome measures"という小見出しで以下のように記載しました。"Supplementary Fig. S1 shows the incidence rates of CVD and CHF events based on serum TSAT levels. The overall incidence rates of CVD and CHF in the analysed participants were 26.7 and 12.0 events/1000 person-year, respectively. Participants with TSAT 40% (17.2 and 6.2 events/1000 person-year, respectively)."「補足図S1は、血清TSAT値に基づくCVDおよびCHFイベントの発生率を示している。全解析対象者におけるCVDおよびCHFの発生率は、それぞれ26.7および12.0イベント/1,000人年であった。TSATが20%未満の参加者でCVDおよびCHFの発生率が最も高かった(それぞれ33.9と16.5イベント/1,000人年)。一方、CVDとCHFの発症率はTSATが40%以上の患者で最も低かった(それぞれ17.2および6.2イベント/1,000人年)。(筆者による意訳)」この論文記載のポイントは、血清TSAT値20%未満(診療ガイドライン3)で鉄補充療法開始が推奨される基準値)のCKD患者において、CVDおよびCHFの発症率が最も高い、という記述統計の結果がまず示されたということです。次回からは仮想データ・セットを用いて、具体的な統計解析方法についても解説をしていきます。1)日本腎臓学会編集. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023. 東京医学社;2023.2)Hasegawa T, et al. Nephrol Dial Transplant. 2023;38:2713-2722.3)日本透析医学会編集.2015 年版 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン.

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統合失調症入院患者に対する長時間作用型注射剤や新規抗精神病薬治療が臨床アウトカムに及ぼす影響

 統合失調症治療に従事している医療関係者にとって、抗精神病薬のアドヒアランスや治療の中断は、依然として大きな課題となっている。米国・Johnson & Johnson Innovative MedicineのCharmi Patel氏らは、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬治療を開始、または入院後に新規経口抗精神病薬に切り替えた統合失調症患者を対象に、臨床的質の尺度を用いて評価を行った。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2023年12月21日号の報告。 本研究は、PINC AITM Healthcare Databaseを用いたレトロスペクティブコホート研究であり、統合失調症患者を対象とした2つのコホートから、入院後の臨床的質と治療継続のエンドポイントの評価を行った。対象患者は、all-payer databaseを用いて、米国の病院を拠点とするリアルワールドデータベースより抽出した。2017年4月~2020年4月、初回入院時にLAI抗精神病薬を開始した統合失調症患者7,292例または新規経口抗精神病薬に切り替えた統合失調症患者3万1,956例を分析対象に含めた。傾向スコアの重みづけは、2つのコホート間の患者、病院、臨床的特性の違いにより対応した。 主な結果は以下のとおり。・LAI抗精神病薬による治療は、新規経口抗精神病薬への切り替えと比較し、以下の点で有意な差が認められた(いずれも、p<0.001)。 ●30日間の抗精神病薬治療継続期間の延長 ●30日間の外来フォローアップ治療率の増加 ●治療中止までの平均期間の延長 ●治療中止リスクの低下・30日間の抗精神病薬治療継続率は、患者、臨床、病院の特徴で調整した後でも、LAI抗精神病薬治療患者において、新規経口抗精神病薬治療患者よりも、有意に高かった(調整オッズ比:1.2、95%信頼区間:1.1~1.3、p<0.001)。 著者らは「入院中にLAI抗精神病薬による治療を開始した統合失調症患者は、新規経口抗精神病薬に切り替えた患者よりも、より良い臨床的質と治療継続が得られる可能性がある。本知見は、統合失調症患者の退院後の薬物治療マネジメントの質の向上を目指すうえで、解決策の特定に役立つであろう」とまとめている。

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耳内ムカデの1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第250回

耳内ムカデの1例イラストACより使用どうも、異物論文専門家の倉原です。週に1回は「foreign body」で異物論文を検索している日本人がいることに、PubMedのアクセス解析のスタッフもビックリしていることでしょう。異物論文というのは「迷入場所」×「異物の種類」で可能性は無限大にあります。中でも耳の異物は結構たくさん報告されており、この連載でも「耳内ゴキブリの1例」を紹介させていただいたことがあります。今日紹介するのは「耳内ムカデの1例」です。おいおい、ほとんど同じじゃねーか!と思われる方もいるかもしれませんが。Ding MC, et al. Safe Removal of a Centipede From the Ear By Using an Innovative Practicable Method: A Case Report. Ear Nose Throat J. 2023 Mar;102(3):NP123-NP125.31歳の女性が救急外来を受診しました。就寝中に突然右耳が痛くなり、耳元で大きな音がしたというのです。視診で、右耳の中に黒い生き物がうごめいているのが発見されました。いや、もうホラーとか呪いの類やん。懐中電灯を使っておびき寄せようとしましたが、出てきてくれません。右耳のビデオ内視鏡検査で、黒い節足動物がいることが確認されました。これは…ゴキ…じゃない、ムカデだ…ッ!!たとえば、ムカデを刺激する方法が選択されますが、飛び出して医師の手に噛みついたら大変です。というわけで、ペットボトルを半分に切って、耳に密着させ、ボトルに開けた穴からキシロカインスプレーを噴射して、ムカデを追い出す作戦を敢行しました。噴霧後、すぐに体長5cmの黒いムカデが出てきました。いやー楽勝、楽勝!ゴキブリと同じように、これはオリーブオイルでもよかったのかな?と思いましたが、Discussionにはそのことは書かれていませんでした。まあ、耳内ムカデに遭遇することなんてまずないので、適切な摘出法なんて存在しないのでしょうが。

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中年期のタンパク質摂取が多いほど、健康寿命が延びる

 世界中で高齢化が進む中、健康寿命を延ばすことが求められており、栄養はその中の重要な要素である。中でもタンパク質は身体の健康維持に大きな役割を果たしているが、中年期にタンパク質を多く摂取した人ほど、疾病なく健康的に加齢する可能性があることが新たな研究でわかった。米国・タフツ大学のAndres V. Ardisson Korat氏らによる本研究の結果はThe American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年1月17日号に掲載された。 研究者らは、Nurses' Health Study(NHS)コホートの女性参加者を対象とし、登録時の年齢が30~55歳の12万1,700人に対し、ベースライン時およびその後2年ごとに追跡調査を実施した。初回調査の回答に不備がなく、ベースライン時に該当疾患のない4万8,762人が対象となった。 調査票から総タンパク質、動物性タンパク質、乳製品タンパク質(動物性タンパク質のサブセット)、植物性タンパク質の摂取量を調べた。「健康的な加齢」は、11の主要な慢性疾患がなく、精神状態が良好で、認知機能または身体機能のいずれにも障害がないことと定義した。ライフスタイル、人口統計学、健康状態を調整した多変量ロジスティック回帰を用いて、健康的な加齢に関連するタンパク質摂取量のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均(SD)年齢は48.6(6.3)歳、38.6%がBMI値25以上、22.9%が現在喫煙者、88.2%が既婚者であった。・総タンパク質摂取量の平均値(エネルギー百分率)は18.3%であり、内訳は動物性タンパク質13.3%(うち乳製品タンパク質3.6%)、植物性タンパク質4.9%であった。・3,721/4万8,762人(7.6%)が健康的な加齢の定義に合致した。タンパク質の摂取は、健康的な加齢のORと有意に関連していた。エネルギー3%増加あたりの健康的な加齢のORは、総タンパク質1.05(95%CI:1.01~1.10)、動物性タンパク質1.07(95%CI:1.02~1.11)、乳製品タンパク質1.14(95%CI:1.06~1.23)、植物性タンパク質1.38(95%CI:1.24~1.54)であった。・植物性タンパク質の摂取は、身体機能の制限がないことや精神状態が良好であることのOR上昇とも関連していた。動物性または乳製品タンパク質、炭水化物、または脂肪を植物性タンパク質に同等のカロリーで置き換えた場合、健康的な加齢との有意な正の関連が観察された(3%のエネルギーを植物性タンパク質に置き換えた場合のOR:1.22~1.58)。・主な植物性タンパク源は、パン、野菜、果物、ピザ、シリアル、焼き菓子、マッシュポテト、ナッツ類、豆類、ピーナッツバター、パスタであった。 著者らは、女性看護師の大規模コホートにおいて、中年期の食事からのタンパク質摂取、とくに植物性タンパク質摂取は、健康的な加齢の高いORおよび健康状態のいくつかの領域と関連しているようだ、と結論付けている。

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能登半島地震に対するJMATの対応/日医

 日本医師会常任理事の細川 秀一氏が、2024年1月31日の定例記者会見で、1月1日に発生した能登半島地震に対する日本医師会の最新の対応状況を報告した。 日本医師会は、1月30日時点でJMATととして金沢市に6チーム、七尾市に2チーム、穴水町に6チーム、志賀町に3チーム、能登町に3チーム、輪島市に3チーム、珠洲市に4チーム、金沢以南に11チーム、そのほかの地域に2チームを派遣していて、これまでに派遣した延べ人数は3,490人にのぼるという。これらの人数には、統括やロジスティクスを担うチーム、深部静脈血栓症などの治療を行う専門チームも含まれている。 細川氏は、今後は可能な限り同じ都道府県の医師会が、同じ地域の診療所や避難所に対して継続的にチームを派遣する体制にするという予定を示した。そこで1月30日に、能登北部に12チーム、能登中部に3チーム、金沢以南に7チーム、調整本部に3チームの合計25チームを毎日派遣する体制を組んでいくことを各都道府県の医師会に伝え、チーム編成の協力を要請した。 現地のJMAT調整本部では、2月より、地域の医師で構成するJMATを能登北部などに派遣する構想があるという。これに対して細川氏は、ベテランのかかりつけ医がサポートを強化することで被災者の健康を守り、ひいては災害関連死を防ぐことにつながっていくと期待を寄せた。 最後に、能登北部の交通状態が解消すれば、地域の医師や看護師などで編成するチームを相当数派遣できるようになると考えるが、それまでは重装JMAT(自己完結による活動歴のある隊員が含まれる医療救護班で構成した重装備のチーム)の派遣を続けていく必要があるという見解を示すとともに、現場の調整本部・支部の判断を尊重しつつ、厚生労働省とも連携していくとまとめた。

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CD55欠損症(CHAPLE症候群)、pozelimabが有効/Lancet

 補体因子C5に対する完全ヒト型IgG4P抗体であるpozelimabの皮下投与は、補体の過剰活性化を阻害し、CD55欠損症(CHAPLE症候群)の臨床症状および検査所見を消失させたことが、トルコ・マルマラ大学のAhmet Ozen氏らによる第II相および第III相多施設共同非盲検単群ヒストリカル対照試験の結果で示された。CD55欠損症は、CHAPLE(CD55 deficiency with hyperactivation of complement, angiopathic thrombosis, and protein-losing enteropathy)症候群とも呼ばれ、補体の過剰な活性化による腸管のリンパ管障害、リンパ管拡張症および蛋白漏出性胃腸症を特徴とするきわめてまれな生命を脅かす遺伝性疾患である。この希少遺伝性疾患であるCHAPLE症候群に対して、pozelimabは現時点での最初で唯一の治療薬として見いだされ、有効性と安全性の評価が行われた。著者は、「既知の原因が除外された蛋白漏出性胃腸症の患者では、CD55欠損症の検査を考慮し、CHAPLE症候群と診断された場合は早期にpozelimabによる治療を検討すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月23日号掲載の報告。タイ、トルコ、米国の3施設で10例を登録 研究グループは、タイ、トルコおよび米国の3施設において、CHAPLE症候群と臨床診断され、遺伝子検査で同定され末梢血細胞のCD55フローサイトメトリーまたはウェスタンブロット法で確認されたCD55機能喪失変異を有する1歳以上の患者を登録した。 pozelimabは、負荷用量として30mg/kgを1回静脈内投与し、その後は週1回、体重が40kg未満の患者には200mg/mL×1、40kg以上の患者には200mg/mL×2を皮下投与した。 主要エンドポイントは、24週時において、血清アルブミンが正常化し(12~24週に測定値の70%以上が3.5g/dL以上かつ2.5g/dL未満であったことがない、またはアルブミン投与がないことと定義)、次の4つの臨床症状が改善または悪化しなかった患者の割合とした。 4つの臨床症状とは、問題となる腹痛の頻度、排便の頻度、顔面浮腫の重症度、末梢浮腫の重症度で、顔面および抹消浮腫の重症度は、医師による評価スコア(5点満点、ベースラインで3点以上の場合に測定可能)が2点以上減少を改善、2点以上増加を悪化、などと定義した。 2020年1月27日~2021年5月12日に11例が募集され、そのうち10例を登録し解析集団に組み込んだ。pozelimab治療後、10例全例が主要評価項目を達成 有効性の解析は、48週時の評価を完了し、少なくとも52週間の治療を受けた患者を対象とした。また、安全性の解析は、さらに90日間の追跡調査と、少なくとも72週間の治療を受けた患者について行った。 患者は主に小児(年齢中央値8.5歳)で、トルコ、シリア、タイ、ボリビアの出身であり、ベースラインにおいて、年齢に対する体重および身長が著しく低かった。また、ベースラインのアルブミン値は平均2.2g/dLで、現地の検査基準範囲よりかなり低値であった。 pozelimab治療後、10例全例が血清アルブミンの正常化を認め、臨床症状の悪化はなく改善した。また、総補体活性は完全に阻害された。 有害事象は9例で発現した。重篤な有害事象は2例(嘔吐および下痢が1例、外傷性四肢骨折1例)に認められ、うち嘔吐および下痢の1例はpozelimabに関連すると考えられた。

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肥満の変形性関節症患者での減量は「ゆるやかに」が重要

 肥満症治療薬を使って体重を徐々に落とすことは変形性関節症(osteoarthritis;OA)患者の延命に役立つことが、新たな研究で明らかになった。ただし、急速な減量は、生存率の改善には寄与しないばかりか、場合によっては心血管疾患のリスクをわずかに上昇させる可能性も示された。中南大学(中国)のJie Wei氏らによるこの研究の詳細は、「Arthritis & Rheumatology」に12月6日掲載された。 肥満は関節炎の悪化要因である上に、早期死亡のリスク因子でもある。現行のガイドラインでは、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症の患者に対しては減量が推奨されているが、OA患者での減量と死亡との関連に関するデータは少ない。 そこでWei氏らは今回、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症患者6,524人(平均年齢60.9歳、女性70.2%、平均BMI 38.1)を対象に、肥満症治療薬による1年間の体重減少と全死亡率やその他の疾患との関連を検討した。対象患者のデータは、ウゴービやZepbound(ゼップバウンド)のような肥満症治療薬が登場する前の2000年1月1日から2022年3月31日の間に収集されたものであり、患者は肥満症治療薬としてオルリスタット(5,916人)、シブトラミン(488人)、rimonabant(リモナバント、120人)を服用していた。 5年間の追跡期間中の全死亡率は、1年の間に体重が増加したか変化のなかった人で5.3%、体重減少が緩徐〜中等度(2〜10%の減少)だった人で4.0%、急速(10%以上の減少)だった人で5.4%であった。体重が増加したか変化のなかった人を基準とした場合の全死亡のハザード比は、「緩徐〜中等度」の人では0.72(95%信頼区間0.56〜0.92)と有意に減少していたが、「急速」の人では0.99(0.67〜1.44)と有意ではなかった。さらに、「緩徐〜中等度」と「急速」のいずれの群でも、体重の減少に伴い、高血圧、2型糖尿病、静脈血栓塞栓症のリスクが低下するという減量の保護効果が認められた。しかし、体重減少が急速だった人では、心血管疾患のリスクについては、統計的に有意ではないものの上昇が認められた。一方、がんリスクについては、どちらの群でも有意な関連は認められなかった。 では、なぜ急速に減量した人でのみ、心血管疾患のリスク増加が認められたのだろうか。研究グループによると、先行研究では、急速な減量は心臓にダメージを与える可能性のあるタンパク質や電解質、微量栄養素の欠乏といった不健康な状態に関係することが示されているという。 研究グループは、本研究から学ぶべき重要ポイントとして、「肥満症治療薬によるゆるやかな減量は、過体重や肥満のOA患者の全体的なウェルネスを改善させる可能性がある」とまとめている。また、「今回の結果は、ゆるやかな減量を推奨している、肥満症治療の世界的なガイドラインと一致するものだ」と述べている。

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第82回 新たな疾患「殿様枕症候群」とは

illustACより使用SNSでバズりまくっている新しい疾患があります。それが「殿様枕症候群」です。これは国立循環器病研究センターから発表された疾患概念で1,2)、若年や中高年に起こる特発性椎骨動脈解離による脳卒中の一部であることが示されています。千鳥のノブさんがこの疾患にかかったことで有名になりましたが、椎骨動脈解離は私も数えるくらいしか診療したことがないので、こんなコラムでドヤれるほどの知識はございません。早々に凝固してくれれば軽症で済み、私が経験したことがある症例もすべて軽症でしたが、外膜にまで解離が進むとくも膜下出血を起こすことがあります。若年に多い疾患であるものの、原因不明の症例がほとんどだそうです。首をポキポキ鳴らすようなカイロプラクティックや整体によって椎骨動脈解離を起こす事例もあることから、日常生活における負荷も影響しているのではという見解もありました。首ポキと呼ばれる「スラスト法」については欧米でも危険視されており、平均年齢41歳の脳卒中患者集団では、30日以内にスラスト法を受けていた割合が4倍以上という報告もあります3)。とはいえ、誘因なく発症に至る椎骨動脈解離がいるのも事実です。国立循環器病研究センターの研究グループは、極端に高い枕を使っている人が存在することに注目しました。そう、「殿様枕」です。殿様だけではなくて、江戸中期では市中でも流行した枕です。これは、男性ではちょんまげ、女性では結い上げた髪を崩したくなかったという側面もあるようです。研究では、高い枕の使用が特発性椎骨動脈解離と関連があるかどうかを調べました。12cm以上を高値、15cm以上は極端な高値と定義しています。また、どのくらいの特発性椎骨動脈解離が高い枕に起因しているのかを検討しました。結果、特発性椎骨動脈解離の患者53例とコントロール患者53例を調査したところ、高い枕の使用と疾患の発症に有意な関連がみられました。とくに15cm以上の極端な高い枕では、オッズ比10.6倍という結果でした。臨床的に特発性椎骨動脈解離のうち、約1割がこの「殿様枕症候群」であることが示されました。この「殿様枕症候群」、英訳はどうなるんだろうと思ったら、さすがでした。「Shogun pillow syndrome」だそうです!参考文献・参考サイト1)国立循環器病研究センター:枕が高いと脳卒中になる? ―特発性椎骨動脈解離と高い枕の関係と、殿様枕症候群の提唱―2)Egashira S, et al. High pillow and spontaneous vertebral artery dissection: a case-control study implicating “Shogun pillow syndrome”. European Stroke Organisation 2024 Jan 29. [Epub ahead of print]3)Smith WS, et al. Spinal manipulative therapy is an independent risk factor for vertebral artery dissection. Neurology. 2003 May 13;60(9):1424-1428.

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悪性黒色腫への個別化mRNAワクチン+ペムブロリズマブの効果は?(KEYNOTE-942)/Lancet

 完全切除後の高リスク悪性黒色腫に対する術後補助療法として、個別化mRNAがんワクチンmRNA-4157(V940)とペムブロリズマブの併用療法は、ペムブロリズマブ単剤療法と比較し、無再発生存期間(RFS)を延長し、安全性プロファイルは管理可能であった。米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center at NYU Langone HealthのJeffrey S. Weber氏らが、米国およびオーストラリアで実施した第IIb相無作為化非盲検試験「KEYNOTE-942試験」の結果を報告した。免疫チェックポイント阻害薬は、切除後のIIB~IV期悪性黒色腫に対する標準的な術後補助療法であるが、多くの患者が再発する。mRNA-4157は、脂質ナノ粒子製剤中に最大34個のネオアンチゲンをコードするmRNAを含む個別化ワクチンで、個人の腫瘍mutanomeとヒト白血球抗原(HLA)タイプに特異的に合わせて調製されている。著者は、「今回の結果は、mRNAに基づく個別化ネオアンチゲン療法の術後補助療法における有益性を示すエビデンスとなる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月18日号掲載の報告。主要評価項目は無再発生存期間(RFS) 研究グループは、切除可能なIIIB~IV期(IIIB期は前回の手術から3ヵ月以内の再発のみ適格)の悪性黒色腫を有する18歳以上で、ペムブロリズマブ初回投与の13週間前までに完全切除術を受け、試験開始時に臨床的および放射線学的に無病であり、ECOG PSが0または1の患者を、mRNA-4157+ペムブロリズマブ併用療法(併用療法群)またはペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)に、病期で層別化して2対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。mRNA-4157は1mgを3週間間隔で最大9回筋肉内投与、ペムブロリズマブは200mgを3週間間隔で最大18回静脈内投与した。 主要評価項目は、ITT集団におけるRFS、副次評価項目は無遠隔転移生存、安全性などであった。ペムブロリズマブ単剤に対するmRNA-4157併用のハザード比は0.561 2019年7月18日~2021年9月30日に、157例が併用療法群(107例)および単剤療法群(50例)に割り付けられた。追跡期間中央値は、それぞれ23ヵ月および24ヵ月であった。 データカットオフ時点(2022年11月14日)で、再発または死亡のイベントは併用療法群で24例(22%)、単剤療法群で20例(40%)に発生し、RFSは併用療法群が単剤療法群と比べて延長し(再発または死亡のハザード比[HR]:0.561、95%信頼区間[CI]:0.309~1.017、両側p=0.053)、18ヵ月RFS率はそれぞれ79%(95%CI:69.0~85.6)、62%(95%CI:46.9~74.3)であった。 治療関連有害事象の多くはGrare1または2であり、Grare3以上は併用療法群でmRNA-4157関連事象12例(12%)、ペムブロリズマブ関連事象24例(23%)、単剤療法群でペムブロリズマブ関連事象9例(18%)であった。 有害事象によりペムブロリズマブの投与を中止した患者は、併用療法群で26例(25%)、単剤療法群で9例(18%)であった。免疫関連有害事象は、併用療法群で37例(36%)、単剤療法群で18例(36%)に認められた。

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早期アルツハイマー病患者の記憶定着と睡眠依存性

 空間ナビゲーションは、アルツハイマー病において早期に影響を受ける海馬-嗅内皮質回路機能の重要な基盤となっている。アルツハイマー病の病態生理は、睡眠/覚醒サイクルと動的に相互作用し海馬の記憶を損なうというエビデンスの報告が増えている。ドイツ・University Hospital of Schleswig HolsteinのAnnika Hanert氏らは、早期アルツハイマー病患者の記憶定着と睡眠依存性との関連を評価した。Neurobiology of Disease誌2024年1月号の報告。 症候性アルツハイマー病コホート(12例、平均年齢:71.25±2.16歳)における睡眠依存性の影響を解明するため、夜間睡眠の前後における、仮想現実タスクによる海馬の場所記憶および単語ペア連想タスクによる言語記憶を評価した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者では健康な対照群と比較し、言語タスクにおいて夜間の記憶保持が損なわれているとともに、睡眠紡錘波の活動の減少(速い睡眠紡錘波の振幅低下、p=0.016)および遅い振幅(slow oscillation)の持続時間増加(p=0.019)との有意な関連が認められた。・紡錘波の密度の高さ、遅い振幅の下方から上方への移行速度の速さ、遅い振幅とネストされた紡錘波の間の時間遅延は、対照群では記憶機能の向上を予測したが、アルツハイマー病患者では予測しなかった。 著者らは、「アルツハイマー病における記憶処理および記憶定着は、ノンレム睡眠中の振幅ダイナミクスの機能不全および紡錘波の遅い振幅との結合を反映して、わずかに損なわれていることが示唆された」としている。

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切除可能III期NSCLC、toripalimab併用で無イベント生存期間が改善/JAMA

 切除可能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療では、周術期の化学療法にtoripalimab(プログラム細胞死タンパク質1のヒト化IgG4Kモノクローナル抗体)を追加すると、化学療法単独と比較して、無イベント生存期間が有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが実施した「Neotorch試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年1月16日号に掲載された。中国50施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 Neotorch試験は、中国の50施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年3月12日~2023年6月19日に参加者を登録した(中国・Shanghai Junshi Biosciencesの助成を受けた)。 年齢18~70歳、切除可能なStageII/IIIのNSCLC患者(非扁平上皮がんの場合はEGFRまたはALK遺伝子変異のない患者)を、術前補助療法として担当医が選択したプラチナ製剤ベースの化学療法(3サイクル)との併用で3週ごとにtoripalimab(240mg)またはプラセボを投与し、術後補助療法として同レジメンを1サイクル施行した後、維持療法として3週ごとにtoripalimab(240mg)単独またはプラセボを最長で13サイクル投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。病理学的奏効率も優れる 今回の中間解析(データカットオフ日:2022年11月30日)では、StageIIを除外したStageIIIのNSCLC患者404例(年齢中央値62歳、男性92%)を対象とした(toripalimab群202例、プラセボ群202例)。 主要評価項目である無イベント生存期間中央値は、プラセボ群が15.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.6~21.9)であったのに対し、toripalimab群は評価不能(NE)(95%CI:24.4~NE)であったが、統計学的に有意に優れた(ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.28~0.57、p<0.001)。 もう1つの主要評価項目である病理学的奏効(major pathological response、腫瘍床の生存腫瘍細胞が10%以下)の割合は、プラセボ群が8.4%(95%CI:5.0~13.1)であったのに比べ、toripalimab群は48.5%(41.4~55.6)と有意に高率であった(群間差:40.2%、95%CI:32.2~48.1、p<0.001)。予期せぬ治療関連毒性は認めない 副次評価項目である全生存期間中央値(NE vs.30.4ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.38~1.00、p=0.05)、独立病理評価委員会の盲検下の判定による病理学的完全奏効(24.8% vs.1.0%、群間差:23.7%、95%CI:17.6~29.8、p<0.001)、担当医判定による手術を受けた患者の無病生存期間中央値(NE vs.19.3ヵ月、HR:0.50、95%CI:0.33~0.76、p<0.001)は、いずれもtoripalimab群で優れた。 試験期間中のGrade3以上の治療関連有害事象(toripalimab群63.4% vs.プラセボ群54.0%)、投与中止をもたらした治療関連有害事象(9.4% vs.7.4%)、致死的な有害事象(3.0% vs.2.0%)の発現率は両群で同程度であった。また、投与中止をもたらした有害事象(28.2% vs.14.4%)、免疫関連有害事象(42.1% vs.22.8%)はtoripalimab群で頻度が高かった。予期せぬ治療関連毒性は認めなかった。 著者は、「併用療法は、根治手術の割合が高く、R0切除率には影響を与えず、手術関連有害事象を増加させなかった」とし、「これらの知見は、切除可能なStageIIIのNSCLCに対する新たな治療選択肢として、toripalimabとプラチナ製剤ベースの化学療法との併用を支持するものである」と指摘している。

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一人暮らしの高齢者は調理技術が低いと死亡リスクが高まる

 一人暮らしの高齢者は、調理技術が低いと死亡率が高まる可能性のあることが、東京医科歯科大学大学院国際健康推進医学分野の谷友香子氏らによるコホート研究から示された。一人暮らしの高齢者では、調理技術が高い人と比べて、低い人では死亡リスクが2.5倍に上ったのに対し、同居をする高齢者では調理技術と死亡リスクに関連は見られなかった。研究結果の詳細は「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に11月10日掲載された。 調理技術が低く、自炊する機会が少ない人は健康リスクが高まる可能性があり、一人暮らしの高齢者ほど、その傾向は強いと考えられている。そこで、谷氏らは今回、自立して生活する日本人高齢者を対象にコホート研究を実施し、参加者を同居の有無別に分け、調理技術が死亡率と関連するか否かを調べた。 この研究は、2016年から2019年に実施された住民ベースのコホート研究である日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)に参加した、全国23市町在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1万647人(女性54.5%、80歳以上が19.8%)を対象に、3年間追跡調査したものだ。調理技術は、ベースライン時に、「野菜や果物の皮をむくことができる」「野菜や卵をゆでることができる」「焼き魚を作ることができる」など7項目について6段階で自己評価(1~6点)してもらい、その合計点の平均点によって「高(4点以上)」「低」の2つのグループに分けた。 参加者のうち4人に1人(25%)は調理技術が低いと分類された。また、一人暮らしは14%だった。参加者を同居の有無で層別し、それぞれ傾向スコアを用いて学歴や世帯年収、配偶者の有無、高次生活機能、近隣の食料品店の有無などをマッチさせた調理技術が高いグループと低いグループ(一人暮らしの高齢者171組、同居の高齢者2,161組)で、調理技術と全死亡リスクの関連を分析した。 平均3.7年の追跡期間中に、計520人が死亡した。解析の結果、傾向スコアをマッチさせた後では、一人暮らしの高齢者では、調理技術が低いと高い場合に比べて全死亡リスクが2.5倍(ハザード比2.50、95%信頼区間1.10~5.68)有意に上昇したのに対し、同居する高齢者では1.05倍(同1.05、0.82~1.33)と有意な関連は見られなかった。また、調理技術の低さは、調理頻度の低さ、野菜や果物の摂取量の少なさ、外出頻度の低さや身体活動時間の短さと関連しており、これらが調理技術と死亡との関連を一部説明していることも分かった。 以上から、著者らは「調理技術の低さは死亡リスクと関連し、この関連は同居の有無によって異なることが分かった。つまり、料理技術の高い高齢者は、たとえ一人暮らしであっても死亡リスクは上昇しないとも言える」と結論付けている。また、調理をする人は外出や立位などの身体活動が増えるほか、献立を考えることなどは認知機能の維持に働き、結果として死亡リスクの低減につながっている可能性があると考察。その上で、「高齢化が進む中、一人暮らしの高齢者は今後も増加が見込まれる。高齢者の調理技術を高めるための支援や介入などは公衆衛生上、重要な課題だ」と述べている。

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