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言ってませんか? 実はうまく伝わらない「バットで殴られたような痛みですか?」【もったいない患者対応】第11回

登場人物<今回の症例>70代男性夕食後に突然発症した頭痛で救急要請意識清明。頭全体の激しい痛みを訴える<急いで痛みの性質を確認する必要がありそうです>どこが痛みますか?頭全体がとにかく痛いです。それは、バットで殴られたときのような痛みでしょうか?バット? そんなもんで殴られたことはないからわからん!えーっと、最高の痛みを10とすると、いまは何ですか?え? 10? どういう意味?1番痛くないときをゼロ、最も痛いときを10とすると…。よくわからん! とにかく痛いんだ。なんとかしてくれよ!【POINT】頭痛を訴える患者さんに対し、くも膜下出血で特徴的とされる「バットで殴られたときのような痛み」であったかを尋ねる唐廻先生。しかしあまり有用な情報が得られず、今度はペインスケールを使って痛みの程度を尋ねようとしました。ところが、今度は患者さんから「よくわからん」と一言。どうすればスムーズに問診できるのでしょうか?突然のペインスケールはかえって混乱を招く教科書では、典型的な痛みの表現の仕方として、くも膜下出血の「突然バットで殴られたような」や、心筋梗塞の「ゾウに踏まれたような」というものがよく紹介されています。しかし実際にバットで殴られたり、ゾウに踏まれたりしたことのある人はいないでしょう。突然こうした質問を投げかけられると、患者さんは予想外の事態に面食らってしまうことがあります。また、痛みの程度を知る際には確かにペインスケールが有用ですが、これは患者さん自身にもある程度の“慣れ”が必要になる手法です。たとえば、がん性疼痛などでは、前と比べてどうであったかを数字で表現することで、痛みの推移を医療スタッフと共有し、鎮痛薬の用量調節を行う、といったように便利に使うことができます。しかし、初診で救急搬送されたような患者さんに対して、いきなり「最高が10としたらいまは何ですか?」と聞いても、まともに答えられる人はいません。医師よりは看護師に多い印象ですが、初診の時点で患者さんにこのような質問を投げかけ、「は!?」と不思議そうな顔で返されている姿をときどき見ます。緊急時はとくにスムーズな問診が必須となるため、とにかく答えやすい質問方法を選ぶ必要があるでしょう。では、どのように聞けばスムーズに答えてもらえるのでしょうか?「人生最大の痛みですか?」痛みの程度を知りたい際に、最も答えやすい質問が「人生最大の痛みかどうか」です。同程度の痛みをこれまで何度か経験している・繰り返している場合と、今回初めて人生で経験したこともないほどの強い痛みに見舞われている場合では、想定する疾患は変わってきます。「OPQRST」で痛みの程度以外の情報も集める目の前で強い痛みを訴える患者さんの場合、最初に痛みの“程度”ばかりに意識が向かいがちですが、それ以外の情報もなるべく素早く収集する必要があります。問診すべき情報は語呂合わせでよく紹介されますが、例えば「OPQRST」が便利です。O:Onset 発症様式P:Provocative/Palliative 増悪・緩解因子Q:Quality/Quantity 痛みの性質・程度R:Region/Radiation 部位・放散痛S:associated Symptoms 関連症状T:Time 経過これらの項目をなるべく素早く聞いていき、痛みという主観的な情報を客観的な情報に“翻訳”していくことが大切です。これでワンランクアップ!どこが痛みますか?頭全体がとにかく痛いです。人生でこれまで経験したことないほど痛いですか?※1※1:緊急時には感覚的に答えられる質問が◎こんなに痛いのは初めてです。いつ頃痛くなりましたか?※2※2:痛みの強さ以外のこともしっかり聞き取る2時間くらい前です。全体が締めつけられるような痛みですか? 鼓動に合わせてガンガン痛みますか?※3(以下略)※3:クローズドクエスチョンだとスムーズに答えてもらいやすい。

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前夜が超高温だった日は脳卒中リスクが増大

 夜間の暑熱曝露と脳卒中との関連を調べた15年間にわたる時間層別ケースクロスオーバー解析によって、前夜が極端な暑さだった日は脳卒中のリスクが有意に高く、2006~12年と比較して2013~20年はそのリスクが増大していたことを、ドイツ・Helmholtz Zentrum MunchenのCheng He氏らが明らかにした。European Heart Journal誌2024年6月21日号掲載の報告。 都市部のヒートアイランド現象により、ここ数十年で夜間の気温は昼間の気温よりも急速に上昇している。夜間の暑熱曝露の増加は、睡眠や体温調節などを妨げて健康に重大なリスクをもたらす可能性があるが、脳卒中リスクに及ぼす影響を調査した研究はない。そこで研究グループは、ドイツのアウクスブルク地域における夜間の暑熱曝露と脳卒中リスクとの関連性を調査し、15年間にわたる時間的変動を調べた。 対象は、2006年1月1日~2020年8月31日にアウクスブルク大学病院神経科に入院した脳卒中患者2万2,284例であった。そのうち、寒い季節に室内暖房によって引き起こされる大幅な温度差を避けるために、5~10月に発生した脳卒中症例に限定して解析を行った。平均気温、相対湿度、気圧などの1時間ごとの気象データは地元の気象観測所から取得した。分布ラグ非線形モデルを用いた時間層別ケースクロスオーバー解析によって、日中の最高気温やその他の気候変数を調整したうえで、高温夜間過剰(hot night excess[HNE])指数で測定した極端な夜間の暑さ(extreme nighttime heat:HNEの97.5パーセンタイル)に関連する脳卒中リスクを推定した。なお、本研究において、「夜間」は前日の夜の始まりから当日朝の夜の終わりまでであった。 主な結果は以下のとおり。・2006~20年の5~10月に脳卒中のために入院した1万1,037例(平均年齢:71.3歳)を解析に含めた。2006~12年は5,343例、2013~20年は5,694例であった。・2006~12年から2013~20年にかけて平均気温は0.3度上昇し、最高気温は0.7度上昇した。極端な夜間の暑さの日は79日から82日に増加した。・調査期間全体では、極端な夜間の暑さの日に脳卒中リスクが有意に増加していた。オッズ比(OR)は1.14(95%信頼区間[CI]:1.01~1.32)であった。・期間別では、2006~12年は夜間の極端な暑さの影響はみられなかったが(OR:0.99[95%CI:0.91~1.08])、2013~20年は有意な影響がみられた(OR:1.33[95%CI:1.18~1.50])。・2006~12年では、夜間の極端な暑さは年間2例の脳卒中の過剰発生に関連していたが、2013~20年では33例の過剰発生と関連していた。・高齢者、女性、軽度の脳卒中患者では、脳卒中リスクが顕著に増大していた。 これらの結果より、研究グループは「昼間の最高気温を考慮しても夜間の暑熱曝露が脳卒中リスクの上昇と関連していて、2006~12年と比較して2013~20年ではこのリスクが大幅に増大していた。日中の温暖化よりも夜間の温暖化が著しく進むと予測される状況において、夜間の暑熱曝露が脳卒中イベントに及ぼす影響を軽減するための予防措置が必要である」とまとめた。

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EGFR陽性NSCLC、オシメルチニブはどこで使う?~日本のリアルワールドデータ

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、オシメルチニブが標準治療として広く用いられている。そこで、上原 悠治氏(国立がん研究センター/都立駒込病院)らの研究グループは、リアルワールドデータを用いて、1次治療に第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)オシメルチニブを用いた場合と、第1世代または第2世代EGFR-TKIを用いた場合の治療成績を後ろ向きに比較した。その結果、1次治療の薬剤選択によって全生存期間(OS)には有意差がみられなかった。また、1次治療で第1世代または第2世代EGFR-TKIを用いたのちに、2次治療でオシメルチニブを用いた患者は、1次治療でオシメルチニブを用いた患者よりもOSが良好な傾向にあった。本研究結果は、ESMO Real World Data and Digital Oncology誌2024年9月号に掲載された。 本研究は、2015年1月~2021年3月の期間にEGFR-TKIによる治療を受けた、EGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者485例を対象とした。対象患者を1次治療でオシメルチニブによる治療を受けた患者(1Lオシメルチニブ群)、1次治療で第1世代または第2世代EGFR-TKIによる治療を受けた患者(1L 1G/2G TKI群)に分類し、無増悪生存期間(PFS)とOSを比較した。さらに、1L 1G/2G TKI群を2次治療でオシメルチニブによる治療を受けた患者(2Lオシメルチニブ群)、オシメルチニブによる治療を受けなかった患者(オシメルチニブなし群)に分類して、OSの12ヵ月ランドマーク解析を実施した。また、1Lオシメルチニブ群と1L 1G/2G TKI群で傾向スコアマッチングを実施して比較した。 主な結果は以下のとおり。・1Lオシメルチニブ群は213例、1L 1G/2G TKI群は272例であった。・PFS中央値は、1Lオシメルチニブ群23.4ヵ月、1L 1G/2G TKI群13.9ヵ月であり、1Lオシメルチニブ群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.74、p<0.001)。・OS中央値は、1Lオシメルチニブ群33.7ヵ月、1L 1G/2G TKI群41.8ヵ月であり、両群間に有意差はみられなかった(HR:0.92、95%CI:0.65~1.29)。・OSの12ヵ月ランドマーク解析において、OS中央値は1Lオシメルチニブ群34.4ヵ月、2Lオシメルチニブ群63.8ヵ月、オシメルチニブなし群22.5ヵ月であった。・病勢進行は319例(66%)に認められた。中枢神経系の病勢進行は、1Lオシメルチニブ群(7%)と2Lオシメルチニブ群(10%)が、オシメルチニブなし群(35%)と比較して少なかった。肺の病勢進行は、1Lオシメルチニブ群(28%)が、2Lオシメルチニブ群(51%)やオシメルチニブなし群(53%)と比較して少なかった。・傾向スコアマッチング後、各群188例ずつ抽出された。・傾向スコアマッチング後のOS中央値は、1Lオシメルチニブ群33.7ヵ月、1L 1G/2G TKI群46.6ヵ月であり、両群間に有意差はみられなかった(HR:0.95、95%CI:0.67~1.45)。・同様に、OSの12ヵ月ランドマーク解析では、OS中央値は1Lオシメルチニブ群34.4ヵ月、2Lオシメルチニブ群51.8ヵ月、オシメルチニブなし群29.3ヵ月であった。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎、ネモリズマブ追加で治療成功率が向上/Lancet

 そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年の治療において、基礎治療(局所コルチコステロイド[TCS]±局所カルシニューリン阻害薬[TCI])単独と比較して、基礎治療+ネモリズマブ(インターロイキン-31受容体サブユニットα拮抗薬)は、治療成功および皮膚症状改善の達成率の向上をもたらし、安全性プロファイルは両群でほぼ同様であることが、米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らが実施した2つの臨床試験(ARCADIA 1試験、ARCADIA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年8月3日号に掲載された。同じデザインの2つの無作為化プラセボ対照第III相試験 ARCADIA 1試験とARCADIA 2試験は、同じデザインの48週の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、ARCADIA 1試験は2019年8月~2021年9月に14ヵ国161施設で、ARCADIA 2試験は2019年8月~2022年11月に11ヵ国120施設で患者を登録した(Galdermaの助成を受けた)。 2つの試験とも、年齢12歳以上、そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎(登録の2年以上前に診断)で、TCS±TCIによる治療で効果が不十分であった患者を対象とした。 被験者を、基礎治療(TCS±TCI)との併用で、ネモリズマブ30mg(ベースラインの負荷用量60mg)を4週に1回皮下投与する群、またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは2つで、16週目の時点でのInvestigator's Global Assessment(IGA)に基づく治療成功(IGAが0[皮膚病変消失]または1[同ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上の改善)、およびEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI-75)とした。9つの主な副次エンドポイントもすべて有意に改善 2つの試験に合計1,728例を登録した。ネモリズマブ群に1,142例(ARCADIA 1試験620例[平均年齢33.5歳、女性48%]、ARCADIA 2試験522例[34.9歳、52%])、プラセボ群に586例(321例[33.3歳、45%]、265例[35.2歳、51%])を割り付けた。 両試験とも2つの主要エンドポイントを満たした。16週時のIGAに基づく治療成功の割合はプラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に優れた(ARCADIA 1試験:36% vs.25%、補正後群間差:11.5%[97.5%信頼区間[CI]:4.7~18.3]、p=0.0003/ARCADIA 2試験:38% vs.26%、12.2%[4.6~19.8]、p=0.0006)。 また、EASI-75の達成割合も、プラセボ群に比しネモリズマブ群で有意に良好だった(ARCADIA 1試験:44% vs.29%、補正後群間差:14.9%[97.5%CI:7.8~22.0]、p<0.0001/ARCADIA 2試験:42% vs.30%、12.5%[4.6~20.3]、p=0.0006)。 9つの主な副次エンドポイント(そう痒[Peak Pruritus Numerical Rating Scale:PP-NRS]、睡眠[Sleep Disturbance Numerical Rating Scale:SD-NRS]など)はいずれも、ネモリズマブ群で有意な有益性を認めた。ネモリズマブ関連の可能性がある有害事象は1% 安全性プロファイルは両群でほぼ同様だった。少なくとも1件の試験治療下における有害事象を発現した患者は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で50%(306/616例)、ARCADIA 2試験で41%(215/519例)、プラセボ群ではそれぞれ45%(146/321例)および44%(117/263例)であった。このうち重篤な有害事象は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で1%(6例)、ARCADIA 2試験で3%(13例)、プラセボ群ではそれぞれ1%(4例)および1%(3例)であった。 ネモリズマブ関連の可能性がある治療関連有害事象は、ARCADIA 2試験で5例(1%)に10件報告された。 著者は、「アトピー性皮膚炎は多面的な病態生理を有する疾患で、臨床においてはさまざまな作用機序を有する薬剤を必要とするため、有効な治療法の探索を継続することは重要である」と述べた。

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膵管がんの化学療法抵抗性を逆転させ得る方法とは?

 膵臓がんは特に攻撃的で治療が難しいが、その理由の1つは化学療法に抵抗性を示すことが多いからである。しかし、米スタンフォード大学材料工学分野のSarah Heilshorn氏らが、膵臓がんで化学療法抵抗性が生じる理由と、それを逆転させ得る方法に関する研究結果を、「Nature Materials」に7月4日報告した。この研究によると、がん細胞周囲の組織の物理的な硬さが、化学療法の効果を低下させているのだという。Heilshorn氏は、「膵臓がんの大きな臨床的課題は化学療法抵抗性であるが、本研究結果は、それを克服するための今後の薬剤開発の新しい方向性を示唆するものだ」と述べている。 本研究では、膵臓がんの90%を占める浸潤性膵管がん(pancreatic ductal adenocarcinoma;PDAC)に焦点が当てられた。PDACは膵管上皮から発生し、コラーゲン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸などを主成分とする細胞外マトリックス(extracellular matrix;ECM)の過剰な産生と硬化を特徴とする。 実際に膵臓で何が起こるのかを解明するために、Heilshorn氏らは研究室でPDACのECMの主要な特徴を再現した硬化したマトリックスを作成し、その中で3人の膵臓がん患者のPDAC細胞に由来するオルガノイド(幹細胞を三次元で培養して得られるミニ臓器)を培養した。Heilshorn氏はこのマトリックスについて、「われわれは、がん細胞がECMの化学的シグナルや機械的性質に反応しているのではないかという考えを検証できるようなデザイナー・マトリックスを作成した」と語っている。 その結果、これらのオルガノイドは、実際の患者のがん細胞と同様に、いくつかの抗がん薬に対して抵抗性を持つようになることが確認された。また、このような抵抗性は、高剛性の環境では、ヒアルロン酸と結合する受容体であるCD44とヒアルロン酸の相互作用が増大し、その結果、抗がん薬を細胞外に排出するトランスポーターが多く作られ、抵抗性が生じることも明らかになった。さらに、オルガノイドの培養環境を高剛性のものから低剛性に変えることで、化学療法に対する抵抗性を逆転させられることも示された。 Heilshorn氏は、「がん細胞を、化学療法に反応しやすい状態に戻すことができることが分かった。このことは、CD44受容体を通じた硬化のシグナル伝達を破壊することができれば、患者の膵臓がんを通常の化学療法で治療できる可能性のあることを示唆している」と述べている。 Heilshorn氏は、「がん細胞が薬物に反応するかどうかは、ECMに依存しているため、化学療法をデザインする際には、患者に関連したECMで培養をテストすべきだ」と話している。 研究グループは、CD44受容体、およびその活性後にがん細胞で生じる一連の出来事についての調査を続けている。また、細胞培養モデルを改良し、化学療法や他のがん治療が特定の患者にどのように作用するのかを予測できるようにすることにも取り組んでいるという。

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年間300件のPCIを実施!MGHでのフェロー生活【臨床留学通信 from Boston】第2回

年間300件のPCIを実施!MGHでのフェロー生活マサチューセッツ総合病院(MGH)において、私はインターベンショナル・カーディオロジー・フェローとして1年間のプログラムに従事しています。このプログラムは、3年間のジェネラル・カーディオロジー研修を経た後に行うアドバンスド・フェローシップです。その後の進路として、主に冠動脈のインターベンショナル・カーディオロジストの指導医(attending)として働く場合と、さらに1年間のアドバンスド・インターベンショナル・カーディオロジー・フェローシップ(構造的心疾患、血管内治療、複雑な冠動脈治療)のプログラムを行うことがあります。今回の1年間のプログラムでは、最低250件の経皮的冠動脈形成術(PCI)が求められます。プログラム側は、フェローにこれだけの症例数を供給できるという前提で、雇用するフェローの人数を決めています。MGHでは年間1,600~1,800件のPCIがあり、4人のインターベンショナル・カーディオロジー・フェローがそれぞれ350件ほど経験します。一般的な日本の病院での後期研修医では年間100件ほどではないかと思われるので、MGHでの症例は1年で集約されていると感じます。MGHでの業務は、朝6時半過ぎに病院に到着し、朝7時15分のzoom形式のカンファレンスの前に、1例目の患者さんの診察、カルテ記入、同意書取得を行います。前職のニューヨークのモンテフィオーレではこのような業務はなかったため、少々面倒だと感じています。ボストン近郊の高い家賃や子供の学区を考慮し郊外に住んでいるため、毎朝5時に起きて支度しなければならず、渡米直後の時のインターンさながらの生活を送っています。カンファレンス終了後、7時40分には1例目のPCIが始まります。4人中3人がカテ室、1人は外来と、週ごとに担当が割り当てられ、カテーテルの週は基本的に手技に専念します。カテ室はインターベンションだけで6部屋あり、不整脈はまた別にあります。ただの診断カテーテルはジェネラル・カーディオロジー・フェローやフィジシャン・アシスタントに任せ、PCIを効率的に経験できるように、フェロー3人はカテ室の配属された部屋以外にも随時渡り歩きながら対応します。診断カテーテルの結果を受けてPCIは急に始まることが多く、患者の年齢や名前もわからないまま手技に取り掛かることもしばしばです。カテ室から別のカテ室に行き、「ここのLADを治そう」といきなり言われたりします。もちろん私は日本での経験があるため、さほど難しいことをやっているわけではないので問題はありませんが、なかなか大変です。米国のトレーニングシステムは、このようにフェローに多くの症例を経験させるように設計されていますが、逆に一般の内科レジデントが診断カテーテルを触ることはほとんどありません。ジェネラル・カーディオロジー・フェローはPCIを行わないため、そこは日本の後期研修医と異なる点で、短期的に手技を詰め込む米国流のやり方だと感じます。実際、手技の数が大事である一方で、うまく見返したり、難しい症例のプランをよく練ったりするのも大切なので、一長一短と感じています。

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influenza(インフルエンザ)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第9回

言葉の由来“influenza”という言葉は、ラテン語の“influentia”(流れ込む)から派生したものだそうです。これは“influence”(影響)という英単語の語源でもあるようです。過去の記録によれば、当時の人々は、この病気が天体の影響によって引き起こされると考えていたようで、とくに占星術の影響が強かった中世では、星々の位置が地上の出来事に影響を与えると信じられていたそうです。このため、突然広がる流行性の病気は、天体からの影響だと解釈されていたわけです。興味深いことに、18世紀ごろまでは“influenza di freddo”(寒さの影響・流れ込み)という言い方もされており、寒気が体内に「流れ込む」ことで病気が発生するとも考えられていたようです。時代が変わり、19世紀後半に病原体としてのウイルスが発見されるまで、この「天体の影響」や「寒気の流れ込み」という概念が続いていました。現代の医学では、インフルエンザはウイルス感染症であることが明らかになっていますが、その名称には中世の人々の世界観が今も残っているようです。なお、“influenza”は日本語でも「インフルエンザ」ですが、日本では古くは「地域名+かぜ」あるいは「流行性感冒」と呼ばれており、ウイルスが分離され、命名されるまでは、この病気に対する特別な名前はなかったようです。併せて覚えよう! 周辺単語抗ウイルス治療antiviral therapy混合感染concomitant infection抗原シフトantigenic shiftワクチンvaccine飛沫感染予防droplet precautionこの病気、英語で説明できますか?Influenza, commonly known as "flu", is a highly contagious respiratory illness caused by influenza viruses. It can cause mild to severe illness and, at times, can lead to death. 参考1)Michael Quinion. “Influenza”. World Wide Words. 1998-01-03.(参照2024-07-23)2)“Tis the (Flu) Season: The History of ‘Influenza”. Merriam-Webster.(参照2024-07-23)講師紹介

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日本人の進行・転移胸腺腫、ステロイドが有効か

 何らかの前治療歴を有する局所進行または転移を有する胸腺腫患者において、ステロイドが抗腫瘍効果を示す可能性が示された。新潟大学の田中 知宏氏らがRespiratory Investigation誌2024年7月4日号で報告した。 国立がん研究センターにおいて、2010年1月~2021年3月にステロイド単剤(プレドニゾロンまたはデキサメタゾン)による治療を受けた局所進行または転移を有する胸腺腫患者13例を対象として、後ろ向き研究を実施した。評価項目は、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などとした。 主な結果は以下のとおり。・胸腺腫のWHO分類の内訳はABが3例(23%)、B1が1例(8%)、B2が5例(38%)、B3が4例(31%)であった。・対象患者は、手術、放射線療法、化学療法のうち、少なくとも1つ以上の治療歴があった。・ステロイドの初期用量は、プレドニゾロン換算で0.9mg/kg/日(範囲:0.4~1.1)であった。・ORRは53.8%(7/13例)で、SDは38.5%(5/13例)であった。・奏効までの期間の中央値は21日(範囲:6~88)であった。・PFS中央値は5.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.5~9.6)であった・OS中央値は25.3ヵ月(95%CI:7.1~推定不能)であった。・WHO分類B3の患者は良好な治療反応を示す傾向にあった(ORR:75%、PFS中央値:10.6ヵ月、OS中央値:45.0ヵ月)。 本研究結果について、著者らは「局所進行または転移を有する胸腺腫患者において、ステロイド単剤が抗腫瘍効果を示した。先行研究において、アントラサイクリンを含む化学療法でのORRは59.0%、カルボプラチン+パクリタキセルでのORRは42.9%、ペメトレキセド単剤でのORRは26.0%であったことが報告されており、ステロイド単剤は化学療法と同等の効果を示すことが示唆される。ステロイドによる治療は、手術や放射線療法、化学療法に失敗した患者にとって、有望な治療選択肢の1つになると考えられる。今後の研究では、最適な初期用量や治療期間の確立が必要である」と考察した。

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慢性手湿疹、デルゴシチニブ外用薬が有効/Lancet

 中等症~重症の慢性手湿疹を有し、基本的なスキンケアやコルチコステロイド外用薬では十分にコントロールできない患者の治療において、基剤を含み有効成分を含まないクリームと比較してヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬デルゴシチニブを含有するクリームは、16週の投与で高い有効性を示し、忍容性も良好であることが、カナダ・Innovaderm ResearchのRobert Bissonnette氏らtrial investigatorsが実施した2つの臨床試験(DELTA 1試験、DELTA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月18日号で報告された。同一デザインの2つの無作為化第III相試験 DELTA 1試験とDELTA 2試験は、いずれも基剤を対照とした二重盲検無作為化第III相試験であり、DELTA 1は2021年5月~2022年10月に6ヵ国53施設で、DELTA 2は2021年5月~2023年1月に7ヵ国50施設で患者を登録した(LEO Pharmaの助成を受けた)。 両試験とも、年齢18歳以上、中等症~重症の慢性手湿疹と診断され、スクリーニング時から過去1年以内にコルチコステロイド外用薬の効果が不十分か、医学的に推奨されなかった患者を対象とした。手湿疹の重症度は、Investigator's Global Assessment for Chronic Hand Eczema(IGA-CHE)の修正版(5段階:0[皮膚病変消失]、1[同ほぼ消失]、2[軽症]、3[中等症]、4[重症])に準拠した。 被験者を、デルゴシチニブ クリーム20mg/g(1日2回)を塗布する群または基剤クリームを塗布する群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、16週の時点におけるIGA-CHEに基づく治療成功とした。治療成功は、IGA-CHEスコアが0(皮膚病変消失)または1(同ほぼ消失)で、ベースラインから16週目までに少なくとも2段階の改善を達成した場合と定義した。主な副次エンドポイントもすべて有意に良好 DELTA 1試験は487例(年齢中央値44.0歳[四分位範囲:32.0~55.0]、女性306例[63%])を、DELTA 2試験は473例(44.0歳[33.0~56.0]、312例[66%])を登録した。DELTA 1試験の325例とDELTA 2試験の314例をデルゴシチニブ群に、それぞれ162例と159例を基剤群に割り付けた。 16週の時点で、治療成功を達成した患者の割合は、DELTA 1試験では基剤群が9.9%(16/162例)であったのに対しデルゴシチニブ群は19.7%(64/325例)(群間差:9.8%、95%信頼区間[CI]:3.6~16.1、p=0.0055)、DELTA 2試験では基剤群の6.9%(11/159例)に比べデルゴシチニブ群は29.1%(91/313例)(22.2%、15.8~28.5、p<0.0001)と、どちらの試験も有意に優れた。 2つの試験の双方とも、主な副次エンドポイント(4および8週時のIGA-CHEに基づく治療成功、手湿疹重症度指数[HECSI]、手湿疹症状日誌[HESD]、皮膚疾患の生活の質指標[DLQI]など)はすべて、デルゴシチニブ群で有意に良好だった。有害事象の頻度は、2試験とも両群で同程度 有害事象を報告した患者の割合は、デルゴシチニブ群がDELTA 1試験で45%(147/325例)、DELTA 2試験で46%(143/313例)、基剤群はそれぞれ51%(82/162例)および45%(71/159例)であり、2つの試験とも両群で同程度であった。 2%以上の患者に発現した最も頻度の高い有害事象は、新型コロナウイルス感染症(デルゴシチニブ群:DELTA 1試験11%、DELTA 2試験12%、基剤群:DELTA 1試験9%、DELTA 2試験13%)、鼻咽頭炎(7%、9%、7%、6%)、頭痛(3%、2%、6%、6%)であった。また、重篤な有害事象(2%、2%、2%、2%)の頻度も同程度であったが、試験薬関連の可能性がある有害事象(4%、8%、7%、7%)はDELTA 1試験ではデルゴシチニブ群で少なく、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(1%、4%、<1%、3%)は2つの試験ともデルゴシチニブ群で少なかった。 著者は、「これらのデータは、デルゴシチニブ クリームは、治療が困難な場合が多いこの患者集団において、臨床徴候や症状の緩和のための革新的な治療選択肢となることを示唆する」「デルゴシチニブ クリームは、限られた皮膚領域に局所的に適用されるため、全身投与に伴う安全性の懸念なしに、JAK阻害薬による治療の有益性が得られる可能性がある」としている。

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月経前症候群は食行動と関連

 日本の女子大学生および大学院生を対象とした横断研究の結果、摂食障害傾向の有無が月経前症候群(premenstrual syndrome;PMS)と関連していることが明らかとなり、BMIの値にかかわらず、食行動がPMS症状に影響を及ぼしている可能性が示唆された。大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科の森野佐芳梨氏らによる研究であり、「BMC Women's Health」に6月7日掲載された。 PMSは、情緒不安定、イライラ、不安、倦怠感、食欲や睡眠の変化、下腹部痛、頭痛、むくみ、乳房の張りなど、さまざまな身体・精神症状を伴い、多くの女性の日常生活に支障をきたしている。PMSは、運動習慣、食事の内容や栄養摂取の状況などと関連することが報告されている。しかし、朝食の欠食、やせ願望、過食といった食行動に関する問題が深刻化している中で、食行動とPMS症状について検討した日本の研究は少ない。 著者らは今回、日本の大学に通う25歳以下の女子大学生・大学院生を対象に、インターネットを用いた質問紙調査を実施した(2022年11月から2023年9月)。食行動の評価には「EAT-26」という尺度を用い、摂食障害傾向の有無を評価した。PMSについては、計18の身体症状と精神症状について、その症状により日常生活に支障が出たかどうかを尋ねた。 有効回答の得られた対象者130人のうち、EAT-26の評価により摂食障害傾向グループに分類された人は8人(6.15%)だった。摂食障害傾向グループとそうでないグループで、平均年齢(19.6±0.7対20.1±1.6歳)、身長(158.0±4.9対159.0±5.5cm)、体重(52.3±4.2対51.7±5.6kg)、BMI(21.0±2.0対20.5±1.9kg/m2)に関して、有意差はなかった。 PMSで悩んでいる人の割合は、摂食障害傾向グループの方が、そうでないグループに比べて有意に高いことが明らかとなった(100%対59.8%)。同様に、PMSの身体症状(100%対55.7%)および精神症状(62.5%対27.1%)のどちらの割合も、摂食障害傾向グループの方が有意に高かった。 さらに、身体症状の有無と、EAT-26の下位尺度の得点との関連を比較したところ、身体症状のあるグループは、身体症状のないグループと比べて、「摂食制限」(6.8±5.4対5.2±2.6)および「過食と食への関心」(1.6±2.7対0.6±1.2)の得点が有意に高かった。 今回の研究結果について著者らは、BMIのような体組成の違いにかかわらず、女子大学生の摂食障害傾向がPMS症状に関連していたことから、従来から指摘されている栄養状態やBMIだけではなく「食行動がPMSに影響している可能性があり、PMSに対する保健指導に新たな視点が必要となる可能性がある」と述べている。また、若い世代ほど、ボディイメージやソーシャルメディアの意見に関心が高く、食行動も大きく影響を受けやすいことから、今後、より多くの集団で食行動について検討することで、PMSの改善や予防に貢献できる可能性があるとしている。

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日本の大学院生の自殺に関する実態調査

 日本の大学院の自殺に関する20年間の調査データを分析した結果から、男子学生、工学専攻、留年歴があることなどの特徴が、自殺率の高さと関連していることが明らかとなった。また、自殺の動機として多かったのは就職活動の失敗だったという。お茶の水女子大学保健管理センターの丸谷俊之氏らによる研究であり、「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に3月8日掲載された。 大学院生の自殺既遂例に関する研究報告は少ないが、大学院生はさまざまなストレスにさらされており、メンタルヘルスに関する問題を抱えやすいといえる。海外での研究では、指導教員からのプレッシャーや抑うつ症状などが自殺の要因として指摘されている。 著者らは今回、全国の国立大学の大学院生を対象として国立大学保健管理施設協議会が実施している死因に関する調査データを用いて、2002年度から2021年度までの20年間における大学院生の自殺について分析した。学歴(修士・博士)、専攻(7種類)、休学歴、留年歴などと自殺リスクとの関連や、自殺に関連する情報を詳細に検討した。 20年間の累積学生数は238万3,858人(男子171万6,590人、女子66万7,268人)であり、そのうち347人(男子292人、女子55人)が自殺していた。自殺時の平均年齢は26.2±5.1歳、年齢中央値は24.0歳だった。 男子学生は女子学生と比べ、自殺率が高かった(学生10万人当たり17.0対8.2)。性別と修士・博士課程で比較すると、修士課程の男子学生の自殺率が最も高かった(調整済み残差:6.2)。専攻別では、工学、理学、人文科学を専攻する学生は自殺リスクが高く(調整済み残差:それぞれ3.9、2.6、2.1)、医歯薬看護・健康科学、教育学、農学、社会科学を専攻する学生はリスクが低かった(調整済み残差:それぞれ-4.1、-3.1、-1.5、-0.9)。また、留年歴のある学生は留年歴のない学生より自殺率が高かった。しかし、留年歴のない男子学生の自殺リスクは、留年歴のある女子学生よりも高かった(調整済み残差:それぞれ2.9、-0.1)。 精神医学的診断が報告されていた44人の診断名は、気分障害が27人で最も多かった(うつ病19人、双極性障害2人、下位分類不明6人)。また、自殺の推定動機が報告されていた36人のうち、最も多かったのは就職活動の失敗(13人)であり、次いで学業不振(9人)、恋愛関係の問題(5人)が続いた。2020年度には、1人の日本人学生が新型コロナウイルス感染症に関連した就職活動の問題を抱えており、留学生2人はパンデミックに伴う渡航制限が影響していた。 今回の研究で就職活動の失敗が自殺の動機として最も多かったことに関して、著者らは、修士課程・博士課程ともに定員数が大幅に増やされてきた一方で、学術的なポストの数は不足しており、就職活動が困難になっていることに言及している。また、研究結果から、「大学院生における自殺の高リスク群を認識することの重要性」を指摘している。

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ジャンクフード店の近くに住むと太る【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第262回

ジャンクフード店の近くに住むと太る私はコンビニ飯がわりと好きで、セブンイレブン、ローソン、ファミマをぐるぐる回って新商品が出ていないかチェックすることもあります。「底上げ弁当」がまだまだ多いので不満はありますが、昔と比べて味はとにかく美味しくなりました。しかし、アクセスが良すぎるのも問題かもしれません。Pineda E, et al. Food environment and obesity: a systematic review and meta-analysis.BMJ Nutrition, Prevention & Health. 2024 Apr 22;7(1):204-211.イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンからの研究で、住宅からの食料品店や飲食店の距離と肥満について調べたシステマティックレビューとメタアナリシスです。仮説では、近くにジャンクな店があるほど、肥満度は高くなるというものです。大学時代、マンションに餃子の王将の無料券が投函され、歩いて30秒くらいのところに店舗があったので、当時の血肉の80%以上は餃子の王将でできていました。思えば、あのころから緩やかに体重が増えていったのではないか…ブツブツ。いや、もちろん餃子の王将は悪くないです。1946~2022年1月までに刊行された論文を紐解き、合計103論文を対象として、スーパーマーケット、青果店、ファストフード店、レストラン、コンビニなどの距離と肥満度が調べられました。結果、マルチレベルモデル解析または空間的要因について検討していた35論文のうち26件において、高脂肪、高糖質、高塩分の食品を販売する店舗と肥満度に有意な関連が観察されました。横断的研究89論文のうち59件、縦断的研究14論文のうち7件において、ファストフード店やコンビニなどのような「健康的とはいえない」店舗と肥満の関連性が確認されました。しかし、メタアナリシスによると、ファストフード店はたしかに肥満度の上昇リスクと有意に関連していましたが(オッズ比[OR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.02~1.30、p=0.02)、コンビニについてはとくに関連は観察されませんでした。反面、青果店の密度の高さや、スーパーマーケットとの距離は、肥満度の低下と有意に関連していました(OR:0.93、95%CI:0.90~0.96、p<0.001)(OR:0.90、95%CI:0.82~0.98、p=0.02)。 とりあえず、近くに「健康的」な店舗があることが重要ですね。

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重度のBPSDに対する抗精神病薬の投与量の軌跡

 抗精神病薬は、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対し、適応外で使用されることが多いが、これら薬剤の重要な副作用は懸念となる。杏林大学の多田 照生氏らは、重度のBPSDを有する認知症入院患者における抗精神病薬の長期使用状況、時間の経過とともに使用状況がどのように変化するかを調査した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2024年6月25日号の報告。 2012年10月〜2021年9月の山梨県・日下部記念病院のカルテデータをレトロスペクティブにレビューした。この研究では、認知症診断後、BPSDのために入院し、入院3ヵ月時点で抗精神病薬を使用していた患者を対象とした。抗精神病薬の投与量は、クロルプロマジン等価換算に基づき高用量群(300mg/日以上)、中用量群(100〜300mg/日)、低用量群(100mg/日未満)に分類し、入院15ヵ月までフォローアップを行った。3〜6ヵ月目における投与量の減量と関連する因子を特定するため、二項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は188例、平均年齢は81.2歳、アルツハイマー型認知症の割合は67%であった。・3ヵ月時点での抗精神病薬の投与量は、高用量群15.4%、中用量群44.1%、低用量群40.4%であった。・平均投与量は3ヵ月目で最高に達し、その後は時間の経過とともに減少していた。・12ヵ月目までにすべての群において、20〜30%の患者は、抗精神病薬の使用が中止されていた。・投与量減少に対する重要な因子は、最初の投与量が高い(オッズ比[OR]:1.003、95%信頼区間[CI]:1.001〜1.006、p=0.01)、男性(OR:2.481、95%CI:1.251〜4.918、p=0.009)であった。 著者らは「重度のBPSDを有する認知症入院患者における抗精神病薬の投与量の軌跡は、これまで報告されていなかった。今回の研究により、脆弱な患者群に対する長期薬物療法のマネジメントにおいて、個別化した治療戦略の必要性が明らかとなった」としている。

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熱中症診療ガイドラインの分類に最重症群「IV度」を追加

 7月25日、日本救急医学会の熱中症および低体温症に関する委員会が『熱中症診療ガイドライン2024』を公表した。本ガイドラインの改訂は10年ぶり。熱中症診療ガイドライン2024では熱中症の診療と予防の全般をカバーし、定義・重症度・診断、予防・リスク、冷却法、冷却法以外の治療(補液、DIC治療薬)、小児関連の5分野より24個のClinical Question(CQ)が設定されている。熱中症診療ガイドラインの重症度分類、最重症群がIII度からIV度へ これまで熱中症診療ガイドライン2015年版でIII度としてきた重症群の分類の中にさらに注意を要する最重症群が含まれていたが、改訂版である熱中症診療ガイドライン2024年版ではこの最重症群を「IV度」と同定し、Active Coolingを含めた集学的治療を早急に開始するよう提唱している。これにより、IV度は膀胱温や直腸温などの深部体温を用いて「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」*と定義し、Bouchama基準の重症が2024年版の分類でIV度に該当することになる。熱中症診療ガイドライン2024でのIII度の分類は「IV度に該当しないIII度(2015)」となった。 さらに、IV度の可能性がある患者を現場や搬送中、あるいは来院直後に把握する基準としてqIV度(quick IV度)「表面体温40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつGCS≦8(もしくはJCS≧100)**【深部体温の測定不要】」を設け、併せて提唱している。もし、表面体温にてqIV度と考えた場合は、深部体温測定を行い、速やかに重症度を判断する。深部体温が40.0℃以上でIV度と判断された場合には、早急にActive Coolingを含めた集学的治療を実施する。*Glasgow Coma Scale  **Japan Coma Scale熱中症診療ガイドライン2024では用語統一にも注意 熱中症診療ガイドライン2024ではActive Coolingについて、何らかの方法で熱中症患者の身体を冷却することと定義し、熱中症診療ガイドライン2015にて「体温管理」「体内冷却」「体外冷却」「血管内冷却」「従来の冷却法(氷嚢、蒸散冷却、水式ブランケット)」「ゲルパッド法」「ラップ法」などと記載していた方法をActive Coolingとして包括的な記載に統一されている。ただし、2015版で記載されていた「冷所での安静」はPassive Cooling(冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することや、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩すること)とし、これに該当するものはActive Coolingに含まない(CQ3-01、CQ3-02、BQ4-01、CQ4-02、FRQ4-03、CQ5-02)。また、Active Coolingと“集中治療、呼吸管理、循環管理、DIC治療”はActive Coolingを含めた集学的治療と表現される。なお、冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することは、薬剤メーカーが推奨する投与方法ではなく、重症熱中症患者への有効性を示すエビデンスはないと示している(p.5)。熱中症診療ガイドライン2024の分類における診断基準と治療方法 熱中症診療ガイドライン2024での熱中症の診断基準は「暑熱環境に居る、あるいは居た後」の症状として、以下のように分類され、推奨される治療方法が記載されている(p.7、実際はアルゴリズムとして明記)。I度 めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)があるも意識障害を認めないもの。通常は現場で対応可能と判断する。Passive Coolingを行い、不十分であればActive Cooling、経口的に水分と電解質の補給を行う。II度 頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(JCS1)を認める。医療機関での診察を必要とし、Passive Cooling、不十分ならActive Cooling、十分な水分と電解質の補給(経口摂取が困難なときは点滴)を行う。III度 (1)中枢神経症状(意識障害JCS2、小脳症状、痙攣発作)、(2)肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)、(3)血液凝固異常(急性DIC診断基準[日本救急医学会]にてDICと診断)の3つのうちいずれかを含む場合、入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療を考慮する。IV度 深部体温40.0℃以上かつGCS≦8の場合、Active Coolingを含めた集学的治療を行う。 重症例(III~IV度)の治療法としては、Active Coolingを含めた集学的治療を行うことを推奨しているが、Active Cooling の中の個別の冷却方法を推奨はしない。一方、軽症例(I~II度)は、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩するPassive Coolingと水分・電解質の補給で症状が軽快しうるが、改善に乏しい場合は、深部体温を測定したうえで、Active Coolingを行うべきである、と記されている。 検討課題として、経口補水液、DIC治療薬、暑熱順化については十分な研究成果が得られていない点も記されている(p.5)。熱中症の疫学的特徴 厚生労働省の人口動態統計(確定数)によると、熱中症の死亡者数は毎年1,000例を超え、全国の熱中症搬送者数は9万1,467例に上る。年齢区分別では、高齢者(満65歳以上)が最も多く、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)、少年(満7歳以上満18歳未満)、乳幼児(生後28日以上満7歳未満)の順となっており、発生場所は住居が最も多く、次いで道路、公衆(屋外)、仕事場(道路工事現場、工場、作業所など)の順となっている。他方で、全国の救命救急センターの入院症例を対象とした日本救急医学会の熱中症の調査Heatstroke STUDY(HsS)2020-21では、65歳以上が60%強、男性が70%弱、屋外発生が50%(日常生活が60%、労働が30%、スポーツが10%)、マスク着用は少数(不明例が多数)であった。  最後に同委員会担当理事の横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 教授)ならびに委員長の神田 潤氏(帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター)らは、「HsSによると、IV度におけるActive Cooling実施率は90%以上であるにもかかわらず、院内死亡率が20%以上と重篤な状況にある。さらにIV度の可能性が高いqIV度のなかでも、深部体温の不明・未測定例が25%に上り、その不明・未測定例でのActive Coolingの実施状況は60%程度で、院内死亡率は37.0%であった。この状況を踏まえ、最重症であるIV度の熱中症が重篤である点、重症化が懸念されるqIV度での深部体温測定とActive Coolingの徹底が重要」としている。

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院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/BMJ

 非外傷性院外心停止成人患者において、骨髄路確保は静脈路確保と比較して、生存退院、病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開、良好な神経学的アウトカムのいずれについても差はなかった。台湾・国立台湾大学病院のYing-Chih Ko氏らが、クラスター無作為化比較試験「Venous Injection Compared To intraOsseous injection during Resuscitation of patients with out-of-hospital cardiac arrest trial:VICTOR試験」の結果を報告した。蘇生に関するガイドラインでは、院外心停止時の薬物投与には静脈路を優先し、静脈路が確保できない場合は骨髄路を使用することが推奨されているが、これまでの後ろ向き研究には限界があった。著者は、今回の前向き試験の結果に基づき、「骨髄路確保は、静脈路確保の代替ではなく第1選択として考慮しうるもので、患者や救急医療システムのさまざまな特徴に基づいた血管アクセスの最適な意思決定プロセスを検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2024年7月23日号掲載の報告。4つの高度救命救急チームを隔週で骨髄路群または静脈路群に無作為化 VICTOR試験は、2020年7月6日~2023年6月30日に、台北市消防局に所属する4つの高度救命救急チームが参加し、台北市内のすべての救急責任病院で実施された(2021年5月20日~2021年7月31日はCOVID-19流行のため一時中断)。 研究グループは、非外傷性院外心停止成人患者(20~80歳)を対象とし、4つの高度救命救急チームをそれぞれ2週ごとに骨髄路群または静脈路群に割り付け(クラスター比率は1対2)、骨髄路群の患者には機械的骨髄内穿刺、静脈路群の患者には上肢の静脈内穿刺が行われた。両群とも血管アクセスが確保された後、アドレナリン(エピネフリン)1mg、続いて生理食塩水10mLを急速注入した。 主要アウトカムは生存退院、副次アウトカムは病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開(2時間以上)、退院時の良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリースコア≦2の生存)などであった。骨髄路群と静脈路群で、生存退院、病院到着前自己心拍再開などに有意差なし 適格基準を満たした1,771例が登録され、主要アウトカムのデータが得られた1,732例(骨髄路群741例、静脈路群991例)が解析対象となった。患者は、年齢中央値65.0歳、男性1,234例(71.2%)であった。 生存退院は、骨髄路群では79例(10.7%)であったのに対し、静脈路群では102例(10.3%)であった(オッズ比[OR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.76~1.42、p=0.81)。 副次アウトカムについても、病院到着前自己心拍再開(OR:1.23、95%CI:0.89~1.69、p=0.21)、持続的自己心拍再開(0.92、0.75~1.13、p=0.44)、良好な神経学的アウトカム(1.17、0.82~1.66、p=0.39)のいずれも、両群間に有意差は認められなかった。

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強い骨の形成を促す新しいホルモンを発見

 骨粗鬆症と闘い、骨折を早く治すのに役立つ可能性を秘めたホルモンが、マウスを用いた実験で発見された。それは、CCN3(cellular communication network factor 3)と呼ばれるホルモンで、授乳中の雌マウスの骨量や骨の強度の維持に役立っていることから「母体脳ホルモン(maternal brain hormone)」とも呼ばれている。実験では、CCN3が、年齢や性別にかかわりなく全てのマウスの骨を強化することが確認された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のHolly Ingraham氏らによるこの研究の詳細は、「Nature」に7月10日掲載された。 骨粗鬆症患者の数は世界で2億人に上る。女性では、特に閉経後に骨の形成を促す女性ホルモンであるエストロゲンレベルが低下するため、骨粗鬆症リスクが上昇する。エストロゲンは授乳中にも低下するが、この時期に骨粗鬆症や骨折が生じることはまれである。このことから、授乳期にはエストロゲン以外の何かが骨の形成を促していると考えられている。 Ingraham氏らは過去の研究で、雌マウスの脳の狭い領域にある特定のニューロンのエストロゲン受容体を遮断することで、骨量が増加することを確認していた。このことから研究グループは、血液中のホルモンが骨の増強に役立っている可能性を考えていたが、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響を受けて、研究は中断されていた。 今回の研究では、特定の遺伝子操作により意図的に遺伝子を変異させた雌マウスを用いて、骨の形成を促すこのホルモンを突き止めるために徹底的な調査が行われた。その結果、CCN3が特定された。CCN3は、ニューロンから分泌されるホルモンの典型的な特徴が該当しないため、Ingraham氏らはこの結果に驚いたと話す。 しかし、この疑問は、授乳中の雌マウスの同じ脳領域でCCN3が発見されたことにより解消されたという。これらの特定のニューロンでCCN3が生成されなければ、授乳中の雌マウスの骨量や骨の強度が急速に低下し、子マウスの体重も減り始めることが確認されたからだ。これは、CCN3が授乳中の母マウスの骨の健康維持に重要な役割を果たしていることを意味する。 さらに、若年成体や高齢の雌雄のマウスを対象に、体内を循環するCCN3の量を増加させたところ、数週間のうちに骨量と骨の強度が劇的に増加することが確認された。また、CCN3を2週間かけてゆっくりと放出するハイドロゲルパッチを作成して、高齢マウスの骨折部位に貼り付けた。その結果、骨の形成が促進され、高齢マウスで通常見られるよりも早いプロセスで治癒することも示された。 論文の責任著者の1人である米カリフォルニア大学デイビス校のThomas Ambrosi氏は、「これまで、このような骨の石灰化と治癒を達成した方法は他になかった」と述べ、「われわれは今後も、このホルモンについての研究を進めること、また、軟骨再生など他の問題に応用する可能性を探ることを心から楽しみにしている」と述べている。

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顔の表面温度、脂肪肝や生活習慣病のスクリーニングに有用か

 体温とは、細胞機能と生物の生存に影響を与える、つまり健康状態を知るための重要なパラメータであり、老化と寿命にとっても重要な要素である。そこで今回、中国・北京大学のZhengqing Yu氏らは顔の皮膚温を捉えた熱画像(以下、サーマル画像)を用い、老化と代謝疾患の定量的特徴を明らかにすることで、サーマル画像が老化と代謝状態の迅速スクリーニングに有用な可能性を示唆した。Cell Metabolism誌2024年7月2日号掲載の報告。 研究者らは、2020~22年の期間に21〜88歳の成人2,811人(女性:1,339人、男性:1,472人)の顔のサーマル画像を収集し、赤外線サーモグラフィによる顔のメッシュ認識および領域分割アルゴリズムを用いたThermoFaceを開発、自動処理・分析にて生物学的年齢を測定するなどして、サーマル顔画像年齢による疾患予測モデルを生成し、AgeDiff(予測年齢と実年齢の差)と代謝パラメータや睡眠時間との関連を検証した。 主な結果は以下のとおり・各年代のThermoFaceパターンを調べた結果、男女ともに鼻、頬、眉毛ゾーンの皮膚温が加齢とともに低下していた。ただし、女性は50代から、男性は60代から低下がみられた。・また、皮膚温と代謝疾患との関連について、糖尿病や脂肪肝などの代謝疾患を有する人は健康な人に比べて目の周囲の皮膚温が高く、高血圧の人では頬の皮膚温が高かった。・ThermoFaceは、脂肪肝などの代謝疾患を高い精度(AUC>0.80)で予測し、予測された疾患確率は代謝パラメータと相関していた。・AgeDiffは、BMI、空腹時血糖値、アポリポ蛋白Bなどの代謝性疾患パラメータ、睡眠時間、血液検体のトランスクリプトーム解析によるDNA修復、脂肪分解、ATPaseなどの遺伝子発現経路との関連が高かった。・サーマル画像の皮膚温分布は老化や代謝状態を反映しており、迅速なスクリーニングへの有効性が示された。 研究者らは、「顔のサーマル画像分析が加齢や代謝疾患の迅速な評価に有用であることを示しており、ThermoFaceはデータ取得の速さと利便性、大規模コホートに基づく精度の高さから、健康的な加齢に関するモニタリングや評価ツールとして有用な可能性がある」としている。

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妊娠初期のコロナ感染・ワクチン接種、児の先天異常と関連せず/BMJ

 妊娠第1三半期(13週+6日)における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種は、生児の先天異常のリスクに大きな影響を及ぼさないことが、ノルウェー・公衆衛生研究所のMaria C. Magnus氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年7月17日号で報告された。北欧3ヵ国のレジストリベース前向き研究 研究グループは、妊娠第1三半期における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種による主要な先天異常のリスクへの影響の評価を目的に、北欧の3ヵ国でレジストリベースの前向き研究を行った(ノルウェー研究会議[RCN]などの助成を受けた)。 2020年3月1日~2022年2月14日に妊娠したと推定され、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの全国的なレジストリに登録された単胎の生児34万3,066例を対象とした。 先天異常は、欧州先天異常サーベイランス(EUROCAT)の定義に基づいて分類した。妊娠第1三半期における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種後のリスクを、母親の年齢、経産回数、教育歴、収入、出身国、喫煙状況、BMI値、慢性疾患、妊娠開始の推定日で補正したロジスティック回帰モデルで評価した。ウイルス変異株によるリスクの違いの解明が必要 1万7,704例(5.2%、516/1万人)の生児が先天異常と診断された。このうち737例(4.2%)では2つ以上の先天異常を認めた。 妊娠第1三半期の新型コロナウイルス感染に関連するリスクの評価では、補正後オッズ比(OR)は、眼球異常の0.84(95%信頼区間[CI]:0.51~1.40)から口腔顔面裂の1.12(0.68~1.84)の範囲であった。 同様に、妊娠第1三半期のCOVID-19ワクチン接種に関連するリスクのORは、神経系異常の0.84(95%CI:0.31~2.31)から腹壁破裂の1.69(0.76~3.78)の範囲だった。 また、先天異常の11のサブグループのうち10のORの推定値は1.04未満であり、顕著なリスク増加はみられなかった。 著者は、「今後、新型コロナウイルスの変異株による先天異常のリスクの違いを解明するための検討を進める必要がある」としている。

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英語で「最後に食事をしたのはいつですか」は?【1分★医療英語】第141回

第141回 英語で「最後に食事をしたのはいつですか」は?《例文1》When was the last time you ate?(最後に食事をしたのはいつですか?)《例文2》You have nothing by mouth after midnight.(深夜12時以降は絶飲食です)《解説》救急医療の現場などで、手術や検査が行えるかどうかを確認するために、「最後に食事をしたのはいつですか?」と聞く場面は多いかと思います。英語ではシンプルに、“When did you last eat?”や“When was the last time you ate?”と質問することができます。頻繁に使うフレーズなので、丸ごと覚えてしまいましょう。また、手術や検査に備えて絶飲食することを、医療者の間では“NPO”と表現します。これは、「口から何も入れない」ことを意味するラテン語の“nil per os”の頭文字を取ったものです。患者さんに説明する場合は“NPO”では伝わらないため、“nothing by mouth”や、“nothing to eat or drink”、“no food or drink”といったフレーズを使うようにします。講師紹介

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第225回 新しい帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下が関連

新しい帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下が関連米国の20万例強の記録を英国オックスフォード大学の研究者らが解析したところ、2017年から同国で使用されるようになった新しい組み換え帯状疱疹ワクチンであるシングリックス接種と認知症を生じ難いことが関連しました1-3)。2006年から使われ始めて7年ほど前まで最も一般的だった別の帯状疱疹ワクチンZostavaxは生きた弱毒化ウイルスを成分とします。何を隠そうZostavaxも認知症が生じ難くなることとの関連が先立つ試験で示されています。しかし今回の新たな結果によると、認知症発現を遅らせるか、ともすると防ぎうるシングリックスの効果はZostavaxに比べて高いようです。帯状疱疹は高齢者の多くに生じる深刻な疾患の1つです。ストレスや化学療法などの免疫を弱らす事態に乗じて体内に潜む水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することを原因とし、痛い皮疹を引き起こし、2次感染や傷跡を残すことがあります。帯状疱疹は加齢につれて生じ易くなることから、高齢者へのそのワクチン接種が必要とされています。米国では50歳、英国では65歳での帯状疱疹ワクチン接種が推奨されています。米国を含む多くの国で帯状疱疹ワクチンは代替わりしてより有効なシングリックスが使われるようになっており、Zostavaxは使われなくなっています。シングリックスは組み換えワクチンであり、病原体のDNAのごく一部を細胞に挿入して作られるタンパク質を成分とします。それらタンパク質が体内で感染予防に必要な免疫反応を引き出します。米国では2017年後半からシングリックスがZostavaxの代わりに使われるようになりました。オックスフォード大学のMaxime Taquet氏らは、その区切り以降にシングリックスを接種した人とそれ以前にZostavaxを接種した人の認知症の生じ易さを比較しました。選ばれた人の数はどちらも10万例強で、平均年齢は71歳です。6年間の経過を追ったところ、シングリックス接種群の認知症の発症率はZostavax接種群に比べて17%低いことが示されました。また、帯状疱疹以外のワクチン(インフルエンザワクチンと3種混合ワクチン)接種群と比べてもシングリックス接種群の認知症発症率は2~3割ほど低く済んでいました。帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難くなることを関連付ける仕組みは不明で、今後調べる必要があります。もしかしたら帯状疱疹の原因ウイルスが認知症を生じ易くし、帯状疱疹ワクチンはそれらウイルスを阻止することで認知症をより生じ難くするのかもしれません2)。または、ワクチン自体が脳に有益な効果をもたらしている可能性もあります。ところで認知症発症率低下との関連は帯状疱疹以外のワクチンでも示されています。結核の予防や膀胱がん治療に使われるBCGワクチンはその1つで、認知症の発症リスクの45%低下との関連が昨年発表されたメタ解析で確認されています4)。BCGワクチンといえば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防効果がかつて期待されましたが、プラセボ対照無作為化試験でその効果を示すことができませんでした5)。残念な結果になったとはいえBCGワクチンのCOVID-19予防効果は最終的に無作為化試験で検証されました。その試験と同様のシングリックスの認知症予防効果を検証する大規模無作為化試験の構想を今回の結果は促すだろうとTaquet氏らは論文に記しています。参考1)Taquet M, et al. Nat Med. 2024 Jul 25. [Epub ahead of print]2)New shingles vaccine could reduce risk of dementia / University of Oxford 3)Evidence mounts that shingles vaccines protect against dementia / NewScientist4)Han C, et al. Front Aging Neurosci. 2023;15:1243588. 5)Pittet LF, et al. N Engl J Med. 2023;388:1582-1596.

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